(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170160
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】伝送装置、伝送システムおよび伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04L 45/00 20220101AFI20221102BHJP
【FI】
H04L12/761
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076090
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅
(72)【発明者】
【氏名】沼田 優
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA13
5K030HB02
5K030LB05
5K030LD07
(57)【要約】
【課題】帯域輻輳の発生を抑制する。
【解決手段】制御部1a、2aは、伝送装置1、2間で通信を行うためのアドレス情報ad1、ad2を互いに送信し、アドレス情報ad1、ad2を共有する。制御部1aは、パスp0の生成トリガを検出すると、記憶部1b内のポリシ情報pcにもとづいて、パスp0を中継網N1に生成してストリーム配信を行う際の通信ポリシが満たされるか否かを判定する。制御部1aは、ポリシ情報pcに登録されている通信ポリシが満たされる場合は、その旨の制御信号を伝送装置2に送信する。制御部2aは、制御信号を受信すると、記憶部2b内のポリシ情報pcにもとづいて、通信ポリシが満たされるか否かを判定する。伝送装置1、2双方においてポリシ情報pcが満たされる場合、制御部1a、2aは、パス生成の制御を行って、中継網N1にパスp0を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継網を介して対向装置と通信を行うためのアドレス情報と、前記中継網においてストリーム配信を行う際の通信ポリシが設定されたポリシ情報とを保存する記憶部と、
前記対向装置と共に前記アドレス情報を保有し、前記通信を行うためのパスを生成するための生成トリガを検出した場合に、前記中継網に対して前記アドレス情報と前記ポリシ情報とにもとづいて前記パスを生成する制御部と、
を有する伝送装置。
【請求項2】
前記アドレス情報は、前記伝送装置の識別情報および前記伝送装置の配下のアクセス網のアドレスを含み、
前記制御部は、前記中継網に接続される伝送装置に同期して前記アドレス情報を共有する
請求項1記載の伝送装置。
【請求項3】
前記ポリシ情報は、
前記伝送装置の識別情報と、
前記伝送装置の配下のアクセス網に接続されて前記ストリーム配信が行われるマルチキャストグループの識別情報と、
前記アクセス網に接続されて前記ストリーム配信が行われる端末の識別情報と、
前記パスの生成を許可するか否かを示す許可情報と、
前記パスの接続状態を示すステータス情報と、を含む請求項1記載の伝送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第1の通信情報が含まれる前記生成トリガを検出した時、
前記第1の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第2の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が許可を示し、かつ前記ステータス情報が未接続を示す場合は、前記生成トリガを受信した前記伝送装置側で通信ポリシが満たされていることを示す制御信号を前記対向装置に送信する、
請求項3記載の伝送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第1の通信情報が含まれる前記生成トリガを検出した時、
前記第1の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第2の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が許可を示し、かつ前記ステータス情報が接続済みを示す場合は、前記生成トリガを前回受信してから所定の時間が経過したか否かを判定し、前記所定の時間が経過している場合は、前記生成トリガを受信した前記伝送装置側で通信ポリシが満たされていることを示す制御信号を送信し、前記所定の時間が経過していない場合は前記生成トリガを廃棄する、
請求項3記載の伝送装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第1の通信情報が含まれる前記生成トリガを検出した時、
前記第1の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第2の通信情報とすべて一致しない場合は、前記生成トリガを廃棄する、
請求項3記載の伝送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第1の通信情報が含まれる前記生成トリガを検出した時、
前記第1の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第2の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が不許可を示す場合は、前記生成トリガを廃棄する、
請求項3記載の伝送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第1の通信情報が含まれる前記生成トリガを検出した時、
前記第1の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報、前記伝送装置の識別情報および前記端末の識別情報を有する第2の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が許可を示し、かつ前記ステータス情報が前記パスの遮断中を示す場合は、前記生成トリガ(IGMPv3)を廃棄する、
請求項3記載の伝送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第3の通信情報が含まれる前記制御信号を受信した時、
前記第3の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第4の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が許可を示し、かつ前記ステータス情報が未接続を示す場合は、前記パスを生成する、
請求項4記載の伝送装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第3の通信情報が含まれる前記制御信号を受信した時、
前記第3の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第4の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が許可を示し、かつ前記ステータス情報が接続済みを示す場合は、前記端末に対する前記パスが生成されているか否かを判定し、前記端末に対して前記パスが生成されていない場合は前記パスを生成し、前記端末に対して前記パスが生成されている場合は前記パスの活性監視を行う、
請求項4記載の伝送装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第3の通信情報が含まれる前記制御信号を受信した時、
前記第3の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第4の通信情報とすべて一致しない場合は、前記制御信号を廃棄する、
請求項4記載の伝送装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第3の通信情報が含まれる前記制御信号を受信した時、
前記第3の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第4の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が不許可を示す場合は、前記制御信号を廃棄する、
