(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170322
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】リクライニング可能な車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A61G5/12 706
A61G5/12 705
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076384
(22)【出願日】2021-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 新商品発売のお知らせ
(71)【出願人】
【識別番号】394006129
【氏名又は名称】株式会社いうら
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脚の位置ずれを軽減可能なレッグサポートを有したリクライニング可能な車椅子を提供する。
【解決手段】座部5前端下方に配設したレッグサポート7を、第一プレート71a及び第二プレート71bの一端をそれぞれ回動自在に軸着し、第一プレート71aの他端に第三プレート71cの一端を回動自在に軸着し、第二プレート71bと第三プレートをそれぞれの略中間付近の交点で回動自在に軸着し、第二プレート71bの他端に第四プレート71dを回動自在に軸着するように構成したリンク部71と支持パイプを支持するレッグ支点プレートに第三プレート71c及び第四プレート71dの他端を回動自在に軸着するレッグ支持部72で構成することで、リンク部71を上方回動するとレッグ支持部72が連動してレッグ支持部72の見かけ上の回動中心が座部5の前方上方に移動することで着座した利用者の膝関節の回動中心と略同等となるように構成した。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニング可能な車椅子において、座部の前端下方にレッグサポートの一端を回動自在に軸着し、該レッグサポートの他端にフットサポートを回動自在に軸着し、該レッグサポートの後方、且つ、一端近傍と該フットサポートをリンクアームで連結して四節リンクを形成するとともに、該レッグサポートはリンク部とレッグ支持部で構成され、該リンク部は、左右方向に一対の第一プレート及び第二プレートの一端をそれぞれ回動自在に軸着し、該第一プレートの他端に第三プレートの一端を回動自在に軸着しつつ、該第二プレートと該第三プレートをそれぞれの略中間付近の交点で回動自在に軸着し、該第二プレートの他端に第四プレートを回動自在に軸着し、該第二プレートに連結パイプを介設固着しつつ、該連結パイプの中央近傍に垂下するように第一支点プレートを固着して構成し、該レッグ支持部は、該リンク部の前方に配設した支持パイプをレッグ支点プレートで固着しつつ、該レッグ支点プレートに該第三プレート及び該第四プレートの他端を回動自在に軸着し、該リンク部の該連結パイプの略中間位置に垂下するように第一支点プレートを固着して構成し、該リンク部を上方回動すると該第一プレートに該第三プレートが下方に引き込まれて該交点を回動中心として該支持パイプが前方回動するとともに、該第四プレートに該レッグ支点プレートが下方に引き込まれるように該レッグサポートが作動されることで、該レッグ支持部の見かけ上の回動中心が該座部の前方上方に移動したことにより該座部に着座した利用者の膝関節の回動中心と略同等となるように構成したことを特徴とするリクライニング可能な車椅子。
【請求項2】
前記リンクアームを、前記第一支点プレートの一端に回動自在に軸着されたリンクソトパイプの一端を回動自在に軸着しつつ、前記フットサポートの後端に固着された連動プレートにリンクナカプレートを回動自在に軸着し、且つ、該リンクソトパイプの他端に挿通して構成し、スライド穴と該スライド穴の下方に連続して穿設した複数の係脱穴により鋸歯状の穴部を形成した角度調節プレートを前記レッグサポートの前記リンク部の中間部に回動自在に取り付けるとともに前記スライド穴内には車体フレームに軸着されたピン部材を挿通し、該レッグサポートの上下回動により該ピン部材が相対的にスライド穴及び係脱穴内を移動するように構成し、さらに、該スライド穴の前方側の一部を塞ぐストッパープレートを設けることによって該ピン部材の相対的な移動範囲を制限し、該レッグサポートが前記座部の前端部から前方斜め下向きとなり該レッグサポートの前記前記レッグ支持部に回動自在に軸着したフットサポートに支持される該フットプレートが該レッグサポートの下端部前方に位置する座位姿勢から該座部と該レッグサポートと該フットサポートと該フットプレートが略同一平面となるリクライニング姿勢まで調節可能にするとともに、該ストッパープレートを解除することにより該ピン部材が該スライド穴の前方側まで相対的に転動可能となり該座位姿勢から該レッグサポートを後方回動するとともに、該フットサポートを上方回動させることで蹴り込みスペースを形成する収納姿勢に姿勢変更可能な状態にすることができるように構成した収納機構を具備したことを特徴とする請求項1に記載のリクライニング可能な車椅子。
【請求項3】
前記座部の後方に配設されたバックサポートの下端部に外パイプの一端を軸着し、該外パイプの他端には内パイプを挿通しつつ該内パイプの他端を前記角度調節プレートに軸着し、該バックサポートのリクライニングに連動して前記レッグサポートの回動操作可能に構成し、該外パイプの一端に該外パイプの軸心に向かって進退自在となる規制ピンを取着したことで、該外パイプ内に該規制ピンを突出させた状態ではリクライングに連動して該レッグサポートを前記座位姿勢から前記リクライニング姿勢まで回動操作可能とし、該規制ピンを該外パイプ内から退出させた状態ではリクライニング操作に関わらず該レッグサポートの回動操作可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載のリクライニング可能な車椅子。
