(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170146
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20221102BHJP
B65D 75/30 20060101ALI20221102BHJP
B65D 81/28 20060101ALI20221102BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20221102BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B65D75/62 A
B65D75/30 Z
B65D81/28 C
A61M35/00 Z
A47K7/00 H
A47K7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076065
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
【テーマコード(参考)】
3E067
4C267
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA12
3E067AB81
3E067AB83
3E067BA12A
3E067BA15A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BC04A
3E067CA02
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA07
3E067EA09
3E067EB06
3E067EB07
3E067EB23
3E067EC29
3E067EE59
3E067FC01
3E067GC05
4C267AA62
4C267BB13
4C267CC01
4C267GG16
(57)【要約】
【課題】ピンセットなどを使用せずに取り出して、患部に薬剤を塗布可能とする構造のパウチを得る。
【解決手段】少なくとも、上から順に、保護層(2)、薬剤保持層(3)、ベース層(4)、バンド(5)から構成されるパウチ(1)であって、保護層は、内巻きカールする積層フィルムから構成され、かつ、覆う面の主要面積を展開可能な脆弱線(21)を有し、薬剤保持層は、薬剤を含浸させた不織布から構成され、ベース層に密着可能とし、ベース層は、薬剤保持層に密着して、面を保持可能とする剛性と、患部表面形状に密着可能な柔軟性と、を併せ持ち、バンドは、ベース層の左右両端に繋止して、ベース層を外側に反らせて、患部表面形状に密着可能とするパウチにおいて、上記保護層の両端を広げると、保護層の脆弱線が破断して内巻きカールし、薬剤保持層の主要面積が露出可能としたことを特徴とするパウチ
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、上から順に、保護層、薬剤保持層、ベース層、バンドから構成されるパウチであって、
保護層は、内巻きカールする積層フィルムから構成され、かつ、覆う面の主要面積を展開可能な脆弱線を有し、
薬剤保持層は、薬剤を含浸させた不織布から構成され、ベース層に密着可能とし、
ベース層は、薬剤保持層に密着して、面を保持可能とする剛性と、患部表面形状に密着可能な柔軟性と、を併せ持ち、
バンドは、ベース層の左右両端に繋止して、ベース層を外側に反らせて、患部表面形状に密着可能とするパウチにおいて、
上記保護層の両端を広げると、保護層の脆弱線が破断して内巻きカールし、薬剤保持層の主要面積が露出可能としたことを特徴とするパウチ。
【請求項2】
保護層の脆弱線が破断した時に、内巻きにカールする量が、一回転以上としたことを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
ベース層とバンドとの間に、指あるいは手が、挿入可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のパウチ。
【請求項4】
薬剤保持層を露出する面積が、薬剤保持層の全面積に対し、60パーセント以上としたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用の殺菌剤、クリーナー、化粧品、アルコール、洗浄剤などの塗布する薬剤と、それを含浸させる為の不織布と、を収納するパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、
織布または不織布からなり塗布剤を含浸させた含浸シートと、
含浸シートを片面に保持するとともに、当該塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有する基材シートと、
含浸シートとは反対側の基材シート面に固定され、基材シートとの間に、使用者の手を挿入する空間を形成する外側シートと、
