(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170196
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20221102BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20221102BHJP
F24F 11/871 20180101ALI20221102BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20221102BHJP
F24F 1/0033 20190101ALI20221102BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20221102BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20221102BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20221102BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20221102BHJP
F24F 1/0067 20190101ALI20221102BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20221102BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20221102BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/70
F24F11/871
F24F1/0007 361C
F24F13/22 225
F24F1/0033
F24F11/89
F28F1/32 A
F28D1/047 B
F24F11/86
F24F1/0067
F24F120:10
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076158
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 元貴
【テーマコード(参考)】
3L049
3L050
3L051
3L103
3L260
【Fターム(参考)】
3L049BC02
3L049BD05
3L050AA05
3L050BD05
3L050BF04
3L051BE06
3L103AA36
3L103AA37
3L103BB42
3L103CC18
3L103CC23
3L103DD04
3L103DD33
3L260AA20
3L260AB02
3L260AB03
3L260BA04
3L260BA07
3L260BA08
3L260BA15
3L260BA24
3L260BA27
3L260BA32
3L260CA03
3L260CA13
3L260CB23
3L260CB24
3L260FA06
3L260FA07
3L260FA08
3L260FB12
3L260FB13
3L260HA01
(57)【要約】
【課題】防音室のような狭小空間であってもドラフト感や送風音を抑制して適切に空調を行うことが可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】防音室で用いられる空気調和機は、圧縮機および室外送風機を有する室外機と、四つ以上の室内送風機を有する室内機と、入室検知部と、露点温度検知部と、制御部を備える。防音室へのユーザの入室が検知された場合、制御部は、内気の露点温度が10℃以上、16℃未満となるように圧縮機の動作を制御し、室外送風機によって吸い込まれて室外熱交換器に吹き付けられる外気の吸込風速が0.7m/s以上、1.0m/s以下となるように室外送風機を動作制御し、室内熱交換器で熱交換されて動作中のすべての室内送風機によって防音室の室内に吹き出される内気の吹出風速が0.5m/s以下となるように四つ以上の室内送風機を個別に動作制御する定常動作を補正制御する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部と、天井部と、前記床部と前記天井部の間を閉塞する壁部とで囲まれた内部空間を有し、屋内もしくは屋外に設置されてユーザが入室して使用する防音室で用いられる空気調和機であって、
吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された前記冷媒と前記防音室の外気とを熱交換させる室外熱交換器と、前記外気を吸い込んで前記室外熱交換器に吹き付けるとともに前記室外熱交換器で熱交換された前記外気を排気する室外送風機と、を有する室外機と、
前記室外熱交換器で熱交換された前記冷媒と前記防音室の内気とを熱交換させる室内熱交換器と、前記室内熱交換器に前記内気を吹き付けるとともに前記室内熱交換器で熱交換された前記内気を前記防音室の室内に吹き出す四つ以上の室内送風機と、を有する室内機と、
前記防音室への前記ユーザの入室を検知する入室検知部と、
前記内気の露点温度を検知する露点温度検知部と、
前記室外機、前記室内機、前記入室検知部、および前記露点温度検知部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記内気の露点温度が10℃以上、16℃未満となるように前記圧縮機を動作させ、前記室外送風機によって吸い込まれて前記室外熱交換器に吹き付けられる前記外気の吸込風速が0.7m/s以上、1.0m/s以下となるように前記室外送風機を動作させ、前記室内熱交換器で熱交換されて動作中のすべての前記室内送風機によって前記防音室の室内に吹き出される前記内気の吹出風速が0.5m/s以下となるように四つ以上の前記室内送風機を個別に動作させる定常制御を行い、前記防音室への前記ユーザの入室が前記入室検知部によって検知された場合、前記内気の露点温度、前記外気の吸込風速、および前記内気の吹出風速が前記定常制御の範囲内にいずれもとどまるように前記圧縮機、前記室外送風機、および前記室内送風機の各動作を補正制御する
空気調和機。
【請求項2】
前記室内機は、前記室内熱交換器で発生したドレン水を前記室外機まで導くドレンホースを有し、
前記室外機は、前記室外熱交換器の上方に配置されて前記ドレンホースで導かれた前記ドレン水を受け、前記室外熱交換器に滴下させるトレーを有する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記室内熱交換器において、前記室内送風機から吹き付けられる前記内気の気流方向と対峙する面積は、前記室内熱交換器で熱交換された前記内気の吹出風速が0.5m/s以下で、前記室内熱交換器で熱交換される前記冷媒の蒸発温度が0.5℃以上となる所定面積以上である
請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室内機は、前記室内熱交換器と四つ以上の前記室内送風機を収容する筐体を有し、
前記筐体は、前記筐体の内部に前記防音室の前記内気を吸い込む吸込口から、前記室内熱交換器で熱交換された前記内気を前記防音室の室内に吹き出す吹出口に至る通風路を有し、
四つ以上の前記室内送風機は、前記内気の前記気流方向を前記通風路に沿わせるととともに、前記通風路を横切る方向へ並んで配置され、
前記制御部は、前記通風路を横切る方向に隣り合う前記室内送風機同士で動作状態と停止状態を異ならせる、もしくは前記通風路を横切る方向の両端の前記室内送風機とそれ以外の前記室内送風機とで動作状態と停止状態を異ならせる
請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記入室検知部は、前記防音室における前記ユーザの入室に伴う熱負荷の変動を検知する非接触型のセンサである