【請求項4】
前記第二プレートを略W字状に形成することで、該略W字状の中央頂点部に前記レッグサポートを前記リクライニング姿勢から前記座位姿勢に適宜姿勢変更するためのレバー部材を軸着し、該頂点部に連設される前記レッグ支持部側の谷部に前記収納機構を作動させるための収納レバーを配設するとともに、前記座部側の谷部には前記収納姿勢に姿勢変更した時に前記レッグ支持部の前記支持パイプの一端が収納されるように構成したことで、該収納姿勢に姿勢変更した時に前記リンク部に該レッグ支持部を該座部側により近接可能にして蹴り込みスペースをより広く形成可能にしたことを特徴とする請求項2あるいは請求項3に記載のリクライニング可能な車椅子。
【請求項5】
前記支持パイプを平面視において略コ字状に屈曲形成し、且つ、該支持パイプの両端が前記フットサポート側に向くように前記レッグサポートの前記レッグ支持部を構成しつつ、該フットサポートの後端に回動自在に軸着された調節プレートを該支持パイプに摺動可能に挿通して任意の位置で止着するように構成したことで、任意の長さに該フットサポート調整可能にしたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のリクライニング可能な車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体の不自由な人が使用するリクライニング可能な車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、座位姿勢から座部に対してバックサポートが傾倒するとともにレッグサポートが起立するリクライニング機能を備えた車椅子が提案されている。
リクライニング可能な車椅子は、座位姿勢を維持するのが困難な利用者が仰臥位姿勢で使用できる点、背中や臀部への体圧集中を分散することができる点、移乗介助の負担が軽減できる点など多くのメリットが挙げられる。
しかしながら、種々提案されてきたリクライニング可能な車椅子の問題点として座位姿勢からリクライニング姿勢に姿勢変更する時に利用者の背中や腰の位置ずれが発生して、利用者が不快感(圧迫感)を感じることが挙げられる。また、位置ずれによって生じた利用者の姿勢のずれを介助者が抱きかかえたり支えたりしながら直す必要があるため、介助者にとっても負担がかかるものとなっている。
【0003】
この問題を解消すべく、リクライニングしても背中のずれが生じないように構成された車椅子が種々提案されており、本出願人も特許文献1に記載のリクライニング可能な車椅子を提案している。
この車椅子はフルリクライニングができるようになっており、バックサポートと座部とレッグサポートが連動することで利用者が座位姿勢から仰臥位姿勢まで適宜姿勢変更が可能である。
また、バックサポートと座部が連動することで座部の先端が起立するチルト機構も有しており、利用者が座部から前すべりすることがないように構成している。
さらに、車椅子のレッグサポートはバックサポートのリクライニングに合わせて連動可能な状態、連動不可能な状態に切り替え可能となっており、利用者が望む最適な姿勢で使用することができる。
また、レッグサポートを折り畳むことで、利用者が起立する際に十分な蹴り込みスペースを確保することができるため、移乗介助をより効果的に行えるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1のリクライニング可能な車椅子はバックサポートを姿勢変更することで背中のずれは解消されているが、レッグサポートの回動中心と利用者の膝の回動中心が離れているため利用者の着座姿勢がずれることで不快感(圧迫感)を感じる問題が懸念される。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本願発明が解決しようとする課題は、脚の位置ずれを軽減可能なレッグサポートを有したリクライニング可能な車椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリクライニング可能な車椅子は、リクライニング可能な車椅子において、座部の前端下方にレッグサポートの一端を回動自在に軸着し、該レッグサポートの他端にフットサポートを回動自在に軸着し、該レッグサポートの後方、且つ、一端近傍と該フットサポートをリンクアームで連結して四節リンクを形成するとともに、該レッグサポートはリンク部とレッグ支持部で構成され、該リンク部は、左右方向に一対の第一プレート及び第二プレートの一端をそれぞれ回動自在に軸着し、該第一プレートの他端に第三プレートの一端を回動自在に軸着しつつ、該第二プレートと該第三プレートをそれぞれの略中間付近の交点で回動自在に軸着し、該第二プレートの他端に第四プレートを回動自在に軸着し、該第二プレートに連結パイプを介設固着しつつ、該連結パイプの中央近傍に垂下するように第一支点プレートを固着して構成し、該レッグ支持部は、該リンク部の前方に配設した支持パイプをレッグ支点プレートで固着しつつ、該レッグ支点プレートに該第三プレート及び該第四プレートの他端を回動自在に軸着し、該リンク部の該連結パイプの略中間位置に垂下するように第一支点プレートを固着して構成し、該リンク部を上方回動すると該第一プレートに該第三プレートが下方に引き込まれて該交点を回動中心として該支持パイプが前方回動するとともに、該第四プレートに該レッグ支点プレートが下方に引き込まれるように該レッグサポートが作動されることで、該レッグ支持部の見かけ上の回動中心が該座部の前方上方に移動したことにより該座部に着座した利用者の膝関節の回動中心と略同等となるように構成したことを特徴としている。