基材シートに保持された含浸シートを覆うとともに、前記塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有し剥離可能な剥離シートと、を備えた包装体であって、
上記基材シートと含浸シート、基材シートと外側シート、基材シートと剥離シートは、それぞれ互いにヒートシール接着されていて、
上記含浸シートは、その周縁部を基材シートにシールすることで、基材シートに保持されていて、
上記外側シートと基材シートは、互いの全周においてシール固定されており、
重なり合った両シート材の周縁に切込みが形成されていて、当該切込みから両シート材の一周辺領域を破断除去することにより、使用者の手を挿入する挿入口が形成される、包装体を提案している。
【0003】
この包装体では、使用時に含浸シートを覆う剥離シートを剥離するのに、切込み部に、ピンセットなどを挿入して剥がさないと、薬剤が手や患部以外の所に付着してしまうなどの問題が発生しやすい。また、操作が煩雑であったり、含浸シートに手が接触して、含浸シートを汚してしまったりするなどの恐れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ピンセットなどを使用せずに取り出して、患部に薬剤を塗布可能と
する構造のパウチを得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパウチは、少なくとも、上から順に、保護層、薬剤保持層、ベース層、バンドから構成されるパウチであって、
保護層は、内巻きカールする積層フィルムから構成され、かつ、覆う面の主要面積を展開可能な脆弱線を有し、
薬剤保持層は、薬剤を含浸させた不織布から構成され、ベース層に密着可能とし、
ベース層は、薬剤保持層に密着して、面を保持可能とする剛性と、患部表面形状に密着可能な柔軟性と、を併せ持ち、
バンドは、ベース層の左右両端に繋止して、ベース層を外側に反らせて、患部表面形状に密着可能とするパウチにおいて、
上記保護層の両端を広げると、保護層の脆弱線が破断して内巻きカールし、薬剤保持層の
主要面積が露出可能としたことを特徴とするパウチである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパウチは、ピンセットなどの道具を使用せず、保護層の両端を広げるだけで、保護層が破断してカールし、薬剤保持層が露出するので、薬剤保持層に触らないで、開封することができる。
しかも、ベース層とバンドとの間に指や手を挿入し、露出した薬剤保持層表面を患部に当てることが可能となるので、手を汚さずに、安定して患部に薬剤を塗布することが可能とするパウチである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るパウチの一実施形態例の構造を示す平面図と、その縦断面図である。
【
図2】本発明に係るパウチの一実施形態例で、そのバンドに指や手を挿入し、バンドを広げて、そのベース層等を反らした状態を示す平面図と、その縦断面図である。
【
図3】本発明に係るパウチの一実施形態例で、そのベース層等を反らす事によって、保護層の脆弱線を破断させて開封し、薬剤保持層を露出した状態を示す平面図と、その縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のパウチの実施形態例について、図で説明する。
図1-1は、本発明に係るパウチ1の一実施形態例の構造を示す平面図である。
パウチ1は、上面に保護層2で覆われている。保護層2は内巻きカールする積層フィルムから構成され、かつ、覆う薬剤保持層表面の主要面積を展開可能な脆弱線21を有している。また、その周縁溶着部22は、下方のベース層に溶着している。
【0010】
図1-2は、発明に係るパウチ1の一実施形態例の構造を示す縦断面図である。
パウチ1は、上から順に、保護層2、薬剤保持層3、ベース層4、バンド5から構成されている。
薬剤保持層3は、薬剤を含浸させた不織布から構成され、ベース層4に密着可能としている。
また、ベース層4は、薬剤保持層3に密着して、面を保持可能とする剛性と、患部表面形状に密着可能な柔軟性と、を併せ持つ層である。
さらに、バンド5は、少なくともベース層4の左右両端に繋止している。バンド5とベース層4との間に、指や手を挿入可能とし、ベース層4を外側に反らすことができるものとなっている。
【0011】
図2は、本発明に係るパウチ1の一実施形態例で、そのバンド5とベース層4との間に指や手を挿入することによって、バンド5を縦方向に広げた状態のパウチ1で、
図2-1がその平面図、
図2-2が、その縦断面図である。
バンド5を縦方向に広げると、バンド5を取り付けた取り付け部両端の距離は縮まり、ベース層4を大きく反らすことができる。
