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特開2022-170339遷移金属錯体溶液の保存方法および当該遷移金属錯体溶液を用いたオレフィンの重合方法
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  • 特開-遷移金属錯体溶液の保存方法および当該遷移金属錯体溶液を用いたオレフィンの重合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170339
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】遷移金属錯体溶液の保存方法および当該遷移金属錯体溶液を用いたオレフィンの重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20221102BHJP
   C07F 5/06 20060101ALN20221102BHJP
   C07F 17/00 20060101ALN20221102BHJP
   C07F 19/00 20060101ALN20221102BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
C08F4/6592
C07F5/06 B
C07F17/00
C07F19/00
C07F7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076412
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森安 貴士
(72)【発明者】
【氏名】金子 将寿
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏羽
(72)【発明者】
【氏名】木村 滉大
(72)【発明者】
【氏名】山村 雄一
【テーマコード(参考)】
4H048
4H049
4H050
4J128
【Fターム(参考)】
4H048AA02
4H048AB40
4H048VA80
4H048VB20
4H049VN01
4H049VP01
4H049VR24
4H049VW22
4H050AA02
4H050AB40
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BC12B
4J128BC15A
4J128EB02
4J128EB05
4J128EC02
4J128FA09
4J128GA08
4J128GB01
4J128GB07
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、長時間オレフィン重合活性を有する遷移金属錯体化合物溶液を得ることにある。また当該溶液を用いて、オレフィン重合体を効率よく生産する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、有機金属化合物(B)、および炭化水素化合物(C)を含み、当該(A)成分と当該(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が1/1~1/500の範囲にあることを特徴とする遷移金属化合物溶液の保存方法および当該遷移金属化合物溶液を用いてオレフィンの重合を行うことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に係る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、有機金属化合物(B)、および炭化水素化合物(C)を含み、当該(A)成分と当該(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が1/1~1/500の範囲にあることを特徴とする遷移金属化合物溶液の保存方法。
【請求項2】
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)が、メタロセン化合物(A‘)である請求項1に記載の遷移金属化合物溶液の保存方法。
【請求項3】
有機金属化合物(B)が、有機アルミニウム化合物である請求項1または2に記載の遷移金属化合物溶液の保存方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の遷移金属化合物溶液を用いてオレフィンの重合を行うことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間オレフィン重合活性を有する遷移金属化合物溶液の保存方法および当該遷移金属錯体溶液を用いたオレフィンの重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン共重合体は、従来より種々の用途に用いられている。たとえば、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋体は、溶融成形後、架橋されて、電気ケーブル被覆や壁紙などに使用されることが知られている。
【0003】
エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋発泡体は、機械的強度が高く、軽量でかつ柔軟であることから、建築用外装材、内装材、ドアグラスランなどの自動車部品、包装材料、日用品などに用いられるほか、履物あるいは履物用部品、たとえばスポーツシューズ等の靴底(主にミッドソール)にも使用が試みられている。なかでも履物あるいは履物用部品には、軽量で、耐久性に優れるといった条件が求められ、特許文献1は、低比重で圧縮永久歪みが小さなエチレン・α-オレフィン共重合体とその架橋成形体ならびに履物用部品が提案されている。
【0004】
所謂メタロセン化合物は、オレフィン重合体、特にエチレン・α-オレフィン共重合体の製造用触媒の成分として有用であることが知られている。メタロセン化合物は、オレフィン重合において高い活性を示し、触媒残渣の除去無しに高性能なオレフィン重合体を得るのに好適であることが報告されている(例えば、特許文献2等)。
【0005】
一方、ジアルキル型のメタロセン化合物については溶液状態で不安定であり、有機アルミニウム化合物との共存状態とすることで、安定な溶液と出来ることが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-308619号公報
【特許文献2】特開2018-165308号公報
【特許文献3】特開平7-2918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メタロセン化合物を代表例とする遷移金属錯体化合物は固体状の化合物として得られることが多い。遷移金属錯体化合物は、その高活性故に安定性が懸念されるが、固体としては常温で比較的安定である。遷移金属錯体化合物は、オレフィン重合に用いる場合、定量的に使用し易くするため、炭化水素化合物などの不活性媒体のスラリーや溶液として用いることが多い。特にエラストマーなどの非晶性の重合体を製造する際に好適である溶液重合に用いる場合は、遷移金属錯体化合物溶液として利用するのが好適である。
【0008】
本発明者らの検討によれば、遷移金属錯体化合物の中でもハフニウム錯体は特に不安定で、ハフニウムジアルキル型錯体化合物はもちろん、ハフニウムハライド錯体化合物であっても長期間の保存には適さない場合があることが分かってきた。即ち、長期間保存したハフニウムハライド錯体化合物の溶液は、分解、あるいは変質する為か、オレフィン重合活性を次第に失ってしまうことが分かってきた。
【0009】
一方、オレフィン重合体は安価な重合体として知られており、より効率よく生産するために、プロセスの大スケール化や高濃度での生産が図られている。この為、遷移金属錯体化合物溶液は出来るだけ大量に調製して長期保存できることが、生産の安定化や工数削減の観点では好ましい。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、長時間オレフィン重合活性を有する遷移金属錯体化合物溶液を得ることにある。また当該溶液を用いて、オレフィン重合体を効率よく生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが検討した結果、遷移金属錯体化合物と有機金属化合物とを含む溶液とすることで、長期間、前記遷移金属錯体化合物としての性能が低下しないことを見出した。即ち本発明は以下の様に特定される。
[1]
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、有機金属化合物(B)、および炭化水素化合物(C)を含み、当該(A)成分と当該(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が1/1~1/500の範囲にあることを特徴とする遷移金属化合物溶液の保存方法。
[2]
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)が、メタロセン化合物(A‘)である項[1]に記載の遷移金属化合物溶液の保存方法。
[3]
有機金属化合物(B)が、有機アルミニウム化合物である項[1]または項[2]に記載の遷移金属化合物溶液の保存方法。
[4]
