(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170201
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ネットワークシステム、サーバ、および核心温度異常検知方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20221102BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221102BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20221102BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20221102BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61B5/01 100
A61B5/00 102C
G16H10/40
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076167
(22)【出願日】2021-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】521186144
【氏名又は名称】株式会社to you
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕明
【テーマコード(参考)】
4C117
5C086
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA07
4C117XB04
4C117XD04
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4C117XD08
4C117XD09
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4C117XJ45
4C117XL01
5C086AA05
5C086AA22
5C086BA07
5C086BA11
5C086CA30
5C086CB01
5C086DA40
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5C086FA17
5C087AA02
5C087AA09
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5C087AA44
5C087DD03
5C087DD49
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】より正確に、対象となる人物の核心温度の異常を検知するためのネットワークシステム、サーバ、および核心温度異常検知方法を提供する。
【解決手段】気温を測定するセンサ253と、湿度を測定するセンサ254と、対象人物の表面温度を測定するセンサ251と、対象人物の核心温度に相関する温度を測定するためのセンサ252とを含む測定装置200と、測定装置から4つのセンサの測定結果を取得して、対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断した場合に、測定装置に警告を出力させるためのサーバ100と、を備えるネットワークシステム1が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気温を測定するセンサと、湿度を測定するセンサと、対象人物の表面温度を測定するセンサと、前記対象人物の核心温度に相関する温度を測定するためのセンサとを含む測定装置と、
前記測定装置から前記4つのセンサの測定結果を取得して、前記対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断した場合に、前記測定装置に警告を出力させるためのサーバと、を備えるネットワークシステム。
【請求項2】
前記サーバは、前記対象人物の核心温度が、所定の期間以上連続して、前記所定の程度よりも高いと判断した場合に、前記測定装置に警告を出力させる、請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記サーバは、所定の時間帯においては、前記対象人物の核心温度に関する、前記測定装置に警告を出力させる条件が異なる、請求項1または2に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
前記サーバは、前記対象人物の身長および体重に基づいて、前記対象人物の核心温度に関する、前記測定装置に警告を出力させる条件が異なる、請求項1から3のいずれか1項に記載のネットワークシステム。
