IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図1
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図2
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図3
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図4
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図5
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図6
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図7
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図8
  • 特開-歩行特徴量検出装置及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170183
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】歩行特徴量検出装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20221102BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G06T7/20
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076122
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊本 匡純
(72)【発明者】
【氏名】高柳 直人
【テーマコード(参考)】
4C038
5L096
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB14
4C038VB17
4C038VC05
5L096CA04
5L096FA02
5L096FA22
5L096FA67
5L096FA69
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】利便性が高く且つ低コストで歩行者の歩行特徴量を検出可能な装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】歩行特徴量検出装置100は、所定の歩行通路1上を歩行する歩行者10を歩行通路1が含まれるように撮像して得られた画像データを取得する画像データ取得部110と、画像データに含まれる歩行通路1の投影領域を特定する通路特定部120と、歩行通路1の投影領域における画像を実空間における歩行通路1の平面形状と一致又は相似するように射影変換して歩行通路1の平面画像を取得する射影変換部130と、歩行通路1の平面画像における歩行者の足位置を検出し、前記足位置の経時的変化に基づき足の接地位置を検出し、前記足の接地位置に基づき歩行特徴量を検出する歩行特徴量算出部150と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の歩行通路上を歩行する歩行者を前記歩行通路が含まれるように撮像して得られた画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データに含まれる前記歩行通路の投影領域を特定する投影領域特定手段と、
前記歩行通路の投影領域における画像を実空間における前記歩行通路の平面形状と一致又は相似するように射影変換して前記歩行通路の平面画像を取得する射影変換手段と、
前記歩行通路の平面画像における歩行者の足位置を検出し、前記足位置の経時的変化に基づき足の接地位置を検出し、前記足の接地位置に基づき歩行特徴量を検出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする歩行特徴量検出装置。
【請求項2】
前記投影領域特定手段は、前記画像データにおける前記歩行通路の投影領域を特定する情報を利用者に入力させる
ことを特徴とする請求項1記載の歩行特徴量検出装置。
【請求項3】
前記歩行通路の平面画像に対して低解像度化処理を行う第1の前処理部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の歩行特徴量検出装置。
【請求項4】
前記画像データは歩行者の進行方向前方に設置したカメラにより撮像され、
前記演算手段は、前記歩行通路の平面画像の最も前記進行方向前方に位置する動体の位置をつま先位置として検出する
ことを特徴とする請求項4記載の歩行特徴量検出装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から4の何れかに記載の歩行特徴量検出装置として機能させる
