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特開2022-170212液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170212
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20221102BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221102BHJP
   B41J 2/145 20060101ALI20221102BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B41J2/16 201
B41J2/01 307
B41J2/145
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076195
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】片山 真吾
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA07
2C056HA24
2C057AF41
2C057AG15
2C057AG24
2C057AG44
2C057AN01
2C057AP02
2C057AP23
2C057AP32
2C057AP33
2C057AP59
2C057AP60
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル面に付着した液滴がノズル内に浸入しにくくする。
【解決手段】水平面に対して傾斜したノズル面11yであって、ノズル面11yに沿った方向である搬送方向に並んでおり且つそれぞれインクを吐出する複数のノズル21が形成されたノズル面11yを備える。ノズル面11yに、高撥液領域70と高撥液領域70に比べて撥液性が低い低撥液パターン71とを設ける。低撥液パターン71は、搬送方向に隣り合うノズル21間に設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に対して傾斜したノズル面であって、前記ノズル面に沿った第1方向に並んでおり且つそれぞれ液体を吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を備えており、
前記ノズル面には、第1領域と前記第1領域に比べて撥液性が低い第2領域とが設けられており、
前記第2領域は、前記第1方向に隣り合う前記ノズル間に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズル面には、前記第1方向に並ぶ前記複数のノズルによってそれぞれ構成される複数のノズル列が、前記第1方向と直交する第2方向に配列されており、
前記第2領域は、さらに、前記第2方向に隣り合う前記ノズル列間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2領域は、
前記第2方向に隣り合う前記ノズル列間において前記第1方向に沿って延びる第1部分と、
前記第1部分と交差し、前記第1方向に隣り合う前記ノズル間を通る第2部分と、を有することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズル面に形成され、前記第1領域を構成する撥液膜と、
前記ノズル面と前記撥液膜との間に配置され、前記第1方向に沿って延びる電極対と、
前記電極対のそれぞれに電圧を印加する電圧印加部と、
前記撥液膜に形成され、前記第2方向に沿って延びる凹部と、を備えており、
前記電圧印加部によって前記電極対の間に電位差を生じさせることにより、前記第1部分が形成され、
前記凹部により、前記第2部分が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル面に形成され、前記第1領域を構成する撥液膜と、
前記ノズル面と前記撥液膜との間に配置され、前記第2方向に沿って延びる電極対と、
前記電極対のそれぞれに電圧を印加する電圧印加部と、
前記撥液膜に形成され、前記第1方向に沿って延びる凹部と、を備えており、
前記電圧印加部によって前記電極対の間に電位差を生じさせることにより、前記第2部分が形成され、
前記凹部により、前記第1部分が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数のノズル列は、第1種類の液体を吐出する前記複数のノズルで構成される第1ノズル列と、前記第1種類とは異なる第2種類の液体を吐出する前記複数のノズルで構成される第2ノズル列と、を含み、
前記第2領域は、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間に設けられていることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数のノズルは、前記第1方向に沿って千鳥状に配置されており、
前記第2領域は、前記第1方向に隣り合う前記ノズル間において、前記第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向の双方に交差する斜め方向に延びていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1方向に並ぶ前記複数のノズルは、第1種類の液体を吐出する第1ノズルと、前記第1種類とは異なる第2種類の液体を吐出する第2ノズルと、を含み、
前記第2領域は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間に設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第2領域は、前記複数のノズルをそれぞれ環状に取り囲むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
