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特開2022-170199化粧紙の製造方法、化粧紙及び化粧材
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  • 特開-化粧紙の製造方法、化粧紙及び化粧材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170199
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】化粧紙の製造方法、化粧紙及び化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20221102BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20221102BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B29/00
B41M3/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076163
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】高田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】伊瀬谷 隆弘
【テーマコード(参考)】
2H113
4F100
【Fターム(参考)】
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BA27
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB18
2H113BB22
2H113BB32
2H113FA48
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA13B
4F100DD01C
4F100DG10A
4F100EH46C
4F100EJ17
4F100EJ39
4F100EJ42
4F100GB07
4F100HB21B
4F100JA13A
4F100JB14C
4F100JL10B
(57)【要約】
【課題】本発明は、例えば家具や建具用途の表面材に用いられ、化粧紙の製造方法などに関し、型押し版の意匠を発現し易くできる。
【解決手段】原紙層30の一方の面に凹凸模様を有する絵柄模様層40を形成する工程と、絵柄模様層40の表面にトップコート層50を形成する工程と、トップコート層50の表面から絵柄模様層40に向かって、型押し版を用いて型押しする工程と、を含み、型押しする工程においては、トップコート層50の表面温度を50℃以上とし、且つ型押し版の印圧を6kgf/cm以上とする。原紙層30は、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙を含んでも良いし、トップコート層50は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を含んでも良いし、トップコート層50には、上面視で、絵柄模様層40の凹凸模様とが重なる領域に、凹凸模様の凹部又は凸部に対応して、凹部又は凸部が選択的に配置されるようにしても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙層の一方の面に凹凸模様を有する絵柄模様層を形成する工程と、
前記絵柄模様層の表面にトップコート層を形成する工程と、
前記トップコート層の表面から前記絵柄模様層に向かって、型押し版を用いて型押しする工程と、を含み、
前記型押しする工程においては、前記トップコート層の表面温度を50℃以上とし、且つ前記型押し版の印圧を6kgf/cm以上とすることを特徴とする化粧紙の製造方法。
【請求項2】
前記原紙層は、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧紙の製造方法。
【請求項3】
前記トップコート層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧紙の製造方法。
【請求項4】
前記トップコート層には、上面視で、前記絵柄模様層の前記凹凸模様とが重なる領域に、前記凹凸模様の凹部又は凸部に対応して、凹部又は凸部が選択的に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧紙の製造方法。
【請求項5】
前記型押し版は、凸部と凹部の最大高低差が、製造後の前記化粧紙の予測される総厚の3%~200%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧紙の製造方法。
【請求項6】
原紙層と、前記原紙層の一方の面に積層され、凹凸模様を含む絵柄模様層と、前記絵柄模様層に積層されたトップコート層と、を備え、
型押し成型時の前記トップコート層の表面温度が50℃以上で、且つ前記型押し成型時の型押し版の印圧が6kgf/cm以上であることを特徴とする化粧紙。
【請求項7】
請求項6に記載の前記化粧紙と、
