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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017035
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220118BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20220118BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/22
B01D61/58
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120092
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】市原 史貴
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
(72)【発明者】
【氏名】近藤 司
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA32
4D006JA53Z
4D006JA57Z
4D006JA58Z
4D006JA63Z
4D006JA67Z
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA67
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB17
4D006KB30
4D006KE04Q
4D006KE08P
4D006KE08R
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE30P
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB62
4D006PB64
4D006PC02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、運転中の限外ろ過膜からの微粒子の発生を抑制する。
【解決手段】超純水製造装置1は、ユースポイント51に接続され、ユースポイント51に超純水を供給する第1の限外ろ過膜39と、第1の限外ろ過膜39の濃縮水を第1の限外ろ過膜39の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインL3と、第1の限外ろ過膜39の出口圧力を測定する圧力計PIと、濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段(第1の弁)V1と、を有している。濃縮水流量調整手段V1は、濃縮水の流量が変化したときに圧力計PIで測定された第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように操作可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユースポイントに接続され、前記ユースポイントに超純水を供給する第1の限外ろ過膜と、
前記第1の限外ろ過膜の濃縮水を前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインと、
前記第1の限外ろ過膜の出口圧力を測定する圧力計と、
前記濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段と、を有し、
前記濃縮水流量調整手段は、前記濃縮水の流量が変化したときに前記圧力計で測定された前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように操作可能である、超純水製造装置。
【請求項2】
前記所定の範囲は0.02MPa以内、前記第1の限外ろ過膜の運転時出口圧力の5%以内のいずれかである、請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項3】
前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が前記所定の範囲に収まるように、前記濃縮水流量調整手段の作動を制御する制御部を有する、請求項1または2に記載の超純水製造装置。
【請求項4】
前記濃縮水流量調整手段は、前記第1の濃縮水返送ラインに設けられた弁であり、前記制御部は、前記濃縮水流量調整手段の該弁の作動を制御する、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項5】
