(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170197
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/54 20060101AFI20221102BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20221102BHJP
F04D 29/56 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F04D29/54 C
F04D29/66 P
F04D29/66 N
F04D29/54 F
F04D29/56 B
F04D29/56 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076161
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊郎
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB52
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC17
3H130BA16B
3H130BA17B
3H130BA75B
3H130CA03
3H130DA02X
3H130DD09Z
3H130EA03B
(57)【要約】
【課題】入口案内翼の振動を有効に抑える。
【解決手段】回転機械は、ローターと、ケーシングと、入口案内翼部と、を備える。入口案内翼部は、軸線回りの周方向に間隔をあけて配置され、径方向に延びる軸部回りに回転可能とされた複数の可動翼と、複数の可動翼の径方向外側に設けられて周方向に連続し、周方向に変位するよう駆動される駆動リングと、一方のリンク端が複数の可動翼の軸部にそれぞれ連結され、他方のリンク端が駆動リングに連結されて、駆動リングが周方向に変位した場合に複数の可動翼のそれぞれを軸部回りに回転させる複数のリンク機構と、を備える。複数のリンク機構のうち、少なくとも2つのリンク機構が異なる構造を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するローター軸、及び前記ローター軸に固定された動翼列を備えるローターと、
前記ローターを覆うケーシングと、
前記ケーシングの内部で前記動翼列に対して前記軸線が延びる軸線方向の第一側に配置された入口案内翼部と、を備え、
前記入口案内翼部は、
前記軸線回りの周方向に間隔をあけて配置され、前記軸線を中心とした径方向に延びる軸部回りに回転可能とされた複数の可動翼と、
前記複数の可動翼の径方向外側に設けられて前記周方向に連続し、前記周方向に変位するよう駆動される駆動リングと、
一方のリンク端が前記複数の可動翼の前記軸部にそれぞれ連結され、他方のリンク端が前記駆動リングに連結されて、前記駆動リングが前記周方向に変位した場合に前記複数の可動翼のそれぞれを前記軸部回りに回転させる複数のリンク機構と、を備え、
前記複数のリンク機構のうち、少なくとも2つの前記リンク機構が異なる構造を有している
回転機械。
【請求項2】
前記複数のリンク機構は、それぞれ、
前記一方のリンク端と前記他方のリンク端との間に配置された複数のリンク片と、
前記複数のリンク片同士を回動自在に連結するピンと、を備える
請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記複数のリンク機構のうち、少なくとも2つの前記リンク機構は、
前記リンク片および前記ピンの少なくとも一方の、重量、剛性、および寸法の少なくとも一つが互いに異なる
請求項2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記複数のリンク機構のうち、少なくとも2つの前記リンク機構は、動吸振器を備えることで、固有振動数が互いに異なる
請求項2又は3に記載の回転機械。
【請求項5】
前記複数のリンク機構は、それぞれ、
前記リンク機構に生じる振動を減衰する減衰機構を備え、
前記複数のリンク機構のうち、少なくとも2つの前記リンク機構は、
前記減衰機構における減衰特性が互いに異なる
請求項1から4の何れか一項に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ローター軸部の周方向に並んで複数の翼が固定されたローターを備える回転機械が開示されている。この回転機械において、複数の翼は、翼の先端部の重い翼と、翼の先端部の軽い翼とが周方向において交互に並んでいる。このような構成により、回転機械の運転中に、複数の翼の自励振動、強制振動、ランダム振動等を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、回転機械の動翼を対象としたものである。
回転機械において、外部から導入する作動流体の流量を調整するため、入口案内翼(Inlet Guide Vane:IGV)を備えたものがある。入口案内翼は、回転機械のケーシング内における作動流体の流れ方向の最も上流側に配置された動翼列に対し、さらに上流側に配置されている。入口案内翼は、ケーシングの内周面からケーシングの径方向の内側に向かって延びている。入口案内翼は、径方向に延びる軸部回りに回転可能に構成され、軸部回りの角度を変更することで、回転機械の負荷条件等に応じてケーシング内に導入する作動流体の流量を調整する。
