(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170210
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/18 20060101AFI20221102BHJP
H02P 25/022 20160101ALI20221102BHJP
H02J 3/16 20060101ALI20221102BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H02J3/18 185
H02P25/022
H02J3/16
H02J3/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076191
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 雄治
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊也
【テーマコード(参考)】
5G066
5H505
【Fターム(参考)】
5G066AD08
5G066DA04
5G066FA01
5G066FB17
5H505AA30
5H505BB06
5H505CC04
5H505CC05
5H505CC09
5H505DD06
5H505EE30
5H505EE48
5H505HA06
5H505HA11
5H505LL54
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い電力システムを提供する。
【解決手段】電力システム100は、電力系統P1に電気的に接続される電機子巻線11aと、励磁回路として機能する界磁巻線11bと、を有する同期調相機11を備え、電力系統P1の正常時には、電力系統P1から界磁巻線11bに電力が供給され、電力系統P1の異常時には、界磁巻線11bへの電力の供給元が電力系統P1から電力系統P2に切り替わるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力系統に電気的に接続される電機子巻線と、励磁回路として機能する界磁巻線と、を有する同期調相機を備え、
前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力系統から前記励磁回路に電力が供給され、
前記第1電力系統の異常時には、前記励磁回路への電力の供給元が前記第1電力系統から第2電力系統に切り替わるように構成されていること
を特徴とする電力システム。
【請求項2】
前記励磁回路は、第1遮断器を介して前記第1電力系統に接続されるとともに、第2遮断器を介して前記第2電力系統に接続され、
前記第1遮断器及び前記第2遮断器を開閉する電源盤を備え、
前記第1電力系統の正常時には、前記第1遮断器が投入された状態である一方、前記第2遮断器は開放された状態であり、
前記第1電力系統の異常時には、前記電源盤は、前記第1遮断器を開放する一方、前記第2遮断器を投入すること
を特徴とする請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
第1電力系統に電気的に接続される電機子巻線と、励磁回路として機能する界磁巻線と、を有する同期調相機を備え、
前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力系統から前記励磁回路に電力が供給されるとともに、第2電力系統及び蓄電池のうち少なくとも一方からも前記励磁回路に電力が供給され、
前記第1電力系統の異常時には、前記励磁回路への電力の供給元が前記第2電力系統及び前記蓄電池のうち前記少なくとも一方となるように構成されていること
を特徴とする電力システム。
【請求項4】
前記第1電力系統の正常時に、前記第1電力系統及び前記第2電力系統から前記励磁回路に電力が供給される構成において、
前記第1電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記励磁回路に出力する第1電力変換器と、
前記第2電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記励磁回路に出力する第2電力変換器と、
前記第1電力変換器及び前記第2電力変換器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力変換器及び前記第2電力変換器の出力側の電圧が等しくなるように、前記第1電力変換器及び前記第2電力変換器を駆動させ、
前記第1電力系統の異常時には、少なくとも前記第2電力変換器の駆動を継続させること
を特徴とする請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記第1電力変換器の交流側及び直流側のいずれにも遮断器が設けられておらず、
