(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170301
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20221102BHJP
F04B 41/06 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F04B49/06 331Z
F04B41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076348
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
(72)【発明者】
【氏名】任 之家
【テーマコード(参考)】
3H076
3H145
【Fターム(参考)】
3H076AA16
3H076AA39
3H076BB31
3H076BB45
3H076CC98
3H145AA05
3H145AA16
3H145AA26
3H145AA42
3H145BA02
3H145BA28
3H145DA32
3H145FA16
(57)【要約】
【課題】所定の圧縮機ユニットの試運転を行う場合において、圧縮機の稼働率の低下を抑制する。
【解決手段】圧縮機は、気体を圧縮する圧縮機本体と圧縮機本体を駆動するモータとを有する圧縮機ユニットと、複数の圧縮機ユニットの台数制御を行う制御装置と、を備える。複数の圧縮機ユニットは同一の配管に接続される。制御装置は、台数制御の対象の圧縮機ユニットの台数制御を継続しながら、台数制御の対象外の圧縮機ユニットを起動させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮する圧縮機本体と前記圧縮機本体を駆動するモータとを有する圧縮機ユニットと、
複数の前記圧縮機ユニットの台数制御を行う制御装置と、を備え、
前記複数の圧縮機ユニットは同一の配管に接続され、
前記制御装置は、前記台数制御の対象の圧縮機ユニットの台数制御を継続しながら、前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットを起動させる
圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記制御装置は、
前記複数の圧縮機ユニットに異常があるか否かを判定し、
異常があると判定した圧縮機ユニットを停止させるとともに台数制御の対象外とし、
異常がないと判定した圧縮機ユニットの台数制御を継続しながら、異常があると判定した前記圧縮機ユニットを再起動させる
圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の圧縮機において、
前記制御装置は、
前記圧縮機ユニットに異常があると判定した場合、異常があると判定した前記圧縮機ユニットに停止フラグを設定し、
前記停止フラグが設定されていない前記圧縮機ユニットに対する前記台数制御を継続しながら、前記停止フラグが設定されている前記圧縮機ユニットを停止させ前記台数制御の対象から除外する除外処理を実行し、
前記停止フラグが設定されていない前記圧縮機ユニットに対する前記台数制御を継続しながら、前記停止フラグが設定されている前記圧縮機ユニットを再起動させる試運転処理を実行し、
前記除外処理が実行された後、前記試運転処理が完了していない場合には、前記停止フラグの設定の解除を不可能とし、
前記除外処理が実行された後、前記試運転処理が完了している場合には、前記停止フラグの設定の解除を可能とする
圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の圧縮機において、
前記制御装置は、
予め定められた複数の停止条件のいずれかが成立した場合、成立した前記停止条件に応じた停止フラグを設定し、
設定された前記停止フラグに基づいて、前記試運転処理の実行可否を決定し、
前記複数の停止条件には、前記圧縮機ユニットに異常がある場合に成立する停止条件が含まれる
圧縮機。
【請求項5】
請求項3に記載の圧縮機において、
前記台数制御の対象の圧縮機ユニットの台数制御を行っているときに、
前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットの前記停止フラグの設定が解除されると、前記台数制御を継続しながら、前記停止フラグの設定が解除された前記圧縮機ユニットを前記台数制御の対象に含める
圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記モータへの電力の供給と遮断を切り替える電磁開閉器を備え、
前記制御装置は、前記電磁開閉器により前記モータに電力を供給することにより、前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットを一定速度で所定時間動作させて停止させる
圧縮機。
【請求項7】
請求項1に記載の圧縮機において、
電力を前記モータに供給するインバータを備え、
前記制御装置は、前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットの前記モータを最低速度で所定時間動作させて停止させる
圧縮機。
【請求項8】
請求項1に記載の圧縮機において、
電力を前記モータに供給するインバータを備え、
前記制御装置は、前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットの前記モータの回転速度を最低速度から所定速度まで時間の経過にしたがって徐々に増加させる
圧縮機。
【請求項9】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記制御装置は、前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットが複数ある場合、前記複数の前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットを1台ずつ駆動させる
圧縮機。
【請求項10】
請求項3に記載の圧縮機において、
前記制御装置は、前記試運転処理が実行された前記圧縮機ユニットから発生する音、前記モータに供給される電流、及び、前記圧縮機本体の温度の少なくともいずれかに基づいて、前記試運転処理が実行された前記圧縮機ユニットに異常があるか否かを判定し、その判定結果を出力する
圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインにおけるプレス機等の工作機械の空圧アクチュエータの動力源として利用される圧縮気体、及びエアブローガン、エアドリル等の空気工具に利用される圧縮気体を生成する圧縮機が知られている。特許文献1には、複数の圧縮機ユニット(圧縮モジュール)が並列に接続され、システムの運転を継続しながら、メンテナンス対象の圧縮機ユニットのみを運転停止状態として、その圧縮機ユニットをメンテナンスすることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、異常検知等で停止した圧縮機ユニットをメンテナンスする場合、メンテナンス中に他の圧縮機ユニットの動作を継続することはできる。しかしながら、特許文献1には、異常検知等により停止した圧縮機ユニットが正常に動作するか否かを確認するための試運転を行う際の圧縮機ユニットの制御については、何ら開示されていない。
【0005】
一般的に、同一の電源で駆動される複数台の圧縮機ユニットを備える圧縮機では、圧縮機ユニットの故障が発生した場合、故障した当該圧縮機ユニットの運転を停止させる。当該圧縮機ユニットは、点検や交換を実施後に試運転し、通常通りの運転に再度加えられる。このとき、すべての圧縮機ユニットが同一の電源から電力供給を受けているため、当該圧縮機ユニットの運転を停止したとしても、その部品は通電している状態である。通電している状態で部品交換等を行うのは作業者の安全を損なう虞があるため、圧縮機全体を一度停止させて故障している部分を交換する場合が多い。
【0006】
しかしながら、故障の種類によっては、部品交換や触れて点検を行う必要がない場合がある。この場合、試運転において、所定の圧縮機ユニットが正常であることを確認した後、圧縮機全体による通常の制御に復帰する。このように、試運転を行うに際し、一度、圧縮機全体を停止させる場合、圧縮機の稼働率の向上の観点で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による圧縮機は、気体を圧縮する圧縮機本体と前記圧縮機本体を駆動するモータとを有する圧縮機ユニットと、複数の前記圧縮機ユニットの台数制御を行う制御装置と、を備える。前記複数の圧縮機ユニットは同一の配管に接続される。前記制御装置は、前記台数制御の対象の圧縮機ユニットの台数制御を継続しながら、前記台数制御の対象外の圧縮機ユニットを起動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の圧縮機ユニットが異常検知等により停止した場合、他の圧縮機ユニットによる台数制御運転を妨げることなく、所定の圧縮機ユニットを起動させて試運転を行い、正常であることを確認した上で台数制御運転に組み込むことができる。所定の圧縮機ユニットの試運転の際に、他の圧縮機ユニットの台数制御運転を妨げることがないため、圧縮機の稼働率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る圧縮機の構成について示す図である。
【
図2】
図2は、圧縮機ユニットの断面模式図である。
【
図3】
図3は、圧縮機の操作方法について説明する図である。
【
図4】
図4は、制御装置により実行される台数制御の一例について示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、台数制御中に停止条件が成立した場合に圧縮モジュールを停止させる制御の内容について示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、台数制御中に行われる圧縮モジュールの試運転及び台数制御への復帰の制御の内容について示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態の変形例に係る制御装置により試運転モードが設定された場合の制御の内容について示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る圧縮機の構成について示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の変形例に係る制御装置によるモータの速度制御に用いられる目標回転速度テーブルについて示す図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る圧縮機の構成について示す図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る制御装置により試運転モードが設定された場合の制御の内容について示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例1に係る制御装置に記憶されている停止フラグと試運転処理の実行可否との関係について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧縮機について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧縮機10の構成について示す図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る圧縮機10は、圧縮空気等の圧縮気体を生成する3台の圧縮モジュール101A,101B,101Cと、3台の圧縮モジュール101A,101B,101Cから吐出される圧縮気体が供給される主吐出配管105と、主吐出配管105に設けられる第2アフタークーラ142と、主吐出配管105における第2アフタークーラ142の下流側に設けられる第3アフタークーラ143と、主吐出配管105における第3アフタークーラ143の下流側に設けられるドライヤ144と、主吐出配管105におけるドライヤ144の下流側に設けられる圧力センサ131と、3台の圧縮モジュール101A,101B,101Cの台数制御を行う制御装置(制御基板)180と、これらの部品の多くを収容するパッケージ筐体11と、を備える。