前記第1の限外ろ過膜の上流に位置するポンプを有し、
前記制御部は、前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が前記所定の範囲に収まるように、前記圧力計で測定された前記出口圧力に応じて前記ポンプを制御する、請求項3または4に記載の超純水製造装置。
【請求項6】
前記第1の限外ろ過膜に接続され、前記第1の限外ろ過膜を透過した超純水を、前記ユースポイントを迂回して前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する超純水返送ラインと、前記超純水返送ラインに設けられた弁と、を有し、
前記制御部は、前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が前記所定の範囲に収まるように、前記圧力計で測定された前記出口圧力に応じて、前記超純水返送ラインに設けられた前記弁を制御する、請求項3または4に記載の超純水製造装置。
【請求項7】
前記第1の濃縮水返送ラインから分岐して、前記第1の限外ろ過膜の濃縮水を前記第1の限外ろ過膜の透過水の返送先より上流に返送する第2の濃縮水返送ラインと、
前記第1の限外ろ過膜の入口と出口の少なくともいずれかに設けられた微粒子検出手段と、を有し、
前記濃縮水流量調整手段は、前記微粒子検出手段の微粒子検出結果に応じて、前記第2の濃縮水返送ラインを流れる前記濃縮水の流量を調整する、請求項1から5のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項8】
前記第1の濃縮水返送ラインに設けられ、前記第1の限外ろ過膜の濃縮水をろ過し、透過水を前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する第2の限外ろ過膜と、
前記第2の限外ろ過膜の濃縮水を前記透過水の返送先より上流に返送する第3の濃縮水返送ラインと、
を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項9】
前記濃縮水流量調整手段は、前記第3の濃縮水返送ラインに設けられた弁である、請求項8に記載の超純水製造装置。
【請求項10】
前記ユースポイントに接続され、前記第1の限外ろ過膜と並列に設けられ、前記ユースポイントに超純水を供給する他の第1の限外ろ過膜を有し、
前記第1の限外ろ過膜の濃縮水と前記他の第1の限外ろ過膜の濃縮水が前記第2の限外ろ過膜に供給される、請求項8または9に記載の超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超純水製造装置に関し、特に純水から超純水を製造するサブシステムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶デバイスの製造プロセスでは、洗浄工程など様々な用途に、不純物が高度に除去された超純水が使用されている。超純水は、一般に、原水(河川水、地下水、工業用水など)を、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(サブシステム)で順次処理することにより製造される。超純水に含まれる微粒子は、デバイスの歩留まりを低下させる直接の原因となるため、そのサイズ(粒径)および個数(濃度)が厳しく管理されている。そのため、超純水中の微粒子数を低減するために、最終段に限外ろ過膜が配置されたサブシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
限外ろ過膜は通常、全量を透過させるのではなく、濃縮水の一部を上流側に戻す運用が行われている。上流側に戻す濃縮水の流量は要求水質などによって決定されるが、造水コストを抑えるためには、濃縮水の流量はできるだけ抑えることが望ましい。このため、運転中に水質を監視しながら、濃縮水の流量を変更することがある。この作業は被処理水の圧力、特に限外ろ過膜の入口圧力と出口圧力の変動を伴う。この際、特許文献1に記載されているように、圧力の変動によって、配管の内壁等に付着した微粒子が剥離することが知られている。そこで、特許文献1に記載の技術によれば、超純水を高圧で供給することで、配管に付着した微粒子が除去される。高圧洗浄工程中に洗浄によって限外ろ過膜が目詰まりすることを防止するため、限外ろ過膜を取り外し、ダミー管または限外ろ過膜の機能を有さないダミー膜が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/145419号