【請求項5】
測定装置と通信するための通信インターフェイスと、
前記測定装置からの、気温データと、湿度データと、対象人物の表面温度データと、前記対象人物の核心温度に相関する温度のデータと、に基づいて、前記対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断した場合に、前記測定装置に警告を出力させるプロセッサと、を備えるサーバ。
【請求項6】
サーバによる核心温度異常検知方法であって、
測定装置から、気温データと、湿度データと、対象人物の表面温度データと、前記対象人物の核心温度に相関する温度のデータとを受信するステップと、
前記4つのデータに基づいて、前記対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いか否かを判断するステップと、
前記対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断された場合に、前記測定装置に警告を出力させるステップと、を備える核心温度異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象となる人物の核心温度の異常を検知するためのネットワークシステム、サーバ、および核心温度異常検知方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、核心温度すなわち深部体温を測定することによって発熱および熱中症の初期症状を検知するための技術が知られている。たとえば、特開2017-104327号公報(特許文献1)には、ウエアラブル熱中症判定装置、熱中症監視システムが開示されている。特許文献1によると、電源(充電池)と、皮下深部体温を測定する深部体温計と、被験者である人体に取付けるための取付け手段(ベルト)と、を備え、深部体温計により測定された、被験者の継続的な皮下深部体温の推移から、被験者が熱中症である可能性があるか否かを判定するようにした。たとえば、皮下深部体温が、予め定められた閾値回数を超えて上昇と降下を繰り返した場合に、熱中症である可能性があると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より正確に、対象となる人物の核心温度の異常を検知するためのネットワークシステム、サーバ、および核心温度異常検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に従うと、気温を測定するセンサと、湿度を測定するセンサと、対象人物の表面温度を測定するセンサと、対象人物の核心温度に相関する温度を測定するためのセンサとを含む測定装置と、測定装置から4つのセンサの測定結果を取得して、対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断した場合に、測定装置に警告を出力させるためのサーバと、を備えるネットワークシステムが提供される。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、より正確に、対象となる人物の核心温度の異常を検知するためのネットワークシステム、サーバ、および核心温度異常検知方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態にかかるネットワークシステムの全体構成を示すイメージ図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかる測定装置の正面図である。
【
図3】第1の実施の形態にかかる測定装置の背面図である。
【
図4】第1の実施の形態にかかる測定装置の主な構成を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施の形態にかかるサーバの主な構成を表わすブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態にかかる機器情報データを示すイメージ図である。
【
図7】第1の実施の形態にかかる履歴情報データを示すイメージ図である。
【
図8】第1の実施の形態にかかる表面温度と核心温度の推移を示すグラフである。
【
図9】第1の実施の形態にかかるサーバの処理を示すフローチャートである。
【
図10】第3の実施の形態にかかるサーバの処理を示すフローチャートである。
【
図11】第4の実施の形態にかかるネットワークシステムの全体構成を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<第1の実施の形態>
<ネットワークシステムの全体構成>
【0009】
まず