【0012】
パッケージ筐体11内に格納される複数の圧縮モジュール101A,101B,101C、制御装置180、及びそのほかの電気部品には、いずれもパッケージ筐体11外の同一の電源(図示せず)からの電力が供給される。電源からの電力供給路は、パッケージ筐体11内で分岐され、複数の圧縮モジュール101A,101B,101C、制御装置180、及びそのほかの電気部品に接続される。
【0013】
3台の圧縮モジュール101A,101B,101Cは、それぞれ同じ構成であるため、これらを総称して圧縮モジュール101と記す。圧縮モジュール101は、圧縮機本体110とモータ120とを有する圧縮機ユニット100と、モータ120への電力の供給と遮断を切り替える電磁開閉器140と、圧縮機本体110の吸込口に接続され異物を捕捉するフィルタ150と、圧縮機本体110から吐出される圧縮気体が供給されるモジュール配管104と、モジュール配管104に設けられる逆止弁151と、モジュール配管104における逆止弁151の下流側に設けられる第1アフタークーラ141と、を備える。逆止弁151は、圧縮機本体110から第1アフタークーラ141に向かう気体の流れを許容し、第1アフタークーラ141から圧縮機本体110に向かう気体の流れを禁止する。したがって、逆止弁151は、圧縮モジュール101が停止したときに、主吐出配管105側から圧縮機本体110に圧縮気体が逆流することを防止する。3台の圧縮モジュール101のモジュール配管104は、同一の主吐出配管105に接続される。
【0014】
制御装置180には、電磁開閉器140、ドライヤ144、操作パネル170、通信装置190、圧力センサ131、温度センサ132及び周囲温度センサ133が接続されている。圧力センサ131は、圧縮機10の吐出圧力を検出し、その検出結果を制御装置180に出力する。温度センサ132は、圧縮機本体110の温度を検出し、その検出結果を制御装置180に出力する。周囲温度センサ133は、圧縮機10の周囲の温度を検出し、その検出結果を制御装置180に出力する。
【0015】
制御装置180は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ181、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、磁気記憶装置であるハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ182、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ183、入力インタフェース、出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、制御装置180は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0016】
不揮発性メモリ182には、台数制御等を実現するための制御プログラムを含む、各種処理の実行に必要なプログラム、データ等の情報が格納されている。すなわち、不揮発性メモリ182は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。プロセッサ181は、不揮発性メモリ182に記憶されたプログラムを揮発性メモリ183に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入力インタフェース、不揮発性メモリ182及び揮発性メモリ183から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0017】
入力インタフェースは、操作パネル170、通信装置190、圧力センサ131、温度センサ132及び周囲温度センサ133、電磁開閉器140等から入力された信号をプロセッサ181で演算可能なデータに変換する。また、出力インタフェースは、プロセッサ181での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を電磁開閉器140、ドライヤ144及び通信装置190等に出力する。
【0018】
制御装置180は、第1電磁開閉器140Aを制御することにより、第1圧縮機ユニット100Aを一定速度で動作させるか、停止させる。制御装置180は、第2電磁開閉器140Bを制御することにより、第2圧縮機ユニット100Bを一定速度で動作させるか、停止させる。制御装置180は、第3電磁開閉器140Cを制御することにより、第3圧縮機ユニット100Cを一定速度で動作させるか、停止させる。電磁開閉器140は、電磁接触器と、サーマルリレー(熱動継電器)とを有する。サーマルリレーは、モータ120に流れる過電流を検知して接点を動作させることにより、モータ120を停止させる。これにより、モータ120の焼損を防止する。サーマルリレーによる過電流の検知信号は、制御装置180に出力される。制御装置180は、サーマルリレーからの検知信号に基づき、モータ120の過電流を検出する。
【0019】
圧縮機ユニット100から吐出された圧縮気体は、逆止弁151を通過し、第1アフタークーラ141に供給される。第1アフタークーラ141で冷却された圧縮気体は、モジュール配管104を通じて主吐出配管105に供給される。つまり、第1~第3圧縮機ユニット100A~100Cから吐出された圧縮気体は、主吐出配管105で合流し、第2アフタークーラ142に供給され、冷却される。第2アフタークーラ142で冷却された圧縮気体は第3アフタークーラ143に供給され、冷却される。第3アフタークーラ143で冷却された圧縮気体は、ドライヤ144に供給される。ドライヤ144は、圧縮気体を冷却風との熱交換によって除湿する。つまり、ドライヤ144は、圧縮気体からドレンを除去する熱交換器である。ドライヤ144で除湿された圧縮気体は、装置出口部から外部のタンク(不図示)に導かれる。図示しないが、タンクは、出力配管を介して空圧機器に接続され、出力配管に設けられる弁装置を開閉することにより、空圧機器に向けて圧縮気体を供給する。空圧機器は、例えば、工作機械に用いられる空圧アクチュエータや、エアブローガン、エアドリル等のエア工具である。
【0020】
図2を参照して、圧縮機ユニット100の構成について説明する。
図2は、圧縮機ユニット100の断面模式図である。
図2に示すように、圧縮機ユニット100は、空気等の気体を圧縮する圧縮機本体110と、圧縮機本体110を駆動するモータ(電動機)120と、冷却風を発生させる冷却ファン130と、を有する。本実施形態に係る圧縮機本体110は、スクロール方式と呼ばれる圧縮方式で気体を圧縮する。圧縮機本体110は、互いに対向するように配置される固定スクロール111と旋回スクロール112とを有し、固定スクロール111と旋回スクロール112との間で圧縮室113を構成し、旋回運動によって圧縮室113内の空気を圧縮する。
【0021】
固定スクロール111は、円板状に形成された鏡板111aと、鏡板111aからモータ120側に向かって突出するように設けられた渦巻状のラップ部111bと、鏡板111aからモータ120側とは反対側に向かって突出するように設けられた複数の冷却フィン111cと、を有する。
【0022】
旋回スクロール112は、円板状に形成された鏡板112aと、鏡板112aから固定スクロール111側に向かって突出するように設けられた渦巻状のラップ部112bと、鏡板112aからモータ120側に向かって突出するように設けられた複数の冷却フィン112cと、を有する。
【0023】
固定スクロール111のラップ部111bの先端面には、ラップ部111bの先端面と旋回スクロール112の鏡板112aとの間をシールするシール部材であるチップシール111dが設けられている。旋回スクロール112のラップ部112bの先端面には、ラップ部112bの先端面と固定スクロール111の鏡板111aとの間をシールするシール部材であるチップシール112dが設けられている。
【0024】
圧縮室113は、固定スクロール111のラップ部111bと旋回スクロール112のラップ部112bの間に形成され、チップシール111d,112dによって気密に保持される。圧縮室113は、旋回スクロール112が順方向に旋回運動するときに、ラップ部111b,112bの径方向外側から径方向内側に向かって移動しつつ、ラップ部111b,112bの間で連続的に縮小される。これにより、外部から圧縮室113に供給された気体が圧縮され、圧縮された気体がラップ中央の吐出口からモジュール配管104(
図1参照)に吐出される。
【0025】
モータ120は、ステータコアにステータコイルが装着されたステータ121と、ステータ121と空隙を介して配置されたロータ122と、ロータ122に固着されたシャフト123と、を備える。ステータ121とロータ122は、モータハウジング内に収容され、シャフト123はモータハウジングに設けられる軸受124A,124Bによって回転可能に支持される。図示しない電源から供給される交流電力が、電磁開閉器140を介してステータコイルに供給されることで、回転磁界が形成され、ロータ122がシャフト123と共に回転する。
【0026】
なお、本実施形態に係るモータ120は、アキシャルギャップ型のモータであって、圧縮機本体110を同軸で駆動する構成であるが、モータ120の型式はこれに限られるものではない。モータ120はインナーロータ型やアウターロータ型のようなラジアルギャップ型、あるいはリニア型のものを用いても構わない。
【0027】
モータ120の動力は、シャフト123を介して旋回スクロール112と冷却ファン130に伝達される。モータ120が回転することにより、旋回スクロール112が回転して気体が圧縮されるとともに、冷却ファン130が回転することにより、冷却風が発生する。冷却風は、モータ120及び圧縮機本体110に向かって流れ、モータ120と圧縮機本体110を冷却する。なお、冷却ファン130によって発生した冷却風が、固定スクロール111の冷却フィン111c及び旋回スクロール112の冷却フィン112cに流れるように、冷却風を案内する部材(ダクト等)を設けてもよい。
【0028】
固定スクロール111の冷却フィン111cには、圧縮機本体110の温度を検出する温度センサ132が取り付けられる。
【0029】
図3を参照して、圧縮機10の操作方法について説明する。
図3に示すように、圧縮機10のパッケージ筐体11の正面側には、操作パネル170が取り付けられている。操作パネル170は、使用者に圧縮機10の状態を知らせるための複数の表示部171a,171bを有している。表示部171aは、液晶ディスプレイのようなデジタルディスプレイであり、圧力センサ131により検出された圧縮機10の吐出圧力、及び圧縮機10の運転時間等を表示する。なお、表示部171aは、7セグメントLED(発光ダイオード)を複数有する7セグメントディスプレイでもよい。複数の表示部171bは、LEDなどから構成される。表示部171bは、所定の色で点灯、点滅するなどして、圧縮機10の運転状態、選択中の制御モード、圧縮機10の異常の有無等を使用者に知らせる。
【0030】
操作パネル170は、使用者によって操作される複数の操作スイッチ172a~172dを有している。複数の操作スイッチ172a~172dには、運転開始を指示するための運転スイッチ172a、運転停止を指示するための停止スイッチ172b、設定の変更を指示するためのメニュースイッチ172c、及び、表示部171aの表示内容を切り替えるための表示切替スイッチ172dが含まれる。
【0031】
使用者は、操作パネル170の操作スイッチ172a~172dを操作することにより、圧縮機10の運転を開始したり、停止したり、設定を変更したり、表示部171aの表示内容を切り替えたりすることができる。なお、本実施形態では、圧縮機10と無線通信を行う情報端末90を用いて、圧縮機10の操作が可能である。情報端末90は、使用者が携帯可能なスマートフォン、タブレット、ウェアラブル機器等の様々な携帯端末である。
【0032】
