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特開2022-170305情報生成装置、プログラム、情報生成方法及び照明システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170305
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】情報生成装置、プログラム、情報生成方法及び照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20221102BHJP
【FI】
H05B47/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076356
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(74)【代理人】
【識別番号】100130166
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】福元 克彦
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA09
3K273QA14
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA18
3K273TA28
3K273TA41
3K273UA17
3K273UA21
3K273VA05
3K273VA08
(57)【要約】
【課題】照明の演出性を高めることを可能にする技術を提供する。
【解決手段】情報生成装置は、照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報の生成をする。情報生成装置は、第1生成部及び第2生成部を備える。第1生成部は、風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、風が当たる物体の影が風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する。第2生成部は、影情報に基づいて、物体の影が風によって動く様子を照明空間に再現するための照明制御情報を生成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報の生成をする情報生成装置であって、
風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、前記風が当たる物体の影が前記風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する第1生成部と、
前記影情報に基づいて、前記物体の前記影が前記風によって動く様子を前記照明空間に再現するための前記照明制御情報を生成する第2生成部と
を備える、情報生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報生成装置であって、
前記風速情報は、前記風速の強弱が繰り返し現れ、かつ前記風速の強弱の繰り返し周期が変化することを示す、情報生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報生成装置であって、
前記風速情報は、前記繰り返し周期内での前記風速の最大値及び最小値の少なくとも一方が変化することを示す、情報生成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の情報生成装置であって、
前記第1生成部は、前記風の風向を疑似的に表す風向情報と前記風速情報とに基づいて、前記影情報を生成する、情報生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報生成装置であって、
前記風向情報は、前記風向が一時的に反転することを示す、情報生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報生成装置であって、
前記風向情報は、前記風向の反転が現れる間隔が変化することを示す、情報生成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の情報生成装置であって、
前記物体は葉である、情報生成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報生成装置であって、
前記第1生成部は、前記風速に応じた前記葉のゆらぎを疑似的に表すゆらぎ情報と前記風速情報とに基づいて、前記影情報を生成する、情報生成装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の情報生成装置であって、
前記第1生成部は、複数の葉のそれぞれについて前記影情報を生成し、
前記第2生成部は、前記複数の葉についての前記影情報に基づいて、前記複数の葉の前記影が前記風によって動く様子を前記照明空間に再現するための前記照明制御情報を生成する、情報生成装置。
【請求項10】
請求項8に記載の情報生成装置であって、
前記第1生成部は、複数の葉のそれぞれについて前記影情報を生成し、
前記第2生成部は、前記複数の葉についての前記影情報に基づいて、前記複数の葉の前記影が前記風によって動く様子を前記照明空間に再現するための前記照明制御情報を生成し、
前記ゆらぎ情報は周期関数で表され、
前記複数の葉についての前記ゆらぎ情報では、前記周期関数の周期あるいは位相が互いに異なる、情報生成装置。
【請求項11】
照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報を生成するためのプログラムであって、
コンピュータ装置に、
風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、前記風が当たる物体の影が前記風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する工程と、
前記影情報に基づいて、前記物体の前記影が前記風によって動く様子を前記照明空間に再現するための前記照明制御情報を生成する工程と
を実行させるプログラム。
【請求項12】
照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報を装置で生成する情報生成方法であって、
風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、前記風が当たる物体の影が前記風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する工程と、
前記影情報に基づいて、前記物体の前記影が前記風によって動く様子を前記照明空間に再現するための前記照明制御情報を生成する工程と
を備える、情報生成方法。
【請求項13】
照明空間に可視光を放射する複数の照明部と、
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の情報生成装置で生成された前記照明制御情報に基づいて、前記複数の照明部の光量を制御する照明制御部と
を備える、照明システム。
【請求項14】
請求項13に記載の照明システムであって、
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の情報生成装置を備える、照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、照明の演出に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-223994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明の演出については改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
情報生成装置、プログラム、情報生成方法及び照明システムが開示される。一の実施の形態では、情報生成装置は、照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報の生成をする。情報生成装置は、第1生成部及び第2生成部を備える。第1生成部は、風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、風が当たる物体の影が風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する。第2生成部は、影情報に基づいて、物体の影が風によって動く様子を照明空間に再現するための照明制御情報を生成する。
【0006】
