(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170319
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】連結部材、自転車、電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 3/00 20060101AFI20221102BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20221102BHJP
【FI】
B62M3/00 D
B62M6/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076379
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉本 宰弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 成勝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 利幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中心軸を中心として周方向に回転可能なチェーンホイールにクランクを連結するための軽量な連結部材を提供する。
【解決手段】連結部材は、胴体部と、複数のアーム部と、第1凹部と、を備える。胴体部は、軸方向に延びる中心軸を囲む環状である。アーム部は、軸方向から見て、胴体部から少なくとも径方向外方に延びる。第1凹部は、胴体部及びアーム部のうちの少なくとも一方の軸方向端面に配置されて、軸方向に凹む。軸方向から見て、アーム部は、対称軸に対して非線対称な形状とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として周方向に回転可能なチェーンホイールにクランクを連結するための連結部材であって、
軸方向に延びる前記中心軸を囲む環状の胴体部と、
軸方向から見て前記胴体部から少なくとも径方向外方に延びる複数のアーム部と、
前記胴体部及び前記アーム部のうちの少なくとも一方の軸方向端面に配置されて軸方向に凹む第1凹部と、
を備え、
第1方向は前記アーム部が延びる方向であって、第2方向は前記第1方向及び軸方向と垂直な方向であり、
対称軸は、第2方向における前記アーム部の中央を通って、前記第1方向に延び、
軸方向から見て、前記アーム部は、前記対称軸に対して非線対称な形状である、連結部材。
【請求項2】
軸方向から見て、
前記アーム部は、径方向外方且つ周方向一方に延び、
前記アーム部の周方向一方端部の長さは、前記アーム部の周方向他方端部の長さよりも短い、請求項1に記載の連結部材。
【請求項3】
前記第1凹部の少なくとも一部は、前記アーム部の軸方向端面に配置され、
軸方向から見て、前記アーム部の周方向一方端部と前記第1凹部との第1間隔は、前記アーム部の周方向他方端部と前記第1凹部との第2間隔よりも広い、請求項1又は請求項2に記載の連結部材。
【請求項4】
軸方向から見て、前記第1間隔は、径方向内方に向かうにつれて広くなる、請求項3に記載の連結部材。
【請求項5】
前記アーム部の軸方向における第1幅は、前記胴体部の軸方向における第2幅よりも広い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項6】
前記胴体部の軸方向における第2幅は、前記アーム部の軸方向における第1幅よりも広い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項7】
前記アーム部は、
軸方向から見て前記胴体部から少なくとも径方向外方に延びるアーム基部と、
前記アーム基部の径方向外端部から前記第1方向に延びて、前記チェーンホイールに固定可能な固定部と、
前記アーム基部と前記固定部との間に配置される段差部と、
を有し、
前記段差部は、前記アーム基部の軸方向一方端面の径方向外端部と、前記固定部の軸方向一方端面の径方向内端部とを接続する接続面を有し、
前記アーム基部の軸方向一方端面の径方向外端部は、前記固定部の軸方向一方端面の径方向内端部よりも軸方向一方に配置され、
前記接続面は、軸方向、又は軸方向と交差する方向に延びる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項8】
軸方向から見て、前記接続面の少なくとも周方向他方側の領域は、周方向他方に向かうにつれて径方向内方に延びる、請求項7に記載の連結部材。
【請求項9】