請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記室内熱交換器は、前記内気と熱交換される前記冷媒を入口から出口まで導く伝熱管と、前記伝熱管に組み付けられた複数のフィンと、を備え、
前記伝熱管は、前記入口に対して前記出口が上方となるように連続している
請求項4に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記室内機の最上部と前記防音室の前記天井部との間隔は、100mm以上、150mm以下である
請求項4に記載の空気調和機。
【請求項8】
一台の前記室外機と、二台の前記室内機と、を備え、
二台の前記室内機は、前記室内熱交換器で熱交換された前記内気の少なくとも一部を互いに逆方向へ吹き出す四つ以上の前記室内送風機をそれぞれ有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デスクワーク、楽器演奏、カラオケなどのために基本的にユーザが一人で使用する防音室の普及が進んでいる。防音室内は、4.5畳以下、その多くが0.5畳から1.5畳程度の必要最小限の狭小空間とされている。このため、防音室の空調には、JIS規格による冷房能力が2.2kW程度の小能力の空気調和機が用いられている。このような小能力の空気調和機であっても、防音室のような狭小空間であれば適切に空調可能である。その一方で、防音室は非常に狭い空間内での静粛性や快適性が求められる。このため、かかる小能力の空気調和機を使用した場合であっても、その稼働時に室内のユーザが感じるドラフト感や送風音などが大きくなり易く、室内の静粛性や快適性を低下させ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、防音室のような狭小空間であってもドラフト感や送風音を抑制して適切に空調を行うことが可能な空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、空気調和機は、床部と、天井部と、前記床部と前記天井部の間を閉塞する壁部とで囲まれた内部空間を有し、屋内もしくは屋外に設置されてユーザが入室して使用する防音室で用いられる。かかる空気調和機は、室外機と、室内機と、入室検知部と、露点温度検知部と、制御部とを備える。前記室外機は、吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された前記冷媒と前記防音室の外気とを熱交換させる室外熱交換器と、前記外気を吸い込んで前記室外熱交換器に吹き付けるとともに前記室外熱交換器で熱交換された前記外気を排気する室外送風機とを有する。前記室内機は、前記室外熱交換器で熱交換された前記冷媒と前記防音室の内気とを熱交換させる室内熱交換器と、前記室内熱交換器に前記内気を吹き付けるとともに前記室内熱交換器で熱交換された前記内気を前記防音室の室内に吹き出す四つ以上の室内送風機とを有する。前記入室検知部は、前記防音室への前記ユーザの入室を検知する。前記露点温度検知部は、前記内気の露点温度を検知する。前記制御部は、前記室外機、前記室内機、前記入室検知部、および前記露点温度検知部の動作を制御する。前記制御部は、定常制御として以下を行う。すなわち、前記制御部は、前記内気の露点温度が10℃以上、16℃未満となるように前記圧縮機を動作させる。また、前記制御部は、前記室外送風機によって吸い込まれて前記室外熱交換器に吹き付けられる前記外気の吸込風速が0.7m/s以上、1.0m/s以下となるように前記室外送風機を動作させる。さらに、前記制御部は、前記室内熱交換器で熱交換されて動作中のすべての前記室内送風機によって前記防音室の室内に吹き出される前記内気の吹出風速が0.5m/s以下となるように四つ以上の前記室内送風機を個別に動作させる。前記防音室への前記ユーザの入室が前記入室検知部によって検知された場合、前記制御部は、前記内気の露点温度、前記外気の吸込風速、および前記内気の吹出風速が前記定常制御の範囲内にいずれもとどまるように前記圧縮機、前記室外送風機、および前記室内送風機の各動作を補正制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る空気調和機が設置される防音室の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクルを概略的に示す回路図である。
【
図3】実施形態に係る空気調和機の室外機の概略的な構成を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る空気調和機の
図3に示す室外機の上部カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る空気調和機の
図4に示す室外機の状態を上方から見た図である。
【
図6】実施形態に係る空気調和機の室外機の概略的な構成を示す背面図である。
【
図7】実施形態に係る空気調和機の室内機の概略的な構成を示す斜視図である。
【
図8】実施形態に係る空気調和機の室内機の概略的な構成を正面から見た図である。
【
図9】実施形態に係る空気調和機の室内機の概略的な構成を上方から見た図である。
【
図10】実施形態に係る空気調和機の室内機の概略的な構成を下方から見た図である。
【
図11】実施形態に係る空気調和機の室内機を
図8のA8-A8に沿って矢印方向に見た断面図である。
【
図12】実施形態に係る空気調和機の室内機が五つの送風機を備えた構成例を示す斜視図である。
【
図13】実施形態に係る空気調和機の室内機が六つの送風機を備えた構成例を示す斜視図である。
【
図14】実施形態に係る空気調和機の室内機の室内熱交換器において、吹出風速が自然対流レベル(0.3m/s程度)である条件下における前面面積と冷媒の蒸発温度との関係を示す図である。
【
図15】実施形態に係る空気調和機における制御ブロックを概略的に示す図である。
【
図16】実施形態に係る空気調和機において、制御部が行う室外機、室内機、および入室検知部に対する動作制御の制御フロー図である。
【
図17】実施形態に係る空気調和機の室外機において、吸込風速と成績係数(COP)および騒音値との関係を示す図である。
【
図18】実施形態に係る空気調和機の比較例において、冷媒温度の時間変化の一例を示す図である。
【
図19】実施形態に係る空気調和機の比較例において、防音室の内気の露点温度の時間変化の一例を示す図である。
【
図20】実施形態に係る空気調和機において、ユーザの入室(在室有無の変化)を熱負荷変動として検知した場合における内気の露点温度の時間変化の一例を示す図である。
【
図21】実施形態に係る空気調和機の変形例において、一台の室外機に対して二台の室内機を備えて冷凍サイクルが構成された空気調和機の一例を概略的に示す図である。
【
図22】実施形態に係る空気調和機の変形例において、一台の室外機に対して二台の室内機を備えて冷凍サイクルが構成された空気調和機の別例を概略的に示す図である。
【
図23】実施形態に係る空気調和機の変形例において、一台の室外機に対して二台の室内機を備えて冷凍サイクルが構成された空気調和機のさらなる別例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図23を参照して説明する。
本実施形態に係る空気調和機は、例えばデスクワーク、楽器演奏、カラオケなどのために基本的にユーザが一人で使用する防音室で用いられる。防音室は、例えば机といす、楽器、照明装置などの必要最小限の設備のみを備え、例えば4.5畳以下、その多くは0.5畳から1.5畳程度の外部から閉塞可能な狭小空間とされている。なお、防音室への同時入室は基本的に一人であるが、二人程度の同時入室は可能である。本実施形態では一例として、空気調和機は、防音室内を冷房するための冷房専用機である場合を想定するが、冷暖房可能な構成であってもよい。