また、一の実施の形態では、プログラムは、照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報を生成するためのプログラムである。プログラムは、コンピュータ装置に、風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、風が当たる物体の影が風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する工程と、影情報に基づいて、物体の前記影が風によって動く様子を照明空間に再現するための照明制御情報を生成する工程とを実行させる。
【0007】
また、一の実施の形態では、情報生成方法は、照明空間に可視光を放射する複数の照明部の光量を制御するための照明制御情報を装置で生成する情報生成方法である。情報生成方法は、風の風速を疑似的に表す風速情報に基づいて、風が当たる物体の影が風によって動く様子を疑似的に表す影情報を生成する工程と、影情報に基づいて、物体の影が風によって動く様子を照明空間に再現するための照明制御情報を生成する工程とを備える。
【0008】
また、一の実施の形態では、照明システムは、照明空間に可視光を放射する複数の照明部と、上記の情報生成装置で生成された照明制御情報に基づいて、複数の照明部の光量を制御する照明制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
照明の演出性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】照明システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】照明システムの各構成要素の配置例を示す概略図である。
図3】複数の照明部の配置例を示す概略図である。
図4】複数の照明部の照射エリアの一例を示す概略図である。
図5】複数の疑似影が動く様子の一例を示す概略図である。
図6】制御装置の構成の一例を示す概略図である。
図7】制御装置の構成の一例を示す概略図である。
図8】仮想風の一例を説明するための概略図である。
図9】風速情報の一例を示す概略図である。
図10】風速情報の一例を示す概略図である。
図11】風速情報の一例を示す概略図である。
図12】風向情報の一例を示す概略図である。
図13】風向情報の一例を示す概略図である。
図14】葉がゆらぐ様子の一例を示す概略図である。
図15】ゆらぎ情報の一例を示す概略図である。
図16】仮想風の到達時間の算出方法の一例を説明するための概略図である。
図17】仮想風の到達時間の算出方法の一例を説明するための概略図である。
図18】仮想風の到達時間の算出方法の一例を説明するための概略図である。
図19】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図20】情報生成部の動作の一例を示すフローチャートである。
図21】疑似影の初期位置と時刻tでの位置との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は照明システム1の構成の一例を示す概略図である。照明システム1は、所定の照明空間100に対して可視光の照明光を放射することが可能である。照明空間100は、屋内の空間であってもよいし、屋外の空間であってもよい。つまり、照明システム1が放射する照明光は、屋内で利用されてもよい、屋外で利用されてもよい。
【0012】
図1に示されるように、照明システム1は、例えば、発光装置4と、複数の変換部5と、複数の照明部6とを備える。発光装置4は、例えば、複数の発光部3と、複数の発光部3を制御する制御装置2とを備える。複数の発光部3は、複数の変換部5とそれぞれ接続されている。複数の変換部5は、複数の照明部6とそれぞれ接続されている。以後、発光部3と、当該発光部3に接続された変換部5と、当該変換部5に接続された照明部6とは、互いに対応する構成であるとする。
【0013】
各発光部3は、例えば、レーザ光L1を生成して出力することが可能である。発光部3は例えばレーザダイオード(laser diode:LD)である。レーザダイオードは半導体レーザとも呼ばれる。レーザ光L1としては、例えば、波長が460nm以下の短波長レーザ光が採用される。レーザ光L1は、440nm以下の短波長レーザ光であってもよい。この場合、レーザ光L1は、例えば405nmの紫色のレーザ光であってもよい。
【0014】
複数の発光部3は例えば一つの外装ケース内に収容されている。複数の発光部3と制御装置2は一つの外装ケース内に収容されてもよい。また、複数の発光部3を収容する外装ケースと、制御装置2を収容する外装ケースとが別々に設けられてもよい。
【0015】
複数の発光部3と複数の変換部5とは、例えば複数の光ファイバ10でそれぞれ接続される。光ファイバ10の一端は、例えば、着脱可能に発光部3に接続される。光ファイバ10の一端は、発光部3に対して例えばコネクタ接続される。光ファイバ10の他端は、例えば、着脱可能に変換部5に接続される。光ファイバ10の他端は、変換部5に対して例えばコネクタ接続される。光ファイバ10は、発光部3が出力するレーザ光L1が入射され、入射されたレーザ光L1を変換部5まで伝送する。光ファイバ10は、例えば、レーザ光L1を伝送するコアと、当該コアの周囲を覆うクラッドとを備える。光ファイバ10は、クラッドの周囲を覆う部材を備えてもよい。光ファイバ10は、例えば、石英ガラスから成る石英ファイバであってもよいし、プラスチックから成るプラスチックファイバであってもよいし、他の材料から成る光ファイバであってもよい。
【0016】
各変換部5は、光ファイバ10で伝搬されるレーザ光L1を光L2(変換光L2ともいう)に変換することが可能である。各変換部5は波長変換部50を有する。波長変換部50は、光ファイバ10で伝送されるレーザ光L1が照射され、レーザ光L1の照射に応じてレーザ光L1の波長スペクトルとは異なる波長スペクトルを有する変換光L2を発する。波長変換部50は、レーザ光L1によって励起されて変換光L2を発する。変換光L2は可視光であってもよい。また、変換光L2は、可視光に加え、近赤外域の光を含んでいてもよい。以後、レーザ光L1を励起光L1と呼ぶことがある。
【0017】
波長変換部50としては、例えば、蛍光体を含む蛍光体部分500が採用される。蛍光体部分500が含む蛍光体は、レーザ光L1の照射に応じて蛍光を発することができる。蛍光体が発する蛍光の波長スペクトルにおけるピークを示す波長(ピーク波長ともいう)は、レーザ光L1の波長スペクトルのピーク波長よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0018】
蛍光体部分500は例えば多数の蛍光体を含む。多数の蛍光体には、例えば1種類以上の蛍光体が含まれる。蛍光体部分500には、互いに異なるピーク波長を有する複数種類の蛍光体が含まれてもよい。この場合、蛍光体部分500には、例えば、励起光L1の照射に応じて赤色(R)の蛍光を発する蛍光体(赤色蛍光体ともいう)と、励起光L1の照射に応じて緑色(G)の蛍光を発する蛍光体(緑色蛍光体ともいう)と、励起光L1の照射に応じて青色(B)の蛍光を発する蛍光体(青色蛍光体ともいう)とが含まれてもよい。赤色蛍光体には、例えば、励起光L1の照射に応じて発する蛍光の波長スペクトルのピーク波長が620nmから750nm程度の範囲にある蛍光体が適用される。緑色蛍光体には、例えば、励起光L1の照射に応じて発する蛍光の波長スペクトルのピーク波長が495nmから570nm程度の範囲にある蛍光体が適用される。青色蛍光体には、例えば、励起光L1の照射に応じて発する蛍光の波長スペクトルのピーク波長が450nmから495nm程度の範囲にある蛍光体が適用される。
【0019】
蛍光体部分500に複数種類の蛍光体が含まれる場合には、当該複数種類の蛍光体が発する蛍光が、蛍光体部分500が発する変換光L2を構成する。つまり、変換光L2は複数種類の色成分で構成される。蛍光体部分500に、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体が含まれる場合には、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体が発する蛍光が変換光L2を構成する。
【0020】
蛍光体部分500に複数種類の蛍光体が含まれる場合には、変換光L2の波長スペクトルは、互いに異なる複数の波長ピークを有する。例えば、蛍光体部分500に3種類以上の蛍光体が含まれる場合には、変換光L2の波長スペクトルは、互いに異なる3つ以上の波長ピークを有する。蛍光体部分500に、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体が含まれる場合には、変換光L2の波長スペクトルは、赤色蛍光体が発する蛍光の波長ピークと、緑色蛍光体が発する蛍光の波長ピークと、青色蛍光体が発する蛍光の波長ピークとが含まれる。変換光L2は、疑似的な白色光であってもよいし、他の色温度の可視光であってもよい。