ベース層4を反らすと、その外側の保護層2は、径がより大きく反らされるので、反ることによって、保護層2は、ベース層4よりも、さらに大きく両側に強く引っ張られる。
【0012】
図3は本発明に係るパウチ1の一実施形態例で、そのベース層等を反らす事によって、保護層2の脆弱線21を破断させて開封し、薬剤保持層3を露出した状態を示す図で、図
3-1がその平面図、
図3-2がその縦断面図である。
ベース層4を反らすことによって、その外側の保護層2が大きく反らされるので、保護層2が大きく両側に強く引っ張られ、左右に脆弱線21の両側に引き裂く力が加わり、破断する。
保護層2は、内巻きカールする積層フィルムから構成されているので、破断した保護層2は、内巻きにカールする。
破断した保護層2がカールすることによって、
図3-1に示すように、保護層2の下の薬剤保持層が露出して来る。
【0013】
中央が破断した保護層2が内巻きカールすると、
図3-2に示すように、保護膜2が内側に丸まって、両端に収まるように開封し、
図3-1に示すように、薬剤保持層3の主要面積が露出する。しかも、保護層2は内側カールしているので、外側に薬剤が付着していないので、周囲に薬剤が付着してしまう恐れがない。
薬剤保持層3が露出したパウチ1は、バンド5を利用して、露出した状態で、患部に当てるなり、貼るなり、薬剤を塗るなりして、使用することができる。
この時、パウチの保護層側全体を患部に当てて塗布することになるので、薬剤保持層3の主要面積が露出可能とすることが望ましい。
【0014】
本発明に使用される保護層2は、該薬剤保持層3を包み込んでベース層4と融着可能な易剥離フィルムから形成されている。
この為、保護層としてはベース層4に融着可能であると共に、容易に剥離可能な樹脂層を基材層に積層したフィルムが好ましい。
特に、保護層2は、脆弱線で破断させた時には、内巻きするようにする為に、層構成にテンションを保持しやすい層構成とする。
例えば、外層に2軸延伸フィルム、内側に無延伸フィルムを配置するような層を構成した積層フィルムである。
【0015】
薬剤保持層3は、薬剤を含んで塗布可能な、不織布等から形成されている。
薬剤を充分に含浸した状態を保持可能にする為、充分な厚みや密度を有している素材を使用する。
この薬剤保持層3は、ベース層4に溶着させる。この、ベース層4に溶着させることによって、単独で屈曲したりせずに塗布することができる。
そして、
図1-1に示すように、保護層2の外形は、ベース層4よりも、外形は小さくない大きさとする。
【0016】
バンド5は、ベース層4に融着すると共に、ベース層4とバンド5との間に指や手を挿入して塗布作業を行い易くする役目を負っている。この為、高い柔軟性を有する素材が良く、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマーなどが使用できる。
【0017】
保護層に使用するフィルムとしては、ベース層と融着可能で、かつ、内巻きカールするフィルムであれば、どのようなフィルムであっても良い。
この為、最外側に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリアミドフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの二軸延伸フィルムを使用し、最内層に無延伸のポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムなどの無延伸フィルムを使用したフィルムが良い。
また、中間層に、アルムニウム箔などの金属箔などを加えて、バリア性を加えた多層フィルムであっても良い。
無延伸フィルムとしては、上記の他に、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリ
レート共重合体、などの無延伸フィルムも使用できる。
また、バリア性を付与する方法として、上記金属箔の他に、酸化ケイ素などの酸化金属蒸着層を設けた二軸延伸フィルムを使用しても良い。
【0018】
薬剤保持層3は、
図1に示すように、ベース層4の周縁の外形よりも充分に小さな大きさのシートからなり、薬剤を含んで塗布可能な、不織布が使用できる。
【0019】
不織布の素材は、天然繊維、人造繊維及びこれらの混合物から選択された一つ以上を含むことができる。原糸の素材は、天然繊維、人造繊維及びこれらの混合物から選択された一つ以上を含むことができる。
【0020】
天然繊維は、綿花、カポック綿、コイヤー、マニラ麻、サイザル麻、亜麻、苧麻、大麻、ケナフ、アバカ、サイザル麻、カポック、カラムシ、黄麻、麻、羊毛、山羊毛、カシミア、ラクダ毛、ラクダの毛、アルパカ、ウール繊維、家蚕絹、野蚕絹、石綿、セルロース及びこれらの混合物よりなる群から選択された一つ以上で構成される繊維である。
【0021】
