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特開2022-170299欠陥検査システムの自動学習方法及び学習モデル評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170299
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】欠陥検査システムの自動学習方法及び学習モデル評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G01N21/954 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076344
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591224744
【氏名又は名称】シグマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】江崎 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石倉 靖大
(72)【発明者】
【氏名】湯川 正洋
(72)【発明者】
【氏名】山川 博
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB02
2G051AC15
2G051BA10
2G051BC07
2G051CB01
2G051CC01
2G051EB01
2G051EB05
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】欠陥部位と誤判定部位との差を画像認識技術により判定するAI学習モデルの精度を効率的に上げることが可能な、欠陥検査システムの自動学習方法を提供する。
【解決手段】被検査体からの取得画像により欠陥候補4を検出する検査装置1と、検査装置1の検出結果を再判定する第1の学習モデル10と、第1の学習モデル10の判定結果を再判定する第2の学習モデル20とを備えた欠陥検査システムの自動学習方法であって、第1の学習モデル10が、欠陥装置1が検出した欠陥候補4を再判定して、第1の適合判定データ11と第1の欠陥判定データ12とに分類する第1ステップと、第2の学習モデル20が、第1の欠陥判定データ12を再判定して、第2の適合判定データ21と第2の欠陥判定データ22とに分類する第2ステップと、第2の適合判定データ21及び学習用欠陥データ5を第1の学習モデル10に学習させる第3ステップと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体からの取得画像により欠陥候補を検出する検査装置と、該検査装置の検出結果を再判定する第1の学習モデルと、該第1の学習モデルの判定結果を再判定する第2の学習モデルとを備えた欠陥検査システムの自動学習方法であって、
前記第1の学習モデルが、前記欠陥装置が検出した欠陥候補を再判定して、第1の適合判定データと第1の欠陥判定データとに分類する第1ステップと、
前記第2の学習モデルが、前記第1の欠陥判定データを再判定して、第2の適合判定データと第2の欠陥判定データとに分類する第2ステップと、
前記第2の適合判定データ及び学習用欠陥データを前記第1の学習モデルに学習させる第3ステップと、
を有することを特徴とする欠陥検査システムの自動学習方法。
【請求項2】
第3の分類手段が、前記第2の欠陥判定データを再判定して、第3の適合判定データと第3の欠陥判定データとに分類する第4ステップを有し、
前記第3の欠陥判定データを前記学習用欠陥データとすることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査システムの自動学習方法。
【請求項3】
第3の分類手段が、前記第2の欠陥判定データを再判定して、第3の適合判定データと第3の欠陥判定データとに分類する第4ステップと、
前記第3の適合判定データ及び前記学習用欠陥データを前記第2の学習モデルに学習させる第5ステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査システムの自動学習方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1つに記載の欠陥検査システムの自動学習方法において、学習後の第1の学習モデルに過去の判定済データを再判定させて評価することを特徴とする学習モデル評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体からの取得画像により欠陥検査を行う欠陥検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン部品等の被検査体の円筒状内面に存在する鋳巣、傷、バリなどの欠陥部位の検査の多くは、検査員の目視検査に頼っている。目視検査は多くの人手がかかるためコスト増の要因となり、品質のバラツキにも問題がある。
【0003】