【0021】
なお、蛍光体部分500には、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体以外の蛍光体が含まれてもよい。蛍光体部分500には、例えば、励起光L1の照射に応じて青緑色の蛍光を発する蛍光体(青緑色蛍光体ともいう)が含まれてもよい。また、蛍光体部分500には、例えば、励起光L1の照射に応じて黄色の蛍光を発する蛍光体(黄色蛍光体ともいう)が含まれてもよい。蛍光体部分500には、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体、青緑色蛍光体及び黄色蛍光体の少なくとも1種類の蛍光体が含まれてもよい。
【0022】
青緑色蛍光体には、例えば、励起光L1の照射に応じて発する蛍光の波長スペクトルのピーク波長が495nm程度の蛍光体が適用される。黄色蛍光体には、例えば、励起光L1の照射に応じて発する蛍光の波長スペクトルのピーク波長が570nmから590nm程度の範囲にある蛍光体が適用される。
【0023】
蛍光体部分500は、例えば、多数の蛍光体を含む低融点ガラスで構成されてもよい。あるいは、蛍光体部分500は、多数の蛍光体を含む結晶化ガラスで構成されてもよい。あるいは、蛍光体部分500は、多数の蛍光体を含むセラミックで構成されてもよい。あるいは、蛍光体部分500は、蛍光性を有するバルク状のセラミックで構成されてもよい。この場合には、蛍光体部分500は蛍光体だけで構成されているといえる。
【0024】
複数の変換部5と複数の照明部6とは、例えば複数の光ファイバ11でそれぞれ接続される。光ファイバ11の一端は、例えば、着脱可能に変換部5に接続される。光ファイバ11の一端は、変換部5に対して例えばコネクタ接続される。光ファイバ11の他端は、例えば、着脱可能に照明部6に接続される。光ファイバ11の他端は、照明部6に対して例えばコネクタ接続される。光ファイバ11は、変換部5が発する変換光L2が入射され、入射された変換光L2を照明部6まで伝送する。光ファイバ11は、例えば、変換光L2を伝送するコアと、当該コアの周囲を覆うクラッドとを備える。光ファイバ11は、クラッドの周囲を覆う部材を備えてもよい。光ファイバ11は、例えば、石英ガラスから成る石英ファイバであってもよいし、プラスチックから成るプラスチックファイバであってもよいし、他の材料から成る光ファイバであってもよい。
【0025】
なお、変換部5は、波長変換部50が発する変換光L2を光ファイバ11に導く光学系を備えてもよい。また、変換部5は、光ファイバ10で伝送される励起光L1を波長変換部50に導く光学系を有してもよい。
【0026】
各照明部6は、光ファイバ11で伝送される変換光L2を照明光L3として外部に放射する。複数の照明部6は、照明光L3を照明空間100に対して放射する。照明部6は、変換光L2が入射する光学系を備えてもよい。この光学系には、レンズ、拡散板及びリフレクタの少なくとも一つが含まれてもよい。照明部6が光学系を備える場合には、照明部6は、照明光L3の配光を調整する機能を有してもよい。なお、光ファイバ11の先端部(言い換えれば、光ファイバ11の変換部5側の端部とは反対側の端部)が照明部6を構成してもよい。以後、照明部6が照明光L3を放射することを点灯と呼び、照明部6が照明光L3を放射しないことを消灯と呼ぶことがある。
【0027】
照明システム1では、例えば、制御装置2が複数の発光部3のそれぞれを個別に制御することが可能である。制御装置2は、例えば、各発光部3について、当該発光部3に励起光L1を出力させたり、当該発光部3に励起光L1の出力を停止させたりすることができる。制御装置2は、複数の発光部3を制御することによって、複数の照明部6のすべてから照明光L3を放射させたり、複数の照明部6の一部だけから照明光L3を放射させたりすることができる。また、制御装置2は、例えば、発光部3での励起光L1の出力電力を制御することができる。つまり、制御装置2は、発光部3での励起光L1の出力電力を大きくしたり、小さくしたりすることができる。発光部3での励起光L1の出力電力が大きくなると、当該発光部3に対応する変換部5が発する変換光L2の光量が大きくなる。よって、発光部3での励起光L1の出力電力が大きくなると、当該発光部3に対応する照明部6が放射する照明光L3の光量が大きくなる。制御装置2は、発光部3を制御することによって、当該発光部3に対応する照明部6から放射される照明光L3の光量を制御することができる。制御装置2は各照明部6の光量を個別に制御することができる。本開示では、照明部6の光量の制御には、照明部6の光量を零に設定して照明部6を消灯することも含まれるし、照明部6の光量を零からそれよりも大きくして照明部6を点灯させることも含まれる。発光部3と照明部6の間に位置する変換部5は中継器とも呼ばれる。
【0028】
図2は照明システム1の各構成要素の配置例を示す概略図である。図2の例では、照明システム1は、家あるいはビル等の建物150内に構築されている。制御装置2及び複数の発光部3を備える発光装置4は、例えば、壁面155の裏側156に配置されており、室内158から視認されない。複数の変換部5は、例えば、天井面151の裏側152に配置されており、室内158から視認されない。発光部3と変換部5とを接続する光ファイバ10は、例えば、壁面155の裏側156から天井面151の裏側152に延びており、室内158から視認されない。複数の照明部6は、例えば、天井面151の裏側152に配置されている。各照明部6の照明光L3の出射端60は、天井面151から室内158に向けて露出している。複数の照明部6は、図3に示されるように、例えば行列状に配置されている。複数の照明部6の照明光L3の出射端60は、例えば行列状に配置されている。各照明部6は天井面151から室内158に向けて照明光L3を放射する。照明部6から放射された照明光L3は床面153に到達して床面153を照らす。図2の例では、室内158が照明空間100となっている。変換部5と照明部6を接続する光ファイバ11は、例えば、天井面151の裏側152に配置されており、室内158から視認されない。
【0029】
以下では、照明システム1の各構成要素が図2のように配置される場合を例に挙げて照明システム1について説明するが、照明システム1の各構成要素の配置例は図2の例に限られない。
【0030】
図4は、照明光L3の床面153に対する照射エリアARの一例を示す概略図である。図4では、照射エリアARの外形は、円形であるが、円形以外の形状であってもよい。図4に示されるように、各照明部6の床面153の照射エリアARは、例えば、当該照明部6の上下及び左右の4つの照明部6の照射エリアARのそれぞれと部分的に重なっている。複数の照射エリアARは、照射エリアAR間に隙間が無いように設定されている。
【0031】
なお、照明部6の照射エリアARは、当該照明部6の斜め方向の照明部6の照射エリアARと部分的に重なってもよい。例えば、照明部6の照射エリアARは、当該照明部6の右斜め上方向の照明部6の照射エリアARと部分的に重なってもよい。また、照明部6の照射エリアARは、当該照明部6の左斜め上方向の照明部6の照射エリアARと部分的に重なってもよい。また、照明部6の照射エリアARは、当該照明部6の右斜め下方向の照明部6の照射エリアARと部分的に重なってもよい。また、照明部6の照射エリアARは、当該照明部6の左斜め下方向の照明部6の照射エリアARと部分的に重なってもよい。
【0032】
本例では、照明システム1は、複数の照明部6の光量(詳細には照明光L3の光量)を制御することによって、例えば、物体(対象物ともいう)の影が当該物体に当たる風によって動く様子を照明空間100に再現することが可能である。対象物は、例えば、草木の葉であってもよい。この場合、照明空間100には、葉の影が当該葉に当たる風によって動く様子が再現される。照明システム1は、複数の葉の影が当該複数の葉に当たる風によって動く様子を照明空間100に再現してもよい。この場合、照明システム1は、複数の葉の影が当該複数の葉に当たる風によって動く様子を照明空間100に再現することによって、照明空間100に例えば木漏れ日を再現してもよい。
【0033】
本例では、制御装置2が複数の照明部6の光量を制御することによって、複数の葉の疑似的な影が床面153に映し出される。葉の疑似的な影(葉の疑似影ともいう)は、床面153の暗い部分で構成される。そして、制御装置2が、複数の照明部6の光量を制御することによって、床面153に現れる複数の葉の疑似影のそれぞれを床面153上で適切に動かすことによって、葉の隙間から漏れる木漏れ日が自然な形で照明空間100に再現される。以後、単に疑似影と言えば、葉の疑似的な影を意味する。
【0034】