水平面に対して傾斜したノズル面であって、前記ノズル面に沿った第1方向に並んでおり且つそれぞれ液体を吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを前記水平面に平行な方向に移動させる移動機構と、を備え、
前記ノズル面には、第1領域と前記第1領域に比べて撥液性が低い第2領域とが設けられており、
前記第2領域は、前記第1方向に隣り合う前記ノズル間に設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッド、及び、液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドの一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドが記載されている。特許文献1の吐出ヘッドは、ノズルが設けられたノズル面が水平面に対して傾斜した姿勢で装置(インクジェットプリンター)に取り付けられている。
【0003】
特許文献1の吐出ヘッドにおいては、ノズル面におけるノズルが形成されたノズル形成範囲よりも重力方向の上側の部分に撥水性を有する第1領域が設けられており、ノズル形成範囲よりも重力方向の下側の部分に、第1領域に比べて撥水性が低い第2領域が設けられている。これにより、ノズルからのインクの吐出に伴って発生するミストに由来する液滴がノズル面に付着し、重力により液滴がノズル面を伝って重力方向の下方に流れたとしても、撥水性が比較的低い第2領域で濡れ広がって、大きな液滴に成長する可能性が低い。そのため、ノズル面に対向する記録用紙に液滴が付着して記録用紙が汚れる可能性を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-196191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の吐出ヘッドでは、ノズル面に付着した液滴が記録用紙に付着しにくくすることはできるが、ノズル面に付着した液滴がノズル面を伝って移動して、ノズル内に浸入し得る。ノズル内に液滴が浸入すると、ノズルのメニスカス形状が変化してしまうため、吐出不良などの不具合が生じる。
【0006】
本発明の目的は、ノズル面に付着した液滴がノズル内に浸入しにくくすることができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドは、水平面に対して傾斜したノズル面であって、前記ノズル面に沿った第1方向に並んでおり且つそれぞれ液体を吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を備えており、前記ノズル面には、第1領域と前記第1領域に比べて撥液性が低い第2領域とが設けられており、前記第2領域は、前記第1方向に隣り合う前記ノズル間に設けられている。
【0008】
本発明の液体吐出装置は、水平面に対して傾斜したノズル面であって、前記ノズル面に沿った第1方向に並んでおり且つそれぞれ液体を吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを前記水平面に平行な方向に移動させる移動機構と、を備え、前記ノズル面には、第1領域と前記第1領域に比べて撥液性が低い第2領域とが設けられており、前記第2領域は、前記第1方向に隣り合う前記ノズル間に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体吐出ヘッド及び液体吐出装置によると、ノズル面に付着した液滴は、比較的撥液性が高い第1領域においては、大型化し、且つ、移動しやすい。一方、ノズル面に付着した液滴は、比較的撥液性が低い第2領域においては、濡れ広がり、且つ、第2領域から移動しにくい。したがって、ノズル間に第2領域を設けたことで、ノズル面に付着した液滴が、ノズル面を伝って移動したとしても、第2領域で留まり、ノズル内に浸入しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態にかかるインクジェットヘッドを備えたプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図2図1に示すインクジェットヘッドの部分断面図である。
図3図1に示すインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図4図3のIV-IV線に沿ったノズルが形成されるプレートの断面図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図6】本発明の第3実施形態にかかるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図7】本発明の第4実施形態にかかるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図8】本発明の第5実施形態にかかるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図9】本発明の第6実施形態にかかるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図10】本発明の第7実施形態にかかるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本発明の好適な第1実施形態に係るプリンタ100(本発明の「液体吐出装置」)について、図1を参照しつつ、以下に説明する。なお、図1に示す上下方向、前後方向及び左右方向を、プリンタ100の上下方向、前後方向及び左右方向とする。前後方向及び左右方向は、水平方向に平行である。
【0012】
(プリンタ100の全体構成)
プリンタ100は、筐体9、インクジェットヘッド1(本発明の「液体吐出ヘッド」)、給送トレイ2、給送ローラ3、搬送機構4、排紙トレイ5、移動機構6、プラテン7及び制御部10を主に備えている。
【0013】