請求項4記載の伝送装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第3の通信情報が含まれる前記制御信号を受信した時、
前記第3の通信情報が、前記ポリシ情報に設定された前記マルチキャストグループの識別情報および前記伝送装置の識別情報を有する第4の通信情報とすべて一致し、かつ前記許可情報が許可を示し、かつ前記ステータス情報が中継していないことを示す場合は、前記制御信号を廃棄する、
請求項4記載の伝送装置
【請求項14】
前記制御部は、前記対向装置と同期する時刻を示す装置時間が所定の時間に達した場合、前記生成トリガの検出前に前記パスを前記中継網に事前に生成する、
請求項1記載の伝送装置。
【請求項15】
前記ポリシ情報は、前記中継網に生成される前記パスの経路情報を含み、前記制御部は、ストリーム配信中に障害が発生した前記パスを検出した場合、前記経路情報に前記障害が発生した前記パス以外の迂回パスの情報がある場合は前記障害が発生した前記パスを遮断して前記迂回パスを前記中継網に生成する、
請求項1記載の伝送装置。
【請求項16】
中継網を介して第2の伝送装置と通信を行うためのアドレス情報と、前記中継網においてストリーム配信を行う際の通信ポリシが設定されたポリシ情報とを保存する第1の記憶部と、前記第2の伝送装置と共に前記アドレス情報を保有し、前記通信を行うためのパスを生成するための生成トリガを検出した場合に、前記中継網に対して前記アドレス情報と前記ポリシ情報とにもとづいて前記パスを生成する第1の制御部と、を備える第1の伝送装置と、
前記アドレス情報と、前記ポリシ情報とを保存する第2の記憶部と、前記第1の伝送装置と共に前記アドレス情報を保有し、前記中継網に対して前記アドレス情報と前記ポリシ情報とにもとづいて前記パスを生成する第2の制御部とを備える前記第2の伝送装置と、
を有する伝送システム。
【請求項17】
伝送装置が、
中継網を介して対向装置と通信を行うためのアドレス情報と、前記中継網においてストリーム配信を行う際の通信ポリシが設定されたポリシ情報とを記憶部に保存し、
前記対向装置と共に前記アドレス情報を保有し、
前記通信を行うためのパスを生成するための生成トリガを検出した場合に、前記中継網に対して前記アドレス情報と前記ポリシ情報とにもとづいて前記パスを生成する、
伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置、伝送システムおよび伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放送関連のメディアノードを繋ぐネットワークのIP(Internet Protocol)化が進んでおり、IPマルチキャストやIGMP(Internet Group Management Protocol)等の技術のメディア配信への利用が進展している。
【0003】
IPマルチキャストは、IPネットワーク上で複数のノードにデータを同時送信するための技術である。また、IGMPは、ユーザがルータに対して、マルチキャストグループへの参加(join)、離脱(leave)等を通知するためのプロトコルである。
【0004】
これらの技術によって、例えば、カメラ/マイク音源系の1台の送信ノードから複数の受信ノードへの1対多によるIPマルチキャストの配信サービスが実現される。
関連技術としては、例えば、マルチキャストツリーのネットワーク構成上のコネクション情報を生成し、コネクション情報にもとづいて予約時刻に対応するパスの設定、削除を行う技術が提案されている。また、送信ノードと受信ノードが存在するIPマルチキャストグループに対し、IPマルチキャストの経路を計算し、計算した経路に沿ってIPマルチキャストを転送させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-049986号公報
【特許文献2】国際公開第2014/199924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IPマルチキャストが伝送されるネットワークでは、PIM(Protocol-Independent Multicast)に代表されるマルチキャストルーティングプロトコルが動作する。しかし、従前では、例えば、IGMPの参加/離脱が頻発したような場合、ルーティングプロトコルの配信パスを計算する負荷によるルータの輻輳や、IPマルチキャストの中継リンクが変動して帯域の輻輳が生じてしまうという問題がある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、帯域の輻輳が発生することを抑制した伝送装置、伝送システムおよび伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、伝送装置が提供される。伝送装置は、中継網を介して対向装置と通信を行うためのアドレス情報と、中継網においてストリーム配信を行う際の通信ポリシが設定されたポリシ情報とを保存する記憶部と、対向装置と共にアドレス情報を保有し、通信を行うためのパスを生成するための生成トリガを検出した場合に、中継網に対してアドレス情報とポリシ情報とにもとづいてパスを生成する制御部と、を有する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、上記伝送装置と同様の制御を実行する伝送システムが提供される。
さらに、上記課題を解決するために、上記伝送装置と同様の制御を実行する伝送方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1側面によれば、帯域輻輳の発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態の伝送システムの一例を説明するための図である。
【
図2】第2の実施の形態の伝送システムの一例を示す図である。
【
図3】伝送システムにおけるトラフィックの流れの一例を示す図である。
【
図4】伝送装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図5】伝送装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】アドレス情報テーブルの一例を示す図である。
【
図7】アドレス情報テーブルの一例を示す図である。
【
図8】アドレス情報テーブルの一例を示す図である。
【
図9】マルチキャスト情報テーブルの一例を示す図である。
【
図10】ポリシ情報テーブルの一例を示す図である。
【
図11】IGMPトリガが発生してIPマルチキャストが行われる動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図12】ポリシ制御の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】ポリシ制御の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】事前パス生成の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図15】障害発生時のパス制御の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図16】障害メッセージを受信してパスの遮断または再確立が行われるまでの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態の伝送システムの一例を説明するための図である。伝送システム1-1は、伝送装置1、2を備え、伝送装置1、2は中継網N1を介して接続される。伝送装置1は、制御部1a(第1の制御部)および記憶部1b(第1の記憶部)を備え、伝送装置2は、制御部2a(第2の制御部)および記憶部2b(第2の記憶部)を備える。
【0013】
伝送装置1において、記憶部1bは、中継網N1を介して通信するためのアドレス情報ad1、ad2と、中継網N1においてストリーム配信を行う際の通信ポリシ(policy)が設定されたポリシ情報pcと、を保存する。
【0014】
制御部1aは、伝送装置2と共にアドレス情報ad1、ad2を保有し、パスp0の生成トリガを検出した場合に、中継網N1に対してアドレス情報ad1、ad2とポリシ情報pcとにもとづいてパスp0を生成して、ストリーム配信の中継パスを制御する。