項[1]~[3]の何れかに記載の遷移金属化合物溶液を用いてオレフィンの重合を行うオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遷移金属化合物溶液は、例えば30~1000時間と長期間保存していても、オレフィン重合活性が低下しないので、オレフィン重合体の生産の際に、遷移金属錯体化合物溶液を大量調製が可能となり、また、連続重合運転の際に遷移金属錯体化合物溶液の調整回数を低減することが出来、オレフィン重合体の生産効率を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のオレフィンの重合方法を実施する製造装置の一構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の遷移金属化合物溶液を構成するハフニウムハライド型錯体化合物(A)、有機金属化合物(B)、炭化水素化合物(C)、および当該遷移金属化合物溶液を用いたオレフィン重合体の製造方法について説明する。
【0015】
〔ハフニウムハライド型錯体化合物(A)〕
本発明の遷移金属化合物溶液を構成する成分の一つであるハフニウムハライド型錯体化合物(A)は、公知のあらゆるハフニウムハライド型錯体化合物を用いることが出来る。好適な例としては、メタロセン化合物(A‘)を挙げることが出来る。より好適なメタロセン化合物としては、例えば、下記一般式[A1]で表される化合物が挙げられる〔以下、「遷移金属錯体(1)」と呼称する場合がある。〕。
【0016】
【化1】
【0017】
〈R1~R8
式[A1]中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、およびスズ含有基から選ばれ、同一でも互いに異なっていてもよく、隣接する基が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0018】
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアリールアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、ノニル基、ドデシル基およびエイコシル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基およびアダマンチル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばビニル基、プロペニル基およびシクロヘキセニル基などが挙げられる。アリール基としては、たとえばフェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、α-またはβ-ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジルフェニル基、ピレニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、アセアントリレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビフェニリル基が挙げられる。アリールアルキル基としては、たとえばベンジル基、フェニルエチル基およびフェニルプロピル基が挙げられる。
【0019】
〈Y〉
式[A1]において、Yは、二つの配位子を結合する二価の基であり、具体的には、二価の基であって、炭素数1~20の炭化水素基、ならびにハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基であり、好ましくは、炭素数1~20の二価の炭化水素基、または二価のケイ素含有基である。
【0020】
二価の炭化水素基としては、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基が挙げられ、その具体例としては、
メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンなどのアルキレン基;
イソプロピリデン、ジエチルメチレン、ジプロピルメチレン、ジイソプロピルメチレン、ジブチルメチレン、メチルエチルメチレン、メチルブチルメチレン、メチル-t-ブチルメチレン、ジヘキシルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジトリルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレン、1-メチルエチレン、1,2-ジメチルエチレンおよび1-エチル-2-メチルエチレンなどの置換アルキレン基;ならびに
シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデンおよびジヒドロインダニリデンなどのシクロアルキリデン基ならびにエチリデン、プロピリデンおよびブチリデンなどのアルキリデン基
が挙げられる。
【0021】
二価のケイ素含有基としては、
シリレン;ならびに
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル-t-ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレンおよびシクロヘプタメチレンシリレンなどのアルキルシリレン基
が挙げられ、特に好ましくは、ジメチルシリレン基およびジブチルシリレン基などのジアルキルシリレン基が挙げられる。
【0022】
〈M〉
式[A1]において、Mは、ハフニウム(Hf)である。
【0023】
〈X〉
式[A1]において、Xは、ハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。
【0024】
前記遷移金属錯体(1)の具体例としては、特開2013-224408号公報の[0077]に列挙された化合物に準じた構造を例示出来る。
また、より好適なメタロセン化合物としては、下記一般式[A2]で表される化合物が挙げられる〔以下、「遷移金属錯体(2)」と呼称する場合ある。〕。
【0025】
【化2】
【0026】
〈R1~R6、およびR11~R16
式[A2]中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、同一でも互いに異なっていてもよく、また隣接する2個の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0027】
炭化水素基としては、上述した式[A1]においてR1~R8として挙げた炭化水素基が挙げられる。
1~R6、およびR11~R16は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭化水素基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1~20のアルキル基である。
【0028】
〈Y〉
式[A2]において、Yは、二つの配位子を結合する二価の基であり、具体的には、二価の基であって、炭素数1~20の炭化水素基、ならびにハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基であり、好ましくは、炭素数1~20の二価の炭化水素基、または二価のケイ素含有基である。
これらの基としては、上述した式[A1]においてYとして挙げた二価の基が挙げられる。
【0029】
〈M〉
式[A2]において、Mは、ハフニウム(Hf)である。
【0030】
〈X〉
式[A2]において、Xは、ハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。
【0031】
上記遷移金属錯体(2)の具体例としては、特開2013-224408号公報の[0071]に列挙された化合物に準じた構造を例示出来る。
また、より好適なメタロセン化合物としては、下記一般式[A3]で表される化合物が挙げられる〔以下、「遷移金属錯体(3)」と呼称する場合がある。〕。
【0032】
【化3】
【0033】
〈R1からR14
式[A3]中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R1からR4までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、R5からR12までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、R13とR14とは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0034】
1からR14における炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。
【0035】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0036】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0037】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0038】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0039】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0040】
