IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図1
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図2
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図3
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図4
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図5
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図6
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図7
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図8
  • 特開-エネルギーマネジメントシステム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170164
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/021 20210101AFI20221102BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20221102BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20221102BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20221102BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20221102BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20221102BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20221102BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20221102BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20221102BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221102BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221102BHJP
【FI】
C25B15/021
C01B3/00 Z
C25B1/04
H01M8/0606
H01M8/04313
H01M8/04701
G06Q50/06
H02J15/00 G
H02J3/00 180
H02J3/38 170
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076097
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 幸大
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦士
【テーマコード(参考)】
4G140
4K021
5G066
5H126
5H127
5L049
【Fターム(参考)】
4G140AB01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC05
4K021CA12
4K021DB40
4K021DC03
5G066AE09
5G066HB07
5G066JA07
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
5H127DB91
5H127DC84
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】エネルギーコストを低減することができる、エネルギーマネジメントシステムを提供すること。
【解決手段】系統電力を水素に変換する水素生成装置2の予熱を制御するエネルギーマネジメントシステム1。エネルギーマネジメントシステム1は、電力及び水素の少なくとも一方に関する情報を含む外部情報を収集する収集部11と、水素生成装置2に関する装置情報を記録する記録部12と、外部情報と装置情報とを基に、水素生成装置2の予熱を制御する制御部13と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電力を用いて水素を生成する水素生成装置(2)の予熱を制御するエネルギーマネジメントシステム(1)であって、
電力及び水素の少なくとも一方に関する情報を含む外部情報を収集する収集部(11)と、
上記水素生成装置に関する装置情報を記録する記録部(12)と、
上記外部情報と上記装置情報とを基に、上記水素生成装置の予熱を制御する制御部(13)と、を有する、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
上記外部情報は、水素コストと電力コストとに関する情報を含む、請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