【特許文献2】特許第6670206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献2には、超純水製造装置の運転中に限外ろ過膜から微粒子が剥離し、これが超純水の水質に影響を及ぼすことが開示されている。従って、特許文献1に開示された方法では、運転中に限外ろ過膜から微粒子が発生することを抑制することはできない。また、高圧洗浄工程中には超純水の製造ができず、洗浄の前後に限外ろ過膜を脱着する作業も必要であり、超純水製造装置の稼働率の低下につながる。
【0006】
本発明は、簡易な構成で、造水コストを低減し、運転中の限外ろ過膜からの微粒子の発生を抑制することができる超純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超純水製造装置は、ユースポイントに接続され、ユースポイントに超純水を供給する第1の限外ろ過膜と、第1の限外ろ過膜の濃縮水を第1の限外ろ過膜の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインと、第1の限外ろ過膜の出口圧力を測定する圧力計と、濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段と、を有している。濃縮水流量調整手段は、濃縮水の流量が変化したときに圧力計で測定された第1の限外ろ過膜の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように操作可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で、運転中の限外ろ過膜からの微粒子の発生を抑制することができる超純水製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。
図2図1に示す超純水製造装置のサブシステムの概略構成図である。
図3】第1の限外ろ過膜の出口圧力の時間的変化を模式的に示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るサブシステムの概略構成図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るサブシステムの概略構成図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係るサブシステムの概略構成図である。
図7】本発明の第5の実施形態に係るサブシステムの概略構成図である。
図8】本発明の第6の実施形態に係るサブシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係る超純水製造装置1の概略構成を示す。超純水製造装置1は、原水を処理して一次処理水を製造する前処理システム11と、前処理システム11で製造された一次処理水から純水を製造する一次純水システム21と、一次純水システム21で製造された純水から超純水を製造する二次純水システム31(以下、サブシステム31という)と、を有している。一次純水システム21は一次処理水を貯蔵する一次処理水タンク22の他、図示しない逆浸透膜、紫外線酸化装置、精密ろ過膜などからなる浄化ユニット23を備え、純水供給ラインL1を通して、純水をサブシステム31のサブタンク32に供給する。
【0011】
図2図1に示すサブシステム31の概略構成を示している。サブシステム31は、サブタンク32、第1のポンプ33、紫外線酸化装置34、過酸化水素除去装置35、イオン交換装置36、膜脱気装置37、第2のポンプ38、第1の限外ろ過膜39が、この順で配置されている。紫外線酸化装置34、過酸化水素除去装置35、イオン交換装置36、膜脱気装置37、第1の限外ろ過膜39は被処理水の浄化ユニットを構成する。第1のポンプ33は交流モータであり、第1のインバータ33Aによって流量が制御される。同様に、第2のポンプ38は交流モータであり、第2のインバータ38Aによって流量が制御される。
【0012】
紫外線酸化装置34は被処理水に紫外線を照射し、被処理水に含まれる有機物を分解する。過酸化水素除去装置35はパラジウム(Pd)、白金(Pt)などの触媒を備え、紫外線照射によって発生した過酸化水素を分解する。これによって、後段のイオン交換装置36が酸化性物質によってダメージを受けることが防止される。イオン交換装置36はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混床で充填されたもので、被処理水中のイオン成分を除去する。膜脱気装置37は被処理水に含まれる溶存酸素や二酸化炭素を除去する。第1の限外ろ過膜39はサブシステム31の最終段の浄化ユニットであり、被処理水中に残存した微粒子を除去する。第1の限外ろ過膜39はユースポイント51に接続され、ユースポイント51に超純水を供給する。図1には、第1の限外ろ過膜39を除く浄化ユニットを前段浄化ユニット41として表示している。