1からR14におけるヘテロ原子含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フリル基などの酸素原子含有炭化水素基;N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基等のアミノ基、ピリル基などの窒素原子含有炭化水素基;チエニル基などの硫黄原子含有炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは2~18、より好ましくは2~15である。ただし、ヘテロ原子含有炭化水素基からはケイ素含有基を除く。
【0041】
1からR14におけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式-SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1~15のアルキル基またはフェニル基である。)で表される基が挙げられる。
【0042】
1からR14までの置換基のうち、任意の2つの置換基、例えば隣接した2つの置換基(例:R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R13とR14)は互いに結合して環を形成していてもよい。上記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0043】
本明細書において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環;ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0044】
5、R8、R9およびR12は、好ましくは水素原子である。
6、R7、R10およびR11は、好ましくは水素原子、炭化水素基、酸素原子含有炭化水素基または窒素原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基である。R6とR7が互いに結合して環を形成し、かつR10とR11が互いに結合して環を形成していてもよい。以上のようなフルオレニル基部分の構造としては、例えば、下式で表されるものが挙げられる。
【0045】
【化4】
【0046】
13およびR14は、好ましくは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、さらに好ましくはアリール基または置換アリール基(ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基を有するアリール基)である。
【0047】
〈Y〉
式[A3]において、Yは炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、好ましくは炭素原子である。
【0048】
〈M、Q、j〉
式[A3]において、Mは、ハフニウム(Hf)である。
Qはハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。
jは1~4の整数であり、好ましくは2である。jが2以上の整数であるとき、Qは同一または異なる組合せで選んでもよい。
【0049】
上記遷移金属錯体(3)の具体例としては、国際公開第2004/87775号の第29~43頁に列挙された化合物、国際公開第2006/25540号の第9~37頁に列挙された化合物、国際公開第2015/122414号の[0117]に列挙された化合物、国際公開第2015/122415号の[0143]に列挙された化合物に準じた構造を例示出来る。
【0050】
〔有機金属化合物(B)〕
本発明の遷移金属化合物溶液を構成する成分の一つである有機金属化合物(B)は、公知の還元能を有する有機金属化合物である。
【0051】
本発明に係る有機金属化合物の具体例を以下に記載する。
本発明に係る有機金属化合物の例としては、周期律表の1族、2族を含む有機金属化合物が挙げられる。
【0052】
その他の好ましい例としては、周期律表の13族金属を含む有機金属化合物が挙げられる。中でも、特開2010-248526号公報に記載された以下の有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0053】
〔有機アルミニウム化合物〕
本発明に係る有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式(7)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、又は有機アルミニウムオキシ化合物等を挙げることができる。
a mAl(ORbnpq…(6)
(式中、Ra及びRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
2AlRa 4…(7)
(式中、M2はLi、Na又はKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
【0054】
上記一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(8)、(9)、(10)、又は(11)で表される化合物等を例示できる。
a mAl(ORb3-m…(8)
(式中、Ra及びRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)
a mAlX3-m…(9)
(式中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)
a mAlH3-m…(10)
(式中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)
a mAl(ORbnq…(11)
(式中、Ra及びRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)
【0055】
上記一般式(8)、(9)、(10)、又は(11)で表されるアルミニウム化合物として、より具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリn-アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウム等のトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウム等のトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;一般式(i-C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)等で表されるイソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシド等のアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式Ra 2.5Al(ORb0.5等で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)等のアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハライド等の部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリド等その他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化及びハロゲン化されたアルキルアルミニウム等を挙げることができる。
【0056】
また、上記一般式(6)で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252、等を挙げることができる。
【0057】
上記一般式(7)で表される化合物としては、例えば、LiAl(C254、LiAl(C7154等を挙げることができる。
【0058】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、又はハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせ等を使用することもできる。
これらのうち、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0059】
上記一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物、又は上記一般式(7)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0060】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0061】
また、後述するオレフィン重合用触媒の助触媒成分として用いる有機金属化合物であってもよい。
【0062】
〔炭化水素化合物(C)〕
本発明の遷移金属化合物溶液を構成する成分の一つである炭化水素化合物(C)は、上記ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、および、上記有機金属化合物(B)を溶解し、溶液とし得る化合物である。
【0063】
本発明に係る炭化水素化合物(C)は、常温常圧で液体であることが好ましい態様である。勿論、高圧条件で液状となる炭化水素化合物であれば、常温常圧では気体状の化合物であってもよい。
【0064】