前記原紙層の他方の面に積層された基材と、を備えることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家具や建具用途の表面材に用いられ、化粧紙の製造方法、化粧紙及び化粧材に関し、型押し版の意匠を発現し易くするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の内外装や建具、家具等の表面化粧等に使用するための化粧材には、例えば、木目柄等の所望の柄模様が施されるのが通例である。そして、単に木目柄等を平面的に表現するのみならず、天然の木材が持つ導管等の表面の凹凸を併せて立体的に表現した化粧材も用いられている。
化粧材の表面に、平面的な木目柄と併せて立体的な凹凸感を表現する手法として、例えば、表現したい凹凸形状を化粧材の表面に実際に形成する代わりに、凹部及び凸部として表現したい部分の表面の艶状態を異ならせることにより、人間の目の錯覚を利用して視覚的に凹凸の立体感を表現する手法もある。つまり、相対的に艶の高い部分は凸部、艶の低い部分は凹部として認識させることで立体感を表現している(例えば、特許文献1参照。)。
また、アフターキュア性に優れた紫外線硬化型樹脂を使用したインモールド成型用転写箔が知られている(例えば、特許文献2の段落[0009]及び図1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-43223号公報
【特許文献2】特開2015-85589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凹凸を設けることで立体感を出す方法では、光沢の異なる樹脂を2層設ける必要があり、低光沢樹脂には、艶消し剤としてシリカが含まれている。そのため、低光沢意匠部分は、シリカの全反射による白化現象が生じ、又、擦り等でのシリカの欠落による耐傷性の低下等が生じる。
また、従来の化粧材では、型押し版の意匠の発現が弱くなる場合があった。
そこで、本発明は、型押し成型時のトップコート層の表面温度、型押し版の印圧の範囲を規定することで、意匠の発現を容易することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る化粧紙の製造方法は、原紙層の一方の面に凹凸模様を有する絵柄模様層を形成する工程と、前記絵柄模様層の表面にトップコート層を形成する工程と、
前記トップコート層の表面から前記絵柄模様層に向かって、型押し版を用いて型押しする工程と、を含み、前記型押しする工程においては、前記トップコート層の表面温度を50℃以上とし、且つ前記型押し版の印圧を6kgf/cm以上とすることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様に係る化粧紙の製造方法は、前記原紙層が、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧紙の製造方法は、前記トップコート層が、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧紙の製造方法は、前記トップコート層に、上面視で、前記絵柄模様層の前記凹凸模様とが重なる領域に、前記凹凸模様の凹部又は凸部に対応して、凹部又は凸部が選択的に配置されることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧紙の製造方法は、前記型押し版が、凸部と凹部の最大高低差が、製造後の前記化粧紙の予測される総厚の3%~200%であることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る化粧紙は、原紙層と、前記原紙層の一方の面に積層され、凹凸模様を含む絵柄模様層と、前記絵柄模様層に積層されたトップコート層と、を備え、型押し成型時の前記トップコート層の表面温度が50℃以上で、且つ前記型押し成型時の型押し版の印圧が6kgf/cm以上であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧材は、前記化粧紙と、前記原紙層の他方の面に積層された基材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、型押し版の意匠を発現し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る化粧材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(化粧紙10)
図1中、10は、化粧紙であり、化粧紙10は、例えば家具や建具用途の表面材に用いられるものである。
化粧紙10は、図1の断面図に示すように、(1)原紙層30と、(2)絵柄模様層40と、(3)トップコート層50とが、この順に積層されている。
なお、上記(1)~(3)については後述する。
(化粧材20)
化粧紙10には、原紙層30の絵柄模様層40とは逆側の面に化粧材用の基材21を、例えば接着剤で貼り合わせ、化粧材20を得ることができる。
なお、基材21については後述する。
(原紙層30)
原紙層30は、化粧紙10の支持体となるものであって、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙を含むものである。
坪量としては、例えば50g/mを適用している。