図5は、床面153で複数の疑似影700(言い換えれば複数の暗い部分)が動く様子の一例を模式的に示す図である。図5では、動く前の疑似影700が破線で示され、動いた後の疑似影700が実線で示されている。制御装置2は、各照明部6の光量を個別に制御することによって、複数の疑似影700のそれぞれを個別に移動させることができる。疑似影700は、床面153において、照明光L3が全く当たらない部分で構成されてもよいし、照明光L3が少し当たる部分で構成されてもよい。疑似影700の外形は、葉の影の外形を模擬した形状であればよく、楕円であってもよいし、他の形状であってもよい。床面153上で複数の疑似影700が動くことによって照明空間100に木漏れ日が再現される。
【0035】
<制御装置の構成例>
図6は制御装置2の構成の一例を示す概略図である。図6に示されるように、制御装置2は、例えば、複数の駆動部25と、複数の駆動部25を制御する制御部20とを備える。制御部20は、例えば、コンピュータ装置の一種であり、制御回路とも言える。制御部20は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0036】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、又は複数の通信可能に接続された集積回路IC及び/又はディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
【0037】
1つの実施形態において、プロセッサは、例えば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続又は処理を実行するように構成された1以上の回路又はユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続き又は処理を実行するように構成されたファームウェア(例えば、ディスクリートロジックコンポーネント)であってもよい。
【0038】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又はこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせ、又は他の既知のデバイス及び構成の組み合わせを含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0039】
本例では、制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)21及び記憶部22を備える。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの、CPU21が読み取り可能な非一時的な記録媒体を含む。記憶部22には、制御装置2を制御するためのプログラム23等が記憶されている。制御部20の各種機能は、CPU21が記憶部22内のプログラム23を実行することによって実現される。
【0040】
なお、制御部20の構成は上記の例に限られない。例えば、制御部20は、複数のCPU21を備えてもよい。また制御部20は、少なくとも一つのDSP(Digital Signal Processor)を備えてもよい。また、制御部20の全ての機能あるいは制御部20の一部の機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路によって実現されてもよい。また、記憶部22は、ROM及びRAM以外の、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体を備えてもよい。記憶部22は、例えば、小型のハードディスクドライブ及びSSD(Solid State Drive)などを備えてもよい。
【0041】
複数の駆動部25は、制御部20からの指示に応じて、複数の発光部3をそれぞれ駆動することが可能である。駆動部25は、発光部3に電力を供給することによって、発光部3を駆動して発光部3から励起光L1を出力させる。制御部20は、複数の駆動部25を通じて複数の発光部3のそれぞれを個別に制御することが可能である。制御部20は、駆動部25を通じて発光部3を制御することによって、当該発光部3に対応する照明部6の光量を制御することができる。駆動部25は、例えば、半導体スイッチング素子を含む複数の電子部品で構成されており、駆動回路とも言える。
【0042】
図7は、制御部20が備える機能ブロックの一例と、記憶部22が記憶する情報の一例とを示す概略図である。図7に示されるように、制御部20は、機能ブロックとして、例えば照明制御部200及び情報生成部201を有する。照明制御部200及び情報生成部201は、例えば、CPU21がプログラム23を実行することによって当該CPU21に形成される。
【0043】
照明制御部200は、複数の駆動部25を通じて複数の発光部3を制御することによって、複数の照明部6の光量を制御することが可能である。照明制御部200は、各照明部6の光量を個別に設定することができる。情報生成部201は、複数の照明部6の光量を制御するための照明制御情報240を生成する。情報生成部201で生成された照明制御情報240は記憶部22に記憶される。本例では、照明制御部200が、記憶部22内の照明制御情報240に基づいて複数の照明部6の光量を制御することによって、木漏れ日が照明空間100に再現される。照明制御情報240は、照明空間100に木漏れ日を再現するための照明制御情報である。照明制御情報240は、対象物の影が風によって動く様子を照明空間100に再現するための照明制御情報であるともいえる。また、照明制御情報240は、複数の葉の影が風によって動く様子を照明空間100に再現するための照明制御情報であるともいえる。照明制御情報240は、例えば、照明システム1の実運用が開始する前に、情報生成部201によって生成される。情報生成部201は、照明制御情報240を生成する情報生成装置ともいえる。
【0044】
なお、照明制御部200の全ての機能あるいは照明制御部200の一部の機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路によって実現されてもよい。また、情報生成部201の全ての機能あるいは情報生成部201の一部の機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0045】
記憶部22には、照明制御情報240の生成で使用される複数の疑似情報220が予め記憶されている。複数の疑似情報220は、複数の対象物(本例では複数の葉)にそれぞれ対応している。各疑似情報220は、例えば、風速情報221、風向情報222及びゆらぎ情報223を含む。記憶部22内の複数の風速情報221は、複数の対象物にそれぞれ対応している。記憶部22内の複数の風向情報222は、複数の対象物にそれぞれ対応している。記憶部22内の複数のゆらぎ情報223は、複数の対象物にそれぞれ対応している。
【0046】
風速情報221は、それに対応する葉に当たる風の風速を疑似的に表す情報である。風向情報222は、それに対応する葉に当たる風の風向を疑似的に表す情報である。ゆらぎ情報223は、それに対応する葉に当たる風の風速に応じた当該葉のゆらぎを疑似的に表す情報である。
【0047】
本例では、N個(Nは2以上の整数)の仮想的な葉(仮想葉ともいう)を考える。また本例では、仮想的な風(仮想風ともいう)を考え、この仮想的な風が仮想葉に当たるものとする。上述の疑似影700は仮想葉の影であって、床面153には、N個の仮想葉の影(つまりN個の疑似影700)が映し出される。本例では、照明システム1によって、N個の仮想葉の影が仮想風によって動く様子が床面153に映し出される。Nは、例えば、十数個であってもよいし、数十個であってもよい。
【0048】
記憶部22内には、N個の仮想葉にそれぞれ対応するN個の疑似情報220が記憶されている。記憶部22内のN個の風速情報221は、N個の仮想葉にそれぞれ対応している。記憶部22内のN個の風向情報222は、N個の対象物にそれぞれ対応している。記憶部22内のN個のゆらぎ情報223は、N個の仮想葉にそれぞれ対応している。
【0049】
風速情報221は、それに対応する仮想葉に当たる仮想風の風速を表す情報である。仮想風の風速を表す情報は、実際の風の風速を疑似的に表す情報であるといえる。風向情報222は、それに対応する仮想葉に当たる仮想風の風向を表す情報である。ゆらぎ情報223は、それに対応する仮想葉に当たる仮想風の風速に応じた当該仮想葉のゆらぎを表す情報である。
【0050】
情報生成部201(言い換えれば情報生成装置201)は、例えば、記憶部22内の複数の疑似情報220に基づいて照明制御情報240を生成する。情報生成部201は、例えば、第1生成部205及び第2生成部206を有する。
【0051】