そして、前記リンクアームを、前記第一支点プレートの一端に回動自在に軸着されたリンクソトパイプの一端を回動自在に軸着しつつ、前記フットサポートの後端に固着された連動プレートにリンクナカプレートを回動自在に軸着し、且つ、該リンクソトパイプの他端に挿通して構成し、スライド穴と該スライド穴の下方に連続して穿設した複数の係脱穴により鋸歯状の穴部を形成した角度調節プレートを前記レッグサポートの前記リンク部の中間部に回動自在に取り付けるとともに前記スライド穴内には車体フレームに軸着されたピン部材を挿通し、該レッグサポートの上下回動により該ピン部材が相対的にスライド穴及び係脱穴内を移動するように構成し、さらに、該スライド穴の前方側の一部を塞ぐストッパープレートを設けることによって該ピン部材の相対的な移動範囲を制限し、該レッグサポートが前記座部の前端部から前方斜め下向きとなり該レッグサポートの前記前記レッグ支持部に回動自在に軸着したフットサポートに支持される該フットプレートが該レッグサポートの下端部前方に位置する座位姿勢から該座部と該レッグサポートと該フットサポートと該フットプレートが略同一平面となるリクライニング姿勢まで調節可能にするとともに、該ストッパープレートを解除することにより該ピン部材が該スライド穴の前方側まで相対的に転動可能となり該座位姿勢から該レッグサポートを後方回動するとともに、該フットサポートを上方回動させることで蹴り込みスペースを形成する収納姿勢に姿勢変更可能な状態にすることができるように構成した収納機構を具備したことを特徴としている。
そして、前記座部の後方に配設されたバックサポートの下端部に外パイプの一端を軸着し、該外パイプの他端には内パイプを挿通しつつ該内パイプの他端を前記角度調節プレートに軸着し、該バックサポートのリクライニングに連動して前記レッグサポートの回動操作可能に構成し、該外パイプの一端に該外パイプの軸心に向かって進退自在となる規制ピンを取着したことで、該外パイプ内に該規制ピンを突出させた状態ではリクライングに連動して該レッグサポートを前記座位姿勢から前記リクライニング姿勢まで回動操作可能とし、該規制ピンを該外パイプ内から退出させた状態ではリクライニング操作に関わらず該レッグサポートの回動操作可能に構成したことを特徴としている。
また、前記第二プレートを略W字状に形成することで、該略W字状の中央頂点部に前記レッグサポートを前記リクライニング姿勢から前記座位姿勢に適宜姿勢変更するためのレバー部材を軸着し、該頂点部に連設される前記レッグ支持部側の谷部に前記収納機構を作動させるための収納レバーを配設するとともに、前記座部側の谷部には前記収納姿勢に姿勢変更した時に前記レッグ支持部の前記支持パイプの一端が収納されるように構成したことで、該収納姿勢に姿勢変更した時に前記リンク部に該レッグ支持部を該座部側により近接可能にして蹴り込みスペースをより広く形成可能にしたことを特徴としている。
さらに、前記支持パイプを平面視において略コ字状に屈曲形成し、且つ、該支持パイプの両端が前記フットサポート側に向くように前記レッグサポートの前記レッグ支持部を構成しつつ、該フットサポートの後端に回動自在に軸着された調節プレートを該支持パイプに摺動可能に挿通して任意の位置で止着するように構成したことで、任意の長さに該フットサポート調整可能にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリクライニング可能な車椅子は、座部の前端に配設したレッグサポートの一端を回動自在に軸着し、レッグサポートの他端にフットサポートを回動自在に軸着するとともに、リンクアームでレッグサポートとフットサポートを連結することで四節リンクを構成しつつ、レッグサポートをリンク部とレッグ支持部の分割構成にしたことで、レッグサポートを上方回動するとリンク部によってレッグ支持部が作動されてリンク部の上方、且つ、前方に延伸するように構成している。このように構成したことで、利用者の下肢を支持するレッグ支持部が回動する見かけ上の回動中心を四節リンクの静止節の座部先端側の一端から座部の上方前方に移動することができる。つまり、利用者の膝の回動中心とレッグサポートの回動中心を略同一とすることができるため、レッグサポートの姿勢変更時に利用者の臀部と下肢のずれを軽減させることができるため、乗り心地の向上や褥瘡防止になる。また、介助者にとっても座り直し介助をする労力を軽減することができる。
そして、リンク部の中間部にスライド穴とこのスライド穴の下方に連続して穿設した複数の係脱穴により鋸歯状の穴部を備えた角度調節プレートを回動自在な状態で取り付けるとともに、角度調節プレートの穴部には車体フレームに軸着されたピン部材を挿通し、このピン部材が穴部の係脱穴に係合することでレッグサポートの角度が保持されるように構成している。加えて、角度調節プレートのスライド穴の前方側の一部を塞ぐようにストッパープレートを取り付けることでピン部材の相対的な移動範囲を制限し、レッグサポートが座部の前端から前方斜め下向きとなりフットサポートに支持されるフットプレートがレッグサポートの下端部前方に位置する座位姿勢から、座部とレッグサポートとフットサポートとフットプレートが略同一平面となるリクライニング姿勢まで調節可能になっている。さらに、ストッパープレートの作用を解除することでピン部材がスライド穴の前方まで相対的に転動可能となり座位姿勢からレッグサポートを後方回動させるとともにフットサポートを上方回動させることで蹴り込みスペースを形成する収納姿勢にすることができるように構成している。このように構成したことで、座位姿勢からリクライニング姿勢まで姿勢変更可能、且つ、移乗介助などをし易いように蹴り込みスペースを確保できる収納姿勢に姿勢変更可能になり、状況に合わせて適宜車椅子の姿勢を設定することができる。
そして、バックサポートの下端部に外パイプを軸着し、外パイプの他端には内パイプの一端を挿通しつつ内パイプの他端を角度調節プレートに軸着することで、リクライニング操作に連動してレッグサポートの回動操作も可能に構成している。加えて、外パイプの一端に外パイプの軸心に向かって進退自在に規制ピンを取着したことで、規制ピンを外パイプから退出させた状態ではリクライニング操作に関わらず、レッグサポートを単独で操作することができるため、利用者の身体状況に応じてより最適な姿勢に姿勢変更可能となっている。