前記第2電力変換器の交流側及び直流側のいずれにも遮断器が設けられていないこと
を特徴とする請求項4に記載の電力システム。
【請求項6】
前記第1電力系統の正常時に、前記第1電力系統及び前記蓄電池から前記励磁回路に電力が供給される構成において、
前記第1電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記励磁回路に出力する第1電力変換器と、
前記蓄電池の直流電圧を昇圧又は降圧して調整し、調整後の直流電圧を前記励磁回路に印加する第3電力変換器と、
前記第1電力変換器及び前記第3電力変換器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力変換器及び前記第3電力変換器の出力側の電圧が等しくなるように、前記第1電力変換器及び前記第3電力変換器を駆動させ、
前記第1電力系統の異常時には、少なくとも前記第3電力変換器の駆動を継続させること
を特徴とする請求項3に記載の電力システム。
【請求項7】
前記第1電力変換器の交流側及び直流側のいずれにも遮断器が設けられておらず、
前記第3電力変換器の前記蓄電池側及び前記励磁回路側のいずれにも遮断器が設けられていないこと
を特徴とする請求項6に記載の電力システム。
【請求項8】
前記第1電力系統の正常時に、前記第1電力系統、前記第2電力系統、及び前記蓄電池から前記励磁回路に電力が供給される構成において、
前記第1電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記励磁回路に出力する第1電力変換器と、
前記第2電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記励磁回路に出力する第2電力変換器と、
前記蓄電池の直流電圧を昇圧又は降圧して調整し、調整後の直流電圧を前記励磁回路に印加する第3電力変換器と、
前記第1電力変換器、前記第2電力変換器、及び前記第3電力変換器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力変換器、前記第2電力変換器、及び前記第3電力変換器の出力側の電圧が等しくなるように、前記第1電力変換器、前記第2電力変換器、及び前記第3電力変換器を駆動させ、
前記第1電力系統の異常時には、少なくとも前記第2電力変換器及び前記第3電力変換器の駆動を継続させること
を特徴とする請求項3に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
同期機の励磁に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「所定回転数で初期励磁を開始してから所定時間経過後に界磁電流が初期励磁に必要な所定値になるように充電電圧が決定されている」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、仮に、同期機の給電元である電力系統で地絡等の不具合が生じた場合、この電力系統の電圧が低下する。なお、電力系統の不具合の発生時からしばらくの間は、同期機の誘導起電力によって電力系統の電圧が所定に維持されるが、その後は電力系統の電圧が低下し、これに伴って、同期機の界磁巻線(励磁回路)の電圧も低下する。
【0005】
その結果、例えば、同期機が調相機として機能している場合において、その給電元である電力系統に不具合が生じると、同期機による無効電力の調整能力が低下する。したがって、電力系統を介した給電の信頼性をさらに高めることが望まれているが、そのような技術については特許文献1には記載されていない。
【0006】
そこで、本発明は、信頼性の高い電力システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係る電力システムは、第1電力系統に電気的に接続される電機子巻線と、励磁回路として機能する界磁巻線と、を有する同期調相機を備え、前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力系統から前記励磁回路に電力が供給され、前記第1電力系統の異常時には、前記励磁回路への電力の供給元が前記第1電力系統から第2電力系統に切り替わるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電力システムは、第1電力系統に電気的に接続される電機子巻線と、励磁回路として機能する界磁巻線と、を有する同期調相機を備え、前記第1電力系統の正常時には、前記第1電力系統から前記励磁回路に電力が供給されるとともに、第2電力系統及び蓄電池のうち少なくとも一方からも前記励磁回路に電力が供給され、前記第1電力系統の異常時には、前記励磁回路への電力の供給元が前記第2電力系統及び前記蓄電池のうち前記少なくとも一方となるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信頼性の高い電力システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る電力システムの構成図である。
