(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170178
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタのノズル状態の検査方法およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076114
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
(72)【発明者】
【氏名】加藤 巧
(72)【発明者】
【氏名】奥野 浩
(72)【発明者】
【氏名】丹山 哲教
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB40
2C056EB46
2C056EE17
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】透明なインクを吐出するノズルの状態の検査の容易化
【解決手段】インクジェットプリンタのノズル状態の検査方法は、複数の第1ノズル41Gから記録媒体に向かって透明な第1インクを吐出させ、記録媒体上に第1インクを着弾させる第1ステップと、第1ステップの後に記録媒体に着弾した第1インクを硬化させる第2ステップと、第2ステップの後に複数の第2ノズル41Cから記録媒体に向かって有色の第2インクを吐出させ、第1インクの着弾位置の近傍に第2インクを着弾させる第3ステップと、を含むテストチャートの形成ステップと、テストチャートにおける第2インクのインクドットの濡れ状態に基づいて複数の第1ノズル41Gの状態を判定する第4ステップと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な第1インクを吐出する複数の第1ノズルと、有色の第2インクを吐出する複数の第2ノズルとを有する記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタにおいて前記複数の第1ノズルの状態を検査する方法であって、
前記複数の第1ノズルから記録媒体に向かって前記第1インクを吐出させ、前記記録媒体上に前記第1インクを着弾させる第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記記録媒体に着弾した前記第1インクを硬化させる第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記複数の第2ノズルから前記記録媒体に向かって前記第2インクを吐出させ、前記第1インクの着弾位置の近傍に前記第2インクを着弾させる第3ステップと、を含む、テストチャートの形成ステップと、
前記テストチャートにおける前記第2インクのインクドットの濡れ状態に基づいて前記複数の第1ノズルの状態を判定する第4ステップと、を含む、
インクジェットプリンタのノズル状態の検査方法。
【請求項2】
前記複数の第1ノズルおよび前記複数の第2ノズルは、それぞれ第1方向に並んで第1ノズル列および前記第2ノズル列を形成しており、
前記第1ステップでは、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対的に前記第1方向に直交する第2方向に移動させながら、前記記録媒体に前記第1インクを着弾させ、
前記第3ステップでは、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して相対的に前記第2方向に移動させながら、前記第1方向に関して前記第1インクの着弾位置の近傍に前記第2インクを着弾させる、
請求項1に記載のインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法。
【請求項3】
前記第1インクの着弾位置と前記複第2ノズルの着弾位置とは、前記第1方向に関して、交互となるようにずれている、
請求項2に記載のインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法。
【請求項4】
前記第1ノズル列における前記複数の第1ノズルのピッチ、および、前記第2ノズル列における前記複数の第2ノズルのピッチは、第1のピッチであり、
前記第1インクの硬化後のドット径は、前記第1のピッチの半分以上かつ前記第1のピッチ未満である、
請求項3に記載のインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法。
【請求項5】
前記第2インクは、光硬化性のインクであり、
前記テストチャートの形成ステップは、前記第3ステップの後であって前記第4ステップの前に、前記記録媒体に着弾した前記第2インクに前記第2インクを硬化させる光を照射することにより前記第2インクを硬化させるステップをさらに含む、
請求項1~4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法。
【請求項6】
前記第1インクは、光硬化性のインクであり、
前記第2ステップでは、前記記録媒体に着弾した前記第1インクに前記第1インクを硬化させる光を照射することにより前記第1インクを硬化させる、
請求項1~5のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法。
【請求項7】
記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台上の前記記録媒体に向かって透明な第1インクを吐出する複数の第1ノズルと、前記支持台上の前記記録媒体に向かって有色の第2インクを吐出する複数の第2ノズルと、を有する記録ヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数の第1ノズルの状態を検査するためのテストチャートを作成するモードを選択可能に構成されたモード選択部と、
前記モード選択部における選択を受け、前記テストチャートを前記記録媒体上に作成するテストチャート作成部と、を備え、