また、リンク部を構成する第二プレートを略W字状に形成することで、リクライニング機構及び収納機構を作動させるための各レバー部材をはじめとする各構成部材をW字状の頂点部と谷部に交互に配設することで構成をコンパクトにすることができる。つまり、レッグサポートを伸縮可能に構成しても、一般的な車椅子と同等の座位姿勢を取ることができ、且つ、収納姿勢に姿勢変更する時にレッグサポートのリンク部とレッグ支持部との重なりを最小限に抑えることができるため、先行技術1(特開2009-261472)に記載のリクライニング可能な車椅子と略同等の取り回しをすることができる。
さらに、レッグ支持部の支持パイプ内に一端をフットサポートに回動自在に軸着した調節プレートの他端を摺動可能に挿通して任意の位置で止着するように構成したことで、利用者の下肢の長さに合わせたり、フットプレートの上にマットなどの緩衝材を敷いたりしたい時などに適宜レッグサポートの長さを調節することができるため、より楽な姿勢で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】リクライニング可能な車椅子1のリクライニング状態を示す説明図
【
図6】座部5及びレッグサポート7、フットサポート8、リクライニング機構9、収納機構10を示す要部斜視図
【
図7】座部5及びレッグサポート7、フットサポート8、リクライニング機構9、収納機構10を示す要部側断面図
【
図9】連動状態でリクライニング途中の状態を示す要部側断面図
【
図10】連動状態で完全にリクライニングした状態を示す要部側側面図
【
図11】レッグサポート7が単独で起立した状態を示す要部側断面図
【
図12】収納機構10の作用状態を示す要部側断面図
【
図13】非連動状態でレッグサポート7を単独で傾倒した状態を示す要部側断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
以下、本発明のリクライニング可能な車椅子1について図面を基に説明する。
このリクライニング可能な車椅子1は、
図1に示すように車体フレーム2の前方に配設される前輪3,3と後方に配設される後輪4,4で床面を走行可能とし、車体フレーム2に支持される座部5と、座部5の後方に支持されるバックサポート6と、座部5の前方に支持されるレッグサポート7と、レッグサポート7の前方に支持されるフットサポート8と、バックサポート6を傾倒させるためのリクライニング機構9と、レッグサポート7の回動範囲を制限するとともに利用者が着座中及び起立時に回動範囲の制限を解除して一方向に回動可能に構成した収納機構10で主に構成している。
なお、
図1に示すように利用者がリクライニング可能な車椅子1に着座した状態を基準として前方、後方、左方向、右方向、上方、下方と向きを指定する。
また、本実施例について側断面図(例えば
図7など)については、平面視においてリクライニング可能な車椅子1の中央を断面位置にしているが、説明するにあたり一部断面を省略せずにそのまま記載している部品がある。
そして、
図1にはマットを図示しているが、その他の図に関してはマットを省略して説明する。
【0011】
まず、車体フレーム2について説明する。
屈曲形成された複数のパイプ及びプレートで枠状に構成した車体フレーム本体21の前端には前輪3,3を取着し、後端近傍には後輪4,4を軸着しており、床面を自在に走行可能に構成している。
また、後端には補助車輪22,22を取着しており、段差を乗り越えるためのティッピング動作を可能にしたり、リクライニング時に懸念される後方への転倒防止を可能にしたりする役割を果たしている。
なお、後輪4,4を制動及び停車するためのブレーキ機構23が車体フレーム本体21の後方に具備されるが、本実施例においては説明を省略する。
【0012】
次に、座部5について説明する。
この座部5は、利用者が着座するためのシートを載置可能な座面プレート5a,5aを一定間隔左右方向に離間して連結パイプ5b,5bで固着している。そして、前側の該連結パイプ5bには側面視において略L字状に形成した取付プレート5c,5cを一定間隔離間して固着している。そして、後側の該連結パイプ5bには側面視において略L字状のカム溝51d,51dを設けたチルトプレート5d,5dを一定間隔離間して固着している。
このように構成した該座部5は、
図3などに示すように前記車体フレーム本体21の上部に固着されている支点プレート21a,21aに該座部プレート5a,5aに付設したボス部材5e,5eを介して車体フレーム本体21に回動自在に軸着される。
【0013】
次に、バックサポート6を説明する。
このバックサポート6は、前記車体フレーム2及び座部5に支持される下部フレーム61と、該下部フレーム61に沿って上下に摺動する上部フレーム62で構成している。
【0014】
まず、下部フレーム61について説明する。
この下部フレーム61は、
図4に示すように一定間隔離間した側部パイプ61a,61aを連結パイプ61bで固着して略H字状に構成し、該側部パイプ61a,61aの下端に軸着したピン61c,61cでローラー部材61d,61dを支承している。このローラー部材61d,61dは、前記チルトプレート5d,5dの前記カム溝51d,51d内を転動する。そして、該側部パイプ61a,61aの上部にはピン部材61e,61e,・・・が固着されており、該ピン部材61e,61e,・・・にローラー部材61f,61f,・・・が支承されている。また、該連結パイプ61bの中央付近には背面視において略コ字状に形成したステー部材61gを固着している。そして、側面視において該側部パイプ61a,61aの中央よりやや下方付近に穿設した穴611a,611aを介して前記車体フレーム本体21の後方上部に固着された支点ボス21b,21bに該側部パイプ61a,61aを軸着することで下部フレーム61を車体フレーム本体21に回動自在にしている。