【
図2】第2実施形態に係る電力システムの構成図である。
【
図3】第3実施形態に係る電力システムの構成図である。
【
図4】第4実施形態に係る電力システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪第1実施形態≫
<電力システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る電力システム100の構成図である。
なお、
図1では、電力線を実線で示す一方、信号線を破線で示している。
図1に示す電力システム100は、主系統である電力系統P1(第1電力系統)の無効電力を同期調相機11によって調整するシステムである。また、電力システム100は、電力系統P1で地絡等が生じた場合、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)への電力の供給元を、電力系統P1から電力系統P2(第2電力系統)に切り替える機能も有している。
【0012】
なお、電力系統P1,P2は、所定の発電設備(図示せず)で発電された電力(三相交流電力)を需要側に送電・配電する設備である。また、電力系統P1で地絡等の異常が生じた場合でも、他方の電力系統P2にはほとんど影響がないものとする。
【0013】
図1に示すように、電力システム100は、同期調相機11等を備えている。同期調相機11は、無負荷で駆動される同期電動機であり、電力系統P1の無効電力を調整する機能を有している。
図1に示すように、同期調相機11は、電機子巻線11aと、界磁巻線11bと、を備えている。電機子巻線11aは、固定子鉄心(図示せず)に巻回される巻線であり、変圧器12を介して、電力系統P1に電気的に接続されている。なお、
図1の例では、電機子巻線11aは、他の電力系統P2には特に接続されていない。
【0014】
界磁巻線11bは、同期調相機11の励磁回路として機能し、界磁鉄心(図示せず)に巻回されている。界磁巻線11b(励磁回路)は、遮断器14(第1遮断器)等を介して電力系統P1(第1電力系統)に接続されるとともに、別の遮断器23(第2遮断器)等を介して電力系統P2(第2電力系統)に接続されている。
【0015】
そして、界磁巻線11bに所定の励磁電流(直流電流)が流れることで、界磁巻線11bや界磁鉄心(図示せず)を含む回転子(図示せず)が回転し、これに伴って、電機子巻線11aに所定の交流電圧が生じるようになっている。なお、同期調相機11の回転子と一体で回転するスリップリング(図示せず)に所定のブラシ(図示せず)が摺接する構成であってもよい。
【0016】
例えば、同期調相機11の界磁を過励磁にした場合、界磁巻線11bは、電力系統P1から進み位相の電流を吸収するコンデンサとして機能する。一方、同期調相機11の界磁を不足励磁にした場合、界磁巻線11bは、電力系統P1から遅れ位相の電流を吸収するリアクトルとして機能する。なお、同期調相機11の界磁等は、後記する制御装置30によって調整される。
【0017】
また、同期調相機11の界磁巻線11bの初期励磁に用いられる所定の直流回路(図示せず)が設けられるようにしてもよい。そして、初期励磁用の直流回路を用いて、同期調相機11を始動させた後、定格運転の付近で電源盤15が遮断器14を投入し、電力系統P1から励磁用の電力を界磁巻線11bに供給するようにしてもよい。
【0018】
図1に示す電力システム100は、主系統である電力系統P1から同期調相機11への給電に用いられる構成として、変圧器12と、励磁変圧器13と、遮断器14(第1遮断器)と、電源盤15と、電力変換器16と、を備えている。
変圧器12は、電力系統P1と同期調相機11との間で交流電圧の高さ等を調整する機器である。変圧器12の一次側は電力系統P1に接続される一方、変圧器12の二次側は同期調相機11の電機子巻線11aに接続されている。
【0019】
励磁変圧器13は、電力変換器16の交流側と変圧器12との間で交流電圧の高さ等を調整する機器である。励磁変圧器13の一次側は変圧器12の二次側に接続される一方、励磁変圧器13の二次側は遮断器14に接続されている。
遮断器14は、電力系統P1と界磁巻線11b(励磁回路)との間の接続/遮断を切り替えるものである。例えば、電力系統P1と界磁巻線11bとを電気的に接続する際には、遮断器14が投入される。一方、電力系統P1と界磁巻線11bとを電気的に遮断する際には、遮断器14が開放される。
【0020】
電源盤15は、制御装置30からの信号に基づいて、遮断器14,23を開閉するものである。