給送トレイ2は、カット紙である用紙Pを収容可能である。給送トレイ2は、筐体9の前壁に形成された開口91を介して筐体9に対して前後方向に沿って挿抜可能である。筐体9に装着された給送トレイ2は、筐体9の下部に位置している。排紙トレイ5は、画像が記録された用紙Pを受容可能である。排紙トレイ5は、筐体9の前壁に形成された開口92を介して筐体9に対して前後方向に沿って挿抜可能である。筐体9に装着された排紙トレイ5は、給送トレイ2の上方に位置している。
【0014】
給送ローラ3は、用紙Pを給送トレイ2から送り出す。給送ローラ3は、アーム3aの先端に軸支されており、図示しない給送モータの駆動により回転する。アーム3aは、支軸3bに回動自在に支持されている。アーム3aは、図示しない付勢部材により給送ローラ3が給送トレイ2の底面2aに近づくように付勢されている。制御部10の制御により給送モータが駆動されると、給送ローラ3が回転して、給送ローラ3と接触する用紙Pに対して前方から後方に向かう方向の搬送力が付与される。これにより、用紙Pが給送トレイ2から送り出される。
【0015】
給送ローラ3による用紙Pの給送方向(前方から後方に向かう方向)に関して、給送トレイ2の下流側には、分離片8が配置されている。分離片8は、給送トレイ2から用紙Pを送り出す際に重送を防ぐためのものである。分離片8は、後方側の端部が前方側の端部よりも上方に位置するように傾斜している。給送トレイ2から送り出されて分離片8に接触した用紙Pは、斜め上方に案内される。
【0016】
搬送機構4は、搬送ローラ対42、43、44、45及びガイド部材46を有している。搬送ローラ対42、43、44、45は、いずれも図示しない搬送モータの駆動により回転する駆動ローラと駆動ローラに連れ回る従動ローラとで構成されている。搬送ローラ対42、43、44、45は、制御部10の制御により図示しない搬送モータが駆動されると、用紙Pを挟持しつつ回転して用紙Pを搬送する。
【0017】
搬送ローラ対42は、分離片8の上方に位置している。搬送ローラ対42は、給送ローラ3によって給送トレイ2から送り出された後に分離片8によって斜め上方に案内される用紙Pを挟持しつつ、後方側に向けて斜め上方に搬送する。
【0018】
搬送ローラ対43は、搬送ローラ対42によって斜め上方に搬送される用紙Pを挟持しつつ、後方側に向けて斜め上方に搬送する。搬送ローラ対42によって斜め上方に搬送される用紙Pは、ガイド部材46によって前方に案内される。
【0019】
搬送ローラ対44は、ガイド部材46によって前方に案内された用紙Pを挟持しつつ前方に搬送する。搬送ローラ対45は、搬送ローラ対44によって前方に搬送された用紙Pを挟持しつつ前方に搬送し、排紙トレイ5に送り出す。
【0020】
インクジェットヘッド1は、搬送ローラ対42と搬送ローラ対43との間に配置されており、搬送ローラ対42と搬送ローラ対43との間において斜め上方に搬送される用紙Pに対して画像を記録する。インクジェットヘッド1の下面は、インクを吐出する複数のノズル21が形成されたノズル面11yとなっている(図2及び図3参照)。
【0021】
ノズル面11yは、水平面(前後方向及び左右方向の双方に平行な面)に対して傾斜している。より詳細には、ノズル面11yは、左右方向に平行である。また、ノズル面11yは、搬送ローラ対42、43によって搬送される用紙Pの搬送方向に平行であり、その前方側(搬送方向の上流側)の端部が後方側(搬送方向の下流側)の端部よりも下方に位置するように傾斜している。インクジェットヘッド1は、図示しないドライバICを有している。制御部10の制御によりドライバICが駆動されると、ノズル21からインクが吐出される。
【0022】
移動機構6は、インクジェットヘッド1が搭載されたキャリッジ61と、キャリッジ61を支持するガイドレール62a、62bとを有している。ガイドレール62a、62bは、いずれも左右方向に沿って延びている。ガイドレール62bは、ガイドレール62aよりも後方且つ上方に位置している。キャリッジ61は、制御部10の制御により図示しない移動モータが駆動されると、2本のガイドレール62a、62bに支持された状態で左右方向に移動する。インクジェットヘッド1は、キャリッジ61とともに左右方向に移動する。
【0023】
プラテン7は、インクジェットヘッド1のノズル面11yと対向して配置され、左右方向に用紙Pの全長にわたって延びている。プラテン7は、用紙Pを下方から支持する。
【0024】
プリンタ100では、搬送ローラ対42、43によって、用紙Pを搬送方向に所定距離ずつ搬送させる搬送処理と、キャリッジ61を左右方向に移動させつつ、インクジェットヘッド1の複数のノズル21からインクを吐出させる走査処理とを交互に行うことで、用紙Pに画像の記録を行う。すなわち、プリンタ100は、シリアル式である。
【0025】
制御部10は、内部バス(図示せず)を介して、給送モータ、搬送モータ、移動モータ、ドライバIC及び後述する電圧印加部53(図4参照)と接続されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。ROMには、CPUが各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。
【0026】
(インクジェットヘッド1)
次に、図2及び図3をさらに参照しつつ、インクジェットヘッド1の詳細な構成について説明する。以下の説明においては、搬送ローラ対42、43による用紙Pの搬送方向を単に「搬送方向」と称する。搬送方向は、左右方向と直交している。図3に示すように、インクジェットヘッド1のノズル面11yには、搬送方向に沿って並んだ複数のノズル21によって構成されたノズル列21aが、左右方向に2列並んでいる。また、図2に示すように、インクジェットヘッド1は、流路部材11及び圧電アクチュエータ12などを備えている。
【0027】
流路部材11は、上下方向に積層されかつ互いに接着された4枚のプレート11a~11dで構成されている。流路部材11内には、複数の個別流路20及びマニホールド30が形成されている。各プレート11a~11dには、これら個別流路20及びマニホールド30を構成する貫通孔が形成されている。
【0028】