【0008】
図1は、本実施形態に係る空気調和機1が設置される防音室90の概略構成の一例を示す図である。なお、以下の説明においては、
図1に示すように第1方向D1、第2方向D2、および第3方向D3をそれぞれ定義する。これら方向D1,D2,D3は、例えば互いに直交する方向である。本実施形態では一例として、第2方向D2および第3方向D3で規定される平面を水平面、第1方向D1を水平面に対する垂直方向とする。なお、
図1以外の各図においても、必要に応じてこれら方向D1,D2,D3に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すように、防音室90は、床部91、天井部92、四つの壁部93~96で閉塞されたほぼ直方体状の内部空間を有する六面の構造体である。床部91および天井部92は、第2方向D2および第3方向D3で規定される平面(水平面)とほぼ平行をなしている。壁部93,94は、第1方向D1および第3方向D3で規定される平面とほぼ平行をなしている。壁部93は第2方向D2の手前側の壁部であり、壁部94は第2方向D2の奥側の壁部である。壁部95,96は、第1方向D1および第2方向D2で規定される平面とほぼ平行をなしている。壁部95は第3方向D3の手前側の壁部であり、壁部96は第3方向D3の奥側の壁部である。
図1に示す例では、防音室90はユーザMが一人で入室して使用する一人用の個室とされている。四つの壁部93~96の内壁面は、例えばポリウレタンなどの吸音材や防音材で覆われ、室内からの音漏れ抑制や外部からの遮音性が図られている。天井部92には、照明装置97が設けられている。壁部93には、入退室用の扉98が設けられている。ユーザMは、扉98を開閉して防音室90に出入りする。
【0010】
また、防音室90には、ユーザMの入室を検知する入室検知部99が設けられている。これに代えてもしくは加えて、防音室90には、ユーザMの在室有無を検知する在室検知部が設けられていてもよい。入室検知部99および在室検知部は、防音室90における熱負荷の変動を検知するセンサであり、例えば非接触型の放射温度センサや焦電センサなどであり、天井部92や扉98などに設けられている。
図1に示す例では、入室検知部99が天井部92に設けられている。入室検知部99は、後述する空気調和機1の制御部20と有線もしくは無線で接続され、防音室90におけるユーザMの入室有無の検知結果、例えば入室信号や退室信号などを制御部20に付与する。なお、退室信号は、例えば一定時間に亘って防音室90でのユーザMの動きが検知されない場合、ユーザMが防音室90から退室したものとして発せられる。
【0011】
上述したとおり、空気調和機1は、防音室90の室内を冷房するための冷房専用機である。
図2は、空気調和機1の冷凍サイクルを概略的に示す回路図である。かかる冷凍サイクルは、主たる要素として圧縮機2と、凝縮器3と、膨張弁4と、蒸発器5と、これらの要素を接続する冷媒流路6とを備えている。
【0012】
圧縮機2は、例えば圧縮機本体2aと、アキュムレータ2bとを備えている。圧縮機本体2aは、アキュムレータ2bから供給されるガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を冷媒流路6に吐出する。アキュムレータ2bは、冷媒流路6を介して供給される冷媒を気液分離し、ガス冷媒を圧縮機本体2aに供給する。
【0013】
凝縮器3は、圧縮機本体2aから吐出された高温・高圧の気相冷媒を空気との熱交換により凝縮し、高圧の液相冷媒に変化させる。
膨張弁4は、凝縮器3で凝縮された高圧の液相冷媒を減圧させ、低圧の気液二相冷媒に変化させる。
蒸発器5は、膨張弁4で減圧された気液二相冷媒を空気などとの熱交換により蒸発させ、低温・低圧の気相冷媒に変化させる。蒸発器5で熱交換された低温・低圧の気相冷媒は、アキュムレータ2bに導かれて気液分離される。
【0014】
図1に示すように、空気調和機1は、室外機11と室内機12を備えている。室外機11と室内機12は、冷媒流路6の一部によって相互に接続されている。室外機11と室内機12を接続する冷媒流路6の一部は、ダクト60の内部に配管されている。空気調和機1においては、室外機11と室内機12との間でダクト60内に配管された冷媒流路6を介して冷媒が
図2に示す冷凍サイクルを循環し、冷房運転が行われる。また、ダクト60には、室内機12で発生したドレン水を室外機11に導くホース(以下、ドレンホースという)61の一部分(上部)が配管されている。
【0015】
図1に示すように、室外機11は、防音室90の室外に設置される装置であり、屋内もしくは屋外のいずれに設置されているかは問わない。例えば防音室90の室外であれば、室外機11は、防音室90と同一の建屋の中(屋内)に設置されていてもよいし、当該建屋の外(屋外)に設置されていても構わない。
【0016】
図3から
図6には、室外機11の概略的な構成を示す。
図3は斜視図、
図4は後述する上部カバーを取り外した状態の斜視図、
図5は
図4に示す状態を上方から見た図、
図6は背面図である。
図3から
図6に示す例では、室外機11において、第1方向D1が上方、その逆方向が下方、第2方向D2が前方、その逆方向が後方、第3方向D3が左方、その逆方向が右方とする。
【0017】
図3から
図6に示すように、室外機11は、主たる構成要素として圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4、送風機(室外送風機)7を備えている。これら各構成要素は、筐体8に収容されている。送風機7は、防音室90の外部の空気(外気)を筐体8の内部に吸い込み、吸い込んだ外気を凝縮器3に吹き付ける。例えば、送風機7は、主たる要素として、モータおよびファンを備えている。ファンは、円筒状の多翼ファン(シロッコファン)として構成され、モータの回転軸に同軸状に取り付けられている。
【0018】
凝縮器3は、冷凍サイクルを循環する冷媒と、送風機7によって吸い込まれた外気との間で熱交換を行う熱交換器(以下、室外熱交換器3という)である。冷媒は、室外熱交換器3を通過する際、外気に放熱して凝縮される。例えば、室外熱交換器3は、伝熱管31と伝熱管31に組み付けられた複数のフィン(図示省略)とを備えて構成される。伝熱管31は、後述する筐体8の側壁部81cに沿って蛇行しながら第3方向D3および第1方向D1へ連続し、圧縮機本体2aから吐出された冷媒を入口から出口まで導く。複数のフィンは、第1方向D1に長手の板状に構成されて伝熱管31にそれぞれ組み付けられ、後述する筐体8の側壁部81d,81eと平行に所定のピッチで第3方向D3に沿って並んでいる。このように、室外熱交換器3は、第3方向D3および第1方向D1に沿って延在して筐体8の側壁部81c、具体的には後述する吸込口814と対向する扁平体をなす。
【0019】
図5に示すように、室外機11は、室内機12からのドレン水を受けて室外熱交換器3に滴下させるトレー13を備えている。トレー13は、室外熱交換器3の上方に配置され、後述するドレンホース61(
図9および
図10参照)を通って室内機12のドレン水を受けるトレー本体14と、トレー本体14に形成された複数の貫通孔15を有している。トレー本体14は、第3方向D3における室外熱交換器3の寸法(左右方向の全長)に亘って平板状に連続し、室外熱交換器3の上部を覆っている。トレー本体14は、第3方向D3に伸びる溝部14aと、溝部14aを挟んで第2方向D2の両側で溝部14aに沿って伸びる一対の土手部14bにより構成されている。トレー本体14において、溝部14aは凹部であり、土手部14bは凸部である。複数の貫通孔15は、それぞれ一対の土手部14bを第1方向D1に沿って貫通して開口周縁で溝部14aと連通し、第3方向D3にほぼ等間隔で開口している。ドレンホース61を通って排出された室内機12のドレン水は、ドレンホース61の排水口から溝部14aで受け止められ、複数の貫通孔15から室外熱交換器3に滴下される。