また、該ステー部材61gと前記車体フレーム本体21の前方に配設された連結パイプ21cの中央付近に一定間隔離間しつつ下方に垂下するように固着されたステー部材21d,21dとの間には伸縮手段63を取着している。この伸縮手段63は、本実施例においてガスシリンダーを使用しており、リクライニング姿勢から座位姿勢に復帰する方向に下部フレーム61を付勢するように配設している。なお、本実施例のようにガスシリンダーに限定する必要は無い。例えば、外筒に対して内筒が伸縮するように構成されており全長を任意に変更できるものであれば良く、油圧シリンダーや入れ子状にパイプを構成するとともに任意の場所でロックできるように構成しても良い。
【0015】
次に、上部フレーム62について説明する。
前記下部フレーム61の前記側部パイプ61a,61a及び前記ローラー部材61f,61f,・・・を内部に挿通可能な大きさに形成されたレールパイプ62a,62aを一定間隔離間して連結パイプ62bで固着している。そして、背面視において左右対称に形成したフレームパイプ62c,62cの下端近傍に固着した支点プレート62d,62dを介して該レールパイプ62a,62aの中央付近に固着したボス部材62e,62eに回動自在に軸着している。そして、該フレームパイプ62c,62cに固着したプレート62f,62fと、該レールパイプ62a,62aの上端に固着したプレート62g,62gに付設されたナット部材62h,62hに、着脱可能なノブ螺子62i,62iを螺着することで該レールパイプ62a,62a及び該フレームパイプ62c,62cが一体になるように構成している。このように構成することによって、ノブ螺子62i,62iを取外すことで該フレームパイプ62c,62cを前方に回動して折り畳むことができ、輸送時に高さを抑えることができるため、梱包サイズを抑えることによる輸送費のコストダウンや、輸送時の持ち運びのし易さなどを実現することができる。なお、本実施例のように上部フレーム62を分割式にする必要は無く一体に構成しても良く、使用者が任意に設定したので良い。
また、このフレームパイプ62c,62cの上端を屈曲形成してリクライニングハンドル621c,621cを形成するとともに、フレームパイプ62c,62cの後方に突出するように押し手ハンドル62j,62jを固着している。なお、リクライニングハンドル621c,621cはバックサポート6の傾倒及び起立の操作性を向上させるために具備しているものであり、使用者が操作しやすい位置であればどこに具備しても良い。
また、該フレームパイプ62c,62cを連結パイプ62kで固着しつつ、該連結パイプ62kの中央付近には支持パイプ62lを固着しており、該支持パイプ62lに利用者の頭部を支持するためのヘッドサポート64を取着している。
なお、ヘッドサポート64の詳細な説明は省略するが利用者の頭の位置に最適になるように上下前後左右に適宜調整することができる。
このように構成した上部フレーム62は、該上部フレーム62のレールパイプ62a,62aを前記下部フレーム61の側部パイプ61a,61a及びローラー部材61f,61f,・・・に外挿して取付けている。
さらに、上部フレーム62の連結パイプ62bに固着した支点プレート62l,62lと前記車体フレーム本体21の連結パイプ21cに固着したボス部材21e,21eとの間に背面視において略コ字状、且つ、側面視において略L字状に屈曲形成したパイプからなるスライドアーム65を軸着している。
【0016】
このように構成した車体フレーム2と座部5及びバックサポート6は、次のように作動する。
まず、
図5(a)に示すように側面視において座位姿勢からバックサポート6を後方に傾倒させるには、図示は省略しているが前記伸縮装置63に接続したワイヤー部材の他端に設けたレバーを操作することで該伸縮手段63のロックを解除して、該伸縮手段63が伸縮自在な状態でバックサポート63を後方に回動させる。すると、下部フレーム61の下端のローラー部材61d,61dが相対的に座部5のチルトプレート5d,5dのカム溝51d,51dに内を転動するので、
図5(a)~
図5(c)に示すように座部5の取付部であるボス部材5e,5eを基端として、一度座部5の後方が下方回動された後、上方回動するように作動する。このとき、上部フレーム62は下部フレーム61の回動中心とは異なり、スライドアーム65の前端側の取付部であるボス部材21e,21eを回動中心として回動するので、前記下部フレーム61のローラー部材61d,61d側にスライドしながら傾倒され、相対的にバックサポート6が縮みながら後方に傾倒するように構成している。
このように構成することで、リクライニングに伴う利用者の背中や臀部のずれを最小限にすることができ、乗心地の向上に加えて褥瘡防止の効果を発揮することができる。
【0017】
次に、レッグサポート7について説明する。
このレッグサポート7は利用者の脚を支持するために使用され、前記座部5に一端を回動可能に軸着したリンク部71と、該リンク部71の他端に軸着されるレッグ支持部72で主に構成している。
【0018】
まず、リンク部71を説明する。
このリンク部71は、
図6などに示すように前記座部5の前端に固着された前記取付プレート5c,5cの両端に第一プレート71a,71a及び第二プレート71b,71bの一端をそれぞれ回動自在に軸着している。そして、第三プレートの一端を該第一プレートの他端に軸着しつつ、該第三プレートの略中間位置と該第二プレートの略中央位置を交点Xとして回動自在に軸着している。
また、該第二プレート71b,71bは側面視において屈曲形成して略W字状に形成しており、詳細は後述するがレッグサポート7と後述するフットサポート8、リクライニング機構9、収納機構10が姿勢変更する時に、各構成部品が干渉せず、コンパクトに構成することができる。そして、該第二プレート71b,71bの他端には第四プレート71d,71dの一端を回動自在に軸着している。
そして、該第二プレート71b,71b間には連結パイプ71eを固着するとともに、該連結パイプ71eの略中央付近に第一支点プレート71f,71fを固着している。
【0019】
次に、レッグ支持部72を説明する。
このレッグ支持部72は、
図6などに示すように平面視において略コ字状に屈曲形成した支持パイプ72a先端近傍をツナギ部材72bで固着し、該支持パイプ72aと該ツナギ部材72bに架設するように一定間隔離間して左右対称に形成したレッグ支点プレート72c,72cを固着している。