また、人造繊維は、ポリノジックレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、アセテート、トリ酢酸、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリビニリデン系繊維、ポリテトラフルオロエチレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、カゼイン繊維、アルギン酸繊維、セルロース系繊維、ゴム繊維、ナイロン、SBR(Styrene butadiene rubber)、NR(natural Rubber)及びこれらの混合物よりなる群から選択された一つ以上である。この薬剤保持層に用いる繊維の密度は0.01~5g/cm3が良い。すなわち、0.01g/cm3未満では、充分に薬剤を含浸した状態で保持することができない。また、5g/cm3以上の場合、充分に薬剤を浸透させて含浸できない、などの問題があることから、保持層に用いる繊維の密度は0.01~5g/cm3とする。特に、繊維の密度を0.2~0.4g/cm3、とすることが好ましい。
【0022】
これらは、表面に繊維面が露出しているので、ベースシートに接した状態で加熱すると、該繊維の表面や多孔質面にベースシートの熱可塑性樹脂に埋まり、溶着可能とすることができる。
【0023】
ベース層3に使用するフィルムとしては、収納する薬剤の劣化を保護するバリア性のフィルムであって、保護層や薬剤保持層、バンドに溶着可能な内面、外面を有するフィルムである。
例えば、無延伸ポリプロピレン/無水フタル酸変性高密度ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物/無水フタル酸変性ポリエチレン/高密度ポリエチレンの構成で共押し出ししたシートなどが考えられる。
【0024】
以下、本発明の具体的実施例の構成について説明する。
第一の実施構成例1は、保護層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/アルミニウム箔(厚み9μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み30μm)。
薬剤保持層は、ポリプロピレン製不織布(坪量50g/m2)。
ベース層は、無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)。
バンドは、無延伸ポリプロピレン(厚み100μm)である。
【0025】
また、実施構成例2は、保護層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/アルミニウム箔(厚み9μm)/無延伸ポリエチレン(厚み50μm)。
薬剤保持層は、ポリエチレン製不織布(坪量60g/m2)。
ベース層は、無延伸ポリエチレン(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸ポリエチレン(厚み40μm)。
バンドは、無延伸ポリプロピレン(厚み100μm)である。
【0026】
次の実施構成例3は、保護層として、酸化ケイ素を蒸着した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み30μm)。
薬剤保持層は、ポリプロピレン製不織布(坪量70g/m2)。
ベース層は、無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)。
バンドは、無延伸ポリプロピレン(厚み100μm)である。
【0027】
さらに、実施構成例4は、保護層として、酸化ケイ素を蒸着した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/無延伸ポリエチレン(厚み30μm)。
薬剤保持層は、ポリエチレン製不織布(坪量60g/m2)。
ベース層は、無延伸エチレン(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸ポリエチレン(厚み40μm)。
バンドは、無延伸ポリプロピレン(厚み100μm)である。
【0028】
上記のようなパウチの構成が考えられる。実施構成例1を基本に、保護層には、レーザー光を対角線状に走査することによって、容易に破断して開封可能な脆弱線を加工して、実施例、比較例を作成した。その脆弱線で破断させ、開封する開口面積や構成するフィルムの伸び性の差によって、開封性や薬剤塗布性などを評価した。
【0029】
保護層のカールは、フィルムを作成する時、最内層の無延伸フィルムを押し出すのに、エクストルーダーラミネーション機のテンションを調整して、カールしやすいフィルムとした。フィルム作成後、A4サイズの大きさに切断し、その中央に、2本の直交する10cmの切れ込みをカッターで入れ、一回転以上カールするか、確認した。そして、それを、縦75mm、横幅100mmに切って、保護層として使用した。