【0015】
伝送装置2において、記憶部2bは、アドレス情報ad1、ad2と、ポリシ情報pcと、を保存する。制御部2aは、伝送装置1と共にアドレス情報ad1、ad2を保有し、中継網N1に対してアドレス情報ad1、ad2とポリシ情報pcとにもとづいてパスp0を生成して、ストリーム配信の中継を制御する。なお、制御部1a、2aの機能はそれぞれ、伝送装置1、2が備える図示しないプロセッサが、所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0016】
図1の例を用いて動作について説明する。
〔ステップS1〕制御部1aは、アドレス情報ad1を伝送装置2に送信し、制御部2aは、アドレス情報ad2を伝送装置1に送信して、伝送装置1、2間で通信を行うためのアドレス情報ad1、ad2を共有する。
【0017】
〔ステップS2〕制御部1aは、パスp0の生成トリガを検出する。
〔ステップS3〕制御部1aは、記憶部1b内のポリシ情報pcにもとづいて、パスp0を中継網N1に生成してストリーム配信を行う際の通信ポリシが満たされるか否かを判定する。
【0018】
〔ステップS4〕制御部1aは、ポリシ情報pcに登録されている通信ポリシが満たされる場合は、その旨の制御信号を伝送装置2に送信する。
〔ステップS5〕制御部2aは、制御信号を受信すると、記憶部2b内のポリシ情報pcにもとづいて、パスp0を中継網N1に生成してストリーム配信を行う際の通信ポリシが満たされるか否かを判定する。
【0019】
〔ステップS6〕伝送装置1、2双方においてポリシ情報pcに登録されている通信ポリシが満たされる場合、制御部1a、2aは、中継網N1に対してパスp0を生成する。
このように、伝送システム1-1では、伝送装置間でアドレス情報を共有した後にパスの生成トリガを検出した場合、伝送装置間の中継網に対してポリシ情報にもとづくパスを生成してストリーム配信の中継を制御する。
【0020】
これにより、ストリームの配信元および配信先の伝送装置において、通信ポリシにもとづいたパスが逐次生成されることになるので、ストリーム配信の参加/離脱が頻発したような場合であっても、予期しない帯域の変動が生じることがなく帯域輻輳の発生を抑制することができる。
【0021】
[第2の実施の形態]
次に
図1に示した伝送システム1-1の機能を、IPマルチキャストによるストリーム配信に適用した場合の第2の実施の形態について以降詳しく説明する。なお、以降では、パスのことをLSP(Label Switched Path)と呼ぶ場合がある。また、以降では、P2MP RSVP-TE(Point to Multi Point Resource Reservation Protocol-Traffic Engineering)によるLSPを使用して説明するが、他にもP2P RSVP-TEのLSPなど、P2Pパスを複数パス使用する(送信側の伝送装置でマルチキャストトラヒックを複製する)方法でも実施が可能である。
【0022】
また、以降のIGMPv3およびIPv4のグループIDと送信元IDを使うIPv4マルチキャストへの適用形態は、MLDv2(Multicast Listener Discovery version 2、ICMPv6の一種)およびIPv6のグループIDと送信元IDに置き換えることで、IPv6マルチキャストに対して実施することもできる。
【0023】
<システム構成>
図2は第2の実施の形態の伝送システムの一例を示す図である。伝送システム1-2は、伝送装置10-1、10-2を備える。伝送装置10-2は送信側の伝送装置であり、伝送装置10-1は受信側の伝送装置である。なお、伝送装置10-1、10-2は、送信側および受信側の両機能を有する。
【0024】
伝送装置10-2のユーザ網(装置配下のアクセス網に相当)側には、送受信局3が位置し、送受信局3内のノード31、32が伝送装置10-2に接続されている。ノード31、32は、例えば、撮影装置(カメラ)や集音装置(マイク)である。
【0025】
伝送装置10-1のユーザ網側には、送受信局4が位置し、送受信局4内の端末(監視モニタ等)41、42が接続されている。また、伝送装置10-1、10-2の中継網側には、MPLS(Multi-Protocol Label Switching)/IP網n1が接続されている。
【0026】
伝送装置10-1、10-2は、
図1に示した伝送装置1、2の機能をそれぞれ有する。また、伝送装置10-1、10-2は、P2MP RSVP-TEのヘッドエンド機能(映像・音声・データ等を送出・終端する機能)およびアクセスされたトラヒックをポリシ情報で識別する機能を有する。
【0027】
なお、RSVP-TEは、リソースを予約してパス設定を行うためのシグナリングプロトコルであり、RSVPにトラフィックエンジニアリングの要素を取り入れたRSVPの拡張プロトコルである。
【0028】
また、伝送装置10-1、10-2は、任意の伝送装置にP2MP LSPのマルチキャストパスを確立する機能を有する。さらに、伝送装置10-1は、送受信局4との間のIGMPv3の信号(生成トリガ)を解析して、送受信局4内の端末(以下、送受信局の端末をユーザ端末と呼ぶ場合がある)の存在を監視し、ユーザ端末の要求する配信元に対してIGMPv3の通知にもとづく制御信号を出力する機能を有する。
【0029】
なお、
図2中のノード31、32の{Sa,Ga}の表記において、Saは、当該ノードのID(送信元ID)がSaであることを意味する。また、Gaは、マルチキャスト配信元の当該ノードが属するマルチキャストグループIDがGaであることを意味する。
【0030】
図3は伝送システムにおけるトラフィックの流れの一例を示す図である。
〔ステップS11〕伝送装置10-1は、ユーザ端末側から送信されたIGMPv3を解析し、ユーザ端末で受信したい情報を送信するノードの送信元IDおよびマルチキャストグループIDを検出する。そして、伝送装置10-1は、検出したノードから送信された情報を受信するLSPを確立するための要求を伝送装置10-2に送信する。
【0031】
〔ステップS12〕伝送装置10-2は、UNI(User Network Interface)#1aにおいて、ノード{S1,G1}の送信元IDおよびマルチキャストグループIDと、ノード{S1,G1}から出力されたサービス情報(主信号)とをマッピングしてマルチキャスト情報を生成する。
【0032】
このマルチキャスト情報は、カプセリングされてNNI(Network Node Interface)#2からP2MP LSP5内のトンネル(例えば、S2L(Source to Leaf)サブLSP5a)を通じて伝送装置10-1に向けて送信される。
【0033】
〔ステップS13〕伝送装置10-2は、UNI#1bにおいて、ノード{S2,G2}の送信元IDおよびマルチキャストグループIDと、ノード{S2,G2}から出力されたサービス情報とをマッピングしてマルチキャスト情報を生成する。このマルチキャスト情報は、カプセリングされてNNI#2からP2MP LSP5内のトンネル(例えば、S2LサブLSP5b)を通じて伝送装置10-1に向けて送信される。
【0034】
〔ステップS14〕伝送装置10-1のNNI#3には、S2LサブLSP5aが接続されており、S2LサブLSP5aを通じて送信された情報は、UNI#4aを介して該当のユーザ端末に送信される。
【0035】
〔ステップS15〕伝送装置10-1のNNI#3には、S2LサブLSP5bが接続されており、S2LサブLSP5bを通じて送信された情報は、UNI#4bを介して該当のユーザ端末に送信される。
【0036】
<機能ブロック>
図4は伝送装置の機能ブロックの一例を示す図である。なお、以降では、伝送装置10-1、10-2を総称する場合は、伝送装置10と呼ぶ場合がある。伝送装置10は、制御部11、記憶部12および通信部13を備える。
【0037】
なお、
図4に示す符号中の“a”は、UNIブロック側の制御を行う機能ブロックを示し、符号中の“b”は、NNIブロック側の制御を行う機能ブロックを示す。また、記憶部12は、UNIブロックの制御およびNNIブロックの制御に共通して用いられる。
【0038】
