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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170281
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】インクジェット用インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20221102BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221102BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076324
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】長西 克樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC01
2H186BA10
2H186DA14
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AE07
4J039AE09
4J039BE01
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA36
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】所望する画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成でき、かつ吐出安定性に優れるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】インクジェット用インクは、顔料と、特定ポリマーと、水性媒体とを含有する。前記特定ポリマーは、ポリオキシエチレン鎖を含む第1ブロックと、ポリアミノ酸鎖を含む第2ブロックとを有する。前記第1ブロックにおいて、前記ポリオキシエチレン鎖の平均重合度は、100以上200以下である。前記第2ブロックにおいて、前記ポリアミノ酸鎖の平均重合度は、60以上90以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、特定ポリマーと、水性媒体とを含有し、
前記特定ポリマーは、ポリオキシエチレン鎖を含む第1ブロックと、ポリアミノ酸鎖を含む第2ブロックとを有し、
前記第1ブロックにおいて、前記ポリオキシエチレン鎖の平均重合度は、100以上200以下であり、
前記第2ブロックにおいて、前記ポリアミノ酸鎖の平均重合度は、60以上90以下である、インクジェット用インク。
【請求項2】
前記第1ブロックは、下記一般式(A)で表され、
前記第2ブロックは、下記一般式(B)で表される、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【化1】
(前記一般式(A)において、mは、100以上200以下の整数を表し、
前記一般式(B)において、R1は、水素原子又は炭素原子数1以上15以下の1価の有機基を表し、nは、60以上90以下の整数を表し、複数のR1は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。)
【請求項3】
前記一般式(B)において、R1は、下記一般式(C)で表される1価の基を表す、請求項2に記載のインクジェット用インク。
【化2】
(前記一般式(C)において、R2は、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表し、R3は、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表し、*は、結合手を表す。)
【請求項4】
前記一般式(C)で表される1価の基は、下記化学式(c-1)又は(c-2)で表される1価の基を表す、請求項3に記載のインクジェット用インク。
【化3】
【請求項5】
前記特定ポリマーは、下記一般式(I)で表される、請求項1~4の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【化4】
(前記一般式(I)において、
4は、水素原子又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、
1は、-NH-、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、又は-NH-と炭素原子数1以上6以下のアルキレン基とを組み合わせた2価の基を表し、
m、n及びR1は、前記一般式(A)におけるm、並びに前記一般式(B)におけるn及びR1と同義である。)
【請求項6】
前記一般式(I)において、
4は、メトキシ基を表し、
1は、-CH2CH2CH2NH-又は-CH2CH2NH-を表す、請求項5に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
前記顔料100質量部に対する前記特定ポリマーの含有量は、15質量部以上60質量部以下である、請求項1~6の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
最大泡圧法による測定において、温度25℃、表面寿命10ミリ秒における動的表面張力は、38.0mN/m以上44.0mN/m以下である、請求項1~7の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
