(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170259
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221102BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221102BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20221102BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20221102BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20221102BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221102BHJP
H01M 8/065 20160101ALI20221102BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20221102BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221102BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221102BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/249
H01M8/2475
H01M8/0606
H01M8/0662
H01M8/00 A
H01M8/04 Z
H01M8/065
H01M50/251
H01M50/249
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076280
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(71)【出願人】
【識別番号】712006374
【氏名又は名称】CONNEXX SYSTEMS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 丈士
(72)【発明者】
【氏名】上原 和也
(72)【発明者】
【氏名】塚本 壽
【テーマコード(参考)】
5H040
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AS02
5H040AS04
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA16
5H127BA18
5H127BA33
5H127BB02
(57)【要約】
【課題】発電効率に優れ、燃料ガスによる発電及び蓄電が可能な小型の燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、第1燃料電池4と、第2燃料電池5と、第1燃料電池4及び第2燃料電池5を収容するケース1と、を備える。第1燃料電池4は、還元性ガスが供給される第1燃料極401aと、酸素が供給される第1空気極401bと、第1燃料極401a及び第1空気極401bの間に介在して第1空気極401bに供給された酸素イオンを第1燃料極401aに透過させる第1固体電解質401cと、を有して電力を発生させるセル401を備える。第2燃料電池5は、セル401と同様の構成と、酸化ガスと反応して還元性ガスを生成して自らは酸化物となる負極燃料物質体505と、を有して電力を貯留させるセルを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料電池と、
第2燃料電池と、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池を収容するケースと、を備え、
前記第1燃料電池は、
還元性ガスが供給される第1燃料極と、
酸素が供給される第1空気極と、
前記第1燃料極及び前記第1空気極の間に介在して前記第1空気極に供給された酸素イオンを前記第1燃料極に透過させる第1固体電解質と、
を有して電力を発生させるセルを備え、
前記第2燃料電池は、
還元性ガスが供給される第2燃料極と、
酸素が供給される第2空気極と、
前記第2燃料極及び前記第2空気極の間に介在して前記第2空気極に供給された酸素イオンを前記第2燃料極に透過させる第2固体電解質と、
酸化ガスと反応して前記還元性ガスを生成して自らは酸化物となる負極燃料物質体と、
を有して電力を貯留させるセルを備える、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
燃料ガスから還元性ガスを取り出す改質器をさらに備え、
前記第1燃料電池の前記第1燃料極には、前記改質器により取り出された還元性ガスが供給される、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
燃料ガスから硫黄成分を除去する脱硫器をさらに備え、
前記改質器は、前記脱硫器により硫黄成分が除去された燃料ガスから前記還元性ガスを取り出す、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池の前記第1燃料極及び前記第2燃料電池の前記第2燃料極には、前記改質器により取り出された還元性ガスが供給される、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池と電気的に接続される二次電池をさらに備える、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第2燃料電池と電気的に接続される自然エネルギー発電器をさらに備える、燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第2燃料電池は、前記第2燃料極及び前記負極燃料物質体が密閉空間に配置され、
前記第1燃料電池の排出ガスにより前記密閉空間が加熱される、燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池の排出ガスが前記第2燃料電池の前記密閉空間に供給される、燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池の上方に前記第2燃料電池が配置されている、燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池は、複数の第1燃料電池スタックを備え、
前記第2燃料電池は、複数の第2燃料電池スタックを備え、
前記複数の第1燃料電池スタックと前記複数の第2燃料電池スタックとが上下方向に交互に配置されている、燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池は、燃料ガスから前記還元性ガスを取り出す改質機能を内蔵している、燃料電池システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第2燃料電池は、放電時に、
前記第2燃料極が前記還元性ガスを酸化ガスに酸化し、
前記第2空気極が酸素を酸素イオンに還元し、
前記負極燃料物質体が前記酸化ガスと反応して前記還元性ガスを生成して自らは酸化物となり、
前記第2燃料電池は、充電時に、
前記第2燃料極が前記酸化ガスを前記還元性ガスに還元し、
前記第2空気極が酸素イオンを酸素に酸化し、
前記負極燃料物質体の酸化物が前記還元性ガスと可逆的に反応して前記酸化ガスを生成して自らは負極燃料物質体となる、燃料電池システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記負極燃料物質体は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニ
ウム、ケイ素、亜鉛、鉄、鉛、錫、ニッケル及び炭素、ならびにこれらの1種以上の元
素を主体とする物質からなる群から選択される少なくとも1種の物質である、燃料電池システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記ケースは、
空気を取り込む少なくとも一つの吸気口と、
前記少なくとも一つの吸気口と前記第1燃料電池の前記第1空気極を接続する流路と、