マニホールド30は、プレート11cに形成された貫通孔で構成されており、搬送方向に沿って延びている。マニホールド30は、図示しないインクタンクに連通している。複数の個別流路20は、ノズル21、圧力室22、接続流路23及び連通孔24をそれぞれ有している。マニホールド30は、複数の個別流路20に共通して設けられている。
【0029】
ノズル21は、プレート11dに形成された貫通孔で構成され、流路部材11の下面であるノズル面11yに開口している。圧力室22は、プレート11aに形成された貫通孔で構成され、流路部材11の上面11xに開口している。圧力室22は、左右方向の一方側の端部に接続流路23が接続されており、左右方向の他方側の端部に連通孔24が接続されている。圧力室22は、ノズル21及びマニホールド30と連通している。
【0030】
接続流路23は、上下方向に沿って延びており、ノズル21と圧力室22とを互いに接続している。接続流路23は、プレート11b及びプレート11cにそれぞれ形成された貫通孔で構成されている。連通孔24は、マニホールド30と圧力室22とを互いに接続している。連通孔24は、プレート11bに形成された貫通孔で構成されている。
【0031】
図示しないインクタンクからマニホールド30に送り込まれたインクは、マニホールド30内を搬送方向の一方側から他方側に向かって移動しつつ、各個別流路20に供給される。個別流路20に供給されたインクは、連通孔24を通って圧力室22に流入し、圧力室22内を略水平に移動して、接続流路23に流入する。接続流路23に流入したインクは、下方に移動してノズル21から吐出される。
【0032】
(圧電アクチュエータ12)
圧電アクチュエータ12は、図2に示すように、振動板12aの上面において、複数の圧力室22にそれぞれ対応して配置された複数の圧電素子12xを備えている。振動板12aの上面には、複数の圧力室22に跨って共通電極12b及び圧電層12cが形成されている。圧電層12cの上面には、複数の圧力室22にそれぞれ対応した複数の個別電極12dが形成されている。
【0033】
以上の構成において、1つの個別電極12dと、共通電極12bにおける1つの圧力室22に対向する部分と、圧電層12cにおける1つの圧力室22と対向する部分とによって、1つの圧電素子12xが構成されている。
【0034】
共通電極12b及び複数の個別電極12dは、図示しない配線部材を介して図示しないドライバICに接続されている。ドライバICは、共通電極12bの電位をグランド電位に維持する。また、ドライバICは、個別電極12dに駆動信号を供給し、個別電極12dの電位を所定の駆動電位とグランド電位との間で変化させる。これにより、振動板12a及び圧電素子12xにおいて共通電極12bと個別電極12dとで挟まれた部分が、圧力室22に向けて凸となるように変形する。この変形によって、圧力室22の容積が小さくなって圧力室22内のインクの圧力が上昇し、圧力室22に連通するノズル21からインクが吐出される。
【0035】
(ノズル面11y)
ここで、図4をさらに参照しつつ、ノズル面11yについてより詳細に説明する。図4に示すように、ノズル21が形成されるプレート11dの下面であるノズル面11yには、撥液膜51が形成されている。プレート11dは、ガラスセラミックスなどの絶縁体で形成されている。撥液膜51は、例えば有機分子からなる有機薄膜である。また、撥液膜51は、フッ素コーティングや、主に炭素と水素で構成される薄膜(DLC(Diamond-Like Carbon))などであってもよい。
【0036】
図3に示すように、ノズル面11yには、低撥液パターン71(本発明の「第2領域の第2部分」)が設けられている。低撥液パターン71は、左右方向に沿って延びており、搬送方向に関して隣り合うノズル21間を通る。後述する電圧印加部53による電極対52への電圧の印加が行われていない状態では、ノズル面11yにおける低撥液パターン71が設けられている領域は、低撥液パターン71が設けられていない領域に比べて撥液性が低くなっている。すなわち、後述する電圧印加部53による電極対52への電圧の印加が行われていない状態では、ノズル面11yにおける低撥液パターン71が設けられていない領域は、本発明の第1領域に相当する高撥液領域70である。
【0037】
低撥液パターン71は、ドライエッチングやウェットエッチングにより撥液膜51を部分的に除去するか、撥液膜51を形成する際にマスキングを行い、撥液膜51が部分的に形成されないようにすることで形成された凹部である。また、低撥液パターン71は、撥液膜51に対してレーザやプラズマにより表面改質を行うことで形成してもよい。また、低撥液パターン71は、撥液膜51上にハフニウム(HfO2)やSiO2などを塗布することで形成してもよい。
【0038】
ノズル面11yに付着したインク滴は、低撥液パターン71が設けられている領域以外の比較的撥液性が高い領域においては、重力やインクジェットヘッド1の左右方向への移動の加速度により移動しやすい。一方、低撥液パターン71が設けられている比較的撥液性低い領域においては、インク滴は濡れ広がり、且つ、低撥液パターン71が設けられている領域から移動しにくい。したがって、ノズル面11yに付着したインク滴は、低撥液パターン71が設けられている領域に集まる。
【0039】
図3及び図4に示すように、ノズル面11yと撥液膜51との間には、搬送方向に沿って延びる3本の電極52a、52b、52cが配置されている。電極52a、52b、52cは、左右方向の一方側からこの順で左右方向に等間隔で並んでいる。電極52aは、左右方向に関して、左右方向の一方側に位置するノズル列21aの一方側に位置している。電極52bは、2つのノズル列21aの間に位置している。電極52cは、左右方向に関して、左右方向の他方側に位置するノズル列21aの他方側に位置している。図4に示すように、電極52a、52b、52cは、電圧印加部53に接続されている。
【0040】