このような入口案内翼においても、作動流体の流速が大きい高負荷条件では、入口案内翼にフラッタのような不安定振動が生じることがある。このため、入口案内翼の振動を有効に抑えることができる技術の開発が望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、入口案内翼の振動を有効に抑えることができる回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械は、ローターと、ケーシングと、入口案内翼部と、を備える。前記ローターは、ローター軸、及び動翼列を備える。前記ローター軸は、軸線回りに回転する。前記動翼列は、前記ローター軸に固定されている。前記ケーシングは、前記ローターを覆う。前記入口案内翼部は、前記ケーシングの内部で前記動翼列に対して前記軸線が延びる軸線方向の第一側に配置されている。前記入口案内翼部は、複数の可動翼と、駆動リングと、複数のリンク機構と、を備える。前記複数の可動翼は、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて配置されている。前記複数の可動翼は、前記軸線を中心とした径方向に延びる軸部回りに回転可能とされている。前記駆動リングは、前記複数の可動翼の径方向外側に設けられて前記周方向に連続している。前記駆動リングは、前記周方向に変位するよう駆動される。前記複数のリンク機構において一方のリンク端が前記複数の可動翼の前記軸部にそれぞれ連結されている。前記複数のリンク機構において他方のリンク端が前記駆動リングに連結されている。前記複数のリンク機構は、前記駆動リングが前記周方向に変位した場合に前記複数の可動翼のそれぞれを前記軸部回りに回転させる。前記複数のリンク機構のうち、少なくとも2つの前記リンク機構が異なる構造を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の回転機械によれば、入口案内翼の振動を有効に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る回転機械としての圧縮機を備えたガスタービンの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る回転機械としての圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る圧縮機に備えた入口案内翼部を軸線方向から見た図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る入口案内翼部の可動翼、リンク機構、及び駆動リングの一部を示す斜視図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係る入口案内翼部の一部を示す拡大図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係る入口案内翼部の構成を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態の変形例に係る入口案内翼部の構成を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に他の変形例に係る入口案内翼部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(ガスタービンシステムの構成)
以下、本開示の実施形態に係る回転機械について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態における回転機械は、例えばガスタービン1に備えられた圧縮機10である。
ガスタービン1は、上記回転機械としての圧縮機10と、燃焼器2と、タービン3と、ローター11と、を備えている。圧縮機10は、外部から取り込んだ空気を圧縮して高圧空気を生成する。燃焼器2は、圧縮機10で圧縮された高圧空気と燃料の混合気を燃焼させることで、高温高圧の燃焼ガスを生成する。タービン3は、燃焼器2で生成された燃焼ガスによって駆動される。タービン3の回転駆動力は、ローター11を介して圧縮機10に伝達される。これにより、圧縮機10が駆動される。
【0011】
(圧縮機の構成)
図2に示すように、圧縮機10は、軸線Arを中心として回転するローター11と、ケーシング15と、複数の静翼列17と、入口案内翼部20Aと、を少なくとも備えている。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を第一側Da1、その反対側を第二側Da2とする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向Drの内側Dri、その反対側を径方向Drの外側Droとする。
【0012】
ローター11は、ローター軸12と、複数の動翼列13と、を備えている。ローター軸12は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びている。複数の動翼列13は、ローター軸12に取り付けられている。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、周方向Dcに並んでいる複数の動翼を備えている。
【0013】
ケーシング15は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びる筒状を成している。ケーシング15は、ローター11を径方向Drの外側Droから覆っている。
【0014】
