(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170165
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20221102BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221102BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20221102BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H04R1/00 310F
B60R11/02 S
H04R1/02 102B
H04R7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076098
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 賢司
【テーマコード(参考)】
3D020
5D016
5D017
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BC04
3D020BD02
3D020BD03
3D020BD05
5D016AA01
5D017AE16
(57)【要約】
【課題】共振の発生を抑えることができる振動発生装置を提供すること。
【解決手段】低音域に対応する振動を出力する第一の出力部を有する振動発生部と、一端部が車両のヘッダパネル86に固定され、他端部に前記振動発生部が取り付けられ、前記振動発生部の前記第一の出力部の振動を前記ヘッダパネル86に伝達する振動伝達部材60と、前記振動伝達部材60の振動に応じて弾性変形する弾性変形部材70と、を備え、前記弾性変形部材70は、前記振動発生部と前記車両80の車室内の天井部材とに結合されている振動発生装置1を構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低音域に対応する振動を出力する第一の出力部を有する振動発生部と、
一端部が車両のヘッダパネルに固定され、他端部に前記振動発生部が取り付けられ、前記振動発生部の前記第一の出力部の振動を前記ヘッダパネルに伝達する振動伝達部材と、
前記振動伝達部材の振動に応じて弾性変形する弾性変形部材と、
を備え、
前記弾性変形部材は、
前記振動発生部と前記車両の車室内の天井部材とに結合されている
ことを特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
前記振動発生部は、
高音域に対応する振動を出力する第二の出力部を有し、
前記天井部材は、
孔部が形成されており、
前記弾性変形部材は、
前記振動発生部の前記第二の出力部と前記天井部材の前記孔部とに亘る中空部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記車両の車高方向を上下方向としたときに、前記振動発生部は、前記振動伝達部材の上側に取り付けられており、
前記振動伝達部材には、前記振動発生部の前記第二の出力部の位置に、上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、
前記弾性変形部材の中空部は、
前記振動伝達部材の貫通孔に連通している
ことを特徴とする請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記弾性変形部材は、
前記第一の出力部の振動を前記天井部材に伝達する硬度を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記弾性変形部材は、
第一の出力部による加振力が無い状態での前記振動伝達部材の振動を減衰させる抵抗となる硬度を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の振動発生装置。
【請求項6】
前記弾性変形部材は、
前記振動発生部、又は前記振動伝達部材と、前記天井部材との両方に固定されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の天井部の内装板を振動板としたスピーカ装置を開示する。