図1を参照して、本実施の形態にかかるネットワークシステム1の全体構成について説明する。ネットワークシステム1は、主たる装置として、核心温度異常検知サービスを提供するためのサーバ100と、各種の温度や湿度を測定しつつ、ルータやインターネットやキャリア網などを介してサーバ100とデータをやり取りするための測定装置200などを含む。
<ネットワークシステムの動作概要>
【0010】
熱中症は体の核心温度(深部体温ともいわれる)の上昇が原因で起こるとされている。熱中症は、心臓や脳にダメージを与え、重症化した場合には死亡や後遺症に至る事が知られている。核心温度と体表面温度は相関しない場合が多く、そのため熱中症を発症前に予測することは困難である。しかしながら、核心温度が相関する部位ではAVA血管(動静脈吻合)と呼ばれる放熱のための血管が備わっており、手のひら、足の裏、顔に集中しておりこれらが放熱を行う時は他の部位の表面温度より有意差をもって上昇する。この人体の放熱メカニズムを観測することで深部体温の上昇を検知することが可能となる。
【0011】
そこで、本実施の形態においては、
図1から
図3に示すように、測定装置200は、測定対象者の体に取り付けられて、測定対象者の表面温度や、測定対象者の核心温度に相関しやすい部分の温度や、周囲の気温や、周囲の湿度を測定して、サーバ100にアップロードする。これによって、サーバ100は、測定装置200からの、表面温度や、核心温度や、気温や、湿度に基づいて、従来よりも高精度に、熱中症にかかる危険性が高いことを検知する。
【0012】
以下では、このような機能を実現するためのネットワークシステム1の各装置の構成について詳述する。
<測定装置200の構成>
【0013】
図1から
図4を参照して、ネットワークシステム1を構成する測定装置200の構成の一態様について説明する。測定装置200は、主たる構成要素として、フレーム201と、CPU(Central Processing Unit)210と、メモリ220と、表面温度センサ251と、核心温度センサ252と、気温センサ253と、湿度センサ254と、通信アンテナ260と、スピーカ270と、タイマ290などを含む。
【0014】
フレーム201は、測定装置200自体を測定対象者の身体や衣服などに取り付けるための構造体である。
【0015】
CPU210は、メモリ220あるいは外部の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することによって、測定装置200の各部を制御する。
【0016】
メモリ220は、各種のRAMや、各種のROMなどによって実現される。メモリ220は、CPU210によって実行される制御プログラムや、各種のセンサ251,252,253,254の測定結果や、サーバ100や他の装置から受信した各種のデータなどを記憶する。
【0017】
本実施の形態においては、表面温度センサ251は、フレーム201によって測定対象者の肩や胸などに接する場所に位置するように固定される。表面温度センサ251は、CPU210の指示に従って、肩や胸の表面など、測定対象者の表面温度を測定してCPU210にデータを返す。CPU210は、当該データをメモリ220に蓄積する。
【0018】
本実施の形態においては、核心温度センサ252は、フレーム201によって測定対象者の首や顔などに、接する場所に位置するように固定される。核心温度センサ252は、CPU210の指示に従って、首や顔などの、測定対象者の核心温度に相関しやすい場所の温度を測定してCPU210にデータを返す。CPU210は、当該データをメモリ220に蓄積する。
【0019】
本実施の形態においては、気温センサ253は、フレーム201のうちの測定対象者の身体の表面から離れた場所に位置するように固定される。気温センサ253は、CPU210の指示に従って、測定装置200の周囲の温度を測定してCPU210にデータを返す。CPU210は、当該データをメモリ220に蓄積する。
【0020】
本実施の形態においては、湿度センサ254は、フレーム201のうちの測定対象者の身体の表面から離れた場所に位置するように固定される。湿度センサ254は、CPU210の指示に従って、測定装置200の周囲の湿度を測定してCPU210にデータを返す。CPU210は、当該データをメモリ220に蓄積する。
【0021】
通信アンテナ260は、WiFiルータや、キャリア網や、インターネットなどを介して、サーバ100などの他の装置との間でデータをやり取りする。たとえば、CPU210は、定期的に、所定期間分の、測定対象者の表面温度や、測定対象者の核心温度に相関する温度や、気温や、湿度や、測定日時などのデータを、通信アンテナ260を介して、サーバ100にアップロードする。
【0022】