前記特定ポリマーの含有割合は、0.5質量%以上10.0質量%以下である、請求項1~8の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、一般的に、顔料及び水を含有する水性のインクジェット用インクが用いられている。インクジェット用インクには、所望する画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成でき、かつ吐出安定性に優れることが要求される。ここで、インクジェット用インクにより記録媒体に形成された画像は、形成された直後は濡れた状態にある。このような濡れた状態にある画像は、耐擦過性に劣る。そのため、インクジェット用インクには、形成される画像の耐擦過性を向上させる観点から、画像形成後に素早く乾燥することが要求される。インクジェット用インクを画像形成後に素早く乾燥させる方法としては、インクジェット用インクに界面活性剤又は浸透剤を添加する方法が一般的である。これにより、インクジェット用インクの表面張力が低下して記録媒体の内部に浸透し易くなり、その結果、画像形成後に素早く乾燥する。
【0003】
一方、記録媒体に対する浸透性が高すぎるインクジェット用インクは、画像形成時に顔料まで記録媒体の内部に浸透してしまい、画像濃度が低下する傾向がある。そこで、画像形成時に顔料が記録媒体の内部に浸透することを抑制しつつ、水性媒体のみを記録媒体に浸透させる方法として、例えば、ポリアミノ酸誘導体を含有するインクジェット用インクが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-279470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用インクは、吐出安定性が低下し易い傾向がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望する画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成でき、かつ吐出安定性に優れるインクジェット用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェット用インクは、顔料と、特定ポリマーと、水性媒体とを含有する。前記特定ポリマーは、ポリオキシエチレン鎖を含む第1ブロックと、ポリアミノ酸鎖を含む第2ブロックとを有する。前記第1ブロックにおいて、前記ポリオキシエチレン鎖の平均重合度は、100以上200以下である。前記第2ブロックにおいて、前記ポリアミノ酸鎖の平均重合度は、60以上90以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインクジェット用インクは、所望する画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成でき、かつ吐出安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、質量平均分子量(Mw)の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0010】
本明細書において、動的表面張力は、実施例に記載の方法又はこれに準ずる方法により測定された値である。
【0011】
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0012】
<インク>
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。本発明のインクは、顔料と、特定ポリマーと、水性媒体とを含有する。特定ポリマーは、ポリオキシエチレン鎖を含む第1ブロックと、ポリアミノ酸鎖を含む第2ブロックとを有する。第1ブロックの平均重合度は、100以上200以下である。第2ブロックの平均重合度は、60以上90以下である。
【0013】
本発明のインクの用途としては、特に限定されないが、ラインヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクとして好適である。
【0014】
本発明のインクは、上述の構成を備えることにより、所望する画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成でき、かつ吐出安定性に優れる。その理由は以下のように推察される。本発明のインクは、比較的親水性の高いブロックである第1ブロックと、比較的疎水性の高いブロックである第2ブロックとを有する特定ポリマーを含有する。本発明のインクにおいて、特定ポリマーは、例えば、顔料と共に複合体(以下、顔料粒子とする)を形成する。顔料粒子において、特定ポリマーは、第2ブロックが顔料の表面に吸着している。また、顔料粒子において、特定ポリマーは、第1ブロックを顔料粒子の表面に露出させている。顔料粒子は、比較的親水性の高い第1ブロックが表面に露出しているため、水性媒体に安定して分散することができる。このように、本発明のインクは、顔料粒子が安定して分散しているため、吐出安定性に優れる。
【0015】
また、本発明のインクが記録媒体の表面に着弾すると、特定ポリマーは、第1ブロックが水性媒体と共に記録媒体の内部に浸透しようとする一方で、第2ブロックは記録媒体の表面に留まろうとする。その結果、特定ポリマーは、第2ブロックが記録媒体の表面に留まり、第1ブロックが記録媒体に食い込んだ状態で、記録媒体の表面付近に存在する。そして、特定ポリマーは、第2ブロックによって顔料の表面に吸着し、顔料を記録媒体の表面に固着させる。これにより、本発明のインクは、所望の画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成できる。
