(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170269
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】除菌機能を有する皮膚用コーティング製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20221102BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20221102BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20221102BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20221102BHJP
A01N 31/14 20060101ALI20221102BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221102BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221102BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20221102BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20221102BHJP
A61K 31/10 20060101ALI20221102BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20221102BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20221102BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20221102BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221102BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221102BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K47/10
A01N25/00 102
A01N31/02
A01N43/40 101K
A01N31/14
A01P3/00
A61K9/08
A61K31/4425
A61K31/60
A61K31/10
A61K31/085
A61K31/05
A61K31/192
A61P31/04
A61K47/38
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076301
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】593095070
【氏名又は名称】有限会社日本健康科学研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 泰一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076BB31
4C076CC31
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4C076DD37
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4C206AA01
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4C206NA05
4C206ZB35
4H011AA01
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB09
4H011DA13
4H011DE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アルコール消毒剤の塗布直後の除菌効果を長時間維持する製剤を提供する。
【解決手段】プロピレングリコール・ブチレングリコール・ペンチレングリコール・へキシレングリコール・カプリリルグリコールのグリコール類から選択される多価アルコールをエタノールに溶解し、セラック又はロジンの酸性コーティング剤を添加し、この混合液を皮膚に塗布することによってエタノールで皮膚表面を除菌し、エタノール揮散後は皮膚上に濃縮された多価アルコールのグリコールと酸性コーティング剤を含有した酸性被膜を形成し、該酸性被膜自体が水を殆ど含有しない持続的抗菌活性を有する除菌機能を有する皮膚用コーティング製剤。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレングリコール・ブチレングリコール・ペンチレングリコール・へキシレングリコール・カプリリルグリコールのグリコールから選択される多価アルコールをエタノールに溶解し、セラック又はロジンの酸性コーティング剤を添加し、この混合液を皮膚に塗布することによってエタノールで皮膚表面を除菌し、エタノール揮散後は皮膚上に濃縮された多価アルコールのグリコールと酸性コーティング剤を含有した酸性被膜を形成し、該酸性被膜自体が水を含有しない持続的抗菌活性を有することを特徴とする除菌機能を有する皮膚用コーティング製剤。