そして、前記リンク部71の第三プレート71c,71cと第四プレート71d,71dの一端を該レッグ支点プレート72c,72cにそれぞれ回動自在に軸着している。
【0020】
次に、フットサポート8を説明する。
このフットサポート8は
図6などに示すように利用者の足を支持するために使用され、平面視において上辺が短く下辺が長い台形状にしつつ下辺を開放するように屈曲形成したフットサポートパイプ8aの開放端に利用者が足を置くためのフットプレート8b,8bを回動可能に軸着している。そして、該フットサポートパイプ8aのレッグサポート7側の一端の両端付近にはフット支点プレート8c,8cの一端を固着しており、該フット支点プレート8c,8cの他端近傍には調節プレート8d,8dを回動可能に軸着しつつ前記レッグ支持部72の前記支持パイプ72a内に挿通し、該支持パイプ72a,72aの下方に穿設した穴(図示省略)と同軸心となるなるように固着したナット部材72d,72dを介してノブ螺子8e,8eで螺着固定している。
また、該フットサポートパイプ8aのレッグサポート7側の中央付近には連動プレート8fを固着しており、該連動プレート8fと前記リンク部71の第一支点プレート71f,71f間をリンクアーム81を回動自在に軸着している。
このリンクアーム81は、側面視において略L字状に形成したリンクナカプレート8gの短辺側の先端を該連動プレート8fに回動自在に軸着し、該リンクナカプレート8gにリンクソトパイプ8hの一端を外挿しつつ、該リンクソトパイプ8hの他端を前記リンク部71の連結パイプ71eに固着した第二支点プレート71g,71gに回動可能に軸着している。
また、該リンクナカプレート8gと該リンクソトパイプ8hの間にはリンクナカプレート8gの外周を摺動可能なアジャスター部材8iをリンクナカプレート8gに外挿しつつ、該アジャスター部材8iの雌螺子部(図示省略)を介してノブ螺子8jで螺着している。このように構成することで、該リンクナカプレート8gが該リンクソトパイプ8hの一端より伸長することができるため、例えば
図8に示したフットサポート8の位置からフットサポートパイプ8aを上方に回動して折り畳むことができる。この時、リンクナカプレート8gに穿設した穴81gに係合するように連動プレート8fにプランジャー部材8kを止着することで、フットサポート8をレッグサポート7側に折り畳んだ状態で保持することができる。なお、本実施例におけるプランジャー部材8kは詳細は省略するがボールプランジャーを使用しているがボールプランジャーに限定する必要は無い。本実施例の場合はボールプランジャーのボール部が穴81gに挿脱可能に構成することでフットサポート8の折り畳み状態を保持及び解除することができるが、同様の効果を発揮することができるものであれば良い。
また、調節プレート8d,8dが支持パイプ72a内を摺動可能なため、利用者の下肢の長さや使用状況に合わせてフットサポート8の下限位置を調節可能である。この時は、調節プレート8d,8dの調整量に合わせて、リンクナカプレート8gの位置を調整してアジャスター部材8iをノブ螺子8jで締付けて調整する。
【0021】
このように構成したレッグサポート7及びフットサポート8の関係について説明する。
まず、本実施例において
図7などに示すように前記座部5と前記リンク部71と前記フットサポート8で四節リンクが形成しており、該座部5の前記取付プレート5c,5cの一端と、リンクアーム81の両端と、該フットサポート8のフット支点プレート8c,8cの一端で構成している。
そして、前述した前記リンク部71は前記第一プレート71a,71aの両端を直線距離で結んだ長さに比べて前記第二プレート71b,71bの両端を直線距離で結んだ長さの方は長く設定されるとともに、前記第三プレート71c,71の両端を直線距離で結んだ長さに比べて前記第四プレート71d,71dの両端を直線距離で結んだ長さの方を短く設定した状態で該四節リンクと連動可能に構成している。
このように構成することで、該第一プレート71a,71aを上方回動した時に、該第三プレート71c,71cによって該第一プレート71a,71aと連動するように軸着された該第二プレート71b,71bも同時に上方回動する。
この時、第一プレート71a,71a及び第二プレート71b,71bの上方回動に合わせて第三プレート71c,71cも上方回動するが、交点Xを基点に上方回動するにつれて第三プレート71c,71cの先端が下方回動し、レッグ支点プレート72c,72cで連動可能に連結された第四プレート71d,71dも第三プレート71c,71cに合わせて下方回動する。
すると、前記レッグ支持部72が該リンク部71の上方回動に連動しつつ、該座部5側から該フットサポート8側に移動することで、該レッグサポート7が伸びるように作用される。
つまり、起立時にはレッグサポート7をリンク部71とレッグ支持部72の分割構成にすることで、リンク部71に対してレッグ支持部72が相対的に上方に伸長しながら起き上がるので、レッグサポート7のレッグ支持部72の見かけ上の回動中心と、座部5に着座した利用者の膝関節の回動中心を略同一にすることができるため、レッグサポート7が起立する際に生じる座部5及びレッグサポート7と利用者の下肢のずれを軽減することができる。
また、フットサポート8をレッグサポート7に摺動可能に差込んで止着することで、フットサポート8の位置を調整することができる。
つまり、利用者の下肢の長さに合わせて都度調整することができるため、前述したレッグサポート7の伸縮効果と相まって座位姿勢時でも利用者が最適な姿勢で着座することができる。
【0022】
次に、リクライニング機構9を説明する。
このリクライニング機構9は、レッグサポート7を起立及び傾倒させた時に任意の位置で保持するために使用され、且つ、前述したバックサポート6のリクライニングにレッグサポート7を連動可能にするためのものである。
まず、