上記記録部は、上記装置情報として、上記水素生成装置による電力から水素への変換効率を記録しており、上記収集部は、上記外部情報として、電力購入単価と水素購入単価とを収集し、上記制御部は、上記変換効率と上記電力購入単価と上記水素購入単価とを基に、上記水素生成装置の予熱を行うか否かを判断する、請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
上記制御部は、上記水素生成装置を稼働させる稼働指令を外部から受け取る受信部(131)を有し、該受信部にて受け取った上記稼働指令を基に、上記水素生成装置の予熱を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
上記制御部は、上記稼働指令を上記受信部が受け取る受信確率を予測する確率予測部(132)を、さらに有し、上記制御部は、上記確率予測部が予測した上記受信確率に応じて、上記水素生成装置の予熱の程度を調整するよう構成されている、請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
複数の上記水素生成装置のそれぞれを個別に予熱制御することができるよう構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーマネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の燃料電池を備えた熱電併給型調整用電源が開示されている。この電源においては、一方の燃料電池を電流密度が一定となるように稼働させ続け、他方の燃料電池は、電力需要に応じて出力を変動させながら運転させている。そして、複数の燃料電池の間で発生した熱が互いに伝達するようにすることで、エネルギーコストの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-11903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムにおいては、複数の燃料電池を常時稼働させることとなる。それゆえ、複数の燃料電池を常時、稼働温度に保つ必要があり、多くの熱エネルギーを必要とする。それゆえ、エネルギーコストが高くなりやすい。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、エネルギーコストを低減することができる、エネルギーマネジメントシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、系統電力を用いて水素を生成する水素生成装置(2)の予熱を制御するエネルギーマネジメントシステム(1)であって、
電力及び水素の少なくとも一方に関する情報を含む外部情報を収集する収集部(11)と、
上記水素生成装置に関する装置情報を記録する記録部(12)と、
上記外部情報と上記装置情報とを基に、上記水素生成装置の予熱を制御する制御部(13)と、を有する、エネルギーマネジメントシステムにある。
【発明の効果】
【0007】
上記エネルギーマネジメントシステムは、上記外部情報と上記装置情報とを基に、上記水素生成装置の予熱を制御する制御部を有する。それゆえ、水素生成装置の予熱を、必要なタイミングにおいて実施することが可能となる。逆に言うと、水素生成装置の予熱が不要な時期に、予熱を停止等することができ、エネルギーを節約することができる。それゆえ、エネルギーコストの低減を図ることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、エネルギーコストを低減することができる、エネルギーマネジメントシステムを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、エネルギーマネジメントシステムの説明図。
図2】実施形態1における、制御フローの一例を示すフロー図。
図3】実施形態2における、エネルギーマネジメントシステムの説明図。
図4】実施形態3における、エネルギーマネジメントシステムの説明図。
図5】実施形態4における、エネルギーマネジメントシステムの説明図。
図6】実施形態4における、(a)受信確率の時間推移の例を示す線図、(b)SOECの制御温度の時間推移の例を示す線図。
図7】実施形態4における、(a)受信確率の時間推移の他の例を示す線図、(b)SOECの制御温度の時間推移の他の例を示す線図。
図8】実施形態4における、(a)受信確率の時間推移の予測が変化した状態を示す線図、(b)SOECの制御温度の時間推移を変更した状態を示す線図。
図9】実施形態5における、エネルギーマネジメントシステムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
エネルギーマネジメントシステムに係る実施形態について、図1図2を参照して説明する。
本形態のエネルギーマネジメントシステム1は、系統電力を用いて水素を生成する水素生成装置2の予熱を制御するシステムである。
【0011】
エネルギーマネジメントシステム1は、図1に示すごとく、収集部11と記録部12と制御部13とを有する。
収集部11は、電力及び水素の少なくとも一方に関する情報を含む外部情報を収集する。記録部12は、水素生成装置2に関する装置情報を記録する。制御部13は、外部情報と装置情報とを基に、水素生成装置2の予熱を制御する。
【0012】