【0016】
以下、本発明のインクについて、更に詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
[動的表面張力]
最大泡圧法による測定において、温度25℃、表面寿命10ミリ秒における本発明のインクの動的表面張力としては、38.0mN/m以上44.0mN/m以下が好ましく、40.0mN/m以上42.0mN/m以下がより好ましい。動的表面張力を38.0mN/m以上44.0mN/m以下とすることで、本発明のインクの吐出安定性を更に向上できる。
【0018】
[顔料]
本発明のインクにおいて、顔料は、例えば、特定ポリマーと共に顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する特定ポリマーとにより構成される。特定ポリマーは、例えば、溶媒に分散して存在する。本発明のインクの色濃度、色相、又は安定性を向上させる観点から、顔料粒子の散乱強度中位径としては、30nm以上200nm以下が好ましく、70nm以上130nm以下がより好ましい。
【0019】
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0020】
本発明のインクにおいて、顔料の含有割合としては、1.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。顔料の含有割合を1.0質量%以上とすることで、本発明のインクは、所望する画像濃度を有する画像を更に容易に形成できる。また、顔料の含有割合を15.0質量%以下とすることで、本発明のインクの流動性を向上できる。
【0021】
[特定ポリマー]
特定ポリマーは、ポリオキシエチレン鎖を含む第1ブロックと、ポリアミノ酸鎖を含む第2ブロックとを有する。すなわち、特定ポリマーは、ブロック共重合体である。特定ポリマーは、第1ブロックと第2ブロックとの連結部位、及び末端基を更に有してもよい。
【0022】
第1ブロックにおいて、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度は、100以上200以下であり、120以上170以下が好ましい。ポリオキシエチレン鎖の平均重合度を100以上とすることで、本発明のインクの吐出安定性を向上できる。また、本発明のインクにより形成される画像に所望する画像濃度を付与しつつ、画像の耐擦過性を向上できる。ポリオキシエチレン鎖の平均重合度を200以下とすることで、本発明のインクの吐出安定性を向上できる。
【0023】
なお、ポリオキシエチレン鎖とは、-CH2CH2O-が連続して配列している構造を示す。ポリオキシエチレン鎖の重合度とは、ポリオキシエチレン鎖における-CH2CH2O-の個数を示す。
【0024】
第2ブロックにおいて、ポリアミノ酸鎖の平均重合度は、60以上90以下であり、70以上85以下が好ましい。ポリアミノ酸鎖の平均重合度を60以上とすることで、本発明のインクの吐出安定性を向上できる。ポリアミノ酸鎖の平均重合度を90以下とすることで、本発明のインクの吐出安定性を向上できる。また、本発明のインクにより形成される画像に所望する画像濃度を付与しつつ、画像の耐擦過性を向上できる。
【0025】
なお、ポリアミノ酸鎖とは、アミノ酸に由来する繰り返し単位が連続して配列している構造を示す。ポリアミノ酸鎖の重合度とは、ポリアミノ酸鎖におけるアミノ酸に由来する繰り返し単位の個数を示す。
【0026】
第1ブロックの平均重合度に対する第2ブロックの平均重合度の比(第2ブロックの平均重合度/第1ブロックの平均重合度)としては、0.35以上1.00以下が好ましく、0.40以上0.50以下がより好ましい。
【0027】
なお、特定ポリマーにおけるポリオキシエチレン鎖の平均重合度及びポリアミノ酸鎖の平均重合度は、各々、1本の分子鎖から得られる値ではなく、本発明のインクに含有される特定ポリマーの全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値(質量平均値)である。
【0028】
第1ブロックは、例えば、エチレングリコール又はポリエチレングリコールに由来する。第2ブロックは、例えば、アミノ酸又はポリアミノ酸に由来する。特定ポリマーは、分子内に1つの第1ブロックを有してもよく、分子内に複数の第1ブロックを有してもよいが、1つの第1ブロックを有することが好ましい。特定ポリマーは、分子内に1つの第2ブロックを有してもよく、分子内に複数の第2ブロックを有してもよいが、1つの第2ブロックを有することが好ましい。即ち、特定ポリマーは、AB型ブロック共重合体であることが好ましい。
【0029】
アミノ酸は、分子内にアミノ基を有するカルボン酸又はカルボン酸無水物の総称である。但し、アミノ酸は、アミノ基の代わりにイミノ基を有していてもよい。第2ブロックは、1種のアミノ酸のみに由来してもよく、2種以上のアミノ酸に由来してもよい。アミノ酸は、L体及びD体の何れでもよいが、L体が好ましい。
【0030】
分子内にアミノ基を有するカルボン酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが挙げられる。
【0031】
分子内にアミノ基を有するカルボン酸無水物としては、例えば、α-アミノ酸-N-カルボキシ無水物(NCA)が挙げられる。NCAとしては、例えば、γ-ベンジル-L-グルタミン酸-N-カルボン酸無水物、β-ベンジル-L-アスパラギン酸-N-カルボン酸無水物、L-ロイシン-N-カルボン酸無水物、フェニルアラニン-N-カルボン酸無水物、L-プロリン-N-カルボン酸無水物、及びO-ベンジル-L-チロシン-N-カルボン酸無水物が挙げられる。