特許文献1のスピーカ装置の構成に関し、当該特許文献1の要約書の「解決手段」には、「車両の車室に面する表皮の裏面側に形成された、発泡部材からなる内装板1と、筒状体の外側の表面にねじが形成されたねじ部32と、この筒状体の一方の端部に設けられたフランジ部31とを備えたブラケット3と、このブラケット3のねじ部32に連結されるカプラ部材46を備えたエキサイタ10とから構成され、カプラ部材46はエキサイタ10の振動発生部に接続する振動入力部46Bと、ブラケット3のねじ部32に取り付けられる振動出力部46C、及び振動入力部46Bと前記振動出力部とを結ぶアーム部とから構成され、このカプラ部材46により、エキサイタ10の直下の内装板1とは離れた位置の内装板1を振動させる内装板を振動板としたスピーカ装置である。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行時の車両の揺れやエキサイタ10が発する振動によってブラケット3が共振することがあり、当該共振によって音質が変わってしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、共振の発生を抑えることができる振動発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、低音域に対応する振動を出力する第一の出力部を有する振動発生部と、一端部が車両のヘッダパネルに固定され、他端部に前記振動発生部が取り付けられ、前記振動発生部の前記第一の出力部の振動を前記ヘッダパネルに伝達する振動伝達部材と、前記振動伝達部材の振動に応じて弾性変形する弾性変形部材と、を備え、前記弾性変形部材は、前記振動発生部と前記車両の車室内の天井部材とに結合されていることを特徴とする振動発生装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共振の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る振動発生装置が取り付けられた車両の側面図である。
【
図2】車両の天井側の横断面構成を模式的に示す図である。
【
図3】車両の天井側の縦断面構成を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の変形例に係る振動発生装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る振動発生装置1が取り付けられた車両80の側面図である。
図2は車両80の天井側の横断面構成を模式的に示す図である。
なお、
図2の横断面は、車両80の車高方向Da及び車幅方向Dcを含む面で車両80を切断した面である。また、
図2は、あくまでも模式図であり、各部材の固定構造が適宜に省略されており、また各部材の相対的な大きさも適宜に変更されている。
また以下では、車高方向Daを上下方向と定義する。
【0010】
図1に示すように、車両80は、屋根を構成する外板であるルーフパネル81Rと、前面の窓材であるフロントガラス82Fと、当該フロントガラス82Fの車幅方向Dcの両側を支持する一対のAピラー83と、を備えた自動車である。
図2に示すように、車両80は、車室の天井を構成する天井部材の一つである内装材84を更に備えている。内装材84はヘッドライナーとも称される部材であり、車室空間Sbに面し、ルーフパネル81Rとの間に隙間をあけて設けられている。以下、ルーフパネル81Rと内装材84との間の空間を天井裏空間Saと言う。
この天井裏空間Saには、フロントガラス82Fが嵌まる開口部85の上縁85Uが位置し、また、この天井裏空間Saには、ヘッダパネル86が配置されている。ヘッダパネル86は、ルーフパネル81Rを補強する補強部材の一つであり、金属材から形成された長板状の部材である。かかるヘッダパネル86は、開口部85の上縁85Uに沿って車幅方向Dcに延び、両端が一対のAピラー83に固着されている。
【0011】
図3は、車両80の天井側の縦断面構成を模式的に示す図である。なお、同図の縦断面は、車両80の車高方向Da及び全長方向Dbを含む面で車両80を切断した面である。
図3に示すように、ヘッダパネル86は、車両80の縦断面において、車両80の後方の側がルーフパネル81Rの側に折れ曲がった断面略L字状を成している。すなわち、ヘッダパネル86は、ルーフパネル81Rに対面する主面86Aと、当該主面86Aの後方からルーフパネル81Rの側に向かって車高方向Daに対して傾斜して延びる傾斜面86Bと、を含んでいる。
そして、ヘッダパネル86は、上記開口部85の上縁85Uに主面86Aの先端部86A1が溶接等で固定されることで当該開口部85の上縁85Uを補強し、また傾斜面86Bの上端部86B1がルーフパネル81Rに接着剤等で固定されている。
【0012】
振動発生装置1は、