【0013】
膜脱気装置37と第1の限外ろ過膜39との間には、第1の限外ろ過膜39の入口における被処理水の微粒子(または粒径ごとの微粒子数)を測定する第1のパーティクルカウンタPC1(第1の微粒子測定手段)が設置されている。第1の限外ろ過膜39とユースポイント51との間には、第1の限外ろ過膜39の出口における被処理水の微粒子(または粒径ごとの微粒子数)を測定する第2のパーティクルカウンタPC2(第2の微粒子測定手段)が設置されている。第1のパーティクルカウンタPC1と第2のパーティクルカウンタPC2はいずれかだけを設けることもでき、その場合、第2のパーティクルカウンタPC2を設けることが好ましい。また、第1の限外ろ過膜39とユースポイント51との間には、第1の限外ろ過膜39の出口圧力を測定する圧力計PIが設けられている。圧力計PIは第2のパーティクルカウンタPC2の下流に設けられているが、第2のパーティクルカウンタPC2の上流に設けてもよい。
【0014】
第1の限外ろ過膜39の1次側(被処理水が供給される側)に発生する濃縮水は、第1の濃縮水返送ラインL3によって第1の限外ろ過膜39の上流に返送される。第1の濃縮水返送ラインL3には、濃縮水流量調整手段として機能する第1の弁V1が設けられている。濃縮水の返送先は、第1の限外ろ過膜39の上流である限り特に限定されないが、本実施形態ではサブタンク32としている。濃縮水の水質等によっては、濃縮水を一次処理水タンク22に返送してもよい。これによって、濃縮水は一次純水システム21で再度処理されるため、ユースポイント51に供給される超純水の水質の低下を抑制できるとともに、サブシステム31の水処理負荷を軽減できる。一方、この場合、一次純水システム21の処理容量を、前処理システム11から供給される一次処理水の流量と返送される濃縮水の流量の合計流量に基づいて決定する必要があることから、一次純水システム21の処理容量が増加し、一次純水システム各装置の設計仕様が大型化(樹脂量、膜本数の増加)し、造水コスト(電力消費量、薬品使用量等)の増加につながる。濃縮水をサブシステム31に返送する場合、一次純水システム21の処理容量は、前処理システム11から供給される一次処理水の流量で決まるため、一次純水システム各装置を小型設計とすることができ、造水コストへの影響が抑えられる。
【0015】
ユースポイント51で使用されなかった超純水は、リターンラインL4によってサブタンク32に返送され、サブシステム31で再び処理されてユースポイント51に供給される。第1の限外ろ過膜39とユースポイント51の間で主ラインL2から分岐するバイパスラインL5が設けられている。本実施形態では、バイパスラインL5はリターンラインL4に合流しており、ユースポイント51を迂回した超純水はリターンラインL4を通ってサブタンク32に返送される。従って、バイパスラインL5とリターンラインL4は、第1の限外ろ過膜39を透過した超純水を、ユースポイント51を迂回して第1の限外ろ過膜39の上流に返送する超純水返送ラインを構成する。バイパスラインL5には第2の弁V2が設けられている。
【0016】
第1の限外ろ過膜39から第1の限外ろ過膜39の上流、本実施形態ではサブタンク32に返送される濃縮水の流量は、一般に第1の限外ろ過膜39に供給される被処理水の数%程度であるが、濃縮水の流量が増加すると、ユースポイント51に供給される超純水の流量が減少する。このため、造水コストを低減するためには濃縮水の流量をできるだけ抑えることが望ましい。このため、本実施形態では、第1及び第2のパーティクルカウンタPC1,PC2で測定される微粒子数が超純水の水質上問題のないレベルであるとき、すなわち、ユースポイント51で要求される微粒子数を十分に下回るときは、濃縮水の流量調整弁である第1の弁V1を絞り、濃縮水の流量を低下させる。しかし、第1の弁V1の開度を調整する際に、主ラインL2の圧力が増減を繰り返しながら変動する。これによって、第1の限外ろ過膜39からの微粒子の剥離が生じやすくなり、ユースポイント51に供給される超純水の水質が悪化する可能性がある。
【0017】
この課題に対処するため、本実施形態の超純水製造装置1(サブシステム31)では、第1の弁V1は、濃縮水の流量が変化したときに圧力計PIで測定された第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように操作可能である。所定の範囲はユースポイント51における要求仕様にもよるが、一例では、0.02MPa以内、好ましくは0.01MPa以内である。あるいは、所定の範囲は第1の限外ろ過膜39の運転時入口圧力の5%程度以内、好ましくは3%程度以内としてもよい。