前記テストチャート作成部は、
前記複数の第1ノズルから前記記録媒体に向かって前記第1インクを吐出させ、前記記録媒体上に前記第1インクを着弾させる第1作成部と、
前記記録媒体上に着弾した前記第1インクが硬化した後に、前記複数の第2ノズルから前記記録媒体に向かって前記第2インクを吐出させ、前記第1インクの着弾位置の近傍に前記第2インクを着弾させる第2作成部と、を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記複数の第1ノズルは、第1方向に並んで第1ノズル列を形成し、
前記複数の第2ノズルは、前記第1方向に並んで第2ノズル列を形成し、
前記記録ヘッドと前記支持台上の前記記録媒体とのうちの少なくとも一方を移動させることにより、前記記録ヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向に移動させる第1移動装置をさらに備え、
前記第2作成部は、前記第1移動装置を制御して、前記第2インクの着弾位置が前記第1方向に関して前記第1インクの着弾位置の近傍となるような位置に前記記録媒体を位置付けた後に、前記複数の第2ノズルから前記第2インクを吐出させる、
請求項7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記第1ノズル列における前記複数の第1ノズルのピッチと前記第2ノズル列における前記複数の第2ノズルのピッチとは、同じピッチであり、
前記第2作成部は、前記第1移動装置を制御して、前記第1インクの着弾位置と前記第2インクの着弾位置とが前記第1方向に関して交互となるような位置に前記記録媒体を位置付ける、
請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記第1インクの硬化後のドット径は、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルのピッチの半分以上かつ前記第1ノズルおよび前記第2ノズルのピッチ未満である、
請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記記録ヘッドと前記支持台上の前記記録媒体とのうちの少なくとも一方を移動させることにより、前記記録媒体に対して前記記録ヘッドを前記第1方向に直交する第2方向に移動させる第2移動装置をさらに備え、
前記第1作成部は、前記第2移動装置を制御して前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して前記第2方向に移動させながら、前記記録媒体に前記第1インクを着弾させ、
前記第2作成部は、前記第2移動装置を制御して前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して前記第2方向に移動させながら、前記複数の第2ノズルから前記第2インクを吐出させる、
請求項8~10のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記第1インクおよび前記第2インクは、光硬化性のインクであり、
前記第1インクおよび前記第2インクを硬化させる光を前記支持台上の前記記録媒体に向かって照射する光照射装置をさらに備え、
前記テストチャート作成部は、
前記第1作成部によって前記第1インクが吐出された後であって前記第2作成部によって前記第2インクが吐出される前に、前記光照射装置を制御して前記記録媒体上の前記第1インクに光を照射し、前記記録媒体上の前記第1インクを硬化させる第1硬化処理部と、
前記第2作成部によって前記第2インクが吐出された後に、前記光照射装置を制御して前記記録媒体上の前記第2インクに光を照射し、前記記録媒体上の前記第2インクを硬化させる第2硬化処理部と、を備えている、
請求項7~11のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのノズル状態の検査方法と、インクジェットプリンタと、に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタのノズルの状態をテストチャートを印刷して確認する技術が従来から知られている。例えば特許文献1には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各チャート群を有するテストチャートを用紙にプリンタで印刷し、印刷されたテストチャートを画像読取装置で読み取るインクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置によれば、例えばノズル抜けなどの吐出不良のノズルの位置や不良の度合いを正確に検出することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタの中には、透明インクを吐出するように構成されたものが存在する。透明インクを吐出するノズルの状態もテストチャートによって検査されるが、透明インクのテストチャートは視認性が悪い。そのため、。透明インクを吐出するノズルの場合は、テストチャートによる検査が難しい。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明なインクを吐出するノズルの状態の検査が容易にできるインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法を提供することである。また、透明なインクを吐出するノズルの状態の検査を容易にするインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するインクジェットプリンタのノズル状態の検査方法は、透明な第1インクを吐出する複数の第1ノズルと、有色の第2インクを吐出する複数の第2ノズルとを有する記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタにおいて前記複数の第1ノズルの状態を検査する方法であって、前記複数の第1ノズルから記録媒体に向かって前記第1インクを吐出させ、前記記録媒体上に前記第1インクを着弾させる第1ステップと、前記第1ステップの後に、前記記録媒体に着弾した前記第1インクを硬化させる第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記複数の第2ノズルから前記記録媒体に向かって前記第2インクを吐出させ、前記第1インクの着弾位置の近傍に前記第2インクを着弾させる第3ステップと、を含む、テストチャートの形成ステップと、前記テストチャートにおける前記第2インクのインクドットの濡れ状態に基づいて前記複数の第1ノズルの状態を判定する第4ステップと、を含む。