【請求項2】
前記皮膚用コーティング製剤にヒドロキシプロピルセルロース、及び/又はニトロセルロースから選択される高分子化合物を含有し、その添加量は該皮膚用コーティング製剤に対して0.1~10%W/Wとすることを特徴とする請求項1に記載の除菌機能を有する皮膚用コーティング製剤。
【請求項3】
前記皮膚用コーティング製剤にセチルピリジニウムクロリド、イソプロピルメチルフェノール、パラフェノールスルホ石炭酸亜鉛、安息香酸、サリチル酸、トリクロサンから選択される殺菌剤、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベンから選択される防腐剤、メントール、ハッカ油、ヒノキオイルから選択される抗菌活性を有する植物由来成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の除菌機能を有する皮膚用コーティング製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エタノールに多価アルコール(特にグリコール)とセラック及び/又はロジンの酸性コーティング剤を含有し、該混合液を皮膚に塗布するもので、該エタノールで皮膚表面を除菌し、エタノール揮散後に形成された酸性被膜と濃縮後に被膜に含有された多価アルコール類(グリコール類)と、防腐剤及び抗菌活性を有する持続的抗菌活性を発現する皮膚用コーティング製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、世界中でコロナウイルス等が猛威を振るう中、感染を防ぐ手段として、3密(密閉・密集・密接)を避け、うがい、手洗い、消毒及びマスクの着用が推奨されている。中でも手の洗浄と消毒は手を汎用する生活の中では特に注意を要する。トイレ、各施設の入り口や要所には、アルコール除菌剤が設置され、度重なる消毒を余儀なくされている。その結果、アルコールの刺激と揮発による保湿成分ロスで深刻な手荒れが多く発生している現状にある。
一方、保湿クリームや抗炎症剤を含む外用製剤が、手荒れ対策として利用されているが、頻繁のアルコール消毒で手荒れを解消するには至っていない現状にある。
なお、本発明者は、手等の皮膚炎症を防ぐために、人工角質を形成する製剤を特許文献1として既に提供しているが、手洗いを少なくするような除菌機能を有する皮膚用コーティング製剤ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手の除菌は、手洗いとアルコール消毒であり、時間と手間がかかる上に、コロナ禍における、その日の日常の頻繁性が所以に深刻な手荒れを来す危険性が極めて高いと言える。又、次亜塩素酸ナトリウムや界面活性剤を使った除菌剤は、器物の殺菌・除菌には適しているが、肌には刺激性が強く、利用しがたいものである。又、瞬時の除菌の為に、時間経過の中では除菌効果は維持できない現状にあるために、再三の使用を余儀なくされる現状にある。
この発明が解決しようとする課題は、上記した深刻な手荒れの状態を予防、改善するには、従来の除菌効果を維持しつつ、如何に殺菌消毒の回数を減らして深刻な手荒れを防ぐには、除菌の製剤のどのような特徴と効果を持たせればいいかという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、従来のアルコール消毒剤の塗布直後の除菌効果を維持しつつ、長時間(4~5時間)の除菌剤を有する新規製剤についていろいろと考察し、実験と試作を重ねた。そして従来のアルコール除菌剤の初期の除菌効果を長時間維持するジェル製剤を試作してみた。ジェル製剤は、皮膚に塗擦後、約30秒で皮膚上に透明の被膜を形成した。塗布前のジェルと皮膚上に形成された被膜自体の抗菌活性をハローテストにかけると、ジェルとジェルから形成された被膜自体に抗菌力(明確なハロー)が確認された。
本発明は、この事実を基にして更に研究を重ねた結果、本発明に想達した。
【0006】
前記課題を解決するために、この発明は、エタノールに多価アルコール(プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、カプリリルグリコール等のグリコール類)の1種類以上を加えた混合液に酸性のコーティング剤(セラック、ロジン)の1種類以上を添加し、撹拌によって溶解させた除菌剤である。
前記のエタノールと多価アルコールには酸性コーティング剤の溶剤として作用し、共に抗菌活性を有するものであり、塗擦直後の皮膚の除菌効果を相互に高める。塗擦後約30秒でエタノールは揮散し、塗擦部位の皮膚上のジェルが半固形の酸性被膜を形成する。エタノールの揮散によって、皮膚上でジェル製剤が被膜製剤に変化する現象が確認できる。皮膚上に形成された酸性被膜自体が抗菌活性を有するが、この結果は前記の多価アルコール(グリコール類)自体が抗菌活性を有し、エタノールの揮発でグリコール類の被膜内濃度が2~3倍に凝縮された結果、さらに活性値が上がるものと考えられる。又、酸性コーティング剤が被膜を酸性領域に維持した結果、抗菌活性が更に高まった可能性が考えられる。
【0007】
グリコール類の抗菌活性は、微生物から水分を奪い取ってしまう作用が起こり、微生物の増殖が不可能になるうえに死滅してしまうと考えられている。微生物が増殖するためには、必要最小限度の水分が必要であり、グリコール類が微生物の水分活性が減少し、微生物の生菌を阻害する。又、本製剤は殆ど水を含有しない(実質的に全く水を含有しない)こともグリコール類の抗菌活性を助長する効果となっている。