図7などに示すように前後方向に穿設したスライド穴91aと該スライド穴91aの下方に連続して穿設する複数の係脱穴92a,92a,・・・により鋸歯状の穴部を形成した角度調節プレート9aの前方上部に正面視において略L字状に形成したレバー部材9bを該角度調節プレート9aに交差するように配設して固着している。そして、該レバー部材9bを一方の前記第二プレート71bに穿設した穴711bと前記第一支点プレート71fの穴711fに回動自在に挿通しつつ該第一支点プレート71fから脱落しないように先端を止着している。そして、該角度調節プレート9aのスライド穴91a及び係脱穴92a,92a,・・・のいずれかに前記ステー部材21d,21dに軸着されたピン部材21fの先端を係脱可能に挿通している。また、該角度調節プレート9aに穿設した穴には、ボス部材9c,9dを固着している。なお、該ボス部材9cは該角度調節プレート9aのレバー部材9b側に突出するように固着し、ボス部材9dはその反対側の面に突出するように固着している。そして、該ボス部材9cには連結ピン9eを挿通するとともに該連結ピン9eの一端には内パイプ9fを固着している。そして、該内パイプ9fに外パイプ9gを外挿するとともに、該外パイプ9gの後端には前記伸縮手段63を軸着するためのピン部材9hを固着している。また、該外パイプ9gの後端上方には該外パイプ9g内に挿退可能に規制ピン9iを取着している。そして、該連結ピン9eの先端に具備した溝(図示省略)に一端を、前記第一支点プレート71fに穿設した穴712fに他端を掛止するように弾性体9jを取着している。この弾性体9jは本実施例において引張スプリングを使用しており、該弾性体9jの弾性力によって角度調節プレート9aを側面視において上方回動するように付勢している。つまり、スライド穴91aからいずれかの係脱穴92aに対してピン部材21fが係脱するように付勢している。
【0023】
次に、収納機構10を説明する。
この収納機構10は前記リクライニング機構9の前記角度調節プレート9aに連設され、前記レッグサポート7を収納状態に姿勢変更することができるものである。
詳述すると、
図7に示すようにこの収納機構10は収納レバー10aの中間部にストッパープレート10bを固着している。そして、該ストッパープレート10bに穿設した穴101bを介して前記ボス部材9cに該ストッパープレート10bを外挿するとともに、該収納レバー10aの先端を前記ボス部材9dに挿通して、該収納レバー10aが該ボス部材9dから脱落しないように止着している。また、
図6に示すように該ボス部材9dの一端と該収納レバー10aの先端との間で弾性体10cを狭着している。なお、本実施例では該収納レバー10aに弾性体10cとして圧縮バネを該収納レバー10aに外挿し、該弾性体10cの先端には座金10dを配設して、ピン部材10eで止着している。
このように収納機構10を構成することで、該収納レバー10aを操作して手前に引かれても、該弾性体10cによって該収納レバー10aから手を離せば元の位置に戻すことができる。
【0024】
このようにレッグサポート7及びフットサポート8、リクライニング機構9、収納機構10を組み合わせることで従前の車椅子と同様にレッグサポート7周辺をコンパクトに構成することができる。
詳述すると、
図7などに示すように前記リンク部71の前記第二プレート71b,71が側面視において略W字状に形成しており、該第二プレート71b,71bの前記穴711bを該W字状の中央頂点部に配設して該穴711bに前記レバー部材9bを挿通し、該中央頂点部の該レッグ支持部72側に連設した谷部に前記収納レバー10aを配設している。
このように構成することで、リンク部71及びレッグ支持部72作動時にリンク部71を構成する各構成部材との干渉を避けることが可能になるとともに、
図10に示すリクライング姿勢から
図12に示す収納姿勢に向かうにつれてリンク部71が側面視において反時計回りに回動することで該レバー部材9b位置より該収納レバー10aが座部5の内側に入り込むことができるため、リンク部71とレッグ支持部72を近接することができる。
また、該中央頂点部の前記座部側に連設した谷部に、該レッグ支持部72の前記支持パイプ72aを収納することができる。つまり、リンク部71とレッグ支持部72をより近接することができる。
さらに、第一プレート71a,71a、第二プレート71b,71b,第三プレート71c,71c、第四プレート71d,71d及びレッグ支点プレート72c,72cは板材で構成しており
図6に示すようにそれぞれを互い違い配設することで姿勢変更時に部品同士の干渉を避けるとともに、左右方向もコンパクトに構成している。
つまり、必要最小限のスペースで各構成部品を配置することができるためレッグサポート7及び周辺部材を従前の車椅子のレッグサポートと略同等とすることができ、従前の車椅子の乗心地と変わらず使用することができる。
【0025】
次に、リクライニング可能な車椅子1を座位姿勢からリクライニング姿勢及びレッグサポート7の収納姿勢それぞれに姿勢変更する方法を説明する。
最初に、
図8で示す座位姿勢から
図10で示すリクライニング姿勢に姿勢変更する場合を説明する。
まず、リクライニング機構9の規制ピン9iを外パイプ9gの内部に突出した状態にする。この状態で、伸縮手段63の伸縮がフリーになるように伸縮手段63のロックを解除してバックサポート6を後方に傾倒させる。すると、車体フレーム本体21の支点ボス21b,21bを回動中心としてバックサポート6が後方回動し、該バックサポート6の下端に軸着したローラー部材61d,61dが座部5のチルトプレート5d,5dのカム溝51d,51d内を相対的に転動すると、座部5のボス部材5e,5eを回動中心として座部5が後方に回動する。
この時、バックサポート6のステー部材61gが上方回動(側面視において反時計回りに回動)するとともにリクライニング機構9の外パイプ9gも上方回動することで、
図9に示すように規制ピン9iと内パイプ9fの後端が当接する。さらにバックサポート6を後方に傾倒すると
図9及び