前記固定部は、軸方向に前記固定部を貫通する孔部を有し、
軸方向から見て、前記孔部と前記固定部の径方向外端部との第3間隔は、前記孔部と前記第1凹部との第4間隔よりも狭い、請求項7又は請求項8に記載の連結部材。
【請求項10】
前記胴体部の径方向内端部から軸方向に延びる筒部をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項11】
前記第1凹部の少なくとも一部は、前記胴体部の軸方向端面に配置され、
軸方向から見て、前記第1凹部は、前記筒部の径方向外側面と接する、請求項10に記載の連結部材。
【請求項12】
軸方向から見て、前記筒部と、前記胴体部の外縁部及び前記アーム部の外縁部のうちの一方とを繋ぐリブをさらに備え、
軸方向から見て前記リブは、前記第1凹部と周方向に接する、請求項11に記載の連結部材。
【請求項13】
前記アーム部は、前記アーム部の周方向一方端部に配置されて周方向他方に凹む第2凹部を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項14】
前記アーム部は、複数であって、周方向に並び、
周方向に隣り合う2つの前記アーム部において、周方向他方側の前記アーム部における前記第2凹部の径方向内端部は、前記胴体部の径方向外端部、及び周方向一方側の前記アーム部の周方向他方端部のうちの一方となだらかに繋がる、請求項13に記載の連結部材。
【請求項15】
前記アーム部の周方向一方端部と周方向他方端部との第5間隔は、前記第1凹部の径方向外端部と同じ径方向位置において最も広い、請求項13又は請求項14に記載の連結部材。
【請求項16】
前記第1凹部の径方向外端部と同じ径方向位置において、前記アーム部の周方向一方端部は最も周方向一方に配置される、請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項17】
前記アーム基部の前記第2方向における幅は、径方向内方に向かうにつれて広くなる、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の連結部材。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の連結部材と、
中心軸を中心として周方向に回転可能なチェーンホイールと、
前記連結部材によって前記チェーンホイールに連結されるクランクと、
を備える、自転車。
【請求項19】
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の連結部材と、
中心軸を中心として周方向に回転可能なチェーンホイールと、
前記連結部材によって前記チェーンホイールに連結されるクランクと、
前記チェーンホイールにトルクを与える駆動装置と、
前記駆動装置に電力を供給する電源部と、
を備える、電動アシスト自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結部材、自転車、電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパイダーアームと呼ばれる連結部材を用いて、チェーンホイールにクランクを連結する自転車が知られている。なお、スパイダーアーム、チェーンホイール、及びクランクはそれぞれ、チェーンリング、スパイダー、及びクランクアームと呼ばれることもある。たとえば、スパイダーは、チェーンリングに接続される複数のスパイダーアームと、スパイダーアームが突出する中央部と、中央部の中心にある接続穴と、を有する。接続穴には、クランクアームの接続部材が挿入される(欧州特許公開公報3392129号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3392129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スパイダーアームは、チェーンホイールとともに回転する。従って、自転車を使用する者の負担を低減するために、スパイダーアームには、軽量化が求められている。
【0005】
本発明は、チェーンホイールにクランクを連結するための連結部材を軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な連結部材は、中心軸を中心として周方向に回転可能なチェーンホイールにクランクを連結するための部材である。前記連結部材は、胴体部と、複数のアーム部と、第1凹部と、を備える。前記胴体部は、軸方向に延びる前記中心軸を囲む環状である。前記アーム部は、軸方向から見て、前記胴体部から少なくとも径方向外方に延びる。前記第1凹部は、前記胴体部及び前記アーム部のうちの少なくとも一方の軸方向端面に配置されて、軸方向に凹む。第1方向は、前記アーム部が延びる方向である。第2方向は、前記第1方向及び軸方向と垂直な方向である。対称軸は、第2方向における前記アーム部の中央を通って、前記第1方向に延びる。軸方向から見て、前記アーム部は、前記対称軸に対して非線対称な形状である。