【0020】
これにより、室外熱交換器3において、防音室90の外部の空気(外気)だけでなくドレン水とも冷媒が熱交換することで熱交換量を増加させ、熱交換効率も向上させることができる。したがって、例えば室外熱交換器3で冷媒と熱交換された外気(排気)の温度を人の体温以下(37℃以下)に下げることが可能となるため、室外機11からの排気が吹き付けられた場合であっても不快感を低減できる。また、室外機11が屋外ではなく屋内に設置される場合であっても、排水ダクト工事を不要にでき、仮に工事を要する場合であっても簡略化できる。
【0021】
筐体8は、縦長のほぼ直方体の容体であり、容器本体81と上部カバー82を備えている。容器本体81は、底部81aと側壁部81b,81c,81d,81eを有する。底部81aには、底部81aを規定する四辺形の四隅にキャスタ811がそれぞれ取り付けられている。キャスタ811は、車輪812と、車輪812の回転を停止させるストッパ813を備えており、ストッパ813の作動と解除とが切替可能とされている。ストッパ813が解除された状態では、車輪812が回転自在となり、筐体8を移動可能な状態となる。これに対し、ストッパ813が作動された状態では、車輪812が回転不能となり、筐体8が位置決めされた状態となる。
【0022】
四つの側壁部81b~81eのうち、側壁部81bと側壁部81cが対向して底部81aから起立し、これら側壁部81b,81cとほぼ直交するように側壁部81dと側壁部81eが対向して底部81aから起立している。本実施形態では一例として、側壁部81b,81cが第1方向D1および第3方向D3で規定される平面とほぼ平行をなし、側壁部81bは、防音室90の壁部94と向き合うように配置されている。この状態において、側壁部81d,81eは、第1方向D1および第2方向D2で規定される平面とほぼ平行をなす。
図6に示すように、側壁部81cは、送風機7が動作した際に外気を筐体8の内部に吸い込むための吸込口814を有している。吸込口814は、防音室90の壁部94(第2方向D2の後方)を臨んで開口している。
【0023】
なお、吸込口814には、防音室90の外部の空気(外気)に含まれる塵埃などの異物を除去するフィルタが取り付けられていてもよい。フィルタは、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)などの集塵性の高いフィルタを適用可能である。集塵性能としては、例えば定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能である。かかるフィルタを取り付けることにより、例えば防音室90が屋内に設置され、室外機11も屋内に設置された場合において、室外機11で屋内の空気清浄を図ることが可能となる。
【0024】
上部カバー82は、容器本体81の上部に被せられ、容器本体81の内部を遮蔽する。
図3に示す例では、上部カバー82は、天部82aと垂下部82b,82c,82d,82eを有する。天部82aは、容器本体81の上部開口、換言すれば側壁部81b,81c,81d,81eの上端で規定される四辺形とほぼ同一形状の平板部である。四つの垂下部82b~82eのうち、垂下部82bと垂下部82cは、側壁部81bおよび側壁部81cと平行をなすように、互いに対向して天部82aから垂下している。垂下部82dと垂下部82eは、垂下部82b,82cとほぼ直交するとともに、側壁部81dおよび側壁部81eと平行をなすように、互いに対向して天部82aから垂下している。例えば、上部カバー82は、側壁部81b,81c,81d,81eの上部外面に垂下部82b,82c,82d,82eがねじ83によって固定されている。
【0025】
図3に示すように、上部カバー82は、側壁部81bの吸込口814から吸い込まれて室外熱交換器3で冷媒と熱交換された外気(排気)を吹き出す吹出口821を有している。吹出口821は、天部82aのほぼ中央部に上方を臨んで開口している。
図3に示す例では、吹出口821には、柵状の仕切りが設けられているが、該仕切りの形態は特に問わず、格子状や網目状などであってもよい。
【0026】
送風機7において、モータが駆動されてファンが回転すると、吸込口814から外気が筐体8の内部に吸い込まれ、室外熱交換器3に吹き付けられる。吹き付けられた外気は、室外熱交換器3(例えばフィンの間)を通過する際に冷媒と熱交換される。熱交換された外気は、送風機7によって吹出口821を通じて筐体8の上方へ吹き出され、筐体8から排気される。本実施形態では、空気調和機1は、冷房専用機であるため、吹出口821から吹き出される排気は、冷媒から熱を吸収した温風である。しかしながら、かかる温風は上方へ吹き出されるため、室外機11付近を人が通過した場合であっても、筐体8からの排気が通過者に直接吹き付けられることが抑制され、通過者に与える不快感を低減させることができる。また、室外機11が屋内に設置される場合、例えば屋内に部屋干しされた洗濯物を乾燥させるために筐体8からの排気を活用することも可能である。
【0027】
送風機7は、吸込風速が0.7m/s以上、1.0m/s以下とされている。吸込風速は、送風機7によって筐体8の内部に吸い込まれて室外熱交換器3に吹き付けられる外気の風速である。換言すれば、吸込風速は、防音室90の壁部94(第2方向D2の後方)を臨んで開口して室外熱交換器3と対向する吸込口814から筐体8の内部に吸い込まれる外気の風速である。これにより、室外機11の静音性、例えば図書館内の静音レベルである40dBA以下を実現しつつ、省エネ性も高い仕様(成績係数が1.9以上)とすることが可能となる(詳細は後述)。
【0028】
図7から
図11には、室内機12の概略的な構成を示す。
図7は斜視図、
図8は正面から見た図、
図9は上方から見た図、
図10は下方から見た図、
図11は
図8のA8-A8に沿って矢印方向に見た断面図である。
図7から
図11に示す例では、室内機12において、第1方向D1が上方、その逆方向が下方、第2方向D2が後方、その逆方向が前方、第3方向D3が右方、その逆方向が左方とする。
【0029】
図7から
図11に示すように、室内機12は、主たる要素として蒸発器5、送風機(室内送風機)9を備えている。これら各構成要素は、筐体10に収容されている。送風機9は、防音室90の内部の空気(内気)を筐体10の内部に吸い込み、吸い込んだ内気を蒸発器5に吹き付ける。例えば、送風機9は、プロペラファンであり、主たる要素として、モータおよび羽根車を備えている。送風機9において、モータはアウターロータもしくはインナーロータのいずれであっても構わないが、これらの中心軸と同心に羽根車が回転する。送風機9は、後述する空気調和機1の制御部20と有線もしくは無線で接続され、制御部20によって動作制御される。また、
図11に示すように、送風機9は、筐体10の上部から後方へ下向きに傾き、羽根車の回転中心軸が後述する筐体10の天部10aに開口する内気の吸込口101および内気の吹出口103を通るように配置されている。なお、羽根車の回転中心軸と平行な軸は、後述する筐体10の吹出口102も通っており、送風機9から蒸発器5に吹き付けられた内気は、吹出口102,103からそれぞれ吹き出される。
【0030】
本実施形態では一例として、
図7および
図9に示すように、室内機12は、四つの送風機9を備えている。第1送風機9a、第2送風機9b、第3送風機9c、および第4送風機9dは、いずれも同一の送風機9であり、第3方向D3に沿ってほぼ等間隔で並んでいる。
図7および