前記少なくとも一つの吸気口と前記第2燃料電池の前記第2空気極を接続する流路と、を備える、燃料電池システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池は、電気的に接続される、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを改質して得られた水素が供給される燃料極と、空気中の酸素が供給される空気極と、燃料極及び空気極の間に介在して空気極で生成された酸素イオンを燃料極に透過させる電解質とを有して電力を発生させるセルを有する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素や炭化水素などを燃料とし、酸素と電気化学反応させることで電力を発生させる燃料電池システムはエネルギー変換効率が高いことが知られており、近年において、種々形態の燃料電池システムが提案されている。ただし、炭化水素を燃料とした場合は、炭化水素から水素を生成する改質反応が必要となり、炭化水素を水と反応させる水蒸気改質により水素を作ることが行われている。この水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、600℃以上の温度が必要となり、常に600℃以上の熱を供給し続ける必要がある。特に、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)と称される燃料電池は、600℃以上の温度で運転され、発電で生じる温度と燃料である炭化水素から水素を生成する改質反応の温度が近似していることから、燃料電池の排熱を利用して炭化水素から水素を生成(改質反応)することが可能とされており、発電効率がより高いものとされている。
【0003】
したがって、従来の固体酸化物型燃料電池では、別個に気化器と改質器が装着されており、外部から水を供給して都市ガスなどの炭化水素から水素を製造し、燃料電池に供給し発電している。その際、発電時に生じた水を再利用し、発電効率を向上させる試みが検討されている。例えば、特許文献1には、燃料極に供給される燃料ガスの流通経路に配設された通気性及び可撓性を有したシート状部材から成るとともに、セルによる発電に伴って燃料極で生じる水蒸気を保持して燃料ガスに混合させる水蒸気保持手段を具備する燃料供給型の燃料電池システムが記載されている。
【0004】
一方で、固体酸化物型燃料電池として独立型の固体酸化物型燃料電池が知られている。例えば、特許文献2には、水素と酸素と電気化学反応させることで電力を発生させる燃料電池システムにおいて、発電により生成される水(水蒸気)と反応して水素を生成し、自らは酸化物となる負極燃料物質体と、負極燃料物質体を所定の温度以上に加熱維持するための加熱部と、を有して電力を貯留させるセルを備える独立型の燃料電池システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6524309号
【特許文献2】特許第5210450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の燃料供給型の燃料電池システムは、燃料ガスによる発電が可能であるが、単体では蓄電ができない。これに対して、燃料供給型の燃料電池システムに二次電池を組み合わせることが考えられる。しかしながら、燃料供給型の燃料電池システムの運転温度は高温であるため、燃料供給型の燃料電池システムと二次電池とを一つのケースに収容しようとすると燃料電池システムの排熱から二次電池を保護するための断熱構造等が必要となり、装置が大型化するという問題がある。
【0007】
また、独立型の燃料電池システムで蓄電するためには高温で動作させる必要があり、加熱のためにエネルギーを供給する必要があった。
【0008】
本発明は、発電効率に優れ、燃料ガスによる発電及び蓄電が可能な小型の燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
第1燃料電池と、
第2燃料電池と、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池を収容するケースと、を備え、
前記第1燃料電池は、
還元性ガスが供給される第1燃料極と、
酸素が供給される第1空気極と、
前記第1燃料極及び前記第1空気極の間に介在して前記第1空気極に供給された酸素イオンを前記第1燃料極に透過させる第1固体電解質と、
を有して電力を発生させるセルを備え、
前記第2燃料電池は、
還元性ガスが供給される第2燃料極と、
酸素が供給される第2空気極と、
前記第2燃料極及び前記第2空気極の間に介在して前記第2空気極に供給された酸素イオンを前記第2燃料極に透過させる第2固体電解質と、
酸化ガスと反応して前記還元性ガスを生成して自らは酸化物となる負極燃料物質体と、
を有して電力を貯留させるセルを備える、燃料電池システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発電効率に優れ、燃料ガスによる発電及び蓄電が可能な小型の燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の燃料電池システムの第1実施形態である燃料電池システム10を示す図である。
【
図2】
図1に示した第1燃料電池4の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示した第1燃料電池4の平面図及び正面図である。
【
図4】
図2に示した第1燃料電池4のIII-III線断面図である。
【
図5】
図2に示した第1燃料電池4におけるセルを示す断面図である。
【
図6】
図2に示した第1燃料電池4を示す分解斜視図である。
【
図7】
図1に示した第2燃料電池5の一例を示す図である。
【
図8】
図7に示した第2燃料電池5の横方向のA-A断面を示す図である。
【
図9】
図7に示した第2燃料電池5の動作説明図である。
【
図10】本発明の燃料電池システムの第2実施形態である燃料電池システム10Aを示す図である。
【
図11】本発明の燃料電池システムの第3実施形態である燃料電池システム10Bを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の燃料電池システムの各実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
<本発明の燃料電池システムの第1実施形態である燃料電池システム10>
図1を参照して、本発明の燃料電池システムの第1実施形態である燃料電池システム10について説明する。燃料電池システム10は、一例としては家庭用発電機として利用することができる。
図1に示すように、燃料電池システム10は、ケース1と、脱硫器2と、改質器3と、第1燃料電池4と、第2燃料電池5と、を備える。脱硫器2、改質器3、第1燃料電池4、及び第2燃料電池5は、同一のケース1に収容されている。
【0014】
ケース1は、ケース1の内部と外部とが熱的に分離されるように、断熱性を有する部材により形成される。また、図示を省略するが、ケース1には、ケース1の外部から空気を取り込む吸気口や、ケース1の外部から燃料ガスを取り込む吸気口が設けられる。
【0015】
また、図示を省略するが、ケース1には、ケース1の内部の余剰の空気をケース1の外部へ排出する排気口や、第1燃料電池4及び第2燃料電池5からの排出ガスをケース1の外部へ排出する排気口が設けられる。
【0016】
脱硫器2は、ケース1の吸気口から供給される燃料ガスから硫黄成分を除去し、硫黄成分を除去した燃料ガスを改質器3へ供給する。改質器3は、脱硫器2から供給された燃料ガスから水素を取り出し、取り出した水素を第1燃料電池4へ供給する。水素は、本発明において還元性ガスの一例である。
【0017】
第1燃料電池4は、供給された燃料ガスを用いて発電を行う燃料供給型の燃料電池である。具体的には、第1燃料電池4は、固体電解質を有し、水素及び酸素を用いて発電する固定酸化物型の燃料電池である。第1燃料電池4が発電に用いる水素及び酸素は、第1燃料電池4の外部から供給される。第1燃料電池4の外部から供給される水素は、本実施形態においては改質器3から供給される水素である。第1燃料電池4の外部から供給される酸素は、本実施形態においてはケース1の吸気口から供給される空気に含まれる酸素である。
【0018】
第1燃料電池4の発電で生じる熱により、動作中の第1燃料電池4は高温(例えば600℃以上)になる。第1燃料電池4の高温の排熱は、例えばケース1の内部の空気を介した熱移動によって第2燃料電池5や改質器3に伝わる。また、第1燃料電池4の高温の排熱を第2燃料電池5や改質器3に導くダクトや、第1燃料電池4の熱を第2燃料電池5や改質器3に移動させるヒートパイプ等をケース1に設けてもよい。第1燃料電池4の構成については
図2~
図6において後述する。
【0019】
第2燃料電池5は、燃料ガスが供給されなくても発電が可能な独立型の燃料電池である。第2燃料電池5は、固体電解質を有し、水素及び酸素を用いて発電する固定酸化物型の燃料電池であるとともに、酸化物となる負極燃料物質体を有し、電力を貯留可能な高温作動型空気蓄電池である。第2燃料電池5が発電に用いる酸素は、第2燃料電池5の外部から供給される。第2燃料電池5の外部から供給される酸素は、本実施形態においてはケース1の吸気口から供給される空気に含まれる酸素である。第2燃料電池5が発電に用いる水素は、第2燃料電池5の負極燃料物質体が水と反応して酸化物となる際に生成される水素である。第2燃料電池5の具体例については