薄葉紙としては、例えば、グラシン紙、パーチメント紙、薬包紙等を適用することができる。
【0012】
(絵柄模様層40)
絵柄模様層40は、原紙層30の一方の面、例えば薄葉紙の表面に印刷され、凹凸模様を含むものである。
絵柄模様層40は、大別すると、(1)薄葉紙の表面に印刷された下地模様層41と、(2)下地模様層41の表面に印刷された模様印刷層42とから構成されている。
下地模様層41としては、薄葉紙の表面に、例えば硝化綿系グラビア印刷インキを使用して、下地着色と隠蔽性付与を兼ねた1色の着色ベタ層から構成する。
模様印刷層42としては、着色ベタ層の表面に、例えば導管模様を除く3色の木目柄層と、木目柄層に同調した1色の導管柄層とを順次印刷して形成する。
ここでは「凹凸模様」を、木目柄層と導管柄層とから構成している。
【0013】
(絵柄模様層40の構成材料)
絵柄模様層40の構成材料は、特に制限はないが、一般的には、染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂とともに、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又はコーティング材が使用される。
着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料等、又はこれらの2種以上の混合物等を使用することができる。
【0014】
(結着剤樹脂)
また、結着剤樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの混合物、共重合体等を使用することができる。
【0015】
また、溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、又はそれらの混合物等を使用することができる。
その他、必要に応じて体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種添加剤等が適宜使用される。
【0016】
絵柄模様層40は、凹部又は凸部形成領域60に対応する領域に、模様印刷層42を少なくとも含む必要がある。
一方、下地模様層41は必須ではないが、化粧紙1の模様印刷層42が形成された領域を除く部分に、模様印刷層42が形成された領域における色彩模様とは独立した色彩模様として視覚される意匠を付与する目的で設けることができる。
例えば木目柄の場合には周知のように、下地ベタ、木目模様、導管模様等に分版して印刷するのが普通であり、このうち下地ベタ及び木目模様は、本発明の化粧紙1においては下地模様層41として設けられ、導管模様は、模様印刷層42として設けられる。
【0017】
なお、本発明において絵柄模様層40は木目柄に限定されるものではなく、石目柄、抽象柄等にも適宜適用可能である。
なお、図1では、模様印刷層42は、下地模様層41の表面上に設けられているように記載されているが、これは必ずしも両者の上下関係を規定するものではなく、両者は同一面上に連続した絵柄として設けられていても良ければ、上下関係が逆転していても良いし、両者の間に透明層(透明な基材であっても良い)等が介在していても良い。
また、模様印刷層42の全部又は一部は、原紙層3中に着色剤を混合又は浸透させることによって原紙層3と一体化したものであっても良い。
要するに、化粧紙1の表面側から観察した際に、凹部又は凸部形成領域60に形成された模様印刷層42と下地模様層41とが、色彩的に識別できるように構成されていれば良い。
【0018】
(絵柄模様層40の形成方法)
絵柄模様層40の形成方法は、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の適宜の印刷方法によるのが最も一般的である。
なお、形成方法は、これに限定されるものではなく、例えば前述した下地ベタはロールコート法やナイフコート法、ダイコート法等のコーティング方法によっても良い。その他の模様も、従来公知の任意の画像形成方法によって形成することができる。
【0019】
(トップコート層50)
トップコート層50は、絵柄模様層40の表面、すなわち模様印刷層42の表面に積層され、少なくとも絵柄模様層40を透視可能な透明性を備えている。
トップコート層50は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を含む。
紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂としては、例えば熱乾燥のみでタックフリー性を有した1液硬化型の紫外線硬化樹脂を、乾燥後の塗布量10g/mにて塗工している。
トップコート層50は、絵柄模様層40の原紙層30とは逆側の面全面に形成されている。
【0020】
(凹部又は凸部形成領域60)
トップコート層50の、上面視で、凹部又は凸部形成領域60に対応する領域には、型押し成形により、凸部形状又は凹部形状が選択的に設けられている。
具体的には、トップコート層50の、凹部又は凸部形成領域60に対応する領域において、上面視で、模様印刷層42が形成された領域には凹部形状が形成され、模様印刷層42が形成されていない領域には凸部形状が形成される。
絵柄模様層40の「凹凸模様」に応じてトップコート層50に凹凸形状を設けることによって、艶感、照り感を表現し、この艶感、照り感により、化粧紙10において凹凸感を表現するようにしている。