【0018】
第1の弁V1と圧力計PIは制御部40に接続されており、圧力計PIで測定された第1の限外ろ過膜39の出口圧力に応じて、第1の弁V1の作動、具体的には第1の弁V1の開度と開閉速度が制御部40によって制御される。図3には第1の限外ろ過膜39の出口圧力(圧力計PIの測定値)の時間的変化を模式的に示す。例えば、第1の弁V1を所定の開度からこれと異なる開度まで、一般的な速度(時間当たりの開度の変化量)で変更すると、破線で示すように第1の限外ろ過膜39の出口圧力が大きく変動する。これに対して、これよりも低い速度で開度を変更すると、実線で示すように第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動が抑制される。従って、第1の限外ろ過膜39からの微粒子の剥離が抑制され、第2のパーティクルカウンタPC2で測定した微粒子数の増加が抑えられる。
【0019】
この際、制御部40によって第2のポンプ38の出力を制御することが好ましい。第1の弁V1の開度を調整することで第1の限外ろ過膜39の圧力損失が変化し、主ラインL2の圧力が変動するが、ポンプ吐出量を調整することで、主ラインL2を同程度の圧力に保持することができる。これによって、第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動がさらに抑制される。つまり、第2のポンプ38の出力を制御することで、第1の弁V1だけを制御する場合と比べて、第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動をより効果的に抑制することができる。制御部40は第2のポンプ38の第2のインバータ38Aに接続されており、第2のインバータ38Aは第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように制御される。具体的には、制御部40は、圧力計PIで測定された圧力が増加したときは、ポンプ回転数が下がるように第2のインバータ38Aを制御し、それによって第1の限外ろ過膜39の出口圧力を減少させる。制御部40は、圧力計PIで測定された圧力が減少したときは、ポンプ回転数が上がるように第2のインバータ38Aを制御し、それによって第1の限外ろ過膜39の出口圧力を増加させる。第1の弁V1と第2のインバータ38Aの制御は、圧力計PIで測定された圧力の変動と連動して行われる。従って、第1の弁V1は手動で操作することも可能であるが、第1の弁V1の作動と第2のインバータ38Aの制御は制御部40によって自動制御されることが好ましい。なお、第1の限外ろ過膜39のすぐ上流側に位置する第2のポンプ38を制御することで、第1の限外ろ過膜39の出口圧力をより正確に制御することが可能であるが、第2のポンプ38の代わりに第1のポンプ33(第1のインバータ33A)を制御してもよいし、第1のポンプ33と第2のポンプ38の両者を制御してもよい。
【0020】
第1の弁V1の開度を変更してから、圧力計PIの測定値がそれに応じて変化するまでには多少の時間差がある。従って、より確実に第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動を抑制するためには、第1の弁V1の開度を少しずつ間歇的に変更することが好ましい。具体的には、第1の弁V1の開度を少し変更し、これに応じて第2のインバータ38Aの出力を調整したら、第1の弁V1の開度を一定に保持し、圧力計PIの測定値が安定するまで待ち、その後第1の弁V1の開度を再び少し変更するというプロセスを繰り返す。また、第1の弁V1の開度及び第2のポンプ38の出力の変更パターン(開度ないし出力の時間的変化)と圧力計PIの測定値の間にはサブシステム31毎に固有の相関関係がある。従って、予めこの相関関係を求めておけば、第1の限外ろ過膜39の出口圧力の変動を所定の範囲に収めることが可能な変更パターンを、タイマー制御を用いて実現することができる。
【0021】
以下、他の実施形態について、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態と同様である。
【0022】
(第2の実施形態)