図7~
図9において後述する。
【0020】
第2燃料電池5においては、動作時に負極燃料物質体を高温(一例としては700℃)に保つことが求められる。この第2燃料電池5を、第1燃料電池4とともに同一のケース1に収容することにより、第1燃料電池4と第2燃料電池5との間で相互に熱が利用され、第1燃料電池4及び第2燃料電池5を効率よく動作させることができる。
【0021】
例えば、第1燃料電池4の高温の排熱を利用して第2燃料電池5の負極燃料物質体を所定の温度以上に加熱維持することができるため、第2燃料電池5の負極燃料物質体の加熱のために供給されるエネルギー(例えば電力)を低減することができる。また、第2燃料電池5の負極燃料物質体を加熱するための機構(例えば
図7,
図8に示す加熱部507)を簡素化又は省略してもよい。
【0022】
また、例えば、第1燃料電池4及び第2燃料電池5の一方をメンテナンス等で停止させる場合に、動作中の他方の燃料電池の熱により、停止させた燃料電池を保温して、停止させた燃料電池の劣化を抑制することができる。例えば、燃料電池システム10への燃料ガスの供給を停止して第1燃料電池4の動作を停止させる場合に、動作中の第2燃料電池5の熱により第1燃料電池4を保温して、第1燃料電池4を構成するセラミック等の劣化を抑制することができる。
【0023】
第1燃料電池4及び第2燃料電池5は、例えば電気的に接続される。具体的には、第1燃料電池4は、
図1では不図示の、電力の入出力を行う端子(例えば
図7に示す燃料極側端子402及び空気極側端子403)を有している。同様に、第2燃料電池5は、
図1では不図示の、電力の入出力を行う端子(例えば
図7に示す正極集電体522及び負極集電体523)を有している。
【0024】
そして、第1燃料電池4及び第2燃料電池5の各端子が互いに電気的に接続されている。本実施形態においては、第1燃料電池4及び第2燃料電池5の各端子がケース1の内部で互いに電気的に接続され、これらの各端子と電気的に接続された外部端子が、ケース1の外部に導出されている。この外部端子に、電力を使用する負荷を接続することにより、燃料電池システム10を1個の燃料電池として利用することができる。
【0025】
このような構成により、燃料電池システム10は、燃料ガスを供給して第1燃料電池4により発電することができるとともに、第2燃料電池5により蓄電も可能である。そして、第2燃料電池5は高温(一例としては700℃)で動作するものであるため、第1燃料電池4の高温の排熱から第2燃料電池5を保護する断熱構造等は不要であり、燃料電池システム10の大型化を抑制することができる。このため、燃料ガスによる発電及び蓄電が可能な小型の燃料電池システム10を実現することができる。
【0026】
さらに、上記の通り、第1燃料電池4の高温の排熱を利用して第2燃料電池5の負極燃料物質体505を加熱維持することができるため、第2燃料電池5の負極燃料物質体505の加熱のために供給されるエネルギーを低減し、第2燃料電池5における発電効率を向上させることができる。また、第2燃料電池5の負極燃料物質体505を加熱するための機構を簡素化又は省略してもよく、それにより燃料電池システム10のさらなる小型化を図ることができる。
【0027】
近年、家庭用の燃料電池システムとして、燃料電池の発熱時の排熱で貯留タンク内のお湯を温める、いわゆる家庭用燃料電池コージェネレーションシステムが知られている。この家庭用燃料電池コージェネレーションシステムでは、燃料電池の発熱時の排熱でお湯を温めるため貯留タンクが必要であり、装置が大型化してしまう。家庭用燃料電池コージェネレーションシステムは、例えば700Wの発電出力(定格)の場合、典型的には高さ1600mm~1700mm×幅350mm~450mm×奥行300mm~400mm程度である。そのため、特に空間の制約が多い都市部では設置したくても設置できない場合が生じ得る。これに対し、燃料電池システム10は、貯留タンクが不要で小型化でき、例えば、700Wの発電出力(定格)の場合、一例としては高さ800mm×幅350mm×奥行170mm程度であり、空間の制約が多い都市部でも設置することができる。
【0028】
燃料電池システム10の動作の一例について説明する。例えば、燃料電池システム10の外部端子に接続される負荷の使用電力が少ない(例えば300W)場合は、第1燃料電池4から出力される電力(例えば700W)のうち余剰な部分(例えば400W)が第2燃料電池5に供給され、第2燃料電池5が充電される。また、燃料電池システム10の外部端子に接続される負荷の使用電力が大きい(例えば800W)場合は、第1燃料電池4から出力される電力(例えば700W)と、第2燃料電池5から出力される電力(例えば100W)と、が外部負荷に出力される。
【0029】
ケース1の内部において、第2燃料電池5は、第1燃料電池4の上方(重力方向の反対)に配置されていてもよい。熱は下から上に伝わりやすいため、このような構成により、第1燃料電池4の熱が第2燃料電池5に効率よく伝わるようにすることができる。
【0030】
第1燃料電池4は、セルを複数組み合わせた複数の第1燃料電池スタックとすることができる。同様に、第2燃料電池5は、セルを複数組み合わせた複数の第2燃料電池スタックとすることができる。このような構成において、複数の第1燃料電池スタックと複数の第2燃料電池スタックとが上下方向(重力と平行な方向)に交互に配置されるようにしてもよい。一例として、下から第1燃料電池4、第2燃料電池5、第1燃料電池4、第2燃料電池5、…の順に必要数の第1燃料電池4及び第2燃料電池5がスタックされる。これにより、複数の第1燃料電池スタック及び複数の第2燃料電池スタックの各温度を均一化することができる。
【0031】
また、
図1に示すように、燃料電池システム10は、太陽光発電部6を備えていてもよい。太陽光発電部6は、本発明において自然エネルギー発電器の一例である。太陽光発電部6は、ケース1の外部に設けられており、第2燃料電池5の端子と電気的に接続されている。そして、太陽光発電部6は、受光によって発電した電力を第2燃料電池5の端子に供給する。これにより、太陽光発電部6の発電による電力を第2燃料電池5に蓄電できるので、自然エネルギーを有効に利用して、燃料ガスを用いた第1燃料電池4による発電を抑制することができる。なお、太陽光発電部6に加えて、又は太陽光発電部6に代えて、風力発電器、水力発電器、地熱発電器、バイオマス発電器などの、光以外の自然エネルギーを用いて発電を行う自然エネルギー発電器を燃料電池システム10に設けてもよい。
【0032】
第1燃料電池4とは別に改質器3が設けられる構成について説明したが、燃料ガスから水素を取り出す改質機能を第1燃料電池4が内蔵していてもよい。改質機能を内蔵する第1燃料電池4の構成については
図2~
図6において後述する。
【0033】
図示を省略するが、ケース1の内部には、第1燃料電池4や第2燃料電池5を加熱維持するための加熱装置が設けられてもよい。この加熱装置は、ケース1外から供給される燃料ガスを燃焼させて加熱を行うものであってもよいし、電力を使用して加熱を行うものであってもよい。
【0034】
<第1燃料電池4の一例>
図2~
図6を参照して、
図1に示した第1燃料電池4の一例について説明する。第1燃料電池4は、
図2~
図6に示すように、セル401と、燃料極側端子402及び空気極側端子403(セパレータ)と、燃料極側集電体404と、空気極側集電体405と、水蒸気保持手段406とを具備している。
【0035】
セル401は、
図5に示すように、燃料ガスを改質して得られた水素が供給される第1燃料極401aと、空気中の酸素が供給される第1空気極401bと、第1燃料極401a及び第1空気極401bの間に介在して第1空気極401bで生成された酸素イオンを第1燃料極401aに透過させる第1固体電解質401cとを有して電力を発生させるものである。なお、本実施形態において、セル401は平板型構造の単セルである。
【0036】
セル401は、内部改質型の固体酸化物型燃料電池(SOFC)である。この場合、
図1に示した改質器3は燃料電池システム10から省いた構成としてもよい。セル401は、固体の第1固体電解質401cを第1燃料極401a(アノード)及び第1空気極401b(カソード)にて挟持した積層構造を有しており、全体が固体から成るものである。なお、セル401等の高温型の固体酸化物型燃料電池は、セルの発電で生じる温度と改質反応の温度が近似していることから、燃料電池の排熱を利用して炭化水素から水素を生成(改質反応)することが可能であり、発電効率がより高いものである。