図3に示すように、車両80に設けられた音源機器90が出力する音響信号が入力されており、当該音響信号に基づいて振動することで、車室内の車室空間Sbに低音域の音(以下、単に「低音」という)、及び、高音域の音(以下、単に「高音」と言う)を発する装置である。本実施形態の振動発生装置1は、天井裏空間Saのヘッダパネル86に取り付けられ、かつ、上記天井部材である内装材84に結合されている。
【0013】
図4は、振動発生装置1の構成を示す斜視図である。
同図に示すように、振動発生装置1は、上記音響信号に基づく振動を出力する振動発生部であるエキサイタ2と、当該エキサイタ2の振動をヘッダパネル86に伝達する振動伝達部材60と、エキサイタ2と内装材84とを結合する弾性変形部材70と、を備えている。
【0014】
[エキサイタ]
図5はエキサイタ2の構成を示す斜視図であり、
図6はエキサイタ2の断面図である。
エキサイタ2は、
図5に示すように、上記音響信号に基づいて、低音に対応する振動を出力する第一の出力部である第一の振動部10と、高音域に対応する振動を出力する第二の出力部である第二の振動部20と、の2つの振動部を備えている。
【0015】
かかるエキサイタ2は、振動伝達部材60を通じて第一の振動部10の振動をヘッダパネル86に伝達することで、当該ヘッダパネル86に連結されているルーフパネル81R及びフロントガラス82Fを、スピーカ装置の主要構成部材である振動板として振動させて車室空間Sbに低音を出力する。これに加え、エキサイタ2は、弾性変形部材70を通じて第一の振動部10の振動を内装材84にも伝達しており、当該振動によって内装材84が振動板として振動することでも低音を出力する。
【0016】
また、車両80の内装材84は、
図4に示すように、天井裏空間Saと車室空間Sbとを連通する孔部84Kが形成されており、エキサイタ2は、第二の振動部20の振動によって高音を当該孔部84Kから車室空間Sbに放射する。
これにより、低音域から高音域の広い周波数帯域の音が車室空間Sbに再生される。
【0017】
本実施形態のエキサイタ2は、
図5に示すように、第一の振動部10と第二の振動部20とが上下に配置されている。具体的には、エキサイタ2は、底面部4Aを有する有底筒状のフレーム4と、フレーム4の開放側の端部(以下、上端部4Bという)の側に設けられたダンパー5と、を有し、上記第一の振動部10がダンパー5を介してフレーム4の天面の側に配置され、上記第二の振動部20がフレーム4の底面部4Aに配置されることで、これら第一の振動部10と第二の振動部20とが上下に配置されている。
【0018】
図6に示すように、第一の振動部10は、第一の振動体12と、第一のボイスコイルボビン13と、を備え、第一の振動体12が上記ダンパー5を介してフレーム4に内設されている。
第一の振動体12は、磁性材料から成る第一のヨーク14と、円盤状の第一の磁石15と、金属材料から成る円盤状の第一の金属板16と、を備え、これらが磁気回路を構成している。
第一のヨーク14は、円形の天面部14Aと、円筒状の側壁部14Bとを有する有天筒状を成し、天面部14Aの天面14A1に、上記第一の磁石15が接着剤で接着され、この第一の磁石15に積層するように上記第一の金属板16が接着剤で接着される。
第一の磁石15、及び第一の金属板16の径はいずれも、第一のヨーク14の側壁部14Bとの間に隙間を形成する大きさであり、この隙間によって磁気回路の第一の磁気ギャップg1が形成されている。
【0019】
第一の振動体12は、第一のヨーク14の側壁部14Bの外周面14B1及び開放側の端部14B2のそれぞれにダンパー5が連結され、第一の振動体12は、これらダンパー5によってフレーム4の天面側で弾性的に支持されている。
ダンパー5はいずれも、第一の振動体12を支持可能な程度の剛性を有した金属製の板状の部材であり、第一の振動体12の振動をフレーム4へ、可能な限り低減させることなく伝達可能に構成されている。本実施形態のダンパー5は、例えばステンレス製の薄板状の基材の面内に、自身の弾性を高めるための適宜形状の多数のスリット孔5A(
図5)が設けられている。
【0020】
第一のボイスコイルボビン13は、フレーム4の内側に設置された円筒状の部材であり、熱伝導性が高い材料(例えば金属)から形成されている。第一のボイスコイルボビン13は、後述する第二の振動体22が備える第二のヨーク24の凹部24Dに一端13Aが固定され、音響信号が流れる第一のボイスコイル17が他端13Bの外周面に巻回されている。この他端13Bが第一の振動体12の近傍まで延設されることで、第一のボイスコイル17が第一の振動体12の第一の磁気ギャップg1内に配置される。
【0021】