本発明に係る炭化水素化合物(C)としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分などが挙げられる。
【0065】
本発明に係る炭化水素化合物(C)は、上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素の塩素化物、臭素化物等ハロゲン化物であってもよい。
常温常圧では気体状であるが、高圧条件で液状となる炭化水素化合物としては、メタン、エタン、プロパン類、ブタン類、ペンタン類などを挙げることが出来る。
【0066】
これら炭化水素化合物の中でも、芳香族炭化水素化合物又は脂肪族炭化水素化合物が好ましい。また、常温常圧で気体状の好ましい炭化水素化合物としては、液状にし易いと言う観点から、プロパン類、ブタン類、ペンタン類が好ましい。
【0067】
前記の炭化水素化合物(C)には、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等、活性水素を有さないヘテロ原子含有炭化水素化合物を併用することもできる。このような化合物は、炭化水素化合物(C)100質量%に対して好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下の割合で用いることが出来る。
【0068】
《遷移金属化合物溶液》
本発明の遷移金属化合物溶液は、上記ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、上記有機金属化合物(B)、および上記炭化水素化合物(C)を含み、当該(A)成分と当該(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が、1/1~1/500の範囲にある。
【0069】
本発明の遷移金属化合物溶液は、好ましくは、当該(A)成分と当該(B)成分とのモル比〔(A)/(B)〕の上限値が、1/2であり、より好ましくは1/5であり、さらに好ましくは1/10である。一方、好ましい下限値は1/400、より好ましくは1/200であり、さらに好ましくは1/100である。
【0070】
上記ハフニウムハライド型錯体化合物(A)および上記有機金属化合物(B)の濃度は、保存する観点では高い方が望ましい。一方、後述するオレフィン重合に用いる際には、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)が高活性である故に希釈して用いる必要があるので、その観点では比較的低濃度であることが好ましい。
【0071】
これらの観点からハフニウムハライド型錯体化合物(A)の溶液中の濃度は、含まれる金属元素の濃度として、好ましくは0.0001~10モル/リットルである、より好ましい下限値は、0.0002モル/リットルであり、さらに好ましくは0.0005モル/リットルである。一方、より好ましい下限値は、8モル/リットルであり、さらに好ましくは5モル/リットルであり、特に好ましくは2モル/リットルである。
【0072】
そして有機金属化合物(B)の溶液中の濃度は、含まれる金属元素の濃度として、好ましくは0.01~10モル/リットルである、より好ましい下限値は、0.02モル/リットルであり、さらに好ましくは0.05モル/リットルである。一方、より好ましい下限値は、8モル/リットルであり、さらに好ましくは5モル/リットルであり、特に好ましくは2モル/リットルである。
【0073】
本発明の遷移金属化合物溶液を保管する温度は―20℃~50℃の範囲であることが好ましい。より好ましい下限値は―10℃、さらに好ましくは0℃である。一方、より好ましい上限値は40℃、さらに好ましくは35℃である。一般的に保管温度は低めの方が長期の保管に好適である傾向がある。
【0074】
本発明の遷移金属化合物溶液は、上記(A)成分と上記(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が、1/1~1/500の範囲にあることにより、比較的長時間、具体的には、30~1000時間保管しても後述するオレフィン重合用触媒としての機能(活性)が低下しない。本発明者らの検討によれば、上記(A)成分と(B)成分と比の範囲よりも高い遷移金属化合物溶液は、1~2日の保管日数でオレフィン重合活性を失ってしまうが、上記の範囲内であれば10日以上保管しても大きな重合性能の変化は無い。
上記のような保存性能の向上が発現する要因は判明してはいない。本発明者らは以下の様に推測している。
【0075】
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)と有機金属化合物(B)とは、恐らく弱い相互作用を持つ態様となっているのであろう。その態様が、外乱物質の遷移金属錯体化合物への作用をブロックしたり、溶液状となることで動きやすくなる遷移金属錯体化合物自体の分子運動を抑制し、かかる分子運動による変質をも抑制しているのではないかと考えている。特に、ハフニウムはジルコニウムやチタンに比して大きな原子である。仮に、配位子や、上記構造式のXが、外乱物質の中心遷移金属への影響を効果的にブロックしていたとすれば、ハフニウムの場合は、Xがハロゲンの様な極性基であってもブロックし切れず、外乱物質の影響を受けやすいのではないかと考えている。この様な弱点を有機金属化合物(B)が上記のような作用で補完していると考えている。
【0076】
通常、有機金属化合物(B)は、その還元能などで他の物質を変質させることが知られている。例えば、ハロゲン化チタンなど用いて製造される固体状チタン触媒成分は、有機金属化合物との共存下で重合性能を発現するが、経時的に還元されて重合性能が低下することが知られている。
【0077】
本発明に係るハフニウムハライド型錯体化合物(A)は、恐らく配位子による効果であると推定されるが、上記の様な還元反応が進行せずに外乱からの保護作用のみが優先的に発現する可能性を考えている。
【0078】
《オレフィン重合体の製造方法》
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上記遷移金属化合物溶液の存在下にオレフィンの重合を行うことを特徴とする。
【0079】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上記遷移金属化合物溶液をオレフィン重合反応の触媒成分として用いる限り、従来公知のオレフィン重合体の製造方法と同様の方法を適宜採用可能である。
以下、各条件等について説明する。
【0080】
本発明のオレフィン重合体の製造方法において、オレフィン重合体の重合形式は、バッチ重合、連続重合、セミ連続重合の何れの形式も採用できるが、本発明の製造方法は、とりわけ生産速度の速い連続重合プロセスを用いた場合に上記ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、有機金属化合物(B)、および炭化水素化合物(C)を含み、当該(A)成分と当該(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が1/1~1/500の範囲にある遷移金属化合物溶液が有効に機能すると考えられる。
【0081】
重合を行う反応装置は、SUS製等の反応容器に、撹拌翼を有する回転可能な撹拌軸が備えられている反応装置を挙げることができる。また該撹拌翼としては、傾斜パドル翼、タービン翼、アンカー翼、ヘリカルリボン翼、大型の板翼等が例示される。
【0082】
本発明の製造方法に用いられる反応器、反応装置のサイズは、好ましくは1リットル~1000立方メートルの範囲である。より好ましい下限値は5リットル、更に好ましくは10リットルである。一方、より好ましい上限値は800立方メートル、さらに好ましくは700立方メートルである。白濁の原因と考えられるオレフィン重合用触媒に対するエチレンの過剰供給状態は、反応器、反応装置のサイズが大きくなる場合に発生し易くなる傾向があるが、反応器、反応装置のサイズが上記の範囲であれば、白濁の原因と考えられるオレフィン重合用触媒に対するエチレンなどのオレフィンの過剰供給状態が起こりにくくなるであろう。
【0083】
〔重合温度〕
本発明の製造方法において、オレフィン重合体を製造する際の好ましい重合温度は-20~200℃である。より好ましい下限値は0℃、更に好ましくは20℃である。一方、より好ましい上限値は、190℃であり、更に好ましくは180℃である。この様な範囲の温度であれば、高い重合活性で、所望のオレフィン重合体を得ることができる。
【0084】
〔重合圧力〕
本発明の製造方法において、オレフィン重合体を製造する際の重合圧力(P)は、0.1~10MPaが好ましく、より好ましい下限値は0.2MPaであり、更に好ましくは0.3MPaである。一方、より好ましい上限値は8MPaであり、更に好ましくは6MPaである。
この様な範囲の重合圧力であれば、高い重合活性で、所望のオレフィン重合体を生産することができる傾向にある。
【0085】
〔原料の供給について〕
本発明の製造方法において、エチレン、α-オレフィンなどのオレフィン、水素の反応装置への供給速度は、遷移金属化合物溶液に含まれるハフニウムハライド型錯体化合物(A)の量や、反応装置の除熱能力等を考慮して決められる。以下、エチレンとα―オレフィンとの共重合を行う場合を例として説明する。
【0086】