図1に示すように、電源盤15は、遮断器14等を介して電力系統P1に接続される一方、別の遮断器23等を介して電力系統P2に接続されている。また、電源盤15は、次に説明する電力変換器16を介して、界磁巻線11bに接続されている。
【0021】
電力変換器16は、遮断器14等を介して自身に印加される交流電圧を所定の直流電圧に変換する機器である。このような電力変換器16として、例えば、サイリスタ整流器が用いられる。電力変換器16は、その交流側が電源盤15に接続される一方、直流側が界磁巻線11b(励磁回路)に接続されている。そして、界磁巻線11bに所定の直流電流が流れることで、同期調相機11が励磁されるようになっている。
【0022】
また、電力システム100は、バックアップ系統である電力系統P2から同期調相機11の界磁巻線11bへの給電に用いられる構成として、変圧器21と、励磁変圧器22と、遮断器23(第2遮断器)と、を備えている。
変圧器21は、電力系統P2を同期調相機11の励磁電源として使用する際、交流電圧の高さ等を調整する機器である。変圧器21の一次側は電力系統P2に接続される一方、変圧器21の二次側は励磁変圧器22の一次側に接続されている。
【0023】
励磁変圧器22は、電力変換器16の交流側と変圧器21との間で交流電圧の高さ等を調整する機器である。励磁変圧器22の一次側は変圧器21の二次側に接続される一方、励磁変圧器22の二次側は遮断器23に接続されている。
遮断器23は、電力系統P2と界磁巻線11b(励磁回路)との間の接続/遮断を切り替えるものである。例えば、電力系統P2と界磁巻線11bとを電気的に接続する際には、遮断器23が投入される。一方、電力系統P2と界磁巻線11bとを電気的に遮断する際には、遮断器23が開放される。
【0024】
また、電力システム100は、前記した構成の他に、制御装置30を備えている。制御装置30は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0025】
制御装置30は、電力系統P1の状況等に基づいて、電力変換器16(例えば、サイリスタ整流器)に所定のゲート信号を出力し、同期調相機11の励磁を調整する機能を有している。また、制御装置30は、例えば、電力系統P1の電圧の検出値に基づいて、電力系統P1の電圧(実効値)が所定値以下に低下したか否かを判定し、その判定結果に対応する所定の信号を電源盤15に出力する。
【0026】
次に、電力系統P1の正常時・異常時における電力システム100の動作について説明する。例えば、電力系統P1の電圧の検出値等に基づいて、電力系統P1が正常であると判定した場合、制御装置30は、電力系統P1が正常であることを示す所定の信号を電源盤15に出力する。この信号に基づいて、電源盤15は、遮断器14を投入した状態で維持する一方、他方の遮断器23を開放した状態で維持する。これによって、電力系統P1から変圧器12、励磁変圧器13、遮断器14、電源盤15、及び電力変換器16を順次に介して、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)に電力が供給される。その結果、同期調相機11によって、電力系統P1の無効電力が所定に調整される。
【0027】
このように、電力系統P1(第1電力系統)の正常時には、遮断器14(第1遮断器)が投入された状態である一方、他方の遮断器23(第2遮断器)は開放された状態であり、電力系統P1から界磁巻線11b(励磁回路)に電力が供給される。
【0028】
一方、電力系統P1の電圧の検出値等に基づいて、電力系統P1に異常が生じたと判定した場合、制御装置30は、電力系統P1が異常であることを示す所定の信号を電源盤15に出力する。なお、電力系統P1の異常として、地絡や断線の他、短絡、欠相等が挙げられる。
【0029】
電力系統P1に異常が生じた際、仮に、界磁巻線11b(励磁回路)への電力の供給元が電力系統P1のままであった場合には、同期調相機11の慣性に伴う誘導起電力によって、しばらくの間は、電力系統P1の無効電力の調整が継続される。しかしながら、電力系統P1の電圧が低下すると、界磁巻線11bに印加される直流電圧も低下するため、同期調相機11における無効電力の調整能力も低下する。
【0030】
そこで、第1実施形態では、電力系統P1(第1電力系統)の異常時には、電源盤15が、遮断器14(第1遮断器)を開放する一方、他方の遮断器23(第2遮断器)を投入するようにしている。つまり、電力系統P1の異常時には、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)への電力の供給元が、電力系統P1(第1電力系統)から電力系統P2(第2電力系統)に切り替わるように電力システム100が構成されている。
【0031】