【0007】
上記インクジェットプリンタのノズル状態の検査方法によれば、テストチャートにおいて、透明な第1インクの着弾位置の近傍に有色の第2インクが着弾する。第1インクを吐出する第1ノズルに異常があり、第1インクが吐出されなかったり、着弾位置がずれたりした場合、第1インクの吐出が正常な場合と比べて、第2インクの濡れ状態が変化する。そのため、有色の第2インクの濡れ状態を検査することで、透明な第1インクを吐出する第1ノズルの状態を検査することが可能である。よって、上記インクジェットプリンタのノズル状態の検査方法によれば、透明な第1インクを吐出する第1ノズルの状態の検査を容易にすることができる。
【0008】
ここに開示するインクジェットプリンタは、記録媒体を支持する支持台と、記録ヘッドと、制御装置と、を備える。前記記録ヘッドは、前記支持台上の前記記録媒体に向かって透明な第1インクを吐出する複数の第1ノズルと、前記支持台上の前記記録媒体に向かって有色の第2インクを吐出する複数の第2ノズルと、を有する。前記制御装置は、前記複数の第1ノズルの状態を検査するためのテストチャートを作成するモードを選択可能に構成されたモード選択部と、前記モード選択部における選択を受け、前記テストチャートを前記記録媒体上に作成するテストチャート作成部と、を備えている。前記テストチャート作成部は、第1作成部と、第2作成部と、を備えている。前記第1作成部は、前記複数の第1ノズルから前記記録媒体に向かって前記第1インクを吐出させ、前記記録媒体上に前記第1インクを着弾させる。前記第2作成部は、前記記録媒体上に着弾した前記第1インクが硬化した後に、前記複数の第2ノズルから前記記録媒体に向かって前記第2インクを吐出させ、前記第1インクの着弾位置の近傍に前記第2インクを着弾させる。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、第1ノズルの状態を検査するためのテストチャートを作成するモードを選択すれば、透明な第1インクの着弾位置の近傍に有色の第2インクを着弾させたテストチャートを作成することができる。よって、上記した検査方法と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】フロントカバーを開けた状態のプリンタの正面図である。
【
図3】キャリッジの下面の構成を模式的に示す平面図である。
【
図5】テストチャートを作成し、第1ノズルの状態を検査するプロセスを示すフローチャートである。
【
図8】シアンインクのインクドットの列を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。符号Zは、上下方向を示している。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ10は、ケース11と、フロントカバー12とを備えている。
図2は、フロントカバー12を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。
図2に示すように、ケース11の前部には、開口が形成されている。フロントカバー12は、ケース11の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー12は、後端を軸に回転可能なように、ケース11に支持されている。フロントカバー12には、窓部12aが設けられている。窓部12aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部12aを通じてケース11の内部空間を視認することが可能である。
【0015】
図2に示すように、プリンタ10は、フラットベッド20と、ベッド移動装置25と、キャリッジ30と、キャリッジ移動装置35と、記録ヘッド40と、光照射装置50と、制御装置100(
図1参照)と、を備えている。
【0016】
フラットベッド20は、被印刷物を支持する支持台である。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、平板状の部材である。フラットベッド20は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド20は、ケース11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。フラットベッド20の上面には、被印刷物が載置される。記録ヘッド40のノズル41G~41K(
図3参照)の状態を検査する際には、被印刷物として、テストチャートを印刷するための記録媒体5が使用される。記録媒体5は、例えば、記録用紙である。ただし、記録媒体5は、テストチャートを印刷することが可能な限りで特に限定されない。
【0017】