制御部11は、UNIブロック側の制御を行う機能ブロックとして、受信部11a1、送信部11a2、IGMP/ICMP(Internet Control Message Protocol)処理部11a3、ポリシ管理部11a4および時間管理部11a5を備える。
【0039】
また、制御部11は、NNIブロック側の制御を行う機能ブロックとして、受信部11b1、送信部11b2、RSVP処理部11b3、ポリシ管理部11b4、時間管理部11b5およびパス管理部11b6を備える。
【0040】
さらに、通信部13は、UNIブロック側の制御を行う機能ブロックとして、通信IF(interface)部13a1、分離/多重部13a2およびフィルタ部13a3を備える。また、通信部13は、NNIブロック側の制御を行う機能ブロックとして、通信IF部13b1、分離/多重部13b2およびMPLSカプセル/デカプセル部13b3を備える。さらに、通信部13は、UNIブロックとNNIブロック間のスイッチングを行うスイッチ部swを備える。
【0041】
各機能ブロックの動作について説明する。通信IF部13a1は、ユーザ網ne1に接続され、UNI(送受信局側)を介して送受信局との通信を行うためのインタフェースである。分離/多重部13a2は、UNI(送受信局側)からの制御信号(IGMP, ICMPv6)とIPマルチキャスト等の主信号とを分離する。また、分離/多重部13a2は、UNIブロックからユーザ網ne1に出力される制御信号と、NNIブロックから入力された主信号とを多重してUNI方向に出力する。
【0042】
フィルタ部13a3は、通信ポリシ(以下、単にポリシと呼ぶ)にしたがい、UNIから受信したIPマルチキャストのストリームに対して、中継する場合はNNIブロックに透過転送し、中継せずに遮断する場合は廃棄を行う。
【0043】
受信部11a1は、分離/多重部13a2から分離されたUNIからの制御信号を受付け、IGMP/ICMP処理部11a3へ出力する。送信部11a2は、IGMP/ICMP処理部11a3からUNI方向へのIGMP/ICMPの送信を受付け、分離/多重部13a2に送る。
【0044】
IGMP/ICMP処理部11a3は、IGMPv3のフレーム処理およびICMPv6のフレーム処理(RA(Router Advertise)処理)を行う。
ポリシ管理部11a4は、ポリシ情報を管理し、後述の
図12のポリシ制御を実行する。また、ポリシ管理部11a4は、ポリシ管理部11b4と通信を行う。
【0045】
時間管理部11a5は、装置時間(例えば、NTP(Network Time Protocol)やPTP(Precision Time Protocol)を用いて装置が同期している時刻)を保持し、ポリシ管理部11a4に時間情報を与える。スイッチ部swは、UNIブロックからNNIブロックへ、またはNNIブロックからUNIブロックへのトラヒックの中継を行う。
【0046】
通信IF部13b1は、キャリア中継網ne2に接続し、中継網側とのNNI通信インタフェースを行う。分離/多重部13b2は、NNI(中継網)からの制御信号(RSVP)と、主信号(MPLS)とを分離し、NNIブロックから送信される制御信号をUNIブロックから入力された主信号を多重してNNI方向に出力する。
【0047】
MPLSカプセル/デカプセル部13b3は、NNI方向から入力するMPLSヘッダの除去(デカプセル化)、NNI方向へ出力するMPLSヘッダの付与(カプセル化)を行う。受信部11b1は、分離/多重部13b2から分離されたNNIからの制御信号を受付け、RSVP処理部11b3へ渡す。
【0048】
送信部11b2は、RSVP処理部11b3からNNI方向へのRSVPの送信を受付け、分離/多重部13b2に送る。RSVP処理部11b3は、P2MP RSVP-TEのフレーム処理を行う。
ポリシ管理部11b4は、ポリシ情報を管理し、後述の
図13のポリシ制御および後述の
図16の障害発生時のパス制御を実行する。また、ポリシ管理部11b4は、UNIブロックのポリシ管理部11a4からの要求を中継し、パス管理部11b6に伝達する。
【0049】
時間管理部11b5は、装置時間を保持してポリシ管理部11b4に時間情報を与える。パス管理部11b6は、制御信号の送受信処理を行い、制御信号の受信をポリシ管理部11b4に伝える。
【0050】
また、パス管理部11b6は、ポリシ管理部11b4からの要求により、P2MP LSPの生成/削除/経路変更操作をRSVP処理部11b3に対して行う。さらに、パス管理部11b6は、LSPの正常性監視(活性監視)を行い、中継網の故障等で意図せずLSPが遮断された場合等にはLSPの回復処理を行う。なお、記憶部12は、後述の
図6から
図10に示す各テーブル情報を保存する。
【0051】
<ハードウェア構成>
図5は伝送装置のハードウェア構成の一例を示す図である。伝送装置10は、プロセッサ(コンピュータ)100によって全体制御されている。プロセッサ100は、制御部11および通信部13の一部の機能を実現する。
【0052】
プロセッサ100には、バス103を介して、メモリ101、入出力インタフェース102およびネットワークインタフェース104が接続されている。
プロセッサ100は、マルチプロセッサであってもよい。プロセッサ100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはPLD(Programmable Logic Device)である。またプロセッサ100は、CPU、FPGA、MPU、DSP、ASIC、PLDのうちの2以上の要素の組み合わせであってもよい。
【0053】
メモリ101は、記憶部12の機能を実現し、伝送装置10の主記憶装置として使用される。メモリ101には、プロセッサ100に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、メモリ101には、プロセッサ100による処理に要する各種データが格納される。
【0054】
メモリ101は、伝送装置10の補助記憶装置としても使用され、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。メモリ101は、補助記憶装置として、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)等の半導体記憶装置やHDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体を含んでもよい。
【0055】
バス103には、入出力インタフェース102およびネットワークインタフェース104が接続されてもよい。入出力インタフェース102は、キーボードやマウス等の情報入力装置を接続可能であって、情報入力装置から送られてくる信号をプロセッサ100に送信する。
【0056】
また、入出力インタフェース102は、周辺機器を接続するための通信インタフェースとしても機能する。例えば、入出力インタフェース102は、レーザ光等を利用して、光ディスクに記録されたデータの読み取りを行う光学ドライブ装置を接続することができる。光ディスクには、Blu-rayDisc(登録商標)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Recordable)/RW(Rewritable)等がある。
【0057】
さらに、入出力インタフェース102は、メモリ装置やメモリリーダライタを接続することができる。メモリ装置は、入出力インタフェース102との通信機能を搭載した記録媒体である。メモリリーダライタは、メモリカードへのデータの書き込み、またはメモリカードからのデータの読み出しを行う装置である。メモリカードは、カード型の記録媒体である。
【0058】
ネットワークインタフェース104は、通信部13の機能を実現し、ネットワークに接続してネットワークインタフェースの制御を行う。ネットワークインタフェース104は、例えば、NIC(Network Interface Card)や無線LAN(Local Area Network)カード等を使用することもできる。ネットワークインタフェース104で受信されたデータは、メモリ101やプロセッサ100に出力される。
【0059】
以上のようなハードウェア構成によって、伝送装置10の処理機能を実現することができる。例えば、伝送装置10は、プロセッサ100がそれぞれ所定のプログラムを実行することで本発明の処理を行うことができる。