第1生成部205は、疑似情報220に基づいて、それに対応する葉の影が風によって動く様子を疑似的に表す影情報230を生成する。影情報230は、仮想葉の影が仮想風によって動く様子を表す情報であるといえる。第1生成部205は、N個の疑似情報220のそれぞれについて影情報230を生成する。
【0052】
第2生成部206は、第1生成部205が生成したN個の影情報230に基づいて、N個の葉の影が風によって動く様子を照明空間100に再現するための照明制御情報240を生成する。つまり、第2生成部206は、N個の影情報230に基づいて、N個の仮想葉の影が仮想風によって動く様子を床面153に映し出すための照明制御情報240を生成する。本例では、第2生成部206は、N個の影情報230に基づいて、木漏れ日を室内158に再現するための照明制御情報240を生成する。第2生成部206は、生成した照明制御情報240を記憶部22内に書き込む。
【0053】
なお、制御装置2は、ユーザからの入力を受け付ける入力部を備えてもよい。入力部には、ユーザのタッチ操作を受け付けるタッチセンサが含まれてもよいし、操作ボタンが含まれてもよい。また、制御装置2は、文字、記号、図形などの各種情報を表示することが可能な表示部を備えてもよい。表示部は、例えば、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の種類のディスプレイであってもよい。
【0054】
以後、N個の仮想葉のそれぞれに番号を付けて、N個の仮想葉を第1~第Nの仮想葉と呼ぶことがある。また、第nの仮想葉の影である疑似影700を第nの疑似影700と呼ぶことがある。nは変数で1≦n≦Nを満たす整数である。
【0055】
以下では、図8に示されるXY座標系を用いて照明システム1について説明する。本例では、説明の便宜上、疑似影700が映し出される床面153は、方形状の平面であるとする。XY平面は、床面153に平行であって、床面153の上方に設定されている。図8に示されるように、平面視において、床面153は、XY平面のX≧0かつY≧0の領域に含まれている。また、XY座標系の原点Oは、平面視において床面153の一の角に位置するように設定される。平面視において、床面153の当該一の角から延びる2辺は、X軸及びY軸上にそれぞれ位置する。以後、XY平面のX≧0かつY≧0の領域を右上XY平面と呼ぶことがある。
【0056】
<仮想風の一例>
本例では、N個の仮想葉は右上XY平面内に位置するものとする。そして、仮想風は、右上XY平面に沿って吹くものとする。したがって、本例では、各仮想葉は、それに仮想風が当たることによって右上XY平面内で動く。仮想葉の影である疑似影700は、右上XY平面の下方に位置する床面153上で、仮想葉が動いた分だけ動く。
【0057】
本例では、時刻tにおける仮想風は、XY平面内のベクトルW(t)で表される。ベクトルW(t)の大きさをv(t)とし、ベクトルW(t)と+X方向とが成す角度をθ(t)とする。ベクトルW(t)と+X方向とが成す角度とは、X軸をベクトルW(t)の始点まで平行移動させた場合の+X方向とベクトルW(t)とが成す角度である。θ(t)は例えば反時計回りの角度である。本例では、XY平面のX座標及びY座標の単位は、例えば、風速の単位であるm/sである。
【0058】
v(t)は、時刻tにおける仮想風の風速を表す風速情報である。v(t)は、風の風速を疑似的に表す風速情報であるともいえる。v(t)は時刻tを変数とする関数である。本例では、v(t)の値が大きければ、風速が大きいことを意味する。θ(t)は、時刻tにおける仮想風の風向を表す風向情報である。θ(t)は、風の風向を疑似的に表す風向情報であるともいえる。θ(t)は時刻tを変数とする関数である。以後、単に風速と言えば、仮想風の風速を意味する。また、単に風向と言えば、仮想風の風向を意味する。
【0059】
本例では、XY平面の原点Oでの時刻tにおける仮想風を、原点Oを始点とするベクトルWo(t)で表す(図8参照)。ベクトルWo(t)の大きさをvo(t)とし、ベクトルWo(t)と+X方向とが成す角度をθo(t)とする。vo(t)は、原点Oでの時刻tにおける仮想風の風速を表す風速情報である。θo(t)は、原点Oでの時刻tにおける仮想風の風向を表す風向情報である。
【0060】
ここで、右上XY平面内での位置をPm(mは変数であって、1以上の整数)で表す。そして、仮想風が原点Oから右上XY平面内の位置Pmまで到達するまでの時間をτmで表す。時間τmは、位置Pmに応じて変化し、プラスの値となることもあれば、マイナスの値となることもある。時間τmは、位置Pmが原点Oに対して風下に存在する場合、プラスの値となる。一方で、時間τmは、位置Pmが原点Oに対して風上に存在する場合、つまり、原点Oよりも時間的に前に仮想風が位置Pmに到達する場合、マイナスの値となる。位置Pmが原点Oに一致する場合、τm=0となる。
【0061】
本例では、位置Pmでの時刻tにおける仮想風を、位置Pmを始点とするベクトルWm(t)で表す(図8参照)。そして、ベクトルWm(t)を、原点Oでの仮想風を表すベクトルWo(t)を用いて表す。具体的には、ベクトルWm(t)を、Wm(t)=Wo(t-τm)で表す。ベクトルWm(t)の大きさをvm(t)とすると、vm(t)は、位置Pmでの時刻tにおける仮想風の風速を表す風速情報である。ベクトルWm(t)と+X方向とが成す角度をθm(t)とすると、θm(t)は、位置Pmでの時刻tにおける仮想風の風向を表す風向情報である。vm(t)は、vm(t)=vo(t-τm)で表され、θm(t)は、θm(t)=θo(t-τm)で表される。
【0062】
<風速情報の一例>
本例では、第nの仮想葉の初期位置をPnで表す。初期位置Pnは、仮想風が吹いていないときの第nの仮想葉の右上XY平面内の位置である。本例では、第nの仮想葉に当たる仮想風の風速を表す風速情報221として、例えば、第nの仮想葉の初期位置Pnでの仮想風の風速を表す風速情報vn(t)が採用される。風速情報vn(t)は、vn(t)=vo(t-τn)で表される。風速情報vn(t)は、原点Oでの仮想風の風速情報vo(t)と、原点Oでの仮想風が位置Pnまで到達するまでの時間τnとで決まる情報である。
【0063】
以後、原点Oでの仮想風の風速情報vo(t)を基準風速情報vo(t)と呼ぶことがある。また、第nの仮想葉に当たる仮想風の風速情報vn(t)を第nの風速情報vn(t)と呼ぶことがある。また、第nの仮想葉に当たる仮想風を第nの仮想風と呼ぶことがある。
【0064】
図9は、基準風速情報vo(t)と第nの風速情報vn(t)の一例を示す図である。以後、単に風速情報v(t)と言えば、基準風速情報vo(t)と第nの風速情報vn(t)のそれぞれを意味する。
【0065】
本例では、風速情報v(t)は、人にとって心地よい風の風速を疑似的に表している。図9に示されるように、風速情報v(t)は、例えば、風速の強弱が繰り返し現れることを示す。風速情報v(t)は風速の時間変化を表す情報であるといえる。図9の例では、風速情報v(t)は、台形波関数で表されているが、他の周期関数、例えば正弦波関数あるいは矩形波関数で表されてもよい。
【0066】
風速情報v(t)での風速の強弱の繰り返し周期T1(言い換えれば、風速情報v(t)を表す周期関数の周期)は一定であってもよい。あるいは、繰り返し周期T1は、図10に示されるように、時間経過に応じて変化してもよい。この場合、繰り返し周期T1は、ランダムに変化してもよい。また、繰り返し周期T1は、1周期ごとに変化してもよいし、複数周期ごとに変化してもよい。
【0067】
繰り返し周期T1内での風速の最大値vmax及び最小値vminは、例えば、ビューフォート風力階級表での「軟風」の風速に基づいて決定されている。風力階級表では、風速3.4m/s以上5.4m/s以下の風が「軟風」として規定されている。繰り返し周期T1内での最大値vmaxは一定であってもよいし、時間経過に応じて変化してもよい。最大値vmaxが一定である場合、最大値vmaxは例えば5.4m/sに設定されてもよい。最大値vmaxが変化する場合、最大値vmaxは、例えば、3.4m/sと5.4m/sの間の中間値vmid以上であって5.4m/s以下の範囲で変化してもよい。この場合、最大値vmaxは、中間値vmid以上5.4m/s以下の範囲でランダムに変化してもよい。中間値vmidは、例えば4.4m/sに設定されてもよい。また、繰り返し周期T1内での風速の最大値vmaxは、1周期ごとに変化してもよいし、複数周期ごとに変化してもよい。
【0068】
繰り返し周期T1内での最小値vminは一定であってもよいし、時間経過に応じて変化してもよい。最小値vminが一定である場合、最小値vminは例えば3.4m/sに設定されてもよい。最小値vminが変化する場合、最小値vminは、例えば、3.4m/s以上中間値vmid未満の範囲で変化してもよい。この場合、最小値vminは、3.4m/s以上中間値vmid未満の範囲でランダムに変化してもよい。繰り返し周期T1内での風速の最小値vminは、1周期ごとに変化してもよいし、複数周期ごとに変化してもよい。図11は、最大値vmax及び最小値vminが変化する様子の一例を示す図である。