フラットベッド20の下方には、ベッド移動装置25が配置されている。ベッド移動装置25は、フラットベッド20を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる。フラットベッド20は、ベッド移動装置25によって下方から支持されている。ベッド移動装置25は、副走査方向移動機構25Xと、上下方向移動機構25Zとを備えている。上下方向移動機構25Zは、フラットベッド20を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動機構25Zは、副走査方向移動機構25Xによって下方から支持されている。副走査方向移動機構25Xは、上下方向移動機構25Zを支持して副走査方向Xに移動させる。副走査方向移動機構25Xは、記録ヘッド40とフラットベッド20上の記録媒体5とのうちの少なくとも一方を移動させることにより、記録ヘッド40に対して記録媒体5を副走査方向Xに移動させる第1移動装置の一例である。なお、ベッド移動装置25の構成は限定されない。例えば、副走査方向移動機構25Xと上下方向移動機構25Zとは、上下の位置関係が逆でもよい。
【0018】
キャリッジ30は、記録ヘッド40および光照射装置50を搭載している。キャリッジ30は、フラットベッド20の上方に配置されている。キャリッジ30は、フラットベッド20と対向するように設けられている。キャリッジ30は、キャリッジ移動装置35によって主走査方向Yに移動される。キャリッジ移動装置35は、記録ヘッド40とフラットベッド20上の記録媒体5とのうちの少なくとも一方を移動させることにより、記録媒体5に対して記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させる第2移動装置の一例である。キャリッジ移動装置35は、ガイドレール36と、ベルト37と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ38(
図4参照)とを備えている。
【0019】
図2に示すように、ガイドレール36は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ30は、ガイドレール36に摺動自在に係合している。キャリッジ30には無端状のベルト37が固定されている。ベルト37は、ガイドレール36の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ38が取り付けられている。キャリッジモータ38が駆動するとプーリが回転し、ベルト37が走行する。それにより、キャリッジ30がガイドレール36に沿って主走査方向Yに移動する。
【0020】
図3は、キャリッジ30の下面を示す平面図である。
図3に示すように、記録ヘッド40は、キャリッジ30の下面に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20と対向している。記録ヘッド40は、ここでは、5つのインクヘッド40G、40C、40M、40Y、および40Kを備えている。ただし、記録ヘッド40が備えるインクヘッドの数は限定されない。インクヘッド40G、40C、40M、40Y、および40Kは、ここでは、いずれも副走査方向Xに延びている。インクヘッド40G、40C、40M、40Y、および40Kは、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0021】
インクヘッド40Gは、複数の第1ノズル41Gを備えている。複数の第1ノズル41Gは、副走査方向Xに並んで第1ノズル列42Gを形成している。
【0022】
インクヘッド40G以外のインクヘッド40C~40Kは、副走査方向Xに関してインクヘッド40Gと異なる位置に配置されている。インクヘッド40Gとインクヘッド40C~40Kとは、いわゆるスタガ配置で配置されている。ここでは、インクヘッド40C~40Kの一部は、副走査方向Xに関してインクヘッド40Gと重なっており、他の一部はインクヘッド40Gとずれている。インクヘッド40Cは、複数の第2ノズル41Cを備えている。複数の第2ノズル41Cは、副走査方向Xに並んで第2ノズル列42Cを形成している。インクヘッド40Mは、複数の第3ノズル41Mを備えている。複数の第3ノズル41Mは、副走査方向Xに並んで第3ノズル列42Mを形成している。インクヘッド40Yは、複数の第4ノズル41Yを備えている。複数の第4ノズル41Yは、副走査方向Xに並んで第4ノズル列42Yを形成している。インクヘッド40Kは、複数の第5ノズル41Kを備えている。複数の第5ノズル41Kは、副走査方向Xに並んで第5ノズル列42Kを形成している。
【0023】
図3では、第1ノズル列42G~第5ノズル列42Kを形成する第1ノズル41G~第5ノズル41Kの数はそれぞれ10個に図示されているが、実際にはもっと多数かつ高密度(例えば、1インチ当たり360個=360dpi)で形成されている。第1ノズル列42G~第5ノズル列42Kを形成する第1ノズル41G~第5ノズル41Kの数およびピッチは、限定されない。第1ノズル列42Gにおける複数の第1ノズル41Gのピッチ~第5ノズル列42Kにおける複数の第5ノズル41Kのピッチは、ここでは全て同じピッチPである。
【0024】
ノズル41G~41Kは、それぞれ、インクが貯留される圧力室に連通している。記録ヘッド40には、圧力室をそれぞれ膨張/収縮させる複数のアクチュエータが設けられている。アクチュエータは、例えば圧電素子等である。インクは、アクチュエータが駆動して圧力室が膨張/収縮されることによってノズル41G~41Kから吐出される。アクチュエータには、アクチュエータを駆動させるための駆動波形が印加される。駆動波形は、異なるサイズのインク滴(例えば、大サイズ、中サイズ、小サイズ)に対応する複数の部分を含んでいる。アクチュエータは、駆動波形の印加される部分に応じて、吐出するインク滴のサイズを変更可能なように構成されている。
【0025】
第1ノズル列42G~第5ノズル列42Kには、それぞれ、図示しないインクチューブによってインクカートリッジ45が接続されている。
図2に示すように、インクカートリッジ45は、インクカートリッジ収容部46に収容されている。第1ノズル列42G~第5ノズル列42Kには、それぞれ異なるインクカートリッジ45が接続されている。本実施形態では、記録ヘッド40から吐出されるインクは、光硬化性インクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。
【0026】