図9に示す例では、第3方向D3の一端側(左端側)から他端側(右端側)へ、第1送風機9a、第2送風機9b、第3送風機9c、第4送風機9dがこの順番で配置されている。換言すれば、第1送風機9a、第2送風機9b、第3送風機9c、第4送風機9dは、室内熱交換器5に吹き付ける内気の気流方向を通風路104に沿わせるとともに、通風路104を横切る方向(第3方向D3)へ並んで配置されている。
【0031】
これらの送風機9a,9b,9c,9dは、その回転速度が個別に制御可能とされている。したがって、送風機9a,9b,9c,9dごとの駆動(増速、減速)、停止が可能である。例えば、配列方向(第3方向D3)に隣り合う送風機9同士で駆動状態(動作状態)と停止状態を異ならせることが可能である。この場合、第1送風機9aおよび第3送風機9cが駆動し、第2送風機9bおよび第4送風機9dが停止する。あるいは、第1送風機9aおよび第3送風機9cが停止し、第2送風機9bおよび第4送風機9dが駆動する。また、配列方向の両端の送風機9とそれ以外の送風機9とで駆動状態(動作状態)と停止状態を異ならせることが可能である。この場合、第1送風機9aおよび第4送風機9dが停止し、第2送風機9bおよび第3送風機9cが駆動する。あるいは、第1送風機9aおよび第4送風機9dが駆動し、第2送風機9bおよび第3送風機9cが停止する。
【0032】
例えば、送風機9a,9b,9c,9dのうち、停止する送風機9(もしくは稼働する送風機9)が配列方向の一方側、例えば左右どちらか一方側に偏っている場合、後述する吹出風速にムラが生じ、後述する筐体10の吹出口102,103から吹き出される空気の温湿度にもムラが生じ易い。その結果、防音室90の温湿度を一様に調節し難くなる。これに対し、本実施形態のように駆動する送風機9と停止する送風機9が偏らないようにすることで、吹出風速および吹出口102,103から吹き出される空気の温湿度のムラを抑制でき、防音室90の温湿度を一様に調節し易くなる。これにより、防音室90の快適性を高めることができる。
【0033】
また、これらの送風機9a,9b,9c,9dは吹出風速が0.5m/s以下とされている。吹出風速は、送風機9a,9b,9c,9dから蒸発器5に吹き付けられて後述する筐体10の吹出口102,103から吹き出される空気(蒸発器5で熱交換された内気、つまり温湿度調節された空気)の風速である。この吹出風速の上限値(0.5m/s)は、送風機9a,9b,9c,9dの駆動によって生ずる防音室90内における気流を、空気の自然対流レベル(0.3m/s程度)に抑えることが可能な閾値として設定されている。吹出風速の上限値は、四つの送風機9a,9b,9c,9dによって発生し、吹出口102,103から吹き出される全気流の風速、換言すれば吹出口102,103の直近における風速であり、個別の送風機9によって発生する気流の風速ではない。すなわち、吹出風速は、駆動されている送風機9によって発生する全気流の風速である。したがって、吹出風速は、すべての送風機9が駆動されている場合、全送風機9によって発生する気流の風速であり、一部の送風機9のみが駆動されている場合、該一部の送風機9によって発生する気流の風速である。
【0034】
なお、本実施形態では、
図7および
図9に示すように、室内機12は四つの送風機9を備えているが、送風機9の数はこれに限定されない。要するに、吹出風速が0.5m/s以下であれば、送風機9の数は五つ以上であってもよい。このように送風機9の数は、四つ以上であることが好ましいが、三つ以下である場合も排除しない。
図12には、五つの送風機9を備えた構成例、
図13には、六つの送風機9を備えた構成例をそれぞれ示す。
図12に示す例では、第3方向D3の一端側(左端側)から他端側(右端側)へ、第1送風機9a、第2送風機9b、第3送風機9c、第4送風機9d、第5送風機9eがこの順番で配置されている。
図13に示す例では、第3方向D3の一端側(左端側)から他端側(右端側)へ、第1送風機9a、第2送風機9b、第3送風機9c、第4送風機9d、第5送風機9e、第6送風機9fがこの順番で配置されている。
【0035】
蒸発器5は、冷凍サイクルを循環する冷媒、端的には室外熱交換器3で熱交換された冷媒と、送風機9によって吸い込まれた内気との間で熱交換を行う熱交換器(以下、室内熱交換器5という)である。
図11に示すように、例えば、室内熱交換器5は伝熱管51と伝熱管51に組み付けられた複数のフィン52とを備えて構成される。
【0036】
伝熱管51は、後述する筐体10の側壁部10dに沿って蛇行しながら第3方向D3および第1方向D1へ連続し、室外熱交換器3で熱交換された冷媒を入口51aから出口51bまで導く。伝熱管51は、入口51aに対して出口51bが上方となるように連続しており、冷媒が下方から上方へ向けて流れるように構成されている。これにより、伝熱管51を流れる冷媒の温度が下方よりも上方の方が高くなるため、温度差による空気の対流を促進させることができ、熱交換量およびその効率を高めることができる。
【0037】
複数のフィン52は、所定方向に長手の板状に構成されて伝熱管51にそれぞれ組み付けられ、後述する筐体10の側壁部10e,10fと平行に所定のピッチで第3方向D3に沿って並んでいる。
図11に示す例において、所定方向は、第1方向D1および第3方向D3のいずれに対しても傾斜した方向である。また、
図11に示すように、フィン52は、筐体10の上部から後方へ下向きに傾き、後述する筐体10の底部10bおよび側壁部10cに開口する吹出口102,103と対向して配置されている。
図11に示す例では、水平面(第2方向D2および第3方向D3で規定される平面)に対するフィン52の傾斜角度αは送風機9の傾斜角度βよりも大きい。また、フィン52は、平行に対向する長辺52aとこれらとほぼ直交して平行に対向する短辺52bとで規定されるほぼ長方形状の四辺形をなしている。ただし、フィン52の形状はこれに限定されない。短辺52bが延びる方向は、送風機9から吹き付けられる空気の気流に沿った方向である。
【0038】
室内機12は、室内熱交換器5、具体的には伝熱管51およびフィン52の表面に生じた水滴であるドレン水を受けるドレンパン(図示省略)を備えている。ドレンパンは、筐体10のドレンホース接続端子16(
図9および
図10参照)と連通している。ドレンホース接続端子16には、ドレンホース61の一端であるホース入口が接続されている。ドレンホース61の他端であるホース出口は、室外機11のトレー13、具体的にはトレー本体14の溝部14aを臨んで開口している。これにより、室内機12で発生したドレン水は、ドレンパン、ドレンホース接続端子16、ドレンホース61を通って室外機11のトレー13まで導かれる。
【0039】
また、室内機12は、液相冷媒が流れる液管17と、気相冷媒が流れるガス管18を有している。液管17は、一端が伝熱管51の入口51aと接続されている。液管17の他端である接続端子17aは、冷媒流路6の一部をなして室外機11の膨張弁と連通する配管の接続端子21(
図6参照)と接続される。ガス管18は、一端が伝熱管51の出口51bと接続されている。ガス管18の他端である接続端子18aは、冷媒流路6の一部をなして室外機11のアキュムレータ2bと連通する配管の接続端子22(
図6参照)と接続される。接続端子17a,18aと接続される配管は、それぞれドレンホース61とともに、ダクト60を通っている。
【0040】
室内熱交換器5が送風機9から吹き付けられる空気の気流方向と対峙する面積(以下、前面面積という)は、所定面積以上に設定されている。前面面積は、伝熱管51で連続するとともに、複数のフィン52が並んで構成される室内熱交換器5の第3方向D3の長さにフィン52の長辺52aの長さを掛けた面積として概算される。本実施形態では一例として、所定面積は0.026m2以上とされている。