【0032】
アミノ酸は、分子内に疎水性基を有することが好ましい。疎水性基としては、炭素原子数3以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数7以上10以下のアラルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。第2ブロックの原料となるアミノ酸において、分子内に疎水性基を有するアミノ酸の質量比率としては、40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0033】
アミノ酸としては、NCAが好ましく、γ-ベンジル-L-グルタミン酸-N-カルボン酸無水物、又はβ-ベンジル-L-アスパラギン酸-N-カルボン酸無水物がより好ましい。
【0034】
第1ブロックは、下記一般式(A)で表されることが好ましい。第2ブロックは、下記一般式(B)で表されることが好ましい。
【0035】
【化1】
【0036】
一般式(A)において、mは、100以上200以下の整数を表す。一般式(B)において、R1は、水素原子又は炭素原子数1以上15以下の1価の有機基を表す。nは、60以上90以下の整数を表す。複数のR1は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0037】
mは、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度に相当する。nは、ポリアミノ酸鎖の平均重合度に相当する。
【0038】
一般式(B)において、R1は、下記一般式(C)で表される1価の基を表すことが好ましい。
【0039】
【化2】
【0040】
一般式(C)において、R2は、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表す。R3は、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。*は、結合手を表す。
【0041】
2で表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が挙げられ、メチレン基又はエチレン基が好ましい。
【0042】
3で表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基及びトリルメチル基が挙げられ、ベンジル基が好ましい。
【0043】
一般式(C)で表される1価の基としては、下記化学式(c-1)又は(c-2)で表される1価の基が好ましい。
【0044】
【化3】
【0045】
特定ポリマーとしては、下記一般式(I)で表されるポリマーが好ましい。
【0046】
【化4】
【0047】
一般式(I)において、R4は、水素原子又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。L1は、-NH-、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、又は-NH-と炭素原子数1以上6以下のアルキレン基とを組み合わせた2価の基を表す。m、n及びR1は、一般式(A)におけるm、並びに一般式(B)におけるn及びR1と同義である。
【0048】
4で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられ、メトキシ基が好ましい。
【0049】
1で表される2価の基としては、-CH2CH2CH2NH-又は-CH2CH2NH-が好ましい。-CH2CH2CH2NH-及び-CH2CH2NH-は、炭素原子側の結合手により、一般式(I)においてL1と隣接する酸素原子(第1ブロックの端部の酸素原子)と結合することが好ましい。同様に、-CH2CH2CH2NH-及び-CH2CH2NH-は、窒素原子側の結合手により、一般式(I)においてL1と隣接する炭素原子(第2ブロックの端部の酸素原子)と結合することが好ましい。
【0050】
特定ポリマーの合成方法としては、例えば、ポリエチレングリコールの一方の末端にアミノ基、又はアミノアルキル基(例えば、アミノエチル基、及びアミノプロピル基)を含む基を導入したポリエチレングリコール誘導体と、アミノ酸とを有機溶媒中で反応させる方法が挙げられる。ポリエチレングリコール誘導体は、他方の末端にアルコキシ基(例えば、メトキシ基及びエトキシ基)等の他の基が導入されていてもよい。
【0051】
特定ポリマーの合成に用いる有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。特定ポリマーの合成条件としては、例えば、反応温度15℃以上50℃以下、反応時間12時間以上36時間以下とすることができる。合成された特定ポリマーには、必要に応じて、アセチル化処理、及び加水素分解を行ってもよい。
【0052】
特定ポリマーの合成において、原料として用いるポリエチレングリコール誘導体の平均重合度を調整することにより、特定ポリマーの第1ブロックの平均重合度を調整することができる。特定ポリマーの合成において、原料として用いるアミノ酸の使用量(ポリエチレングリコール誘導体に対するモル比)を調整することにより、特定ポリマーの第2ブロックの平均重合度を調整することができる。
【0053】
本発明のインクにおいて、特定ポリマーの含有割合としては、0.5質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。特定ポリマーの含有割合を0.5質量%以上とすることで、本発明のインクにより形成される画像に所望する画像濃度を容易に付与できると共に、耐擦過性を更に向上でき、かつ吐出安定性を更に向上できる。特定ポリマーの含有割合を10.0質量%以下とすることで、本発明のインクの吐出安定性を更に向上できる。