【実施例0030】
<実施例1>
パウチの構成は、実施構成例1を使用した。
すなわち、保護層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/アルミニウム箔(厚み9μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み30μm)の構成とした。
薬剤保持層は、ポリプロピレン製不織布(坪量50g/m2)で、縦65mm、横90mmの大きさに切って使用した。薬剤保持層を保護層に融着する前に、薬剤保持層に20gの薬剤を含浸させた。
ベース層は、無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)の構成とし、縦75mm、横幅100mmに切って、ベース層として使用した。
バンドは、無延伸ポリプロピレン(厚み100μm)とし、幅75mmで長さ150mm
とし、両端5mmを周縁溶着部としてベース層に融着した。
このことによって、伸び性は、保護層<ベース層≦バンドとなる。
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部ギリギリに、四隅を対角線状に結ぶ線を加工した。この為、脆弱線で破断する時に薬剤保持層の全面積を開封可能とし、塗布可能面積比は、100パーセントとなるパウチを作成した。
【0031】
<実施例2>
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部の四隅を対角線状に結ぶ線に対して、94.9パーセントの長さに加工し、破断時に薬剤保持層の全面積の90パーセントを開封可能とするパウチを作成した。
その他は、実施例1と同じとした。
【0032】
<実施例3>
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部の四隅を対角線状に結ぶ線に対して、89.4パーセントの長さに加工し、破断時に薬剤保持層の全面積の80パーセントを開封可能とするパウチを作成した。
その他は、実施例1と同じとした。
【0033】
<実施例4>
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部の四隅を対角線状に結ぶ線に対して、83.7パーセントの長さに加工し、破断時に薬剤保持層の全面積の70パーセントを開封可能とするパウチを作成した。
その他は、実施例1と同じとした。
【0034】
<実施例5>
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部の四隅を対角線状に結ぶ線に対して、77.5パーセントの長さに加工し、破断時に薬剤保持層の全面積の60パーセントを開封可能とするパウチを作成した。
その他は、実施例1と同じとした。
【0035】
<比較例1>
パウチの構成は、保護層として、無延伸ポリプロピレン(厚み30μm)/アルミニウム箔(厚み9μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み30μm)の構成とし、その他は、実施例1と同じとした。
このことによって、伸び性は、保護層>ベース層≦バンドとなる。
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部ギリギリに、四隅を対角線状に結ぶ線を加工し、比較例1のパウチを作成した。
【0036】
<比較例2>
パウチの構成は、保護層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み30μm)/アルミニウム箔(厚み9μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み30μm)の構成とした。
薬剤保持層は、ポリプロピレン製不織布(坪量50g/m2)で、縦65mm、横90m
mの大きさに切って使用した。
ベース層は、無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸6-ナイロン(厚み12μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(厚み12μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み40μm)の構成とし、縦75mm、横幅100mmに切って、ベース層として使用した。
バンドは、無延伸ポリプロピレン(厚み100μm)とし、幅75mmで長さ150mmとし、両端5mmをベース層に融着した。
このことによって、伸び性は、保護層≦バンド<ベース層となる。