かかる構成の第一の振動部10において、音響信号が第一のボイスコイル17に流れると、この第一のボイスコイル17と第一の振動体12との間に音響信号に応じたローレンツ力が生じて第一のボイスコイル17及び第一の振動体12が振動する。第一の振動体12の振動がダンパー5を介してフレーム4に伝わることにより、当該フレーム4が固定された振動伝達部材60に振動が伝えられる。そして、振動伝達部材60の振動がヘッダパネル86を通じてルーフパネル81R及びフロントガラス82Fに伝わり、これらルーフパネル81R及びフロントガラス82Fが振動板として振動することで車室空間Sbに低音が出力される。また、当該振動伝達部材60の振動が弾性変形部材70を通じて内装材84に伝わり、当該内装材84が振動板として振動することでも車室空間Sbに低音が出力される。
【0022】
フレーム4の底面部4Aには円形の開口部6が形成され、この開口部6に第二の振動部20が配置されている。この第二の振動部20は、第二の振動体22と、第二のボイスコイルボビン23と、振動部材21と、を備えている。
【0023】
第二の振動体22は、フレーム4に内設される部材であり、磁性材料であって熱伝導性が高い材料(本実施形態では鉄)から成る第二のヨーク24と、円盤状の第二の磁石25と、金属材料から成る円盤状の第二の金属板26と、を備え、これらが磁気回路を構成している。
第二のヨーク24は、円形の天面部24Aと、円筒状の側壁部24Bと、円環状のフランジ部24Cと、を有する皿状を成し、天面部24Aと側壁部24Bとによって、フレーム4の内側(底面部4Aの側)に凹む凹部24Dが構成されている。第二のヨーク24は、天面部24Aの天面24A1に、上記第二の磁石25が接着剤で接着され、この第二の磁石25に積層するように上記第二の金属板26が接着剤で接着される。
第二の磁石25、及び第二の金属板26の径は、第二のヨーク24の側壁部24Bとの間に隙間を形成する大きさであり、この隙間によって磁気回路の第二の磁気ギャップg2が形成されている。
【0024】
第二のヨーク24は、凹部24Dがフレーム4の内側から底面部4Aの開口部6を覆うようにフランジ部24Cがフレーム4に接着剤で接着される。これにより、第二の振動体22がフレーム4の内側であって開口部6を臨む位置に配置される。
また第二のヨーク24の筒状の凹部24Dには、上記第一の振動部10が備える筒状の第一のボイスコイルボビン13の一端13Aが嵌められ、第二のヨーク24と第一のボイスコイルボビン13とが接着剤で固定される。この固定構造によれば、第二のヨーク24の位置によって第一のボイスコイルボビン13の位置が決まるため、第一のボイスコイルボビン13の位置決めが容易となる。
【0025】
開口部6の開口縁にはエッジ7が設けられている。エッジ7は、振動部材21の振動を大きく低減させることなく当該振動部材21をフレーム4に取り付けるための部材である。エッジ7は、開口部6を囲む円環状を成し、フレーム4の底面部4Aに固定されている。そして、第二の振動部20の振動部材21、及び第二のボイスコイルボビン23はいずれも当該エッジ7に接続されている。
【0026】
第二のボイスコイルボビン23は円筒状の部材であり、一端23Aがエッジ7に接続され、音響信号が流れる第二のボイスコイル27が他端23Bの外周面に巻回されている。この第二のボイスコイルボビン23は、他端23Bが第二の振動体22の近傍まで延設されることで、第二のボイスコイル27が第二の振動体22の磁気回路の第二の磁気ギャップg2内に配置される。
【0027】
振動部材21は、高音域出力専用のスピーカ(すなわちツィーター)のドーム部に用いられる部材であり、例えばシルクから成るドーム形状の部材である。この振動部材21は、フレーム4の外側から開口部6を覆うようにエッジ7に接続される。なお、振動部材21の材質はシルク以外でもよい。
【0028】
かかる構成の第二の振動部20において、音響信号が第二のボイスコイル27に流れると、この第二のボイスコイル27と第二の振動体22との間に音響信号に応じたローレンツ力が生じて第二のボイスコイル27及び第二の振動体22が振動する。第二のボイスコイル27の振動が第二のボイスコイルボビン23を介して振動部材21に伝わることにより、当該振動部材21の振動によって音響信号が空気振動(物理振動)へと変換され、音が振動部材21を介して空気中に出力される。この振動部材21は、上述の通り、高音域出力専用スピーカのドーム部に用いられる部材と同じであるため、振動部材21が出力する音は、第一の振動部10よりも高音となる。
【0029】
また、第二の振動部20において、振動部材21、及び第二のボイスコイルボビン23はいずれもフレーム4に直接固定されるのではなく、エッジ7を介して固定される構成である。このため、第二の振動部20の振動が第一の振動部10によるフレーム4の振動の影響を受け難くなり、歪みが少ない高音質な高音が再生される。