より詳しく説明すると、電力系統P1の異常を示す信号を制御装置30から受信した場合、電源盤15は、電力系統P1側の遮断器14を開放した後、電力系統P2側の遮断器23を投入する。このように、2つの遮断器14,23の両方が投入された状態になっている時間を設けないようにすることで、位相の異なる電圧が電力変換器16に同時に印加されることを防止できる。
【0032】
なお、遮断器14が開放された後、他方の遮断器23が投入される過程で、これら2つの遮断器14,23の両方が開放されている時間は比較的短い。この時間において、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)に印加される電圧が一時的に低下した場合でも、同期調相機11の慣性に伴う誘導起電力によって、無効電力の調整能力が所定に維持される。そして、遮断器23が投入された後は、電力系統P2から電力変換器16等を介して、界磁巻線11bに所定の直流電圧が印加される。その結果、同期調相機11の励磁電圧が高めに維持されるため、電力系統P1における無効電力を適切に調整できる。
【0033】
<効果>
第1実施形態によれば、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)に電力系統P1から電力が供給される構成において、電力系統P1に異常が生じた場合、界磁巻線11bへの電力の供給元が、電力系統P1から電力系統P2に切り替わる。これよって、同期調相機11の励磁電圧が所定に維持されるため、電力系統P1の電圧が低下した後も同期調相機11による無効電力の調整能力を十分に引き出すことができる。その結果、同期調相機11によって電力系統P1の無効電力が適切に調整されるため、電力システム100の信頼性を高めることができる。
【0034】
また、例えば、原子力発電所等の発電機を同期調相機11として用いることで、電源設備を有効に活用し、設備コストの削減を図ることも可能である。また、同期調相機11を用いた無効電力の調整は、再生可能エネルギによる発電電力の送電・配電にも適用できるため、社会貢献に寄与できる。
【0035】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、同期調相機11(
図2参照)の界磁巻線11b(励磁回路)への電力の供給元を切り替えるための遮断器や電源盤が特に設けられていない点が、第1実施形態とは異なっている。また、第2実施形態は、界磁巻線11bに電力を供給するためのバックアップ用の電源として、大容量蓄電池41(
図2参照)が用いられる点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0036】
図2は、第2実施形態に係る電力システム100Aの構成図である。
図2に示すように、電力システム100Aは、同期調相機11と、変圧器12と、励磁変圧器13と、電力変換器17(第1電力変換器)と、大容量蓄電池41(蓄電池)と、電力変換器42(第3電力変換器)と、制御装置30Aと、を備えている。
【0037】
なお、主系統である電力系統P1から同期調相機11への給電に用いられる構成には、変圧器12と、励磁変圧器13と、電力変換器17と、が含まれる。
電力変換器17(第1電力変換器)は、電力系統P1(第1電力系統)から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を界磁巻線11b(励磁回路)に出力する機器である。
【0038】
電力変換器17の交流側は、電力線W1を介して、励磁変圧器13の二次側に接続されている。一方、電力変換器17の直流側は、電力線W2,W3を順次に介して、同期調相機11の界磁巻線11bに接続されている。
【0039】
なお、
図2の例では、電力変換器17の交流側の電力線W1には遮断器が特に設けられておらず、また、電力変換器17の直流側の電力線W2,W3にも遮断器が特に設けられていない。つまり、電力変換器17(第1電力変換器)の交流側及び直流側のいずれにも遮断器が特に設けられていない。
【0040】
大容量蓄電池41(蓄電池)は、同期調相機11のバックアップ電源として用いられる二次電池であり、電力線W5を介して電力変換器42に接続されている。大容量蓄電池41は、電力系統P1の電圧が低下した場合でも、大容量蓄電池41の直流電圧によって界磁巻線11bの電圧がそのまま維持される(電力系統P1の正常時と同様の電圧が維持される)程度の容量を有している。
【0041】
電力変換器42(第3電力変換器)は、大容量蓄電池41(蓄電池)の直流電圧を昇圧又は降圧して調整し、調整後の直流電圧を界磁巻線11b(励磁回路)に印加するDC-DCコンバータである。電力変換器42の入力側は、電力線W5を介して、大容量蓄電池41に接続されている。一方、電力変換器42の出力側は、電力線W4,W3を順次に介して、界磁巻線11bに接続されている。
【0042】