ことを特徴とする歩行特徴量検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の歩幅や歩隔などの歩行特徴量を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者の歩幅や歩隔などの歩行特徴量を検出する技術としては、歩行通路に感圧シートを配置して歩行者の足跡を検出するもの(例えば特許文献1参照)、デプスカメラを用いて例えば頭部など歩行者の特定の部位についてその移動軌跡を観測するもの(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-052999号公報
【特許文献2】特開2017-205134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のものでは、感圧シートが必要となるのでコストがかかるとともに感圧シートを敷くための手間やスペースが必要であるという問題があった。また、特許文献2に記載のものも高価なデプスカメラが必要であるためコストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、利便性が高く且つ低コストで歩行者の歩行特徴量を検出可能な装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明に係る歩行特徴量検出装置は、所定の歩行通路上を歩行する歩行者を前記歩行通路が含まれるように撮像して得られた画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに含まれる前記歩行通路の投影領域を特定する投影領域特定手段と、前記歩行通路の投影領域における画像を実空間における前記歩行通路の平面形状と一致又は相似するように射影変換して前記歩行通路の平面画像を取得する射影変換手段と、前記歩行通路の平面画像における歩行者の足位置を検出し、前記足位置の経時的変化に基づき足の接地位置を検出し、前記足の接地位置に基づき歩行特徴量を検出する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、感圧シートやデプスカメラを用いることなく、一般的なカメラによる撮像データに基づき歩行特徴量を検出できるので、利便性が高く且つ低コストなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】歩行特徴量検出装置の使用形態を説明する図
図2】歩行特徴量検出装置の機能ブロック図
図3】画像データの一例
図4】射影変換処理を説明する図
図5】動体抽出処理を説明する図
図6】つま先位置検出処理を説明する図
図7】つま先位置の経時的変化を説明するグラフ
図8】つま先停止位置の検出処理を説明するフローチャート
図9】歩行特徴量の算出処理を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る歩行特徴量検出装置について図面を参照して説明する。図1は歩行特徴量検出装置の使用形態を説明する図、図2は歩行特徴量検出装置の機能ブロック図である。
【0010】
本実施の形態に係る歩行特徴量検出装置100は、図1に示すように、所定の歩行通路1上を歩行する歩行者10を撮像するカメラ50と接続し、カメラ50による撮像データに基づき歩行特徴量を検出する。
【0011】
なお、本願において歩行特徴量とは、歩行者の歩容の評価に用いられ、歩行者の歩行を特徴付ける各種パラメータの総称を意味する。歩行特徴量としては、例えば、歩幅、左右の足の接地位置の左右方向の間隔である歩隔などが挙げられる。本実施の形態に係る歩行特徴量検出装置100で検出可能な歩行特徴量については後述する。また、本願において足とは足首より先の部位を意味し、脚は足を含むものである点に留意されたい。
【0012】
歩行通路1は、例えば、幅60cm、長さ240cm程度の矩形領域からなる。歩行通路1は、床面に絨毯やシートなどを敷設して他の床面の領域と区画することにより形成することができる。また、歩行通路1は、床面に歩行通路1と他の領域との境界線となる位置にテープ等を貼ることにより形成することができる。また、歩行通路1は、矩形の領域を特定可能とするよう、少なくとも3つの角部にマーカーを設けることにより形成することができる。また、歩行通路1は、矩形の領域を特定可能とするよう、少なくとも4つの辺上の任意の位置にマーカーを設けることにより形成することができる。つまり、歩行通路1は視覚的に他の床面の領域と区別できるような構成であればよい。正確な歩行特徴量を取得するために、床面は水平又は水平に限りなく近いことが好ましい。また、撮像データを取得するカメラの位置・画角が固定され、且つ、狭い通路など歩く方向がある程度定まっている条件に関しては、予めマーカーを用いてキャリブレーションを行うことにより、歩行路を他の床面の領域と視覚的に区別したり、マーカーを設置した状態で撮像データを取得する必要はない。
なお、正確な歩行特徴量を取得するために、床面は影が映り込まないよう反射率が低く、且つ、水平又は水平に限りなく近いことが好ましい。
【0013】