【0041】
図14は、室内熱交換器5において、上述した吹出風速が自然対流レベル(0.3m/s程度)である条件下における前面面積と冷媒の蒸発温度との関係を示す図である。
図14において、実線Ltは前面面積と該蒸発温度との関係を示す軌跡である。
図14に実線Ltで示すように、前面面積が増加するに従って、蒸発温度は上昇する。具体的には、前面面積が0.026m
2以上である場合、吹出風速が自然対流レベル(0.3m/s程度)であっても、室内熱交換器5で熱交換される冷媒が凍結温度に至らない程度の蒸発温度、例えば0.5℃以上を維持できる。したがって、この場合、室内熱交換器5を除霜せずに済むため、空気調和機1を連続して空調運転させることが可能となる。これにより、例えば空気調和機1を停止させた場合に温湿度が上昇する事態を回避でき、不快感を低減して快適性を高めることができる。また例えば、短断続運転を継続させることによる圧縮機2への負荷を低減させることができ、圧縮機2を長寿命化できる。加えて、圧縮機2の運転時および停止時における騒音を抑制でき、不快感を低減して快適性を高めることができる。
【0042】
筐体10は、横長のほぼ直方体状をなし、室内機12の外郭を規定する。筐体10は、天部10a、底部10b、側壁部10c,10d,10e,10fを有する。
天部10aおよび底部10bは、第2方向D2および第3方向D3で規定される平面(水平面)とほぼ平行をなしている。天部10aは筐体10の上面を規定し、底部10bは筐体10の下面を規定する。側壁部10c,10dは、第1方向D1および第3方向D3で規定される平面とほぼ平行をなしている。側壁部10cは筐体10の前面、側壁部10dは筐体10の後面(背面)を規定する。側壁部10e,10fは、第1方向D1および第2方向D2で規定される平面とほぼ平行をなしている。側壁部10eは筐体10の左側面、側壁部10fは筐体10の右側面を規定する。本実施形態では、側壁部10dは、防音室90の壁部94と向き合うように位置付けられている。
【0043】
筐体10の最上部である天部10aと防音室90の天井部92との間の間隔(
図1に示す距離B)は、100mm以上、150mm以下とされている。換言すれば、室内機12は、筐体10の天井部92との間隔が100mm以上、150mm以下の範囲内となるように壁部94に設置されている。なお、第3方向D3における室内機12の位置は、壁部94の中央およびその近傍であってもよいし、壁部94の端(壁部95,96の近傍)であってもよい。これにより、室内機12が防音室90の上部に位置付けられ、温湿度調節された空気、本実施形態では冷気が上方から下方へ向けて対流する。このため、防音室90の上部と下部での温湿度のムラを小さくし、室内を均一に温湿度調整でき、快適性を高めることができる。また、天部10aと天井部92との間隔を100mm以上あけることで、上記のような快適性の向上を図りながら、内気の対流を促進できる。
【0044】
筐体10の上面を規定する天部10aは、送風機9が動作した際に内気を筐体10の内部に吸い込むための吸込口101を有している。吸込口101は、筐体10の上方、つまり防音室90の天井部92(第1方向D1の上方)を臨んで開口している。本実施形態において、室内機12は、吸込口101の近傍に露点温度検知部19を備えている。露点温度検知部19は、防音室90の内気の露点温度を検知するセンサであり、例えば露点温度センサ、温湿度センサ、絶対湿度センサなどである。露点温度検知部19は、後述する空気調和機1の制御部20と有線もしくは無線で接続され、内気の露点温度の検知結果を制御部20に付与する。なお、露点温度検知部19は、室内機12ではなく、防音室90の任意の箇所に配置されていてもよい。
【0045】
筐体10の下部には、吸込口101から吸い込まれて室内熱交換器5で冷媒と熱交換された内気を吹き出す吹出口102,103が形成されている。換言すれば、筐体10は、吸込口101から吹出口102,103に至る通風路104を内部に有する。本実施形態では一例として、筐体10の下面を規定する底部10bが吹出口102を有するとともに、筐体10の前面を規定する側壁部10cが吹出口103を有している。吹出口102は、筐体10の下方、つまり防音室90の床部91(第1方向D1の下方)を臨んで開口している。吹出口103は、筐体10の前方、つまり防音室90の壁部93(第2方向D2の前方)を臨んで開口している。吹出口102,103をこのように開口させることで、冷気(冷風)を筐体10の下方および前方へ向けて吹き出すことができる。これにより、防音室90の内気の循環を促進させることができ、防音室90を短時間で所望の温湿度に調節することができる。
図7から
図11に示す例では、吹出口102,103には、柵状の仕切りが設けられているが、該仕切りの形態は特に問わず、格子状や網目状などであってもよい。
【0046】
また、筐体10の上部(天部10a)に吸込口101が開口するとともに、筐体10の下部に吹出口102,103が開口することで、防音室90内での内気の吸い込みおよび吹き出しに起因する騒音を低減させつつ、流体である空気の浮力に起因する対流を自然対流の範囲内で促進できる。これにより、ユーザMが感じるドラフト感を抑制しながらも冷媒と防音室90の内気との熱交換を促進できる。
【0047】
送風機9において、モータが駆動されて羽根車が回転すると、吸込口101から内気が筐体10の内部に吸い込まれ、室内熱交換器5(例えばフィンの間)を通過する際に冷媒と熱交換される。熱交換された内気は、送風機9によって吹出口102,103を通じて筐体10の下方および前方へ向けて防音室90内に吹き出される。本実施形態では、空気調和機1は、冷房専用機であるため、吹出口102,103から吹き出される内気は、冷媒に吸熱された冷風である。
【0048】
図15は、空気調和機1における制御ブロックを概略的に示す図である。
図15に示すように、空気調和機1は、室外機11、室内機12、および入室検知部99の動作を制御する制御部20を備えている。室外機11の主たる制御対象は、圧縮機2である。室内機12の主たる制御対象は、送風機9および露点温度検知部19である。
【0049】
制御部20は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、制御部20は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて室外機11、室内機12、および入室検知部99、具体的にはこれら構成部材の動作制御を行う。その際、制御部20は、室外機11、室内機12、および入室検知部99のそれぞれの構成部材との間で制御信号やデータ信号を有線もしくは無線を介して送受信する。
図15に示す例では、制御部20は、室外機11、室内機12、および入室検知部99とは独立して備えられているが、例えば室外機11、室内機12、および入室検知部99がそれぞれ制御部を備えていてもよい。この場合、室外機11、室内機12、および入室検知部99の各制御部相互間で制御信号やデータ信号を有線もしくは無線を介して送受信すればよい。また、空気調和機1は、室外機11、室内機12、および入室検知部99の各制御部を上位で制御する主制御部を備えていてもよい。
【0050】
図16には、制御部20が行う空気調和機1の運転制御、つまり室外機11、室内機12、および入室検知部99に対する動作制御の制御フローを示す。以下、空気調和機1の運転制御について、制御部20の制御フローに従って説明する。本実施形態において、運転開始されている空気調和機1の運転制御は、防音室90へのユーザMの入室有無に応じて適切に補正(運転補正制御)される。
【0051】