図4に、第2の実施形態に係る純水製造装置のサブシステム31の概略構成を示す。本実施形態では、第2のポンプ38の代わりに第2の弁V2の開度を制御する。第1の弁V1と第2の弁V2と圧力計PIが制御部40に接続されており、圧力計PIの測定値に応じて第1の弁V1と第2の弁V2の開度が調整される。具体的には、制御部40は、第1の限外ろ過膜39の出口圧力が増加したときは第2の弁V2の開度を増し(または開き)、それによって第1の限外ろ過膜39の出口圧力を減少させる。制御部40は、第1の限外ろ過膜39の出口圧力が減少したときは第2の弁V2の開度を減じ(または閉じ)、それによって第1の限外ろ過膜39の出口圧力を増加させる。リターンラインL4のバイパスラインL5の合流部の下流側に破線で示す別の弁V6を設け、2つの弁V2,V6の開度を制御することも可能である。あるいは第1のポンプ33または第2のポンプ38の出口弁(図示せず)の開度を制御することも可能である。
【0023】
(第3の実施形態)
図5に、第3の実施形態に係る純水製造装置のサブシステム31の概略構成を示す。本実施形態では、第1の濃縮水返送ラインL3から分岐する第2の濃縮水返送ラインL6が設けられている。第2の濃縮水返送ラインL6は、第1の限外ろ過膜39の濃縮水を第1の限外ろ過膜39の透過水の返送先より上流に返送する。濃縮水の返送先は特に限定されないが、本実施形態では濃縮水は一次純水システム21の一次処理水タンク22に返送される。第1の濃縮水返送ラインL3の第2の濃縮水返送ラインL6の分岐部の下流側に第3の弁V3が、第2の濃縮水返送ラインL6に第4の弁V4が設けられている。第3の弁V3と第4の弁V4は本実施形態における濃縮水流量調整手段を構成する。
【0024】
第3及び第4の弁V3,V4並びに第1及び第2のパーティクルカウンタPC1,PC2は制御部40に接続されている。第1及び第2のパーティクルカウンタPC1,PC2、特に第2のパーティクルカウンタPC2で測定した微粒子数が所定の許容値より少ないときは、第3の弁V3が全開とされ、第4の弁V4が閉じられる。このときのサブシステム31の構成は第1の実施形態と同じである。許容値に対し微粒子数の余裕が少なくなったとき、または許容値と同程度となったときは、第3の弁V3と第4の弁V4がそれぞれ50%開かれる。濃縮水の半分が一次処理水タンク22に返送され、一次純水システム21で処理されるため、サブシステム31の超純水の水質が改善される。微粒子数が許容値を超えたときは第3の弁V3が閉じられ、第4の弁V4が全開とされる。濃縮水の全量が一次処理水タンク22に返送され、一次純水システム21で処理されるため、サブシステム31の超純水の水質が改善される。第1の濃縮水返送ラインL3と第2の濃縮水返送ラインL6への濃縮水の流量の分配はこの例に限らず、適宜設定することができる。換言すれば、本実施形態では、濃縮水流量調整手段(第3の弁V3、第4の弁V4)は、微粒子検出手段の微粒子検出結果に応じて、第2の濃縮水返送ラインL6を流れる濃縮水の流量を調整する。このため、超純水の水質が良好なときはユースポイント51に供給される超純水の流量を増加し、超純水の水質が低下したときは超純水の水質を回復させることができる。なお、第1及び第2のパーティクルカウンタPC1,PC2の測定値を作業員が監視し、第3の弁V3と第4の弁V4の開度調整を手動で行ってもよい。
【0025】
(第4の実施形態)
図6に、第4の実施形態に係る純水製造装置のサブシステム31の概略構成を示す。本実施形態では、第1の限外ろ過膜39の濃縮水をろ過する第2の限外ろ過膜42が、第1の濃縮水返送ラインL3に設けられている。第2の限外ろ過膜42の透過水は第1の限外ろ過膜39の上流に返送され、第2の限外ろ過膜42の濃縮水は第3の濃縮水返送ラインL7を通って、透過水の返送先より上流に返送される。透過水と濃縮水の返送先は特に限定されないが、本実施形態では透過水はサブタンク32に返送され、濃縮水は一次純水システム21の一次処理水タンク22に返送される。第2の限外ろ過膜42を設けることで、サブタンク32に返送される濃縮水の水質が向上するため、第1の限外ろ過膜39の出口水の水質の低下が抑制される。
【0026】
(第5の実施形態)
図7に、第5の実施形態に係る純水製造装置のサブシステム31の概略構成を示す。本実施形態では、第4の実施形態における第1の弁V1が削除され、第3の濃縮水返送ラインL7に第5の弁V5が設けられている。従って、本実施形態では、濃縮水流量調整手段は第3の濃縮水返送ラインL7に設けられた第5の弁V5である。第5の弁V5の開度を調整することで第2の限外ろ過膜42の圧力損失が変化し、それによって第1の濃縮水返送ラインL3の濃縮水の流量を制御することができる。本実施形態では、第1の濃縮水返送ラインL3の濃縮水の流量が間接的に制御されるため、第5の弁V5の開度の変化に対する、第1の濃縮水返送ラインL3を流れる濃縮水の流量の変化の応答性が鈍化し、第1の実施形態において第1の弁V1を緩やかに操作したのと同様の効果が得られる。なお、第1の弁V1は設けたままとして、濃縮水流量調整手段としての機能を第5の弁V5だけで行うようにしてもよい。
【0027】
(第6の実施形態)