【0060】
伝送装置10は、例えば、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを実行することにより、本発明の処理機能を実現する。伝送装置10に実行させる処理内容を記述したプログラムは、様々な記録媒体に記録しておくことができる。
【0061】
例えば、伝送装置10に実行させるプログラムを補助記憶装置に格納しておくことができる。プロセッサ100は、補助記憶装置内のプログラムの少なくとも一部を主記憶装置にロードし、プログラムを実行する。
【0062】
また、光ディスク、メモリ装置、メモリカード等の可搬型記録媒体に記録しておくこともできる。可搬型記録媒体に格納されたプログラムは、例えば、プロセッサ100からの制御により、補助記憶装置にインストールされた後、実行可能となる。またプロセッサ100が、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み出して実行することもできる。
【0063】
<テーブル構成>
次に
図6から
図10を用いて記憶部12に保存されるテーブル情報について説明する。
図6はアドレス情報テーブルの一例を示す図である。アドレス情報テーブルT1に登録される項目には、例えば、装置を一意に特定するためのIPアドレスであるNNIルータID(ルータID)、ネットワーク番号、IPv4ネットワークアドレス、IPv6プレフィクス、グループID、送信元ID、およびバージョン情報がある。
【0064】
なお、NNIルータIDは、ネットワーク番号を包括し、ネットワーク番号は、IPv4ネットワークアドレス、IPv6プレフィクス(prefix)、グループID、送信元IDおよびバージョン情報を包括している。グループIDに対して、送信元IDは、0以上(0は送信元IDなし)の情報を付与することができる。
【0065】
また、グループIDや送信元IDは、1つ以上を保持することができるテーブル構成としてもよい。このようなテーブル構成としては、リスト形式(グループIDや送信元IDを一覧状に並べる)や、アドレスマスク形式(グループIDや送信元IDと有効範囲を示すbitマスクやID先頭からの有効prefix長をセットにして範囲表記する)などを使うことができる。
【0066】
図7において、リスト形式のテーブル構成を有するアドレス情報テーブルT1aの例を示し、
図8において、アドレスマスク形式のテーブル構成を有するアドレス情報テーブルT1bの例を示す。
【0067】
一方、NNIルータIDは、伝送装置を特定するNNIのループバックIPアドレス(IPv4またはIPv6のアドレス)である。ネットワーク番号は、ユーザ網の識別子である。IPv4ネットワークアドレスは、伝送装置のUNI(配下IF)が属するネットワークアドレスであり、IPv4/ネットマスク長が設定される。
【0068】
IPv6プレフィクスは、配下IFが属するIPv6プレフィクスであり、IPv6プレフィクス/プレフィクス長が設定される(RA受信を契機に学習)。グループIDは、どのポリシに一致するマルチキャストグループIDであるかを示す(IPv4またはIPv6のグループID)。
【0069】
バージョン情報は、当該テーブルに登録される情報に変更が生じた場合にインクリメントされて最新状態を示すものである。なお、ネットワーク番号およびネットワーク番号で包括される各情報は、伝送装置10の配下のアクセス網(送受信局のネットワーク)のアドレス情報に対応する。
【0070】
図9はマルチキャスト情報テーブルの一例を示す図である。マルチキャスト情報テーブルT2に登録される項目には、例えば、グループID(G)、ネットワーク番号、送信元ID(S)、トンネルID、LSP ID、宛先ノード、S2LサブLSP IDおよびユーザIPアドレス(L)がある。これらの情報は中継網にパスを確立する際に使用される。
【0071】
なお、送信元ID(S)は、トンネルIDを包括し、トンネルIDは、LSP IDを包括し、LSP IDは宛先ノード、S2L IDおよびユーザIPアドレス(L)を包括している。
グループID(G)は、マルチキャストグループIDである(どのグループの情報をどのLSPで伝送するかを認識する際に使用するグループID)。ネットワーク番号は、ユーザネットワークの識別子である。送信元IDは、送信元の識別子である(IPv4またはIPv6のアドレス)。なお、1エントリは、グループID(G)+ネットワーク番号+送信元IDである。
【0072】
トンネルID、LSP IDおよびS2LサブLSP IDは、P2MP LSPの規格で規定される3階層構造のパスの各IDである。トンネルIDは、エントリ時に採番され、LSP IDおよびS2LサブLSP IDはユーザ登録時に採番される。
【0073】
宛先ノードは、LSPの宛先伝送装置のNNIのループバックIPアドレスである(IPv4アドレス)。ユーザIPアドレス(L)はユーザ端末のアドレスである(IPv4またはIPv6のアドレス)。
【0074】
図10はポリシ情報テーブルの一例を示す図である。ポリシ情報テーブルT3は、伝送装置10のUNI単位に設定される。ポリシ情報テーブルT3に登録される項目には、例えば、グループID(G)、送信元ID(S)、ユーザID(L)、permit(許可情報)、ステータスおよびオプションがある(設定値の例は省略する)。
【0075】
なお、グループIDは送信元IDを包括し、送信元IDはユーザID、permit、ステータスおよびオプションを包括している。オプションには、時間帯(時間情報)、事前パス生成および経路p1、p2が含まれる(この例では2つの経路の登録があるが、任意の数の登録が可能である)。
【0076】
グループIDは、サービス情報を要求する配信元のグループIDでありマルチキャストアドレスである。送信元IDは配信元ID(IPアドレス)である。ユーザIDは、要求元のIPアドレスである(ユーザIPアドレス(またはDon’t care))。permitは、許可/不許可を示す許可情報である。すなわち、どのグループIDのどの送信元IDに対してどのユーザIDであれがパス生成を許可するか否かが示される情報である。
【0077】
ステータスは、LSPの接続状態として、未接続、接続中、遮断中のいずれかを示す情報である。オプションのうちの時間帯は、ポリシが適用される時間帯を示す(例えば、2020年10月1日の19時00分00秒から2020年10月1日の20時30分00秒)。事前パス生成は、該時間帯に登録されている時間内で許可時間に達した場合に、事前にパスを生成するオン/オフ情報が示される。
【0078】
すなわち、事前パス生成がオンの場合は、許可時間に達したためにパスが生成中であることを示し、事前パス生成がオフの場合は、許可時間に達していないためにパスが未生成であることを示す。経路p1、p2は、LSPの経路情報であり、LSPの中継に使用するノードのリスト(各ノードのIPアドレスのリスト)が登録される。この経路情報は、例えば、パスの障害発生時の迂回パスの候補選択等に使用される。
【0079】
<IGMPトリガの発生からIPマルチキャストへの実行>
次にIGMPトリガの発生からIPマルチキャストが実行されるまでの動作について
図11から
図13を用いて説明する。
【0080】
図11はIGMPトリガが発生してIPマルチキャストが行われる動作シーケンスの一例を示す図である。
〔ステップS21〕伝送装置(送信側)10-2のオペレーション設定(例えば、マニュアルによる設定)において、UNIに対するIPアドレスの登録(UNI/IPv4のネットワークアドレス登録)が行われる。また、伝送装置10-2は、ICMPv6で広告されたIPv6アドレスのプレフィクス等の情報を受信する(RA受信による設定)。
【0081】
〔ステップS22〕伝送装置10-2は、ステップS21で行われた設定を契機にしてアドレス情報テーブルT1を生成する。アドレス情報テーブルT1が生成されることにより、ノードID(ルータID-1)と、配下のUNIセグメントとが対応付けられる。
【0082】
〔ステップS23〕伝送装置10-2と伝送装置(受信側)10-1間でテーブル同期が行われて、伝送装置10-1、10-2でアドレス情報テーブルT1の情報が共有される。
【0083】
