(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170346
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】管部材と相手部材とのろう付け方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/00 20060101AFI20221102BHJP
B23K 1/14 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B23K1/00 330G
B23K1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076422
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】清野 威一郎
(57)【要約】
【課題】 管部材のスプール付き管端部を相手部材にろう付け接合する方法において、ろう付け接合強度を増大させるとともに、ろう付け部からの流体漏洩を防止する方法を提供する。
【解決手段】 管部材のスプール付き管端部を相手部材に穿設した接続孔に差し込み、管部材の外周壁面と相手部材の内周壁面との当接部をろう付けする方法において、スプールの首下部に、溶融したろうを筒状金属部材の管端部外周面と相手部材の接続孔との隙間部まで浸透させるための凹部を形成してろう付けすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状金属部材(管部材)の管端部に形成したスプール部にろう材を配置させた状態で、筒状金属部材の管端部を相手部材に穿設した接続孔に差し込み、筒状金属部材と相手部材をろう付け接合する方法において、前記筒状金属部材の管端部に形成したスプールの管端部側首下部に、溶融したろうを筒状金属部材の管端部外周面と相手部材の接続孔との隙間部まで浸透させるための凹部を、当該スプールの周方向に1ないし複数形成してろう付けすることを特徴とする管部材と相手部材とのろう付け方法。
【請求項2】
前記筒状金属部材のスプール首下部に形成する前記凹部は、周方向に長い長方形状または長方形状に近似の形状とすることを特徴とする請求項1に記載の管部材と相手部材とのろう付け方法。
【請求項3】
前記筒状金属部材のスプール首下部に、前記周方向に長い矩形凹部をスプールの周方向に所望の間隔をおいて複数形成することを特徴とする請求項1または2に記載の管部材と相手部材とのろう付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に自動車あるいは各種機械、装置等の供給路等として使用される金属管等の管部材と、この管部材を相手部材にろう付け接合する方法に係り、より詳しくは前記管部材のスプール付き管端部を相手部材の内部に挿入してろう付け接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、管部材の管端部を相手部材にろう付け接合する場合には、管部材の管端部を相手部材に穿設した接続孔に差し込み、管部材の外周壁面と相手部材の内周壁面との当接部を銅ろう付け接合する方法が一般的に行われている。
図4、
図5はその一例を示したもので、筒状金属部材(管部材)11の管端部11-1の外周に当該金属部品の外径より大径のスプール11-2を形成しておき、ついで筒状金属部材11の管端部11-1の前記スプール11-2の外周部に銅ペーストろう材(図面省略)を配置させた状態で、筒状金属部材11の管端部11-1を相手部材(別体パイプ等)12に穿設した接続孔12-1に差し込み、その差し込み後の位置決め(仮固定)をプロジェクション溶接で行った後、連続式雰囲気炉で加熱することによって形成されるフィレット13により筒状金属部材11と相手部材12とをろう付け接合する方法が知られている。
【0003】
なお、金属管のろう付け方法としては、筒状金属部材の先端部に拡管部を形成するとともに、その拡管部の先端部にフレアを形成し、他方の金属管にリング状ろう材を嵌め被せるとともに、当該筒状金属部材の端部を前記拡管部に差し込み、この状態で炉中において加熱することによってろう付けを行う方法(特許文献1参照)や、管部材の管端部の外周壁面を相手部材の内周壁面にろう付けする方法において、管部材の管端部の外周面に設けた環状の係合部にろう材製リングを嵌め、このろう材製リング付きの管部材の管端部を相手部材に挿入して、前記ろう材製リングを加熱溶融して管部材の管端部と相手部材とをろう付けする方法(特許文献2参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7-39032号
【特許文献2】特開2007-105774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記
図4、
図5に示す従来の管部材のろう付け接合方法、即ち、筒状金属部材(管部材)11の管端部を相手部材12に穿設した接続孔12-1に差し込み、筒状金属部材11の外周壁面と相手部材12の内周壁面との当接部を銅ろう付け接合する方法であって、筒状金属部材11の管端部に形成したスプール11-2の部分に銅ペーストろう材(図面省略)を配置させた状態で、筒状金属部材11の管端部を相手部材12に穿設した接続孔12-1に差し込み、この状態で筒状金属部材11と相手部材12を銅ろう付け接合する方法には、以下に示す問題点がある。
即ち、前記
図5に示す従来のろう付け接合方法は、スプール付きの筒状金属部材11の管端部を相手部材12の接続孔12-1に差し込んで銅ろう付けを行う際、筒状金属部材11のスプール11-2の首下部と相手部材12との間に隙間が存在しない状態(ほぼ0mm)で銅ろう付けが行われると、溶融した銅ろうは筒状金属部材11の管端部外周面と相手部材12の接続孔12-1との隙間14まで浸透(回り込み)せず、同