図2の例では、電力変換器42の入力側の電力線W5には遮断器が特に設けられておらず、また、電力変換器42の出力側の電力線W4,W3にも遮断器が特に設けられていない。つまり、電力変換器42(第3電力変換器)の大容量蓄電池41(蓄電池)側、及び、界磁巻線11b(励磁回路)側のいずれにも遮断器が特に設けられていない。
【0043】
制御装置30Aは、電力変換器17(第1電力変換器)及び電力変換器42(第3電力変換器)を所定に制御する。例えば、制御装置30は、電力系統P1(第1電力系統)の正常時には、電力変換器17(第1電力変換器)及び電力変換器42(第3電力変換器)の出力側の電圧が等しくなるように、電力変換器17,42を駆動させる。これによって、電力系統P1(第1電力系統)の正常時には、電力系統P1から界磁巻線11b(励磁回路)に電力が供給されるとともに、大容量蓄電池41(蓄電池)からも界磁巻線11bに電力が供給される。
【0044】
また、制御装置30Aは、電力系統P1(第1電力系統)の異常時には、少なくとも電力変換器42(第3電力変換器)の駆動を継続させる。例えば、電力系統P1に異常が生じて、電力変換器17の直流側の電圧が低下した場合には、他方の電力変換器42の出力側の電圧が相対的に高くなる。その結果、大容量蓄電池41から電力変換器42を介して、界磁巻線11bに所定の直流電圧が印加され続けるため、界磁巻線11bの電圧が低下することはほとんどない。このように、電力系統P1(第1電力系統)の異常時には、界磁巻線11b(励磁回路)への電力の供給元が大容量蓄電池41(蓄電池)となるように電力システム100Aが構成されている。
【0045】
なお、電力系統P1が正常である場合の他、電力系統P1が異常である場合にも、制御装置30Aが電力変換器17を所定に駆動し続けるようにしてもよい。このような制御が行われても、電力系統P1の電圧が低下しているため、電力変換器17を介した電流の流れはほとんどないが、電力変換器17を駆動させ続けても特に問題はない。その他にも、例えば、電力系統P1で異常が生じた場合、制御装置30Aが電力変換器17の駆動を停止させるようにしてもよい。
【0046】
<効果>
第2実施形態によれば、電力系統P1に異常が生じて、電力系統P1の電圧が低下した場合には、同期調相機11の界磁巻線11bへの給電元が大容量蓄電池41に即座に切り替わる。これによって、界磁巻線11bに印加される直流電圧の変動が大容量蓄電池41の電圧で補償されるため、遮断器14,23(
図1参照)を用いる第1実施形態に比べて電圧の過渡的な安定性が高く、界磁巻線11bの電圧変動を抑制できる。また、電力系統P1の異常の有無に関わらず、制御装置30Aは、電力変換器17,42を所定に駆動させ続ければよいため、制御装置30Aの処理を簡素化できる。
【0047】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、電力系統P1(
図3参照)の異常時に界磁巻線11bを励磁するためのバックアップ電源として、別の電力系統P2が用いられる点が、第2実施形態(
図2参照)とは異なっている。また、第3実施形態は、変圧器21(
図3参照)で所定に変圧された交流電圧を、電力変換器24が直流電圧に変換する点が、第2実施形態とは異なっている。なお、その他については第2実施形態と同様である。したがって、第2実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0048】
図3は、第3実施形態に係る電力システム100Bの構成図である。
図3に示すように、電力システム100Bは、主系統である電力系統P1から同期調相機11への給電に用いられる構成として、変圧器12と、励磁変圧器13と、電力変換器17(第1電力変換器)と、を備えている。
図3の例では、第2実施形態(
図2参照)と同様に、電力変換器17(第1電力変換器)の交流側及び直流側のいずれにも遮断器が特に設けられていない。
【0049】
また、電力システム100Bは、バックアップ系統である電力系統P2から同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)への給電に用いられる構成として、変圧器21と、電力変換器24(第2電力変換器)と、を備えている。
【0050】
変圧器21は、電力系統P2を同期調相機11の励磁電源として使用する際、交流電圧の高さ等を調整する機器である。
電力変換器24(第2電力変換器)は、電力系統P2(第2電力系統)から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を界磁巻線11b(励磁回路)に出力する機器である。このような電力変換器24として、例えば、サイリスタ整流器が用いられる。
【0051】
電力変換器24の交流側は、電力線W6を介して、変圧器21の二次側に接続されている。一方、電力変換器24の直流側は、電力線W7,W3を順次に介して、界磁巻線11bに接続されている。