このように、伝送装置10-1、10-2配下のアクセス網のアドレスおよび装置IDが中継網に接続されるすべての伝送装置間で同期して自律的に共有されることにより、パラメータ設定作業の効率化が図られる。なお、ステップS21からステップS23までの処理がIPマルチキャストを実行するまでの準備処理である。
【0084】
〔ステップS24〕ユーザ端末40は、マルチキャストのグループID(G1)、マルチキャスト送信元のID(送信元ID(S1))およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を含めたIGMPv3のトリガ(メッセージ)を伝送装置10-1に送信する。なお、RSVPにおいてトリガとは、LSPの生成/削除を行うメッセージを意味する。
【0085】
〔ステップS25〕伝送装置10-1は、IGMPv3のトリガ(グループへの参加)を受信すると、受信側の伝送装置としてIPマルチキャストを許可するか否かを判定するためのポリシ制御Pc1を実行する。ポリシ制御Pc1は、IGMPv3のトリガに含まれる情報がポリシ情報テーブルT3内の登録に一致するか否かの判定を行う。ポリシ制御Pc1の詳細は
図12で後述する。
【0086】
〔ステップS26〕伝送装置10-1は、ステップS25のポリシ制御Pc1でIPマルチキャストを許可すると判定した場合、制御信号を伝送装置10-2に送信する。制御信号の宛先はルータID-1であり、制御信号のペイロードには{G1,S1,L1}の情報が含まれる。なお、伝送装置10-1の同一ポート配下に、ユーザ端末40が複数存在する場合、このL1は、ユーザ端末40を収容するUNIを示す伝送装置10-1のIPアドレスとすることもできる。
【0087】
〔ステップS27〕伝送装置10-2は、制御信号を受信すると、送信側の伝送装置としてIPマルチキャストを許可するか否かを判定するためのポリシ制御Pc2を実行する。そして、伝送装置10-2は、ポリシ制御Pc2でIPマルチキャストを許可すると判定した場合、マルチキャスト情報テーブルT2を生成する。
【0088】
マルチキャスト情報テーブルT2には{G1,S1,L1}が含まれ、さらにLSPを確立するためのトンネルIDが採番されて、マルチキャスト情報テーブルT2に登録される。なお、ポリシ制御Pc2の詳細は
図13で後述する。
【0089】
〔ステップS28-1〕伝送装置10-2は、伝送装置10-1に対してP2MPのRSVPパスメッセージ(RSVP path (P2MP))を伝送装置10-1に送信してパスのラベル割り当て要求を行う。
【0090】
〔ステップS28-2〕伝送装置10-1は、RSVPパスメッセージを受信すると、RSVP予約メッセージ(RSVP Resv)を伝送装置10-2に返信して、ラベル割り当て通知を行う。
【0091】
〔ステップS29〕伝送装置10-1、10-2間でP2MP LSPが確立される。これにより、伝送装置10-2に入力された送受信局側のIPマルチキャストは、生成されたP2MP LSPを介して伝送装置10-1に伝送され、伝送装置10-1からユーザ端末40に向けてIPマルチキャストが送信される。
【0092】
なお、上述のポリシ制御Pc1、Pc2のいずれかのポリシが満たされない場合は、中継網に対してパスは設定されない。
図12はポリシ制御の動作の一例を示すフローチャートである。
図11のステップS25で行われる伝送装置10-1のポリシ制御Pc1の動作を示している。
【0093】
〔ステップS25a〕伝送装置10-1内の制御部11は、IGMPv3トリガを受信すると、IGMPv3トリガに含まれる{G1,S1,L1}にもとづいてポリシの判定を行う。
具体的には、以下のようなポリシ判定(1A)から(5A)が行われる。
【0094】
(1A)IGMPv3トリガに含まれるマルチキャストグループID(G1)、送信元ID(S1)およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を有する通信情報{G1,S1,L1}(第1の通信情報)が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S,L}(第2の通信情報)と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が許可であり、かつ{G1,S1,L1}に対するLSPのステータスが未接続の場合は、ステップS25cに処理が進む。
【0095】
(2A)マルチキャストグループID(G1)、送信元ID(S1)およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を有する通信情報{G1,S1,L1}が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S,L}と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が許可であり、かつ{G1,S1,L1}に対するLSPのステータスが接続済みの場合は、ステップS25bに処理が進む。
【0096】
(3A)マルチキャストグループID(G1)、送信元ID(S1)およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を有する通信情報{G1,S1,L1}のうちの少なくとも1つが、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S,L}と不一致である場合はステップS25eに処理が進む。
【0097】
(4A)マルチキャストグループID(G1)、送信元ID(S1)およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を有する通信情報{G1,S1,L1}が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S,L}と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が不許可の場合は、ステップS25eに処理が進む。
【0098】
(5A)マルチキャストグループID(G1)、送信元ID(S1)およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を有する通信情報{G1,S1,L1}が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S,L}と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が許可であり、かつ{G1,S1,L1}に対するLSPのステータスが遮断中の場合はステップS25eに処理が進む。
【0099】
〔ステップS25b〕制御部11は、IGMPv3トリガを前回受信してから閾値時間(例えば、300秒)を経過したか否かを判定する。閾値時間を経過した場合はリフレッシュを実行するためにステップS25cに処理が進む。閾値時間を経過していない場合はリフレッシュを不要としてステップS25eに処理が進む。なお、RSVPにおいてリフレッシュとは、生成済みのLSPの維持を意味する。
【0100】
〔ステップS25c〕制御部11は、IGMPv3トリガに示される配信元{G1,S1}を収容するノードID(NNIルータID)を検索する。検索がヒットしない場合はステップS25eの処理に進み、検索がヒットした場合はステップS25dの処理に進む。
【0101】
〔ステップS25d〕制御部11は、検索したノードIDを有する伝送装置10-2に向けて制御信号の送信処理を行う。なお、制御信号には、ポリシ制御Pc1によるポリシで認められた、マルチキャストグループID(G)、送信元ID(S)およびユーザ端末40のIPアドレス(L)の情報が含まれる。このLは、
図11のステップS26と同様に、ユーザ端末40を収容するUNIを示す伝送装置10-1のIPアドレスであってもよい。
【0102】
〔ステップS25e〕制御部11は、受信したIGMPv3トリガを廃棄する。
図13はポリシ制御の動作の一例を示すフローチャートである。
図11のステップS27で行われる伝送装置10-2のポリシ制御Pc2の動作を示している。
【0103】
〔ステップS27a〕伝送装置10-2内の制御部11は、伝送装置10-1から送信された制御信号を受信すると、制御信号に含まれる{G1,S1}にもとづいてポリシの判定を行う。