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部ギリギリに、四隅を対角線状に結ぶ線を加工した。この為、脆弱線で破断する時に薬剤保持層の全面積を開封可能とし、塗布可能面積比は、100パーセントとなるパウチを作成した。
【0037】
<比較例3>
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部の四隅を対角線状に結ぶ線に対して、70.7パーセントの長さに加工し、破断時に薬剤保持層の全面積の50パーセントを開封可能とするパウチを作成した。
その他は、実施例1と同じとした。
【0038】
<比較例4>
保護層の表面に加工する脆弱線は、レーザー加工機で波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で走査し、保護層とベース層との周縁の融着部の四隅を対角線状に結ぶ線に対して、63.2パーセントの長さに加工し、破断時に薬剤保持層の全面積の40パーセントを開封可能とするパウチを作成した。
その他は、実施例1と同じとした。
【0039】
<比較例5>
バンドを無くした。その他は、実施例1と同じとした。
【0040】
<比較例6>
パウチの構成は、保護層として、無延伸ポリプロピレン(厚み20μm)/アルミニウム箔(厚み9μm)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み12μm)の構成とした。そして、フィルムを作成する時、最外層の無延伸ポリプロピレンを押し出したり、最内層の無延伸ポリプロピレンを押し出したりするのに、エクストルーダーラミネーション機のテンションを調整して、外側にカールしやすいフィルムとした。
その他は、実施例2と同じとした。
【0041】
<比較例7>
バンドを無くし、薬剤保持層をベース層に溶着せず、保護層とベース層との間に入れて密封した。その他は、実施例1と同じとした。
【0042】
<評価方法>
実施例、比較例各々のパウチを40個ずつ作成した。
【0043】
<塗布可能面積比>
脆弱線破断時に開封して塗布可能になる面積の、不織布縦65mm横90mmの面積に対する比率の塗布可能面積比を算出した。
【0044】
<開封性>
パウチを左右に引っ張って容易に開封できるか、5個ずつパネラーが良否を評価した。
【0045】
<薬剤塗布性>
上記パウチを、30名のパネラーに患部塗布を想定して、塗布の使用感の良否を判断してもらい、パネラー30名全員が良と判断した場合を◎、パネラー25名以上が良と判断した場合を〇、25名未満の場合を×とした。
【0046】
<パウチ評価試験結果>
(塗布可能面積比)
実施例1は100パーセント、実施例2は90パーセント、実施例3は80パーセント、実施例4は70パーセント、実施例5は60パーセントであった。
比較例1の保護層は引っ張っても伸びて破断しなかった。比較例2の保護層は引っ張っても伸びないが強度が高くて破断しなかった。
比較例3は50パーセント、比較例4は40パーセント、比較例5は80パーセント、比較例6は90パーセントであった。比較例7はパウチの中に薬剤保持層が挿入しているだけなので、引っ張る必要がなかった。
【0047】
<開封性>
実施例1~5、比較例3~6は、容易に開封できた。しかし、比較例1、比較例2は、破断しなかった。
比較例7は、パウチの端部を切り開き、ピンセットで薬剤保持層を取り出す必要があった。
【0048】
<薬剤塗布性>
実施例1~3は、パネラー全員が良と判断し◎であった。
実施例4、5は、26名が良と判断し〇であった。
しかし、比較例1、2は開封できないので、×であった。
比較例3、4は、薬剤保持層を覆う保護層が充分に開かずに邪魔になって、塗布しにくい状態で×であった。
比較例5は、バンドがないのでパウチを持ちにくく、開封して薬剤の付いた薬剤保持層面に手を接触してしまいやすく×であった。
比較例6は、保護層が外巻きにカールして、塗布面近傍全体に薬剤が付着し、手に接触しやすく×であった。
比較例7は、パウチの端部を切り開き、ピンセットを使用しないと、薬剤を手に付着させないで塗布できず×であった。
【0049】
以上の結果から、塗布可能面積比は60パーセント以上が良い。
各層の伸び性は、保護層<ベース層≦バンドの順になる組み合わせが良い。
保護層の巻き方向は内巻きが良い。
バンドは必要である。
ベース層に薬剤保持層が溶着しているパウチが良い、という結果になった。
上記結果を、表1に記した。
【0050】
【0051】
本発明のパウチは、以上のようなもので、ピンセットなどの道具を使用せず、バンドを使用し、保護層の両端を広げるだけで、保護層が破断してカールし、薬剤保持層が露出するので、薬剤保持層に触らないで、開封することができる。
しかも、ベース層とバンドとの間に指や手を挿入し、露出した薬剤保持層表面を患部に当てることが可能となるので、全く薬剤に接触することなく、安定して患部に薬剤を塗布することが可能であるなど、本発明のパウチは、メリットが大きい。