【0069】
繰り返し周期T1内において、風速が大きい期間T11は、例えば、数秒~数十秒に設定される。また、繰り返し周期T1内において、風速が小さい期間T12は、例えば、数秒秒~数十秒に設定される。期間T11は、例えば、繰り返し周期T1内での中間値vmid以上の期間である。期間T12は、例えば、繰り返し周期T1内での中間値vmid以下の期間である。期間T11の長さと期間T12の長さは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。風速情報v(t)が示す風速波形の周波数は、例えば、0.02Hz以上0.2Hz以下であってもよい。
【0070】
時間τnがプラスの場合、図9に示されるように、第nの風速情報vn(t)が示す第nの仮想風の風速波形は、基準風速情報vo(t)が示す風速波形よりも時間τnだけ遅れた波形となっている。一方で、時間τがマイナスの場合には、第nの風速情報vn(t)が示す風速波形は、基準風速情報vo(t)が示す風速波形よりもτnの絶対値だけ進んだ波形となる。時間τnは、第nの仮想葉の初期位置Pnに応じて変化する。制御装置2の記憶部22には、第1の仮想葉から第Nの仮想葉にそれぞれ対応する第1の風速情報v1(t)から第Nの風速情報vN(t)がN個の風速情報221として予め記憶されている。原点Oでの仮想風の風速情報vo(t)と時間τnが定まれば、第nの風速情報vn(t)を得ることができる。時間τnの算出方法については後述する。
【0071】
<風向情報の一例>
本例では、第nの仮想葉に当たる仮想風の風向を表す風向情報222として、第nの仮想葉の初期位置Pnでの仮想風の風向を表す風向情報θn(t)が採用される。風向情報θn(t)は、θn(t)=θo(t-τn)で表される。風向情報θn(t)は、原点Oでの仮想風の風向情報θo(t)と、原点Oでの仮想風が初期位置Pnまで到達するまでの時間τnとで決まる情報である。
【0072】
以後、原点Oでの仮想風の風向情報θo(t)を基準風向情報θo(t)と呼ぶことがある。また、第nの仮想葉に当たる仮想風(つまり、第nの仮想風)の風向情報θn(t)を第nの風向情報θn(t)と呼ぶことがある。
【0073】
図12は、基準風向情報θo(t)と第nの風向情報θn(t)の一例を示す図である。以後、単に風向情報θ(t)と言えば、基準風向情報θo(t)と第nの風向情報θn(t)のそれぞれを意味する。
【0074】
公園等の屋外においては、葉に当たる風の風向が一時的に反転することがある。風向情報θ(t)は、例えば、風の一時的な反転を表現している。図12に示されるように、風向情報θ(t)は、例えば、基本的には角度αを示している。そして、風向情報θ(t)は、例えば、一時的に角度(α+180°)を示す。これにより、風向情報θ(t)は、風向が一時的に反転することを示す。風向情報θ(t)は、風向の時間変化を示す情報である。風向情報θ(t)は例えば台形波関数で表される。
【0075】
角度αは、0°以上360°以下の角度であって、例えば45°に設定される。角度αは、45°以外の角度に設定されてもよい。風向情報θ(t)は、風向が、例えば、数十秒から数分間の間に1回だけ反転することを示してもよい。風向が反転している反転期間T2は、例えば数秒に設定される。風向情報θ(t)が示す風向の反転が現れる間隔(言い換えれば、風向情報θ(t)を表す台形波関数の周期)は、一定であってもよいし、変化してもよい。後者の場合、風向の反転が現れる間隔はランダムに変化してもよい。また、風向の反転が現れる間隔は、毎回変化してもよいし、複数回ごとに変化してもよい。言い換えれば、風向情報θ(t)を表す台形波関数の周期は、1周期ごとに変化してもよいし、複数周期ごとに変化してもよい。図13は風向の反転が現れる間隔T3が変化する様子の一例を示す図である。
【0076】
図12に示される風向情報θ(t)は、風向が、角度αから角度(α+180°)まで徐々に変化して、角度(α+180°)を反転期間T2だけ維持し、その後、角度(α+180°)から角度αまで徐々に変化することを示す。これにより、風向情報θ(t)では、風向が反転するときの波形が逆台形状となっている。なお、風向情報θ(t)において風向が反転するときの波形は、矩形状など、逆台形状以外の形状であってもよい。
【0077】
時間τnがプラスの場合、図12に示されるように、第nの風向情報θn(t)が示す第nの仮想風の風向波形は、基準風向情報θo(t)が示す風向波形よりも時間τnだけ遅れた波形となっている。一方で、時間τnがマイナスの場合、第nの風向情報θn(t)が示す第nの仮想風の風向波形は、基準風向情報θo(t)が示す風向波形よりもτnの絶対値だけ進んだ波形となる。制御装置2の記憶部22には、第1の仮想葉から第Nの仮想葉にそれぞれ対応する第1の風向情報θ1(t)から第Nの風向情報θN(t)がN個の風向情報222として予め記憶されている。原点Oでの仮想風の風向情報θo(t)と時間τnが定まれば、第nの風向情報θn(t)を得ることができる。なお、風向情報θ(t)は時刻にかかわらず一定角度を示してもよい。例えば、θ(t)=αであってもよい。
【0078】
<ゆらぎ情報の一例>
葉は草木の枝等に付いており、葉に風が当たるときには、葉はその付け根を支点として動く。図14は、風が当たる葉800が、その付け根850を支点として動く様子を示す概略図である。
【0079】
葉800は、風が当たると、風の向きに応じた方向に動く。そして、葉800に風が当たって葉800の向き(言い換えれば葉800の姿勢)が変化して葉800が風から受ける力の影響が変化すると、葉柄等の弾性によって、葉800は、それまでとは反対方向に動くようになる。その後、葉800の向きが変化し、葉800が風から受ける力の影響が変化すると、葉800は、再度、風の向きに応じた方向に動くようになる。このような動きが繰り返し葉800で発生することによって、葉800がその付け根850を支点として揺れ動き、葉800のゆらぎが発生する。このゆらぎは、風の風速が大きいほど大きくなる傾向にある。ゆらぎ情報223は、このような、風の風速に応じた葉800のゆらぎを疑似的に表している。葉800のゆらぎに応じて葉800の影もゆらぐことから、ゆらぎ情報223は、風の風速に応じた葉800の影のゆらぎを疑似的に表しているといえる。
【0080】
本例では、第nの仮想葉に対応するゆらぎ情報223は、例えばゆらぎ角度θsn(t)で表される。ゆらぎ角度θsn(t)は、第nの仮想風の風速に応じた、第nの仮想葉のゆらぎを表す角度である。ゆらぎ角度θsn(t)は、時刻tに応じて変化し、時刻tを変数とする関数である。以後、第nの仮想葉に対応するゆらぎ角度θsn(t)を第nのゆらぎ角度θsn(t)と呼ぶことがある。
【0081】
図15は、第nのゆらぎ角度θsn(t)の一例を示す図である。図15には風速情報vn(t)も示されている。図15において破線で示される波形は、風速情報vn(t)が示す波形に対応している。
【0082】
図15に示されるように、ゆらぎ角度θsn(t)は、例えば、振幅が風速情報vn(t)に応じて変化する、周期が一定の周期関数で表される。言い換えれば、ゆらぎ角度θsn(t)は、風速情報vn(t)に基づいて振幅変調された周期波を表す周期関数で表される。さらに言い換えれば、ゆらぎ角度θsn(t)は、風速情報vn(t)が示す周期波形(例えば台形波)で振幅変調された周期波を表す周期関数で表される。ゆらぎ角度θsn(t)を表す周期関数は、例えば正弦波関数である。ゆらぎ角度θsnは、例えば、以下の式(1)で表される。
【0083】
【数1】
【0084】
ここで、式(1)中のvmax0は、風速情報vn(t)において繰り返し周期T1内の最大値vmaxが一定である場合には、最大値vmaxを意味する。一方で、繰り返し周期T1内の最大値vmaxが変化する場合には、vmax0は、最大値vmaxが取り得る範囲の最大値を意味する。vmax0は、例えば、軟風の風速の最大値、つまり5.4m/sに設定される。式(1)中のβは、ゆらぎ角度θsn(t)の最大値を意味する。ゆらぎ角度θsn(t)は、β以下であって-β以上の範囲内で変化する。ゆらぎ角度θsn(t)の最小値は-βとなる。βは例えば15°に設定される。この場合、ゆらぎ角度θsn(t)は、-15°以上+15°以下の範囲内で周期的に変化する。式(1)中のfは、ゆらぎ角度θsn(t)を表す周期関数が示す周期波(本例では正弦波)の周波数を意味する。周波数fは、例えば、繰り返し周期T1を用いて、f=Z/T1で表される。Zは例えば5以上に設定される。ゆらぎ角度θsn(t)を表す周期関数では、繰り返し周期T1と同じ長さの期間において、1周期分の波形がZ回現れる。周波数fは、例えば、0.2Hz以上数十Hz以下であってもよい。