情報端末90には、圧縮機10の運転状態を監視したり、圧縮機10を遠隔から操作したりするための圧縮機用アプリケーションがインストールされている。圧縮機10及び情報端末90は、相互の情報を無線通信により、やり取りしている。圧縮機10の通信装置190(
図1参照)は、所定の周波数帯域を感受帯域とする通信アンテナを含む通信インタフェースを有する。
【0033】
圧縮機10と情報端末90との通信方法は、種々の方法を採用することができる。例えば、圧縮機10と情報端末90とは、広域ネットワークである通信回線8を介して、情報の授受を行うようにしてもよい。なお、通信回線8は、インターネット、4G,5G等の携帯電話通信網(移動通信網)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等である。また、圧縮機10と情報端末90とは、通信回線8を介さずに、直接的に情報の授受を行うことが可能な近距離無線通信方式として、Bluetooth(登録商標)を採用することができる。なお、近距離無線通信方式は、Bluetoothに限定されず、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)などの通信方式を採用することもできる。
【0034】
情報端末90は、インストールされている圧縮機用アプリケーションを起動し、情報端末90のタッチパネル93上で所定の操作を行うことにより、圧縮機10の動作を制御することができる。情報端末90は、表示部兼入力部として機能するタッチパネル93における状態表示領域91に、操作パネル170の表示部171a,171bの表示内容と同様の表示内容を表示する。また、情報端末90は、タッチパネル93における操作領域92に、操作パネル170の操作スイッチ172a~172dと同様の運転スイッチ92a、停止スイッチ92b、メニュースイッチ92c及び表示切替スイッチ92dが表示される。情報端末90の使用者は、操作スイッチ92a~92dをタッチ操作することにより、圧縮機10の運転を開始したり、停止したり、設定を変更したり、タッチパネル93の表示内容を切り替えたりすることができる。
【0035】
なお、情報端末90は、圧縮機10の操作及び監視のみを行う専用の情報端末であってもよい。この場合、パッケージ筐体11から着脱自在とされた操作パネル170を情報端末90として用いることもできる。なお、操作パネル170による操作方法と情報端末90による操作方法は、同様である。このため、以下では代表して、操作パネル170の操作に基づく制御装置180の制御内容について説明し、情報端末90の操作に基づく制御装置180の制御内容については説明を省略する。
【0036】
図1及び
図4を参照して、制御装置180により実行される台数制御について説明する。
図1に示す制御装置180は、圧力センサ131により検出された圧力を記憶する機能と、各圧縮機ユニット100の累積運転時間を計測し記憶する機能と、モータ120を運転させたり、停止させたりする機能とを有する。圧力センサ131は、タンク(不図示)に接続される主吐出配管105に設けられている。つまり、圧力センサ131により検出される圧力は、タンク内の圧力と略同じ値となる。
【0037】
制御装置180は、電磁開閉器140A~140Cに運転指令を出力し、電磁開閉器140A~140Cを動作させることにより、圧縮機ユニット100A~100Cのモータ120を一定速度で回転させる。制御装置180は、電磁開閉器140A~140Cのそれぞれに個別に運転指令を出力することにより、圧縮モジュール101A~101Cを個別に動作させることができる。例えば、制御装置180は、圧縮モジュール101A~101Cのうちの1台を選択して運転したり、圧縮モジュール101A~101Cのうちの2台を選択して運転したり、圧縮モジュール101A~101Cを全て選択して運転したりすることができる。
【0038】
台数制御において、制御装置180は、圧力センサ131により検出された圧力が、下限圧力Pminから上限圧力Pmaxまでの圧力範囲内に維持されるように、圧縮モジュール101の運転台数を制御する。上限圧力Pmax及び下限圧力Pminは、予め不揮発性メモリ182に記憶されている。なお、不揮発性メモリ182に記憶されている上限圧力Pmax及び下限圧力Pminは、操作パネル170を操作することにより、変更することができる。
【0039】
図4は、制御装置180により実行される台数制御の一例について示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートの処理は、運転スイッチ172aが操作されることにより開始され、初期設定が行われた後、所定のサンプリング周期Ts(例えば、200ms)で繰り返し実行される。
【0040】
ステップS10において、制御装置180は、圧力センサ131により検出された圧力P(t)を取得し、ステップS15へ進む。ステップS15において、制御装置180は、ステップS10で取得した圧力P(t)が下限圧力Pmin未満であるか否かを判定する。ステップS15において、圧力P(t)が下限圧力Pmin未満であると判定されると、処理がステップS20へ進む。ステップS20において、制御装置180は、圧縮モジュール101A~101Cを全台起動し、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。すなわち、サンプリング周期Ts経過後に実行される次の演算サイクルのステップS10に進む。
【0041】
ステップS15において、圧力P(t)が下限圧力Pmin以上であると判定された場合、処理がステップS25へ進む。ステップS25において、制御装置180は、ステップS10で取得した圧力P(t)が上限圧力Pmax以上であるか否かを判定する。ステップS25において、圧力P(t)が上限圧力Pmax以上であると判定されると、処理がステップS30へ進む。ステップS30において、制御装置180は、圧縮モジュール101A~101Cを全台停止させ、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。すなわち、サンプリング周期Ts経過後に実行される次の演算サイクルのステップS10に進む。
【0042】
ステップS25において、圧力P(t)が上限圧力Pmax未満であると判定された場合、処理がステップS35へ進む。ステップS35において、制御装置180は、1つ前の演算サイクルのステップS10において取得した圧力P(t-1)と、現在の演算サイクルのステップS10において取得した圧力P(t)を用いて、以下の式(1)により、圧力変化率Kを演算する。
K=(P(t)-P(t-1))/Ts …(1)
圧力変化率Kは、圧縮機10の吐出圧力の時間的な変化率である。
【0043】
圧力変化率Kの演算処理(ステップS35)が完了すると、処理がステップS40へ進む。ステップS40において、制御装置180は、ステップS35で演算された圧力変化率Kが負の値であるか否かを判定する。ステップS40において、圧力変化率Kが負の値であると判定された場合、すなわち吐出圧力が下降中である場合、処理がステップS50へ進む。ステップS40において、圧力変化率Kが負の値でないと判定された場合、処理がステップS45へ進む。
【0044】
ステップS50において、制御装置180は、以下の式(2)のように、下限圧力PminとステップS10で取得した現在の圧力P(t)との差をステップS35で演算した圧力変化率Kで割ることによって、現時点から下限圧力Pminに到達するまでの予測時間Tdを演算する。
Td=(Pmin-P(t))/K …(2)
予測時間Tdの演算処理(ステップS50)が完了すると、ステップS60へ進む。
【0045】
ステップS60において、制御装置180は、予測時間Tdが予め決められた第1時間閾値Td1(例えば2秒)未満であるか否かを判定する。第1時間閾値Td0は、不揮発性メモリ182に記憶されている。ステップS60において、予測時間Tdが第1時間閾値Td0未満であると判定されると、処理がステップS70へ進む。ステップS60において、予測時間Tdが第1時間閾値Td0以上であると判定されると、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0046】
ステップS70において、制御装置180は、圧縮モジュール101の運転台数を1台増加させることを決定し、ステップS80へ進む。ステップS80において、制御装置180は、累積運転時間が最短であり、かつ、停止中の圧縮モジュール101を優先的に起動させて、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0047】
ステップS45において、制御装置180は、ステップS35で演算された圧力変化率Kが正の値であるか否かを判定する。ステップS45において、圧力変化率Kが正の値であると判定された場合、すなわち吐出圧力が上昇中である場合、処理がステップS55へ進む。ステップS45において、圧力変化率Kが正の値でないと判定された場合、すなわち、圧力変化率Kが0であり圧力変化が無い場合、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0048】
ステップS55において、制御装置180は、以下の式(3)のように、上限圧力PmaxとステップS10で取得した現在の圧力P(t)との差をステップS35で演算した圧力変化率Kで割ることによって、現時点から上限圧力Pmaxに到達するまでの予測時間Tuを演算する。
Tu=(Pmax-P(t))/K …(3)
予測時間Tuの演算処理(ステップS55)が完了すると、ステップS65へ進む。
【0049】
ステップS65において、制御装置180は、予測時間Tuが予め決められた第2時間閾値Tu0(例えば5秒)未満であるか否かを判定する。第2時間閾値Tu0は、不揮発性メモリ182に記憶されている。ステップS65において、予測時間Tuが第2時間閾値Tu0未満であると判定されると、処理がステップS75へ進む。ステップS65において、予測時間Tuが第2時間閾値Tu0以上であると判定されると、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0050】
ステップS75において、制御装置180は、圧縮モジュール101の運転台数を1台減少させることを決定し、ステップS85へ進む。ステップS85において、制御装置180は、累積運転時間が最長の圧縮モジュール101を優先的に停止させて、本演算サイクルにおける
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0051】
以上のとおり、本実施形態に係る制御装置180は、空気使用量に応じて変化する圧力P(t)に基づいて、圧縮モジュール101の運転台数を制御する。制御装置180は、上限圧力Pmaxを上回る前に圧縮モジュール101の運転台数を減少させることにより、無駄な消費電力を省くことができる。また、制御装置180は、下限圧力Pminを下回る前に、圧縮モジュール101の運転台数を増加させることにより、必要な空気量を適切に空圧機器に供給できる。制御装置180は、累積運転時間の短い圧縮モジュール101を優先的に起動させ、累積運転時間の長い圧縮モジュール101を優先的に停止させる。このため、各圧縮モジュール101の累積運転時間を平均化することができる。その結果、各圧縮モジュール101のメンテナンスを同時期に並行して行うことにより、圧縮機10が稼働していない時間を最小限にすることができる。
【0052】
なお、台数制御の処理の流れは、
図4に示す例に限られない。台数制御は、複数台の圧縮モジュール101によって目的の圧力を生成できる制御であればよく、処理の流れには種々の態様を採用することができる。例えば、制御装置180は、圧力センサ131により検出された圧力P(t)が下限圧力Pmin未満になったときに台数制御対象の複数台の圧縮モジュール101を一斉に起動させる処理と、圧力センサ131により検出された圧力P(t)が上限圧力Pmax以上になったときに台数制御対象の複数台の圧縮モジュール101を一斉に停止させる処理と、を繰り返し行う台数制御を実行してもよい。
【0053】