【0030】
さらに、振動部材21は、第一の振動部10の第一のボイスコイルボビン13ではなく、開口部6に配置された第二の振動体22から延びる第二のボイスコイルボビン23に接続されている。第二のボイスコイルボビン23は、一端23Aの側の振動部材21から他端23Bの第二のボイスコイル27までの距離を、第一のボイスコイルボビン13よりも短くすることができる。すなわち、振動部材21が第一のボイスコイルボビン13に接続される構成に比べて、より微細な振動が振動部材21に伝わり易くなり、より肌理の細かい高音を出力できる。
【0031】
[振動伝達部材]
振動伝達部材60は、
図3、及び
図4に示すように、ヘッダパネル86に固定される車両側固定部62と、この車両側固定部62から直線状に延び、その端部64TAが自由端となる延在部64と、を備え、この延在部64の自由端の端部64TAにエキサイタ2が取り付けられている。
【0032】
本実施形態の振動伝達部材60は、車両側固定部62を構成する金属板と、延在部64を構成する金属板とが溶接や接着剤等で固定されることで構成されている。
具体的には、車両側固定部62は、ヘッダパネル86のL字断面に合わせて金属板をL字断面状に折り曲げ加工することで形成される。かかる折り曲げ加工によって、ヘッダパネル86の主面86A、及び傾斜面86Bのそれぞれに面接触する第1固定面62A、及び第2固定面62Bを有した車両側固定部62が得られる。かかる車両側固定部62は、第1固定面62A、及び第2固定面62Bが両面テープやビスなどでヘッダパネル86に強固に固定される。
【0033】
延在部64は、所定の長さの平面視略矩形状の板材であり、エキサイタ2の発熱を長さ方向に伝える高熱伝導性を有し、かつ、エキサイタ2の振動に伴って車高方向Daに撓むことが可能な可撓性を有した金属材料(本実施形態では鉄)によって形成されている。
そして延在部64の一方の端部64TBが車両側固定部62に溶接や接着剤、粘着剤等で強固に固定される。本実施形態では、延在部64の上面64Aが所定面積以上、車両側固定部62の第1固定面62Aの底面に面接合した状態で、これら延在部64と車両側固定部62とが固着されている。
延在部64の他方の端部64TAは、車両側固定部62との結合点65から所定距離だけ延び、当該端部64TAの上面64Aに、エキサイタ2が接着剤や両面テープ、螺子などの任意の固定手段によって固定される。
【0034】
かかる振動発生装置1においては、車両側固定部62が第1固定面62A、及び第2固定面62Bの面によってヘッダパネル86に固定されるため、エキサイタ2の振動がヘッダパネル86に効率良く伝えられる。
また車両側固定部62は、第1固定面62A、及び第2固定面62Bの2箇所でヘッダパネル86の表面に固定されるため、より効率良く振動が伝えられる。
これに加え、車両側固定部62は、ヘッダパネル86との固定箇所が、車両80の全長方向Dbにおいて、L字断面のヘッダパネル86の角部(主面86Aと傾斜面86Bとの交点)を挟んだ2点となっている。これにより、ヘッダパネル86の主面86A、及び傾斜面86Bのいずれか一方のみに、車両側固定部62が固定される構成に比べ、エキサイタ2の振動をヘッダパネル86に効率良く伝えることができる。
【0035】
また、車両80の揺れによってエキサイタ2に大きな加速度の振動が加わり、当該振動によって衝撃音が生じる得る場合でも、可撓性を有した延在64が適度に撓むことで衝撃音が分散される。これにより、エキサイタ2自身が発する振動をヘッダパネル86に十分に伝えつつも、衝撃音の伝達を抑制することができる。
また延在部64が平面視略矩形状であるため、高音域に相当する音の振動が延在部64から発せられ、音質が高められる。これに加え、延在部64に伝熱したエキサイタ2の発熱の熱量を、延在部64の全体の表面から十分に放熱することもでき、エキサイタ2の冷却性能を高めることができる。
【0036】
図3に示すように、振動伝達部材60には、上下方向に貫通する貫通孔64Kが延在部64に形成されており、エキサイタ2は、第二の振動部20が貫通孔64Kに位置するように当該延在部64の上側である上面64Aに固定されている。
かかる振動発生装置1は、内装材84の孔部84Kの概ね直上に、振動伝達部材60の貫通孔64K(すなわち、エキサイタ2の第二の振動部20)が隙間をあけて位置するように設置される。これにより、エキサイタ2の第二の振動部20が発する高音が振動伝達部材60の貫通孔64K、及び、内装材84の孔部84Kを通って車室空間Sbに放射される。
エキサイタ2が延在部64の上面64Aに固定されることでエキサイタ2がヘッダパネル86と同程度の高さ位置に配置されるため、天井裏空間Saの車高方向Daの幅が狭い車種の車両80にも振動発生装置1を設置することができる。