【0104】
具体的には、以下のようなポリシ判定(1B)から(5B)が行われる。
(1B)マルチキャストグループID(G1)および送信元ID(S1)を有する通信情報{G1,S1}(第3の通信情報)が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S}(第4の通信情報)と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が許可であり、かつ{G1,S1}に対するLSPのステータスが未接続の場合はステップS27bに処理が進む。
【0105】
(2B)マルチキャストグループID(G1)および送信元ID(S1)を有する通信情報{G1,S1}が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S}と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が許可であり、かつ{G1,S1}に対するLSPのステータスが接続済みの場合はステップS27eに処理が進む。
【0106】
(3B)マルチキャストグループID(G1)および送信元ID(S1)を有する通信情報{G1,S1}の少なくとも1つが、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S}と不一致である場合は、ステップS27gに処理が進む。
【0107】
(4B)マルチキャストグループID(G1)および送信元ID(S1)を有する通信情報{G1,S1}が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S}と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が不許可の場合はステップS27gに処理が進む。
【0108】
(5B)マルチキャストグループID(G1)および送信元ID(S1)を有する通信情報{G1,S1}が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている通信情報{G,S}と一致する。かつポリシ情報テーブルT3のpermitの内容が許可であり、かつ{G1,S1}に対するLSPのステータスが遮断中の場合はステップS27gに処理が進む。
【0109】
〔ステップS27b〕制御部11は、新しいLSPを生成するために、トンネルIDおよびLSP IDの採番を行い、マルチキャスト情報テーブルT2の登録を更新する。
〔ステップS27c〕制御部11は、トンネルIDおよびLSP IDの採番に加えてさらにS2LサブLSP IDの採番を行い、マルチキャスト情報テーブルT2の登録を更新する。
【0110】
〔ステップS27d〕制御部11は、S2LサブLSPの接続を開始する。この接続処理により
図11のステップS28-1に示したRSVPパスメッセージが伝送装置10-2から伝送装置10-1に送信される。
【0111】
〔ステップS27e〕制御部11は、IPアドレス(L)に対するLSPが確立されているか否かを判定する。LSPが未確立の場合はステップS27bの処理に進み、LSPが確立済みの場合はステップS27fの処理に進む。
【0112】
〔ステップS27f〕制御部11は、LSPの活性状態の監視を継続する(LSPを生成するための制御は行われない)。なお、制御部11は、一定時間(例えば、600秒)、制御信号が未受信であることを認識した場合は、現在確立しているLSPを遮断する。
【0113】
〔ステップS27g〕制御部11は、受信した制御信号を廃棄する(LSPを生成するための制御は行われない)。
上記のように、伝送システム1-2では、送信側および受信側の双方の伝送装置によるポリシ制御を行い、送信側および受信側の双方のポリシが満たされる場合に、伝送装置間の中継網にパスを生成する。これにより、IGMPに逐次連動して生成されるマルチキャストパスの輻輳を抑制することができ、さらに予想外のパス生成を防ぐことが可能になる。
【0114】
<事前パス生成>
図14は事前パス生成の動作シーケンスの一例を示す図である。伝送装置内で管理している装置時間(装置の同期時刻)が、許可時間(同期時刻を含む時間帯、以降、所定時間ともいう)に達した場合に、自律的に伝送装置10-1、10-2間にLSPが生成される動作を示している。
【0115】
〔ステップS31〕伝送装置(送信側)10-2のオペレーション設定において、UNIに対するIPアドレスの登録(UNI/IPv4のネットワークアドレス登録)が行われる。また、伝送装置10-2は、ICMPv6で広告されたIPv6アドレスのプレフィクス等の情報を受信する。
【0116】
〔ステップS32〕伝送装置10-2は、ステップS31で行われた設定を契機にしてアドレス情報テーブルT1を生成する。アドレス情報テーブルT1が生成されることにより、ノードID(ルータID-1)と、配下のUNIセグメントとが対応付けられる。
【0117】
〔ステップS33〕伝送装置10-2と伝送装置(受信側)10-1間でテーブル同期が行われて、伝送装置10-1、10-2でアドレス情報テーブルT1の情報が共有される。
【0118】
〔ステップS34-1〕伝送装置10-2は、IPマルチキャストを許可するか否かを判定するためのポリシ制御を実行する。ここでのポリシ制御では、{G1,S1}に対してpermitの内容が許可であるか否かの判定が行われる。
【0119】
〔ステップS34-2〕伝送装置10-1は、受信側装置としてIPマルチキャストを許可するか否かを判定するためのポリシ制御を実行する。ここでのポリシ制御では、{G1,S1,L1}に対してpermitの内容が許可であるか否かの判定が行われる。
【0120】
〔ステップS34-3〕伝送装置10-2は、装置時間がポリシ情報テーブルT3に登録されている時間帯に入り、事前パス生成の許可時間に達したことを検出すると、マルチキャスト情報テーブルT2を生成する。マルチキャスト情報テーブルT2には{G1,S1,L1}が含まれ、さらにLSPを生成するためのトンネルIDが採番されてマルチキャスト情報テーブルT2に登録される。
【0121】
〔ステップS35-1〕伝送装置10-2は、P2MPのRSVPパスメッセージ(RSVP path (P2MP))を伝送装置10-1に送信してラベル割り当て要求を行う。
〔ステップS35-2〕伝送装置10-1は、RSVPパスメッセージを受信すると、RSVP予約メッセージ(RSVP Resv)を伝送装置10-2に返信して、ラベル割り当て通知を行う。
【0122】
〔ステップS36〕伝送装置10-1、10-2間でP2MP LSPが確立される。これにより、伝送装置10-2に入力された送受信局側のIPマルチキャストはP2MP LSPを介して伝送装置10-1に伝送される。
【0123】
〔ステップS37〕ユーザ端末40は、マルチキャストのグループID(G1)、ユーザ端末のID(送信元ID(S1))およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を含めたIGMPv3のトリガを伝送装置10-1に送信する。
【0124】
〔ステップS38〕伝送装置10-1は、制御信号を伝送装置10-2に送信する。制御信号の宛先はルータID-1であり、制御信号のペイロードには{G1,S1,L1}の情報が含まれる。なお、伝送装置10-2は、制御信号を受信してもパスは既に確立済みなのでパス生成の制御は行わない。または、事前パス生成の場合、伝送装置10-1は、制御信号の送信自体を行わなくてもよい。
【0125】
〔ステップS39〕伝送装置10-1は、ユーザ端末40にIPマルチキャストを送信する。
上記のように、伝送システム1-2では、伝送装置10-1、10-2で同期している装置時間が、ポリシ情報テーブルT3に登録されている時間帯に入って予め設定している許可時間に達した場合、自律的に中継網にパスを生成する。これにより、事前登録された時間で効率よくパスを生成することが可能になる。
【0126】
なお、パスが生成した時点では、ユーザ端末40のUNIは遮断状態である。IGMP参加が伝送装置10-1で受け付けられたときに、UNIの遮断状態が解除され、伝送装置10-1からユーザ端末40へIPマルチキャストが透過転送されることになる。
【0127】
<障害発生時のパス制御>