電圧印加部53は、制御部10の制御により、3つの電極52a、52b、52cのうち左右方向に隣り合う一対の電極対52に電圧を印加する。すなわち、電圧印加部53は、電極52a、52bからなる電極対52、又は、電極52b、52cからなる電極対52に電圧を印加する。電圧印加部53は、電極対52を構成する電極のうち左右方向の一方側に位置する電極がプラスとなり、左右方向の他方側に位置する電極がマイナスとなるように電圧を印加する。すなわち、電極52a、52bからなる電極対52に電圧を印加する際には、電極52aがプラスとなり、電極52bがマイナスとなるように電圧を印加する。また、電極52b、52cからなる電極対52に電圧を印加する際には、電極52bがプラスとなり、電極52cがマイナスとなるように電圧を印加する。
【0041】
ここで、撥液膜51は、電圧の印加により生じる電位差に基づいて電気化学的に濡れ性が変化する。本実施形態においては、撥液膜51の濡れ性は、付着するインク滴に対して印加電圧のプラス側の撥液性がマイナス側の撥液性よりも高くなるように変化することとする。撥液膜51の濡れ性は、付着するインク滴に対して印加電圧のプラス側の撥液性がマイナス側の撥液性よりも低くなるように変化してもよい。
【0042】
電極52a、52bからなる電極対52に対して、電極52aがプラスとなり電極52bがマイナスとなるように電圧を印加した場合には、ノズル面11yにおける電極52aと電極52bとの間の領域の撥液性は、電極52a側の端部が最も高く、左右方向に電極52b側に向かうほど低くなる。また、ノズル面11yにおける電極52aと電極52bとの間の領域の中で、左右方向の他方側の端部の領域(電極52bが設けられている領域)の撥液性は、当該領域に対して左右方向の他方側において当該領域と隣接する領域の撥液性よりも低くなる。
【0043】
すなわち、図3に示すように、ノズル面11yにおける電極52bが設けられている領域、すなわちノズル面11yにおいて左右方向に隣り合う2つのノズル列21a間において搬送方向に沿って延びる領域は、隣接する領域に比べて撥液性が低い低撥液領域72(本発明の「第2領域の第1部分」)となる。低撥液領域72は、低撥液パターン71と直交している。電極52a、52bからなる電極対52に対して電圧が印加されているとき、ノズル面11yにおいて低撥液パターン71が形成されておらず、且つ、電圧が印加されていない領域は、隣接する領域に対して撥液性が高い高撥液領域70であり、本発明の第1領域に相当する。
【0044】
このとき、ノズル面11yにおいて低撥液パターン71が形成されている領域に集まったインク滴は、ノズル面11yにおける電極52aと電極52bとの間の領域において、電極52a側の端部から電極52b側の端部に向かって左右方向に移動する。
【0045】
同様に、電極52b、52cからなる電極対52に対して、電極52bがプラスとなり電極52cがマイナスとなるように電圧を印加した場合には、ノズル面11yにおける電極52cが設けられている領域、すなわち2つのノズル列21aのうち左右方向の他方側に位置するノズル列21aよりも左右方向の他方側において搬送方向に沿って延びる領域は、その他の領域に比べて撥液性が低い領域となる。
【0046】
このとき、低撥液パターン71が形成されている領域に集まったインク滴は、ノズル面11yにおける電極52bと電極52cとの間の領域において、電極52b側の端部から電極52c側の端部に向かって左右方向に移動する。
【0047】
したがって、電極52a、52bからなる電極対52に対して、電極52aがプラスとなり電極52bがマイナスとなるように電圧を印加した後に、電極52b、52cからなる電極対52に対して、電極52bがプラスとなり電極52cがマイナスとなるように電圧を印加することで、低撥液パターン71が形成されている領域に集まったインク滴を、左右方向に関して電極52aが設けられた領域から電極52cが設けられた領域まで移動させることができる。
【0048】
(第1実施形態の特徴)
以上のように、上述の実施形態にかかるインクジェットヘッド1は、水平面に対して傾斜したノズル面11yであって、搬送方向に並んでおり且つそれぞれインクを吐出する複数のノズル21が形成されたノズル面11yを備えている。ノズル面11yには、高撥液領域70と高撥液領域70に比べて撥液性が低い低撥液パターン71が設けられており、低撥液パターン71は、搬送方向に隣り合うノズル21間に設けられている。
【0049】
上述の構成によると、ノズル面11yに付着したインク滴は、比較的撥液性が高い高撥液領域70においては、大型化し、且つ、移動しやすい。一方、ノズル面11yに付着したインク滴は、比較的撥液性が低い低撥液パターン71が設けられた領域においては、濡れ広がり、且つ、低撥液パターン71が設けられた領域から移動しにくい。したがって、ノズル21間に低撥液パターン71を設けたことで、ノズル面11yに付着したインク滴が、ノズル面11yを伝って移動したとしても、低撥液パターン71が設けられた領域で留まり、ノズル21内に浸入しにくい。具体的には、例えば搬送方向の最も下流側に位置するノズル21の付近に付着したインク滴が、当該ノズル21と搬送方向に隣り合うノズル21との間に設けられた低撥液パターン71により、当該ノズル21と搬送方向に隣り合うノズル21に移動しづらくすることができる。したがって、当該ノズル21と搬送方向に隣り合うノズル21のメニスカス形状が安定するので、吐出に悪影響が及ぶことがない。
【0050】
また、上述の実施形態のインクジェットヘッド1では、ノズル面11yには、搬送方向に並ぶ複数のノズル21によってそれぞれ構成される2つのノズル列21aが、搬送方向と直交する左右方向に配列されている。そして、左右方向に隣り合うノズル列21a間に、高撥液領域70に比べて撥液性が低い低撥液領域72が設けられている。したがって、ノズル面11yに付着したインク滴の、ノズル列21a内の移動のみならず、ノズル列21a間の移動をも、抑制することができる。よって、ノズル面11yに付着したインク滴のノズル21内への浸入をより確実に抑制できる。
【0051】