エチレンとα-オレフィンとの供給量比は0.001~1,000が好ましく、0.01~100がより好ましく、さらに好ましくは0.1~10である。これらの比率は何れもモル比である。
【0087】
製造するオレフィン重合体の分子量は、後述する重合温度等によっても制御できるが、水素を反応させる所謂連鎖移動反応によって制御する方法が好ましい。
エチレンと水素との供給量比は0.001~500,000が好ましく、0.01~100,000がより好ましく、さらに好ましくは0.1~10,000である。これらの比率は何れもモル比である。勿論、潤滑油用途の様な低分子量オレフィン重合体を製造する場合は、相対的に上記の比は小さくする傾向がある。具体的な好ましい範囲はl0.001~100,000であり、0.01~10,000がより好ましく、さらに好ましくは0.1~1,000である。これらの比率は何れもモル比である。
【0088】
好ましい滞留時間は、1分から10時間であり、より好ましくは、2分~8時間であり、更に好ましくは5分~5時間である。エチレン系共重合体の製造方法が連続重合の場合、滞留時間をこの重合時間と見做すことが出来る。
【0089】
本発明の製造方法では、上記ハフニウムハライド型錯体化合物(A)の存在下に重合を行う。この際には、上記遷移金属化合物溶液に含まれるハフニウムハライド型錯体化合物(A)は、重合反応系内の遷移金属原子の濃度として通常、10-8~10-2グラム原子/リットル、好ましくは10-7~10-3グラム原子/リットルの範囲の量で用いられる。
【0090】
また、上記遷移金属化合物溶液に含まれる有機金属化合物(B)は、上記遷移金属化合物中の遷移金属原子1モルに対して、金属原子換算で、通常0.1~100モル、好ましくは0.5~50モルとなるような量で用いられる。
なお、前述のオレフィン重合用触媒は、後述する図1に示す反応装置では、エチレンとは別々に供給される。
【0091】
〔反応装置の一態様〕
以上説明したオレフィン重合体の製造は、例えば、図1に示されるような、液相部(液相)と気相部(気相)とを有する反応装置にて行なわれる。
当該反応装置では、図1に示されるように、エチレンと水素等のガスを、上記(I)の要件の比率で反応装置内に供給する。
【0092】
図1に示される反応装置でエチレン共重合体の製造を行なう場合、反応装置の液相部に供給するガス中のエチレンのモル濃度(EM1)と、反応装置の気相部におけるエチレンのモル濃度(EM2)との比を、例えば1~50の範囲とすることが好ましい。上記の範囲に両ガス組成を制御することによって、白濁の発生等、組成分布の広がりを抑制できる傾向がある。
【0093】
図1で示される反応装置では、エチレン系共重合体の製造は、連続重合プロセスで行う。連続重合プロセスでは、未反応のガスを循環させて再利用する(以下、この再利用される未反応ガスを循環ガスともいう)。具体的には、図1に示されるように、原料エチレンや水素等のガスは、コンプレッサーにより圧力を調整された上記の循環ガスに適量加えて、反応系の液相部に供給することが好ましい。このような方法を取ることによって、容易に供給ガス組成を好ましい範囲に制御することが出来ると共に、効率的に白濁を防止することも可能となる。
【0094】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、図1に示すように遷移金属化合物溶液を用いた溶液連続重合で行われることが多い。この場合、長期連続運転可能な条件を選定することが重要である。これらのことを考慮すると、上記の条件の他、反応系のポリマー濃度を1~90質量%の範囲で行うことが好ましい、より好ましくは5~85質量%、更に好ましくは10~80質量%である。上記のポリマー濃度の範囲であれば、ファウリング等の弊害を起し難く、長期間安定して運転を行う上で有利である。
【0095】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上記したように、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)、有機金属化合物(B)、および炭化水素化合物(C)を含み、当該(A)成分と当該(B)成分との金属元素モル比〔(A)/(B)〕が1/1~1/500の範囲にある遷移金属化合物溶液を用いることを特徴としているが、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)および有機金属化合物(B)の他に、下記のような特定の化合物とを組み合わせることが好ましい。
【0096】
上記化合物としては、例えば、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)と反応して以下のイオン対を形成する化合物や有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。(本発明においては、ホウ素も金属元素とみなす場合がある。)この様な成分は、所謂オレフィン重合触媒の助触媒成分と言われることがある。
【0097】
〔ハフニウムハライド型錯体化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物〕
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号等に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物及びカルボラン化合物等を挙げることができる。
【0098】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基等の置換基を有していてもよいフェニル基又はフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、トリメチルボロン、トリイソブチルボロン等が挙げられる。
イオン性化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0099】
【化5】
【0100】
式中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。Rf~Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基又は置換アリール基である。
【0101】
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオン等の三置換カルベニウムカチオン等が挙げられる。
【0102】
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0103】
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0104】
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオン等が好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0105】
カルベニウム塩として具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0106】
アンモニウム塩としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩等を挙げることができる。
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0107】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0108】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0109】
さらに、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、あるいは下記式(2)又は(3)で表されるボレート化合物、又は下記式(4)で表される活性水素を含むボレート化合物、又は下記式(5)で表されるシリル基を含むボレート化合物等を挙げることもできる。
【0110】
【化6】
(式中、Etはエチル基を示す。)
【化7】
【0111】
活性水素を含むボレート化合物:
[B-Qn(Gq(T-H)r)z]-+…(4)
ここで、Bはホウ素を表す。Gは多結合性ヒドロカーボンラジカルを表し、好ましい多結合性ヒドロカーボンとしては炭素数1~20を含むアルキレン、アリレン、エチレン、アルカリレンラジカルであり、Gの好ましい例としては、フェニレン、ビスフェニレン、ナフタレン、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4-ブタジエン、p-フェニレンメチレンが挙げられる。多結合性ラジカルGはr+1の結合、すなわち一つの結合はボレートアニオンと結合し、Gのその他の結合rは(T-H)基と結合する。A+はカチオンである。
【0112】