かかる運転補正制御にあたって、空気調和機1は、運転を開始する(S101)。具体的には、制御部20が室外機11および室内機12の動作をそれぞれ開始させる。これにより、例えば、室外機11において圧縮機2や送風機7などが適宜起動され、室内機12において送風機9などが適宜起動される。空気調和機1が運転されていることは、運転補正制御の前提条件である。なお、空気調和機1の運転開始のトリガーは、特に限定されない。例えば、人為的なトリガーであってもよいし、自動的なトリガーであってもよい。一例として、空気調和機1の運転開始を示す信号を受信した場合、制御部20は空気調和機1の運転を開始する。運転開始を示す信号は、例えば防音室90の室外あるいは室内に設けられた設定部(図示省略)からユーザM等が運転開始を選択することで発信される。設定部は、例えば操作用のパネル、スイッチ、ボタン、表示用のディスプレイなどで構成されている。
【0052】
制御部20は、防音室90における内気の露点温度、室外機11の送風機7の吸込風速、および室内機12の送風機9a,9b,9c,9dの吹出風速をそれぞれ次のように制御(以下、定常制御という)する(S102)。
【0053】
制御部20は、防音室90の内気の露点温度を10℃以上、16℃未満に制御する。内気の露点温度は、露点温度検知部19の検知結果として、露点温度検知部19から制御部20に付与されている。内気の露点温度をこのような温度範囲とするべく、制御部20は、圧縮機2の出力を変動させる。あるいは、制御部20は圧縮機2の運転と停止を適宜切り替える。これにより、防音室90を快適な温湿度状態に維持でき、防音室90の快適性を高められる。
【0054】
その際、制御部20は、室外機11の送風機7の吸込風速を0.7m/s以上、1.0m/s以下に制御する。これにより、室外機11の静音性、例えば図書館内の静音レベルである40dBA以下を実現しつつ、省エネ性も高い仕様(成績係数が1.9以上)とすることが可能となる。
【0055】
図17は、室外機11における吸込風速と成績係数(COP)および騒音値との関係を示す図である。
図17において、実線Lcは吸込風速と成績係数および騒音値との関係を示す軌跡であり、破線Ldは吸込風速と騒音値との関係を示す軌跡である。
図17に実線Lcおよび破線Ldで示すように、吸込風速が増加するに従って、成績係数および騒音値はいずれも上昇する。具体的には、実線Lcで示すように、吸込風速が0.7m/s以上であれば、成績係数を1.9以上とすることができる。加えて、破線Ldで示すように、吸込風速が1.0m/s以下であれば、騒音値を40dBA以下とすることができる。
【0056】
また、制御部20は、室内機12の送風機9a,9b,9c,9dの吹出風速を0.5m/s以下に制御する。これにより、送風機9a,9b,9c,9dの駆動によって生ずる防音室90内における気流を、空気の自然対流レベル(0.3m/s程度)に抑えることができる。その際、制御部20は、送風機9a,9b,9c,9dの回転速度を個別に制御する。したがって、制御部20は、吹出風速が0.5m/s以下となるように、送風機9a,9b,9c,9dごとの駆動(増速、減速)、停止を行う。したがって、制御部20は、送風機9a,9b,9c,9dをすべて同一の回転速度で駆動させたり、これらを異なる回転速度で駆動させたり、あるいは個別に停止させる。これにより、風速が0.5m/s以下となるように吹出風速を適切に制御できる。また例えば、隣り合う送風機9同士で駆動状態と停止状態を異ならせたり、配列方向の両端の送風機9を停止させ、それ以外の送風機9を駆動させたりすることで、風速が0.5m/s以下となるように吹出風速を制御することもできる。
【0057】
したがって、定常制御においては、防音室90の内気の露点温度が10℃以上、16℃未満となるように圧縮機2が動作される。また、定常制御においては、外気の吸込風速が0.7m/s以上、1.0m/s以下となるように送風機7が動作される。そして、定常制御においては、内気の吹出風速が0.5m/s以下となるように送風機9a,9b,9c,9dが個別に動作される。
【0058】
次いで、制御部20は、防音室90へのユーザMの入室有無に応じて空気調和機1を運転補正制御するべく、防音室90にユーザMが入室して在室状態となったか否か(入室有無)を判定する(S103)。運転補正制御は、空気調和機1の運転状態を定常制御から補正して行われる制御である。制御部20は、入室検知部99からユーザMの入室を示す検知結果、例えば入室信号が付与されている場合、防音室90にユーザMが入室したと判定する。これに対し、制御部20は、入室検知部99からユーザMの入室を示す検知結果、例えば入室信号が付与されていない場合あるいは退室信号が付与されている場合、防音室90にユーザMが入室していないと判定する。
【0059】
防音室90にユーザMが入室して在室状態となった場合(S103においてYes)、制御部20は、空気調和機1の運転状態を補正制御する(S104)。制御部20は、例えば室内機12の蒸発器(室内熱交換器)5の送風量や室外機11の圧縮機2から吐出される冷媒量を適切に調整する。具体的には、制御部20は、防音室90における内気の露点温度が10℃以上、16℃未満、室外機11の送風機7の吸込風速が0.7m/s以上、1.0m/s以下、および室内機12の送風機9a,9b,9c,9dの吹出風速が0.5m/s以下となる条件下で空気調和機1の運転状態を補正制御する。つまり、制御部20は、定常制御の運転条件下で空気調和機1の運転状態を補正制御する。
【0060】
これにより、例えば防音室90の室温変化、換言すれば顕熱負荷変動や冷媒の温度変化を検出して空気調和機1の冷却熱量などの顕熱能力を制御する場合と比べ、ロバスト性を向上できる。すなわち、狭小空間である防音室90において、ユーザMの入室(在室有無の変化)に伴う顕熱負荷変動は即応性が悪く、冷媒の温度変化が小さい。
図18には、冷媒温度の時間変化の一例を示す。
図18に示すように、例えばユーザMが所定時間(110分)に防音室90へ入室し、在室状態となった後の冷媒の温度変化は、0.5℃以下と微小にとどまる(
図18に示す矢印A18)。このため、このような冷媒温度変化は空気調和機1の冷却熱量の制御を開始するトリガーとはなり難い。
図19には、
図18に示すような冷媒温度変化をトリガーとした場合の防音室90における内気の露点温度の時間変化の一例を示す。
図19に示すように、結果として、防音室90の熱負荷、特に露点温度が10.5℃から13℃まで、2.5℃程度上昇してしまう(
図19に示す矢印A19)。
【0061】
これに対し、本実施形態においては、入室検知部99によるユーザMの入室(在室有無の変化)を熱負荷変動として検知可能であるため、空気調和機1の冷却熱量の制御を直ちに開始できる。したがって、特に露点変化温度においては、ユーザMが所定時間(110分)に防音室90へ入室後、直ちに冷却熱量制御を開始することで、
図20に示すように、一時的な増加量を1.0℃程度に抑制でき(
図20に示す矢印A20)、その後15分程度以内(
図20に示す時間間隔T20)でユーザMの入室前と同等レベルまで露点温度を低下させることができる。
図20は、本実施形態のようにユーザMの入室を熱負荷変動として検知した場合における内気の露点温度の時間変化の一例を示す図である。
【0062】
このように、防音室90にユーザMが入室した場合であっても、ユーザMが感じるドラフト感を抑制可能な風速0.5m/s以下に吹出風速を抑えながら、冷媒と防音室90の内気との熱交換を細かに制御できる。その結果、熱負荷変動に対するロバスト性をより一層向上させることができる。
【0063】
制御部20は、このような空気調和機1の運転補正制御を防音室90にユーザMが入室して在室状態となっている間(S103においてYes)、継続する(S104)。
【0064】