【0007】
本発明の例示的な自転車は、上記の連結部材と、チェーンホイールと、クランクと、を備える。前記チェーンホイールは、中心軸を中心として周方向一方に回転可能である。前記クランクは、前記連結部材によって前記チェーンホイールに連結される。
【0008】
本発明の例示的な電動アシスト自転車は、上記の連結部材と、チェーンホイールと、クランクと、駆動装置と、電源部と、を備える。前記チェーンホイールは、中心軸を中心として周方向一方に回転可能である。前記クランクは、前記連結部材によって前記チェーンホイールに連結される。前記駆動装置は、前記チェーンホイールにトルクを与える。前記電源部は、前記駆動装置に出力を供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の例示的な連結部材、自転車、電動アシスト自転車によれば、チェーンホイールにクランクを連結するための連結部材を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、自転車のクランク及びチェーンホイール間の接続構造を示す斜視分解図である。
【
図3】
図3は、連結部材の軸方向一方端部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、連結部材の軸方向他方端部の構成例を示す斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、第1変形例に係るアーム部の平面図である。
【
図6B】
図6Bは、第2変形例に係るアーム部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0012】
なお、本明細書では、自転車100の連結部材1において、中心軸Acと平行な方向を「軸方向Da」と呼ぶ。軸方向Daのうち、一方の向きを「軸方向一方Da1」と呼び、他方の向きを「軸方向他方Da2」と呼ぶ。各々の構成要素において、軸方向一方Da1側の端部を「軸方向一方端部」と呼び、軸方向他方Da2側の端部を「軸方向他方端部」と呼ぶ。また、各々の構成要素の表面において、軸方向一方Da1を向く面を「軸方向一方端面」と呼び、軸方向他方Da2を向く面を「軸方向他方端面」と呼ぶ。
【0013】
また、中心軸Acに直交する方向を「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Acへと近づく向きを「径方向内方」と呼び、中心軸Acから離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。各々の構成要素において、径方向内方側の端部を「径方向内端部」と呼び、径方向外方側の端部を「径方向外端部」と呼ぶ。また、各々の構成要素の側面において、径方向内方を向く側面を「径方向内側面」と呼び、径方向外方を向く側面を「径方向外側面」と呼ぶ。
【0014】
また、中心軸Acを中心とする回転方向を「周方向Dr」と呼ぶ。周方向Drのうち、その一方の向きを「周方向一方Dr1」と呼び、他方の向きを「周方向他方Dr2」と呼ぶ。以下の説明では、周方向一方Dr1は、自転車100においてチェーンホイール1034及び連結部材1が回転する方向の前方である。周方向他方Dr2は、この回転する方向の後方である。各々の構成要素において、周方向Drにおける端部を「周方向端部」と呼ぶ。また、周方向端部のうち、周方向一方Dr1側の端部を「周方向一方端部」と呼び、周方向他方Dr2側の端部を「周方向他方端部」と呼ぶ。
【0015】
また、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」は、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態を含む。つまり、「平行」及び「垂直」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0016】
なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。
【0017】
<1.自転車100>
図1は、自転車100の概略図である。
図2は、自転車100のクランク1031及びチェーンホイール1034間の接続構造を示す斜視分解図である。