図8に、第6の実施形態に係る純水製造装置のサブシステム31の概略構成を示す。本実施形態では、複数のサブシステム31A,31B,31Cが並列に設けられている。サブタンク32とユースポイント51との間に複数の主ラインL2A,L2B,L2Cが並列に設けられ、各主ラインL2A,L2B,L2Cに沿ってサブシステム31A,31B,31Cの前段浄化ユニット41A,41B,41Cと第1の限外ろ過膜39A,39B,39Cが配置されている。換言すれば、第1の実施形態の前段浄化ユニット41A及び第1の限外ろ過膜39Aと、他の前段浄化ユニット41B,41C及び他の第1の限外ろ過膜39B,39Cとが並列に設けられ、各第1の限外ろ過膜39A,39B,39Cはユースポイント51に接続され、ユースポイント51に超純水を供給する。各主ラインL2A,L2B,L2Cにはそれぞれ第1の弁V1A,V1B,V1Cが設けられ、主ラインL2A,L2B,L2Cは合流して第2の限外ろ過膜42に接続されている。第2の限外ろ過膜42には各サブシステム31A,31B,31Cの第1の限外ろ過膜39A,39B,39Cの濃縮水が供給される。つまり、第2の限外ろ過膜42は複数のサブシステム31A,31B,31Cで共用されている。各サブシステム31A,31B,31Cの第1の限外ろ過膜39A,39B,39Cの濃縮水の流量は小さいため、第2の限外ろ過膜42を共用することで、超純水製造装置1のコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 超純水製造装置
33 第1のポンプ
33A 第1のインバータ
38 第2のポンプ
38A 第2のインバータ
39 第1の限外ろ過膜
40 制御部
42 第2の限外ろ過膜
51 ユースポイント
L2 主ライン
L3 第1の濃縮水返送ライン
L4 リターンライン
L5 バイパスライン
L6 第2の濃縮水返送ライン
L7 第3の濃縮水返送ライン
PC1,PC2 微粒子検出手段(第1及び第2のパーティクルカウンタ)
PI 圧力計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユースポイントに接続され、前記ユースポイントに超純水を供給する第1の限外ろ過膜と、
前記第1の限外ろ過膜の濃縮水を前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインと、
前記第1の限外ろ過膜の出口圧力を測定する圧力計と、
前記濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段と
前記濃縮水流量調整手段の作動を制御する制御部と、
前記第1の限外ろ過膜に接続され、前記第1の限外ろ過膜を透過した超純水を、前記ユースポイントを迂回して前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する超純水返送ラインと、
前記超純水返送ラインに設けられた弁と、を有し、
前記制御部は、前記濃縮水の流量が変化したときに前記圧力計で測定された前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように、前記圧力計で測定された前記出口圧力に応じて、前記超純水返送ラインに設けられた前記弁を制御する、超純水製造装置。
【請求項2】
前記濃縮水流量調整手段は、前記第1の濃縮水返送ラインに設けられた弁であり、前記制御部は、前記濃縮水流量調整手段の該弁の作動を制御する、請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項3】
ユースポイントに接続され、前記ユースポイントに超純水を供給する第1の限外ろ過膜と、
前記第1の限外ろ過膜の濃縮水を前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインと、
前記第1の限外ろ過膜の出口圧力を測定する圧力計と、
前記濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段と、
前記第1の濃縮水返送ラインから分岐して、前記第1の限外ろ過膜の濃縮水を前記第1の限外ろ過膜の透過水の返送先より上流に返送する第2の濃縮水返送ラインと、
前記第1の限外ろ過膜の入口と出口の少なくともいずれかに設けられた微粒子検出手段と、を有し、
前記濃縮水流量調整手段は、前記濃縮水の流量が変化したときに前記圧力計で測定された前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように、前記微粒子検出手段の微粒子検出結果に応じて、前記第2の濃縮水返送ラインを流れる前記濃縮水の流量を調整する、超純水製造装置。