図5に示すように相手部材12の表側のみに流れて筒状金属部材11のスプール11-2と相手部材12間に形成されるフィレット13のみによりろう付け接合されることになり、その結果、ろう付け接合強度が十分に得られず、ろう付け部からの流体の洩れの発生確立が高まるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解消するためになされたもので、管部材と相手部材とのろう付け方法において、溶融した銅ろうがスプール首下部から管部材の管端部と相手部材の接続孔の隙間まで浸透(回り込み)可能とすることにより、ろう付け接合強度の向上と、ろう付け部からの流体漏洩の防止に加え、プロジェクション溶接による仮固定の際の溶接電流値の低減もはかられる、管部材と相手部材とのろう付け方法を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る管部材と相手部材とのろう付け方法は、筒状金属部材(管部材)の管端部に形成したスプール部にろう材を配置させた状態で、筒状金属部材の管端部を相手部材に穿設した接続孔に差し込み、筒状金属部材と相手部材をろう付け接合する方法において、前記筒状金属部材の管端部に形成したスプールの管端部側首下部に、溶融したろうを筒状金属部材の管端部外周面と相手部材の接続孔との隙間部まで浸透させるための凹部(リークパス)を、当該スプールの周方向に1ないし複数形成してろう付けすることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記ろう付け方法において、筒状金属部材のスプール首下部に形成する前記凹部の形状としては、周方向に長い矩形(長方形状または長方形状に近似の形状)とすることを好ましい態様とするものである。また、前記凹部の深さは、スプールの大きさ(直径、筒状金属部品の長さ方向および径方向の厚み等)により設定することを好ましい態様とするものである。また、前記筒状金属部材のスプール首下部に前記周方向に長い矩形凹部を複数形成する場合には、スプールの周方向に所望の間隔をおいて形成することを好ましい態様とするものである。
なお、前記凹部の周方向長さや形成数は、それぞれ筒状金属部材の直径、スプールの大きさ等に応じて適宜設定する。また、ろう材としては特に限定するものではないが、銅ペーストろう材を用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管部材と相手部材とのろう付け方法によれば、スプール付きの筒状金属部材の管端部を相手部材の接続孔に差し込んで銅ろう付けを行う際、前記スプール首下部に形成した凹部と、管部材の管端部外周面と相手部材の接続孔内周面との隙間とがつながり、溶融したろう材の浸透する経路が形成されるので、溶融した銅ろうは管軸方向に流れて筒状金属部材の管端部外周面と相手部材の接続孔の内周面との隙間もろう材で埋められ固定される。したがって、十分なろう付け接合強度が得られるとともに、ろう付け部から流体の洩れが発生するのを防止できる。さらに、本発明によれば、スプール付きの筒状金属部材のスプール首下部に形成した凹部の作用により、当該筒状金属部材差し込み後の位置決め(仮固定)を行うプロジェクション溶接の低電流化もはかられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例におけるろう付け前のスプール付きの筒状金属部材(金属管)を示す側面図である。
【
図2】
図1に示すスプール付きの筒状金属部材の正面図である。
【
図3】
図1に示すスプール付きの筒状金属部材と相手部材とのろう付け後の状態を示す要部拡大縦断側面図である。
【
図4】従来方法におけるろう付け前のスプール付きの筒状金属部材(金属管)を示す
図1相当の図である。
【
図5】
図4に示すスプール付きの筒状金属部材と相手部材とのろう付け後の状態を示す
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例におけるろう付け前のスプール付きの筒状金属部材(金属管)を
図1~
図2において説明すると、本発明では筒状金属部材1の管端部2の外周に形成された環状のスプール3の首下部に、例えば当該筒状金属部材1の周方向に長いほぼ長方形状で所望のくぼみ深さを有する矩形凹部4を当該筒状金属部材1の円周方向の十字位置に4個形成する。この矩形凹部4の形成方法としては、例えばプレス加工により形成することができる。また、矩形凹部4の周方向の長さ、くぼみ深さ、形成数等は、当該筒状金属部材1の直径、肉厚等に応じて適宜定める。このように、環状のスプール3の首下部に矩形凹部4を形成するのは、スプール3の首下部のみならず、筒状金属部材1の管端部2の外周面と相手部材5の接続孔5-1の内周面との隙間6にも溶融したろうを浸透させて当該隙間6もろうで埋めるためである。
【0012】
次に、上記構造のスプール3付きの筒状金属部材1と相手部材とのろう付け方法を
図3に基づいて説明する。
すなわち、
図1~
図2に示すスプール3付きの筒状金属部材1と相手部材5とをろう付けする場合は、従来と同様に筒状金属部材1の管端部2の前記スプール3の外周部に銅ペーストろう材(図面省略)を配置させた状態で、筒状金属部材1の管端部2を相手部材5に穿設した接続孔5-1に差し込む。このとき、スプール3の首下部に形成した4個の矩形凹部4と、筒状金属部材1の管端部2の外周面と相手部材5の接続孔5-1の内周面との隙間6とがつながり、溶融したろうの浸透する経路が形成されるので、溶融したろうはスプール3の首下部に形成した4個の矩形凹部4を通過して、筒状金属部材1の管端部2の外周面と相手部材5の接続孔5-1の内周面との隙間6にも溶融流動して、当該隙間部もろう材で埋められる。したがって、筒状金属部材1の管端部2と相手部材5とは、
図3に示すように、例えば連続式雰囲気炉で加熱することによって形成されるフィレット8と、筒状金属部材1の管端部2と相手部材5間の溶融固化したろう付け部9とにより接合される。
【0013】
このように、本発明によれば、筒状金属部材1のスプール3の首下部に矩形凹部4を形成して、筒状金属部材1の管端部2の外周面と相手部材5の接続孔5-1の内周面との隙間6とを連通させることにより、筒状金属部材1のスプール3と相手部材5とのあいだに形成されるフィレット8と、管端部2と相手部材5間の溶融固化したろう付け部9とにより接合されるので、筒状金属部材1と相手部材5とのろう付けをより確実なものとすることができる。また、筒状金属部材1のスプール3の首下部に設けた矩形凹部4の作用により、筒状金属部材1の全周にわたり流れていた電流が断続的な流れに変わることにより、プロジェクション溶接による仮固定の際の溶接電流値の低減も可能となる。
【符号の説明】
【0014】
1 筒状金属部材
2 管端部
3 スプール
4 矩形凹部
5 相手部材
5-1 接続孔
6 隙間
8 フィレット
9 ろう付け部