【0085】
制御装置2の記憶部22には、第1の仮想葉から第Nの仮想葉にそれぞれ対応する第1のゆらぎ角度θs1(t)から第Nのゆらぎ角度θsN(t)が、N個のゆらぎ情報223として予め記憶されている。風速情報vn(t)、最大値β及び周波数fが定まれば、ゆらぎ角度θsn(t)を得ることができる。
【0086】
第1のゆらぎ角度θs1(t)から第Nのゆらぎ角度θsN(t)の間において、ゆらぎ角度θsn(t)が示す周期波の周波数fは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。つまり、第1のゆらぎ角度θs1(t)から第Nのゆらぎ角度θsN(t)の間において、ゆらぎ角度θsn(t)を表す周期関数の周期は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。前者の場合、第1のゆらぎ角度θs1(t)から第Nのゆらぎ角度θsN(t)の間において、ゆらぎ角度θsn(t)を表す周期関数の位相は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、ゆらぎ角度θsn(t)を表す周期関数は、矩形波関数あるいは台形波関数等の正弦波関数以外の周期関数であってもよい。
【0087】
以後、ゆらぎ角度θsN(t)をゆらぎ情報θsN(t)と呼ぶことがある。また、第nの仮想葉に対応する疑似情報220を、第nの疑似情報220と呼ぶことがある。第nの疑似情報220には、第nの風速情報vn(t)、第nの風向情報θn(t)及び第nのゆらぎ情報θsn(t)が含まれている。記憶部22には、第1の疑似情報220から第Nの疑似情報220が記憶されている。
【0088】
<τnの算出方法の一例>
図16及び17は時間τnの算出方法の一例を説明するための図である。図16には、第nの仮想葉の初期位置Pnが原点Oに対して仮想風Wo(t)の風下に存在する様子が示されている。図17には、第nの仮想葉の初期位置Pnが原点Oに対して仮想風Wo(t)の風上に存在する様子が示されている。
【0089】
時間τnが算出される場合、まず、XY平面に対して、原点Oを通り、かつベクトルWo(t)の向きに対して垂直な基準線BLが引かれる。基準線BLは、ベクトルWo(t)と+X方向とが成す角度θo(t)、つまり基準風向情報θo(t)に基づいて定めることができる。次に、初期位置Pnから基準線BLに垂線HLが下ろされる。次に、垂線HLと基準線BLとの交点H(言い換えれば垂線HLの足H)と初期位置Pnとの間の距離dが求められる。次に、距離dを、原点Oでの仮想風の風速の平均値vaで除算する。平均値vaは、ベクトルWo(t)の大きさの平均値、つまり風速情報vo(t)の値の平均値である。平均値vaは、上述の中間値vmidと一致してもよい。
【0090】
本例では、初期位置Pnが、図16に示されるように、基準線BLに対してベクトルWo(t)の向き側に存在する場合、初期位置Pnが原点Oに対して風下に位置することとする。初期位置Pnが原点Oに対して風下に位置する場合、時間τnは、τn=+d/vaで表される。一方で、本例では、初期位置Pnが、図17に示されるように、基準線BLに対してベクトルWo(t)の向きとは反対側に存在する場合、初期位置Pnが原点Oに対して風上に位置することとする。初期位置Pnが原点Oに対して風上に位置する場合、時間τnは、τn=-d/vaで表される。本例では、上述の図12に示されるように、θo(t)の値は時刻tに応じて変化することから、つまり、ベクトルWo(t)の向きは時刻tに応じて変化することから、時間τnの値は、時刻tに応じて、プラスとなったり、マイナスとなったりする。
【0091】
図18は、ある時刻でのベクトルWo(t)と、第1の仮想葉の初期位置P1と、第2の仮想葉の初期位置P2とを例示する図である。図18の例では、初期位置P1は、仮想風Wo(t)の風上に存在するため、時間τ1はτn=-d/vaとなる。一方で、初期位置P2は、仮想風Wo(t)の風下に存在するため、時間τ2はτn=+d/vaとなる。
【0092】
以上の説明から理解できるように、基準風速情報vo(t)及び基準風向情報θo(t)と、第nの仮想葉の初期位置Pnと、式(1)中の最大値β及び周波数fとが定められれば、第nの風速情報vn(t)、第nの風向情報θn(t)及び第nの揺らぎ情報θsn(t)を含む第nの疑似情報220を定めることができる。
【0093】
なお、N個の疑似情報220は、制御装置2の制御部20で生成されてもよいし、他のコンピュータ装置で生成されてもよい。図19は、制御部20が第nの疑似情報220を生成する処理の一例を示すフローチャートである。本例では、原点Oでの仮想風の風速情報vo(t)及び風向情報θo(t)と、各仮想葉の初期位置と、式(1)中の最大値β及び周波数fの値とが予め記憶部22に記憶されている。制御部20は、図19の処理を行うことによって、第1の疑似情報220から第Nの疑似情報220を生成することができる。
【0094】
図19に示されるように、ステップs1において、制御部20は、記憶部22に記憶されている基準風向情報θo(t)及び初期位置Pnに基づいて、上述のようにして時間τnを算出する。次にステップs2において、制御部20は、記憶部22内の基準風速情報vo(t)と、算出した時間τnとに基づいて、第nの風速情報vn(t)を生成する。次にステップs3において、制御部20は、記憶部22内の基準風向情報θo(t)と、算出した時間τnとに基づいて、第nの風向情報θn(t)を生成する。そして、ステップs4において、制御部20は、記憶部22内の最大値β及び周波数fの値と、生成した風速情報vn(t)と、式(1)とに基づいて、第nのゆらぎ情報θsn(t)を生成する。式(1)中のvmax0は、第nの風速情報vn(t)から得られる。
【0095】
なお、ステップs3は、ステップs2の前に実行されてもよいし、ステップs4の後に実行されてもよい。また、制御部20は、ステップs1の前に、ユーザからの入力に基づいて、基準風速情報vo(t)及び基準風向情報θo(t)を生成してもよい。また、各仮想葉の初期位置と、式(1)中の最大値β及び周波数fの値とは、ユーザから制御装置2に入力されて、記憶部22に記憶されてもよい。
【0096】
<情報生成部の動作の具体例>
図20は情報生成部201の動作の一例を示すフローチャートである。図20に示されるように、ステップs11において、情報生成部201の第1生成部205は、記憶部22内のN個の疑似情報220に基づいて、N個の影情報230を生成する。次にステップs12において、第2生成部206が、ステップs11で生成されたN個の影情報230に基づいて照明制御情報240を生成する。
【0097】
<第1生成部の動作の具体例>
第1生成部205は、第nの疑似情報220に含まれる、第nの風速情報vn(t)、第nの風向情報θn(t)及び第nのゆらぎ情報θsn(t)に基づいて、第nの仮想葉の影(つまり、第nの疑似影700)が第nの仮想風によって動く様子を表す影情報230を生成する。以後、第nの仮想葉の影が第nの仮想風によって動く様子を表す影情報230を、第nの影情報230と呼ぶことがある。
【0098】
本例では、第nの影情報230が、例えば、第nの疑似影700の位置を示す位置情報Sn(t)で表される。位置情報Sn(t)は、時刻tを変数とする関数であって、第nの疑似影700の位置の時間変化を示す情報である。第nの疑似影700の位置の時間変化は、第nの疑似影700の動きであるといえる。以後、位置情報Sn(t)を第nの位置情報Sn(t)と呼ぶことがある。
【0099】
ここで、XY平面を床面153まで平行移動させたものをxy平面とする。床面153はxy平面のx≧0かつy≧0の領域に含まれている。平面視において、XY平面のX≧0かつY≧0の領域と、xy平面のx≧0かつy≧0の領域とは一致している。時刻tでの第nの疑似影700の位置を示す位置情報Sn(t)は、xy平面内での第nの疑似影700の時刻tでの位置SPn(t)の座標で表される。xy平面のx座標及びy座標の単位は例えばcmである。位置情報Sn(t)に含まれるx座標及びy座標を、それぞれxn(t)及びyn(t)とする。x座標xn(t)及びy座標yn(t)は、例えば、以下の式(2)及び(3)でそれぞれ表される。
【0100】
【数2】
【0101】
【数3】
【0102】
ここで、式(2)中のxn0は、xy平面内での第nの疑似影700の初期位置SPn0のx座標を意味する。式(3)中のyn0は、xy平面内での第nの疑似影700の初期位置SPn0のy座標を意味する。式(2)及び(3)中のKは、風速を疑似影700の移動量に変換するための変換係数である。変換係数Kは、例えば、vn(t)が最大値をとるときにK×vn(t)が値γになるような値に設定される。γは例えば数cm以上10cm以下に設定される。vn(t)の最大値が5.4m/s(つまり、仮想風の最大風速が5.4m/s)であって、γが10cmの場合、K=10/5.4に設定される。