【0018】
図1に示すように、自転車100は、車体101と、2個の車輪102と、動力伝達機構103と、駆動装置104と、電源部105と、を有する。
【0019】
車体101は、ハンドル1011と、サドル1012と、を含む。2個の車輪102、動力伝達機構103、駆動装置104および電源部105は、車体101に取り付けられる。2個の車輪102は、前輪102f及び後輪102rを有する。前輪102fは、車体101の前部に取り付けられ、後輪102rは、車体101の後部に取り付けられる。後輪102rには、動力伝達機構103が接続される。
【0020】
動力伝達機構103は、径方向に延びるクランク1031と、中心軸Acに沿って軸方向Daに延びるクランクシャフト1032と、ペダル1033と、中心軸Acを中心とする環状のチェーンホイール1034と、チェーンホイール1034に取り付けられる連結部材1と、を有する。クランク1031の径方向外端部には、ペダル1033が軸方向Daに延びる軸Arを中心として回転可能に接続される。
【0021】
連結部材1は、いわゆるスパイダーアームであり、後述するアーム部3が周方向Drに並んで放射状に延びる。連結部材1は、中心軸Acを中心として周方向Drに回転可能なチェーンホイール1034にクランク1031を連結するための部材である。本実施形態では、自転車100がその前方に移動する際、チェーンホイール1034は、周方向一方Dr1に回転する。
図2に示すように、クランクシャフト1032の軸方向一方端部は、連結部材1に固定される。クランクシャフト1032の軸方向他方端部は、中心軸Acを中心として回転可能にクランク1031の径方向内端部に取り付けられる。つまり、クランク1031は、クランクシャフト1032及び連結部材1を介してチェーンホイール1034に連結される。
【0022】
また、動力伝達機構103は、従動ギヤ(図示省略)と、チェーン(図示省略)と、をさらに有する。従動ギヤは、後輪102rに取り付けられる。チェーンは、チェーンホイール1034のトルクを従動ギヤに伝達する。
【0023】
駆動装置104は、動力伝達機構103に取り付けられる。駆動装置104は、動力伝達機構103にトルクを伝達する出力部(図示省略)を有する。この出力部には、クランクシャフト1032の軸方向一方端部が接続される。駆動装置104から出力されるトルクは、クランクシャフト1032及び連結部材1を介してチェーンホイール1034に伝達される。
【0024】
電源部105は、車体101に取り付けられる。電源部105は、充放電可能なバッテリであり、駆動装置104に電力を供給する。
【0025】
自転車100では、サドル1012に着座した使用者がペダル1033を踏むことによって、クランク1031が中心軸Acを中心として回転する。この際に発生する中心軸Ac回りのトルクは、クランクシャフト1032及び連結部材1を介してチェーンホイール1034に伝達される。チェーンホイール1034は、伝達されたトルクによって周方向Drに回転する。トルクは、チェーンを介してチェーンホイール1034から後輪102rに伝達され、後輪102rを回転させる。
【0026】
さらに、チェーンホイール1034には、駆動装置104で発生したトルクも伝達される。駆動装置104は、クランクシャフト1032にかかるトルクを検知するセンサ(図示省略)を有し、必要に応じて、出力部からチェーンホイール1034にトルクを付与する。出力部から伝達されるトルクは、自転車100の走行のためのトルクに付加される。つまり、駆動装置104は、必要に応じて、自転車100の走行に必要なトルクを補助する。
【0027】
本実施形態では、自転車100は、使用者のペダル1033を踏む力を補助する電動アシスト自転車である。但し、本実施形態の例示に限定されず、自転車100は、電動アシスト自転車でなくてもよい。つまり、自転車100において、駆動装置104及び電源部105は、省略されてもよい。
【0028】
上述のように、自転車100は、連結部材1と、チェーンホイール1034と、クランク1031と、を備える。チェーンホイール1034は、中心軸Acを中心として周方向Drに回転可能である。クランク1031は、連結部材1によってチェーンホイール1034に連結される。
【0029】
また、自転車100は、駆動装置104と、電源部105と、をさらに有する。駆動装置104は、チェーンホイール1034にトルクを与える。電源部105は、駆動装置104に電力を供給する。なお、自転車100は、本発明の「電動アシスト自転車」の一例でもある。
【0030】