図3の例では、電力変換器24(第2電力変換器)の交流側及び直流側のいずれにも遮断器は特に設けられていない。
【0052】
制御装置30Bは、電力変換器17(第1電力変換器)及び電力変換器24(第2電力変換器)を所定に制御する。例えば、制御装置30Bは、電力系統P1(第1電力系統)の正常時には、電力変換器17(第1電力変換器)及び電力変換器24(第2電力変換器)の出力側の電圧が等しくなるように、電力変換器17,24を駆動させる。これによって、電力系統P1(第1電力系統)の正常時には、電力系統P1から界磁巻線11b(励磁回路)に電力が供給されるとともに、電力系統P2(第2電力系統)からも界磁巻線11bに電力が供給される。
【0053】
また、制御装置30Bは、電力系統P1(第1電力系統)の異常時には、少なくとも電力変換器24(第2電力変換器)の駆動を継続させる。例えば、電力系統P1に異常が生じて、電力変換器17の直流側の電圧が低下した場合には、他方の電力変換器24の直流側の電圧が相対的に高くなる。その結果、電力系統P2から電力変換器24を介して、界磁巻線11bに所定の直流電圧が印加され続けるため、界磁巻線11bの電圧が低下することはほとんどない。このように、電力系統P1(第1電力系統)の異常時には、界磁巻線11b(励磁回路)への電力の供給元が電力系統P2(第2出力系統)となるように電力システム100Bが構成されている。
【0054】
なお、電力系統P1が正常である場合の他、電力系統P1が異常である場合にも、制御装置30Bが電力変換器17を所定に駆動し続けるようにしてもよい。このような制御が行われても、電力系統P1の電圧が低下しているため、電力変換器17を介した電流の流れはほとんどないが、電力変換器17を駆動させ続けても特に問題はない。その他にも、例えば、電力系統P1で異常が生じた場合、制御装置30Bが電力変換器17の駆動を停止させるようにしてもよい。
【0055】
<効果>
第3実施形態によれば、電力系統P1に異常が生じて、電力系統P1の電圧が低下した場合には、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)への給電元が電力系統P2に即座に切り替わる。したがって、遮断器14,23(
図1参照)を用いる第1実施形態に比べて、界磁巻線11bの電圧変動を抑制できる。また、電力系統P1の異常の有無に関わらず、制御装置30Bは、電力変換器17,24を所定に制御し続ければよいため、制御装置30Bの処理を簡素化できる。また、バックアップ用の大容量蓄電池を設ける必要が特にないため、第2実施形態(
図2参照)よりも設備コストを削減できる。
【0056】
≪第4実施形態≫
第4実施形態に係る電力システム100C(
図4参照)は、第2実施形態(
図2参照)と、第3実施形態(
図3参照)と、を組み合わせた構成になっている。つまり、第4実施形態では、電力系統P1(
図4参照)の電圧が低下した場合、大容量蓄電池41(
図4参照)及び電力系統P2(
図4参照)の両方から同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)に電力が供給されるように構成されている。なお、第2実施形態や第3実施形態と重複する部分については、説明を適宜に省略する。
【0057】
図4は、第4実施形態に係る電力システム100Cの構成図である。
図4に示すように、電力システム100Cは、主系統である電力系統P1から同期調相機11への給電に用いられる構成として、変圧器12と、励磁変圧器13と、電力変換器17(第1電力変換器)と、を備えている。なお、電力変換器17(第1電力変換器)は、電力系統P1(第1電力系統)から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を界磁巻線11b(励磁回路)に出力する機器である。
【0058】
また、電力システム100Cは、大容量蓄電池41から同期調相機11の界磁巻線11bへの給電に用いられる構成として、大容量蓄電池41と、電力変換器42(第3電力変換器)と、を備えている。なお、電力変換器42(第3電力変換器)は、大容量蓄電池41(蓄電池)の直流電圧を昇圧又は降圧して調整し、調整後の直流電圧を界磁巻線11b(励磁回路)に印加する機器である。
【0059】
また、電力システム100Cは、電力系統P2から同期調相機11の界磁巻線11bへの給電に用いられる構成として、変圧器21と、電力変換器24(第2電力変換器)と、を備えている。なお、電力変換器24(第2電力変換器)は、電力系統P2(第2電力系統)から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を界磁巻線11b(励磁回路)に出力する機器である。
【0060】