そして、防音室90からユーザMが退室して不在状態となった場合(S103においてNo)、制御部20は、空気調和機1の運転補正制御を停止する(S105)。例えば、制御部20は、一定時間に亘って防音室90でのユーザMの動きが検知されずに入室検知部99から退室信号が付与された場合、防音室90からユーザMが退室して不在状態となったと判定する。この場合、制御部20は、運転補正制御を行っていれば当該制御を停止し、運転補正制御を行っていなければ当該制御を開始することなくそのままの状態(停止状態)を継続する。すなわち、いずれにおいても運転補正制御はなされない。
【0065】
続けて、制御部20は、空気調和機1の運転停止条件を判定する(S106)。運転停止条件は、空気調和機1を運転停止させるか否かの判定条件であり、例えば、制御部20が空気調和機1の運転停止を示す信号を受信したか否かなどに応じて判定される。運転停止を示す信号は、例えば防音室90の室外あるいは室内に設けられた設定部(図示省略)からユーザM等が運転停止を選択することで発信される。
【0066】
運転停止条件が成立しない場合(S106においてNo)、制御部20は、防音室90にユーザMが入室して在室状態となったか否か(入室有無)を判定し(S103)、在室状態となっている場合(S103においてYes)には運転補正制御を再開し(S104)、不在状態となっている場合(S103においてNo)には運転補正制御の停止状態を継続する(S105)。
これに対し、運転停止条件が成立する場合(S106においてYes)、制御部20は、空気調和機1の運転を停止する(S107)。
【0067】
すなわち、空気調和機1が運転開始されると、制御部20は、防音室90の内気の露点温度を10℃以上、16℃未満、室外機11の送風機7の吸込速度を0.7m/s以上、1.0m/s以下、室内機12の送風機9の吹出速度を0.5m/s以下に定常制御する。さらに、防音室90へのユーザMの入室に応じて、制御部20は、露点温度、吸込風速、および吹出風速が定常制御の範囲内にとどまるように、圧縮機2、送風機7、および送風機9の各動作を補正制御する。そして、空気調和機1が運転停止されると、制御部20は、これらに対する所望の制御も終了する。
【0068】
このように本実施形態に係る空気調和機1によれば、防音室90のような狭小空間であってもドラフト感や送風音を抑制して適切に空調を行うことができる。送風音は、室内機12の筐体10の吹出口102,103から温湿度調節された空気が吹き出される際の音である。
【0069】
なお、上述した実施形態においては、空気調和機1は、室外機11および室内機12がそれぞれ一台ずつからなる冷凍サイクルを構成している。これに代えて、空気調和機の冷凍サイクルは、例えば一台の室外機11に対して複数の室内機12を備えて構成されていてもよい。
【0070】
図21から
図23は、一台の室外機11に対して二台の室内機12a,12bを備えて冷凍サイクルが構成された空気調和機1の変形例を概略的に示す平面図である。なお、室内機12a,12bの主たる要素は、室内機12と同様である。したがって、これらと同様の構成については、同一符号を付して説明は省略する。
【0071】
図21から
図23に示す例では、室外機11は、
図1に示す例と同様に防音室90の室外に設置されている(図示省略)。これに対し、室内機12a,12bは、各図示例において次のように防音室90内に設置されている。
【0072】
図21に示す例では、二台の室内機12a,12bは、互いの吹出口103を第2方向D2の逆向きに臨ませて配置されている。したがって、二台の室内機12a,12bにおいて、各々の四つの送風機9(
図7参照)は、室内熱交換器5(
図11参照)で熱交換された内気の少なくとも一部を吹出口103から互いに逆方向へ吹き出す。この場合、二台の室内機12a,12bは、防音室90の壁部93,94の上部における第3方向D3のほぼ中央に配置されている。したがって、二台の室内機12a,12bは、互いの吹出口103を向き合わせた状態となっている。室内機12a,12bの筐体10の各天部10aと防音室90の天井部92との間隔(
図1に示す距離Bに相当する間隔)は、100mm以上、150mm以下の範囲内である。
【0073】
図22に示す例においても、二台の室内機12a,12bは、互いの吹出口103を第2方向D2の逆向きに臨ませて配置されている。したがって、二台の室内機12a,12bにおいて、各々の四つの送風機9(
図7参照)は、
図21に示す例と同様に、室内熱交換器5(
図11参照)で熱交換された内気の少なくとも一部を吹出口103から互いに逆方向へ吹き出す。この場合、
図21に示す例と異なり、二台の室内機12a,12bは、防音室90の壁部93,94の上部における第3方向D3の端(壁部95,96の近傍)に配置されている。室内機12a,12bの筐体10の各天部10aと防音室90の天井部92との間隔(
図1に示す距離Bに相当する間隔)は、
図21に示す例と同様に100mm以上、150mm以下の範囲内である。
【0074】
図23に示す例において、二台の室内機12a,12bは、互いの吹出口102を第3方向D3の逆向きに臨ませるとともに、互いの吹出口103を第2方向D2の逆向きに臨ませて配置されている。したがって、二台の室内機12a,12bにおいて、各々の四つの送風機9(
図7参照)は、
図21および
図22に示す例と異なり、室内熱交換器5(
図11参照)で熱交換された内気の一部を吹出口102から互いに逆方向へ吹き出すとともに、吹出口103から互いに逆方向へ吹き出す。この場合、二台の室内機12a,12bは、防音室90の壁部93,94の上部における第3方向D3の端(壁部95,96の近傍)に配置されている。室内機12a,12bは、長手方向を第3方向D3に沿わせて配置された
図22および
図23に示す例と異なり、長手方向を第1方向D1に沿わせて配置されている。したがってこの場合、室内機12a,12bの筐体10の各側壁部10dと防音室90の天井部92との間隔(
図1に示す距離Bに相当する間隔)は、100mm以上、150mm以下の範囲内である。
【0075】
図21から
図23に示す例によれば、防音室90の室内全体を満遍なくカバーするように室内機12a,12bから温湿度調節された空気を吹き出すことができる。このため、防音室90の温湿度のムラを抑制して一様に調節しやすくなる。したがって、ユーザMが室内機12a,12bから離れた位置にいる場合や複数のユーザMが在室している場合であっても、防音室90の快適性を高めることができる。また、二台の室内機12a,12bは、
図21に示す例のような対向配置、あるいは
図22および
図23に示す例のような対角配置のいずれも可能であり、防音室90の室内レイアウトに制約されることなく、室内機12a,12bを柔軟に配置できる。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、かかる実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1…空気調和機、2… 圧縮機、3…凝縮器(室外熱交換器)、4…膨張弁、5…蒸発器(室内熱交換器)、6…冷媒流路、7…送風機(室外送風機)、8…筐体、9…送風機(室内送風機)、10…筐体、11…室外機、12,12a,12b…室内機、13…トレー、14…トレー本体、14a…溝部、14b…土手部、15…貫通孔、16…ドレンホース接続端子、19…露点温度検知部、20…制御部、31…伝熱管、51…伝熱管
51a 入口、51b…出口、52…フィン、60…ダクト、61…ドレンホース、81…容器本体、81a…底部、81b,81c,81d,81e…側壁部、82…上部カバー、82a…天部、821…吹出口、83…ねじ、90…防音室、91…床部、92…天井部、93~96…壁部、97…照明装置、98…扉、99…入室検知部、101…吸込口、102,103…吹出口、104…通風路、814…吸込口、M…ユーザ。