スピーカ270は、CPU210からの信号に基づいて、音声を出力する。たとえば、CPU210は、メモリ220に予め登録された音声データやサーバ100から受信した音声データをスピーカ270から出力する。
【0023】
タイマ290は、現在の日付や時刻を測ってCPU210に入力する。また、タイマ290は、ある時点からの経過時間を測ってCPU210に入力する。
【0024】
本実施の形態においては、CPU210は、タイマ290を参照することによって、所定の間隔で、たとえば3分毎に、各種のセンサ251,252,253,254に測定をさせたり、通信アンテナ260を介して当該測定値をサーバ100にアップロードしたりする。以下では、1回分の測定結果をまとめてブロックという。CPU210は、通信アンテナ260を介して、サーバ100から音声データやテキストデータを受信して、警告のための音声をスピーカ270から出力したりする。
<サーバ100の構成>
【0025】
次に、
図5を参照して、サーバ100の構成の一態様について説明する。本実施の形態にかかるサーバ100は、主たる構成要素として、CPU110と、メモリ120と、操作部140と、通信インターフェイス160とを含む。
【0026】
CPU110は、メモリ120に記憶されているプログラムを実行することによって、サーバ100の各部を制御する。たとえば、CPU110は、メモリ120に格納されているプログラムを実行し、各種のデータを参照することによって、後述する各種の処理を実行する。
【0027】
メモリ120は、各種のRAM、各種のROMなどによって実現され、サーバ100に内包されているものであってもよいし、サーバ100の各種インターフェイスに着脱可能なものであってもよいし、サーバ100からアクセス可能な他の装置の記録媒体であってもよい。メモリ120は、CPU110によって実行されるプログラムや、CPU110によるプログラムの実行により生成されたデータ、複数の測定装置200に関する機器情報データ121や、複数の測定装置200から受信した履歴情報データ122など、核心温度異常検知サービスに必要なデータを記憶する。
【0028】
図6を参照して、機器情報データ121は、本サービスに登録されている測定装置またはユーザ毎に、測定装置の識別情報、ユーザの識別情報、ユーザの年齢、ユーザの性別、ユーザの身長、ユーザの体重、ユーザのBMI(Body Mass Index)、ユーザの疾患などの対応関係を格納する。
【0029】
図7を参照して、履歴情報データ122は、本サービスに登録されている測定装置またはユーザ毎の、表面温度の履歴情報や、核心温度の履歴情報や、気温の履歴情報や、湿度の履歴情報や、それらから計算される熱中症の程度を示す点数の情報などの対応関係を格納する。
【0030】
図5に戻って、操作部140は、サービスの管理者などからの操作を受け付けて、各種の命令をCPU110に入力する。
【0031】
通信インターフェイス160は、インターネット、キャリア網、ルータなどを介して測定装置200やその他の通信端末などの他の装置と、各種データをやり取りする。CPU110は、通信インターフェイス160を介して測定装置200から、各種のセンサ251,252,253,254の測定データと測定日時データとを受信したりする。逆に、CPU110は、通信インターフェイス160を介して、測定装置200に、熱中症の危険を知らせる警報の音声データやテキストデータなどを送信する。
【0032】
このように、構成されることによって、サーバ100のCPU110は、複数の測定装置200毎に、
図8に示すように、表面温度の推移や、核心温度の推移に基づいて、測定対象者が熱中症になりやすい状況であるか否かを判断して、当該判断結果に基づいて警告を出力するものである。
<サーバ100の情報処理>
【0033】
次に、
図9を参照して、本実施の形態におけるサーバ100の情報処理について説明する。サーバ100のCPU110は、定期的に、あるいは測定装置200からデータを受信するたびに、メモリ120のプログラムに従って以下のような処理を実行する。
【0034】
まず、CPU110は、通信インターフェイス160を介して、測定装置200から、測定対象者の表面温度、測定対象者の核心温度に相関する温度、測定装置200の周囲の温度、測定装置200の周囲の湿度を受信する(ステップS102)。
【0035】
CPU110は、測定装置200から受信した、表面温度、核心温度、気温、湿度を、1ブロックとして、当該測定装置200や測定日時に対応付けて、履歴情報データ122に蓄積していく(ステップS104)。
【0036】
CPU110は、表面温度、核心温度、気温、湿度に基づいて、今回のブロックに関する、熱中症の可能性を示す点数を計算する(ステップS106)。
【0037】