ここで、
図1の表1、
図2の表2、
図3の表3について説明すると、
図1の表1は大腸菌に対する多価アルコール、及び防腐剤に対する抗菌性比較試験(最小発育阻止濃度:MIC)での表であり、例えば、多価アルコールのうちペンチレングリコールが2.7%W/W(蒸留水を含む製剤100W/Wに対して)以上の場合は大腸菌の発育は阻止される。同様に、防腐剤のメチルパラペンが0.2%以上であれば大腸菌の発育は阻止される。
図2の表2は大腸菌を含めた抗菌剤のSa:黄色ブドウ球菌、Pa:緑膿菌、Ec:大腸菌、Ca:カンジダ、Ab:コウジカビに対する最小発育阻止濃度(MIC)の表である。
また、
図3の表3は、多価アルコールにおける抗菌性の有無及び抗菌性能の表3であり、本発明に使う多価アルコールは表3で抗菌性のあるものを使用すれば良く、例えば、ペンチレングリコール(4%以上で抑制力あり)を使用すればよく、逆に、エリスリトールは表3から使用しても抗菌の抑制力はない。
【0008】
また、セチルピリジニウムクロリド、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸、サリチル酸、トリクロサン、パラフェノールスルホ石炭酸亜鉛等の抗菌剤、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン等の防腐剤を一種類以上、更にメントール、ハッカ油、ヒノキオイル等の抗菌活性を有する植物由来成分を1種類以上含み、皮膚の除菌効果を高めることを特徴とする請求項1の記載の除菌機能(効果)を有するコーティング製剤である。また、上記防腐剤や抗菌活性を有する植物由来成分は微量で抗菌活性を示すが、エタノール揮散による製剤の濃縮によって被膜化し、更に抗菌活性値の上昇と効果の持続化が期待される(表1,2,3参照)。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る除菌効果を有するコーティング製剤においては、エタノールに多価アルコールの内、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、カプリリルグリコール等のグリコール類を加えた混合液にセラック、ロジン等を加えて溶解した液体製剤であり、皮膚に塗布するとエタノールが皮膚表面を除菌し、エタノール揮発後に皮膚上にコーティングされた被膜内に濃縮された多価アルコールが水分を殆ど含まない条件も有利に働き高い除菌効果を発揮する。
抗菌活性を有するコーティング被膜は耐水性であり、肌に持続的に付着しているために長時間後のコーティングされている被膜部位の皮膚表面の除菌効果を有し、時間経過とともに外部から付着した菌に対しても除菌効果を発揮する。更に除菌効果を有するセチルピリジニウムクロリド、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸、サリチル酸、トリクロサン、パラフェノールスルホ石炭酸亜鉛及びフェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン等の防腐剤やメントール、ハッカ油、ヒノキオイル等の抗菌活性を有する植物由来成分を含有すれば、更なる抗菌活性値を高める効果を発揮させることが可能である。
また、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の高分子物質を添加することによってコーティングの品質と機能性を高める効果を発揮し、更にコーティング被膜自体が酸性であることも抗菌活性を高める要素となっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】大腸菌に対する多価アルコール及び防腐剤の抗菌性比較試験(最小発育阻止濃度:MIC)の表1の図、
【
図2】汎用される抗菌性原料の最小発育阻止濃度(MIC)の表2の図、
【
図5】実施例2の抗菌効力試験2の表7の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の除菌機能(効果)を有するコーティング製剤の実施例について説明する。
〔実施例1〕
〔組成比〕
本発明の除菌機能を有するコーティング製剤の好適な実施例1を説明するが、先ず、この実施例1の配合比を次の〔表4〕に示す。
〔表 4〕 〔実施例1の組成比(重量%)〕
(1)エタノール・・・・・・・・・・・・・・・・63.7w/w%
(2)ペンチレングリコール・・・・・・・・・・・5.0w/w%(13.8w/w%)*
(3)ジプロピレングリコール・・・・・・・・・・5.0w/w% (13.8w/w%)*
(4)セラック・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0w/w%
(5)ロジン・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.0w/w%
(6)セチルピリジニウムクロリド・・・・・・・・1.0w/w%(2.8w/w%)*
(7)スクワラン・・・・・・・・・・・・・・・・1.0w/w%
(8)酢酸トコフェロール・・・・・・・・・・・・0.2w/w%
(9)ひまし油・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0w/w%
(10)ラノリンアルコール・・・・・・・・・・・・2.0w/w%