【0037】
セル401の第1固体電解質401cは、セラミック類(ZrO2、CeO2、Ga系酸化物)等の酸素イオン導電性物質から成り、一方の面に第1燃料極401aが接触して形成されるとともに他方の面に第1空気極401bが接触して形成されている。第1燃料極401a(アノード)は、例えば第1固体電解質401cの原料を含み、触媒(NiO等)と造孔剤を混ぜて焼成して得られた電極から成るもので、燃料ガスを改質して得られた水素が供給されるとともに、燃料極側集電体404及び水蒸気保持手段406を介して燃料極側端子402(セパレータ)と電気的に接続されている。また、セル401の第1空気極401b(カソード)は、例えばランタン、ストロンチウム、コバルト等の金属酸化物等を含む電極から成るもので、空気中の酸素が供給されるとともに、空気極側集電体405を介して空気極側端子403(セパレータ)と電気的に接続されている。
【0038】
これにより、第1空気極401bにおいては、供給された空気中の酸素と電子から酸素イオンが生成されるとともに、生成された酸素イオンが第1固体電解質401cを透過して第1燃料極401aに向かうこととなる。一方、第1燃料極401aにおいては、燃料ガスを改質して得られた水素と第1固体電解質401cを透過した酸素イオンとが反応して水(H2O)が生成され、生じた電子が不図示の負荷を通って第1空気極401bに流れることとなるので、電力を発生させるようになっている。
【0039】
固体酸化物型燃料電池の反応温度は600℃以上と高温のため、生成された水(H2O)は全て水蒸気として発生することとなる。なお、燃料ガスは、都市ガスやLPガス(メタン、エタン、プロパン又はブタン)などの炭化水素系ガスから成り、水蒸気保持手段406にて担持された改質触媒による触媒反応によって水素を生成するものである。したがって、第1燃料極401aにおいては、水(H2O)の他、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)が生成されることとなる。なお、供給する燃料ガスは、炭化水素系ガスの他、アルコール類やエーテル類から成るガスであってもよい。
【0040】
燃料極側端子402は、導電性を有した耐熱性の金属板から成り、内側(単セルに対して内側)に燃料を流通させる燃料流路402aが形成されるとともに、第1燃料極401aと電気的に接続されている。燃料流路402aは、燃料極側端子402に形成された複数(単数であってもよい)の溝形状から成り、燃料極側端子402と水蒸気保持手段406とが積層された状態において、燃料が流通可能な流路を形成するようになっている。また、セル401と燃料極側端子402との間には燃料極側ガスケット407が取り付けられており、この燃料極側ガスケット407によって燃料流路402aを流通する燃料ガスが外部に漏れるのを抑制している。なお、燃料極側端子402の外側には、燃料流路402aと同様の溝形状402bが形成されており、単セルを積層してスタックさせた場合、隣接する単セルにおける空気流路を構成するようになっている。
【0041】
図2~
図6に示す第1燃料電池4は改質機能を内蔵するため、例えば、
図1に示した脱硫器2における燃料ガスの排出口と、燃料流路402aと、がダクト等によって接続される。これにより、脱硫器2によって硫黄成分が除去された燃料ガスが、水蒸気保持手段406にて担持された後述の改質触媒に供給される。
【0042】
なお、第1燃料電池4とは別に改質器3が設けられる構成においては、例えば、改質器3における水素の排出口と、燃料流路402aと、がダクト等によって接続される。これにより、改質器3によって取り出された水素が第1燃料極401aに供給される。
【0043】
空気極側端子403は、導電性を有した耐熱性の金属板から成り、内側(単セルに対して内側)に空気を流通させる空気流路403aが形成されるとともに、第1空気極401bと電気的に接続されている。空気流路403aは、空気極側端子403に形成された複数(単数であってもよい)の溝形状から成り、空気極側端子403と空気極側集電体405とが積層された状態において、空気が流通可能な流路を形成するようになっている。また、セル401と空気極側端子403との間には空気極側ガスケット408が取り付けられており、この空気極側ガスケット408によって空気流路403aを流通する空気が外部に漏れるのを抑制している。なお、空気極側端子403の外側には、空気流路403aと同様の溝形状403bが形成されており、単セルを積層してスタックさせた場合、隣接する単セルにおける燃料流路を構成するようになっている。
【0044】
例えば、
図1に示したケース1における空気の吸気口と、空気流路403aと、がダクト等によって接続される。これにより、このダクト等及び空気流路403aによって、ケース1の吸気口と第1空気極401bとを接続する流路が形成され、ケース1の外部から取り込まれた空気が第1空気極401bに供給される。
【0045】
燃料極側集電体404は、セル401の第1燃料極401aと燃料極側端子402及び水蒸気保持手段406との間に介在した導電性部材から成り、第1燃料極401aと燃料極側端子402との間の電気的接続を良好に維持させるためのもので、例えば金属メッシュ、金属スポンジ又は多孔質金属等から成るものである。空気極側集電体405は、セル401の第1空気極401bと空気極側端子403との間に介在した導電性部材から成り、第1空気極401bと空気極側端子403との間の電気的接続を良好に維持させるためのもので、例えば金属メッシュ、金属スポンジ又は多孔質金属等から成るものである。
【0046】
水蒸気保持手段406は、第1燃料極401aに供給される燃料ガスの流通経路(本実施形態においては、燃料極側端子402の燃料流路402aとセル401の第1燃料極401aとの間)に配設されるとともに、セル401による発電に伴って第1燃料極401aで生じる水蒸気を保持して燃料流路402aにて供給された燃料ガスと水蒸気を混合させるものである。本実施形態の水蒸気保持手段406は、燃料ガスを反応させて水素を生成する改質触媒を具備し、当該改質触媒による触媒反応にて生成された水素を第1燃料極401aに供給するようになっている。
【0047】
より具体的には、本実施形態の水蒸気保持手段406は、通気性及び可撓性を有したシート状部材から成るもので、無機繊維又は有機繊維を有した紙状部材から成るとともに、燃料ガスを反応させて水素を生成する改質触媒を担持して構成されている。例えば、所定量の水にセラミック繊維及びパルプ等の有機繊維及び無機繊維を混合した後、担体となるマグネシウム及びアルミニウムの複合酸化物を投入する。その後、カチオンポリマー、アルミナゾル及び高分子凝集剤を投入した後、抄紙し、プレス及び乾燥することにより通気性及び可撓性を有したシート状部材を得る。そして、得られたシート状部材を600℃から850℃で1時間から24時間焼成した後、触媒となる金属イオンを含有する水溶液に0.1から4時間含浸し、乾燥後、600から800℃で1から24時間焼成することにより、水蒸気保持手段406を得ることができる。触媒となる金属イオンを含有する水溶液としては、硝酸Ni、硫酸Ni、塩化Ni、硝酸Ru、硫酸Ru、塩化Ru、硝酸Rh、硫酸Ru、塩化Rhなどから1種類以上を選び作製することができる。シート状部材の焼成温度は好ましくは700℃から800℃の範囲であり、シート状部材の焼成時間は好ましくは2時間から10時間の範囲である。
【0048】
このようにして得られた水蒸気保持手段406は、マグネシウム及びアルミニウムの複合酸化物を担体としてNi、Ru、Rhなどを触媒金属(すなわち、燃料ガスを反応させて水素を生成する改質触媒)として担持した紙状部材(ペーパー状部材)から成り、例えば厚さ0.1から1.0(mm)程度、気孔率70~90(%)程度、触媒金属量2~9.5(mg/cm2)程度とされるのが好ましい。気孔率は70%を下回ると燃料ガスが拡散しにくくなり、圧力損失が増大するため好ましくない。一方で90%を上回ると触媒と燃料ガスの接触が減って、触媒性能が低下するため好ましくない。触媒金属量は2mg/cm2を下回ると十分な触媒性能が得られず、9.5mg/cm2を上回ると触媒粒子のシンタリングが起こり、粒子径の増大が発生し、投入触媒金属量に見合った触媒性能が得られないため好ましくない。紙厚は薄いほど第1燃料電池4そのものの体積を小さくできるが、0.1mm以下とすると気孔率、触媒金属量が不均一となりやすいため好ましくない。一方、1.0mmよりも厚くするとペーパーが占有する体積が大きくなり、第1燃料電池4そのものの体積が大きくなるため好ましくない。
【0049】
本実施形態の第1燃料電池4は、