上記一般式中のTはO、S、NRj、又はPRjを表し、Rjはヒドロカルバニルラジカル、トリヒドロカルバニルシリルラジカル、トリヒドロカルバニルゲルマニウムラジカル、又はハイドライドを表す。qは1以上の整数で好ましくは1である。T-H基としては、-OH、-SH、-NRH、又はPRjHが挙げられ、ここでRjは炭素数1~18好ましくは炭素数1~10のヒドロカルビニルラジカル又は水素である。好ましいRjはアルキル、シクロアルキル、アリル、アリルアルキル又は炭素数1~18を有するアルキルアリルである。-OH、-SH、-NRjH又はPRjHは、例えば、-C(O)-OH、-C(S)-SH-C(O)-NRjH、及びC(O)-PRjHでもかまわない。最も好ましい活性水素を有する基は-OH基である。Qは、ハイドライド、ジヒドロカルビルアミド、好ましくはジアルキルアミド、ハライド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ハイドロカルビル、置換ハイドロカルビルラジカル等である。ここでn+zは4である。
【0113】
上記一般式(4)の[B-Qn(Gq(T-H)r)z]として、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニルージ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4-ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p-トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4-ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス〔3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2-ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシシクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェニル〕ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)ボレート等が挙げられ、最も好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドキシフェニル)ボレートである。さらに上記ボレート化合物の-OH基を-NHRj(ここで、Rjはメチル、エチル、t-ブチルを表す)で置換したものも好ましい。
【0114】
ボレート化合物の対カチオンであるA+としては、カルボニウムカチオン、トロピルリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。またそれ自身が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオンも挙げられる。これらカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムイオン、ジフェニルカルボニウムイオン、シクロヘプタトリニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、N,N-ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、2,4,6-ペンタメチルアンモニウム、N,N-ジメチルフェニルアンモニウム、ジ-(i-プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリホスホニウム、トリジメチルフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルホスホニウムイオン、トリフェニルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン、ピリニウム、銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジュウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が挙げられる。なかでも特にアンモニウムイオンが好ましい。
【0115】
シリル基を含むボレート化合物:
[B-Qn(Gq(SiRklm)r)z]-+…(5)
ここで、Bはホウ素を表す。Gは多結合性ヒドロカーボンラジカルを表し、好ましい多結合性ヒドロカーボンラジカルとしては炭素数1~20を含むアルキレン、アリレン、エチレン、アルカリレンラジカルであり、Gの好ましい例としては、フェニレン、ビスフェニレン、ナフタレン、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4-ブタジエン、p-フェニレンメチレンが挙げられる。多結合性ラジカルGはr+1の結合、すなわち一つの結合はボレートアニオンと結合し、Gのその他の結合rは(SiRklm)基と結合する。A+はカチオンである。
【0116】
上記一般式中のRk、Rl、Rmはヒドロカルバニルラジカル、トリヒドロカルバニルシリルラジカル、トリヒドロカルバニルゲルマニウムラジカル、水素ラジカル、アルコキシラジカル、ヒドロキシラジカル又はハロゲン化合物ラジカル、を表す。Rk、Rl、Rmは互いに独立していて、同一でも異なる基でも良い。Qは、ハイドライド、ジヒドロカルビルアミド、好ましくはジアルキルアミド、ハライド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ハイドロカルビル、置換ハイドロカルビルラジカル等であり、さらに好ましくはペンタフルオロベンジルラジカルである。ここでn+zは4である。
【0117】
上記一般式(5)中の[B-Qn(Gq(SiRklm)r)z]-として、例えば、トリフェニル(4-ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、ジフェニルージ(4-ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、トリフェニル(4-ジメチルメトキシシリルフェニル)ボレート、トリ(p-トリル)(4-トリエトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ジメチルメトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-トリメトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6-ジメチルクロロシリル-2ナフチル)ボレート等が挙げられる。ボレート化合物の対カチオンであるA+は上記式(4)中のA+と同じものが挙げられる。
【0118】
ボラン化合物として具体的には、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレート等のアニオンの塩、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)等の金属ボランアニオンの塩等が挙げられる。
【0119】
カルボラン化合物として具体的には、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、6,9-ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレート等のアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)等の金属カルボランアニオンの塩等が挙げられる。
【0120】
尚、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物は、2種以上混合して用いることができる。
【0121】
(有機アルミニウムオキシ化合物)
有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0122】
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物又は結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水又は結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に直接水、氷又は水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0123】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒又は未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解又はアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0124】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(8)で表される有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0125】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。なお、トリメチルアルミニウムから調製されるアルミノキサンは、メチルアルミノキサンあるいはMAOと呼ばれ、特によく用いられる化合物である。
【0126】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分又は上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物等の炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素が好ましい。