本実施形態では、複数の第1ノズル41Gには、透明なグロスインクを貯留するインクカートリッジ45が接続されている。複数の第1ノズル41Gは、フラットベッド20上の記録媒体5に向かってグロスインクを吐出する。複数の第2ノズル41Cには、シアンインクを貯留するインクカートリッジ45が接続されている。複数の第2ノズル41Cは、フラットベッド20上の記録媒体5に向かってシアンインクを吐出する。以下同様に、第3ノズル41M、第4ノズル41Y、および第5ノズル41Kは、フラットベッド20上の記録媒体5に向かって、それぞれ、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクを吐出する。ただし、複数ノズル列のノズルから吐出されるインクの種類は、少なくとも1つのノズル列のノズルから吐出されるインクが透明インクであること、および、少なくとも1つのノズル列のノズルから吐出されるインクが有色のインクであることを除き、特に限定されない。
【0027】
光照射装置50は、キャリッジ30に設けられている。ここでは、光照射装置50は、記録ヘッド40の左方に設けられている。光照射装置50は、光硬化性インクを硬化させる光をフラットベッド20上の記録媒体5に向かって照射する。
図3に示すように、光照射装置50は、光を生成する光源51と、光源51からの光を外部に向かって照射する照射口52とを備えている。光源51は、例えば、複数の紫外線照射LEDから構成されている。照射口52は、ここでは、光を通過させるカバーが設けられた開口部である。ただし、照射口52は、カバー等に覆われない単なる開口部でもよい。照射口52は、副走査方向Xに延びている。
【0028】
図4は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図4に示すように、制御装置100は、副走査方向移動機構25X、上下方向移動機構25Z、キャリッジモータ38、記録ヘッド40、および光照射装置50の光源51に電気的に接続され、それらの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0029】
図4に示すように、制御装置100は、モード選択部110と、画像作成部120と、テストチャート作成部130と、を備えている。モード選択部110は、ここでは、印刷画像データに基づいて画像を作成する印刷モードと、第1ノズル41G~第5ノズル41Kの状態をそれぞれ検査するためのテストチャートを作成するテスト印刷モードと、のうちの一方のモードを選択可能に構成されている。画像作成部120は、モード選択部110における選択を受け、印刷画像データに基づく画像を作成する。テストチャート作成部130は、モード選択部110における選択を受け、テストチャートを記録媒体5上に作成する。制御装置100は上記した以外の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
【0030】
図4に示すように、テストチャート作成部130は、グロスインクを吐出する第1ノズル41Gの状態を検査するためのテストチャートを作成する処理部として、第1作成部131と、第2作成部132と、第1硬化処理部133と、第2硬化処理部134と、ドット制御部135と、を備えている。第1作成部131は、複数の第1ノズル41Gから記録媒体5に向かってグロスインクを吐出させ、記録媒体5上にグロスインクを着弾させる。詳しくは、第1作成部131は、キャリッジ移動装置35を制御して記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させながら、記録媒体5にグロスインクを着弾させる。これにより、主走査方向Yおよび副走査方向Xにマトリクス状に並ぶ複数のグロスインクのインクドット(硬化前)が形成される。
【0031】
第2作成部132は、記録媒体5上に着弾したグロスインクが硬化した後に、有色インクを吐出するうちの1つのノズル列のノズルから記録媒体5に向かって有色インクを吐出させ、グロスインクの着弾位置の近傍に当該有色インクを着弾させる。ここでは、第2作成部132は、記録媒体5上に着弾したグロスインクが硬化した後に、第2ノズル列42Cのノズル41Cから記録媒体5に向かってシアンインクを吐出させる。ただし、第2作成部132によって吐出されるインクは有色インクであればよく、シアンインクには限定されない。第1硬化処理部133は、第1作成部131によってグロスインクが吐出された後であって第2作成部132によってシアンインクが吐出される前に、光照射装置50を制御して記録媒体5上のグロスインクに光を照射し、記録媒体5上のグロスインクを硬化させる。第2硬化処理部134は、第2作成部132によってシアンインクが吐出された後に、光照射装置50を制御して記録媒体5上のシアンインクに光を照射し、記録媒体5上のシアンインクを硬化させる。
【0032】
本実施形態では、第2作成部132は、ベッド移動装置25を制御して、シアンインクの着弾位置が副走査方向Xに関してグロスインクの着弾位置の近傍となるような位置に記録媒体5を位置付けた後に、複数の第2ノズル41Cからシアンインクを吐出させるように構成されている。大きく見ると、第2作成部132は、副走査方向Xに関するグロスインクの着弾領域と第2ノズル列42Cとが重なるように、フラットベッド20を移動させる。詳細には、第2作成部132は、ベッド移動装置25を制御して、グロスインクの着弾位置とグロスインクの着弾位置とが副走査方向Xに関して交互となるような位置に記録媒体5を位置付ける。その後、第2作成部132は、キャリッジ移動装置35を制御して記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させながら、第2ノズル41Cからシアンインクを吐出させる。これにより、主走査方向Yおよび副走査方向Xにマトリクス状に並ぶ複数のシアンインクのインクドット(硬化前)が形成される。シアンインクのインクドットは、副走査方向Xに関して、グロスインクのインクドットの形成位置からノズルピッチPの半分1/2Pだけずれて形成される。