本形態において、水素生成装置2は、例えば、固体酸化物型電解セル(すなわち、SOEC)からなる。以下において、水素生成装置2を、「SOEC2」とも表す。SOEC2には、水と、酸化剤ガス(例えば、空気)とが供給される。この状態において、SOEC2に電力を供給することで、水が電気分解され、水素が生成される。SOEC2に供給される電力は、系統電力を利用する。すなわち、電力系統より購入した電力を、SOEC2における電気分解に利用する。
【0013】
SOEC2による水素生成の過程においては、液体の水を蒸発させる工程と、吸熱反応である電解質体による電解反応の工程とが行われる。それゆえ、電解動作時においては、SOEC2に熱を供給する必要がある。すなわち、SOEC2を稼働させる前にSOEC2を予熱して、SOEC2を所定温度に昇温させておく必要がある。
【0014】
SOEC2には、SOEC2を予熱する予熱器3が接続されている。予熱器3は、例えば、高温の空気をSOEC2に供給することで、SOEC2を予熱することができるよう構成されている。
【0015】
SOEC2にて生成された水素は、需要家4に供給される。ここで、需要家4は、例えば、工場、家庭、その他、水素を消費する施設、設備等を意味する。需要家4は、供給された水素を、自身が保有する変換装置(例えば、燃料電池等)によって電力に変換して使用することもできる。
【0016】
また、図1に示すごとく、本形態において、需要家4には、SOEC2を介さずに、別経路にて水素を供給することができる。例えば、需要家4が、水素を直接購入して、その供給を受けることもできる。このように、需要家4への水素の供給経路としては、SOEC2によって系統電力を水素に変換して、需要家4へ供給する経路と、購入した水素を直接、需要家4へ供給する経路とがある。なお、「電力を水素に変換」とは、電力を用いて水から水素を生成することを意味するものとする。以下においても同様である。
【0017】
本形態のエネルギーマネジメントシステム1は、上記の2つの経路の使い分けの管理に伴う、SOEC2の予熱を管理する。上述のように、エネルギーマネジメントシステム1は、収集部11と記録部12と制御部13とを有する。
【0018】
収集部11は、電力及び水素の少なくとも一方に関する情報を含む外部情報を収集する。本形態において、外部情報は、水素コストと電力コストとに関する情報を含む。また、外部情報としては、水素生成装置2の稼働状況、装置温度等に関する情報、さらには、季節、時刻、曜日、天気予報等に関する情報をも含み得る。
なお、収集部11は、例えば、パソコン等の端末、各種センサ、等によって構成することができる。
【0019】
記録部12は、SOEC2に関する装置情報を記録する。装置情報としては、例えば、電力を水素に変換する変換効率、電解動作に必要な装置温度(以下において、適宜「稼働温度」ともいう。)、予熱時間に関する情報等を含む。予熱時間に関する情報としては、例えば、収集部11によって収集された現在の装置温度、外気温度、さらには予熱器3の予熱能力等に基づいて、稼働温度までに要する予熱時間を導くことのできるマップ等が想定される。
【0020】
また、装置情報としては、過去のSOEC2の稼働実績等も含まれ得る。例えば、季節、時刻、曜日、天気予報等、種々の要因と、過去にSOEC2を稼働した実績等との関係から、SOEC2の予熱を行うか否かの判断を行うことも想定される。かかる場合、装置情報として、過去のSOEC2の稼働実績等も、装置情報に含まれる。
なお、記録部12は、例えば、半導体メモリ等によって構成することができる。
【0021】
制御部13は、外部情報と装置情報とを基に、SOEC2の予熱を制御する。すなわち、外部情報として得た水素コストと電力コストと、水素生成装置2の変換効率とを基にして、水素を直接購入した方がコストパフォーマンスがよいか、系統電力をSOEC2にて水素に変換した方がコストパフォーマンスがよいかの判断を行う。
【0022】
具体的には、記録部12は、装置情報として、SOEC2による電力から水素への変換効率を記録している。収集部11は、外部情報として、電力購入単価と水素購入単価とを収集する。制御部13は、変換効率と電力購入単価と水素購入単価とを基に、予熱器3によるSOEC2の予熱を行うか否かを判断する。
【0023】
また、制御部13は、予熱器3に対して予熱信号を送信して、予熱器3によるSOEC2の予熱を行うことができるよう構成されている。すなわち、制御部13は、予熱信号の送信手段として、例えば、無線通信又は有線通信を行う通信部を備える。
なお、制御部13は、例えば、エネルギーマネジメントシステム1内に記憶された制御プログラムを実行するプロセッサであって、マイクロコンピュータ又は専用回路等により構成することができる。
【0024】
本形態のエネルギーマネジメントシステム1は、例えば、図2に示すフローのように、SOEC2の予熱を制御することができる。
ここで、「電力購入単価C1」は、電力系統からの1kWhあたりの電力の購入価格とする。また、「水素購入単価C2」は、1Nm3あたりの水素の購入価格とする。また、SOEC2の「変換効率η」は、電力から水素へ変換する際のエネルギー変換効率である。すなわち、変換効率ηは、SOEC2における電解動作時に消費される電力量の総量に対する、得られる水素の総熱量である。
【0025】
ここで、「SOEC2における電解動作時に消費される電力量の総量」には、SOEC2の電解質に直接供給される電力量の他に、予熱器3を介してSOEC2を予熱するために供給される電力量や、SOEC2において用いる水蒸気の生成のために供給される電力量等も含まれる。すなわち、「SOEC2における電解動作時に消費される電力量の総量」は、所定の水素を得るために必要な電力量の総量を意味する。