これに対して、欠陥部位の検査を自動化した装置として、被検査体の内面に当てたレーザ光の反射光量を測定しながら内面全体を走査して測定した反射光量によって画像を形成し、得られた画像から欠陥部位の有無を判定する内面検査装置が提案されている。例えば、特許文献1には、判定対象部位からまず欠陥部位候補を検出し、検出した欠陥部位候補の中から、形状、大きさ、位置関係といった絞り込み条件に基づいて、欠陥部位を絞り込むようにして、欠陥部位の判定精度を高めるようにした内面検査装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-101938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の検査装置では、取得した画像から欠陥部位を検出する際に、正常部位を欠陥部位として判定する、いわゆる過検出の問題があった。例えば、欠陥判定条件を取得画像における暗部の縦横サイズ、面積等とした場合、欠陥である「鋳巣」と欠陥ではない「洗浄痕」とは判別が難しい。また、ドリル痕なども欠陥として誤判定してしまうこともある。
【0006】
これに対して、欠陥部位と誤判定部位との差を画像認識技術により判定するAI学習モデルを作成することが考えらえる。AI学習モデルの作成には、機械学習をさせるための学習用データを大量に用意する必要がある。しかしながら、例えば数千~数万のデータを人が目視で欠陥部位と誤判定部位とに分類して学習用データを作成するためには、非常に時間がかかりコスト増の要因となる。また誤分類をしてしまうと、学習モデルの精度が上がらない。また、数千~数万のデータのうち欠陥部位の数は極端に少ないため、学習モデル作成に必要な欠陥部位のデータが足りず、学習モデルの精度が上がらない。
【0007】
また、検査装置の経年劣化やレーザ受光部の汚れ等により取得画像の質が低下していくと、質の低い画像が学習用データとして使われてしまうため、学習モデルの精度が上がらなくなってしまう。
【0008】
また、作成した学習モデルの適切な評価を行う仕組みがなければ、学習モデルの精度を上げるための機械学習が適切に行われているかどうか、実際の欠陥検査への適用が可能かどうかといった判断ができない。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、欠陥部位と誤判定部位との差を画像認識技術により判定するAI学習モデルの精度を効率的に上げることが可能な、欠陥検査システムの自動学習方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の欠陥検査システムの自動学習方法は、被検査体からの取得画像により欠陥候補を検出する検査装置と、該検査装置の検出結果を再判定する第1の学習モデルと、該第1の学習モデルの判定結果を再判定する第2の学習モデルとを備えた欠陥検査システムの自動学習方法であって、前記第1の学習モデルが、前記欠陥装置が検出した欠陥候補を再判定して、第1の適合判定データと第1の欠陥判定データとに分類する第1ステップと、前記第2の学習モデルが、前記第1の欠陥判定データを再判定して、第2の適合判定データと第2の欠陥判定データとに分類する第2ステップと、前記第2の適合判定データ及び学習用欠陥データを前記第1の学習モデルに学習させる第3ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、第3の分類手段が、前記第2の欠陥判定データを再判定して、第3の適合判定データと第3の欠陥判定データとに分類する第4ステップを有し、前記第3の欠陥判定データを前記学習用欠陥データとすることを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、第3の分類手段が、前記第2の欠陥判定データを再判定して、第3の適合判定データと第3の欠陥判定データとに分類する第4ステップと、前記第3の適合判定データ及び前記学習用欠陥データを前記第2の学習モデルに学習させる第5ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の学習モデル評価方法は、本発明の欠陥検査システムの自動学習方法において、学習後の第1の学習モデルに過去の判定済データを再判定させて評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の欠陥検査システムの自動学習方法は、被検査体からの取得画像により欠陥候補を検出する検査装置と、検査装置の検出結果を再判定する第1の学習モデルと、第1の学習モデルの判定結果を再判定する第2の学習モデルとを備えた欠陥検査システムの自動学習方法である。そして、第1ステップで第1の学習モデルが、欠陥装置が検出した欠陥候補を再判定して、第1の適合判定データと第1の欠陥判定データとに分類し、第2ステップで第2の学習モデルが、第1の欠陥判定データを再判定して、第2の適合判定データと第2の欠陥判定データとに分類し、第3ステップで第2の適合判定データ及び学習用欠陥データを第1の学習モデルに学習させるようになっている。従って、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップを繰り返すことにより、第1の学習モデルに良質で大量の学習用データを学習させることができ、第1の学習モデルの精度を効率的に上げることができる。