図6に示すように、燃料極側端子402の一方の面に燃料極側ガスケット407、水蒸気保持手段406及び燃料極側集電体404を組み付けるとともに、空気極側端子403の一方の面に空気極側ガスケット408及び空気極側集電体405を組み付け、その後、セル401を挟んで燃料極側端子402の組み付け体及び空気極側端子403の組み付け体を組み合わることにより単セルを得た後、必要個数の単セルをスタックすることにより得られる。これにより、セルを複数組み合わせた、上記の複数の第1燃料電池スタックを構成することができる。
【0050】
ところで、水蒸気保持手段406は、導電性を有し、燃料極側端子402と第1燃料極401aとを電気的に接続させるものが好ましく、メッシュ状に成形して電気的な接続及び通気性をより向上させるようにしてもよい。このように、水蒸気保持手段406を燃料極側端子402と第1燃料極401aとを電気的に接続させる導電性材料から成るものとすれば、水蒸気保持手段を介して燃料極側端子と燃料極との電気的接続を確実に行わせることができる。また、水蒸気保持手段406を燃料極側端子402と第1燃料極401aとを電気的に接続させる導電性材料から成るものとすれば、燃料極側集電体404を不要とすることができる。
【0051】
図2~
図6に示した第1燃料電池4は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、第1燃料電池4に、特許文献1に記載された燃料電池システムの各構成を適用することができる。また、第1燃料電池4から水蒸気保持手段406を省いた構成としてもよい。
【0052】
<第2燃料電池5の一例>
図7及び
図8を参照して、
図1に示した第2燃料電池5の一例について説明する。
図7及び
図8に示すように、第2燃料電池5は、外側から順に筒状に形成された第2空気極502(正極)、第2固体電解質503、第2燃料極504(負極)及び負極燃料物質体505(及び負極燃料ケース506)を備える。また、第2燃料電池5は、負極燃料物質体505の中心に加熱部507を備える。
【0053】
第2空気極502、第2固体電解質503及び第2燃料極504は、それぞれ密着しており、第2燃料極504と負極燃料物質体505(及び負極燃料ケース506)との間には、互いに接触しないように所定の間隙が設けられている。
【0054】
また、筒状の第2固体電解質503の一端は閉塞されており、また、他端には、貫通孔511を備える蓋部512が設置され、貫通孔511には加熱部507が隙間なく挿通されている。よって、筒状の第2固体電解質503は、蓋部512及び加熱部507によってその内側に密閉空間513を形成する。また、第2燃料極504及び負極燃料物質体505は、密閉空間513によって密閉される。ただし、密閉空間513の密閉性は完全なものでなくてもよい。例えば、密閉空間513の内部の水素等が外部に漏れ出る僅かな隙間が存在していてもよいし、後述のように密閉空間513の内部に水素や第1燃料電池4の排出ガスが供給可能な構成となっていてもよい。
【0055】
そして、密閉空間513の内圧を所定の範囲に保つために、密閉空間513と連絡路514によって連絡された圧力吸収部515が設置される。
【0056】
なお、第2空気極502には正極集電体522が、第2燃料極504には負極集電体523が、それぞれ接続され端子として引き出されている。
【0057】
第2空気極502は、例えばLa1-xSrMnO3、La1-xSrCoO3(0<x<3、好ましくはx=0.1~0.3程度)、Sm0.5Sr0.5CoO3等によって形成され、酸素還元及び酸化反応に対する触媒機能のほか、電子伝導性、ガス透過性、酸化雰囲気での安定性を有する。
【0058】
また、第2固体電解質503は、300℃以上で酸素イオン伝導性を示す無機材料によって形成される。このような無機材料の例としては、例えばフルオライト構造を有する酸化物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、アパタイト構造を有する酸化物のいずれか又はその組み合わせが挙げられる。特にフルオライト構造を有する酸化物における好適な材料例は、例えば(ZrO2)x(Y2O3)1-x(0<x<1)で表されるイットリア安定化ジルコニア、Ce1-xGdxO2-s(0<x<1、s<2)で表されるセリウム-ガドリニウム酸化物、あるいはビスマスとバナジウムを含むBi2MxV1-xO5.5-δ(MはMg、Cu等の遷移金属、0<x<1、δ<5.5)で表されるBIMEVOX化合物のいずれか又はその組み合わせ等がある。またペロブスカイト構造を有する酸化物における好適な材料は、例えばガリウム酸ランタン、セリウム酸バリウム、もしくはLa1-xSrxGa1-yMgyO3-δ(LSGM、0<x<1、0<y<1、δ<3)で表される酸化物のいずれか又はその組み合わせ等がある。
【0059】
これらの物質は気密かつ水密であり水を透過させない。なおこれらの物質は常温ではほとんど酸素イオンを伝導しないため、第2固体電解質503は、第2燃料電池5の作動時には300℃超、好ましくは500℃~900℃に加熱保持されていることが好ましい。
【0060】
なお、固体電解質体は、一般に還元性ガス、酸化ガスや空気を透過させない気密性を有するが、特に、本発明の第2固体電解質503は、ヘリウムリークテストにおいて1×10-2Pa・m3/sec以上の気密性を有する必要がある。また、第2固体電解質503は、酸素イオンの伝導性を向上させるために、その形状が膜状、板状、箔状のいずれか又はその組み合わせであることが好ましい。
【0061】
また、第2燃料極504は、例えばニッケルやプラチナによって形成される。第2燃料極504は、水素や一酸化炭素などの燃料ガスの酸化及び還元反応に対する触媒機能のほか、電子伝導性、ガス透過性、水蒸気存在下の還元雰囲気での安定性を有する。なおニッケルを単独で第2燃料極504に用いる場合、焼結の進行による性能劣化や第2固体電解質503との熱膨張率の不一致が問題になるため、イットリア安定化ジルコニアとサーメットを形成して使用することが好ましい。
【0062】
また、負極燃料物質体505は、例えばリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、鉄、鉛、錫、ニッケル及び炭素並びにこれらの1種以上の元素を主体とする物質よりなる群から選択される少なくとも1種の粉末等により形成される。また、後述するように上述の粉末等にアルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物及びこれらの混合物等を形態保持材料として混合することにより形成されてもよい。アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属粉末や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びマグネシウムの中の1種以上の元素を主体とする合金粉末は、20℃~30℃の常温では水と反応しにくいが加熱することにより水との反応が容易となるため、水素を燃料ガスに用いる場合は特に有効である。
【0063】
負極燃料物質体505の作動温度は特に限定しないが、還元性ガスとして水素を使った場合、負極燃料物質体505内が100℃以上に加熱保持されていると、第2燃料極504において発生した水が水蒸気となって負極燃料物質体505の全体に拡散するため、水と負極燃料物質体505との反応がより効率的に行われる。また、負極燃料物質体505として、例えばアルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びマグネシウムといった金属や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びマグネシウムの中の1種以上の元素を主体とする合金を用いる場合、負極燃料物質体505内が100℃以上に加熱保持されていると水との反応が容易となるため水素発生反応がより効率的に行われる。
【0064】
負極燃料物質体505は、酸化ガスの分圧が還元性ガスの分圧の1/1000以上において常に酸化状態にあり、かつ融点が1000℃以上の金属酸化物である形態保持材料により被覆されていることが好ましい。このような形態保持材料を被覆することで、負極燃料物質体の焼結が抑制され、酸化還元反応を繰り返し行うことが可能となる。負極燃料物質体505が含有する形態保持材料の質量比は、特に制限はないが、酸化還元速度を抑制しすぎないために、0.1%以上5%以下であることが好ましい。形態保持材料の好適な例としては、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム又はこれらの混合物が挙げられる。これらは融点が特に高く、焼結抑制効果が高い。
【0065】