また、水素1Nm3あたりの熱量(単位:kWh)として「水素熱量Q」を定義する。
【0026】
収集部11によって、電力購入単価C1と水素購入単価C2との情報を収集する(図2のステップS1参照)。
制御部13において、電力購入単価C1と水素熱量Qとの積を変換効率ηにて除した値(すなわち、C1×Q÷η)を、1Nm3の水素を得るために要するコストC10として算出する(ステップS2参照)。このコストC10が、SOEC2を介して系統電力から1Nm3の水素を得るためのコストとなる。このコストC10と水素購入単価C2とを比較する(ステップS3参照)。
【0027】
C2>C10であれば、系統電力を購入して、水素に変換して需要家4に供給する方が、コストパフォーマンスがよいこととなる。それゆえ、この場合には、SOEC2によって購入電力を水素に変換して需要家4に供給することとする。そのために、エネルギーマネジメントシステム1の制御部13は、SOEC2を稼働させるべく、予熱器3に予熱信号を送信する(ステップS4参照)。
【0028】
一方、C2<C10であれば、水素を購入して直接、需要家4に供給する方が、コストパフォーマンスがよいこととなる。それゆえ、この場合には、SOEC2を用いずに、購入した水素を需要家4に供給することとする。このとき、SOEC2を用いないので、SOEC2の予熱も不要となる。それゆえ、制御部13は、予熱器3への予熱信号の送信を停止する(ステップS5参照)。換言すると、予熱器3へ、予熱停止の信号を送信する。これにより、予熱器3によるSOEC2の予熱を停止し、不要なSOEC2の予熱エネルギーを節約する。
【0029】
なお、C2=C10の場合は、予熱を停止することとしても、予熱を実施することとしてもよい。例えば、その時点まで予熱を行っていた場合には予熱を継続し、その時点まで予熱を停止していた場合には予熱停止を継続するといった制御とすることもできる。
【0030】
また、予熱の開始時刻や停止時刻等のタイミングについては、種々の要因に基づいて判断される。エネルギーマネジメントシステム1は、SOEC2を稼働させる時間帯にはSOEC2が稼働温度以上となるように予熱制御を行い、SOEC2を稼働させない時間帯に極力SOEC2が稼働温度を下回るように制御する。稼働開始時刻と予熱開始時刻とが一致するわけではなく、稼働停止時刻と予熱停止時刻とが一致するわけでもない。
【0031】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記エネルギーマネジメントシステム1は、外部情報と装置情報とを基に、SOEC2の予熱を制御する制御部13を有する。それゆえ、SOEC2の予熱を、必要なタイミングにおいて実施することが可能となる。逆に言うと、SOEC2の予熱が不要な時期に、予熱を停止等することができ、エネルギーを節約することができる。それゆえ、エネルギーコストの低減を図ることができる。
【0032】
すなわち、SOEC2の稼働が不要な状況においても、SOEC2の予熱を続けると、その分のエネルギーコストが増大することとなる。それゆえ、エネルギーマネジメントシステム1は、外部情報と装置情報とに基づいて、SOEC2の予熱の要否等を判断し、予熱が不要なときには、予熱を停止することができるようにしている。これにより、無駄なエネルギーを節約して、エネルギーコストを低減することができる。
【0033】
また、外部情報は、水素コストと電力コストとに関する情報を含む。これにより、SOEC2を稼働させずに水素を直接購入するか、SOEC2によって電力を水素に変換するか、の判断を行うことが容易となる。これに伴い、SOEC2を予熱するか否かの判断を容易に行うことができる。
【0034】
また、制御部13は、変換効率と電力購入単価と水素購入単価とを基に、予熱器3によるSOEC2の予熱を行うか否かを判断する。これにより、SOEC2の予熱を行うか否かの判断を容易かつ正確に行いやすい。
【0035】
以上のごとく、本形態によれば、エネルギーコストを低減することができる、エネルギーマネジメントシステムを提供することができる。
【0036】
(実施形態2)
本形態は、図3に示すごとく、SOEC2と需要家4との間に、水素タンク5及び燃料電池6が設けてある場合の、エネルギーマネジメントシステム1の形態である。
水素タンク5は、SOEC2によって生成した水素を貯蔵する。燃料電池6は、水素タンク5に貯蔵した水素を電力に変換して、需要家4に供給する。
【0037】
燃料電池6としては、例えば、固体酸化物型燃料電池(すなわち、SOFC)を用いることができる。以下、燃料電池6を、適宜「SOFC6」ともいう。SOFC6は、供給された水素と酸素とを、固体電解質において反応させて発電する。
【0038】
また、SOEC2及びSOFC6は、例えば、水素と電力とを相互に変換することができる、可逆固体酸化物燃料電池(すなわち、rSOFC)によって構成することもできる。
【0039】
本形態においては、需要家4に系統電力を直接供給する経路が存在する。また、系統電力を一旦水素に変換して貯蔵しておき、貯蔵された水素を再び電力に変換して、需要家4に供給する経路も、存在する。
【0040】