本実施形態の自転車100によれば、後述する第1凹部4が連結部材1に配置されることにより、自転車100(本実施形態では電動アシスト自転車)のクランク1031とチェーンホイール1034とを連結する連結部材1を軽量化できる。
【0031】
<2.連結部材1>
次に、
図3から
図6Bを参照して、連結部材1の構成を説明する。
図3は、連結部材1の軸方向一方端部の構成例を示す斜視図である。
図4は、連結部材1の軸方向他方端部の構成例を示す斜視図である。
図5Aは、実施形態に係るアーム部3の平面図である。
図5Bは、第1変形例に係るアーム部3の平面図である。
図6Aは、実施形態に係るアーム部3の側面図である。
図6Bは、第2変形例に係るアーム部3の側面図である。なお、
図3は、軸方向一方Da1側から連結部材1を見ている。
図4は、軸方向他方Da2側から連結部材1を見ている。
図5A及び
図5Bは、軸方向他方Da2側からアーム部3を見ている。
図6A及び
図6Bは、第2方向D2からアーム部3を見ている。
【0032】
連結部材1は、胴体部2と、複数のアーム部3と、第1凹部4と、を備える。また、連結部材1は、筒部5をさらに備え、好ましくはリブ6をさらに備える。筒部5及びリブ6は、後に説明する。
【0033】
胴体部2は、軸方向Daに延びる中心軸Acを囲む環状であり、径方向に広がる。
【0034】
アーム部3は、複数であって、周方向Drに並ぶ。複数のアーム部3は、胴体部2から放射状に延びる。アーム部3は、軸方向Daから見て胴体部2から少なくとも径方向外方に延びる。たとえば、本実施形態では、軸方向Daから見て、アーム部3は、径方向外方且つ周方向一方Dr1に延びる。但し、この例示に限定されず、アーム部3は、軸方向Daから見て径方向外方に延びてもよいし、軸方向Daから見て径方向外方且つ周方向他方Dr2に延びてもよい。
【0035】
軸方向Daから見て、アーム部3は、対称軸Asに対して非線対称な形状である(
図3及び後述の
図5Aなど参照)。なお、対称軸Asは、第2方向D2におけるアーム部3の中央を通って、第1方向D1に延びる。第1方向D1はアーム部3が延びる方向であり、第2方向D2は第1方向D1及び軸方向Daと垂直な方向である。たとえば、アーム部3は、軸方向Daから見て、径方向外方に向かうにつれて周方向一方Dr1に傾く。そのため、アーム部3の周方向一方Dr1側の形状は、アーム部3の周方向他方Dr2側の形状とは異なる。また、アーム部3の周方向一方端部の形状は、アーム部3の周方向他方端部の形状とは異なる。
【0036】
第1凹部4は、胴体部2及びアーム部3のうちの少なくとも一方の軸方向端面に配置されて、軸方向Daに凹む。たとえば、第1凹部4の少なくとも一部は、胴体部2の軸方向端面に配置される。また、第1凹部4の少なくとも一部は、アーム部3の軸方向端面に配置される。つまり、第1凹部4は、胴体部2の軸方向端面及びアーム部3の軸方向端面のうちの一方のみに配置されてもよいし、胴体部2の軸方向端面及びアーム部3の軸方向端面の両方に配置されてもよい。本実施形態では、第1凹部4は、連結部材1の軸方向一方端面のみにおいて、胴体部2からアーム部3に渡って配置される(
図3など参照)。但し、第1凹部4の配置は、本実施形態の例示に限定されない。第1凹部4は、連結部材1の軸方向他方端面のみに配置されてもよいし、連結部材1の軸方向一方端面及び軸方向他方端面の両方に配置されてもよい。また、第1凹部4は、胴体部2及びアーム部3のうちの一方のみに配置されてもよい。
【0037】
軸方向Daに凹む第1凹部4が胴体部2及びアーム部3のうちの少なくとも一方の軸方向端面に配置されることにより、連結部材1を肉抜きできる。さらに、アーム部3を非線対称な形状とすることにより、たとえば、アーム部3の軸方向Daから見た外縁部のうちのチェーンホイール1034を回転させた場合に応力の作用が少ない部分を除去することができる。よって、チェーンホイール1034にクランク1031を連結するための連結部材1の剛性を保ちつつ連結部材1を軽量化できる。
【0038】
本実施形態では、軸方向Daから見て、アーム部3の周方向一方端部の長さは、アーム部3の周方向他方端部の長さよりも短い。詳細には、アーム部3の周方向一方端部の長さは、軸方向Daから見たアーム部3の周方向一方端部の外縁に沿う長さである。アーム部3の周方向他方端部の長さは、軸方向Daから見たアーム部3の周方向他方端部の外縁に沿う長さである。こうすれば、アーム部3の周方向他方端部をより長くできる。アーム部3の周方向他方端部をより長くすることにより、連結部材1に力が加わった際のアーム部3の周方向他方端部に作用する応力を分散することができる。従って、アーム部3の強度を向上できる。
【0039】