【0127】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性又は難溶性である。
【0128】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(12)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0129】
【化8】
(式中、Rcは炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
【0130】
上記一般式(12)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(13)で表されるアルキルボロン酸と有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
cB(OH)2…(13)
(式中、Rcは上記と同じ基を示す。)
【0131】
上記一般式(13)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸等が挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0132】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(6)又は(7)で表される有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0133】
以上、説明した有機アルミニウム化合物の中では、有機アルミニウムオキシ化合物を好適な化合物として挙げることが出来る。
また、上記の様なボロン化合物や有機アルミニウムオキシ化合物の他に、上記の有機金属化合物(B)を挙げることも出来る。この有機金属化合物(B)は、上記の様なボロン化合物や有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0134】
〔その他反応に用いられる成分〕
本発明では、重合反応は、通常、炭化水素媒体中で実施される。このような炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分等を挙げることができる。さらに、重合に用いるオレフィンを用いることもできる。
その他、重合反応に有用とされる公知の成分を組み合わせて使用しても良い。例えば、フッ素含有化合物(アルコール系化合物など)を挙げることが出来る。
【0135】
〔オレフィン〕
本発明のオレフィン重合に用いられるオレフィンは、エチレンの他、α-オレフィンとして、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等の炭素数3~20の直鎖状又は分岐状のα-オレフィンを例示することができる。α-オレフィンとしては、炭素数3~10の直鎖状又は分岐状のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンがより好ましい。得られる重合体を潤滑油などの用途に用いる場合は、剪断安定性の点からエチレン、プロピレン等の炭素原子数が少ないオレフィンが好ましい。一方、樹脂の耐衝撃性改善の為の改質剤などの用途では、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテン、1-デセン等の比較的が炭素原子数の多いオレフィンが好ましい。これらのオレフィンは1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0136】
本発明においては、エチレンとα-オレフィンに加えて、他の共重合可能なオレフィン性モノマーを用いて、共重合をおこなってもよい。かかるオレフィン性モノマーとしては、ポリエン、ビニル芳香族化合物、ビニル脂環式化合物、環状オレフィン等を挙げることができる。
【0137】
ポリエンとしては、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,5-ヘプタジエン、1,6-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,7-ノナジエン、1,8-ノナジエン、1,8-デカジエン、1,9-デカジエン、1,12-テトラデカジエン、1,13-テトラデカジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,5-ヘキサジエン、3-エチル-1,4-ヘキサジエン、3-エチル-1,5-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエン、7-メチル-2,5-ノルボルナジエン、7-エチル-2,5-ノルボルナジエン、7-プロピル-2,5-ノルボルナジエン、7-ブチル-2,5-ノルボルナジエン、7-ペンチル-2,5-ノルボルナジエン、7-ヘキシル-2,5-ノルボルナジエン、7,7-ジメチル-2,5-ノルボルナジエン、7,7-メチルエチル-2,5-ノルボルナジエン、7-クロロ-2,5-ノルボルナジエン、7-ブロモ-2,5-ノルボルナジエン、7-フルオロ-2,5-ノルボルナジエン、7,7-ジクロロ-2,5-ノルボルナジエン、1-メチル-2,5-ノルボルナジエン、1-エチル-2,5-ノルボルナジエン、1-プロピル-2,5-ノルボルナジエン、1-ブチル-2,5-ノルボルナジエン、1-クロロ-2,5-ノルボルナジエン、1-ブロモ-2,5-ノルボルナジエン等を挙げることができる。
また、ポリエンとしては、下記の構造の化合物も挙げることができる。
【化9】
【0138】
ポリエンは、1種以上用いられ、好ましくは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、ノルボルナジエンである。
【0139】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等を挙げることができる。また、ビニル脂環式化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン等を挙げることができる。環状オレフィンとしては、シクロヘキセン、2-ノルボルネン等を挙げることができる。
【0140】
本発明では、得られる重合体の分子量を調節するための分子量調節剤として、通常、水素を用いる。水素はエチレンとともに反応装置へ供給される。
【0141】
〔オレフィン重合体〕
本発明の製造方法で製造し得るオレフィン重合体は、例えばエンジンオイル等の潤滑油の基油成分や、粘度調整剤等の用途に好適に用いられる。また、射出成型、押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形等の公知の方法で製造出来る成形体の取材や改質剤として用いることも出来る。
【0142】
本発明に係るオレフィン重合体の重量平均分子量は、潤滑油などの用途の場合は、1,000~20,000の範囲であり、好ましくは1,000~17,000、さらに好ましくは1,000~15,000、特に好ましくは1,000~13,000である。この範囲にあると、潤滑油に用いた場合の基油に対する増粘性と剪断安定性に優れる。
【0143】
本発明に係るオレフィン重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.5以下であり、好ましくは1.1~2.5の範囲にあり、より好ましくは1.2~2.2の範囲にある。この範囲にあれば、得られる潤滑油組成物の剪断安定性が優れる。
【0144】
本発明に係るオレフィン重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、分子量既知の標準物質(単分散ポリスチレン(PSt))を用いて較正されたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、これらの結果より分子量分布(Mw/Mn)を算出することができる。分子量分布が広いと、α-オレフィン(共)重合体中に含まれる所望の分子量から外れたより高分子量の成分及び/又は低分子量の成分が増加し、高分子量の成分は上述の理由により剪断安定性を低下させる。
【0145】
本発明におけるGPCの測定条件は、実施例の欄に記載した条件が採用される。
また本発明に係るオレフィン重合体の分子量は、極限粘度で表した場合、好ましくは0.01~0.8dl/gであり、より好ましくは0.02~0.7dl/gであり、特に好ましくは0.03~0.6dl/gである。なお、本発明において、共重合体の極限粘度([η])は、JIS K7367規格に準じて、135℃のデカリン中で測定し、決定される。
【0146】
本発明に係るオレフィン重合体の内、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合して得られるエチレン系共重合体は、エチレン由来の構造単位を好ましくは20~80モル%含んでおり、より好ましくは25~75モル%、更に好ましくは(30~70モル%含んでいる。またα-オレフィン由来の構造単位を好ましくは20~80モル%含んでおり、より好ましくは25~75モル%、更に好ましくは30~70モル%含んでいる。各単位の組成が上記範囲にあることにより、得られるエチレン系共重合体を用いた潤滑油として優れた温度・粘度特性を発揮することができる。
【0147】