制御装置180は、複数台の圧縮モジュール101に異常があるか否かを個別に判定する。制御装置180は、圧縮モジュール101に異常があると判定した場合、異常があると判定した圧縮モジュール101に停止フラグを設定する。制御装置180は、停止フラグが設定されていない圧縮モジュール101に対する台数制御を継続しながら、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を停止させ台数制御の対象から除外する除外処理を実行する。このように、制御装置180が、異常があると判定した圧縮モジュール101を停止させるとともに台数制御の対象外とすることにより、それ以降の圧縮モジュール101の消耗(チップシール111d,112dの劣化、逆止弁151の損傷等)を防止することができる。なお、除外処理において、制御装置180は、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を停止させた後、台数制御の対象から除外してもよいし、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を台数制御の対象から除外した後、停止させてもよい。
【0054】
さらに、制御装置180は、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101の情報を表示部171a,171bに表示させる。停止フラグが設定されている圧縮モジュール101、すなわち停止フラグが設定されたことにより停止した圧縮モジュール101は、停止フラグが解除されない限り、台数制御に復帰することができない。
【0055】
使用者は、表示部171a,171bの表示態様により、異常の検知等により圧縮モジュール101が停止したこと、及び停止した理由(例えば、異常の内容)について知ることができる。本実施形態に係る制御装置180により検知される異常には、温度異常、及び電流異常がある。なお、本実施形態に係る制御装置180は、異常を検知したときだけでなく、圧縮モジュール101の累積運転時間がメンテナンス時間に到達した場合にも停止フラグを設定する。以下、台数制御の実行中に、圧縮モジュール101を停止させる条件(以下、停止条件とも記す)について、詳しく説明する。
【0056】
制御装置180は、以下の第1~第3停止条件が成立したか否かを判定する。制御装置180は、第1~第3停止条件のいずれかが成立した場合、停止フラグを設定し、停止フラグの設定された圧縮モジュール101を停止させる。
(第1停止条件)圧縮機本体110の温度T1と圧縮機10の周囲温度T2の差である温度差ΔTが温度閾値T0以上である。すなわち、温度異常が発生している。
(第2停止条件)サーマルリレーにより過電流が検知されている。すなわち、電流異常が発生している。
(第3停止条件)累積運転時間がメンテナンス時間に到達している。
なお、上述のように、複数の停止条件(第1~第3停止条件)には、圧縮機ユニット100に異常がある場合に成立する停止条件(第1及び第2停止条件)が含まれる。
【0057】
制御装置180による第1停止条件が成立しているか否かを判定する処理は、温度異常があるか否かを判定する処理と同義である。チップシール111d,112dが経年劣化すると、圧縮室113からチップシール111d,112dを通じて圧縮気体が漏れ、再び、圧縮室113に吸引されて圧縮されることにより、圧縮気体の温度が正常時よりも上昇する。つまり、チップシール111d,112dが劣化し、シール漏れが発生すると、制御装置180によって温度異常が検知される。
【0058】
なお、本実施形態では、圧縮機本体110の温度と圧縮機10の周囲温度の差に基づいて、温度異常が発生しているか否かを判定している例について説明するが、圧縮機本体110の温度のみに基づいて温度異常が発生しているか否かを判定してもよい。しかしながら、圧縮機本体110の温度は、圧縮機10が設置される環境によって影響を受ける。例えば、圧縮機10が設置される部屋の温度が高ければ、部屋の温度が低い場合に比べて圧縮機本体110の温度が高くなる。このため、本実施形態のように、圧縮機10の周囲温度(部屋の温度)と、圧縮機本体110の温度との差に基づいて、温度異常が発生しているか否かを判定することで、精度よく温度異常を検知することができる。
【0059】
また、本実施形態では、温度センサ132が冷却フィン111cに設置される例について説明するが、圧縮室113内の温度と一定の関係を有する部位の温度を検出可能であれば、温度センサ132は冷却フィン111c以外の場所に設置してもよい。
【0060】
制御装置180による第2停止条件が成立しているか否かを判定する処理は、電流異常があるか否かを判定する処理と同義である。上述したように、チップシール111d,112dが経年劣化すると、圧縮室113からチップシール111d,112dを通じて圧縮気体が漏れ、再び、圧縮室113に吸引されて圧縮されることがある。高圧側の圧縮室113から低圧側の圧縮室113に圧縮気体が流入すると、圧縮機本体110を駆動させるのに必要な力が大きくなる。この場合、モータ駆動電流が正常時よりも上昇する。つまり、チップシール111d,112dが劣化し、シール漏れが発生すると、制御装置180によって電流異常が検知される。
【0061】
また、ラップ部111b,112bが経年劣化等により変形すると、固定スクロール111のラップ部111bと旋回スクロール112のラップ部112bとが接触することがある。ラップ部同士が接触すると、圧縮機本体110を駆動させるのに必要な力が大きくなる。この場合、モータ駆動電流が正常時よりも上昇する。つまり、ラップ部111b,112bが劣化し、ラップ部同士の接触が発生すると、制御装置180によって電流異常が検知される。
【0062】
また、軸受124A,124Bが経年劣化した場合にも、圧縮機本体110を駆動させるのに必要な力が大きくなるため、モータ駆動電流が正常時よりも上昇する。つまり、軸受124A,124Bが劣化すると、制御装置180によって電流異常が検知される。
【0063】
なお、本実施形態では、電磁開閉器140に設けられているサーマルリレーの動作に基づいて、電流異常を検知する例について説明するが、電磁開閉器140とモータ120とを接続する電力ラインの電流を電流センサで検出し、その検出結果に基づいて、電流異常を検知してもよい。しかしながら、電流センサを設ける場合、その分、圧縮機10のコストが高くなる。このため、本実施形態のように、電磁開閉器140のサーマルリレーの動作に基づいて電流異常を検知する構成とすることにより、圧縮機10のコストを低減することができる。
【0064】
第1停止条件が成立した場合、制御装置180は、停止フラグとして、温度異常停止フラグFt(j)を設定する(Ft(j)=1)。第2停止条件が成立した場合、制御装置180は、停止フラグとして、電流異常停止フラグFi(j)を設定する(Fi(j)=1)。第3停止条件が成立した場合、制御装置180は、停止フラグとして、メンテナンス停止フラグFm(j)を設定する(Fm(j)=1)。なお、jは、第1~第3圧縮モジュール101A~101Cを識別するための1~3の数字である。例えば、第1圧縮モジュール101Aに対応付けられる停止フラグにおいてj=1となり、第2圧縮モジュール101Bに対応付けられる停止フラグにおいてj=2となり、第3圧縮モジュール101Cが設定されている停止フラグにおいてj=3となる。
【0065】
制御装置180は、温度センサ132により検出された圧縮機本体110の温度T1(j)と、周囲温度センサ133により検出された圧縮機10の周囲の温度T2との差(以下、温度差)ΔT(j)を演算する(ΔT(j)=T1(j)-T2)。制御装置180は、圧縮モジュール101毎に温度差ΔT(j)を演算する。つまり、制御装置180は、第1温度センサ132Aにより検出された温度T1(1)と、周囲温度センサ133により検出された温度T2の差を第1圧縮モジュール101Aの温度差ΔT(1)として演算する。同様に、制御装置180は、第2温度センサ132Bにより検出された温度T1(2)と、周囲温度センサ133により検出された温度T2の差を第2圧縮モジュール101Bの温度差ΔT(2)として演算する。また、制御装置180は、第3温度センサ132Cにより検出された温度T1(3)と、周囲温度センサ133により検出された温度T2の差を第3圧縮モジュール101Cの温度差ΔT(3)として演算する。
【0066】
制御装置180は、各圧縮モジュール101の温度差ΔT(j)が温度閾値T0以上であるか否かを判定する。温度閾値T0は、予め不揮発性メモリ182に記憶されている。制御装置180は、温度差ΔT(j)が温度閾値T0未満である場合、第1停止条件は成立していないと判定して温度異常停止フラグFt(j)を非設定状態のまま維持する(Ft(j)=0)。制御装置180は、温度差ΔTが温度閾値T0以上である場合、第1停止条件が成立していると判定して温度異常停止フラグFt(j)を設定する(Ft(j)=1)。温度異常停止フラグFt(j)は、圧縮モジュール101の圧縮機ユニット100の温度異常が検知されたことを表す停止フラグであって、第1停止条件が成立していると判定された圧縮モジュール101に対応付けて設定される。
【0067】
制御装置180は、電磁開閉器140のサーマルリレーからの過電流の検知信号に基づいて、電磁開閉器140のサーマルリレーにより過電流が検知されたか否かを判定する。制御装置180は、サーマルリレーにより過電流が検知されていない場合、第2停止条件が成立していないと判定して電流異常停止フラグFi(j)を非設定状態のまま維持する(Fi(j)=0)。制御装置180は、サーマルリレーにより過電流が検知された場合、第2停止条件が成立していると判定して電流異常停止フラグFi(j)を設定する(Fi(j)=1)。電流異常停止フラグFi(j)は、圧縮モジュール101の圧縮機ユニット100の過電流が検知されたことを表す停止フラグであって、第2停止条件が成立していると判定された圧縮モジュール101に対応付けて設定される。
【0068】
制御装置180は、累積運転時間toがメンテナンス時間to0に到達したか否かを判定する。メンテナンス時間to0は、予め不揮発性メモリ182に記憶されている。制御装置180は、累積運転時間toがメンテナンス時間to0未満の場合、第3停止条件が成立していないと判定してメンテナンス停止フラグFm(j)を非設定状態のまま維持する(Fm(j)=0)。制御装置180は、累積運転時間toがメンテナンス時間to0以上の場合、第3停止条件が成立していると判定してメンテナンス停止フラグFm(j)を設定する(Fm(j)=1)。メンテナンス停止フラグFm(j)は、メンテナンス時期に達したことを表す停止フラグであって、第3停止条件が成立していると判定された圧縮モジュール101に対応付けて設定される。
【0069】
上述したように、停止フラグが設定された圧縮モジュール101は、停止フラグの設定を解除しない限り、台数制御に組み込まれない。制御装置180は、操作パネル170からの操作指令に基づいて、停止した圧縮モジュール101の試運転を行う。試運転により、使用者が異常の無いことを確認した場合、使用者は停止フラグを解除する操作を行う。これにより、停止フラグの設定が解除され、試運転を行った圧縮モジュール101を台数制御に復帰させることができる。
【0070】
本実施形態に係る制御装置180は、停止フラグが設定されていない圧縮モジュール101に対する台数制御を継続しながら、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を再起動させ、所定時間運転する試運転処理を実行する。つまり、制御装置180は、台数制御の対象の圧縮モジュール101の台数制御を継続しながら、台数制御の対象外の圧縮モジュール101を起動させる。例えば、制御装置180は、温度異常がないと判定した圧縮モジュール101の台数制御を継続しながら、温度異常があると判定した圧縮モジュール101を再起動させる。
【0071】
なお、制御装置180は、除外処理が実行された後、試運転処理が完了していない場合には、停止フラグの設定の解除を不可能とし、除外処理が実行された後、試運転処理が完了している場合には、停止フラグの設定の解除を可能とする。
【0072】
以下、