好ましくは、軸方向Daから見て、アーム部3の周方向一方端部と第1凹部4の周方向一方端部との第1間隔S1は、アーム部3の周方向他方端部と第1凹部4の周方向他方端部との第2間隔S2よりも広い(
図3参照)。こうすれば、第1間隔S1をより広くできるので、アーム部3の周方向一方端部の剛性を向上できる。但し、この例示は、少なくとも1つのアーム部3において、軸方向Daから見てS1≦S2である構成を排除しない。
【0040】
さらに好ましくは、軸方向Daから見て、第1間隔S1は、径方向内方に向かうにつれて広くなる。チェーンホイール1034が回転する際にアーム部3の周方向一方端部に作用する力は、径方向内方に向かうにつれて大きくなる。従って、第1間隔S1を径方向内方に向かうにつれて広くすることにより、作用する応力の増大を抑制できる。従って、アーム部3の周方向一方端部の剛性を向上できる。但し、この例示は、少なくとも1つのアーム部3において、軸方向Daから見て第1間隔S1が径方向内方に向かうにつれて狭くなる又は一定である構成を排除しない。
【0041】
また、本実施形態では
図6Aに示すように、アーム部3の軸方向Daにおける第1幅d1は、胴体部2の軸方向Daにおける第2幅d2よりも広い。d1>d2とすることにより、アーム部3の軸方向Daにおける厚さ(つまり第1幅d1)をより厚くすることができる。従って、アーム部3の強度を向上できる。
【0042】
但し、本実施形態の例示に限定されず、少なくとも1つのアーム部3において、
図6Bに示すように、胴体部2の軸方向Daにおける第2幅d2は、アーム部3の軸方向Daにおける第1幅d1よりも広くてもよい。d1<d2とすることにより、胴体部2の軸方向Daにおける厚さ(つまり第2幅d2)をより厚くすることができる。従って、胴体部2の強度を向上できる。
【0043】
なお、
図6A及び
図6Bの例示は、少なくとも1つのアーム部3において、d1=d2である構成を排除しない。
【0044】
<2-1.アーム部3>
次に、アーム部3は、アーム基部31と、固定部32と、を有する。
【0045】
アーム基部31は、軸方向Daから見て、第1方向D1に延びる。詳細には、アーム基部31は、軸方向Daから見て、胴体部2から少なくとも径方向外方に延びる。たとえば、本実施形態では、軸方向Daから見て、アーム基部31は、径方向外方且つ周方向一方Dr1に延びる。但し、この例示に限定されず、アーム基部31は、軸方向Daから見て径方向外方に延びてもよいし、軸方向Daから見て径方向外方且つ周方向他方Dr2に延びてもよい。
【0046】
固定部32は、アーム基部31の径方向外端部から第1方向D1に延びて、チェーンホイール1034に固定可能である(
図2参照)。本実施形態では、固定部32は、板状であり、ボルト(図示省略)を用いてチェーンホイール1034にねじ止めされる。詳細には、固定部32は、孔部32aを有する。孔部32aは、軸方向Daに固定部32を貫通する。上述のボルトは、孔部32aに挿通され、チェーンホイール1034のねじ穴1034aにねじ込まれる。但し、チェーンホイール1034に対する固定部32の固定手段は、この例示に限定されない。たとえば、上述の固定手段は、ろう材を用いたろう付け、溶接などであってもよい。
【0047】
好ましくは、軸方向Daから見て、孔部32aの径方向外端部と固定部32の径方向外端部との第3間隔S3は、孔部32aの径方向内端部と第1凹部4の径方向外端部との第4間隔S4よりも狭い(
図3参照)。S3<S4とすることにより、第3間隔S3をより短くして、固定部32の径方向外端部をより径方向内方に配置できる。従って、固定部32の径方向サイズをより小さくできるので、連結部材1の径方向サイズを小さくして、連結部材1をより軽量化できる。但し、この例示は、S3≧S4である構成を排除しない。
【0048】
また、好ましくは、アーム部3は、段差部33をさらに有する。段差部33は、アーム基部31と固定部32との間に配置される(
図4など参照)。段差部33は、接続面33aを有する。接続面33aは、アーム基部31の軸方向一方端面の径方向外端部と、固定部32の軸方向一方端面の径方向内端部とを接続する。なお、アーム基部31の軸方向一方端面の径方向外端部は、固定部32の軸方向一方端面の径方向内端部よりも軸方向一方Da1に配置される。
【0049】
たとえば本実施形態では、接続面33aは、軸方向Daに延びる。但し、本実施形態の例示に限定されず、接続面33aは、軸方向Daと交差する方向に延びてもよい。つまり、接続面33aは、軸方向Da、又は軸方向Daと交差する方向に延びていればよい。
【0050】
段差部33の配置により、連結部材1をチェーンホイール1034に固定する際、段差部33により、チェーンホイール1034の径方向における取付位置を決定できる。従って、チェーンホイール1034に対して連結部材1が取り付け易くなる。