(11)ビスpeg-18メチルエーテルジメチルシラン・・ 2.0w/w%
(12)シルクパウダー・・・・・・・・・・・・・・1.0w/w%
(13)ヒドロキシプロピルセルロース・・・・・・・2.0w/w%
(14)ニトロセルロース・・・・・・・・・・・・・3.0w/w%
(15)香料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.1w/w%
合計:100w/w%
*:エタノール揮散後(濃縮後の被膜内製剤濃度)
【0012】
〔調整方法〕
上記の組成比になるように実施例1の除菌効果を有するコーティング製剤は、次のような手順で調製する。尚、上記の実施例の重量%の合計は100重量%で、製剤処方には実質的に水を含んでいない。
先ず、(1)エタノールは最初に手の皮膚をきれいに拭くために十分な量が必要で、エタノール30~90重量%,好ましくは63.7%重量に、(2)ペンチレングリコール1~10重量%、好ましくは5.0重量%と、(3)ジプロピレングリコール1~10重量%、好ましくは5重量%を添加して混合し、この混合液に、(4)セラックと(5)ロジン1~10重量%、好ましくはセラック5重量%、ロジン4.0重量%添加して400rpmで50分間混合撹拌し、溶解させる。
この溶解液に(6)セチルピリジニウムクロリド0.1~3重量%、好ましくは1.0重量%、(7)スクワラン0.1~5重量%、好ましくは、1.0重量%、(8)酢酸トコフェロール0.1~1.0重量%、好ましくは0.2重量%、(9)ひまし油1.0~10重量%、好ましくは5.0重量%、(10)ラノリンアルコール1.0~5.0重量%、好ましくは2.0重量%、(11)ビスpeg-18メチルエーテルジメチルシラン1.0~5.0重量%、好ましくは2.0重量%、(15)香料0.02~1.0重量%、好ましくは0.1重量%、を順次添加し、400rpmで約60分間混合・撹拌する。
この混合液に撹拌下に(12)シルクパウダー0.1~5.0重量%、好ましくは1.0重量%、(13)ヒドロキシプロピルセルロース1.0~5.0重量%、好ましくは2.0重量%、(14)ニトロセルロース1.0~5.0重量%、好ましくは3.0重量%、を順次加えて400rpmで約30分間混合撹拌して製造する。
【0013】
〔抗菌効力試験1〕
上記の組成、及び調製方法で製造した実施例1の除菌機能を有するコーティング製剤の機能・効果を以下の条件で検証した。
(1)被験体:
実施例1:実施例1の除菌機能を有するコーティング製剤の希釈液
比較例1:対照希釈液
(2)試験方法:
黄色ブドウ球菌(Staphylococus aureus:MSSA)を試験菌とし、培養条件は培養培地(SCDA:培地組成)に35℃で48時間培養し、接種菌液濃度は2.5×10
6/mlであった。
(A)まず、実施例1の試料を滅菌蒸留水の希釈液で10倍から10万倍の希釈検体とし、各試験管10mlに採取して、菌接種直後の各希釈段階の菌数を測定した。
(B)次ぎに、持続効果試験として、菌接種した試料を25℃で5時間保存後に、10倍希釈と1000倍希釈段階及び試薬を入れない比較例1の生菌数を測定した。
(3)試験結果:
実施例1の抗菌効力試験1の試験結果を
図4の表5で説明する。
図4の表5の比較例1は実施例1の試薬を入れてない対照希釈液で、菌数で6.5×10
4/mlであった。
同表5の実施例1aの試薬を希釈液10倍で希釈した場合には菌数が300/ml(<)以下であることが確認され、
同表5の実施例1bの試薬を希釈液100倍で希釈した場合には菌数8.2×10
3/mlが確認され
同表5の実施例1cの試薬を希釈液1000倍で希釈した場合には菌数1.2×10
4/mlが確認され、
同表5の実施例1dの試薬を希釈液1万倍で希釈した場合には菌数2.5×10
4/mlが確認された。
ここで、希釈率に逆相関して菌数は増加する傾向を示したが、10倍希釈(実施例1a)までは、確実な抗菌効果が得られ、1万倍希釈(実施例1d)までは菌の抑制が認められた。
同表5の下段の実施例1bは、試薬を希釈液100倍で希釈した場合の5時間後の状態で、菌数は300/ml(<)以下であり、
同表5の実施例1cは、試薬を希釈液1000倍で希釈した場合の5時間後の状態で、菌数は5.5×10
3/mlであり、
同表5の比較例1は、実施例1の試薬を入れない対照希釈液の5時間後の状態で、菌数は6.5×10
4/ml(上段)から7.8×10
4/ml(下段)に増加していた。
このように、試薬を入れない場合の表5の比較例1(上段)の接種直後の菌数に比較して、表5の実施例1b(下段)の5時間後の場合は明らかな菌の抑制が認められた。
以上の結果から、実施例1は確実な抗菌活性を有し、5時間経過後でも明確な抗菌活性が認められ、100倍の希釈液においては直後の菌数8.2×10
3/mlのよりも5時間経過した試料の菌数300/mlよりも抗菌活性が強くなる結果を示したのは、エタノールの揮散によって濃縮されたコーティング被膜の抗菌効果とグリコール類の効果によるものと考えられた。
【0014】
〔実施例2〕
〔組成比〕
次に、本発明の除菌機能を有するコーティング製剤の好適な別の実施例2を説明するが、先ず、この実施例2の配合比を次の〔表6〕に示す。
〔表6〕〔組成比(重量%)〕
(1)エタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・80.0w/w%
(2)1,3-ブタンジオール・・・・・・・・・・・・・・・3.0w/w%(15.0w/w%)*