複数の静翼列17は、ケーシング15の径方向Drの内側Driに設けられている。複数の静翼列17は、軸線方向Daに間隔をあけて並んでいる。各静翼列17は、複数の動翼列13のそれぞれに対し、軸線方向Daの第二側Da2に配置されている。動翼列13と静翼列17とは、軸線方向Daに交互に配列されている。各静翼列17は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼を備えている。
【0015】
(入口案内翼部の構成)
入口案内翼部20Aは、ケーシング15の内部に配置されている。入口案内翼部20Aは、ケーシング15に形成された吸込口からケーシング15内に取り込まれた空気の流量を調整する。入口案内翼部20Aは、複数の動翼列13に対して、軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。入口案内翼部20Aは、軸線方向Daにおいて最も第一側Da1に位置する1段目の動翼列13Aに対し、軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。
【0016】
図3に示すように、入口案内翼部20Aは、フレーム21と、複数の可動翼22と、駆動リング25と、複数のリンク機構30と、を備えている。
フレーム21は、円環状をなし、ケーシング15の軸線方向Daの一部を形成する。
図4に示すように、フレーム21は、複数の翼保持孔21hを有している。複数の翼保持孔21hは、周方向Dcに間隔をあけて形成されている。各翼保持孔21hは、フレーム21を径方向Drに貫通している。
【0017】
フレーム21の径方向Drの内側Driには、センターハブ26が設けられている。センターハブ26は、軸線方向Daに延びる円筒状をなしている。センターハブ26の外周面には、複数の翼保持凹部26aが形成されている。複数の翼保持凹部26aは、周方向Dcに間隔をあけて形成されている。各翼保持凹部26aは、センターハブ26の外周面から径方向Drの内側Driに窪んでいる。
【0018】
複数の可動翼22は、フレーム21の径方向Drの内側Driに設けられている。複数の可動翼22は、周方向Dcに間隔をあけて複数設けられている。各可動翼22は、翼本体23と、軸部24と、を一体に備えている。
【0019】
翼本体23は、いわゆる入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)である。翼本体23は、その翼長方向と径方向Drとを一致させた姿勢で配置されている。翼本体23の径方向Drの内側Driに位置する翼長方向の一端部23aは、センターハブ26に形成された翼保持凹部26aに挿入されて、軸部24の中心軸Cs回りに回動自在に支持されている。
【0020】
軸部24は、翼本体23において、径方向Drの外側Droに位置する翼長方向の他端部23bに一体に設けられている。軸部24は、翼本体23の他端部23bから中心軸Cs方向に沿って径方向Drの外側Droに延びる略円柱状をなしている。軸部24は、フレーム21に形成された翼保持孔21hに挿入され、中心軸Cs回りに回転自在に支持されている。軸部24の径方向Drの外側Droの先端部24sは、フレーム21の径方向Drの外側Droに向かって突出している。
【0021】
駆動リング25は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。駆動リング25は、軸線Arを中心として周方向Dcに連続する円環状で、ケーシング15に、周方向Dcに変位可能に支持されている。駆動リング25は、周方向Dcに複数に分割されていてもよい。駆動リング25は、アクチュエータ(図示なし)により、周方向Dcに沿って変位するように駆動される。
【0022】
リンク機構30は、複数の可動翼22のそれぞれに設けられている。これら複数のリンク機構30は、複数の可動翼22のそれぞれを軸部24の中心軸Cs回りに回転させる。各リンク機構30は、複数のリンク片31と、複数のピン32と、を備えている。本実施形態において、本実施形態において、各リンク機構30は、複数のリンク片31として、第一リンク片33と、第二リンク片34と、を備えている。本実施形態において、各リンク機構30は、複数のピン32として、第一ピン35と、第二ピン36と、を備えている。
【0023】
第一リンク片33の一端部33aは、軸部24に中心軸Cs回りに回動不能に固定されている。第一リンク片33の他端部33bは、第一ピン35を介して第二リンク片34の一端部34aに回動自在に連結されている。これにより、第一リンク片33と第二リンク片34とは、第一ピン35回りに回動可能に連結されている。
【0024】
第二リンク片34の他端部34bは、第二ピン36を介して駆動リング25に連結されている。第二リンク片34は、駆動リング25に、第二ピン36回りに回動自在に支持されている。
【0025】
このようにして、各リンク機構30の一方のリンク端30aを形成する第一リンク片33の一端部33aは、各可動翼22の軸部24にそれぞれ連結されている。各リンク機構30の他方のリンク端30bを形成する第二リンク片34の他端部34bは、駆動リング25に連結されている。
【0026】
このような入口案内翼部20Aにおいて、駆動リング25は、アクチュエータ(図示なし)によって軸線Ar(
図3参照)回りに旋回されることで、周方向Dcに変位する。駆動リング25が周方向にDcに変位すると、その変位が第二リンク片34、第一リンク片33を介して軸部24に伝達される。第一リンク片33が軸部24を中心として揺動すると、軸部24と一体に可動翼22の翼本体23が中心軸Cs回りに回転する。これによって、ケーシング15の径方向Drの内側Driにおける流体の流れ中において、翼本体23の角度(開度)が変わり、ケーシング15内に取り入れられる流体の流量が調整される。