たとえば、CPU110は、表面温度が高いほど、熱中症の可能性が高いと判断し、表面温度が低いほど、熱中症の可能性が低いと判断する。また、CPU110は、核心温度が高いほど、熱中症の可能性が高いと判断し、核心温度が低いほど、熱中症の可能性が低いと判断する。また、CPU110は、気温が高いほど、熱中症の可能性が高いと判断し、気温が低いほど、熱中症の可能性が低いと判断する。また、CPU110は、湿度が高いほど、熱中症の可能性が高いと判断し、湿度が低いほど、熱中症の可能性が低いと判断する。
【0038】
また、CPU110は、表面温度が高い時間が長くなるほど、熱中症の可能性が高いと判断し、核心温度が高い時間が長くなるほど、熱中症の可能性が高いと判断し、気温が高い時間が長くなるほど、熱中症の可能性が高いと判断し、湿度が高い時間が長くなるほど、熱中症の可能性が高いと判断する。
【0039】
たとえば、具体的には、まずステップS106において、CPU110は、下記の表のデータに基づいて、今回受信した、測定対象者の表面温度、測定対象者の核心温度、測定装置200の周囲の温度、測定装置200の周囲の湿度に対応するブロック点数を計算する。
【表1】
【0040】
そして、CPU110は、下記の表に基づいて、過去数回分のブロック点数の合計に基づいて、緊急性が高い状況であるか、注意喚起が必要な状況であるか、正常な状態であるかを判断する(ステップS110)。
【表2】
【0041】
緊急性が高い状況である、または、注意喚起が必要な状況であると判断した場合(ステップS110にてYESである場合)、CPU110は、通信インターフェイス160を介して、測定装置200に、緊急性が高い状況であることを示す情報、または、注意喚起が必要な状況であることを示す情報を送信する(ステップS112)。
【0042】
これによって、測定装置200のCPU210は、通信アンテナ260を介して、サーバ100から当該情報を受信すると、スピーカ270から、緊急性が高い状況であることを示す情報、または、注意喚起が必要な状況であることを示す情報を音声出力する。なお、測定装置200がディスプレイやライトを有して、当該ディスプレイから上記の情報を出力したり、上記の情報に対応するライトを点灯したりしてもよい。
【0043】
CPU110は、次の測定装置200からの測定データを待ち受ける。
【0044】
このように、本実施の形態においては、表面温度の高さ、核心温度の高さ、気温の高さ、湿度の高さ、だけでなく、それらが高い状態が続いているかに基づいて、熱中症の危険度を判断するため、従来よりも高い精度で熱中症の可能性を判断することができる。より詳細には、通常の機器では「ストレス性高体温」も発熱もしくは熱中症と誤判断される場合が多い。これは、「ストレス性高体温」が、精神的なストレス、たとえば、びっくりする、ミスをする等、によって発生し、数秒から数分の短期的には、核心温度上昇と同じ振る舞いをするためである。本実施の形態にかかるネットワークシステム1では、時間によるスコア蓄積と補正値を導入しているため短時間のストレスによる高温の影響を抑えることができる。
<第2の実施の形態>
【0045】
上記の実施の形態に加えて、本実施の形態においては、測定対象者の体格や属性に応じて、熱中症の可能性の判断のためのパラメータを変化させるものである。たとえば、測定対象者の身長や体重やBMIなどに基づいて、熱中症になりやすい測定対象者に関しては、ブロックの点数が高めに計算されるように補正する。
【0046】
具体的には、本実施の形態においては、ステップS106において、CPU110は、下記の表のデータに基づいて、今回受信した、測定対象者の表面温度、測定対象者の核心温度に相関する温度、測定装置200の周囲の温度、測定装置200の周囲の湿度に対応するブロック点数を補正する。
【表3】
【0047】
あるいは、BMIに基づいて補正をする代わりに、あるいはBMIの補正に合わせて、時間帯に応じて、熱中症の可能性の判断のパラメータを変化させてもよい。測定対象者の体温上昇リズム(サーカディアンリズム)や暑熱環境下に置かれた時間を組み合わせることでより精度の高い核心温度の上昇をとらえることができ、熱中症や感染症の検知に役立てることができる。測定対象者のサーカディアンリズムに関しては、一日のうちで16時ごろが最も体温が高くなり、熱中症で搬送される時間も16時がピークとなっている。これはサーカディアンリズムによる体温変化・暑熱環境下の疲労・脱水が複合的に関連して発生すると考えられる。
【0048】
そこで、CPU110は、ステップS106において、サーカディアンリズムによる体温上昇を加味するために、13時~15時にブロックの点数9以上の場合には1点を加点、15時~18時にブロックの点数9以上の場合には1.5点を加点する。
【0049】