【0054】
本発明のインクにおいて、顔料100質量部に対する特定ポリマーの含有量としては、15質量部以上60質量部以下が好ましく、25質量部以上45質量部以下がより好ましい。特定ポリマーの含有量を15質量部以上とすることで、本発明のインクにより形成される画像に所望する画像濃度を容易に付与できると共に、耐擦過性を更に向上でき、かつ吐出安定性を更に向上できる。特定ポリマーの含有量を60質量部以下とすることで、本発明のインクの吐出安定性を更に向上できる。
【0055】
[水性媒体]
本発明のインクが含有する水性媒体は、水を含む媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水のみを含む水性媒体、及び水と水溶性有機溶媒とを含む水性媒体が挙げられる。
【0056】
(水)
本発明のインクにおいて、水の含有割合としては、30.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上80.0質量%以下がより好ましい。水の含有割合を30.0質量%以上90.0質量%以下とすることで、本発明のインクの吐出安定性を更に向上できる。
【0057】
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0058】
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
【0059】
グリコールエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0060】
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0061】
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0062】
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0063】
水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物が好ましく、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、又は1,5-ペンタンジオールがより好ましい。
【0064】
本発明のインクにおける水溶性有機溶媒の含有割合としては、10.0質量%以上45.0質量%以下が好ましく、25.0質量%以上35.0質量%以下がより好ましい。
【0065】
[界面活性剤]
本発明のインクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。界面活性剤は、記録媒体に対する本発明のインクの浸透性(濡れ性)を向上させる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0066】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖、及びアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0067】
本発明のインクが界面活性剤を含有する場合、本発明のインクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.05質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
【0068】
[他の成分]
本発明のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
【0069】
[インクの製造方法]
本発明のインクは、例えば、顔料及び特定ポリマーを含む顔料分散液と、水と、必要に応じて配合される他の成分(例えば、水溶性有機溶媒及び界面活性剤)とを攪拌機により均一に混合することにより製造できる。本発明のインクの製造では、各成分を均一に混合した後、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
【0070】
(顔料分散液)
顔料分散液は、顔料及び特定ポリマーを含む分散液である。顔料分散液の分散媒としては、水が好ましい。
【0071】
顔料分散液において、顔料及び特定ポリマーにより構成される顔料粒子の散乱強度中位径としては、50nm以上200nm以下が好ましく、80nm以上130nm以下がより好ましい。
【0072】
顔料粒子の散乱強度中位径は、例えば、顔料分散液をイオン交換水で300倍に希釈した溶液を試料として、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定することができる。
【0073】
顔料分散液における顔料の含有割合としては、5.0質量%以上25.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。顔料分散液における特定ポリマーの含有割合としては、2.0質量%以上10.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましい。
【0074】
顔料分散液は、顔料と、特定ポリマーと、分散媒(例えば、水)と、必要に応じて添加される成分(例えば、界面活性剤)とをメディア型湿式分散機により湿式分散することで調製できる。メディア型湿式分散機による湿式分散では、メディアとして、例えば、小粒径ビーズ(例えば、D50が0.5mm以上1.0mm以下のビーズ)を用いることができる。ビーズの材質としては、特に限定されないが、硬質の材料(例えば、ガラス及びジルコニア)が好ましい。