図10で示すように内パイプ9fによって付勢されてレッグサポート7が上方回動する。なお、角度調節プレート9aに軸着した内パイプ9fの先端は、軸着位置を内パイプ9fによって回動された時に角度調節プレート9aが側面視において反時計回りに回動する位置に設定している。
このようにすることで、弾性体9jの弾性力に抗って角度調節プレート9aに側面視において反時計回りの力が加わり、スライド穴91aの上縁部に沿ってピン部材21fを転動させることができる。つまり、バックサポート6を傾倒する場合及び起立する場合のいずれでもバックサポート6の姿勢変更に連動してレッグサポート7の回動操作ができる。
【0026】
また、バックサポート6の姿勢位置に関わらずレッグサポート7のみ上方回動させたい場合は、そのままレッグサポート7を上方回動させたので良い。(
図11参照)
この時、規制ピン9iと内パイプ9fの後端が離間するので弾性体9jの弾性力のみ作用し、スライド穴91aの下端部から係脱穴92aに沿ってピン部材21fが相対的に移動する。そして、任意の位置でレッグサポート7から手を放すと何れかの係脱穴92aとピン部材21fが係合し、その角度で保持される。この状態からバックサポート6と連動する状態に戻すには、バックサポート6をリクライニングさせるか、レバー部材9bを弾性体9jに抗って側面視において反時計回りに回動させてピン部材21fと係脱穴92aとの係合状態を解除し、レッグサポート7を下方回動させて規制ピン9iと内パイプ9fの後端が当接する状態にすると良い。
【0027】
そして、前項の反対にレッグサポート7のみ下方回動するには以下の手順で操作を行う。
図9に示すようにレバー部材9bを弾性体9jに抗って側面視において反時計回りに回動させてピン部材21fと係脱穴92aとの係合を解除させて、レッグサポート7を下方回動させる。この状態からバックサポート6のリクライニングと連動する状態に戻すには、レッグサポート7を上方回動して規制ピン9iを外パイプ9gの内側に突出させて内パイプ9fが規制ピン9iに当接する状態にするか、バックサポート6を起立姿勢に戻して、内パイプ9fが規制ピン9iに当接する状態にしても良い。
なお、内パイプ9fの後端と規制ピン9iが当接した状態からさらに下方回動させる場合には、規制ピン9iを外パイプ9gの内部から退出させて、内パイプ9fが外パイプ9gに対して後方に摺動可能にすると、角度調節プレート9aには弾性体9jの弾性力が作用する状態となり、いずれかの係脱穴92aとピン部材21fが係合する位置まで下方回動される(
図13参照)。
【0028】
このように、本実施例におけるリクライニング可能な車椅子1では、リクライニング状態に関係無くレッグサポート7の角度調節を行うことができるので、利用者の状態に応じて楽な姿勢で身体を保持することができる。
また、リクライニングに連動してレッグサポート7を回動することもできるため、介助者にとっても操作がし易いものになっている。
【0029】
なお、
図8などに示すようにレッグサポート7の回動下限は、収納機構10のストッパープレート10bが角度調節プレート9aのスライド穴91aの前方の一部を規制し、ピン部材21fの相対的な転動を制限した位置である。
この時、レッグサポート7が座部5の前端から斜め下方に向き、その下端から前方にフットサポート8(フットプレート8b)が配設された状態となっている。
【0030】
次に、
図12に示すようにレッグサポート7を収納姿勢にする場合について説明する。
まず、ピン部材21fとストッパープレート10bが当接した状態を解除するために、
図8に示す状態から収納機構10の収納レバー10aを弾性体10cの弾性力に抗って操作することで角度調節プレート9aからストッパープレート10bを離間させる。すると、ピン部材21fがスライド穴91aの前方まで相対的に転動可能になるため、レッグサポート7を後方回動させることができる。そして、フットサポート8の前方側を上方回動させて収納姿勢にすることができる。
この状態になると、利用者は地面に着地した時に足をより身体側に引いた姿勢を取りやすくなり、立ち上がりが容易になる。また、介助者もより利用者の身体に近い位置でしっかりと踏み込みができるため利用者の身体を支える姿勢が取れるため、安全に立ち上がり介助することができる。なお、左右方向に関しても障害となる構造物が配置されないため、左右方向への移動も容易になる。
【0031】
本実施例におけるリクライニング可能な車椅子1は、レッグサポート7及びこのレッグサポート7に付随するフットサポート8などの各構成部品を前述した構成にすることにより、利用者を長座位姿勢にする際に利用者の下肢が各構成部品の姿勢変更に影響を受けないため脚の位置ずれが発生する心配が無い。
つまり、利用者はズレによる不快感を感じることが無く、介助者は利用者の身体のズレを直すために労力を使う必要が無いため、利用者にとっても介助者にとってもメリットがある。
また、フットサポート8もレッグサポート7の起立に連動して姿勢変更する際に傾倒することで利用者の足裏とフットプレート8b,8bとの干渉が無くなり、姿勢変更時に利用者の足がフットプレート8b,8bに付勢されてずれることも無くなる。
【0032】
そして、本発明におけるレッグサポート7とフットサポート8を別の実施例で構成することもできる。
例えば、図示や詳細な説明は省略するがリンク部の第四プレートとレッグ支持部のレッグ支点プレートを一体に構成するとともに、第二プレートの該第四プレートを軸着するための穴を長穴形状にし、且つ、第四プレートの長さと第三プレートの交点Xからレッグ支点プレートまでの長さを略同等にして四節リンクの一端がスライダ部を要するように構成しても良い。
このように構成することのメリットとして、部品点数を削減、つまりコストダウンをすることができる。
つまり、レッグサポート7のレッグ支持部72の見かけ上の回動中心を座部5の前方上方に移動可能な構成であれば良い。
【0033】
本実施例では車椅子を用いて説明したが、ストレッチャーやベッドのリクライニング機構にも使用可能であり、本発明は車椅子に限定する必要は無い。