【請求項4】
ユースポイントに接続され、前記ユースポイントに超純水を供給する第1の限外ろ過膜と、
前記第1の限外ろ過膜の濃縮水を前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインと、
前記第1の限外ろ過膜の出口圧力を測定する圧力計と、
前記濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段と、
前記第1の濃縮水返送ラインに設けられ、前記第1の限外ろ過膜の濃縮水をろ過し、透過水を前記第1の限外ろ過膜の上流に返送する第2の限外ろ過膜と、
前記第2の限外ろ過膜の濃縮水を前記透過水の返送先より上流に返送する第3の濃縮水返送ラインと、
を有し、
前記濃縮水流量調整手段は前記第3の濃縮水返送ラインに設けられた弁であり、前記弁は、前記濃縮水の流量が変化したときに前記圧力計で測定された前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように操作可能である、超純水製造装置。
【請求項5】
前記超純水返送ラインに設けられた弁を有する、請求項4に記載の超純水製造装置。
【請求項6】
前記ユースポイントに接続され、前記第1の限外ろ過膜と並列に設けられ、前記ユースポイントに超純水を供給する他の第1の限外ろ過膜を有し、
前記第1の限外ろ過膜の濃縮水と前記他の第1の限外ろ過膜の濃縮水が前記第2の限外ろ過膜に供給される、請求項4または5に記載の超純水製造装置。
【請求項7】
前記制御部は前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が前記所定の範囲に収まるように、前記濃縮水流量調整手段の作動を制御する、請求項3から6のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項8】
前記濃縮水流量調整手段は、前記第1の濃縮水返送ラインに設けられた弁であり、前記制御部は、前記濃縮水流量調整手段の該弁の作動を制御する、請求項に記載の超純水製造装置。
【請求項9】
前記第1の限外ろ過膜の上流に位置するポンプを有し、
前記制御部は、前記第1の限外ろ過膜の前記出口圧力の変動が前記所定の範囲に収まるように、前記圧力計で測定された前記出口圧力に応じて前記ポンプを制御する、請求項またはに記載の超純水製造装置。
【請求項10】
前記所定の範囲は0.02MPa以内、前記第1の限外ろ過膜の運転時出口圧力の5%以内のいずれかである、請求項1からのいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の超純水製造装置は、ユースポイントに接続され、ユースポイントに超純水を供給する第1の限外ろ過膜と、第1の限外ろ過膜の濃縮水を第1の限外ろ過膜の上流に返送する第1の濃縮水返送ラインと、第1の限外ろ過膜の出口圧力を測定する圧力計と、濃縮水の流量を調整する濃縮水流量調整手段と、を有している。
一つの態様では、超純水製造装置は濃縮水流量調整手段の作動を制御する制御部と、第1の限外ろ過膜に接続され、第1の限外ろ過膜を透過した超純水を、ユースポイントを迂回して第1の限外ろ過膜の上流に返送する超純水返送ラインと、超純水返送ラインに設けられた弁と、を有し、制御部は、濃縮水の流量が変化したときに圧力計で測定された第1の限外ろ過膜の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように、圧力計で測定された出口圧力に応じて、超純水返送ラインに設けられた弁を制御する。
他の態様では、超純水製造装置は第1の濃縮水返送ラインから分岐して、第1の限外ろ過膜の濃縮水を第1の限外ろ過膜の透過水の返送先より上流に返送する第2の濃縮水返送ラインと、第1の限外ろ過膜の入口と出口の少なくともいずれかに設けられた微粒子検出手段と、を有し、濃縮水流量調整手段は、濃縮水の流量が変化したときに圧力計で測定された第1の限外ろ過膜の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように、微粒子検出手段の微粒子検出結果に応じて、第2の濃縮水返送ラインを流れる濃縮水の流量を調整する。
さらに他の態様では、超純水製造装置は第1の濃縮水返送ラインに設けられ、第1の限外ろ過膜の濃縮水をろ過し、透過水を第1の限外ろ過膜の上流に返送する第2の限外ろ過膜と、第2の限外ろ過膜の濃縮水を透過水の返送先より上流に返送する第3の濃縮水返送ラインと、を有し、濃縮水流量調整手段は第3の濃縮水返送ラインに設けられた弁であり、弁は、濃縮水の流量が変化したときに圧力計で測定された第1の限外ろ過膜の出口圧力の変動が所定の範囲に収まるように操作可能である。