さらに、上述の実施形態のインクジェットヘッド1では、低撥液領域72は、左右方向に隣り合うノズル列21a間において搬送方向に沿って延びており、低撥液パターン71は、低撥液領域72と直交し、搬送方向に隣り合うノズル21間を通る。この場合、低撥液パターン71と低撥液領域72とが交わらずに点在する場合に比べ、インク滴を低撥液パターン71と低撥液領域72とにおいて移動させ、所定箇所に集約することができる。
【0052】
加えて、上述の実施形態のインクジェットヘッド1は、高撥液領域70を構成する撥液膜51と、ノズル面11yと撥液膜51との間に配置され、搬送方向に沿って延びる電極対52と、電極対52のそれぞれに電圧を印加する電圧印加部53と、を有している。電圧印加部53によって電極対52の間に電位差を生じさせることにより、低撥液領域72が形成され、低撥液パターン71は、撥液膜51に形成されている。このように、低撥液領域72を電極対52で形成することで、電位差によりノズル面11yの撥液性を制御し、ノズル面11yに付着したインク滴を移動させることができる。
【0053】
加えて、上述の実施形態のプリンタ100は、インクジェットヘッド1を左右方向に移動させる移動機構6を備えている。インクジェットヘッド1は、そのノズル面11yが水平面に対して傾斜しており、且つ、水平面に平行な方向に移動するので、ノズル面11yに付着したインク滴は、重力及びインクジェットヘッド1の移動の加速度により移動する。本実施形態の構成では、ノズル面11yに付着したインク滴が、重力及びインクジェットヘッド1の移動の加速度により移動したとしても、ノズル21内に浸入しにくくすることができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態にかかるインクジェットヘッド101について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド101は、ノズル面111yに設けられる低撥液パターン171と低撥液領域172との配置が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0055】
低撥液パターン171は、ノズル面111yにおいて左右方向に隣り合う2つのノズル列21a間において搬送方向に沿って延びている。すなわち、本実施形態においては、低撥液パターン171が本発明の「第2領域の第1部分」に相当する。
【0056】
インクジェットヘッド101においては、ノズル面111yと撥液膜51との間に、左右方向に沿って延びており、搬送方向に隣り合うノズル21間を通る電極152a~152gが配置されている。電圧印加部53は、7個の電極152a~152gのうち搬送方向に隣り合う一対の電極対152に電圧を印加する。電圧印加部53により一対の電極対152に電圧を印加することで、ノズル面111yにおいて当該電極対152を構成する2つの電極のうちの一方が設けられている領域が、隣接する領域に比べて撥液性が低い低撥液領域172となる。すなわち、低撥液領域172は、左右方向に沿って延びており、搬送方向に隣り合うノズル21間を通る領域であり、本発明の「第2領域の第2部分」に相当する。
【0057】
(第2実施形態の特徴)
本実施形態においては、搬送方向に隣り合うノズル21間に低撥液領域172が設けられるので、第1実施形態と同様に、ノズル面111yに付着したインク滴が、ノズル21内に浸入しにくい。
【0058】
<第3実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第3実施形態にかかるインクジェットヘッド201について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド201は、ノズル面211yに設けられる低撥液パターン271の配置が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0059】
低撥液パターン271は、左右方向に隣り合うノズル列21a間において搬送方向に沿って延びる第1部分271a(本発明の「第2領域の第1部分」)と、第1部分271aと直交し、搬送方向に隣り合うノズル21間を通る第2部分271b(本発明の「第2領域の第2部分」)と、を有する。なお、本実施形態においては、第1実施形態において設けられていた電極52a、52b、52c及び電圧印加部53に相当するものは設けられていない。
【0060】
(第3実施形態の特徴)
本実施形態においては、搬送方向に隣り合うノズル21間に低撥液パターン271の第2部分271bが設けられているので、第1実施形態と同様に、ノズル面211yに付着したインク滴が、ノズル21内に浸入しにくい。
【0061】
<第4実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本発明の第4実施形態にかかるインクジェットヘッド301について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド301は、ノズル面311yに設けられる低撥液パターン371の配置が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0062】
低撥液パターン371は、第1パターン371a及び第2パターン371bを有している。第1パターン371aは、2つのノズル列21aのうち左右方向の一方側に位置するノズル列21aにおいて搬送方向に関して隣り合うノズル21間を通る。第2パターン371bは、2つのノズル列21aのうち左右方向の他方側に位置するノズル列21aにおいて搬送方向に関して隣り合うノズル21間を通る。
【0063】
第1パターン371aは、左右方向の他方側の端部が一方側の端部よりも搬送方向の上流側に位置するように、左右方向及び搬送方向の双方に交差する斜め方向に延びている。第1パターン371aの左右方向の他方側の端部は、電極52bが配置されている領域に繋がっている。第2パターン371bは、左右方向の一方側の端部が他方側の端部よりも搬送方向の上流側に位置するように、左右方向及び搬送方向の双方に交差する斜め方向に延びている。第2パターン371bの左右方向の一方側の端部は、電極52bが配置されている領域に繋がっている。
【0064】