図5を参照して台数制御中に停止条件が成立した場合に圧縮モジュール101を停止させる制御の内容について詳しく説明する。上述したように、運転スイッチ172aが操作されると、制御装置180の台数制御(
図5のステップS1、
図4のフローチャート)が実行される。
図5に示すように、台数制御(ステップS1)の実行中、制御装置180は、ステップS105~S190の処理を所定のサンプリング周期で繰り返し実行する。
【0073】
ステップS105において、制御装置180は、第1~第3停止条件が成立したか否かを判定する処理を実行する。制御装置180は、停止条件が成立したと判定した場合、停止条件が成立したと判定した圧縮モジュール101に対応付けて停止フラグを設定する。例えば、制御装置180は、第1圧縮モジュール101Aに対して第1停止条件が成立したと判定した場合、第1圧縮モジュール101Aの温度異常停止フラグFt(1)を非設定状態(オフ)から設定状態(オン)に切り替える(Ft(1)=0→Ft(1)=1)。また、例えば、制御装置180は、第2圧縮モジュール101Bに対して第2停止条件が成立したと判定した場合、第2圧縮モジュール101Bの電流異常停止フラグFi(2)を非設定状態(オフ)から設定状態(オン)に切り替える(Fi(2)=0→Fi(2)=1)。また、例えば、制御装置180は、第3圧縮モジュール101Cに対して第3停止条件が成立したと判定した場合、第3圧縮モジュール101Cのメンテナンス停止フラグFm(3)を非設定状態(オフ)から設定状態(オン)に切り替える(Fm(3)=0→Fm(3)=1)。
【0074】
停止判定処理(ステップS105)が完了すると、処理がステップS110へ進む。ステップS110において、制御装置180は、複数の圧縮モジュール101の少なくとも一つにおいて、停止フラグが設定されたか否かを判定する。ステップS110において、複数の圧縮モジュール101の全てにおいて、停止フラグが設定されていないと判定されると、処理がステップS190へ進む。ステップS110において、複数の圧縮モジュール101の少なくとも一つにおいて、停止フラグが設定されたと判定された場合、処理がステップS115へ進む。
【0075】
ステップS115において、制御装置180は、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を停止させる停止処理を実行し、ステップS120へ進む。
【0076】
ステップS120において、制御装置180は、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を台数制御から除外する除外処理を実行し、ステップS190へ進む。
【0077】
ステップS190において、制御装置180は、停止スイッチ172bが操作されたか否かを判定する。ステップS190において、停止スイッチ172bが操作されていないと判定されると、処理がステップS105に戻る。ステップS190において、停止スイッチ172bが操作されたと判定されると、処理がステップS195へ進む。ステップS195において、制御装置180は、全ての圧縮モジュール101を停止させ、
図5のフローチャートに示す処理を終了する。
【0078】
以下、
図6を参照して、台数制御中に行われる圧縮モジュール101の試運転及び台数制御への復帰の制御の内容について詳しく説明する。操作パネル170により、試運転を開始させる操作が行われると、制御装置180は、試運転モードを設定する。
図6に示す処理は、試運転モードが設定されることにより実行される。
図6に示すように、試運転モードが設定されると、ステップS130において、制御装置180は、試運転を行う圧縮モジュール101の選択操作を使用者に促す選択操作画面を表示部171aに表示させる。選択操作画面は、例えば、試運転を行う圧縮モジュール101の番号(例えば、1~3)を表示する画面である。表示切替スイッチ172dが操作される度に、表示部171aにおける圧縮モジュール101の番号が切り替えられる。試運転を行う圧縮モジュール101を表す番号が表示されているときに、メニュースイッチ172cが操作されると、制御装置180は、試運転本体選択画面に表示されている番号に対応する圧縮モジュール101を、試運転を行う圧縮モジュール101として選択する。なお、停止していない圧縮モジュール101の試運転を行うことはできない。
【0079】
ステップS130において、試運転を行う圧縮モジュール101が選択されると、処理がステップS135へ進む。ステップS135において、制御装置180は、ステップS130で選択された圧縮モジュール101のモータ120に対して、電磁開閉器140により電力を供給することにより、モータ120を一定速度で所定時間tpだけ動作させる試運転処理を実行する。所定時間tpは、圧縮モジュール101の異常を確認することのできる時間であればよく、数秒~数分程度の値が設定される。初期設定において、所定時間tpは、数秒程度に設定し、操作パネル170により、所定時間tpを変更できるようにすることが好ましい。試運転の時間を数秒程度にすることにより、圧縮モジュール101のさらなる消耗(劣化)を抑制することができる。また、操作パネル170により所定時間tpを変更可能とすることにより、必要に応じて所定時間tpを初期設定時よりも長い時間に変更して異常の確認の精度を向上させることができる。
【0080】
なお、ステップS135において、制御装置180は、圧縮機10から吐出される気体の流量の変化を抑えるために、台数制御により運転中の圧縮モジュール101を所定時間tpだけ停止させてもよい。例えば、制御装置180は、第1圧縮モジュール101A及び第2圧縮モジュール101Bの2台が運転されている場合であって、停止フラグが設定されている第3圧縮モジュール101Cの試運転が行われるときには、第3圧縮モジュール101Cを起動させるとともに第1圧縮モジュール101Aまたは第2圧縮モジュール101Bの運転を停止させてもよい。
【0081】
試運転処理(ステップS135)が完了すると、ステップS140へ進む。ステップS140において、制御装置180は、フラグ解除選択画面を表示部171aに表示させる。フラグ解除選択画面は、例えば、停止フラグを解除するか否かの選択操作を使用者に促す画面である。表示切替スイッチ172dが操作される度に、フラグ解除選択画面に表示される選択内容として「y」と「n」の表示が切り替わる。
【0082】
ステップS140において、制御装置180は、停止フラグを解除する操作が行われたか否かを判定する。ステップS140において、表示部171aに「y」が表示されているときに、メニュースイッチ172cが操作されると、制御装置180は、停止フラグを解除する操作が行われたと判定し、ステップS145へ進む。ステップS140において、表示部171aに「n」が表示されているときに、メニュースイッチ172cが操作されると、制御装置180は、試運転を行った圧縮モジュール101の停止フラグを解除することなく、試運転モードを終了する。なお、停止フラグを解除する操作方法は、これに限定されない。
【0083】
ステップS145において、制御装置180は、試運転を行った圧縮モジュール101の停止フラグの設定を解除してステップS150へ進む。ステップS150において、制御装置180は、ステップS145で停止フラグの設定を解除した圧縮モジュール101を台数制御の対象に含め、試運転モードを終了する。停止フラグが設定された圧縮モジュール101の試運転中、停止フラグが設定されていない圧縮モジュール101は台数制御運転を継続している。つまり、ステップS150において、停止フラグの設定が解除された圧縮モジュール101が、台数制御運転に復帰することになる。
【0084】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0085】
(1)圧縮機10は、気体を圧縮する圧縮機本体110と圧縮機本体110を駆動するモータ120とを有する圧縮機ユニット100と、複数の圧縮機ユニット100の台数制御を行う制御装置180と、を備える。複数の圧縮機ユニット100は同一の配管(主吐出配管105)に接続される。制御装置180は、台数制御の対象の圧縮機ユニット100の台数制御を継続しながら、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100を起動させる。
【0086】
この構成によれば、所定の圧縮機ユニット100(例えば、第3圧縮機ユニット100C)が異常検知等により停止した場合、他の圧縮機ユニット(例えば、第1及び第2圧縮機ユニット100A,100B)による台数制御運転を妨げることなく、所定の圧縮機ユニット(例えば、第3圧縮機ユニット100C)を起動させて試運転を行い、正常であることを確認した上で台数制御運転に組み込むことができる。所定の圧縮機ユニット100の試運転の際に、他の圧縮機ユニット100の台数制御運転を妨げることがないため、圧縮機10の稼働率を向上することができる。
【0087】
(2)制御装置180は、複数の圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定する。制御装置180は、異常があると判定した圧縮機ユニット100を停止させるとともに台数制御の対象外とし、異常がないと判定した圧縮機ユニット100の台数制御を継続しながら、異常があると判定した圧縮機ユニット100を再起動させる。
【0088】
この構成によれば、異常がないと判定された圧縮機ユニット100の台数制御運転を妨げることなく、異常があると判定された圧縮機ユニット100を再起動させて試運転を行い、正常であることを確認した上で台数制御運転に組み込むことができる。したがって、誤検知により、異常があると判定された圧縮機ユニット100を速やかに台数制御に復帰させることができる。例えば、圧縮機10が設置される部屋のドアが開いて外気が部屋の中に流入することにより、周囲温度T2が急激に低下することがある。このときの圧縮機本体110の温度T1(j)の低下度合いは、周囲温度T2の低下度合いに比べて小さい。すなわち圧縮機本体110の温度T1(j)の時間変化率の絶対値は、周囲温度T2の時間変化率の絶対値よりも小さい。その結果、温度差ΔTが温度閾値T0以上となり、温度異常があると判定される場合がある。
【0089】
このように、圧縮機本体110のチップシール111d,112dにおいて漏れが発生していない場合であっても、温度異常として誤検知されることがある。このような場合に圧縮機10全体を停止させてしまうと、圧縮機10の稼働率が低下することになる。そこで、使用者は、試運転を行って、温度異常が誤検知であるか否かを判断する。使用者は、圧縮機本体110の温度を仮設の温度計で計測したり、常設の温度センサ132の検出値を表示部171aに表示させたりすることにより、温度異常が誤検知であるか否かを判断する。
【0090】
使用者は、温度異常が誤検知であったと判断した場合、停止フラグ(温度異常停止フラグ)の解除操作を行って停止フラグを解除する。これにより、誤検知により停止していた圧縮機ユニット100を速やかに台数制御に復帰させることができる。また、誤検知により所定の圧縮機ユニット100を停止させる処理、その圧縮機ユニット100の試運転を行う処理、その圧縮機ユニット100を台数制御に復帰させる処理等の一連の処理が実行されている間、他の圧縮機ユニット100は台数制御運転を継続している。このため、圧縮機10の稼働率の低下を最小限に抑えることができる。つまり、本実施形態によれば、試運転の際に圧縮機10全体を停止させてから試運転を行う場合に比べて、圧縮機10の稼働率の低下を抑制することができる。
【0091】
(3)なお、電流異常については、圧縮機本体110のチップシール111d,112dの劣化に起因する圧縮気体の漏れ、ラップ部111b,112bの変形によるラップ部同士の接触、及び、軸受124A,124Bの劣化が原因として考えられる。そこで、使用者は、試運転を行って、電流異常の原因を確認する。使用者は、ラップ部同士の接触に起因する異音や軸受124A,124Bの異音の有無を耳で確認する。また、使用者は、圧縮機本体110の温度を仮設の温度計で計測したり、常設の温度センサ132の検出値を表示部171aに表示させたりする。使用者は、圧縮機ユニット100の試運転中の音、圧縮機本体110の温度に基づいて、電流異常の原因を特定することができる。その後、使用者は、圧縮機10を停止させ、電流異常の原因を取り除くためのメンテナンス作業を行う。このように、本実施形態では、所定の圧縮機ユニット100の電流異常の原因を特定するための試運転を行っている間、他の圧縮機ユニット100の台数制御を継続させることができるので、圧縮機10の稼働率を向上することができる。