【0033】
ドット制御部135は、第1ノズル41Gに接続されたアクチュエータを制御して、グロスインクの硬化後のドット径を第1ノズル41G~第5ノズル41KのピッチPの半分1/2P以上かつノズルピッチP未満に制御する。グロスインクを吐出するときに使用される駆動波形の部分は、硬化後のドット径が第1ノズル41G~第5ノズル41Kのノズルピッチの半分以上かつノズルピッチ未満となるように予め選択されている。シアンインクの液滴サイズは特に限定されないが、グロスインクと同じ液滴サイズであってもよい。
【0034】
図示は省略するが、テストチャート作成部130は、シアンインクを吐出する第2ノズル41Cの状態を検査するためのテストチャートを作成する処理部も備えている。この処理部は、第1作成部131および第1硬化処理部133と同様の処理により、第2ノズル41Cの状態を検査するためのテストチャートを作成する。詳しくは、上記処理部は、キャリッジ移動装置35を制御して記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させながら、記録ヘッド40を制御して記録媒体5にシアンインクを着弾させる。これにより、主走査方向Yおよび副走査方向Xにマトリクス状に並ぶ複数のシアンインクのインクドット(硬化前)が形成される。その後、上記処理部は、光照射装置50を制御して記録媒体5上のシアンインクに光を照射し、記録媒体5上のシアンインクを硬化させる。第3ノズル41M~第5ノズル41Kの状態を検査するためのテストチャートの作成についても同様である。これらのテストチャートは、同じ記録媒体5上に場所を変えて作成されてもよく、異なる記録媒体5上に作成されてもよい。
【0035】
[テストチャートの作成]
以下では、グロスインクを吐出する第1ノズル41Gの状態を検査するためのテストチャート(以下、単にテストチャートTと呼ぶ、
図6参照)を作成し、テストチャートTに基づいて第1ノズル41Gの状態を検査するプロセスについて説明する。
図5は、テストチャートTを作成し、第1ノズル41Gの状態を検査するプロセスを示すフローチャートである。
図6は、テストチャートTの模式的な平面図である。なお、
図5では図示を省略するが、フローチャートのスタート時点で、テスト印刷モードが選択されている。
図5に示すように、テストチャートTを作成するプロセスでは、ステップS01において、複数の第1ノズル41Gから記録媒体5に向かってグロスインクが吐出され、記録媒体5上にグロスインクを着弾させる。ステップS01においては、記録ヘッド40は主走査方向Yに移動されているため、グロスインクのインクドット(硬化前)は、主走査方向Yおよび副走査方向Xにマトリクス状に並ぶように形成される。
図6の符号Dgは、グロスインクのインクドットDgを示す。
図6に示すように、テストチャートTにおいて、複数のグロスインクのインクドットDgの副走査方向Xのピッチは、第1ノズル41G~第5ノズル41KのノズルピッチPに等しい。複数のグロスインクのインクドットDgの主走査方向Yのピッチは、キャリッジ30の移動速度と第1ノズル41Gからグロスインクが吐出される時間間隔によって定まる。
【0036】
ステップS02では、記録媒体5に着弾したグロスインクに光照射装置50からの光を照射することによりグロスインクを硬化させる。本実施形態では、キャリッジ30が右方に移動しながらグロスインクが吐出され、その間、記録ヘッド40よりも左方に配置された光照射装置50は光を照射している。そのため、記録媒体5に着弾したグロスインクに順次光が照射される。ただし、ステップS02では、グロスインクの吐出後もっと時間が経過してから、グロスインクに光を当ててもよい。そのようにすると、硬化するまでにグロスインクが記録媒体5上で濡れ広がるため、硬化後のグロスインクのインクドットDgの直径を大きくすることができる。硬化後のグロスインクのインクドットDgの直径は、グロスインクの液滴のサイズとともに、グロスインクの吐出から硬化させるまでの時間によっても制御することができる。ステップS02では、硬化後のグロスインクのインクドットDgの直径は、第1ノズル41G~第5ノズル41KのノズルピッチPの半分以上、かつ、ノズルピッチP未満に制御される。
【0037】
続くステップS03Aでは、ベッド移動装置25が制御され、フラットベッド20が副走査方向Xに移動される。これにより、大きく見ると、記録媒体5は、副走査方向Xに関するグロスインクの着弾領域が第2ノズル列42Cと重なるように移動される。詳細には、記録媒体5は、グロスインクの着弾位置とシアンインクの着弾位置とが副走査方向Xに関して交互となるような位置に移動される。すなわち、グロスインクの着弾位置とシアンインクの着弾位置とが、副走査方向Xに関して、ノズルピッチPの半分1/2Pだけずれるような位置に、記録媒体5が移動される。ステップS03Bでは、記録ヘッド40が主走査方向Yに移動されながら、第2ノズル41Cからシアンインクが吐出される。これにより、
図6に示すように、ステップS03AおよびS03Bにおいて、グロスインクの着弾位置の近傍(ここでは、副走査方向XにノズルピッチPの半分1/2Pだけずれた位置)にシアンインクが着弾する。
【0038】
図6の符号Dcは、シアンインクのインクドットDcを示す。
図6に示すように、テストチャートTにおいて、複数のシアンインクのインクドットDcの副走査方向Xのピッチも、第1ノズル41G~第5ノズル41KのノズルピッチPに等しい。
図6に示すように、シアンインクのインクドットDcは、副走査方向Xに関して、グロスインクのインクドットDgの形成位置からノズルピッチPの半分1/2Pだけずれて形成される。複数のシアンインクのインクドットDcの主走査方向Yのピッチは、キャリッジ30の移動速度と第2ノズル41Cからシアンインクが吐出される時間間隔によって定まるが、ここでは、グロスインクのインクドットDgの主走査方向Yのピッチと同じに設定されている。
【0039】