【0037】
[弾性変形部材]
弾性変形部材70は、
図3に示すように、中空筒状(本実施形態では円筒状)の部材であり、一端部70TAと他端部70TBとを貫通した中空部71が内部に形成されている。かかる弾性変形部材70は、エキサイタ2の第一の振動部10による振動伝達部材60の振動によって弾性変形する弾性部材であり、好ましくは樹脂製(例えばクロロプレンゴム)であり、本実施形態では、樹脂を主材とするゴムスポンジが用いられている。
【0038】
弾性変形部材70は、一端部70TAがエキサイタ2に振動伝達部材60を挟んで結合され、他端部70TBが内装材84に結合されている。この場合において、弾性変形部材70の内部の中空部71は、エキサイタ2の第二の振動部20と内装材84の孔部84Kに亘って延びており、振動伝達部材60の貫通孔64Kと内装材84の孔部84Kとに連通し、第二の振動部20が放射する高音が中空部71を通って孔部84Kから車室空間Sbに放射される。
これにより、第二の振動部20が放射する高音を、天井裏空間Saで発散することなく、効率良く車室空間Sbに放射することができる。この中空部71の表面は、高音の吸音を生じるような凹凸が無い滑らかな面となっており、中空部71内を伝播する高音の損失が抑えられている。
【0039】
また、振動発生装置1は、走行時の車両80の揺れによってエキサイタ2に大きな加速度の振動が加わり、当該振動によって振動伝達部材60が共振することがある。これに対して、振動伝達部材60に弾性変形部材70が結合されることで、振動伝達部材60の共振を抑制することができる。
【0040】
これに加え、本実施形態の弾性変形部材70は、エキサイタ2の第一の振動部10による振動伝達部材60の振動を内装材84に伝達し、当該内装材84をスピーカ装置の振動板として振動させる硬度を有しており、これにより、内装材84からも低音が車室空間Sbに放射される。内装材84は、ルーフパネル81R及びフロントガラス82Fよりも、乗員の頭に近いため、より効率良く低音を乗員に聴かせることができる。
また、振動伝達部材60は、ルーフパネル81R及びフロントガラス82Fと、内装材84とは、それぞれの固有共振周波数が異なるため、内装材84を用いない場合に比べ、再生可能な低音域の周波数の帯域が広げられる。
また、弾性変形部材70を通じて内装材84に伝わる振動の周波数は、当該内装材84の硬度によって変わるため、適宜の硬度の弾性変形部材70を用いることで、内装材84から放射させる低音の帯域を変更することができる。
【0041】
なお、弾性変形部材70の振動伝達率は「1」を超えない範囲で、可能な限りに大きいことが好ましい。振動伝達率は、弾性変形部材70を介して内装材84に伝わった力を、エキサイタ2の第一の振動部10による振動伝達部材60の加振力で割った値である。弾性変形部材70の振動伝達率が「1」、又は「1」に近い値であることで、エキサイタ2の第一の振動部10による振動が効率良く内装材84に伝えられることとなる。
【0042】
ここで、硬度が高すぎる等して振動伝達部材60の加振力に対する振動伝達部材60の弾性変形量が小さくなるほど、当該振動伝達部材60の振動の振幅が小さくなり、低音を出力するために必要な振幅の振動がヘッダパネル86に伝えられなくなる。
したがって、本実施形態の弾性変形部材70は、振動伝達部材60の振動の振幅が、弾性変形部材70が結合されていない状態での振幅と略同じになる硬度となっている。
【0043】
また、本実施形態の振動発生装置1は、エキサイタ2が振動伝達部材60の自由端である端部64TAに固定されているため、第一の振動部10の振動停止後から当該振動伝達部材60の振動が収束するまでの収束時間は、エキサイタ2が固定端に固定されている場合に比べて長くなる。この結果、何ら対策を施さなければ、音響信号に基づかない残響音が比較的長い時間、発生する原因となる。
これに対し、本実施形態の振動伝達部材60は、第一の振動部10の振動が停止した後(すなわち、第一の振動部10による加振力が無い状態)において、振動伝達部材60の振動を減衰させる抵抗となる硬度を有している。これにより、第一の振動部10の振動停止後には、弾性変形部材70が振動を減衰させる抵抗源として機能するため、振動発生装置1の過渡特性を向上させることができる。
【0044】
弾性変形部材70は、エキサイタ2に振動伝達部材60を挟んで結合され側の一端部70TAが当該振動伝達部材60に接着等の適宜の固定手段によって固定されている。他端部70TBの内装材84への固定については任意であるが、他端部70TBを内装材84へ接着剤等で固定することで、振動伝達部材60の振動に伴って弾性変形部材70が内装材84から離間することがなく、振動伝達部材60の振動が効率良く内装材84へ伝えられる。