後者の経路に、SOEC2と、水素タンク5と、SOFC6とが、設けてある。すなわち、後者の経路においては、系統電力をSOEC2によって水素に変換し、その水素を水素タンク5に貯蔵しておく。水素タンク5に貯蔵された水素を、SOFC6によって電力に変換し、その電力を需要家4に供給する。また、水素を購入して水素タンク5に貯蔵しておくこともできる。
【0041】
制御部13は、SOEC2を稼働させる稼働指令を外部から受け取る受信部131を有する。制御部13は、受信部131にて受け取った稼働指令を基に、SOEC2の予熱を制御する。稼働指令は、例えば、DR指令(デマンドレスポンス指令の略)の一部とすることができる。
【0042】
例えば、需要家4における電力需要が少なく、系統電力の電力供給が多い場合には、DR指令は、外部(例えば、電力事業者や需要家4等)から、エネルギーマネジメントシステム1における制御部13へ、電気信号として送られる。
【0043】
なお、需要家4における電力需要が、系統電力の電力供給を上回る場合において、SOFC6を用いて水素タンク5の水素を電力に変換して、需要家4へ電力を供給するように、外部から指令される場合もある。
【0044】
本形態においては、SOEC2の稼働を指令するDR指令(すなわち、稼働指令)があったとき、制御部13が予熱器3に予熱信号を送る。これにより、予熱器3によってSOEC2を予熱する。なお、稼働指令は、例えば、数時間後、数分後、或いは数秒後、という将来のSOEC2の稼働を指令するものとすることができる。そして、このSOEC2の稼働に間に合うように、SOEC2を予熱するよう、制御部13は予熱信号を送ることとなる。
【0045】
また、上述のように、SOFC6を介して需要家4に電力を供給する必要がある場合を想定して、水素タンク5に水素を貯蔵しておく。この水素を貯蔵するにあたり、水素を直接購入する場合と、系統電力を水素に変換して貯蔵する場合とがある。ここで、いずれの経路を用いて水素タンク5に水素を貯蔵するかについては、制御部13は、実施形態1と同様の手法にて判断し、SOEC2及び予熱器3を制御する。
【0046】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
本形態においては、DR指令における稼働指令を基に、予熱器3によるSOEC2の予熱を制御する。これにより、稼働指令に基づいてSOEC2を稼働させる場合においても、エネルギーコストの低減を図ることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施形態3)
本形態は、図4に示すごとく、系統電力を蓄電する電力貯蔵装置7を設けた場合の形態である。
電力貯蔵装置7としては、例えば、リチウムイオン電池等の蓄電池を用いることができる。
【0049】
本形態においては、例えば、需要家4における電力需要が、系統電力の電力供給を下回った際に、DR指令に基づいて、エネルギーマネジメントシステム1の制御部13が、電力貯蔵装置7へ系統電力を充電するように制御することができる。すなわち、このとき、例えば、図4に示すように、制御部13から電力貯蔵装置7へ、電力貯蓄を指令する信号を送る。また、系統電力の余剰分が、電力貯蔵装置7への充電電力を超える場合には、その分をSOEC2へ供給することもできる。そして、このような指令を制御部13が受けた際に、SOEC2を稼働させることになる。かかる場合に、制御部13は予熱器3に予熱信号を送信する。
【0050】
なお、電力貯蔵装置7に充電した電力は、系統電力の電力供給を需要家4における電力需要が上回る場合等において、需要家4へ供給される。もしくは、電力貯蔵装置7に貯蔵した時点での電力価格を現在の電力価格が上回る際に、貯蔵した電力を優先的に需要家へ供給する(図示略)。
その他は、実施形態1と同様である。
【0051】
本形態においても、SOEC2の無駄な予熱を抑制して、エネルギーコストを低減することができる。その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0052】
(実施形態4)
本形態は、図5図8に示すごとく、制御部13が確率予測部132をさらに有する形態である。
確率予測部132は、稼働指令を受信部131が受け取る受信確率Pを予測する。制御部13は、確率予測部132が予測した受信確率Pに応じて、SOEC2の予熱の程度を調整するよう構成されている。
【0053】
確率予測部132は、制御部13の一部であり、マイクロコンピュータ又は専用回路等により構成することができる。また、確率予測部132は、季節、時刻、曜日、天気予報等に関する情報を基に、受信確率Pを予測する。季節、時刻、曜日、天気予報等に関する情報は、上述のように、収集部11が収集している。
【0054】
例えば、電力事業者が太陽光発電装置を有する場合等には、晴天の正午前後において、太陽光発電装置にて賄うことができる電力が多くなる。かかる状況下においては、電力需要に対して電力供給量が大きくなり、DR指令(ここでは、稼働指令でもある。)が受信部131に届く確率(すなわち受信確率P)が高くなる。図6(a)に示す受信確率Pの推移予測は、例えば、このような状況を想定したものと考えることができる。
【0055】
この受信確率Pに応じて、制御部13は、予熱器3によるSOEC2の温度を制御する。つまり、図6(a)に示す例では、時刻t1からt2にかけて、受信確率Pが上昇し、時刻t2において、受信確率Pが約100%となる。このように、確率予測部132が受信確率Pの変動予測を行った場合、図6(b)に示すごとく、時刻t2においてSOEC2の温度が、稼働温度T0(すなわち、電解動作に必要な温度)に達するように、SOEC2を予熱する。つまり、このような予熱信号を制御部13が予熱器3に送ることとなる。