【0092】
(4)制御装置180は、圧縮機ユニット100に異常があると判定した場合、異常があると判定した圧縮機ユニット100に停止フラグを設定する。制御装置180は、停止フラグが設定されていない圧縮機ユニット100に対する台数制御を継続しながら、停止フラグが設定されている圧縮機ユニット100を停止させ台数制御の対象から除外する除外処理を実行する。制御装置180は、停止フラグが設定されていない圧縮機ユニット100に対する台数制御を継続しながら、停止フラグが設定されている圧縮機ユニット100を再起動させる試運転処理を実行する。除外処理が実行された後、試運転処理が完了していない場合には、停止フラグの設定の解除を不可能とし、除外処理が実行された後、試運転処理が完了している場合には、停止フラグの設定の解除を可能とする。
【0093】
仮に、所定の圧縮機ユニット100の試運転処理を完了させることなく、停止フラグの設定の解除を可能とした場合、以下のような問題が考えられる。実際に、チップシール111d,112dにおける漏れに起因する温度異常が発生して圧縮機ユニット100が停止した場合において、使用者により誤って停止フラグの設定の解除操作がなされてしまうおそれがある。この場合、チップシール111d,112dのさらなる劣化を招くおそれがある。これに対して、本実施形態では、試運転処理を完了させない限り、停止フラグの設定を解除することができない。このため、上記のような問題が生じることがない。つまり、使用者は、試運転を行って、温度異常が誤検知であるか否かの判断をすることができ、温度異常が誤検知でない場合、圧縮機10を停止させ、圧縮機ユニット100のチップシール111d,112dの交換等、適切な対応をとることができる。
【0094】
(5)制御装置180は、台数制御の対象の圧縮機ユニット100の台数制御を行っているときに、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100の停止フラグの設定が解除されると、台数制御を継続しながら、停止フラグの設定が解除された圧縮機ユニット100を台数制御の対象に含める。この構成によれば、圧縮機10を停止させることなく、試運転を行った圧縮機ユニット100を台数制御に復帰させることができる。このため、本実施形態によれば、圧縮機ユニット100を台数制御に復帰させる際に圧縮機10を停止させる場合に比べて、圧縮機10の稼働率を向上することができる。
【0095】
(6)圧縮機10は、モータ120への電力の供給と遮断を切り替える電磁開閉器140を備える。制御装置180は、電磁開閉器140によりモータ120に電力を供給することにより、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100を一定速度で所定時間tp動作させて停止させる。この構成によれば、試運転の動作時間が、所定時間tpに制限される。つまり、試運転が、所定時間tpを超えて継続的に行われることが防止される。したがって、試運転が長期に亘って行われることに起因して、圧縮モジュール101が損傷することを防止することができる。
【0096】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態では、圧縮機ユニット100が3台あり、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100が1台ある場合に、その圧縮機ユニット100に対して、試運転を行い、停止フラグが解除された後、台数制御に復帰させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、圧縮機ユニット100を4台以上備えた圧縮機10、及び圧縮機ユニット100を2台のみ備えた圧縮機10に本発明を適用してもよい。ただし、圧縮機ユニット100を2台のみ備えた圧縮機10の場合、2台の圧縮機ユニット100のうちの1台が停止フラグにより停止した際には、通常動作可能な圧縮機ユニット100が残り1台となってしまう。この場合、
図4のステップS70,S80の処理によって残り1台の圧縮機ユニット100が追加起動されることはないが、
図4に示す台数制御の処理のフロー自体は同じである。つまり、2台以上の圧縮機ユニット100を備える圧縮機100において、制御装置180は、停止している圧縮機ユニット100の台数にかかわらず、
図4に示す台数制御を行う。
【0097】
また、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100が複数台ある場合に、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100に対して、試運転を行い、停止フラグが解除された後、台数制御に復帰させてもよい。なお、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100が複数台ある場合には、1台ずつ試運転を行うことが好ましい。同時に複数台の圧縮機ユニット100の試運転を行うと、異常の有無の確認が難しい場合がある。
【0098】
図7は、
図6と同様の図であり、第1実施形態の変形例に係る制御装置180により試運転モードが設定された場合の制御の内容について示すフローチャートである。
図7のフローチャートでは、
図6のフローチャートのステップS150の処理の後に、ステップS160の処理が追加されている。
図7に示すように、ステップS150において、停止フラグを解除した圧縮モジュール101を台数制御対象に含める処理が完了すると、ステップS160へ進む。
【0099】
ステップS160において、制御装置180は、試運転モードの終了条件が成立したか否かを判定する。制御装置180は、複数台の圧縮モジュール101の中に停止フラグが設定されているものがある場合には、試運転モードの終了条件は成立していないと判定し、ステップS130に戻る。制御装置180は、複数台の圧縮モジュール101の中に停止フラグが設定されているものがない場合には、試運転モードの終了条件が成立していると判定し、
図7のフローチャートに示す処理を終了する。なお、ステップS130において、制御装置180は、停止フラグが設定されている圧縮モジュール101を1台だけ選択して、ステップS135へ進む。
【0100】
このように、本変形例では、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100が複数ある場合、制御装置180は、複数の台数制御の対象外の圧縮機ユニット100を1台ずつ駆動させる。したがって、停止フラグが設定された圧縮機ユニット100が複数台ある場合、使用者は、1台ずつ試運転を行う圧縮機ユニット100を選択し、1台ずつ試運転を行う。これにより、例えば、試運転中の圧縮機ユニット100の音に基づいて、圧縮機ユニット100の異常の有無を適切に確認することができる。
【0101】
<第2実施形態>
図8及び
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る圧縮機20について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
図8は、
図1と同様の図であり、第2実施形態に係る圧縮機20の構成について示す図である。
【0102】
第1実施形態に係る圧縮機10は、電磁開閉器140によりモータ120が一定速度で回転するように制御される構成(
図1参照)であった。これに対して、第2実施形態に係る圧縮機20は、
図8に示すように、インバータ240によりモータ120の回転速度が制御される構成である。以下、第2実施形態係る圧縮機20について、詳しく説明する。
【0103】
第2実施形態に係る圧縮機20は、第1実施形態と略同様の構成であるが、第1実施形態で説明した電磁開閉器140に代えて、電源からの電力をモータ120に供給するインバータ240が設けられている。なお、第1圧縮モジュール101Aのインバータ240A、第2圧縮モジュール101Bのインバータ240B及び第3圧縮モジュール101Cのインバータ240Cは、同様の構成である。
【0104】
制御装置280は、圧縮気体の使用量に応じて変化する吐出圧力(すなわち圧力センサ131で検出された圧力)の値が予め定められた圧力目標値になるように、インバータ240により、モータ120の回転速度を制御する。本実施形態に係る制御装置280は、圧力センサ131の検出結果に基づいて、商用電源の電流周波数(例えば、60Hz)を目標電流周波数に変換し、モータ120へ供給することにより、モータ120の回転速度を制御する。
【0105】
インバータ240は、複数のスイッチング素子と、電圧センサ235と、電流センサ236と、を有している。インバータ240は、コンバータ回路とインバータ回路と平滑コンデンサとを有する周知の構成である。インバータ回路は、コンバータ回路から供給される直流電流をスイッチング素子によって交流電流に変換する。電圧センサ235は、コンバータ回路とインバータ回路とを接続する一対の電力線(直流母線)間の直流電圧を検出し、その検出結果を表す電圧信号を制御装置280に出力する。電流センサ236は、インバータ回路とモータ(三相交流モータ)120の各相の電機子巻線とを接続する導電部材に設けられ、モータ120に供給される電流を検出し、その検出結果を表す電流信号を制御装置280に出力する。
【0106】
第1実施形態では、圧縮機ユニット100が一定速度で運転され、圧縮気体の使用量によらず吐出流量が一定とされていた。これに対して、第2実施形態では、圧縮気体の使用量に応じてインバータ240によりモータ回転速度を制御し、吐出流量(出力)を調整する容量制御方式で運転したり、圧縮気体の使用量によらず吐出流量(出力)を一定とする固定制御方式で運転したりすることができる。例えば、台数制御運転において、気体使用量の変動が少ない状態では、圧縮機ユニット100の起動、停止を行わずにモータ120の回転速度を制御することにより、吐出圧力(タンク圧力)を常時下限圧力付近で保持させるようにしてもよい。これにより、高い圧力領域での運転を避けることができるので、消費電力を抑えることができる。
【0107】
制御装置280は、以下の第1~第5停止条件が成立した否かを判定する。制御装置280は、第1~第5停止条件のいずれかが成立した場合、停止フラグを設定し、停止フラグの設定された圧縮モジュール101を停止させる。
(第1停止条件)圧縮機本体110の温度T1と圧縮機20の周囲温度T2の差である温度差ΔTが温度閾値T0以上である。すなわち、温度異常が発生している。
(第2停止条件)電流センサ236により検出される電流Iが電流閾値I0以上である。すなわち、電流異常が発生している。
(第3停止条件)累積運転時間がメンテナンス時間に到達している。
(第4停止条件)電圧センサ235により検出される電圧Vが高電圧閾値VH以上である。すなわち、高電圧異常が発生している。
(第5停止条件)電圧センサ235により検出される電圧Vが低電圧閾値VL未満である。すなわち、低電圧異常が発生している。
【0108】
第2実施形態の第1停止条件及び第3停止条件は、第1実施形態の第1停止条件及び第3停止条件と同様であるので、説明を省略する。第2実施形態の第2停止条件は、電流異常が発生していることを停止条件としている点で共通するが、第2実施形態では、インバータ240の電流センサ236で検出される電流Iに基づいて過電流を検知する。なお、温度異常及び電流異常の発生原因は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0109】