【0021】
(型押し成形)
型押し成形は、型押し版、例えば、エンボス版を用いて行う。
型押し成型時には、トップコート層50の表面温度を50℃以上とし、且つ型押し成型時の型押し版の印圧を6kgf/cm以上とする。
表面温度は、具体的には50℃以上130℃以下が好ましい。また、印圧を6kgf/cm以上23kgf/cm以下が好ましい。
仮に、トップコート層50の表面温度が50℃より低いと、型押し版の意匠が発現しにくく、意匠感が劣る。
また、仮に、型押し版の印圧が6kgf/cmより弱いと、、同様に型押し版の意匠が発現しにくく、意匠感が劣る。
【0022】
(型押し版)
型押し成形は、トップコート層5の、凹部又は凸部形成領域60に形成する凹部形状及び凸部形状を成形するための凸部と凹部との最大高低差(以下、単に「最大高低差」ともいう。)が、最終的に形成された化粧紙1の総厚(以下、単に「総厚」ともいう。)の3%以上200%以下の範囲となるように設定される。
最大高低差が3%より小さい場合には、型押し成型によりトップコート層5に形成される凹凸が浅すぎて、意匠が発現しない。
最大高低差が200%よりも大きいときには、型押し成形時に、原紙層3と絵柄模様層40とトップコート層50となる紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなる樹脂層との積層体が破断するおそれがある。
なお、図1では、トップコート層5の凹部形状及び凸部形状の側面を段階的に変化させているが、これに限定されるものではなく、連続的に変化させても良い。
【0023】
トップコート層05の凹部形状及び凸部形状の側面を段階的に変化させることによって、トップコート層50の層厚や、表面粗さを選択的に調整することができ、表面光沢値や手触り感に階調表現を持たせ、より自然な木目や石目の風合いを再現することができる。
また、トップコート層50の凸部形状又は凹部形状と、模様印刷層42の凹部又は凸部と正確に対向して配置される必要はなく、多少ずれていても良い。
両者を積極的にずらすことによって、見かけ上の凹凸感を適宜調整することもできる。
また、凹部又は凸部形成領域60内の位置によって両者の輪郭のずれの方向や距離を変化させることによって、見掛け上の凹凸感に、凹部又は凸部形成領域60内の位置による変化を与えることもできる。
【0024】
(基材21)
基材21は、目的とする用途に応じて、種々の材料を使用することができる。
具体的には、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙、難燃紙、無機質紙等の紙類や、天然繊維又は合成繊維からなる織布又は不織布、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、繊維素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂系基材、木材単板、突板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板等の木質系基材、石膏板、セメント板、珪酸カルシウム板、陶磁器板等の無機質系基材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属系基材等、又はそれらの複合体、積層体等、従来公知の任意の材料が使用可能であり、その形状も、例えばフィルム状又はシート状、板状、異型成型体等、一切制限はない。
【0025】
(化粧紙10の製造方法)
つぎに、化粧紙10の製造方法の一例について、以下に説明する。
第一に、原紙層30の一方の面に凹凸模様を有する絵柄模様層40を形成する工程である。
具体的には、例えば原紙層30に含まれる、坪量50g/mの薄葉紙の表面に、硝化綿系グラビア印刷インキを使用して、下地着色と隠蔽性付与を兼ねた1色の着色ベタ層と、導管模様を除く3色の木目柄層と、該木目柄層に同調した1色の導管柄層とを順次印刷し、原紙層30の一方の面に積層された絵柄模様層40を得る。
【0026】
第二に、絵柄模様層40の表面にトップコート層50を形成する工程である。
具体的には、例えば熱乾燥のみでタックフリー性を有した1液硬化型の紫外線硬化樹脂を乾燥後の塗布量10g/mにて塗工し、絵柄模様層40の表面に積層されたトップコート層50を得る。
第三に、トップコート層50の表面に型押し版を用いて、上面視で、絵柄模様層40の凹凸模様と重なる領域に、凹凸模様の凹部又は凸部に対応して、凹部又は凸部を選択的に型押しする工程を含む。
【0027】
具体的には、例えば導管柄層と同調した木目質感の、凸部と凹部の最大高低差がシート総厚の200%であるエンボス版にて、印圧6kgf/cm、トップコート層50の表面温度が50℃の状態で型押しを行い、最後にメタルハライドランプにて紫外線照射を行い硬化させ、化粧紙10を得る。
【0028】
なお、上記印刷に際しては、化粧シート製造用グラビア7色印刷機を使用し、印刷速度は50m/分、乾燥条件は各色に100℃と、全色印刷塗工後に各5mずつ2ゾーンに分割されたアフター乾燥ゾーンで順に120℃、180℃の2段階の温度設定によりトップコート剤を十分に乾燥させた後、エンボス版にて型押しを行い、最後に紫外線照射を行う。