【0027】
図5に示すように、上記入口案内翼部20Aは、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30が異なる構造を有している。複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30は、リンク片31およびピン32の少なくとも一方の、重量、剛性、および寸法の少なくとも一つが互いに異なる。本実施形態において、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30は、ピン32(第一ピン35、第二ピン36)の径寸法が互いに異なる場合を例示している。本実施形態においては、複数のリンク機構30として、大径ピン32Aを有したリンク機構30Aと、小径ピン32Bを有したリンク機構30Bとが、周方向Dcで交互に配置されている場合を例示している。大径ピン32Aの径寸法は、小径ピン32Bの径寸法よりも大きい。大径ピン32Aの径寸法は、小径ピン32Bの径寸法に対して、例えば、1.05倍以上、より望ましくは1.10倍となるように設定することができる。これにより、大径ピン32Aと、小径ピン32Bとは、互いの剛性および重量も異なるものとなる。そして、大径ピン32Aを有したリンク機構30Aは、小径ピン32Bを有したリンク機構30Bよりも、高い剛性を有したものになる。
【0028】
(作用効果)
上記実施形態の圧縮機10では、入口案内翼部20Aを構成する複数の可動翼22のそれぞれと駆動リング25とを連結する複数のリンク機構30を備えている。複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30が異なる構造を有している。構造が異なるリンク機構30同士は、振動特性が異なる。このため、入口案内翼部20Aは、周方向Dcに配置された複数の可動翼22及びリンク機構30において、振動特性にアンバランスが生じる。これにより、作動流体の流速が大きい高負荷条件においても、入口案内翼部20Aにフラッタのような不安定振動が生じるのを抑えることができる。その結果、入口案内翼の振動を有効に抑えることが可能となる。
【0029】
上記実施形態では、複数のリンク片31、及びピン32を備える複数のリンク機構30において、リンク片31やピン32を様々に異ならせることで、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。
【0030】
上記実施形態では、リンク片31およびピン32の少なくとも一方で、重量、剛性、および寸法の少なくとも一つを異ならせることで、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。
【0031】
(実施形態の変形例)
上記実施形態において、大径ピン32Aを有したリンク機構30Aと、小径ピン32Bを有したリンク機構30Bとが、周方向Dcで交互に配置されているようにしたが、これに限られない。
例えば、小径ピン32Bを有したリンク機構30Bを周方向Dcに複数並べたリンク機構30Bの群を複数設けて、これら群と、大径ピン32Aを有したリンク機構30Aとを交互に配置するようにしてもよい。言い換えれば、周方向Dcにおいて、複数のリンク機構30Bに対して一つのリンク機構30Aを配置するようにしてもよい。また同様に、例えば、周方向Dcにおいて、大径ピン32Aを有したリンク機構30Aを複数並べたリンク機構30Aの群を複数設けて、これら群と、小径ピン32Bを有したリンク機構30Bとを交互に配置するようにしてもよい。さらに、上記リンク機構30Aの群と、上記リンク機構30Bの群とを交互に配置するようにしてもよい。
また、大径ピン32Aを有したリンク機構30Aと、小径ピン32Bを有したリンク機構30Bとを、周方向Dcで規則性を有さず、ランダムに配列するようにしてもよい。
さらに、複数のリンク機構30は、径寸法が3種類以上異なるピン32を備えるようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、複数のリンク機構30の構造を異ならせるために、ピン32の径寸法を異ならせるようにしたが、これに限られない。例えば、複数のリンク機構30で、リンク片31の厚さを異ならせることで、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30を異なる構造としてもよい。
【0033】
さらに、複数のリンク機構30で、ピン32の径寸法とリンク片31の厚さとを異ならせるようにしてもよい。
これ以外にも、複数のリンク機構30で、ピン32やリンク片31の重量、剛性、材質等を異ならせるようにしてもよい。
【0034】
<第二実施形態>
次に、この発明に係る回転機械の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態の構成に加えて、リンク機構30に、動吸振器41を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0035】
図6に示すように、本実施形態における圧縮機10の入口案内翼部20Bは、複数のリンク機構30を備えている。複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30が異なる構造を有している。本実施形態では、複数のリンク機構30は、それぞれ、動吸振器41を備えている。各動吸振器41は、質量体42と、弾性体43と、を有している。質量体42は、弾性体43を介してリンク機構30に取り付けられている。動吸振器41は、例えば、第二リンク片34に取り付けられている。