(3)ペンチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・3.0w/w%(15.0w/w%)*
(4)ロジン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0w/w%
(5)スクワラン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0w/w%
(6)セラック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.0w/w%
(7)ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン・・・・2,2w/w%
(8)ひまし油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.5w/w%
(9)ラノリンアルコール・・・・・・・・・・・・・・・1.0w/w%
(10)フェノキシエタノール・・・・・・・・・・・・・・1.0w/w%(5.0w/w%)*
(11)酢酸トコフェロール・・・・・・・・・・・・・・・0.2w/w%
(12)香料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.1w/w%
合計:100w/w%
*:エタノール揮散後(濃縮後の被膜内製剤濃度)
【0015】
〔調整方法〕
上記の組成比になるように本実施例2の除菌機能を有するコーティング製剤は、次のような手順で調整する。
先ず、(1)エタノール50~90重量%、好ましくは80.0重量%に、(2)1,3-ブタンジオール1~5重量%、好ましくは3.0重量%、(3)ペンチレングリコール1.0~5.0重量%、好ましくは3.0重量%、(5)スクワラン1~5重量%、好ましくは3.0重量%を添加し、400rpmで20分間混合した後、(4)ロジン1~5重量%、好ましくは3.0重量%と(6)セラック1~5重量%、好ましくは2.0重量%を添加して400rpmで50分間混合・撹拌して、(4)ロジンと(6)セラックを溶解させる。
この溶解液に(7)ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン1.0~5.0重量%、好ましくは2.2重量%、(8)ひまし油0.5~5.0重量%、好ましくは1.5重量%、(10)フェノキシエタノール0.2~5.0重量%、好ましくは1.0重量%、(11)酢酸トコフェロール0.1~1.0重量%、好ましくは0.2重量%、(12)香料0.02~1.0重量%、好ましくは0.1重量%を順次加えて400rpmで30分間混合撹拌する。
この混合液に(9)ラノリンアルコールを0.1~5.0重量%、好ましくは1.0重量%、添加し、400rpmで60分間混合・撹拌して製造する。
【0016】
〔抗菌効力試験2〕
上記の組成、及び調整方法で製造した実施例2の抗菌機能(効果)を有するコーティング製剤の作用・効果を以下の条件で検証した。
(1)被検体:
実施例2:実施例2の除菌機能を有するコーティング製剤の希釈液
比較例2:実施例2の試料を投入しない黄色ブドウ球菌(接種菌液濃度:2.5×10
6/ml)だけでの対照希釈液
(2)試験方法(ハロー法):
黄色ブドウ球菌(Staphylococus aureus:MSSA)(接種菌液濃度:2.5×10
6/ml)を平板培地に塗抹後、円形ろ紙に希釈液(滅菌蒸留水)と試料10倍希釈液を浸透させて、それぞれ培地上に密着貼付して培養し、試料10倍希釈液塗布直後と、5時間後の試料周辺の透明な発育阻止帯(ハローテスト)の幅を測定した。
又、同じ試験菌液を平板培地に塗抹後、希釈液と試料10倍希釈を直接培地に幅3cmに直線状に塗布した直後の培養後、発育阻止帯(ハロー)の幅を測定した。
なお、各培養時間は35℃48時間に設定した。
(3)試験結果:
図5の表7に示すように、ろ紙を使ったハロー試験では、比較例2(対照希釈液)に対して実施例2aの試料10倍希釈液は塗布直後に浸透力が良く、抗菌力(明確なハロー)(
図5:実施例2aのドーナツ状の黒色部分)を認め、更に5時間後ではハローの拡大を認め(
図5の表7:実施例2bの拡大したドーナツ状の黒色部分)、抗菌力の増強が推察された。
また、直接法は、比較例2ではほとんど変化は見られず、実施例2cの試料10倍希釈液では中心部の試料の周りは明確な黒色部分が表れハローが認められた。
以上の結果から、実施例2は明確な抗菌活性を示し、塗布5時間後でも強い抗菌活性を示したことから、本製剤は持続的な抗菌活性を有するものと考えられた。
【0017】
以上のように、本発明の除菌機能を有するコーティング製剤の実施例は、使用前は60%以上のエタノールを含有しているので、塗布直後はエタノールによる除菌機能が発揮され、皮膚に塗布後は、体温と塗擦熱でエタノールが揮散し、含有成分である抗菌剤とグリコール類の含有濃度が約3倍に上昇し、各抗菌活性値が高められるために、塗擦と同時に皮膚上に形成されたコーティングフィルムが高い抗菌活性を有することになる。このコーティングフィルムから抗菌剤が長時間にわたって徐放され、グリコール類の脱水効果と被膜自体の酸性が長時間の除菌機能を維持したものと考えられた。又、水分を全く含有しないことも菌の増殖抑制に寄与したものと考えられた。
尚、本発明の特徴を損なうものでなければ,上述した実施例に限定されるものでないことは勿論である。