【0075】
本発明のインクの製造において顔料分散液を添加する場合、インクの全原料に対する顔料分散液の割合としては、例えば、30.0質量%以上70.0質量%以下である。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0077】
なお、実施例において、各ポリマーの第1ブロックのポリオキシエチレン鎖の平均重合度は、合成原料となるポリエチレングリコール誘導体の平均重合度から求めた。各ポリマーの第2ブロックのポリアミノ酸鎖の平均重合度は、合成原料となるアミノ酸の使用量(ポリエチレングリコール誘導体に対する当量)から反応収率を考慮して算出した。
【0078】
[ポリマー(P-1)の合成]
アルゴン雰囲気下、第1ブロックの原料となるPEG-NH2(I)(日油株式会社製「SUNBRIGHT(登録商標)MEPA-050H」、ポリエチレングリコールの一方の末端にメトキシ基を導入し、他方の末端に3-アミノプロピル基を導入したポリエチレングリコール誘導体(I)、分子量6250、平均重合度140)30質量部を脱水ジメチルホルムアミド80質量部に溶解させた。得られた溶液に、第2ブロックの原料となるBLG-NCA(γ-ベンジル-L-グルタミン酸-N-カルボン酸無水物)を添加した。PEG-NH2(I)の添加量に対するBLG-NCAの添加量は、82当量とした。次に、上述の溶液を40℃で18時間攪拌することで反応させた。反応後の溶液にヘキサン及び酢酸エチルを含有する混合溶媒(ヘキサン75質量%:酢酸エチル25質量%)を添加して反応生成物を沈殿させた。得られた沈殿物を上述の混合溶媒で洗浄した。洗浄後の沈殿物を乾燥させることにより、粉末状のポリマー(P-1)を得た。ポリマー(P-1)の構造を下記化学式(P-1)に示す。ポリマー(P-1)は、第1ブロックのポリオキシエチレン鎖の平均重合度が140、第2ブロックのポリアミノ酸鎖の平均重合度が80であった。
【0079】
【化5】
【0080】
[ポリマー(P-2)の合成]
第1ブロックの原料として、ポリエチレングリコールの一方の末端にメトキシ基を導入し、他方の末端に3-アミノエチル基を導入したポリエチレングリコール誘導体(II)(日油株式会社製「SUNBRIGHT(登録商標)ME-050EA」、平均重合度140)20gを、400mLのDMSOに溶解させた。得られた反応溶液に、第2ブロックの原料として、γ-ベンジル-L-グルタメート-N-カルボン酸無水物30.0gを添加した後、30℃で17時間攪拌することで反応させた。別途、ジイソプロピルエーテル15,000mL及びエタノール600mLを混合して混合溶媒を得た。反応後の反応溶液に、上述の混合溶媒の全量を1時間かけて滴下した後、室温で一晩攪拌することで反応生成物を沈殿させた。次に、沈殿した反応生成物をろ取し、減圧下で乾燥させることにより、反応生成物(収量:42g)を得た。
【0081】
得られた反応生成物をDMF600mLに溶解させた。得られた反応溶液に無水酢酸8mLを加えた後、20℃で23時間攪拌してアセチル化反応させた。別途、ジイソプロピルエーテル6000mL及び酢酸エチル600mLを混合して混合溶媒を得た。アセチル化反応後の反応溶液に、上述の混合溶媒の全量を1時間かけて滴下した後、室温で一晩攪拌することでアセチル化反応生成物を沈殿させた。次に、沈殿したアセチル化反応生成物をろ取し、減圧下で乾燥させることにより、アセチル化反応生成物(39g)を得た。
【0082】
得られたアセチル化反応生成物をDMF700mLに溶解させた。得られた反応溶液に、5%パラジウム-炭素4gを加えた後、水素置換し、室温、1気圧下にて加水素分解反応を85時間行った。加水素分解反応後、反応溶液から5%パラジウム-炭素触媒をろ別した。別途、ヘプタン4500mL及び酢酸エチル2500mLを混合して混合溶媒を得た。加水素分解反応後の反応溶液に、上述の混合溶媒の全量を1時間かけて滴下した後、室温にて一晩攪拌することで加水素分解反応生成物を沈殿させた。次に、沈殿した加水素分解反応生成物をろ取した。これにより、加水素分解反応生成物を得た。
【0083】
得られた加水素分解反応生成物を5質量%食塩水2000mLに溶解させた。得られた溶液に2N水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpHを約10に調整した。pH調整後の溶液を分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー(カラム:ポリマー系逆相クロマトグラフィ用カラム(Shodex社製「Asahipak C8P-50 4D」)、カラム温度:40℃)で精製した後、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー(カラム:Shodex社製「IEC CM-825」、カラム温度:30℃)で更に精製した。精製後の溶液を減圧濃縮した後、凍結乾燥させることで加水素分解反応生成物であるポリマー(P-2)を得た。ポリマー(P-2)の構造を下記化学式(P-2)に示す。ポリマー(P-2)は、第1ブロックの平均重合度が140、第2ブロックの平均重合度が80であった。
【0084】
【化6】
【0085】
[ポリマー(P-3)の合成]