【0036】
本実施形態において、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30は、動吸振器41の質量体42の質量が互いに異なる。本実施形態において、複数のリンク機構30は、大質量体42Aを有したリンク機構30Cと、小質量体42Bを有したリンク機構30Dとが、周方向Dcで交互に配置されている。大質量体42Aの質量は、小質量体42Bの質量よりも大きい。これにより、大質量体42Aを有したリンク機構30Cと、小質量体42Bを有したリンク機構30Dとは、固有振動数が異なることから、振動特性が互いに異なる。
【0037】
(作用効果)
上記実施形態の圧縮機10において、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30は、動吸振器41を備えることによって固有振動数を互いに異ならせている。これにより、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。このため、入口案内翼部20Bは、周方向Dcに配置された複数の可動翼22及びリンク機構30において、振動特性にアンバランスが生じる。これにより、作動流体の流速が大きい高負荷条件においても、入口案内翼部20Bにフラッタのような不安定振動が生じるのを抑えることができる。その結果、入口案内翼の振動を有効に抑えることが可能となる。
【0038】
(第二実施形態の変形例)
なお、上記実施形態では、複数のリンク機構30で、動吸振器41の質量体42の質量を異ならせるようにしたがこれに限られない。例えば、動吸振器41の弾性体43の弾性係数を異ならせてもよい。
また、動吸振器41を備えたリンク機構30と、動吸振器41を備えないリンク機構30とを備えることで、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。
【0039】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、
図7に示すように、入口案内翼部20Cは、複数のリンク機構30のそれぞれに、減衰機構50Aとして、減衰材51を備えるようにしてもよい。減衰材51は、リンク片31に形成されたピン挿入孔31hと、ピン挿入孔31hに挿入されるピン32との間に介在している。減衰材51は、リンク片31とピン32との間に生じる振動による相対変位を減衰する。複数のリンク機構30において、リンク片31とピン32との間に挟み込む減衰材51の減衰特性を異ならせることで、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。また、減衰材51を備えたリンク機構30と、減衰材51を備えないリンク機構30とを備えることで、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。
【0040】
また、例えば、
図8に示すように、複数のリンク機構30のそれぞれに、減衰機構50Bとして、圧電素子52を備えるようにしてもよい。圧電素子52は、例えば、リンク片31に貼付される。圧電素子52は、リンク片31に生じた振動を電気エネルギーに変換することによって、振動を減衰させる。複数のリンク機構30において、圧電素子52による振動の減衰特性を異ならせることによって、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。また、圧電素子52を備えたリンク機構30と、圧電素子52を備えないリンク機構30とを備えることで、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。
【0041】
また、複数のリンク機構30のそれぞれに、減衰機構として、衝突型ダンパーを備えるようにしてもよい。衝突型ダンパーは、例えば、ガスダンパーやオイルダンパー等からなる。衝突型ダンパーは、リンク機構30を構成する第一リンク片33、第二リンク片34の変位を減衰することによって、振動を減衰させる。複数のリンク機構30において、衝突型ダンパーによる振動の減衰特性を異ならせることによって、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。また、衝突型ダンパーを備えたリンク機構30と、衝突型ダンパー53を備えないリンク機構30とを備えることで、複数のリンク機構30で振動特性を異ならせるようにしてもよい。
【0042】
これ以外にも、リンク片31とピン32との接触面積を異ならせることによって、複数のリンク機構30における振動の減衰特性を異ならせるようにしてもよい。
また、複数のリンク機構30を構成するリンク片31やピン32に、制振合金を使用することで、リンク機構30における振動の減衰特性を向上させるようにしてもよい。
【0043】
<付記>