また、本発明のオレフィン重合体の製造方法で得られる重合体が、改質剤などの用途の場合は、その重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01~1000g/10分、より好ましくは0.1~500g/10分、さらに好ましくは0.1~200g/10分、またさらに好ましくは0.1~100g/10分、特に好ましくは0.1~50g/10分の範囲であることが望ましい。オレフィン重合体のMFRは、2.0以上であることも好ましい。
【0148】
なお本発明において、上記のMFRは、ASTM D1238の方法により、2.16kg荷重での測定値である。測定温度は樹脂の種類によって異なるが、エチレン系の重合体の場合、190℃、プロピレン系の重合体の場合、230℃での測定温度で測定されることが多い。また得られる重合体の融点やガラス転移温度によっては、測定温度が260℃や280℃が用いられる場合も有る。
【0149】
上記の重合体が、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合して得られるエチレン系共重合体である場合は、エチレン由来の構造単位を好ましくは60~98モル%含んでおり、より好ましくは65~95モル%、更に好ましくは70~90モル%含んでいる。このような組成であれば、改質剤として好ましい性能を示す傾向がある。
【実施例0150】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0151】
〔実施例1〕
(遷移金属錯体化合物溶液の調製)
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)として、下記構造式のハフニウムハライド型錯体化合物、有機金属化合物(B)としてトリイソブチルアルミニウム、および炭化水素化合物(C)としてn-ヘキサンを用い、当該化合物を、十分に窒素置換した攪拌機付き金属製容器内で、下記の割合で室温下混合し、遷移金属錯体化合物溶液を調製した。該溶液は、5℃で保管した。
【0152】
遷移金属錯体化合物溶液におけるハフニウムハライド型錯体化合物(A)と有機金属化合物(B)との金属元素モル比〔(A)/(B)〕は1/20であり、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)の濃度は0.03ミリモル/リットルとした。
・ヘキサン:90L
・トリイソブチルアルミニウム:54ミリモル-Al
・ハフニウムハライド型錯体化合物:2.7ミリモル-Hf
【化10】
【0153】
(連続重合)
下記の方法で、エチレンと1-ブテンとの共重合を行った。使用した遷移金属錯体化合物溶液は、調製後10時間と、48時間の2条件の溶液を使用したが、運転性能に変化無く、後述する物性の重合体を安定した活性で得ることが出来た。
【0154】
(重合方法)
温度制御のできるジャケットを付した内容積100Lの攪拌翼付耐圧反応器に、未反応ガスを循環出来る様なコンプレッサーとバルブを付したライン(循環ラインと言うことが有る)、溶媒(n-ヘキサン)のフィードライン、原料ガス(エチレンと水素)のフィードライン、1-ブテンのフィードライン、触媒(前記ハフニウムハライド錯体化合物溶液、下記ホウ素系助触媒とをインラインブレンドする)のフィードライン、内容(生成)物抜出しラインを付した装置を用いて、エチレンと1-ブテンとの重合を行った。この中で、エチレンと水素のフィードラインは、上記の循環ラインと連結した形状とした。
重合温度:125℃
n-ヘキサン:16L/時間
遷移金属錯体化合物溶液:0.007ミリモル-Hf/時間
ホウ素系助触媒(注):0.035mmol/時間
エチレン:7.0kg/時間
1-ブテン:4.5kg/時間
水素 :300NL/時間
圧力 :3.5MPa
反応液体積:28Lを維持
(注)トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0155】
上記の条件での重合により、8kg/時間の生産速度、重合活性:1100kg/(ミリモル-Hf・時間)で、ASTM D1238、2.16kg荷重、190℃でのMFRは10g/10分、密度が860kg/m3のエチレン・1-ブテン共重合体を得た。
【0156】
〔実施例2〕
(遷移金属錯体化合物)溶液の調製)
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)として、下記構造式のハフニウムハライド型錯体化合物と、有機金属化合物(B)としてトリイソブチルアルミニウム、炭化水素化合物(C)としてn-ヘキサンを用い、当該化合物を、十分に窒素置換した攪拌機付き金属製容器内で、下記の割合で室温下混合し、遷移金属錯体化合物溶液を調製した。該溶液は、5℃で保管した。
【0157】
遷移金属錯体化合物溶液におけるハフニウムハライド型錯体化合物(A)と有機金属化合物(B)との金属元素モル比〔(A)/(B)〕は1/20であり、ハフニウムハライド型錯体化合物(A)の濃度は0.08ミリモル/リットルとした。
・ヘキサン:90L
・トリイソブチルアルミニウム:144ミリモル-Al
・ハフニウムハライド型錯体化合物:7.2ミリモル-Hf
【0158】
(連続重合)
下記の方法で、エチレンと1-ブテンとの共重合を行った。使用した遷移金属錯体化合物溶液は、調製後10時間と、300時間の2条件の溶液を使用したが、運転性能に変化は無く、後述する物性の重合体を安定した活性で得ることが出来た。
【0159】
(重合方法)
温度制御のできるジャケットを付した内容積100Lの攪拌翼付耐圧反応器に、未反応ガスを循環出来る様なコンプレッサーとバルブを付したライン(循環ラインと言うことが有る)、溶媒(n-ヘキサン)のフィードライン、原料ガス(エチレンと水素)のフィードライン、ブテンのフィードライン、触媒(前記ハフニウムハライド錯体化合物溶液、下記ホウ素系助触媒とをインラインブレンドする)のフィードライン、内容(生成)物抜出しラインを付した装置を用いて、エチレンと1-ブテンとの重合を行った。この中で、エチレンと水素のフィードラインは、上記の循環ラインと連結した形状とした。
重合温度:125℃
n-ヘキサン:31L/時間
遷移金属錯体化合物溶液::0.007ミリモル-Hf/時間
ホウ素系助触媒(注):0.035mmol/時間
エチレン:9.0kg/時間
1-ブテン:4.0kg/時間
水素 :200NL/時間
圧力 :3.4MPa
反応液体積:28Lを維持
(注)トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0160】
上記の条件での運転により、7kg/時間の生産速度、重合活性:1000kg/(ミリモル-Hf・時間)で、ASTM 1238、2.16kg荷重、190℃でのMFRは9g/10分、密度が885kg/m3のエチレン・1-ブテン共重合体を得た。
【0161】
〔比較例1〕
(遷移金属錯体化合物)溶液の調製)
ハフニウムハライド型錯体化合物(A)として、下記構造式の遷移金属錯体化合物および炭化水素化合物(C)としてn-ヘキサンを用い、当該化合物を、十分に窒素置換した攪拌機付き金属製容器内で、下記の割合で室温下混合し、遷移金属錯体化合物溶液を調製した(有機金属化合物(B)としてのトリイソブチルアルミニウムは用いなかった)。該溶液は、5℃で保管した。
【0162】
遷移金属錯体化合物溶液におけるハフニウムハライド型錯体化合物(A)と有機金属化合物(B)との金属元素モル比〔(A)/(B)〕は無限大となる。
・ヘキサン:90L
・トリイソブチルアルミニウム:0ミリモル-Al
・遷移金属錯体化合物 :9.0ミリモル-Hf
【0163】
(連続重合)
下記の条件で、エチレンと1-ブテンとの共重合を行った。使用した遷移金属錯体化合物溶液は、調製後10時間と、48時間の2条件の溶液を使用した。
【0164】
(重合方法)
温度制御のできるジャケットを付した内容積100Lの攪拌翼付耐圧反応器に、未反応ガスを循環出来る様なコンプレッサーとバルブを付したライン(循環ラインと言うことが有る)、溶媒(n-ヘキサン)のフィードライン、原料ガス(エチレンと水素)のフィードライン、ブテンのフィードライン、触媒のフィードライン、内容(生成)物抜出しラインを付した装置を用いて、エチレンとブテンとの重合を行った。この中で、エチレンと水素のフィードラインは、上記の循環ラインと連結した形状とした。
重合温度:110℃
n-ヘキサン:33L/時間
遷移金属錯体化合物溶液::0.007ミリモル-Hf/時間
ホウ素系助触媒(注):0.035mmol/時間
エチレン:10kg/時間
1-ブテン:5.0kg/時間
水素 :15NL/時間
圧力 :3.3MPa
反応液体積:28Lを維持
(注)トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0165】
上記の条件での重合により、10時間保管の遷移金属錯体化合物溶液を用いた場合10kg/時間の生産速度、重合活性:1500kg/ミリモル-Hfで、ASTM 1238、2.16kg荷重、190℃でのMFRは3g/10分、密度が885kg/m3のエチレン・1-ブテン共重合体を得た。
【0166】
しかしながら、48時間保管の溶液を用いた場合は、重合反応が起こらず、重合体が得られなかった。
上記の実施例、比較例の結果から、本発明の遷移金属錯体化合物溶液は、長時間保管してもオレフィン重合活性を有する遷移金属錯体化合物溶液であることが分かる。
図1