また、鉄は安価な材料であり、かつ酸化還元が可逆に起こりやすいことから、負極燃料物質体505の好適な例である。鉄粉末に、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム又はこれらの混合物からなる形態保持材料を被覆することで、鉄粉末の焼結が抑制され、酸化還元反応を繰り返し行うことが可能となる。鉄に形態保持材料を被覆する方法は特に限定はないが、鉄に酸化アルミニウムを被覆する方法としては、例えば、水やエタノールなどの溶媒に硝酸アルミニウムと鉄又は酸化鉄を加え、撹拌しながら溶媒を加熱蒸発させた後、400℃~800℃で2時間程度焼成する方法がある。鉄に二酸化ケイ素を被覆する方法としては、例えば、水やエタノールなどの溶媒にオルトケイ酸テトラエチルと鉄又は酸化鉄を加え、撹拌しながら溶媒を加熱蒸発させた後、200℃~800℃で2時間程度焼成する方法がある。
【0066】
負極燃料ケース506は、負極燃料物質体505を保持する役割を有する。負極燃料物質体505と酸化ガスとの反応を促進するため、負極燃料ケース506はメッシュ状、あるいは多孔状であることが好ましい。負極燃料ケース506の好適な例としては、例えばセラミクスファイバー、セラミクスで被覆された金属メッシュ、低密度多孔性アルミナが挙げられる。負極燃料ケース506が多孔状である場合その多孔度は20%以上であることが好ましい。負極燃料ケース506の多孔度により、燃料電池の出力特性は変動し、多孔度が高いほど、出力が向上するためである。
【0067】
負極燃料ケース506は、縦方向に細長い円環形状を備え、負極燃料物質体505を内部に保持して加熱部507の周囲に設置される。
【0068】
加熱部507は、発熱体508と、発熱体508の周囲に形成された発熱体ケース509とからなり、発熱体508には、配線510a,510bが接続される。発熱体508は、抵抗発熱体、アーク加熱、誘導加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱、ガス加熱、プラズマ加熱、ランプヒーター、赤外線ヒーターからなり、なかでも抵抗発熱体にはNi-Cr、SiC、C、MoSi2などがある。配線510a,510bは電力や温度情報などの伝達線である。また、セラミクスや金属による発熱体ケース509は、発熱体508を密閉し、発熱体508が、水素や水蒸気、その他有害物質やその蒸気と接触劣化することを防ぐ。
【0069】
配線510a,510bから電力を供給されることで、発熱体508は、850℃~1000℃程度まで発熱することができる。なお、本実施形態において、発熱体508は、ニクロム線ヒーターによって構成され、発熱体ケース509はステンレススチール鋼によって構成されている。また、配線510a,510bは、対になった単数もしくは複数の電線群をしめしており、発熱体へのエネルギーを供給する経路として用いられる1対のパスのみを示している場合と、発熱体付近に設けられた熱電対の信号線を形成する1対のパスをあわせて示している場合がある。
【0070】
また、加熱部507は、発熱体508を650℃~1000℃程度まで発熱させることで、燃料電池が所定の温度になるよう制御する役割を有する。加熱部507は、初期の運転立ち上げにおいて第2固体電解質503を所定の温度に加熱保持する。また、燃料電池が定常運転状態になった場合には、加熱部507は、燃料電池を加温もしくは冷却するなどして定常運転温度を保ってもよい。なお、加熱部507には設定温度などの温度制御条件を外部から設定及び変更することが可能な外部制御装置が付加されていてもよい。また、加熱部507には、発熱体508の温度を制御するコントローラが付加されていてもよく、これにより燃料電池の反応速度を加熱部507の温度によって自律的に制御できる。また、加熱部507の例としては、発熱体508及び発熱体ケース509の組み合わせと、これらと送風機との組み合わせが挙げられる。なお、送風機は冷却器の役割を果たし、発熱体ケース509内に送風が行われることで発熱体508が冷却し、発熱体508の温度を制御する。
【0071】
密閉空間513は、一端が封止された筒状の第2固体電解質503と、筒状の第2固体電解質503の他端に設置され、加熱部507の通る貫通孔511を備える蓋部512と、加熱部507の発熱体ケース509とによって形成される。
【0072】
蓋部512は、エポキシ接着などにより第2固体電解質503の他端に気密接合されており、蓋部512の貫通孔511も発熱体ケース509とエポキシ接着などにより気密接合されているため、第2固体電解質503の密閉空間513は蓋部512及び発熱体ケース509によって密閉されている。
【0073】
密閉空間513内には、第2燃料極504及び負極燃料物質体505が存在し、密閉空間513の気密度は、ヘリウムリークテストにおいて1×10-2Pa・m3sec以上である必要がある。
【0074】
また、第2燃料電池5には、密閉空間513と連通するように連絡路514が設けられ、連絡路514と圧力吸収部515とが接続される。圧力吸収部515は、例えば金属製ベローズやダイヤフラムからなり、密閉空間513内で発生する水蒸気によって引き起こされる圧力の変動を吸収し、密閉空間513内の圧力を所定の範囲に保っている。
【0075】
正極集電体522の材料としては、特に制限はないが、酸化雰囲気中での安定性を有する物質が好ましく、例えばチタン、ステンレス、銀やこれを主体とする合金などがある。別の材料例としては、例えばニッケル、チタン、ステンレス、銀やこれを主体とする合金に、白金メッキや金メッキを施したものがある。
【0076】
負極集電体523の材料としては、特に制限はないが、酸化ガス分圧を還元ガス分圧で除した値の対数値が4.5以下となる分圧比領域において酸化されない金属が好ましく、例えば銀、プラチナ、金、銅、チタンステンレスやこれを主体とする合金が挙げられる。ここで主体とは、合金全体に対して80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有されていることを意味する。
【0077】
図7,
図8に示した第2燃料電池5において、例えば、
図1に示したケース1における空気の吸気口と、第2空気極502の外周面と、が連通した構成とする。これにより、ケース1の吸気口と、第2空気極502の外周面と、の間の空間によって、ケース1の吸気口と第2空気極502とを接続する流路が形成され、ケース1の外部から取り込まれた空気が第2空気極502に供給される。
【0078】
また、
図7,
図8に示した第2燃料電池5において、例えば、第1燃料電池4からの排出ガスが、発熱体ケース509に供給されるように流路が形成されるようにしてもよい。この流路は、例えば、第1燃料電池4のガス排出口と発熱体ケース509とを接続するダクト等によって形成される。これにより、第1燃料電池4からの高温の排出ガスにより密閉空間513、ひいては第2燃料極504及び負極燃料物質体505を効率よく加熱することができる。このため、配線510a,510bから加熱部507に供給される電力を低減したり、加熱部507の機構を簡素化又は省略したりすることが可能になる。
【0079】
また、
図7,
図8に示した第2燃料電池5において、例えば、第1燃料電池4からの排出ガスが、第2燃料極504及び負極燃料物質体505が存在する第2燃料電池5の密閉空間513に供給されるように流路が形成されるようにしてもよい。この流路は、例えば、第1燃料電池4のガス排出口と密閉空間513の内部とを接続するダクト等によって形成される。これにより、第1燃料電池4からの高温の排出ガスにより密閉空間513、ひいては第2燃料極504及び負極燃料物質体505を効率よく加熱することができる。このため、配線510a,510bから加熱部507に供給される電力を低減したり、加熱部507の機構を簡素化又は省略したりすることが可能になる。また、第1燃料電池4からの排出ガスに含まれる水素を第2燃料電池5の密閉空間513の内部に供給することで、第2燃料電池5の密閉空間513から漏れ出る還元性ガスを補充することができる。さらに、第1燃料電池4のガス排出口と密閉空間513の内部とを接続するダクト等に、開閉可能な弁を設け、密閉空間513の内部への排出ガスの供給時にのみこの弁が開くようにしてもよい。これにより、密閉空間513の内部への排出ガスの供給時以外における密閉空間513の密閉性を高めることができる。
【0080】
第2燃料電池5の第2空気極502、第2固体電解質503、第2燃料極504、負極燃料物質体505、及び負極燃料物質体505によって、第2燃料電池5の1つのセルが構成される。このセルを必要個数だけスタックすることにより、上記の複数の第2燃料電池スタックを構成することができる。
【0081】
<第2燃料電池5の動作>
図9を参照して、