【0051】
好ましくは、軸方向Daから見て、接続面33aの少なくとも周方向他方Dr2側の領域は、周方向他方Dr2に向かうにつれて径方向内方に延びる。こうすれば、段差部33の少なくとも周方向他方Dr2側の部分において、面取り部33bを形成できる。言い換えると、面取り部33bは、アーム基部31の径方向外端部における少なくとも周方向他方Dr2側の部分に形成される。詳細には、接続面33aとアーム基部31の周方向他方端面との間の角において、両者間に曲面を形成するいわゆるR面取り(Round chamfering)を施すことができる。従って、連結部材1を接続したチェーンホイール1034が回転する際、段差部33の周方向他方端部(言い換えると、アーム基部31の径方向外端部における周方向他方端部)に作用する応力が集中することを防止できる。つまり、上述の応力を面取り部33bで分散できる。従って、アーム部3の強度を向上でき、特にアーム基部31及び固定部32間の強度を向上できる。但し、この例示は、少なくとも1つのアーム部3において、面取り部33bが形成されない構成を排除しない。つまり、面取り部33bは省略されてもよい。たとえば、少なくとも1つのアーム部3において、軸方向Daから見て、接続面33aの少なくとも周方向他方Dr2側の領域は、周方向他方Dr2に向かうにつれて径方向内方に延びなくてもよい。
【0052】
なお、本実施形態の例示は、少なくとも1つのアーム部3が段差部33を有さない構成を排除しない。つまり、少なくとも1つのアーム部3において、段差部33及び接続面33aは、省略されてもよい。たとえば、アーム基部31の軸方向一方端面の径方向外端部は、直接、固定部32の軸方向一方端面の径方向内端部に接続されてもよい。
【0053】
次に、本実施形態では、アーム部3は、第2凹部34をさらに有する。第2凹部34は、アーム部3の周方向一方端部に配置されて、周方向他方Dr2に凹む。つまり、第2凹部34は、アーム部3においてチェーンホイール1034及び連結部材1の回転方向側の周方向端部に配置される。応力の作用が少ないアーム部3の周方向一方端部に第2凹部34を設けることにより、アーム部3の周方向一方端部の強度低下を抑制しつつ、アーム部3を肉抜きして、連結部材1をさらに軽量化できる。
【0054】
好ましくは、周方向に隣り合う2つのアーム部3において、周方向他方Dr2側のアーム部3における第2凹部34の径方向内端部は、胴体部2の径方向外端部、及び周方向一方Dr1側のアーム部3の周方向他方端部のうちの一方となだらかに繋がる(
図3及び
図4など参照)。たとえば、第2凹部34の径方向内端部が胴体部2の径方向外端部と繋がる部分において、アーム部3の周方向一方端部の軸方向Daから見た接線方向は、胴体部2の径方向外端部の軸方向Daから見た接線方向と平行である。或いは、周方向他方Dr2側のアーム部3の周方向一方端部に配置される第2凹部34の径方向内端部が周方向一方Dr1側のアーム部3の周方向他方端部と繋がる部分において、周方向他方Dr2側のアーム部3の周方向一方端部の軸方向Daから見た接線方向は、周方向一方Dr1側のアーム部3の周方向他方端部の軸方向Daから見た接線方向と平行である。こうすれば、第2凹部34の径方向内端部と、胴体部2の径方向外端部、及び周方向一方Dr1側のアーム部3の周方向他方端部のうちの一方との接続部分に角が形成されない。そのため、この接続部分に応力が集中することを防止できる。従って、この接続部分の強度を向上できる。但し、この例示は、上述の接続部分において両者がなだらかには繋がらない構成を排除しない。
【0055】
また、本実施形態では
図3に示すように、アーム部3の周方向一方端部と周方向他方端部との第5間隔S5は、第1凹部4の径方向外端部と同じ径方向位置において最も広い。こうすれば、第1凹部4の径方向外端部よりも径方向内方の径方向位置において、たとえば第2凹部34の配置などによりアーム部3を肉抜きしても、固定部32の径方向内方側の強度低下を抑制できる。連結部材1は固定部32においてチェーンホイール1034と連結されるので、固定部32の強度を維持するにより、連結部材1及びチェーンホイール1034の連結強度も維持できる。従って、チェーンホイール1034に連結部材1を強固に連結しつつ、連結部材1を軽量化できる。
【0056】
また、本実施形態では