制御装置30Cは、電力変換器17,24,42を所定に制御する。例えば、制御装置30Cは、電力系統P1(第1電力系統)の正常時には、電力変換器17(第1電力変換器)、電力変換器24(第2電力変換器)、及び電力変換器42(第3電力変換器)の出力側の電圧が等しくなるように、電力変換器17,24,42を駆動させる。これによって、電力系統P1,P2及び大容量蓄電池41から界磁巻線11b(励磁回路)に電力が供給される。
【0061】
また、制御装置30Cは、電力系統P1(第1電力系統)の異常時には、少なくとも電力変換器24(第2電力変換器)及び電力変換器42(第3電力変換器)の駆動を継続させる。例えば、電力系統P1で地絡等が生じて、電力変換器17の出力側の直流電圧が低下した場合、残りの電力変換器24,42の出力側の直流電圧が相対的に高くなる。その結果、電力系統P2や大容量蓄電池41から界磁巻線11b(励磁回路)に直流電圧が印加され続けるため、界磁巻線11bの電圧が低下することはほとんどない。
【0062】
<効果>
第4実施形態によれば、電力系統P1に異常が生じて、電力系統P1の電圧が低下した場合には、同期調相機11の界磁巻線11b(励磁回路)への給電元が電力系統P2や大容量蓄電池41に即座に切り替わる。したがって、遮断器14,23(
図1参照)を用いる第1実施形態に比べて、界磁巻線11bの電圧変動を抑制できる。また、電力系統P1の異常の有無に関わらず、制御装置30Cは、電力変換器17,24,42を所定に制御し続ければよいため、制御装置30Cの処理を簡素化できる。
【0063】
また、電力変換器17の他、電力変換器24の出力側の電圧が瞬間的に低下した場合でも、大容量蓄電池41から電力変換器42を介して、界磁巻線11bに直流電圧が印加される。したがって、第2実施形態や第3実施形態に比べて、同期調相機11の界磁巻線11bに所定の直流電圧に安定して印加し続けることができる。
【0064】
≪変形例≫
以上、本発明に係る電力システム100等について各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態では、電力変換器16(
図1参照)として、サイリスタ整流器を用いる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、電力変換器16(
図1参照)として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を有する整流器といった他の種類の電力変換器を用いるようにしてもよい。なお、第2~第4実施形態で説明した電力変換器17(
図2~
図4参照)の他、第2、第4実施形態で説明した電力変換器42(
図2、
図4参照)や、第3、第4実施形態で説明した電力変換器24(
図3、
図4参照)についても同様のことがいえる。
【0065】
また、第1実施形態では、制御装置30(
図1参照)が遮断器14,23(
図1参照)を切り替える場合について説明したが、これに限らない。例えば、電力系統P1に異常が生じた場合、管理者が遮断器14,23を手動で操作してもよい。
【0066】
また、第2実施形態では、電力変換器17(
図2参照)の出力側の電力線W2や、電力変換器42(
図2参照)の出力側の電力線W4に遮断器が特に設けられない構成について説明したが、これに限らない。すなわち、電力線W2,W4に適宜に遮断器が設けられてもよい。なお、第3、第4実施形態についても同様のことがいえる。
【0067】
また、各実施形態は、例えば、原子力発電所の他、火力発電所や水力発電所といった発電所の設備に適用することも可能である。
また、各実施形態では、ブラシ及びスリップリングを備える同期調相機11について説明したが、ブラシレス励磁方式の同期調相機に適用することも可能である。
また、各実施形態は、同期調相機11の他、同期電動機等の同期機にも適用できる。
【0068】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【0069】
また、電力線や信号線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての電力線や信号線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
11 同期調相機
11a 電機子巻線
11b 界磁巻線(励磁回路)
12 変圧器
13 励磁変圧器
14 遮断器(第1遮断器)
15 電源盤
16 電力変換器
17 電力変換器(第1電力変換器)
21 変圧器
22 励磁変圧器
23 遮断器(第2遮断器)
24 電力変換器(第2電力変換器)
30,30A,30B,30C 制御装置
41 大容量蓄電池(蓄電池)
42 電力変換器(第3電力変換器)
100,100A,100B,100C 電力システム
P1 電力系統(第1電力系統)
P2 電力系統(第2電力系統)