図7に示した第2燃料電池5の動作について説明する。第2燃料電池5は、第2空気極502、第2固体電解質503、第2燃料極504及び負極燃料物質体505を備え、第2空気極502、第2固体電解質503及び第2燃料極504は、それぞれが密着して接続され、第2燃料極504及び負極燃料物質体505は、第2固体電解質503によって形成される密閉空間513内に設置される。
【0082】
図9では図示しない加熱部507によって、第2空気極502、第2固体電解質503、第2燃料極504及び負極燃料物質体505が、850℃~1000℃程度に加熱されると、外部の空気中の酸素(1/2O
2)が第2空気極502に吸収され、第2空気極502から第2燃料極504まで酸素イオン(O
2-)として第2固体電解質503内を移動し、第2燃料極504において密閉空間513内の水素(H
2)を酸化して水(H
2O)を生成させる。
【0083】
この反応によって、酸素イオン(O2-)の電荷2e-が、第2燃料極504から配線を通じて第2空気極502へ流れることで、第2空気極502から第2燃料極504へ電流が流れる。
【0084】
なお、生成された水(H2O)は、水蒸気として負極燃料物質体505(xM)と反応し、負極燃料物質体505(xM)を酸化させて(MxOにして)再び水素(H2)となる。この水素(H2)は、第2燃料極504において再び酸素イオン(O2-)と反応して水(H2O)となるので、負極燃料物質体505が酸化され尽くさない限り第2燃料電池5は放電が可能となる。
【0085】
また、充電では、放電の場合と逆の反応が起こる。第2燃料電池5の第2燃料極504において水(H2O)が電荷を受けて、酸素イオン(O2-)と水素(H2)とに分解され、酸素イオン(O2-)が第2燃料極504から第2固体電解質503を通って第2空気極502に移動するとともに、酸化された負極燃料物質体505(MxO)が水素(H2)によって還元され、酸化前の負極燃料物質体505(xM)と水(H2O)とに戻る。また、発生した水(H2O)は、更に第2燃料極504において電荷を受けて酸素イオン(O2-)と水素(H2)とに分解されるため、充電中は、酸化された負極燃料物質体505(MxO)が全て還元されるまで上述の反応が繰り返される。
【0086】
なお、加熱部507は、配線510a,510bから発熱体508へ電力が供給されることで発熱体508が発熱し、発熱体ケース509の周囲の負極燃料物質体505、第2燃料極504、第2固体電解質503及び第2空気極502を加熱する。また、加熱部507は所定の温度まで上昇した後、燃料電池の駆動に適した温度を保ち続ける。
【0087】
また、密閉空間513は、その内部気圧を
図9では図示しない連絡路514及び圧力吸収部515によって調整しているため、密閉空間513内部の気圧が、加熱部507による加熱及び第2燃料極504における水蒸気の発生によって異常に高くなることがなく、密閉空間513の密閉性が保たれている。
【0088】
このように、第2燃料電池5においては、放電時に、第2燃料極504が水素(還元性ガス)を水蒸気(酸化ガス)に酸化し、第2空気極502が酸素を酸素イオンに還元し、負極燃料物質体505が水蒸気と反応して水素を生成して自らは酸化物(MxO)となることにより電力が生成される。
【0089】
また、第2燃料電池5においては、充電時に、第2燃料極504が水蒸気を水素に還元し、第2空気極502が酸素イオンを酸素に酸化し、負極燃料物質体505の酸化物が、第2燃料極504において還元された水素と可逆的に反応して水蒸気を生成し、自らは酸化前の負極燃料物質体505(xM)となることにより、生成可能な電力を増加させることができる、すなわち蓄電が可能である。
【0090】
図7~
図9に示した第2燃料電池5は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、第2燃料電池5に、特許文献2に記載された燃料電池の各構成を適用することができる。
【0091】
[第2実施形態]
図10を参照して、本発明の燃料電池システムの第2実施形態である燃料電池システム10Aについて説明する。
図10において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、燃料電池システム10Aは、
図1に示した燃料電池システム10の構成において、改質器3により取り出された水素が、第2燃料電池5にも供給されるようにしたものである。
【0092】
例えば、
図1に示した改質器3における水素の排出口と、燃料流路402aと、を接続するダクト等を分岐して、第2燃料電池5の密閉空間513にも供給される構成とする。これにより、改質器3によって取り出された水素が第2燃料極504にも供給される。このため、電力貯留用の第2燃料電池5でも積極的に発電することができ、燃料電池システム10の発電量を増加させることができる。また、改質器3によって取り出された水素を第2燃料電池5の密閉空間513に供給することで、第2燃料電池5の密閉空間513から漏れ出る水素を補充することができる。さらに、密閉空間513に水素を供給するダクト等に、開閉可能な弁を設け、密閉空間513の内部への水素の供給時にのみこの弁が開くようにしてもよい。これにより、密閉空間513の内部への水素の供給時以外における密閉空間513の密閉性を高めることができる。
【0093】
[第3実施形態]
図11を参照して、本発明の燃料電池システムの第3実施形態である燃料電池システム10Bについて説明する。
図11において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、燃料電池システム10Bは、
図1に示した燃料電池システム10の構成において、さらに二次電池30を備えたものである。
【0094】
二次電池30は、第1燃料電池4や第2燃料電池5からの高温の排熱から保護されるようにケース1の外部に設けられている。また、二次電池30は、第1燃料電池4及び第2燃料電池5と電気的に接続されている。具体的には、二次電池30は、第1燃料電池4及び第2燃料電池5の各端子と接続された上記の外部端子と電気的に接続されている。
【0095】
このような構成により、第2燃料電池5による蓄電だけでなく、二次電池30による蓄電も行うことができる。また、二次電池30のみで蓄電を行う構成に比べて、二次電池30の蓄電容量を小さくすることができるため、二次電池30を小型化することができる。このため、小型の燃料電池システム10Bを実現することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、燃料電池システム10,10A,10Bの用途として家庭用発電機について説明したが、燃料電池システム10,10A,10Bは他にも商業施設用発電機や燃料電池自動車など各種の用途に利用することができる。
【0097】
また、脱硫器2や改質器3をケース1の内部に設ける構成について説明したが、脱硫器2や改質器3をケース1の外部に設ける構成とすることも可能である。
【0098】
また、還元性ガスの例として水素について説明したが、本発明における還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素、一酸化窒素又はこれらの混合ガスとすることができる。
【0099】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0100】
(1) 第1燃料電池(第1燃料電池4)と、
第2燃料電池(第2燃料電池5)と、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池を収容するケース(ケース1)と、を備え、
前記第1燃料電池は、
還元性ガスが供給される第1燃料極(第1燃料極401a)と、
酸素が供給される第1空気極(第1空気極401b)と、
前記第1燃料極及び前記第1空気極の間に介在して前記第1空気極に供給された酸素イオンを前記第1燃料極に透過させる第1固体電解質(第1固体電解質401c)と、
を有して電力を発生させるセル(セル401)を備え、
前記第2燃料電池(第2燃料電池5)は、
還元性ガスが供給される第2燃料極(第2燃料極504)と、
酸素が供給される第2空気極(第2空気極502)と、
前記第2燃料極及び前記第2空気極の間に介在して前記第2空気極に供給された酸素イオンを前記第2燃料極に透過させる第2固体電解質(第2固体電解質503)と、
酸化ガスと反応して前記還元性ガスを生成して自らは酸化物となる負極燃料物質体(負極燃料物質体505)と、
を有して電力を貯留させるセルを備える、燃料電池システム(燃料電池システム10,10A,10B)。
【0101】