テストチャートTの成形ステップは、記録媒体5に着弾したシアンインクに光を照射することによりシアンインクを硬化させるステップS03Cをさらに含んでいる。ステップS03Cは、ステップS03AおよびS03Bの後であってステップS04の前に行われる。ステップS03Cでは、グロスインクのインクドットDgの間に着弾したシアンインクのインクドットDcに光照射装置50からの光を照射して硬化させる。これにより、グロスインクを吐出する第1ノズル41Gの状態を検査するためのテストチャートTが完成する。他のインクのテストチャートは、記録媒体5上の場所を変えて、ステップS01およびS02と同様に作成されるとよい。ただし、
図5では、他のノズル41C~41Kの状態を検査するためのテストチャートの作成ステップは図示省略する。
【0040】
[第1ノズルの状態の検査]
図5に示すように、テストチャートTの作成に続くステップS04では、テストチャートTにおけるシアンインクのインクドットDcの濡れ状態に基づいて、複数の第1ノズル41Gの状態を判定する。この判定は、ユーザーがテストチャートTを目視確認することによって行われる。
【0041】
グロスインクを吐出するノズルの状態の検査は、従来、有色インクと同様のテストチャートを作成して行われていた。従来の方法によれば、グロスインクを吐出するノズルを検査するテストチャートは、記録媒体にグロスインクのインクドットだけを形成することによって作成されていた。しかし、グロスインクは透明であるため、テストチャートは視認性が悪く、テストチャートからノズルの状態を判定するのは難しかった。
【0042】
そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、テストチャートTの視認性を向上させるため、グロスインクと有色インクとによってテストチャートTを作成する(ステップS01~S03C)ように構成されている。以下、第1ノズル41Gからグロスインクが吐出されない異常(「ノズル抜け」とも呼ぶ)、および、グロスインクの着弾位置がずれる異常(「飛行曲がり」とも呼ぶ)の2つの異常が第1ノズル41Gに発生した場合を例に、その確認方法を説明する。
【0043】
図7は、テストチャートTの模式的な縦断面図である。
図7の左右方向は、副走査方向Xである。グロスインクのインクドットDgは、主走査方向Y(
図7の紙面垂直方向)に延びる列を形成している。
図7において、グロスインクのインクドットDgの列Cg1は、正常なグロスインクのインクドットDgの列を示す。グロスインクのインクドットDgの列Cg3は、ノズル抜けの場合のグロスインクのインクドットDgの列を示す。ノズル抜けの場合のグロスインクのインクドットDgは、グロスインクが吐出されていないため、存在しない。よって、ノズル抜けの場合のグロスインクのインクドットDgの列Cg3は、二点鎖線で表している。グロスインクのインクドットDgの列Cg5は、飛行曲がりの場合のグロスインクのインクドットDgの列を示す。
図7に示すように、グロスインクのインクドットDgの列Cg5は、正常な場合よりも、隣のグロスインクのインクドットDgの列Cg6に接近している。
【0044】
図7に示すように、正常なグロスインクのインクドットDgの列Cg1とその隣のインクドットDgの列Cg2との間に着弾したシアンインクのインクドットDc1は、インクドットDgの列Cg1とCg2との間で濡れ広がる。これが正常なシアンインクの濡れ状態である。
【0045】
一方、
図7に示すように、ノズル抜けの場合のグロスインクのインクドットDgの列Cg3(存在しない)とその隣のインクドットDgの列Cg4との間に着弾したシアンインクのインクドットDc2は、インクドットDgの列Cg3が存在しないため、濡れ広がりが阻止されない。そのため、シアンインクのインクドットDc2は、通常よりも大きくなる。
図8は、グロスインクが正常に着弾した場合、グロスインクがノズル抜けした場合、および、グロスインクが飛行曲がりを呈した場合に、近傍に着弾したシアンインクのインクドットDcの列を模式的に示す平面図である。
図8に示すように、シアンインクのインクドットDcは主走査方向Yに並んでいるため、主走査方向Yに延びる帯状に見える。よって、グロスインクがノズル抜けした場合、その近傍のシアンインクのインクドットDc2の列Cc2は、グロスインクが正常に着弾した場合のシアンインクのインクドットDc1の列Cc1よりも副走査方向Xの幅が広くなる。これにより、該当箇所の第1ノズル41Gがノズル抜けしていることが確認できる。シアンインクは有色であるため、インクドットDcの列の副走査方向Xの幅の目視確認は容易である。
【0046】
さらに、
図7に示すように、飛行曲がりの場合のグロスインクのインクドットDgの列Cg5とその隣のインクドットDgの列Cg6との間に着弾したシアンインクのインクドットDc3は、列Cg5とCg6との間が正常な場合よりも狭いため、通常よりも小さくなる。よって、
図8に示すように、グロスインクが飛行曲がりした場合、その近傍のシアンインクのインクドットDcの列Cc3は、グロスインクが正常に着弾した場合のシアンインクのインクドットDc1の列Cc1よりも副走査方向Xの幅が狭くなる。これにより、該当箇所の第1ノズル41Gが飛行曲がりしていることを容易に確認できる。
【0047】
このように、本実施形態に係るプリンタ10で作成するテストチャートTにおいては、グロスインクを吐出する第1ノズル41Gに異常があり、グロスインクが吐出されなかったり、着弾位置がずれたりした場合、グロスインクの吐出が正常な場合と比べて、シアンインクの濡れ状態が変化する。そのため、シアンインクの濡れ状態を検査することで、透明なグロスインクを吐出する第1ノズル41Gの状態を検査することが可能である。よって、テストチャートTの視認性が向上する。かかるノズル状態の検査方法によれば、透明なグロスインクを吐出する第1ノズル41Gの状態の検査を容易に行うことができる。
【0048】