【0015】
また、第4ステップで第3の分類手段が、第2の欠陥判定データを再判定して、第3の適合判定データと第3の欠陥判定データとに分類し、第3の欠陥判定データを学習用欠陥データとする場合には、第1の学習モデルに良質で大量の学習用欠陥データを学習させることができる。
【0016】
また、第4ステップで第3の分類手段が、第2の欠陥判定データを再判定して、第3の適合判定データと第3の欠陥判定データとに分類し、第5ステップで第3の適合判定データ及び学習用欠陥データを第2の学習モデルに学習させる場合には、第2の学習モデルに良質で大量の学習用データを学習させて第2の学習モデルの精度を効率的に上げ、さらに第1の学習モデルの精度を効率的に上げることができる。
【0017】
本発明の学習モデル評価方法は、本発明の欠陥検査システムの自動学習方法において、学習後の第1の学習モデルに過去の判定済データを再判定させて評価するものであり、作成した学習モデルを適切に評価し、学習モデルの精度を上げるための機械学習が適切に行われているかどうか、実際の欠陥検査への適用が可能かどうかといった判断をすることができる。
【0018】
このように、本発明の欠陥検査システムの自動学習方法によれば、欠陥部位と誤判定部位との差を画像認識技術により判定するAI学習モデルの精度を効率的に上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの検査の流れを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの自動学習方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの自動学習方法について説明する。本実施形態に係る欠陥検査システムは、被検査体の内面に当てたレーザ光の反射光量を測定しながら内面全体を走査して測定した反射光量によって画像を形成し、得られた画像から欠陥部位の有無を判定する内面検査装置である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る欠陥検査システムの検査の流れを示す図である。まず、(A)検査装置のプローブ1が検査開始位置に移動し、(B)プローブ1の先端がレーザ光を照射しながら回転して被検査体2の内面をスキャンし、(C)受光量の変化から欠陥候補を検出する。欠陥候補の検出においては、取得画像における暗部の縦横サイズ、面積等を判定条件とすることができる。検出された欠陥候補には、欠陥部位及び誤判定部位の両方が含まれている。
【0022】
そして、(D)欠陥部位と誤判定部位との差を画像認識技術により判定するAI学習モデル3により検査装置が検出した欠陥候補を再判定し、(E)欠陥の有無で被検査体のOK/NGを判定する。
【0023】
なお、AI学習モデル3は、ニューラルネットワークの中でも中間層があり、検査装置からの取得画像の特徴量を自動で抽出することの可能なディープラーニングを行うものであり、例えば、CNN(Convolution Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)等の公知技術を適用することができる。
【0024】
次に、AI学習モデル3の精度を上げるための自動学習方法について説明する。図2は、本実施形態に係る欠陥検査システムの自動学習方法の流れを示す図であり、検査装置1、第1の学習モデル10、第2の学習モデル20及び第3の分類手段30を備えている。自動学習の最終的な目標は、第1の学習モデル10の精度を上げて、図1に示すAI学習モデル3として使用することである。
【0025】
検査装置1は、被検査体からの取得画像により欠陥候補を検出するものである。第1の学習モデル10は、検査装置1の検出結果を再判定するものである。第2の学習モデル20は、第1の学習モデルの判定結果を再判定するものである。第3の分類手段は、第2の学習モデル20の判定結果を分類するものである。
【0026】
(第1ステップ)
第1ステップでは、検査装置1が検出した欠陥候補4を、第1の学習モデル10が再判定して、第1の適合判定データ11と第1の欠陥判定データ12とに分類する。検査装置1が検出した欠陥候補4には、欠陥部位ではないデータ(誤判定データ)が含まれており、第1の学習モデル10が再判定することにより、欠陥候補4の中から欠陥部位ではないデータが第1の適合判定データ11として分離される。これにより、欠陥候補4に含まれる誤判定データよりも、第1の欠陥判定データ12に含まれる誤判定データは少なくなる。
【0027】
(第2ステップ)
第2ステップでは、第1の学習モデル10が分類した第1の欠陥判定データ12を、第2の学習モデルが再判定して、第2の適合判定データ21と第2の欠陥判定データ22とに分類する。第1の学習モデル10が分類した第1の欠陥判定データ12には、欠陥部位ではないデータ(誤判定データ)が含まれており、第2の学習モデル20が再判定することにより、第1の欠陥判定データ12の中から欠陥部位ではないデータが第2の適合判定データ21として分離される。これにより、第1の欠陥判定データ12に含まれる誤判定データよりも、第2の欠陥判定データ22に含まれる誤判定データは少なくなる。