(1)によれば、燃料ガスを供給して第1燃料電池により発電することができるとともに、第2燃料電池により蓄電も可能である。そして、第1燃料電池及び第2燃料電池は高温で動作するものであるため、第1燃料電池の高温の排熱から第2燃料電池を保護する断熱構造等は不要であり、燃料電池システムの大型化を抑制することができる。このため、燃料ガスによる発電及び蓄電が可能な小型の燃料電池システムを実現することができる。また、第1燃料電池の高温の排熱を利用して第2燃料電池の負極燃料物質体を加熱維持することができるため、第2燃料電池の負極燃料物質体の加熱のために供給されるエネルギーを低減し、第2燃料電池における発電効率を向上させることができる。また、第2燃料電池の負極燃料物質体を加熱するための機構を簡素化又は省略してもよく、それにより燃料電池システムのさらなる小型化を図ることができる。
【0102】
(2) (1)に記載の燃料電池システムであって、
燃料ガスから還元性ガスを取り出す改質器(改質器3)をさらに備え、
前記第1燃料電池の前記第1燃料極には、前記改質器により取り出された還元性ガスが供給される、燃料電池システム。
【0103】
(2)によれば、外部から供給される燃料ガスによって持続的に発電を行うことができる。
【0104】
(3) (2)に記載の燃料電池システムであって、
燃料ガスから硫黄成分を除去する脱硫器(脱硫器2)をさらに備え、
前記改質器は、前記脱硫器により硫黄成分が除去された燃料ガスから前記還元性ガスを取り出す、燃料電池システム。
【0105】
(3)によれば、外部から供給される燃料ガスに硫黄成分が含まれていても硫黄成分を除去して燃料として発電に用いることができる。
【0106】
(4) (2)又は(3)に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池の前記第1燃料極及び前記第2燃料電池の前記第2燃料極には、前記改質器により取り出された還元性ガスが供給される、燃料電池システム。
【0107】
(4)によれば、第1燃料電池に供給される還元性ガスを第2燃料電池にも供給することで、電力貯留用の第2燃料電池でも積極的に発電することができ、燃料電池システムの発電量を増加させることができる。また、第1燃料電池に供給される還元性ガスを第2燃料電池の内部に供給することで、第2燃料電池の内部から漏れ出る還元性ガスを補充することができる。
【0108】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池と電気的に接続される二次電池(二次電池30)をさらに備える、燃料電池システム。
【0109】
(5)によれば、第2燃料電池による蓄電だけでなく、二次電池による蓄電も行うことができる。また、二次電池のみで蓄電を行う構成に比べて、二次電池の蓄電容量を小さくすることができるため、二次電池を小型化することができる。このため、小型の燃料電池システムを実現することができる。
【0110】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第2燃料電池と電気的に接続される自然エネルギー発電器(太陽光発電部6)をさらに備える、燃料電池システム。
【0111】
(6)によれば、自然エネルギー発電器の発電による電力を第2燃料電池に蓄電できるので、自然エネルギーを有効に利用して燃料ガスを用いた第1燃料電池による発電を抑制できる。
【0112】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第2燃料電池は、前記第2燃料極及び前記負極燃料物質体が密閉空間(密閉空間513)に配置され、
前記第1燃料電池の排出ガスにより前記密閉空間が加熱される、燃料電池システム。
【0113】
(7)によれば、第1燃料電池の高温の排熱を、第2燃料極及び負極燃料物質体が配置される密閉空間に供給し、第2燃料極及び負極燃料物質体を加熱維持することができる。
【0114】
(8) (7)に記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池の排出ガスが前記第2燃料電池の前記密閉空間の内部に供給される、燃料電池システム。
【0115】
(8)によれば、第1燃料電池の高温の排熱を、第2燃料極及び負極燃料物質体が配置される密閉空間の内部に供給し、第2燃料極及び負極燃料物質体を効率よく加熱維持することができる。また、第1燃料電池からの排出ガスに含まれる還元性ガスを第2燃料電池の密閉空間に供給することで、第2燃料電池の密閉空間から漏れ出る還元性ガスを補充することができる。
【0116】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池の上方に前記第2燃料電池が配置されている、燃料電池システム。
【0117】
(9)によれば、第1燃料電池の熱が第2燃料電池に効率よく伝わるようにし、第2燃料電池の負極燃料物質体の加熱維持を効率よく行うことができる。
【0118】
(10) (1)から(8)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池は、複数の第1燃料電池スタックを備え、
前記第2燃料電池は、複数の第2燃料電池スタックを備え、
前記複数の第1燃料電池スタックと前記複数の第2燃料電池スタックとが上下方向に交互に配置されている、燃料電池システム。
【0119】
(10)によれば、複数の第1燃料電池スタック及び複数の第2燃料電池スタックの各温度を均一化し、各燃料電池の温度制御を容易に行うことができる。
【0120】
(11) (1)から(10)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池は、燃料ガスから前記還元性ガスを取り出す改質機能を内蔵している、燃料電池システム。
【0121】
(11)によれば、第1燃料電池の発電により生じる熱を利用して、燃料ガスから還元性ガスを取り出す改質処理を行うことができる。また、第1燃料電池とは別に改質器を設けなくても改質処理を行うことができるため、燃料電池システムのさらなる小型化を図ることができる。
【0122】
(12) (1)から(11)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第2燃料電池は、放電時に、
前記第2燃料極が前記還元性ガスを酸化ガスに酸化し、
前記第2空気極が酸素を酸素イオンに還元し、
前記負極燃料物質体が前記酸化ガスと反応して前記還元性ガスを生成して自らは酸化物となり、
前記第2燃料電池は、充電時に、
前記第2燃料極が前記酸化ガスを前記還元性ガスに還元し、
前記第2空気極が酸素イオンを酸素に酸化し、
前記負極燃料物質体の酸化物が前記還元性ガスと可逆的に反応して前記酸化ガスを生成して自らは負極燃料物質体となる、燃料電池システム。
【0123】
(12)によれば、第2燃料電池による充放電が可能であるとともに、第1燃料電池の高温の排熱を利用して、充放電のための反応に適した温度となるように負極燃料物質体を加熱維持することができる。
【0124】
(13) (1)から(12)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記負極燃料物質体は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニ
ウム、ケイ素、亜鉛、鉄、鉛、錫、ニッケル及び炭素、ならびにこれらの1種以上の元
素を主体とする物質からなる群から選択される少なくとも1種の物質である、燃料電池システム。
【0125】
(13)によれば、負極燃料物質体の還元及び酸化により充放電が可能になる。
【0126】
(14) (1)から(13)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記ケースは、
空気を取り込む少なくとも一つの吸気口と、
前記少なくとも一つの吸気口と前記第1燃料電池の前記第1空気極を接続する流路と、
前記少なくとも一つの吸気口と前記第2燃料電池の前記第2空気極を接続する流路と、を備える、燃料電池システム。
【0127】
(14)によれば、ケースの外部から取り込んだ空気中の酸素を第1燃料電池及び第2燃料電池の各空気極に供給することができる。
【0128】
(15) (1)から(14)のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池は、電気的に接続される、燃料電池システム。
【0129】
(15)によれば、第1燃料電池の余剰電力を第2燃料電池に蓄電することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 ケース
2 脱硫器
3 改質器
4 第1燃料電池
5 第2燃料電池
6 太陽光発電部(自然エネルギー発電器)
10,10A,10B 燃料電池システム
30 二次電池
401 セル
401a 第1燃料極
401b 第1空気極
401c 第1固体電解質
502 第2空気極
503 第2固体電解質
504 第2燃料極
505 負極燃料物質体
513 密閉空間