制御装置280による第4停止条件が成立しているか否かを判定する処理は、高電圧異常があるか否かを判定する処理と同義である。所定の圧縮モジュール101の逆止弁151が経年劣化すると、主吐出配管105側から圧縮気体が所定の圧縮モジュール101の圧縮機本体110に逆流することがある。所定の圧縮モジュール101が停止しているときに、その圧縮モジュール101の圧縮機本体110に圧縮気体が逆流すると、圧縮機本体110が回転され、モータ120が回転する。その結果、モータ120が発電し、電圧センサ235により検出される電圧Vが正常時よりも上昇する。つまり、逆止弁151が劣化し、圧縮機本体110への逆流が発生すると制御装置280によって高電圧異常が検知される。
【0110】
制御装置280による第5停止条件が成立しているか否かを判定する処理は、低電圧異常があるか否かを判定する処理と同義である。所定の圧縮モジュール101の逆止弁151が経年劣化し、圧縮気体の漏れが発生すると、その圧縮機ユニット100を駆動させる際に脱調が発生することがある。その結果、電圧センサ235により検出される電圧Vが正常時よりも低下する。つまり、逆止弁151が劣化し、圧縮機ユニット100の脱調が発生すると制御装置280によって低電圧異常が検知される。
【0111】
第1停止条件が成立した場合、制御装置280は、停止フラグとして、温度異常停止フラグFt(j)を設定する(Ft(j)=1)。第2停止条件が成立した場合、制御装置280は、停止フラグとして、電流異常停止フラグFi(j)を設定する(Fi(j)=1)。第3停止条件が成立した場合、制御装置280は、停止フラグとして、メンテナンス停止フラグFm(j)を設定する(Fm(j)=1)。第4停止条件が成立した場合、制御装置280は、停止フラグとして、高電圧異常停止フラグFvh(j)を設定する(vh(j)=1)。第5停止条件が成立した場合、制御装置280は、停止フラグとして、低電圧異常停止フラグFvl(j)を設定する(Fvl(j)=1)。
【0112】
制御装置280は、電流センサ236により検出された電流I(j)が電流閾値I0以上であるか否かを判定する。電流閾値I0は、予め不揮発性メモリ182に記憶されている。制御装置280は、電流I(j)が電流閾値I0未満である場合、第2停止条件は成立していないと判定して電流異常停止フラグFi(j)を非設定状態のまま維持する(Fi(j)=0)。制御装置280は、電流I(j)が電流閾値I0以上である場合、第2停止条件が成立していると判定して電流異常停止フラグFi(j)を設定する(Fi(j)=1)。電流異常停止フラグFi(j)は、圧縮モジュール101の圧縮機ユニット100の電流異常が検知されたことを表す停止フラグであって、第2停止条件が成立していると判定された圧縮モジュール101に対応付けて設定される。
【0113】
制御装置280は、電圧センサ235により検出された電圧V(j)が高電圧閾値VH以上であるか否かを判定する。高電圧閾値VHは、予め不揮発性メモリ182に記憶されている。制御装置280は、電圧V(j)が高電圧閾値VH未満である場合、第4停止条件は成立していないと判定して高電圧異常停止フラグFvh(j)を非設定状態のまま維持する(Fvh(j)=0)。制御装置280は、電圧V(j)が高電圧閾値VH以上である場合、第4停止条件が成立していると判定して高電圧異常停止フラグFvh(j)を設定する(Fvh(j)=1)。高電圧異常停止フラグFvh(j)は、圧縮モジュール101の圧縮機ユニット100の高電圧異常が検知されたことを表す停止フラグであって、第4停止条件が成立していると判定された圧縮モジュール101に対応付けて設定される。
【0114】
制御装置280は、電圧センサ235により検出された電圧V(j)が低電圧閾値VL未満であるか否かを判定する。低電圧閾値VLは、高電圧閾値VHよりも低い閾値であって、予め不揮発性メモリ182に記憶されている。制御装置280は、電圧V(j)が低電圧閾値VL以上である場合、第5停止条件は成立していないと判定して低電圧異常停止フラグFvl(j)を非設定状態のまま維持する(Fvl(j)=0)。制御装置280は、電圧V(j)が低電圧閾値VL未満である場合、第4停止条件が成立していると判定して低電圧異常停止フラグFvl(j)を設定する(Fvl(j)=1)。低電圧異常停止フラグFvl(j)は、圧縮モジュール101の圧縮機ユニット100の低電圧異常が検知されたことを表す停止フラグであって、第5停止条件が成立していると判定された圧縮モジュール101に対応付けて設定される。
【0115】
本第2実施形態に係る制御装置280は、第1実施形態で説明した
図5及び
図6に示す処理と同様の処理を実行する。なお、本第2実施形態では、
図5に示すステップS105において、制御装置280は、第1~第5停止条件が成立したか否かを判定する処理を実行する。制御装置280は、停止条件が成立したと判定した場合、停止条件が成立したと判定した圧縮モジュール101に対応付けて停止フラグを設定する。
【0116】
図6に示すステップS135において、制御装置280は、ステップS130で選択した圧縮モジュール101を所定時間tpだけ運転させる試運転処理を実行する。本第2実施形態において、制御装置280は、試運転処理において、モータ120を最低速度Ntminで回転させる。なお、最低速度Ntminとは、モータ120の速度制御範囲における最低値である。最低速度Ntminは、圧縮機ユニット100を安定して回転させることのできる速度の最低値ともいえる。
【0117】
このように、第2実施形態に係る制御装置280は、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100のモータ120を最低速度で所定時間動作させて停止させる。仮に、ラップ部111b,112bが接触することにより、圧縮機ユニット100の電流異常が検知され、当該圧縮機ユニット100が停止している場合、モータ120の速度制御範囲における最高速度で試運転を行うと、ラップ部111b,112bが損傷してしまうおそれがある。これに対して、本第2実施形態では、モータ120を最低速度で動作させるため、圧縮モジュール101の損傷を防止することができる。つまり、本第2実施形態によれば、圧縮モジュール101の損傷を防止しつつ、試運転により、モータ120が正常であるか否かを判断することができる。
【0118】
<第2実施形態の変形例>
制御装置280は、台数制御の対象外の圧縮機ユニット100のモータ120の回転速度を最低速度Ntminから所定速度(例えば、最高速度Ntmax)まで時間の経過にしたがって徐々に増加させてもよい。不揮発性メモリ182には、試運転の経過時間teと、目標回転速度Ntとの関係を定めるデータテーブルである目標回転速度テーブル(
図9参照)が記憶されている。
図9に示すように、試運転の経過時間teが0からte1までは目標回転速度Ntが最低速度Ntminである。試運転の経過時間teがte1を過ぎると、試運転の経過時間teが長くなるほど、目標回転速度Ntが大きくなり、試運転の経過時間teがte2に達すると、目標回転速度Ntが最高速度Ntmaxとなる。試運転の経過時間teがte2を過ぎると、目標回転速度Ntは最高速度Ntmaxに維持され、試運転の経過時間teが所定時間tpに達すると、目標回転速度Ntは、0になる。
【0119】
制御装置280は、試運転処理(
図6のステップS135)を開始すると、試運転の経過時間teの計測を開始する。制御装置280は、
図9に示す目標回転速度テーブルを参照して、経過時間teに応じた目標回転速度Ntを演算する。制御装置280は、モータ120を目標回転速度Ntで回転させるための制御信号をインバータ240に出力する。
【0120】
これにより、モータ120の回転速度が時間の経過にしたがって徐々に増加する。このような変形例によれば、回転速度に応じた特有の異常の有無を確認することができる。
【0121】
例えば、チップシール111d,112dが劣化している場合、モータ120の回転速度が低速であっても、高温の圧縮気体がチップシール111d,112dを通じて漏れ、さらに圧縮されることで圧縮機本体110の温度が上昇する。なお、低速で試運転を行った場合、冷却ファン130の回転速度も低いため、圧縮機本体110の温度は上昇しやすい。したがって、使用者は、圧縮機本体110の温度を計測することにより、低速で試運転を行っている状態において、チップシール111d,112dの劣化の有無を確認することができる。
【0122】
また、モータ120の回転速度を増加させることにより、遠心力によりラップ部111b,112bの変形量が大きくなる。このため、使用者は、モータ120の回転速度が徐々に増加する間に、圧縮機ユニット100から発生する音を聞いたり、モータ駆動電流を測定することにより、ラップ部111b,112bの接触の有無を確認することができる。
【0123】
このように、本変形例では、回転速度に応じた特有の異常の有無を確認することができるので、異常の原因を容易に特定することができる。
【0124】
<第3実施形態>
図10及び
図11を参照して、本発明の第3実施形態に係る圧縮機30について説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
図10は、
図8と同様の図であり、本発明の第3実施形態に係る圧縮機30の構成について示す図である。
【0125】
図10に示すように、圧縮機30は、圧縮機ユニット100から発生する音を取得する音取得装置としてのマイク337を備える。マイク337は、圧縮モジュール101毎に設けられ、取得した音を電気信号(以下、音データと記す)に変換し、図示しない信号線を介して制御装置380に出力する。制御装置380は、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100から発生する音に基づいて、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定し、その判定結果を出力する。
【0126】
図11は、
図6と同様の図であり、第3実施形態に係る制御装置380により試運転モードが設定された場合の制御の内容について示すフローチャートである。
図11のフローチャートでは、
図6のフローチャートのステップS135に代えて、ステップS335,S336,S337が実行される。
【0127】
図11に示すように、第3実施形態に係る制御装置380は、ステップS130において、試運転を行う圧縮モジュール101が選択されると、処理がステップS335へ進む。ステップS335において、制御装置380は、ステップS130で選択された圧縮モジュール101のモータ120を所定時間tpだけ運転させる試運転処理を実行する。さらに、制御装置380は、試運転処理の間、マイク337から音データを取得し、不揮発性メモリ182に記憶させる。
【0128】
試運転処理(ステップS335)が完了すると、処理がステップS336へ進む。ステップS336において、制御装置380は、試運転処理を実行した圧縮機ユニット100に異常があるか否かの診断を行う。この自動診断処理(ステップS336)において、制御装置380は、ステップS335で取得され、不揮発性メモリ182に記憶された音データと、予め不揮発性メモリ182に記憶されている基準音データとを比較する。基準音データは、例えば、圧縮機30の出荷時に測定された音データである。制御装置380は、取得した音データと基準音データとの比較結果に基づいて、圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定する。例えば、制御装置380は、取得した音データの周波数と基準音データの周波数との差が所定の許容範囲内にある場合には、圧縮機ユニット100に異常はないと判定する。制御装置380は、取得した音データの周波数と基準音データの周波数との差が所定の許容範囲外にある場合には、圧縮機ユニット100に異常があると判定する。なお、制御装置380は、取得した音データの振幅(大きさ)の最大値と、基準音データの振幅(大きさ)の最大値との差(振幅差)が所定の許容範囲内にある場合には、圧縮機ユニット100に異常はないと判定し、振幅差が所定の許容範囲外にある場合には、圧縮機ユニット100に異常があると判定してもよい。
【0129】