【0028】
(第3ステップ)
第3ステップでは、第2の適合判定データ21及び学習用欠陥データ5を第1の学習モデル10に学習させる。第2の適合判定データ21は、第1の学習モデル10が欠陥と判定したもののうち、第2の学習モデル20が適合と判定したものである。また、学習用欠陥データ5は、過去の欠陥データを蓄積したものを用いることができ、さらに後述する第4ステップで得られた第3の欠陥判定データ32を用いることができる。また、検査装置を使用する側が、明らかに欠陥として判定させたい種類のデータを、学習用欠陥データとして指定しておくこともできる。
【0029】
検査装置1による欠陥候補の検出が行われる度に、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップを繰り返すことにより、第1の学習モデル10に良質で大量の学習用データを学習させることができ、第1の学習モデル10の精度を効率的に上げることができる。
【0030】
(第4ステップ)
第4ステップでは、第2の学習モデル20が分類した第2の欠陥判定データ22を、第3の分類手段30が再判定して、第3の適合判定データ31と第3の欠陥判定データ32とに分類する。第2の学習モデル20が分類した第2の欠陥判定データ22には、欠陥部位ではないデータ(誤判定データ)が含まれており、第3の分類手段30が再判定することにより、第2の欠陥判定データ22の中から欠陥部位ではないデータが第3の適合判定データ31として分離される。これにより、第2の欠陥判定データ22に含まれる誤判定データよりも、第3の欠陥判定データ32に含まれる誤判定データは少なくなる。また、第3の欠陥判定データ32は、第3ステップで第1の学習モデル10に学習させる学習用欠陥データ5として用いられる。
【0031】
ここで、第3の分類手段30は、クラスタリングによる分類とすることができる。クラスタリングは、教師なし学習に該当し、AIが取得画像から特徴量を抽出し特徴量が類似している画像データごとにグルーピングして分類していくものである。学習用データを用意する必要がないため、比較的短時間でかつ労力をかけずにグルーピングすることが可能である。また、グルーピングに際し、人間が判断するのに比べて分類ミスが少ない ためバラツキを少なくすることができ、さらに人間が判断するのとは異なる特徴 量を見つけることも考えられる。
【0032】
一方、分類されたグループが適合判定データ及び欠陥判定データのいずれに該当するかについては、グルーピングのあとで別途人間が判断する必要がある。ただし、各々のグループの内容を比較して、適合と欠陥いずれのデータに該当するかを自動的に判断するような仕組みを別に構成してもよい。
【0033】
第3の分類手段30を、第1の学習モデル10及び第2の学習モデル20とは異なる分類手段とすることにより、新たな視点で学習用データを得られるため、さらなる精度の向上につながるものと考えられる。
【0034】
(第5ステップ)
第5ステップでは、第3の適合判定データ31及び学習用欠陥データ5を第2の学習モデル20に学習させる。第3の適合判定データ31は、第2の学習モデル20が欠陥と判定したもののうち、第3の分類手段30が適合と判定したものである。また、学習用欠陥データ5は、第3ステップにおいて第1の学習モデル10に学習させるものと同一である。
【0035】
検査装置1による欠陥候補の検出が行われる度に、第2ステップ、第4ステップ、第5ステップを繰り返すことにより、第2の学習モデル20に良質で大量の学習用データを学習させることができ、第2の学習モデル20の精度を効率的に上げることができる。そして、第2の学習モデル20の精度向上により、第1の学習モデル10の精度がさらに向上していく。
【0036】
このように、第1の学習モデル10及び第2の学習モデル20という2種類の学習モデルを組み合わせることにより、第1の学習モデル10に対して誤分類のない良質で大量の学習用データを提供し、精度を上げていくことができる。
【0037】
また、AI学習モデル(第1の学習モデル10、第2の学習モデル20)とクラスタリング(第3の分類手段30)とを組み合わせることにより、効率よく学習用データを分類できるとともに、新たな視点で学習用データを得て、さらなる精度向上につながるものと考えられる。
ことができる。
【0038】
(劣化画像除外)
次に、劣化画像除外について説明する。検査装置1の経年劣化やレーザ受光部の汚れ等により取得画像の質が低下していくと、質の低い画像が学習用データとして使われてしまうため、学習モデルの精度が上がらなくなってしまう。そこで、被検査体2からの取得画像を正常画像と劣化画像とに分類し、劣化画像を学習用データから除外する構成とすることができる。
【0039】
正常画像と劣化画像との判定基準としては、取得画像が徐々に暗くなった場合や、取得画像が徐々にぼやけてきた場合等とすることができ、学習モデルの精度が低下すると考えられる閾値を予め設定しておく。そして、閾値を超えたら劣化画像であると判定し、学習用データから除外する。劣化画像だけを除外しながら自動学習を継続することもできるが、自動学習自体を停止してもよい。その際には、管理者にメンテナンス時期を通知するメールを送信するなどして知らせることに用いることもできる。