図15は障害発生時のパス制御の動作シーケンスの一例を示す図である。パスの誤接続による帯域溢れ等の障害が発生したような場合のfail safe機能の動作の一例を示している。なお、事前パス生成によりパス確立中に障害が発生したものとする。
【0128】
なお帯域溢れが発生した場合のfail safe機能としては、RSVPのパス生成優先度やMPLSの優先度を最高に変更し、重要回線を保護する緊急機能、低優先のパスは切断せずにそのまま接続を続けて帯域溢れの回復を待つベストエフォート機能など、他の動作を取ることもできる。
【0129】
〔ステップS41〕伝送装置10-2は、装置時間が許可時間に達したことを検出すると、マルチキャスト情報テーブルT2を生成する。マルチキャスト情報テーブルT2には{G1,S1,L1}が含まれ、さらにLSPを生成するためのトンネルIDが採番されてマルチキャスト情報テーブルT2に登録される。
【0130】
〔ステップS42-1〕伝送装置10-2は、P2MPのRSVPパスメッセージ(RSVP path (P2MP))を伝送装置10-1に送信してラベル割り当て要求を行う。
〔ステップS42-2〕伝送装置10-1は、RSVPパスメッセージを受信すると、RSVP予約メッセージ(RSVP Resv)を伝送装置10-2に返信して、ラベル割り当て通知を行う。
【0131】
〔ステップS43-1〕伝送装置10-1、10-2間でP2MP LSPが確立される。これにより、伝送装置10-2に入力された送受信局側のIPマルチキャストは、P2MP LSPを介して伝送装置10-1に伝送される。
【0132】
〔ステップS43-2〕上記のステップS41からステップS42-2と同様な処理が伝送装置10-1a(受信側)と伝送装置10-2(送信側)との間で行われて、伝送装置10-1a、10-2間でP2MP LSPが確立される。
【0133】
〔ステップS44〕伝送装置10-1aは、例えば、データロスの多発を認識して、障害発生を検出する。
〔ステップS45〕伝送装置10-1aは、中継網に接続されるすべての伝送装置(伝送装置10-1、10-2)に障害メッセージを通知する。
【0134】
〔ステップS45a〕伝送装置10-1aは、障害メッセージを受け取ったすべての伝送装置は、障害メッセージの通知を受けてから過去一定時間(
図16のステップS51の接続監視時間)内に確立しているパスに対して、他経路の情報(迂回経路の情報)が存在するか否かの確認を行う。(
図16のステップS52)。
【0135】
〔ステップS46〕送信側の伝送装置10-2は、接続監視時間内に障害メッセージを受信し、他経路の情報がない場合、情報テーブルT3のステータスを遮断中に変更し、該当RSVP予約を終了するためのRSVP pathTearメッセージを送信する。
【0136】
〔ステップS47〕ユーザ端末40は、マルチキャストのグループID(G1)、ユーザ端末のID(送信元ID(S1))およびユーザ端末40のIPアドレス(L1)を含めたIGMPv3のトリガ(メッセージ)を伝送装置10-1に送信する。
【0137】
〔ステップS48〕伝送装置10-1は、制御信号を伝送装置10-2に送信する。制御信号の宛先はルータID-1であり、制御信号のペイロードには{G1,S1,L1}の情報が含まれる。
【0138】
〔ステップS49〕伝送装置10-2は、制御信号を受信したためポリシ制御を実行する。伝送装置10-2は、ユーザ端末40のエントリを無効(遮断中)としてパスの生成は行わない。
【0139】
図16は障害メッセージを受信してパスの遮断または再確立が行われるまでの動作の一例を示すフローチャートである。なお、障害メッセージは、障害の発生中、障害を発生した伝送装置から一定間隔(例えば、10秒)で送信されるものとする。
【0140】
〔ステップS51〕障害メッセージを受信した伝送装置内の制御部11は、接続監視中のユーザ端末40があるか否かを判定する。接続監視中のユーザ端末40が存在しない場合はステップS51の処理を繰り返し、接続監視中のユーザ端末40が存在する場合はステップS52の処理に進む。
【0141】
〔ステップS52〕制御部11は、他経路の情報(迂回経路の情報)がポリシ情報テーブルT3に登録されているか否かを判定する。登録されている場合はステップS53に処理が進み、登録されていない場合はステップS56に処理が進む。
【0142】
〔ステップS53〕制御部11は、障害が発生しているS2LサブLSPを遮断する。
〔ステップS54〕制御部11は、ポリシ情報テーブルT3に登録されている別経路でLSPを接続する。
【0143】
〔ステップS55〕制御部11は、新しく接続したLSPの接続監視を行う(接続監視時間の延長)。
〔ステップS56〕制御部11は、障害が発生しているS2LサブLSPを遮断する。
【0144】
〔ステップS57〕制御部11は、ポリシ情報テーブルT3のステータスを遮断中に更新する。
上記のように、伝送システム1-2では、ストリーム配信の実行中に障害パスが検出された場合、ポリシ情報のうちに障害パス以外の迂回パスの登録がある場合は、障害パスを遮断して迂回パスを中継網に生成する。これにより、発生したサービス障害による疎通異常を早期に回復し、疎通復旧を迅速に行うことが可能になる。
【0145】
以上説明したように、本発明によれば、IPマルチキャストでストリーム配信する際のポリシ情報を定義しておき、IGMPによるLSPの生成トリガを検出した場合、中継網に対してポリシ情報にもとづくLSPを生成する。
【0146】
これにより、帯域輻輳の回避および誤接続の防止を行うことができる。また、既構築されているシステムのソフトウェア/アプリケーションを変更することで本発明の機能を実現できるので、新たな設備構築(SDN(Software Defined Network)機器等の構築)が不要となり、低コスト化が実現される。さらにパスにおける障害発生時に、障害パスを回避して新規のパスを自律的に生成するので、障害回復を早期に行うことが可能になる。
【0147】
上記で説明した本発明の伝送装置および伝送システムは、コンピュータによって実現することができる。この場合、伝送装置および伝送システムが有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0148】
処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶部、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等がある。磁気記憶部には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ等がある。光ディスクには、CD-ROM/RW等がある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto Optical disk)等がある。
【0149】
プログラムを流通させる場合、例えば、そのプログラムが記録されたCD-ROM等の可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶部に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0150】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶部に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶部からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0151】
また、コンピュータは、ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータからプログラムが転送される毎に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP、ASIC、PLD等の電子回路で実現することもできる。
【0152】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0153】
1-1 伝送システム
1、2 伝送装置
1a、2a 制御部
1b、2b 記憶部
ad1、ad2 アドレス情報
p0 パス
pc ポリシ情報
N1 中継網