また、化粧材20を製造する場合には、上記手順で作製した化粧紙10を、接着剤により基材21に貼り合わせれば良い。
【0029】
(実施の形態の第一の特徴点)
実施の形態に係る化粧紙10の製造方法の第一の特徴点は、原紙層30の一方の面に凹凸模様を有する絵柄模様層40を形成する工程と、絵柄模様層40の表面にトップコート層50を形成する工程と、トップコート層50の表面から絵柄模様層40に向かって、型押し版を用いて型押しする工程と、を含み、型押しする工程においては、トップコート層50の表面温度を50℃以上とし、且つ型押し版の印圧を6kgf/cm以上とする。
【0030】
(第一の特徴点の効果)
第一の特徴点によれば、型押し版の意匠を発現し易くできる。
仮に、トップコート層50の表面温度が50℃より低いと、型押し版の意匠が発現しにくく、意匠感が劣る。
また、仮に、型押し版の印圧が6kgf/cmより弱いと、、同様に型押し版の意匠が発現しにくく、意匠感が劣る。
【0031】
(実施の形態の第二の特徴点)
実施の形態に係る化粧紙10の製造方法の第二の特徴点は、原紙層30に坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙を含む。
(第二の特徴点の効果)
第二の特徴点によれば、薄葉紙は乾燥時の熱寸法安定性に優れ、グラビア印刷等における位置見当合わせに優れている。
そのため、原紙層30として、薄葉紙を用いることによって、型押し時の位置合わせを容易に行うことができる。
また、このとき、原紙層30として、坪量20g/m以上100g/m以下の薄葉紙を用いている。
そのため、薄葉紙が破断することなく、グラビア印刷等において意匠的に優れた印刷物を得ることができる。
仮に、原紙層30としての薄葉紙の坪量が20g/mより小さいと、印刷中に紙が破断してしまうおそれがある。
逆に原紙層30としての薄葉紙の坪量が100g/mより大きいとインプレッションロールを用いてグラビアシリンダーへ押し付けた際に圧抜けしてしまい、印適不良となる可能性がある。
【0032】
(実施の形態の第三の特徴点)
実施の形態に係る化粧紙10の製造方法の第三の特徴点は、トップコート層50が、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を含む。
(第三の特徴点の効果)
第三の特徴点によれば、型押し工程後に、紫外線または電子線の照射を行うことによって、トップコート層50を硬化することができる。
つまり、型押し工程時には、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなる樹脂層に紫外線又は電子線の照射を行っていないため、硬化してはおらず、熱乾燥を行うことでタックフリー性が発現している。
そのため、型押し版の凹凸形状を的確に樹脂層に転写することができる。そして、型押し工程後に樹脂層の種類に応じた紫外線又は電子線を樹脂層に照射して硬化させるため、樹脂層を絵柄模様層40により強固に密着させることができる。
また、トップコート層50は、熱乾燥によるタックフリー性を有する紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を塗布し、塗布した樹脂を熱乾燥し、熱乾燥によりタックフリー性を発現させて半硬化した状態の樹脂に対して型押し工程を実行し、紫外線又は電子線を照射して硬化させることで作製することができため、インラインで作製することができる。
【0033】
(実施の形態の第四の特徴点)
実施の形態に係る化粧紙10の製造方法の第四の特徴点は、トップコート層50に、上面視で、絵柄模様層40の凹凸模様とが重なる領域に、凹凸模様の凹部又は凸部に対応して、凹部又は凸部が選択的に配置されている。
(第四の特徴点の効果)
第四の特徴点によれば、トップコート層50に形成した凸部形状又は凹部形状と、絵柄模様層40の凹凸形状とが同調し、凹凸感を表現することができる。
【0034】
(実施の形態の第五の特徴点)
実施の形態に係る化粧紙10の製造方法の第五の特徴点は、型押し版は、凸部と凹部の最大高低差が、製造後の化粧紙10の予測される総厚の3%~200%である。
(第五の特徴点の効果)
第五の特徴点によれば、トップコート層50に形成した凹部形状又は凸部形状と、模様印刷層42の凹凸形状とが同調し、人に対して、視覚的な凹凸感を与えることができる。
また、型押し版の、凸部の高さ及び凹部の深さを制限しているため、型押し工程において、原紙層30と、絵柄模様層40と、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなる樹脂層との積層体に対して、型押し版を用いて凹凸形状を形成する際に、積層体が破断する等が生じることを回避し、トップコート層50に適切に凹凸形状を形成することができる。
【0035】
(実施の形態の第六の特徴点)
実施の形態に係る化粧紙10の第六の特徴点は、原紙層30と、原紙層30の一方の面に積層され、凹凸模様を含む絵柄模様層40と、絵柄模様層40に積層されたトップコート層50と、を備え、型押し成型時のトップコート層50の表面温度が50℃以上で、且つ型押し成型時の型押し版の印圧が6kgf/cm以上である。
(実施の形態の第六の効果)
第六の特徴点によれば、型押し版の意匠が発現し易くなるようした化粧紙10を提供できる。