歩行者10は、歩行通路1の幅方向略中心線上を歩行通路1の長さ方向に歩行する。歩行者10は、歩行通路1に対して進行方向手前に立ち、この立ち位置から歩行を開始する。また、歩行者10は、歩行通路1上を歩き抜け、歩行通路1の進行方向前方で歩行を停止する。すなわち、歩行通路1上における歩行者10の歩行には、歩行開始時及び方向停止時の動作を含まない、安定した歩行状態である。歩行開始位置から歩行通路1までの距離は数m程度あると好ましい。このように、歩行通路1の長手方向の前後には数m程度のスペースがあると好ましい。
【0014】
カメラ50は、歩行通路1の歩行者10の進行方向前方に静止した状態で設置される。すなわち、カメラ50は、歩行通路1上を歩行する歩行者10を正面から撮影する。カメラ50は、歩行通路1との間に歩行者10を含む障害物がない条件において、少なくとも撮像した画像データに歩行通路1の全体が映り込まれるよう、設置位置、撮影方向、画角などの撮影条件が設定されている。本実施の形態では、カメラ50は、歩行通路1の幅方向中心を通り歩行通路1の長さ方向と平行な線の上に設置され、且つ、撮影方向の水平成分は歩行通路1の長さ方向と平行である。カメラ50の、画角、撮影方向の鉛直方向成分、歩行通路1との距離、床面との高さは、少なくとも撮像した画像データに歩行通路1の全体が映り込まれるのであれば任意である。なお、カメラ50による撮像した画像データは、歩行者10の全身が映り込まれている必要はない点に留意されたい。カメラ50により撮像された画像データの一例を図3に示す。
【0015】
歩行特徴量検出装置100は、図2に示すように、画像データ取得手段である画像データ取得部110と、画像データ記憶部115と、投影領域特定手段である通路特定部120と、射影変換手段である射影変換部130と、通路諸元記憶部135と、歩行通路の平面画像における歩行者の足位置を検出する動体抽出部140と、足の接地位置に基づき歩行特徴量を検出する歩行特徴量検出部150と、歩行データ記憶部155とを備えている。
【0016】
歩行特徴量検出装置100は、主演算装置、主記憶部、補助記憶部、表示装置、入力装置等を備えた従来周知のコンピュータにより構成することができる。歩行特徴量検出装置100は、前述の各部として機能させるプログラムをコンピュータにインストールすることにより実装することができる。歩行特徴量検出装置100は、専用のハードウェアとして実装することができる。歩行特徴量検出装置100は、複数の装置に分散して実装することができる。
【0017】
画像データ取得部110は、カメラ50が撮像した画像データを動画として所定のフレームレート(例えば30fps)でリアルタイムに取得するとともに、取得した画像データを画像データ記憶部115に記憶する。なお、画像データ取得部110は、過去にカメラ50で動画として撮像した画像データをネットワークや任意の記憶メディアを介して取得し、画像データ記憶部115に記憶してもよい。
【0018】
通路特定部120は、カメラ50が撮像した画像データに含まれている歩行通路1の投影領域を特定する。本実施の形態ではカメラ50を静止状態で設置しているので、動画中の何れかのフレームの画像データ(例えば最初のフレームの画像データ)を処理対象とすることができる。歩行通路1の投影領域の特定結果は画像データの二次元座標系のデータからなる。歩行通路1の投影領域の特定結果は歩行通路1の形状に応じて種々の表現が可能である。本実施の形態では歩行通路1は矩形なので、歩行通路1の四隅の点座標データを特定結果とする。歩行通路1の投影領域の特定結果は、後段の射影変換部130に提供される。
【0019】
通路特定部120による歩行通路1の投影領域の特定処理は種々の方法を用いることができる。例えば、通路特定部120は、歩行通路1が矩形である場合は、四隅に設けたマーカーの位置を画像データ上で判定することで歩行通路1の範囲を特定することができる。この場合、予め通路特定部120に記憶してあるマーカーの形状や色を用いて、各マーカーを周知の画像処理アルゴリズムにより特定し、その位置を画像データから抽出する。また、撮像データを取得するカメラの位置・画角が固定されている場合、予めマーカーを設置することで位置を特定し、座標情報として通路特定部120に記憶させておくこともできる。
【0020】
通路特定部120は、処理対象である画像データを表示装置に表示させて利用者により歩行通路1の投影領域を指定・入力させることにより、歩行通路1の投影領域の特定を行うこともできる。より具体的には、通路特定部120は、歩行通路1の投影領域を特定可能な点群の、画像データにおける座標位置を利用者から入力させる。本実施の形態では歩行通路1は矩形なので、歩行通路1の四隅の座標位置を利用者から入力させる。他の例としては、通路特定部120は、歩行通路1の複数の特徴点を画像データから検出し、この複数の特徴点から歩行通路1の投影領域を特定することができる。
【0021】