【0045】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0046】
本実施形態の振動発生装置1は、低音域に対応する振動を出力する第一の振動部10を有するエキサイタ2と、一端部が車両80のヘッダパネル86に固定され、他端部にエキサイタ2が取り付けられ、エキサイタ2の振動をヘッダパネル86に伝達する振動伝達部材60と、振動伝達部材60の振動に応じて弾性変形する弾性変形部材70と、を備ええている。この弾性変形部材70は、エキサイタ2と車両80の内装材84とに結合されている。
これにより、走行時の車両80の揺れによってエキサイタ2に大きな加速度の振動が加わった場合でも、弾性変形部材70を備えることで、当該振動による振動伝達部材60の共振を抑えることができる。
【0047】
本実施形態の振動発生装置1において、エキサイタ2は、高音域に対応する振動を出力する第二の振動部20を有し、内装材84には孔部84Kが形成されている。また、弾性変形部材70は、エキサイタ2の第二の振動部20と内装材84の孔部84Kとに亘る中空部71を有している。
これにより、第二の振動部20が放射する高音を、天井裏空間Saで発散することなく、効率良く車室空間Sbに放射することができる。
【0048】
本実施形態の振動発生装置1において、車両80の車高方向Daを上下方向としたときに、エキサイタ2は、振動伝達部材60の上側に取り付けられており、振動伝達部材60には、エキサイタ2の第二の振動部20の位置に、上下方向に貫通する貫通孔64Kが設けられている。また、弾性変形部材70の中空部71は、振動伝達部材60の貫通孔64Kに連通している。
これにより、エキサイタ2がヘッダパネル86と同程度の高さ位置に配置されるため、天井裏空間Saの車高方向Daの幅が狭い車種の車両80にも振動発生装置1を設置することができる。
【0049】
本実施形態の振動発生装置1において、弾性変形部材70は、第一の振動部10の振動を内装材84に伝達する硬度を有している。
これにより、内装材84からも低音が車室空間Sbに放射することができる。また、振動伝達部材60は、ルーフパネル81R及びフロントガラス82Fと、内装材84とは、それぞれの固有共振周波数が異なるため、内装材84を用いない場合に比べ、再生可能な低音域の周波数の帯域が広げられる。
【0050】
本実施形態の振動発生装置1において、弾性変形部材70は、エキサイタ2、又は振動伝達部材60と、内装材84との両方に固定されている。
これにより、振動伝達部材60の振動に伴って弾性変形部材70が内装材84から離間することがなく、振動伝達部材60の振動が効率良く内装材84へ伝えられる。
【0051】
本実施形態の振動発生装置1において、弾性変形部材70は、エキサイタ2が取り付けられた振動伝達部材60と内装材84との両方に固定されている。
これにより、振動伝達部材60の振動に伴って弾性変形部材70が内装材84から離間することがなく、振動伝達部材60の振動が効率良く内装材84へ伝えられる。
【0052】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0053】
例えば、エキサイタ2は、
図7に示すように、振動伝達部材60の下面に取り付けられてもよい。この場合、弾性変形部材70の一端部70TAは、振動伝達部材60に直接結合され、接着剤などで固定される。
【0054】
また例えば、エキサイタ2は、高音域に対応する振動を出力する第二の振動部20を備えていなくともよい。
【0055】
また例えば、振動伝達部材60は、車両側固定部62を必ずしも備える必要はない。すなわち、振動伝達部材60は、延在部64の上面64Aがヘッダパネル86の主面86Aに固定されてもよいし、延在部64のフロントガラス82Fの側の端部がヘッダパネル86の主面86Aの先端部86A1に固定されてもよい。
【0056】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0057】
1 振動発生装置
2 エキサイタ(振動発生部)
10 第一の振動部(第一の出力部)
20 第二の振動部(第二の出力部)
60 振動伝達部材
64 延在部
64K 貫通孔
70 弾性変形部材
70TA 一端部
70TB 他端部
71 中空部
80 車両
81R ルーフパネル
82F フロントガラス
84 内装材(天井部材)
84K 孔部
90 音源機器
Da 車高方向
Db 全長方向
Dc 車幅方向
Sa 天井裏空間
Sb 車室空間