図3に示すように、第1凹部4の径方向外端部と同じ径方向位置において、アーム部3の周方向一方端部は最も周方向一方Dr1に配置される。こうすれば、第1凹部4の径方向外端部よりも径方向内方の径方向位置において、たとえば第2凹部34の配置などによりアーム部3を肉抜きしても、固定部32の径方向内方側の強度低下を抑制できる。連結部材1は固定部32においてチェーンホイール1034と連結されるので、固定部32の強度を維持するにより、連結部材1及びチェーンホイール1034の連結強度も維持できる。従って、チェーンホイール1034に連結部材1を強固に連結しつつ、連結部材1を軽量化できる。
【0057】
なお、本実施形態の例示に限定されず、少なくとも1つのアーム部3が第2凹部34を有さない構成であってもよい。つまり、少なくとも1つのアーム部3において、第2凹部34は省略されてよい。また、本実施形態の例示は、少なくとも1つのアーム部3において、第5間隔S5が第1凹部4の径方向外端部と同じ径方向位置において最も広くない構成を排除しない。さらに、本実施形態の例示は、少なくとも1つのアーム部3において、第1凹部4の径方向外端部と同じ径方向位置においてアーム部3の周方向一方端部が最も周方向一方Dr1に配置されない構成も排除しない。たとえば
図5Bに示すように、少なくとも1つのアーム部3において、アーム基部31の第2方向D2における幅は、径方向内方に向かうにつれて広くなってもよい。こうすれば、アーム部3の強度を向上できる。
【0058】
<2-2.筒部5>
筒部5は、胴体部2の径方向内端部から軸方向Daに延びる。前述の如く、連結部材1は、筒部5を備える。たとえば本実施形態では、筒部5は、胴体部2の径方向内端部から軸方向一方Da1及び軸方向他方Da2の両方向に延びる。但し、本実施形態の例示に限定されず、筒部5は、胴体部2の径方向内端部から軸方向一方Da1のみに延びてもよい。或いは、筒部5は、胴体部2の径方向内端部から軸方向他方Da2のみに延びてもよい。筒部5により、胴体部2の径方向内端部の剛性を向上できる。また、胴体部2の径方向内端部には、クランクシャフト1032が挿通されて固定される。たとえば、クランクシャフト1032は、筒部5にスプライン嵌合される。胴体部2の径方向内端部に筒部5を配置することにより、筒部5の内側面とクランクシャフト1032との接触面積を増大できる。従って、連結部材1に対するクランクシャフト1032の固定精度を向上できる。
【0059】
好ましくは、軸方向Daから見て、第1凹部4は、筒部5の径方向外側面と接する(
図3参照)。こうすれば、第1凹部4をより広くできるため、連結部材1の肉抜き部分をより多くできる。従って、連結部材1をさらに軽量化できる。但し、本実施形態の例示は、軸方向Daから見て、第1凹部4が筒部5の径方向外側面から離れて配置される構成を排除しない。
【0060】
<2-3.リブ6>
リブ6は、軸方向Daから見て、筒部5と、胴体部2の外縁部及びアーム部3の外縁部のうちの一方とを繋ぐ。本実施形態では前述の如く、連結部材1は、リブをさらに備える。軸方向Daから見て、リブ6は、第1凹部4と周方向Drに接する。リブ6の配置により、チェーンホイール1034が回転する際、胴体部2、特に胴体部2のうちの第1凹部4の一部が配置された部分は、応力が作用しても、リブ6の補強効果により変形し難くなる。従って、胴体部2の剛性を向上できる。なお、本実施形態の例示は、連結部材1がリブ6を有さない構成を排除しない。つまり、リブ6は、省略されてもよい。
【0061】
本実施形態では、リブ6の数は、アーム部3の数と同じである。但し、本実施形態の例示に限定されず、リブ6の数は、単数、又はアーム部3の数とは異なる複数であってもよい。
【0062】
<3.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、たとえば、クランクのトルクをチェーンホイールに伝達する車両に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
100・・・自転車、101・・・車体、1011・・・ハンドル、1012・・・サドル、102・・・車輪、102f・・・前輪、102r・・・後輪、103・・・動力伝達機構、1031・・・クランク、1032・・・クランクシャフト、1033・・・ペダル、1034・・・チェーンホイール、104・・・駆動装置、105・・・電源部、1・・・連結部材、2・・・胴体部、3・・・アーム部、31・・・アーム基部、32・・・固定部、32a・・・孔部、33・・・段差部、33a・・・接続面、33b・・・面取り部、34・・・第2凹部、4・・・第1凹部、5・・・筒部、6・・・リブ、Ac・・・中心軸、D1・・・第1方向、D2・・・第2方向、As・・・対称軸、Da・・・軸方向、Da1・・・軸方向一方、Da2・・・軸方向他方、Dr・・・周方向、Dr1・・・周方向一方、Dr2・・・周方向他方