射影変換部130は、図4に示すように、画像データ記憶部115から画像データ200を1フレームずつ取得し、歩行通路1の投影領域210における画像を、実空間における歩行通路1の平面形状と一致又は相似するように射影変換して歩行通路1の平面画像220を生成する。実空間における歩行通路1の平面形状に関するデータは、予め通路諸元記憶部135に記憶されている。射影変換部130は、通路特定部120により特定された歩行通路1の投影領域210の座標データ及び通路諸元記憶部135に記憶されている歩行通路1の平面形状に関するデータに基づき、画像データの射影変換処理を行う。射影変換部130は、平面画像220のX軸方向を歩行通路1の幅方向に一致させ、且つ、平面画像220のY軸方向を歩行通路1の長さ方向に一致させるよう射影変換処理を行う。
【0022】
ここで、射影変換部130は、歩行通路1の平面画像に対して低解像度化処理を行う低解像度化処理部131を機能的に内包する。本実施の形態では、通路諸元記憶部135に予め記憶する歩行通路1の平面形状を、解像度の低い画像における座標データ群として設定することにより、射影変換後の平面画像220を解像度の低いものとする。すなわち、射影変換処理と低解像度化処理を同時に行う。例えば、カメラ50で撮像した画像データ200の幅及び高さが1920×1080ピクセルであり、当該画像データ200に含まれる歩行通路1の投影領域210の幅及び高さが概ね500×500ピクセルの範囲程度である場合を考える。また、実空間において矩形の歩行通路1の幅が60cm、進行方向長さが240cmである場合を考える。このとき、歩行通路1の平面形状に関するデータとして、60×240ピクセルの矩形データを設定する。これにより、平面画像220の1ピクセルに対応する実空間の大きさは1cmとなる。なお、実空間の大きさと平面画像220の1ピクセルとの対応関係、すなわち平面画像220の解像度は、カメラ50の解像度に応じて或いは任意に設定可能である。
【0023】
動体抽出部140は、射影変換部130により生成されたフレーム毎の平面画像220に対して動体抽出処理を行う。動体抽出のアルゴルズムは種々のものを用いることができる。本実施の形態では、2つの異なるフレームを比較することにより平面画像220中の動体を抽出する。さらに具体的には、本実施の形態では、処理対象をN番目のフレームとすると、N番目のフレームとN-1番目のフレームの加重平均を累積して計算し、当該加重平均とN番目のフレームの差分を算出することにより動体抽出処理を行う。また、動体抽出部140は、後処理の行程として、減色化処理部141を機能的に内包する。この減色化処理部141は、動体部と非動体部との区別をより明確にするとともに処理負荷を軽減するためである。本実施の形態では、減色化処理として白黒二値化処理を行っている。なお、さらに前処理の行程として、例えばグレースケール化などの減色化処理や、ガウシアンフィルタ適用などのノイズ除去処理を行うようにしてもよい。
【0024】
図5に動体抽出部140による処理例を示す。図5(a)は動体抽出処理前の平面画像220aである。図5(a)には歩行通路1を歩行する歩行者10の両脚部(足部を含む)が映っている。この画像における歩行者の歩行状態は、右脚(紙面左側の脚)11が接地しており、左脚(紙面右側の脚)12が地面を離れて前方(紙面下方)に移動中である。図5(b)は動体抽出処理後の平面画像220bである。図5(b)に示すように、動体抽出処理後の平面画像220bは、接地しており動きがない又は動きが小さい右脚11及び非動体である歩行通路1の表面部分は抽出されず、動きがある左脚12が抽出されている。図5(c)は、動体抽出処理について理解を容易にするため、図5(a)の平面画像220aに、抽出した動体部の輪郭を重畳したものである。
【0025】
歩行特徴量検出部150は、動体抽出された平面画像220における歩行者10の足位置を検出する足位置検出部151と、足位置の経時的変化に基づき足の接地位置を検出する足接地位置検出部152と、足の接地位置に基づき歩行特徴量を検出する特徴量算出部153とを備えている。本実施の形態では、足のうちつま先を検出対象とする。
【0026】
足位置検出部151は、フレーム毎に、平面画像220において抽出された動体である脚部の歩行の進行方向最前方の位置である先端位置をつま先位置として検出する。より具体的には、図6に示すように、平面画像220においてY軸方向(歩行の進行方向)の最大値から最小方向に向かって動体部が存在しているかを走査し、動体部を最初に検出した位置をつま先位置として判定し、つま先位置の座標データをフレームtにおける二次元のつま先位置(Px(t),Py(t))として歩行データ記憶部155に記録する。
【0027】