あるいは、CPU110は、ステップS106において、5ブロック以上連続で表面温度が37℃を超えている場合、発熱や疲労状態である可能性が高いため、1ブロックあたり5点を加点する。
【0050】
その他、CPU110は、表面温度とAVA血管(動静脈吻合)部体表温度の差が0.3℃以内または深部体温に相関する部分の温度が37℃以上であって、かつ、3ブロック(9分)以上連続でスコアが5以上の場合、AVA血管(動静脈吻合)拡張による放熱がはじまっていると判断し、通信インターフェイス160を介して測定装置200に最初の注意喚起を行ってもよい。なお、注意喚起とは測定装置200のLEDによる点灯、振動、またはサーバ100からのメール送信など、をいう。
【0051】
また、CPU110は、このような状態が6ブロック以上連続している場合は、緊急性が高い状況であることを示す情報を測定装置200に送信して、当該情報を出力させる。
【0052】
また、CPU110は、連続しない場合であっても過去60分(20ブロック)のうちの半数以上が暑熱状態を表している場合は熱疲労状態と判断して注意喚起を行ってもよい。
【0053】
また、CPU110は、気温と湿度が低く、表面温度と核心温度とが2種とも所定値以上である場合は発熱が疑われるため、当該状態が20ブロック以上続いた場合に発熱アラートを測定装置200に送信して、当該情報を出力させる。
<第3の実施の形態>
【0054】
上記の実施の形態においては、表1に記載のように、測定タイミング毎のブロック点数に基づいて、表2に記載のように、所定の長さの期間における点数の合計を計算することによって、熱中症である可能性の判定を実行するものであった。しかしながら、このような形態には限られない。
【0055】
たとえば、
図8に示すように、サーバ100は、核心温度が所定値を超えている時間が、所定の期間を超えると、熱中症の可能性が高いと判断してもよい。あるいは、サーバ100は、気温が所定値以上である場合に、核心温度が所定値を超えている時間が、所定の期間を超えると、熱中症の可能性が高いと判断してもよい。
【0056】
あるいは、
図8に示すように、サーバ100は、核心温度が表面温度を超えている時間が、所定の期間を超えると、熱中症の可能性が高いと判断してもよい。あるいは、サーバ100は、気温が所定値以上である場合に、核心温度が表面温度を超えている時間が、所定の期間を超えると、熱中症の可能性が高いと判断してもよい。
【0057】
より詳細には、
図10を参照して、本実施の形態におけるサーバ100の情報処理について説明する。サーバ100のCPU110は、定期的に、あるいは測定装置200からデータを受信するたびに、メモリ120のプログラムに従って以下のような処理を実行する。
【0058】
まず、CPU110は、通信インターフェイス160を介して、測定装置200から、測定対象者の表面温度、測定対象者の核心温度、測定装置200の周囲の温度、測定装置200の周囲の湿度を受信する(ステップS102)。
【0059】
CPU110は、測定装置200から受信した、表面温度、核心温度、気温、湿度を、測定装置200に対応付けて、履歴情報データ122に蓄積する(ステップS104)。
【0060】
具体的には、CPU110は、核心温度が表面温度を超えているか否かを判断する(ステップS206)。
【0061】
核心温度が表面温度を超えている場合(ステップS206にてYESである場合)、CPU110は、メモリ120の温度逆転カウントを+1する(ステップS208)。
【0062】
CPU110は、温度逆転カウントが所定値、たとえば「5」など、を超えたか否かを判断する(ステップS210)。
【0063】
CPU110は、逆転カウントが所定値を超えた場合(ステップS210にてYESである場合)、CPU110は、通信インターフェイス160を介して、測定装置200に、熱中症の危険性が高いことを示す情報を送信する(ステップS212)。
【0064】
これによって、測定装置200のCPU210は、通信アンテナ260を介して、サーバ100から当該情報を受信すると、スピーカ270から、熱中症の危険性が高いことを示す情報を音声出力する。
【0065】
なお、核心温度が表面温度を超えていない場合(ステップS206にてNOである場合)、CPU110は、メモリ120の温度逆転カウントを0にリセットする(ステップS214)。
【0066】
このように、本実施の形態においても、表面温度の高さや核心温度の高さだけでなく、それらが高い状態が続いているかに基づいて、熱中症の危険度を判断するため、従来よりも高い精度で熱中症の可能性を判断することができる。
<第4の実施の形態>
【0067】
上記の実施の形態においては、サーバ100が、熱中症の可能性が高い旨の警報を測定装置200に送信するものであった。本実施の形態においては、