具体的には、プリンタ10は、ベッド移動装置25を制御して、シアンインクの着弾位置が副走査方向Xに関してグロスインクの着弾位置の近傍となるような位置に記録媒体5を位置付けた後に、複数の第2ノズル41Cからシアンインクを吐出させる。言い換えると、プリンタ10は、副走査方向Xに関してグロスインクの着弾位置と僅かにずらして、シアンインクを着弾させる。かかるグロスインクと有色インクとの重ね打ちにより、視認性に優れたテストチャートTを作成できる。
【0049】
さらに詳しくは、プリンタ10は、ベッド移動装置25を制御して、グロスインクの着弾位置とシアンインクの着弾位置とが副走査方向Xに関して交互となるような位置に記録媒体5を位置付ける。これにより、副走査方向Xに並んだ複数のグロスインクのインクドットDgの近傍に、それぞれシアンインクのインクドットDcが着弾する。よって、かかる構成によれば、副走査方向Xに並んだ複数の第1ノズル41Gの全部または大半を1つのテストチャートTによって検査することができる。なお、かかる制御は、第1ノズル列42Gにおける複数の第1ノズル41Gのピッチと第2ノズル列42Cにおける複数の第2ノズル41Cのピッチとが同じピッチPであるために可能となるものである。
【0050】
本実施形態では、グロスインクの硬化後のドット径は、第1ノズル41Gおよび第2ノズル41CのピッチPの半分以上かつピッチP未満に設定されている。そのため、第1ノズル41Gが正常であれば、グロスインクの硬化後のインクドットDgは、
図6に示すように、副走査方向Xに関して、ピッチPの半分よりも狭い隙間を空けながら配置される。グロスインクの硬化後のインクドットDg同士の隙間がこのように設定されることにより、シアンインクのインクドットDcが主走査方向Yに延びるシャープな細い帯を形成する。そのため、シアンインクのインクドットDcの副走査方向Xの幅が異常な場合に、異常をより見分けやすくなる。また、飛行曲がりの場合には、異常の検出精度が向上する。
【0051】
本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5に対するグロスインクの吐出およびシアンインクの吐出を、記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させながら行うように構成されている。かかる構成によれば、シアンインクのインクドットDcが主走査方向Yに延びる帯状に見えるため、テストチャートTの視認性がさらに向上する。
【0052】
かかる方法は、透明インクおよび有色インクが光硬化性のインクである場合に特に適している。光硬化性のグロスインクのインクドットDgは、所定の隙間を空けて記録媒体5上で盛り上がるように形成されているため、グロスインクのインクドットDgが形成された位置により、近傍に着弾したシアンインクの濡れ広がり方が異なってくる。そのため、第1ノズル41Gが正常な場合と異常な場合とのテストチャートTの見た目の差が出やすい。また、グロスインクが光硬化性インクであれば、吐出量や光を照射するタイミングを調整することで、グロスインクのインクドットDgのドット径の調整が容易に可能である。有色インクについても、吐出されてから硬化するまでの時間を容易に制御できるため、光硬化性インクであることが好ましい。有色インクが吐出されてから硬化するまでの時間を安定させることにより、有色インクの濡れ広がり時の条件を安定させることができ、ステップS04の判定の信頼性が向上する。
【0053】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、グロスインクを吐出する第1ノズル列42Gと、有色インクを吐出する第2ノズル列42C~第5ノズル列42Kとはスタガ配置されていたが、両者の副走査方向Xの位置は揃っていてもよい。テストチャートにおける透明インクの着弾位置と有色インクの着弾位置とは、副走査方向の移動装置を制御することによりずらされてもよい。また、全ての第1ノズルから一度に透明インクが吐出される必要はなく、透明インクは一度に一部の第1ノズルから吐出されてもよい。同様に、全ての第2ノズルから一度に有色インクが吐出される必要はなく、有色インクは一度に一部の第2ノズルから吐出されてもよい。
【0054】
ここに開示される技術に適用可能なインクは、光硬化性のインクに限定されない。インクは、例えば、ラテックスインクのような熱硬化性のインクであってもよい。また、水性ラテックスインクやソルベントインクのような熱乾燥型のインクなどであってもよい。熱硬化型のインクや、加熱により溶剤が蒸発するソルベントインクなどの場合、インクの硬化は、インクの加熱や乾燥により行うことができる。また、透明インクの硬化後のドット径は、上記したものに限定されない。
【0055】
上記した実施形態では、プリンタ10は、記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させながら、記録媒体5に対してグロスインクの吐出およびシアンインクの吐出を行うように構成されていた。しかし、記録媒体5に対するグロスインクの吐出および有色インクの吐出は、記録ヘッド40を主走査方向Yに移動させずに行われてもよい。
【0056】
インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、ロール・トゥー・ロールタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、ここに開示する技術は、例えば、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0057】
5 記録媒体
10 プリンタ
20 フラットベッド(支持台)
25X 副走査方向移動機構(第1移動装置)
35 キャリッジ移動装置(第2移動装置)
40 記録ヘッド
41G 第1ノズル
41C 第2ノズル
42G 第1ノズル列
42C 第2ノズル列
50 光照射装置
100 制御装置
110 モード選択部
130 テストチャート作成部
131 第1作成部
132 第2作成部
133 第1硬化処理部
134 第2硬化処理部
135 ドット制御部
T テストチャート