足接地位置検出部152は、足位置検出部151によって検出された二次元平面上のつま先位置(Px(t),Py(t))の経時的変化に基づき、二次元平面である歩行通路1におけるつま先の接地位置を検出する。図7は、つま先位置のY軸成分Py(t)の経時的変化を示すグラフである。図7において、Py(t)が大きく増加している区間は、前足となっている右足又は左足が前方に移動している区間を示す。一方、Py(t)がほぼ一定値となっている区間は、前足となっている右足又は左足が接地し、反対の後ろ足が後方から前方に移動している区間を示す。したがって、Py(t)がほぼ一定値となっている区間のつま先位置(Px(t)、Py(t))がつま先接地位置となる。本実施の形態では、Py(t)が一定時間以上同一の値を示す区間、或いは一定時間以上所定の許容範囲内にある区間が接地区間であると判定し、当該接地区間内におけるつま先位置(Px(t),Py(t))をつま先接地位置として検出するとともに、当該区間の開始時刻をつま先の接地時刻として検出する。つま先接地位置は、右足のものと左足のものが経時的に交互に現れる。検出したつま先接地位置が右足によるものか左足によるものかは、つま先接地位置のX軸成分の大小により判定することができる。足接地位置検出部152は、検出したつま先接地位置を時間情報(フレーム情報)とともに歩行データ記憶部155に記録する。
【0028】
特徴量算出部153は、足接地位置検出部152により検出されたつま先接地位置により歩行に関する特徴量を算出し、歩行データ記憶部155に記録する。算出可能な特徴量としては、歩幅、歩隔、1歩行周期時間、ケーデンス、歩行角度、歩行速度、歩行比、歩幅左右差(1RL)、歩隔左右差(2RL)、歩行周期時間(3RL)、歩行角度左右差(4RL)が挙げられる。
【0029】
歩幅は、複数のつま先接地位置の間隔のY軸成分により算出する。歩隔は、複数のつま先接地位置の間隔のX軸成分により算出する。1歩行周期時間、ケーデンスは、つま先接地位置を検出した時刻(フレーム番号)の間隔により算出する。歩行角度は、左右一方のつま先接地位置から他方のつま先接地位置を結んだ直線が進行方向となす角度により算出できる。歩行速度は、前記左右歩幅合計を前記1歩行周期時間で除する、もしくは、前期歩幅とケーデンスの積により算出する。歩行比は、前記歩幅を前記ケーデンスで除することにより算出する。歩隔左右差(2RL)、歩行周期時間(3RL)、歩行角度左右差(4RL)は、それぞれ、右足及び左足について、歩幅、歩隔、1歩行周期時間、歩行角度、を算出し、左右の差をとることにより算出する。
【実施例0030】
次に、歩行特徴量検出装置100における処理例について図8及び図9のフローチャートを参照して説明する。まず図8を参照して、つま先接地位置、すなわちつま先が停止した位置を検出する処理について説明する。
【0031】
本実施例ではカメラ300の位置などの撮影条件が固定されているものとする。このため、画像データ200における歩行通路1の投影領域も固定されており、さらに画像データを射影変換して得られる平面画像220も固定されている。また、本実施例では、歩行通路1は矩形であり、平面画像220には歩行通路1の矩形の投影領域が含まれる。したがって、歩行通路1の投影領域は平面画像220中の4点の座標(x,y)により特定される。本実施例では、あらかじめ通路特定部120により前記4点の座標(x,y)を特定しておく。また、平面画像220の座標系はY軸正方向を歩行方向とし、歩行通路1の投影領域は、X軸方向がWピクセル(具体的には60ピクセル)、Y軸方向がLピクセル(具体的には240ピクセル)の大きさとなるように射影変換を行うものとする。なお、以下の説明では「行」及び「列」は、それぞれ平面画像220の歩行通路1の矩形の投影領域におけるY軸方向、X軸方向を意味する。
【0032】
歩行特徴量検出装置100は、動画データである画像データ200について最初のフレームから所定の終了条件(後述する)までフレーム毎に以下の処理を行う(ステップS0)。まず、歩行特徴量検出装置100は、1フレームを取得し、当該フレームに係る画像データ200を射影変換して平面画像220を取得するとともに、前記4点の座標(x,y)を取得する(ステップS1)。次に歩行特徴量検出装置100は、前回のフレームとの差画像を求める(ステップS2)。次に歩行特徴量検出装置100は、Y軸最大値から負方向へ行をチェックスキャンし、データ発生行を取得する(ステップS3)。そして歩行特徴量検出装置100は、データ発生行yが、前回のフレームでの発生行yを上回るかどうかを判定する(ステップS4)。
【0033】
データ発生行yが前回のフレームでの発生行yを上回る場合、歩行特徴量検出装置100は、データ発生行yを当該フレームにおけるつま先ピークの値とし、つま先連続データとして歩行データ記憶部155に記憶する(ステップS5)。さらに、歩行特徴量検出装置100は、本フレームでの発生行yについて0からWまでデータ発生列をチェックスキャンし、データ発生列を取得し、つま先幅の連続データとして歩行データ記憶部155に記憶する(ステップS6)。
【0034】
一方、データ発生行yが前回のフレームでの発生行yを上回らない場合、さらに、所定の停止判定数のフレームに亘って連続して発生行yが同一である場合には、つまり所定時間同一の発生行yとなる場合には、歩行特徴量検出装置100は、当該発生行yをつま先の停止位置、すなわちつま先接地位置として歩行データ記憶部155に記憶する(ステップS9)。また、それ以外の場合、歩行特徴量検出装置100は、つま先連続データ及びつま先幅連続データを歩行データ記憶部155に上書き記憶する(ステップS10)。
【0035】