以下の点を変更した以外は、ポリマー(P-2)の合成と同様の方法により、ポリマー(P-3)を合成した。ポリマー(P-3)の合成では、第1ブロックの原料として、ポリエチレングリコール誘導体(II)20gの代わりに、上述のポリエチレングリコール誘導体(I)20gを用いた。また、ポリマー(P-3)の合成では、第2ブロックの原料として、γ-ベンジル-L-グルタメート-N-カルボン酸無水物30.0gの代わりに、β-ベンジル-L-アスパラギン酸-N-カルボン酸無水物30.0gを用いた。ポリマー(P-3)の構造を下記化学式(P-3)に示す。ポリマー(P-3)は、第1ブロックの平均重合度が140、第2ブロックの平均重合度が80であった。
【0086】
【化7】
【0087】
[ポリマー(P-4)の合成]
以下の点を変更した以外は、ポリマー(P-1)の合成と同様の方法により、ポリマー(P-4)を合成した。ポリマー(P-4)の合成では、PEG-NH2(I)の添加量に対するBLG-NCAの添加量を、82当量から102当量に変更した。また、反応において、反応時間を18時間から24時間に変更した。ポリマー(P-4)の構造を下記化学式(P-4)に示す。ポリマー(P-4)は、第1ブロックの平均重合度が140、第2ブロックの平均重合度が100であった。
【0088】
【化8】
【0089】
[ポリマー(P-5)の合成]
以下の点を変更した以外は、ポリマー(P-1)の合成と同様の方法により、ポリマー(P-5)を合成した。ポリマー(P-5)の合成では、PEG-NH2(I)の代わりに、PEG-NH2(II)(日油株式会社製「SUNBRIGHT DE-034PA」、分子量3600、平均重合度80)を用いた。また、反応において、反応時間を18時間から24時間に変更した。ポリマー(P-5)の構造を下記化学式(P-5)に示す。ポリマー(P-5)は、第1ブロックの平均重合度が80、第2ブロックの平均重合度が80であった。
【0090】
【化9】
【0091】
[ポリマー(P-6)の準備]
比較例に用いるポリマー(P-6)として、アミノ酸系分散剤(日本精化株式会社製「Plandool(登録商標)LG2」)を準備した。ポリマー(P-6)は、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチドデシル)を含んでいた。
【0092】
[ポリマー(P-7)の準備]
比較例に用いるポリマー(P-7)として、櫛形構造を有するアクリルポリマー分散剤(ビック・ケミー株式会社製「BYK-2015」)を準備した。
【0093】
[顔料分散液(D-1)の調製]
顔料としてのカーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製「MA100」)150質量部と、ポリマー(P-1)45質量部と、イオン交換水805質量部とを混合した後、ビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)で4時間の分散処理を行った。分散処理においては、メディアとして粒径0.3mmのジルコニアビーズを用いた。分散処理時の液温は、30℃以上40℃以下の範囲に制御した。これにより、顔料分散液(D-1)を得た。顔料分散液(D-1)に含まれる顔料粒子の散乱強度中位径は、110nmであった。
【0094】
[顔料分散液(D-2)~(D-9)の調製]
添加する成分の種類及び量を下記表1に示す通りに変更した以外は、顔料分散液(D-1)の調製と同様の方法により、顔料分散液(D-2)~(D-9)を調製した。
【0095】
下記表1において、「CB」は、カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製「MA100」)を示す。「Cy」は、銅フタロシアニン(山陽色素株式会社製「CYANINE Blue3025」)を示す。「Ma」は、キナクリドン(BASF株式会社製「Magenat D4500」)を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
<インクの調製>
下記表2に示す各成分を混合することにより、実施例1~5及び比較例1~4のインクを調製した。下記表2における略語を以下に説明する。
1,3-PrD:1,3-プロパンジオール
1,5-PeD:1,5-ペンタンジオール
1,2-HeD:1,2-ヘキサンジオール
界面活性剤(S-1):日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、アセチレングリコール型界面活性剤
界面活性剤(S-2):日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」、アセチレングリコール型界面活性剤
【0098】
【表2】
【0099】
<評価>
実施例1~5及び比較例1~4のインクの各々について、以下の方法により、形成される画像の画像濃度及び耐擦過性と、吐出安定性(詳しくは、連続吐出性及び間欠吐出性)とを評価した。なお、評価は、温度25℃、湿度50%RHの環境下において行った。また、実施例1~5及び比較例1~4のインクの各々について、以下の方法により、動的表面張力及び顔料粒子の散乱強度中位径を測定した。評価結果及び測定結果を下記表3に示す。
【0100】
[評価機]
評価においては、評価機として、ライン型記録ヘッド(ピエゾ方式)を備えるインクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機)を使用した。評価対象となるインク(実施例1~5及び比較例1~4のインクの何れか)は、評価機のブラック用インクタンク(実施例1~3及び比較例1~4)、シアン用インクタンク(実施例4)又はマゼンタ用インクタンク(実施例5)に充填した。評価機が吐出するインク1滴当たりの体積(1画素当たりのインク量)は、11.5pLに設定した。評価においては、記録媒体として、A4サイズの普通紙(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製「CC90」)を用いた。