仮に、トップコート層50の表面温度が50℃より低いと、型押し版の意匠が発現しにくく、意匠感が劣る。
また、仮に、型押し版の印圧が6kgf/cmより弱いと、、同様に型押し版の意匠が発現しにくく、意匠感が劣る。
【0036】
(実施の形態の第七の特徴点)
実施の形態に係る化粧材20の第七の特徴点は、化粧紙10と、原紙層30の他方の面に積層された基材21と、を備える。
(実施の形態の第七の効果)
第七の特徴点によれば、型押し版の意匠が発現し易くなるようした化粧材20を提供できる。
【実施例0037】
以下に、本発明に係る化粧シートの実施例1~3、比較例1及び比較例2について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~3に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、第一に、原紙層30に含まれる、坪量50g/mの薄葉紙の表面に、硝化綿系グラビア印刷インキを使用して、下地着色と隠蔽性付与を兼ねた1色の着色ベタ層と、導管模様を除く3色の木目柄層と、該木目柄層に同調した1色の導管柄層とを順次印刷し、原紙層30の一方の面に積層された絵柄模様層40を得た。
【0038】
第二に、熱乾燥のみでタックフリー性を有した1液硬化型の紫外線硬化樹脂を乾燥後の塗布量10g/mにて塗工し、絵柄模様層40の表面に積層されたトップコート層50を得た。
第三に、導管柄層と同調した木目質感の、凸部と凹部の最大高低差がシート総厚の200%であるエンボス版にて、印圧6kgf/cm、トップコート層50の表面温度が50℃の状態で型押しを行い、最後にメタルハライドランプにて紫外線照射を行い硬化させることで、実施例1の化粧紙10を得た。
【0039】
なお、上記印刷に際しては、化粧シート製造用グラビア7色印刷機を使用し、印刷速度は50m/分、乾燥条件は各色に100℃と、全色印刷塗工後に各5mずつ2ゾーンに分割されたアフター乾燥ゾーンで順に120℃、180℃の2段階の温度設定によりトップコート剤を十分に乾燥させた後、エンボス版にて型押しを行い、最後に紫外線照射を行い、巻き取って保管した。
以上のようにして得た化粧紙10は、導管模様の輪郭部の艶状態の階調により、天然導管に近似した導管溝の凹凸感を有する、意匠性に優れた化粧紙10となった。
しかも、印刷中の版詰まりや、乾燥不良によるブロッキングやトラレ等の問題を発生することなく、作業性良く製造することができた。
【0040】
(実施例2)
実施例2は、型押し時のトップコート層50の表面温度が100℃であること以外は実施例1と同様であり、実施例2の化粧紙10を得た。
(実施例3)
実施例3は、型押し時のトップコート層50の表面温度が100℃とし、型押し時のエンボス版の印圧が7kgf/cmであること以外は実施例1と同様であり、実施例3の化粧紙10を得た。
【0041】
(比較例1)
比較例1は、型押し時のトップコート層50の表面温度が30℃とし、型押し時のエンボス版の印圧が23kgf/cmであること以外は実施例1と同様であり、比較例1の化粧紙10を得た。
(比較例2)
比較例2は、型押し時のトップコート層50の表面温度が30℃とし、型押し時のエンボス版の印圧が2kgf/cmであること以外は実施例1と同様であり、比較例2の化粧紙10を得た。
【0042】
(評価方法及び評価基準)
実施例及び比較例に記載の化粧紙10を、官能評価にて、意匠感について評価した。
意匠感は、官能試験にて評価した。評価は10人の試験員で行った。
評価基準は、良いとした人が、「0人」の場合「×」、「1~6人」の場合「△」、「7~9人」の場合「○」、「10人」の場合「◎」とした。「○」及び「◎」を「合格」とし、「△」及び「×」を「不合格」とした。
なお、耐傷性については、評価せず、試験員に意見を求めた。
(評価結果)
結果は、次の表1に示す通りである。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例1~実施例3、比較例1及び比較例2)
実施例1~実施例3、比較例1及び比較例2のうち、実施例1~実施例3は、「意匠感」がすべて「合格」であった。
これに対し、比較例1及び比較例2は、「意匠感」がすべて「不合格」であった。
また、耐傷性については、比較例1を除き、「変化無し」との回答を得られた。比較例1については、「艶変化」との回答を得られた。
【0045】
(比較例1)
比較例1は、表面温度が30℃であり、表面温度が低いことが原因と推測できる。
比較例1の「意匠感」の「△」は、「艶変化」の程度が弱いことを意味である。
これに対し、「意匠感」の「◎」、すなわち「合格」のものは、「艶変化」がはっきりしており、意匠がはっきり発現している。比較例1のものは、実施例1~3のものと比較し、「艶変化」が弱く、意匠が見えづらいため、「意匠感」を「△」としている。
したがって、実施例1~3のものは、表面温度を50℃以上とすることで、鮮明な意匠感が得られたものと推測できる。
(比較例2)
比較例2は、表面温度が30℃であり、表面温度が低いことが原因と推測できる。
【符号の説明】
【0046】
10 化粧紙
20 化粧材
21 基材
30 原紙層
40 絵柄模様層
41 下地模様層
42 模様印刷層
50 トップコート層
60 凹部又は凸部形成領域
図1