ノズル面311yは、第1実施形態と同様に、搬送方向の上流側の端部が搬送方向の下流側の端部よりも下方に位置するように傾斜している。したがって、ノズル面311yにおける第1パターン371aが設けられている領域に付着したインク滴は、重力により第1パターン371aにおける左右方向の他方側の端部に向かって移動し、電極52bが配置されている領域に至る。また、ノズル面311yにおける第2パターン371bが設けられている領域に付着したインク滴は、重力により第2パターン371bにおける左右方向の一方側の端部に向かって移動し、電極52bが配置されている領域に至る。
【0065】
(第4実施形態の特徴)
本実施形態においては、搬送方向に隣り合うノズル21間に低撥液パターン371が設けられているので、第1実施形態と同様に、ノズル面311yに付着したインク滴が、ノズル21内に浸入しにくい。
【0066】
また、低撥液パターン371の第1パターン371aと第2パターン371bとに付着したインク滴を、電極52bが配置されている領域に集めることができる。そして、電極52bが配置されている領域に集めたインク滴を、各電極52a、52b、52cの電位を制御することで移動させることができる。
【0067】
<第5実施形態>
次に、図8を参照しつつ、本発明の第5実施形態にかかるインクジェットヘッド401について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド401は、ノズル面411yに設けられる低撥液パターン471の配置が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0068】
低撥液パターン471は、複数のノズル21をそれぞれ環状に取り囲む。環状の低撥液パターン471の中心は、ノズル21の中心と一致している。
【0069】
(第5実施形態の特徴)
本実施形態においては、搬送方向に隣り合うノズル21間に低撥液パターン471が設けられているので、第1実施形態と同様に、ノズル面211yに付着したインク滴が、ノズル21内に浸入しにくい。また、低撥液パターン471がノズル21を環状に取り囲んでいるので、ノズル面411yに付着したインク滴が、どの方向からノズル21に近づこうとも、ノズル21内に浸入するのを抑制することができる。
【0070】
<第6実施形態>
次に、図9を参照しつつ、本発明の第6実施形態にかかるインクジェットヘッド501について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド501は、ノズル面511yに形成されたノズル521の配置及び低撥液パターン571の配置が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0071】
ノズル面511yには、搬送方向に沿って並んだ複数のノズル521によって構成されたノズル列521aが、左右方向に8列並んでいる。8列のノズル列521aのうち、左右方向の一方側に位置する4列のノズル列521aに含まれるノズル521と、他方側に位置する4列のノズル列521aに含まれるノズル521とは、吐出するインクの色が異なる。
【0072】
同色のインクに対応する4列のノズル列521aは、各ノズル列521aに含まれるノズル521の搬送方向における位置が異なっている。ノズル列521a内におけるノズル521間のピッチは、ノズル列521a間で同一である。同色のインクに対応する4列のノズル列521aは、左右方向の他方側に位置するノズル列521aほど、ノズル列521aに含まれる各ノズル521の位置が搬送方向の上流側に位置している。
【0073】
低撥液パターン571は、第1部分571aと第2部分571bとを有している。第1部分571aは、搬送方向に沿って延びており、8列のノズル列521aのうち中央に位置する2列のノズル列521a、すなわち互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズル521で構成された2列のノズル列521aの間に設けられている。低撥液パターン571の第1部分571aは、本発明の「第2領域の第1部分」に相当する。
【0074】
第2部分571bは、第1部分571aと交差し、搬送方向に隣り合うノズル521間を通る。第2部分571bは、左右方向の他方側の端部が一方側の端部よりも搬送方向の上流側に位置するように、左右方向及び搬送方向の双方に交差する斜め方向に延びている。低撥液パターン571の第2部分571bは、本発明の「第2領域の第2部分」に相当する。
【0075】
(第6実施形態の特徴)
本実施形態においては、搬送方向に隣り合うノズル521間に低撥液パターン571の第2部分571bが設けられているので、第1実施形態と同様に、ノズル面511yに付着したインク滴が、ノズル521内に浸入しにくい。
【0076】
また、低撥液パターン571の第1部分571aが、互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズル521で構成された2列のノズル列521aの間に設けられているので、異なる種類のインクが混ざるのを抑制することができる。
【0077】
<第7実施形態>
次に、図10を参照しつつ、本発明の第7実施形態にかかるインクジェットヘッド601について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド601は、ノズル面611yに形成されたノズル621の配置及び低撥液パターン671の配置が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0078】
ノズル面611yには、搬送方向に沿って並んだ複数のノズル621によって構成されたノズル列621aが、左右方向に2列並んでいる。2列のノズル列621aに含まれる複数のノズル21は、搬送方向に沿って千鳥状に配置されている。ノズル列621a内におけるノズル621間のピッチは、ノズル列621a間で同一である。左右方向の他方側に位置するノズル列621aに含まれる各ノズル621は、一方側に位置するノズル列621aに含まれる各ノズル21よりも搬送方向の上流側に位置している。