【0101】
[画像濃度]
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像(サイズ:10cm×10cm、印字率:100%)を形成した。形成されたソリッド画像の画像濃度(ID)を反射濃度計(X-Rite社製「eXact」)で測定した。詳しくは、ソリッド画像中において無作為に選択した10箇所の画像濃度を上述の反射濃度計で測定し、10箇所の画像濃度の算術平均値を画像濃度の評価値とした。画像濃度は、以下の基準で判定した。
【0102】
良好(A):評価値が1.30以上
不良(B):評価値が1.30未満
【0103】
[耐擦過性]
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像(サイズ:10cm×10cm、印字率:100%)を形成した。次に、ソリッド画像を形成した記録媒体の上に未使用の記録媒体(評価用紙)を重ねて載せた。次に、評価用紙の上に直方体状の1kgの重りを置いた。この際、ソリッド画像の中心の直上に重りの重心が位置するように重りを配置した。次に、上述の重りを載せた状態で評価用紙を一定方向に10往復移動させることにより、評価用紙でソリッド画像を擦った(荷重1kg)。ソリッド画像から評価用紙に転写された汚れ画像の画像濃度を上述の反射濃度計(X-Rite社製「eXact」)で測定した。詳しくは、汚れ画像中において無作為に選択した10箇所の画像濃度を上述の反射濃度計で測定し、10箇所の画像濃度の算術平均値を耐擦過性の評価値とした。耐擦過性は、以下の基準で判定した。
【0104】
良好(A):評価値が0.008未満
不良(B):評価値が0.008以上
【0105】
[連続吐出性]
評価機を用いて、記録媒体の全面にソリッド画像(印字率:100%)を30分間形成し続けた。この際、記録ヘッドの駆動周波数を20kHzに設定した。次に、評価機を用いて記録媒体にノズルチェックパターンを形成し、ノズル抜け(吐出不良を起こしたノズル)の有無を確認した。連続吐出性は、以下の基準で判定した。なお、総ノズル数は2000本であった。
【0106】
合格(A):ノズル抜けなし
不合格(B):ノズル抜けあり
【0107】
[間欠吐出性]
連続吐出性の評価後、評価機のノズルのパージ動作及びワイプ動作を行った後、ノズルにキャップをして、評価機を25℃で6時間静置した。静置後、評価機を用いて記録媒体にノズルチェックパターンを形成し、ノズル抜け(吐出不良を起こしたノズル)の有無を確認した。間欠吐出性は、以下の基準で判定した。
【0108】
合格(A):ノズル抜けなし
不合格(B):ノズル抜けあり
【0109】
評価対象の吐出安定性は、連続吐出性及び間欠吐出性の両方が合格である場合に良好、連続吐出性及び間欠吐出性の少なくとも一方が不合格である場合に不良と判定した。
【0110】
[動的表面張力]
バブルプレッシャー式動的表面張力計(KRUSS社製「BP100」)を用いて、各インクの表面寿命10ミリ秒における動的表面張力を最大泡圧法により測定した。
【0111】
[散乱強度中位径]
各インクに含まれる顔料粒子について、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて散乱強度中位径を測定した。
【0112】
【表3】
【0113】
表1~3に示す通り、実施例1~5のインクは、顔料と、特定ポリマーと、水性媒体とを含有していた。特定ポリマーは、ポリオキシエチレン鎖を含む第1ブロックと、ポリアミノ酸鎖を含む第2ブロックとを有していた。第1ブロックにおけるポリオキシエチレン鎖の平均重合度は、100以上200以下であった。第2ブロックにおけるポリアミノ酸鎖の平均重合度は、60以上90以下であった。実施例1~5のインクは、所望する画像濃度を有しつつ耐擦過性に優れる画像を形成でき、かつ吐出安定性に優れていた。
【0114】
一方、比較例1のインクは、第2ブロックにおけるポリアミノ酸鎖の平均重合度が90超であるポリマー(P-4)を含有していた。ポリマー(P-4)は、ポリアミノ酸鎖の平均重合度が高いため、比較的疎水性が高い。そのため、ポリマー(P-4)は、顔料粒子を水性媒体に安定して分散させることが困難であり、かつ記録媒体の表面に顔料を留めることが困難であった。これにより、比較例1のインクは、形成される画像の画像濃度及び耐擦過性と、吐出安定性とが不良であった。
【0115】
比較例2のインクは、第1ブロックにおけるポリオキシエチレン鎖の平均重合度が100未満であるポリマー(P-5)を含有していた。ポリマー(P-5)は、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が低いため、比較的疎水性が高い。そのため、ポリマー(P-5)は、顔料粒子を水性媒体に安定して分散させることが困難であり、かつ記録媒体の表面に顔料を留めることが困難であった。これにより、比較例2のインクは、形成される画像の画像濃度及び耐擦過性と、吐出安定性とが不良であった。
【0116】
比較例3及び4のインクは、特定ポリマーの代わりに一般的な分散剤を含有していた。比較例3及び4のインクが含有する分散剤は、特定ポリマーのように記録媒体の表面に顔料を留めることができなかった。そのため、比較例3及びお4のインクは、形成される画像の耐擦過性が不良であった。また、比較例3及び4のインクが含有する分散剤は、インクの粘度を増大させ易い傾向があった。そのため、比較例3及び4のインクは、吐出安定性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のインクは、画像を形成するために用いることができる。