【0040】
正常画像と劣化画像との判定は、例えば第2の学習モデル20にデータが送られてきた段階で行うことができるが、その他のステップにおいて行ってもよい。さらに、正常画像と劣化画像とを判定する劣化画像判定学習モデルを構成して用いることもできる。
【0041】
(学習モデル評価)
次に、学習モデル評価について説明する。作成した学習モデルの適切な評価を行う仕組みがなければ、学習モデルの精度を上げるための機械学習が適切に行われているかどうか、実際の欠陥検査への適用が可能かどうかといった判断ができない。そこで、学習後の第1の学習モデルに過去の判定済データを再判定させて評価する構成とすることができる。
【0042】
評価の指標としては、過剰判定率を用いることができる。学習前の第1の学習モデルと比べて学習後の第1の学習モデルによる過剰判定率が低ければ、過剰判定率が改善されていることになる。このとき、作成した学習モデルに再判定させる過去の判定済データは、出来るだけ直近のデータを使用することが好ましい。また、過剰判定率の比較評価にあたっては、欠陥の見逃しはない前提で行う。
【0043】
なお、学習モデルは、欠陥及び過検出の種類毎に複数作成することができる。また、同種の欠陥及び過検出を判定する学習モデルを複数用意して、OR条件で該当したデータを分類していくこともできる。
【0044】
本実施形態に係る欠陥検査システムの自動学習方法は、被検査体1からの取得画像により欠陥候補4を検出する検査装置1と、検査装置1の検出結果を再判定する第1の学習モデル10と、第1の学習モデル10の判定結果を再判定する第2の学習モデル20とを備えた欠陥検査システムの自動学習方法である。そして、第1ステップで第1の学習モデル10が、欠陥装置1が検出した欠陥候補4を再判定して、第1の適合判定データ11と第1の欠陥判定データ12とに分類し、第2ステップで第2の学習モデル20が、第1の欠陥判定データ12を再判定して、第2の適合判定データ21と第2の欠陥判定データ22とに分類し、第3ステップで第2の適合判定データ21及び学習用欠陥データ5を第1の学習モデル10に学習させるようになっている。従って、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップを繰り返すことにより、第1の学習モデル10に良質で大量の学習用データを学習させることができ、第1の学習モデル10の精度を効率的に上げることができる。
【0045】
また、第4ステップで第3の分類手段30が、第2の欠陥判定データ22を再判定して、第3の適合判定データ31と第3の欠陥判定データ32とに分類し、第3の欠陥判定データ32を学習用欠陥データ5とするので、第1の学習モデル10に良質で大量の学習用欠陥データを学習させることができる。
【0046】
また、第4ステップで第3の分類手段30が、第2の欠陥判定データ22を再判定して、第3の適合判定データ31と第3の欠陥判定データ32とに分類し、第5ステップで第3の適合判定データ31及び学習用欠陥データ5を第2の学習モデル20に学習させるので、第2の学習モデル20に良質で大量の学習用データを学習させて第2の学習モデル20の精度を効率的に上げ、さらに第1の学習モデル10の精度を効率的に上げることができる。
【0047】
また、被検査体1からの取得画像を正常画像と劣化画像とに分類し、劣化画像を学習用データから除外するので、低質の画像が学習用データとして使われないようにして、学習モデルの精度低下を防止することができる。
【0048】
また、学習後の第1の学習モデル10に過去の判定済データを再判定させて評価するので、作成した学習モデルを適切に評価し、学習モデルの精度を上げるための機械学習が適切に行われているかどうか、実際の欠陥検査への適用が可能かどうかといった判断をすることができる。
【0049】
このように、本実施形態に係る発明の欠陥検査システムの自動学習方法によれば、欠陥部位と誤判定部位との差を画像認識技術により判定するAI学習モデルの精度を効率的に上げることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの自動学習方法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、欠陥検査システムを、被検査体の内面に当てたレーザ光の反射光量を測定しながら内面全体を走査して測定した反射光量によって画像を形成し、得られた画像から欠陥部位の有無を判定する内面検査装置としたが、被検査体からの取得画像により欠陥候補を検出する検査装置であれば、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 検査装置(プローブ)
2 被検査体
3 AI学習モデル
4 欠陥候補
5 学習用欠陥データ
10 第1の学習モデル
11 第1の適合判定データ
12 第1の欠陥判定データ
20 第2の学習モデル
21 第2の適合判定データ
22 第2の欠陥判定データ
30 第3の分類手段
31 第3の適合判定データ
32 第3の欠陥判定データ
図1
図2