【0079】
搬送方向に並ぶ複数のノズル621は、互いに異なる色のインクを吐出する第1ノズル622a、第2ノズル622b及び第3ノズル622cを含んでいる。各ノズル列621aに含まれるノズル621のうち、搬送方向の下流側に位置する所定個数のノズル621が第1ノズル622aである。各ノズル列621aに含まれるノズル621のうち、搬送方向の上流側に位置する所定個数のノズル621が第3ノズル622cである。各ノズル列621aに含まれるノズル621のうち、第1ノズル622aと第3ノズル622cとの間に位置する所定個数のノズルが第2ノズル622bである。
【0080】
低撥液パターン671は、第1ノズル622aと第2ノズル622bとの間、及び、第2ノズル622bと第3ノズル622cとの間に設けられている。低撥液パターン671は、左右方向及び搬送方向の双方に交差する斜め方向に延びている。低撥液パターン671における左右方向の一方側の端部は、他方側の端部よりも搬送方向の下流側に位置している。
【0081】
(第7実施形態の特徴)
本実施形態においては、搬送方向に隣り合うノズル621間に低撥液パターン671が設けられているので、第1実施形態と同様に、ノズル面611yに付着したインク滴が、ノズル621内に浸入しにくい。
【0082】
また、低撥液パターン671が、互いに異なる色のインクを吐出する第1ノズル622aと第2ノズル622bとの間、及び、第2ノズル622bと第3ノズル622cとの間に設けられているので、異なる種類のインクが混ざるのを抑制することができる。
【0083】
さらに、ノズル621の千鳥状配置に合わせて低撥液パターン671を斜め方向に形成することで、ノズル621と低撥液パターン671とのピッチを均等にできる。これにより、各ノズル621へのインク滴の侵入を均等に抑制できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0085】
上述の第1実施形態においては、ノズル面11yは、左右方向に平行であり、且つ、前後方向に対して傾斜している場合について説明したが、これには限定されない。ノズル面11yは、左右方向に対して傾斜しており、且つ、前後方向に平行であってもよいし、左右方向及び前後方向の双方に対して傾斜していてもよい。
【0086】
また、上述の第1実施形態においては、ノズル21が形成されるプレート11dが絶縁体で形成されている場合について説明したが、プレート11dは導体で形成されていてもよい。プレート11dが導体で形成されている場合には、電極52a、52b、52cの相互間の電気的絶縁を保つために、プレート11dと撥液膜51との間に絶縁膜を設け、絶縁膜と撥液膜51との間に電極52a、52b、52cを配置する。
【0087】
さらに、上述の第1及び第2実施形態においては、低撥液パターン71(171)と低撥液領域72(172)とが交差している場合について説明したが、低撥液パターン71(171)と低撥液領域72(172)とは、点在しており交差していなくてもよい。また、第3及び第6実施形態においては、低撥液パターン271(571)の第1部分271a(571a)と第2部分271b(571b)とが交差している場合について説明したが、これら第1部分271a(571a)と第2部分271b(571b)とは、点在しており交差していなくてもよい。
【0088】
加えて、上述の第6実施形態においては、低撥液パターン571の第1部分571aが、互いに異なる色のインクに対応する2列のノズル列521aの間に設けられている場合について説明したが、これには限定されない。低撥液パターン571の第1部分571aは、互いに異なる色のインクに対応する2列のノズル列521aの間に設けられておらず、同色のインクに対応する2列のノズル列521aの間に設けられていてもよい。
【0089】
また、上述の第7実施形態においては、低撥液パターン671が、ノズル621の千鳥状配置に合わせて斜めに形成されている場合について説明したが、これには限定されない。低撥液パターン671は、左右方向に沿って延びていてもよい。
【0090】
また、上述の第7実施形態においては、低撥液パターン671が、互いに異なる色のインクを吐出する第1ノズル622aと第2ノズル622bとの間、及び、第2ノズル622bと第3ノズル622cとの間に設けられている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、低撥液パターン671は、第1ノズル622aと第2ノズル622bとの間や第2ノズル622bと第3ノズル622cとの間に設けられておらず、同色のインクと吐出するノズル621の間に設けられていてもよい。
【0091】
さらに、上述の実施形態においては、ピエゾ方式の圧電アクチュエータ12を採用しているが、圧電アクチュエータ12に替えて、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のアクチュエータを採用してもよい。
【0092】
プリンタ100の記録形式は、シリアル式に限定されず、用紙Pの幅方向に長尺であり、且つ、位置が固定されたヘッドのノズルからインクを吐出するライン式であってもよい。
【0093】
ノズル21から吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。また、吐出対象は、用紙Pに限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0094】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 インクジェットヘッド
6 移動機構
11y ノズル面
21 ノズル
21a ノズル列
51 撥液膜
52 電極対
53 電圧印加部
70 高撥液領域(第1領域)
71 低撥液パターン(第2領域;第2部分)
72 低撥液領域(第2領域;第1部分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10