図11に示すように、サーバ100が、測定装置200の代わりに、あるいは測定装置200に加えて、測定対象者の管理者などが利用する通信端末300に、当該情報を送信するものである。
【0068】
すなわち、
図9においては、緊急性が高い状況である、または、注意喚起が必要な状況であると判断した場合(ステップS110にてYESである場合)、CPU110は、通信インターフェイス160を介して、測定装置200や測定対象者に対応付けられている通信端末300に、緊急性が高い状況であることを示す情報、または、注意喚起が必要な状況であることを示す情報を送信する(ステップS112)。
【0069】
これによって、通信端末300のCPUは、サーバ100から当該情報を受信すると、ディスプレイやスピーカから、緊急性が高い状況であることを示す情報、または、注意喚起が必要な状況であることを示す情報を表示したり音声出力したりする。
<第5の実施の形態>
【0070】
上記の実施の形態においては、測定対象者の肩近辺において表面温度を測定し、測定対象者の首近辺において核心温度に相関する温度を測定するものであった。しかしながら、このような形態には限られない。
【0071】
たとえば、測定装置200は、核心温度に相関する温度として、口内、直腸、鼓膜、手足の末梢、耳介、耳垂、鼻の温度を測定してもよい。
【0072】
また、たとえば、測定装置200は、表面温度として、脇や、腕や、脚などの温度を測定してもよい。
<第6の実施の形態>
【0073】
上記の実施の形態のネットワークシステム1のサーバ100や測定装置200や通信端末300などの各装置の役割の一部または全部を他の装置が実行してもよい。たとえば、サーバ100の処理の一部または全部を測定装置200や通信端末300が担ったり、測定装置200の機能の一部をサーバ100や通信端末300が担ったりしてもよい。
【0074】
たとえば、サーバ100の役割を、クラウド上の多数のサーバによって分担して実現してもよい。あるいは、
図9や
図10におけるサーバ100の処理の一部や全部を測定装置200で実行してもよい。
<まとめ>
【0075】
上記の実施の形態においては、気温を測定するセンサと、湿度を測定するセンサと、対象人物の表面温度を測定するセンサと、対象人物の核心温度に相関する温度を測定するためのセンサとを含む測定装置と、測定装置から4つのセンサの測定結果を取得して、対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断した場合に、測定装置に警告を出力させるためのサーバと、を備えるネットワークシステムが提供される。
【0076】
好ましくは、サーバは、対象人物の核心温度が、所定の期間以上連続して、所定の程度よりも高いと判断した場合に、測定装置に警告を出力させる。
【0077】
好ましくは、サーバは、所定の時間帯においては、対象人物の核心温度に関する、測定装置に警告を出力させる条件が異なる。
【0078】
好ましくは、サーバは、対象人物の身長および体重に基づいて、対象人物の核心温度に関する、測定装置に警告を出力させる条件が異なる。
【0079】
上記の実施の形態においては、測定装置と通信するための通信インターフェイスと、測定装置からの、気温データと、湿度データと、対象人物の表面温度データと、対象人物の核心温度に相関する温度のデータと、に基づいて、対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断した場合に、測定装置に警告を出力させるプロセッサと、を備えるサーバが提供される。
【0080】
上記の実施の形態においては、サーバによる核心温度異常検知方法が提供される。当該方法は、測定装置から、気温データと、湿度データと、対象人物の表面温度データと、対象人物の核心温度に相関する温度のデータとを受信するステップと、4つのデータに基づいて、対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いか否かを判断するステップと、対象人物の核心温度が所定の程度よりも高いと判断された場合に、測定装置に警告を出力させるステップと、を備える。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 :ネットワークシステム
100 :サーバ
110 :CPU
120 :メモリ
121 :機器情報データ
122 :履歴情報データ
140 :操作部
160 :通信インターフェイス
200 :測定装置
201 :フレーム
210 :CPU
220 :メモリ
251 :表面温度センサ
252 :核心温度センサ
253 :気温センサ
254 :湿度センサ
260 :通信アンテナ
270 :スピーカ
290 :タイマ
300 :通信端末