実施形態に記載の回転機械10は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)第1の態様に係る回転機械10は、軸線Ar回りに回転するローター軸12、及び前記ローター軸12に固定された動翼列13を備えるローター11と、前記ローター11を覆うケーシング15と、前記ケーシング15の内部で前記動翼列13に対して前記軸線Arが延びる軸線方向Daの第一側Da1に配置された入口案内翼部20A~20Dと、を備え、前記入口案内翼部20A~20Dは、前記軸線Ar回りの周方向Dcに間隔をあけて配置され、前記軸線Arを中心とした径方向Drに延びる軸部24回りに回転可能とされた複数の可動翼22と、前記複数の可動翼22の径方向Drの外側Droに設けられて前記周方向Dcに連続し、前記周方向Dcに変位するよう駆動される駆動リング25と、一方のリンク端30aが前記複数の可動翼22の前記軸部24にそれぞれ連結され、他方のリンク端30bが前記駆動リング25に連結されて、前記駆動リング25が前記周方向Dcに変位した場合に前記複数の可動翼22のそれぞれを前記軸部24回りに回転させる複数のリンク機構30と、を備え、前記複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つの前記リンク機構30が異なる構造を有している。
回転機械10の例としては、ガスタービンの圧縮機、遠心圧縮機、ターボチャージャーが挙げられる。
【0045】
この回転機械10は、入口案内翼部20A~20Dを構成する複数の可動翼22のそれぞれと駆動リング25とを連結する複数のリンク機構30を備えている。複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30が異なる構造を有している。構造が異なるリンク機構30同士は、振動特性が異なる。このため、入口案内翼部20A~20Dは、周方向Dcに配置された複数の可動翼22及びリンク機構30において、振動特性にアンバランスが生じる。これにより、作動流体の流速が大きい高負荷条件においても、入口案内翼部20A~20Dにフラッタのような不安定振動が生じるのを抑えることができる。その結果、入口案内翼の振動を有効に抑えることが可能となる。
【0046】
(2)第2の態様に係る回転機械10は、(1)の回転機械10であって、前記複数のリンク機構30は、それぞれ、前記一方のリンク端30aと前記他方のリンク端30bとの間に配置された複数のリンク片31と、前記複数のリンク片31同士を回動自在に連結するピン32と、を備える。
【0047】
これにより、複数のリンク片31、及びピン32を備える複数のリンク機構30において、リンク片31やピン32を様々に異ならせることで、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。
【0048】
(3)第3の態様に係る回転機械10は、(2)の回転機械10であって、前記複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つの前記リンク機構30は、前記リンク片31および前記ピン32の少なくとも一方の、重量、剛性、および寸法の少なくとも一つが互いに異なる。
【0049】
これにより、リンク片31およびピン32の少なくとも一方で、重量、剛性、および寸法の少なくとも一つを異ならせることで、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。
【0050】
(4)第4の態様に係る回転機械10は、(2)又は(3)の回転機械10であって、前記複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つの前記リンク機構30は、動吸振器41を備えることで、固有振動数が互いに異なる。
【0051】
これにより、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30は、動吸振器41を備えることによって固有振動数を互いに異ならせている。これにより、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。
【0052】
(5)第5の態様に係る回転機械10は、(1)から(4)の何れか一つの回転機械10であって、前記複数のリンク機構30は、それぞれ、前記リンク機構30に生じる振動を減衰する減衰機構50A、50Bを備え、前記複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つの前記リンク機構30は、前記減衰機構50A、50Bにおける減衰特性が互いに異なる。
減衰機構50A、50Bは、減衰材51,圧電素子52、衝突型ダンパーが挙げられる。
【0053】
これにより、減衰機構50A、50Bにおける減衰特性を異ならせることで、複数のリンク機構30のうち、少なくとも2つのリンク機構30の振動特性を異ならせることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…ガスタービン
2…燃焼器
3…タービン
10…圧縮機(回転機械)
11…ローター
12…ローター軸
13、13A…動翼列
15…ケーシング
17…静翼列
20A、20B…入口案内翼部
21…フレーム
21h…翼保持孔
22…可動翼
23…翼本体
23a…一端部
23b…他端部
24…軸部
24s…先端部
25…駆動リング
26…センターハブ
26a…翼保持凹部
30、30A~30D…リンク機構
30a…一方のリンク端
30b…他方のリンク端
31…リンク片
32…ピン
32A…大径ピン
32B…小径ピン
33…第一リンク片
33a…一端部
33b…他端部
33h…ピン挿入孔
34…第二リンク片
34a…一端部
34b…他端部
35…第一ピン
36…第二ピン
41…動吸振器
42…質量体
42A…大質量体
42B…小質量体
43…弾性体
50A、50B…減衰機構
51…減衰材
52…圧電素子
Ar…軸線
Cs…中心軸
Da…軸線方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側