【0103】
図21は、第nの疑似影700の初期位置SPn0と、第nの疑似影700の時刻tでの位置SPn(t)との関係を模試的に示す図である。ここで、初期位置SPn0から位置SPn(t)へ向かうベクトルをMVn(t)とする。ベクトルMVn(t)の大きさはK×vn(t)で表される。ベクトルMVn(t)と+x方向とが成す角度は(θn(t)+θsn(t))で表される。時刻tでは、第nの疑似影700の位置は、初期位置SPn0からベクトルMVn(t)の分だけ動いている。
【0104】
記憶部22には、N個の疑似影700の初期位置のx座標及びy座標と変換係数Kとが予め記憶されている。第1生成部205は、第nの影情報230を生成する場合、記憶部22から、第nの疑似影700の初期位置SPn0のx座標xn0及びy座標yn0と、変換係数Kと、風速情報vn(t)と、風向情報θn(t)と、ゆらぎ情報θsn(t)とを読み出す。そして、第1生成部205は、読み出した各種情報を式(2)及び(3)に代入して、時刻tを変数とする関数であるx座標xn(t)及びy座標yn(t)を生成する。これにより、第nの影情報230としての第nの位置情報Sn(t)が生成される。第1生成部205は、このようにして、第1の影情報230から第Nの影情報230を生成する。以後、位置情報S(t)といえば、第1の位置情報S1(t)から第Nの位置情報SN(t)のそれぞれを意味する。
【0105】
<第2生成部の動作の具体例>
第2生成部206は、第1生成部205で生成されたN個の影情報230に基づいて、N個の葉の影が風によって動く様子を照明空間100に再現するための照明制御情報240を生成する。つまり、第2生成部206は、N個の疑似影700についての位置情報S(t)に基づいて、N個の仮想葉の影が仮想風によって動く様子を床面153に映し出すための照明制御情報240を生成する。記憶部22には、N個の疑似影700の大きさ(言い換えれば範囲)をそれぞれ示すN個の影サイズ情報が予め記憶されている。第2生成部206は、記憶部22内のN個の影サイズ情報と、N個の影情報230とに基づいて、照明制御情報240を生成する。第2生成部206は、各疑似影700について、床面153上での疑似影700の動きが、当該疑似影700に対応する影情報230が示す動きとなるような照明制御情報240を生成する。言い換えれば、第2生成部206は、各疑似影700について、床面153での疑似影700の各時刻での位置が、当該疑似影700に対応する位置情報S(t)が示す位置となるような照明制御情報240を生成する。
【0106】
照明制御情報240には、各照明部6についての光量の設定値が含まれている。照明部6の光量の設置値は、時刻に応じて変化する。照明制御情報240には、各照明部6について、当該照明部6の光量の設定値の時間変化を示す設定値情報が含まれている。照明制御部200は、各照明部6について、当該照明部6の光量の時間変化が当該照明部6に対応する設定値情報が示す設定値の時間変化と一致するように、各発光部3を制御する。これにより、N個の疑似影700が仮想風によって動く様子が床面153に映し出されて、照明空間100に例えば木漏れ日が再現される。
【0107】
上記の例では、照明システム1に情報生成装置201(言い換えれば情報生成部201)が設けられているが、照明システム1とは別に情報生成装置201が設けられてもよい。
【0108】
情報生成部201は、ゆらぎ情報223を用いずに影情報230を生成してもよい。この場合、上述の式(2)及び(3)では、例えば、(θn(t)+θsn(t))がθn(t)に置き換えられてもよい。
【0109】
また、情報生成部201は、風向情報222を用いずに影情報230を生成してもよい。この場合、上述の式(2)及び(3)では、例えば、(θn(t)+θsn(t))がθsn(t)に置き換えられてもよい。
【0110】
上記の例では、床面153に疑似影700が映し出されているが、床面153以外の面に疑似影700が映し出されてもよい。例えば、天井面151あるいは壁面155に疑似影700が映し出されてもよい。
【0111】
対象物は、葉以外であってもよい。例えば、対象物はカーテンであってもよい。この場合、照明空間100には、床等に写る、カーテンの影が、当該カーテンに風が当たることによって動く様子が再現される。また、対象物は枝であってもよい。この場合、照明空間100には、地面等に写る、枝の影が、当該枝に風が当たることによって動く様子が再現される。また、対象物は鯉のぼりであってもよい。この場合、照明空間100には、地面等に写る、鯉のぼりの影が、当該鯉のぼりに風が当たることによって動く様子が再現される。
【0112】
以上のように、本例では、風の風速を疑似的に表した風速情報221に基づいて、当該風が当たる対象物の影が当該風によって動く様子を疑似的に表す影情報230が生成される。この影情報230に基づいて照明制御情報240が生成されることによって、対象物の影が風によって動く様子を照明光を使って自然な形で再現することができる。よって、照明の演出性を高めることができる。
【0113】
また、本例のように、風速情報221において、風速の強弱が繰り返し現れ、風速の強弱の繰り返し周期T1が変化することが示される場合には、対象物の影が風によって動く様子をより自然な形で再現することができる。
【0114】
また、風速情報221において、繰り返し周期T1内での風速の最大値vmax及び最小値vminの少なくとも一方が変化することが示される場合には、対象物の影が風によって動く様子をより自然な形で再現することができる。
【0115】
また、風速情報221だけではなく、風の風向を疑似的に表す風向情報222にも基づいて影情報230が生成される場合には、対象物の影が風によって動く様子をより自然な形で再現することができる。
【0116】
また、風向情報222において、風向が一時的に反転したり、その反転が現れる間隔が変化したりすることが示される場合には、対象物の影が風によって動く様子をより自然な形で再現することができる。
【0117】
また、風速情報221及び風向情報222だけではなく、風速に応じた葉のゆらぎを疑似的に表すゆらぎ情報223にも基づいて影情報230が生成される場合には、葉の影が風によって動く様子をより自然な形で再現することができる。
【0118】
また、複数の葉のそれぞれについて影情報230が生成される場合には、複数の葉の影が風によって動く様子を自然な形で照明空間100に再現することができる。よって、照明空間100に、例えば木漏れ日を再現することができる。
【0119】
また、複数の葉についてのゆらぎ情報223の間において、ゆらぎ情報223を表す周期関数の周期あるいは位相が互いに異なる場合には、複数の葉の影が風によって動く様子をより自然な形で照明空間100に再現することができる。
【0120】
上記の例では、波長変換部50を励起する励起光として、レーザ光が使用されているが、LED(Light Emitting Diode)が発する光が採用されてもよい。この場合、発光部3としてはLEDが採用される。
【0121】
また、変換部5と照明部6とが同一の外装ケースに収容され、変換部5と照明部6とが短い光ファイバ11で接続されてもよい。また、複数の変換部5と複数の発光部3とが同一の外装ケースに収容されて、発光部3と変換部5とが短い光ファイバ10で接続されてもよい。また、制御装置2、複数の発光部3及び複数の変換部5が同一の外装ケースに収容されてもよい。
【0122】
また、照明システム1は、複数の変換部5を備えなくてもよい。この場合、発光部3が例えばLEDあるいは蛍光灯で構成され、発光部3と照明部6とが光ファイバで直接接続されてもよい。そして、発光部3が発する可視光が照明光として照明部6から照明空間100に放射されてもよい。
【0123】
また、照明システム1は、複数の変換部5、複数の照明部6、複数の光ファイバ10及び複数の光ファイバ11を備えなくてもおい。この場合、発光部3が例えばLEDあるいは蛍光ランプで構成され、各発光部3が発する可視光が照明光として直接照明空間100に放射されてもよい。
【0124】
以上のように、情報生成装置201及び照明システム1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0125】
1 照明システム
6 照明部
23 プログラム
100 照明空間
200 照明制御部
201 情報生成装置(情報生成部)
205 第1生成部
206 第2生成部
221 風速情報
222 風向情報
223 ゆらぎ情報
230 影情報
240 照明制御情報
T1 繰り返し周期
T3 間隔
vmax 最大値
vmin 最小値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21