以上の処理は、つま先位置すなわちデータ発生行yが、平面画像220における歩行通路1の矩形の投影領域のY軸方向における上限値を超えるまで実施される(ステップS0,ステップS11)。つまり、歩行者10の前足が歩行通路1から出るまでの画像データ200が処理対象となる。
【0036】
次に、図9を参照して、つま先停止位置の検出に基づき各種特徴量を算出する処理の一例について説明する。歩行特徴量検出装置100は、つま先の停止位置として歩行データ記憶部155に保存していたポイントについてN+1歩目の値からN歩目の値を差し引き、これを歩幅として算出する(ステップS21)。また、歩行特徴量検出装置100は、歩幅として取得したポイントのつま先幅を取得し、N+1歩目の値からN歩の値を差し引き、これを歩隔として算出する(ステップS22)。また、歩行特徴量検出装置100は、1歩目と2歩目のX軸の長さを比較し、1歩目より2歩目の軸が長い場合は右足スタート、2歩目より1歩目の軸が長い場合は左足スタート、として算出する(ステップS23)。なお、上記各ステップは順不同である。
【0037】
このような歩行特徴量検出装置100によれば、感圧シートやデプスカメラを用いることなく、一般的なカメラによる撮像データに基づき歩行特徴量を検出できるので、利便性が高く且つ低コストなものとなる。
【0038】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0039】
例えば、上記実施形態では、歩行特徴量検出装置100とカメラ50とを別装置として構成しているが、歩行特徴量検出装置100にカメラ50を内蔵させるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、歩行通路1として矩形のものを用いたが、歩行通路1の形状は任意である。
【0041】
また、上記実施の形態では、カメラ50で歩行者10の歩行状態を撮影して動画として画像データを取得した後に、当該取得した画像データに基づき歩行特徴量の検出処理を行っているが、カメラ50で撮影しながらリアルタイムで歩行特徴量の検出処理を行うようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、カメラ50は歩行通路1の歩行者10の進行方向前方に静止した状態で設置され、歩行通路1上を歩行する歩行者10を正面から撮影していたが、カメラ50は、歩行通路1の斜め前方や側方、或いは、後方に設置するようにしてもよい。すなわち、歩行者10などの障害物がない状態においてカメラ50により撮像された画像データに歩行通路1の射影が含まれればよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、カメラ50の撮影条件を一定にしたまま歩行者10の歩行状態を撮影していたが、カメラ50の撮影条件が経時的に変化した状態で歩行者10の歩行状態を撮影するようにしてもよい。この場合、画像データにおける歩行通路1の投影領域は経時的に変化する。このため、全ての画像データについて利用者に投影領域を特定させるように構成すると利便性の悪いものとなる。そこで、通路特定部120は、歩行通路1の複数の特徴点を画像データから検出し、この複数の特徴点から歩行通路1の投影領域を特定することが好ましい。あるいは、通路特定部120は、最初のフレームの画像データについて利用者に投影領域を特定させ、以降は画像データから投影領域を追跡するように構成してもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、平面画像220に対して動体抽出を行うことにより、動いている脚と動いていない脚の区別、換言すれば接地している脚と接地していない脚の区別を容易にしているが、他の解析処理により両者を区別するようにしてもよい。この場合、動体抽出部140の実装は任意である。
【0045】
また、上記実施の形態では、つま先位置の検出処理及びつま先の接地位置の検出処理を行っているが、例えば踵など足の他の部位について位置及び接地位置の検出処理を行うようにしてもよい。この場合、検出対象に応じて、カメラ50の設置位置や撮影条件等を変更してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、つま先位置のY軸成分が一定時間以上同一の値を示す区間、或いは一定時間以上所定の増減範囲内にある区間が接地区間であると判定していたが、他のアルゴリズムにより接地区間を判定してもよい。例えば、つま先位置のY軸成分を関数とて表し、微分など数学的処理により接地区間を導出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…歩行通路
10…歩行者
50…カメラ
100…歩行特徴量検出装置
110…画像データ取得部
115…画像データ記憶部
120…通路特定部
130…射影変換部
140…動体検出部
150…歩行特徴量検出部
151…足位置検出部
152…足接地位置検出部
153…特徴量算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9