【0056】
また、別の例として、図7(a)に示すように、受信確率Pが段階的に上昇する場合も想定される。同図の例では、時刻t3において、受信確率Pが約0%から約20%に上昇し、時刻t4の直前から受信確率Pが急上昇して、時刻t4において約100%に達すると、予測されている。
【0057】
確率予測部132がこのような確率予測を行った場合には、図7(b)に示すごとく、時刻t3に向けて、まずは稼働温度T0に少し近づけるように、SOEC2を昇温すべく、予熱制御する。その後、時刻t4の時点で、SOEC2が稼働温度T0に到達できるように、SOEC2の昇温を再開する。このように、受信確率Pが高くはないがある程度存在するといった時間帯が、ある程度長く存在する予測の場合もあり得る。かかる場合には、SOEC2の温度を、稼働温度T0よりも低いが、外気温よりも高い温度において、維持しておくという制御も考えられる。
【0058】
このようにすることで、例えば、図8(a)に示すように、確率予測が時間と共に変化した場合に、予熱計画を変更するなどの対処がしやすくなる。つまり、同図に示すように、時刻t0の時点で予測した受信確率Pの推移(図7(a)参照)が、その後、時刻t5の時点での予測において、図8(a)に示す受信確率Pの推移に変化した場合を考える。この場合、SOEC2の昇温が不要となるため、時刻t5において、図8(b)のように、予熱計画を計画しなおすことができる。
【0059】
そうすると、予熱が不要なSOEC2の予熱を回避することができる。つまり、時刻t5の時点では、最初の計画でもSOEC2の温度は比較的低いため、受信確率Pが大きく低下した場合も、その後の予熱を回避すれば、無駄な予熱エネルギーを少なくすることができる。なお、図8(a)において、破線部LPは、時刻t0の時点で予測していた受信確率Pの推移(図7(a)参照)を示す。また、図8(b)において、破線部LTは、時刻t0の時点で計画していたSOEC2の温度の推移(図7(b)参照)を示す。
【0060】
その他は、実施形態2と同様であり、同様の作用効果を有する。
【0061】
(実施形態5)
本形態は、図9に示すごとく、複数の水素生成装置2のそれぞれを個別に予熱制御することができるよう構成された、エネルギーマネジメントシステム1の形態である。
【0062】
本形態においては、水素生成装置2として、2つのSOEC2が設けてある。2つのSOEC2は、それぞれ系統電力を水素に変換し、生成した水素を水素タンク5に送ることができるよう構成されている。
【0063】
そして、エネルギーマネジメントシステム1の制御部13は、予熱器3による2つのSOEC2のそれぞれの予熱を制御する。
【0064】
例えば、DR指令に基づいて、2つのSOEC2を稼働させる。このとき、例えば、系統電力が、需要家4における電力需要を大きく上回るような場合は、多くの電力を水素に変換して水素タンク5に貯蔵することが望まれる。かかる場合、2つのSOEC2を共に稼働させる稼働指令が、受信部131を介して、制御部13に送られる。制御部13は、これに基づいて、2つのSOEC2の双方を予熱するよう、予熱信号を送信する。
【0065】
一方、例えば、系統電力が、需要家4における電力需要を上回るが、その差が比較的少ない場合は、電力を水素に変換する際、1つのSOEC2のみで賄える場合もある。かかる場合、1つのSOEC2のみを稼働させる稼働指令が、受信部131を介して、制御部13に送られる。制御部13は、これに基づいて、一方のSOEC2を予熱するよう、予熱信号を送信する。このとき、他方のSOEC2の予熱は行わない。
【0066】
また、例えば、水素タンク5への水素の供給が必要な場合であって、実施形態1における図2のステップS3において、C2>C10と判断されたとき、SOEC2を予熱することとなる。
【0067】
このとき、要求される水素タンク5への水素の供給速度が速い場合には、2つのSOEC2を共に稼働させる。そのために、制御部13は、2つのSOEC2を共に予熱するよう、予熱信号を送信する。
【0068】
一方、要求される水素タンク5への水素の供給速度が速くない場合には、1つのSOEC2のみを稼働させる。そのために、制御部13は、一方のSOEC2を予熱するよう、予熱信号を送信する。このとき、他方のSOEC2の予熱は行わない。
【0069】
このように、稼働が求められるSOEC2のみを予熱する。これにより、無駄な予熱エネルギーを節約することができる。
その他は、実施形態2と同様である。
【0070】
本形態においては、複数のSOEC2を用いる場合において、エネルギーコストを効果的に低減することができる。その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
なお、上記の説明では、水素生成装置(すなわち、SOEC2)を2個用いる場合について説明したが、水素生成装置を3個以上用いる場合も、同様の制御が可能であり、同様の作用効果を奏する。
【0071】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 エネルギーマネジメントシステム
11 収集部
12 記録部
13 制御部
2 水素生成装置(SOEC)
4 需要家
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9