自動診断処理(ステップS336)が完了すると、処理がステップS337へ進む。ステップS337において、制御装置380は、ステップS337での判定結果(診断結果)を表示部171aに表示させ、ステップS140へ進む。なお、診断結果の出力処理(ステップS337)は、表示部171aによって診断結果を出力させる処理に代えて、スピーカ等の音出力装置によって診断結果を出力させる処理とすることもできる。
【0130】
本第3実施形態によれば、試運転処理を実行する際に、自動で圧縮機ユニット100に異常があるか否かを診断できる。このため、使用者は、停止フラグを解除してよいかどうかを容易に判断することができる。
【0131】
<第3実施形態の変形例>
第3実施形態では、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100から発生し、マイク337により取得された音に基づいて、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御装置380は、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100のモータ120に供給される電流、すなわち、電流センサ236により検出される電流に基づいて、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定してもよい。また、制御装置380は、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100の圧縮機本体110の温度、すなわち、温度センサ132により検出される温度に基づいて、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定してもよい。
【0132】
つまり、制御装置380は、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100から発生する音、モータ120に供給される電流、及び、圧縮機本体110の温度の少なくともいずれかに基づいて、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100に異常があるか否かを判定し、その判定結果を出力する構成であればよい。この構成によれば、試運転処理を実行する際に、自動で圧縮機ユニット100に異常があるか否かを診断できる。このため、使用者は、停止フラグを解除してよいかどうかを容易に判断することができる。
【0133】
なお、試運転処理が実行された圧縮機ユニット100に対する自動診断により、圧縮機ユニット100に異常がないと診断された場合に、制御装置380が、停止フラグの解除を自動で行ってもよい。この場合、使用者による停止フラグの解除操作の必要がないので、試運転から台数制御への復帰までの時間を短くすることができる。
【0134】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0135】
<変形例1>
温度異常及び低電圧異常の誤検知により、第1停止条件及び第5停止条件が成立する場合がある。温度異常の誤検知は、例えば、圧縮機10,20,30が設置される部屋のドアの開閉、エアコンの作動等に起因して温度差ΔTが温度閾値T0以上になることにより発生する。低電圧異常の誤検知は、例えば、モータ120に対して大きな速度変化を伴う制御が行われ、インバータ240からステータ121に供給される電流により発生する回転磁界にロータ122の回転が適切に追随できずに脱調することに起因してモータ駆動電圧Vが低電圧閾値VL未満になることにより発生する。これに対して、第2停止条件、第3停止条件及び第4停止条件は、誤検知により成立することはない。このため、制御装置180,280,380が、停止フラグに応じて、試運転処理の実行可否を決定してもよい。
【0136】
本変形例に係る制御装置180,280,380は、予め定められた複数の停止条件のいずれかが成立した場合、成立した停止条件に応じた停止フラグを設定し、設定された停止フラグに基づいて、試運転処理の実行可否を決定する。
【0137】
以下、第2実施形態の変形例として、その一例について説明する。
図12に示すように、制御装置280の不揮発性メモリ182には、停止フラグと試運転処理の実行可否との関係が記憶されている。
図12に示すように、制御装置280は、温度異常停止フラグまたは低電圧異常フラグが設定された場合、試運転処理の実行が可能であると決定し、その旨を表示部171aに表示させる。温度異常停止フラグまたは低電圧異常フラグが設定されているときに、操作パネル170により、試運転を開始させる操作が行われると、制御装置280は、試運転モードを設定し、
図6のフローチャートに示す処理を実行する。
【0138】
一方、制御装置280は、高電圧異常停止フラグが設定された場合、試運転処理の実行が不可能であると決定し、その旨を表示部171aに表示させる。例えば、制御装置280は、「高電圧異常が発生しました。逆止弁151を交換してください。」といったメッセージ、あるいは、そのメッセージに対応するエラーコードを表示部171aに表示させる。高電圧異常停止フラグが設定されているときに、操作パネル170により、試運転を開始させる操作が行われると、制御装置280は、試運転処理の実行が不可能であることを表示部171aに表示させ、試運転モードを設定しない。
【0139】
これにより、逆止弁151が交換される前に、高電圧異常が検知された圧縮モジュール101に対して試運転が行われることを防止できる。使用者は、異常が検知されていない圧縮モジュール101を含む圧縮機20全体を停止させ、異常が検知された圧縮モジュール101の逆止弁151を交換してから、操作パネル170により、リセット操作を行う。これにより、制御装置280は、圧縮モジュール101の高電圧異常停止フラグを解除する。なお、制御装置280は、圧縮機10の電源が落とされることによっても高電圧異常停止フラグを解除する。
【0140】
同様に、制御装置280は、電流異常停止フラグが設定された場合、試運転処理の実行が不可能であると決定し、その旨を表示部171aに表示させる。例えば、制御装置280は、「電流異常が発生しました。圧縮機ユニットの修理または圧縮機ユニットの交換をしてください。」といったメッセージ、あるいは、そのメッセージに対応するエラーコードを表示部171aに表示させる。電流異常停止フラグが設定されているときに、操作パネル170により、試運転を開始させる操作が行われると、制御装置280は、試運転処理の実行が不可能であることを表示部171aに表示させ、試運転モードを設定しない。
【0141】
これにより、圧縮機ユニット100の修理あるいは交換がなされる前に、電流異常が検知された圧縮モジュール101に対して試運転が行われることを防止できる。使用者は、異常が検知されていない圧縮モジュール101を含む圧縮機20全体を停止させ、異常が検知された圧縮モジュール101の圧縮機ユニット100の修理または交換をしてから、操作パネル170により、リセット操作を行う。これにより、制御装置280は、圧縮モジュール101の電流異常停止フラグを解除する。なお、制御装置280は、圧縮機10の電源が落とされることによっても電流異常停止フラグを解除する。
【0142】
このように、本変形例によれば、制御装置280が、停止フラグの種別によって、試運転の実行可否を決定する。したがって、所定の停止フラグ(例えば、高電圧異常停止フラグあるいは電流異常フラグ)が設定された場合には、そのまま試運転が行われることが禁止されるので、試運転により圧縮モジュール101が損傷することを防止できる。
【0143】
<変形例2>
図6のステップS135において、制御装置180,280は、圧縮モジュール101のモータ120を所定時間tpだけ回転動作させた後、自動的にモータ120を停止させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御装置180は、使用者の操作に応じて、試運転処理(
図6のステップS135)を終了させてもよい。
【0144】
例えば、制御装置180は、
図6のステップS135において、圧縮モジュール101のモータ120を回転動作させているときに、操作パネル170の停止スイッチ172bが操作されると、所定時間tpが経過する前にモータ120を停止させる。この構成によれば、圧縮機ユニット100の状態に即した試運転を行うことができる。
【0145】
<変形例3>
上記実施形態では、モータ120のシャフト123が直接旋回スクロール112に取り付けられ、モータ120の動力が直接旋回スクロール112に伝達される構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。モータ120のシャフトと旋回スクロール112のシャフトのそれぞれにプーリを設け、モータ120のプーリと旋回スクロール112のプーリに、モータ120で発生した動力を旋回スクロール112に伝達するベルトを装着してもよい。この構成では、経年劣化によりベルトに摩耗や伸びが生じると、圧縮機本体110を駆動させるのに必要な力が大きくなるため、モータ駆動電流が正常時よりも上昇する。つまり、ベルトが劣化すると、制御装置180によって電流異常が検知される。
【0146】
<変形例4>
停止条件は、上記実施形態で説明したものに限定されない。例えば、第2実施形態において、制御装置280が、インバータ240において異常が検知された場合に、停止条件が成立したものとして停止フラグを設定してもよい。
【0147】
<変形例5>
第1実施形態において、制御装置180が異常を検知する例として、チップシール111d,112d、軸受124A,124B、ラップ部111b,112bの経年劣化に起因するものを一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、モータ120に使用される磁石は、経年劣化により少しずつ減磁する。このため、制御装置180は、磁石の経年劣化に起因する電流異常を検知する構成としてもよい。
【0148】
<変形例6>
上記実施形態において、圧縮機10,20,30がスクロール式の圧縮機ユニット100を有する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。圧縮機10,20,30は、周知のスクリュー式、レシプロ式(ピストン式)、ターボ式の圧縮機ユニットを複数台備えるものであってもよい。また、機種の異なる圧縮機ユニットを複数台備える圧縮機に本発明を適用してもよい。例えば、2台のスクロール式の圧縮機ユニットと、2台のレシプロ式の圧縮機ユニットとの合計4台の圧縮機ユニットの運転台数を制御する制御装置とを備えた圧縮機に本発明を適用してもよい。
【0149】
上述の実施形態は、本発明の概念の理解を助けるための具体例を示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な構成要素の付加、削除または転換をすることができる。
【0150】
上記各実施形態において説明された種々の機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0151】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、汎用のコンピュータを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0152】
10,20,30…圧縮機、100…圧縮機ユニット、101…圧縮モジュール、105…主吐出配管(配管)、110…圧縮機本体、111b,112b…ラップ部、111d,112d…チップシール(シール部材)、120…モータ、124A,124B…軸受、131…圧力センサ、132…温度センサ、133…周囲温度センサ、140…電磁開閉器、151…逆止弁、170…操作パネル、171a,171b…表示部、172a…運転スイッチ(操作スイッチ)、172b…停止スイッチ(操作スイッチ)、172c…メニュースイッチ(操作スイッチ)、172d…表示切替スイッチ(操作スイッチ)、180…制御装置、181…プロセッサ、182…不揮発性メモリ、183…揮発性メモリ、190…通信装置、235…電圧センサ、236…電流センサ、240…インバータ、280…制御装置、337…マイク(音取得装置)、380…制御装置