(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170392
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ステータおよびそのステータを備えた回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/25 20160101AFI20221102BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076486
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000253075
【氏名又は名称】澤藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂野 望
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 昴大
【テーマコード(参考)】
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ20
5H609RR48
5H609RR50
5H609SS17
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】高出力の回転電機1において特に高温となる、巻線5のうちの最内周の巻線52の温度を正しく測定できる温度測定器Sの配置構造を提供する。
【解決手段】
回転電機1が備えるステータ3であって、円環状のステータ本体31と、ステータ本体31のスロット8に挿入されて分布巻きされる複数の巻線5と、前記巻線5に接することにより前記巻線5の温度を測定する温度測定器Sとを備え、温度測定器Sは、ステータ本体31の軸方向一方側において、該ステータ本体31から突出する前記巻線5のうちの最内周の一つの巻線52に当接している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機が備えるステータであって、
円環状のステータ本体と、
前記ステータ本体のスロットに挿入されて分布巻きされる複数の巻線と、
前記巻線に接することにより前記巻線の温度を測定する温度測定器とを備え、
前記温度測定器は、前記ステータ本体の軸方向一方側において、該ステータ本体から突出する前記巻線のうちの最内周の一つの巻線に当接していることを特徴とするステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータであって、
前記温度測定器を前記一つの巻線に保持する拘束部材を備えており、前記温度測定器は、前記拘束部材により前記一つの巻線に当接することを特徴とするステータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のステータであって、
前記ステータ本体の前記軸方向一方側から外方に向けて突出する凸部を備え、前記凸部は、前記一つの巻線を挟んで前記温度測定器と対向する位置に配置されて、前記一つの巻線を前記温度測定器の逆側から支持することを特徴とするステータ。
【請求項4】
請求項3に記載のステータであって、
前記巻線の各々は、該巻線を構成する複数のU字状のセグメントの両脚部を、前記ステータ本体の2つのスロットに前記軸方向一方側から各々挿入し、前記軸方向他方側から突出する前記各セグメントの両脚部の先端を、それぞれ別のセグメントの脚部の先端に接合することで構成されており、前記軸方向一方側から突出して両脚部の基部同士を接続する前記各セグメントの中間部には、前記ステータ本体から突出する両脚部の各々の基部を他方の基部に向けて屈曲させた屈曲部が形成され、該屈曲部は、外方に向けて突出する前記凸部の先端部に当接していることを特徴とするステータ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のステータであって、
前記軸方向で前記ステータ本体の両側には、該ステータ本体を保護するエンドプレートが設けられており、前記エンドプレートは、前記ステータ本体のスロットに対応する位置に設けられて前記巻線が挿入されるスロットと、該スロットの一部に形成されて前記温度測定器が挿入される温度測定器挿入部とを有することを特徴とするステータ。
【請求項6】
請求項5に記載のステータであって、
前記エンドプレートは、前記軸方向に突出して前記巻線を支持する凸部を更に有し、前記一つの巻線を挟んで前記温度測定器と対向する位置に配置された前記凸部は、前記一つの巻線を前記温度測定器の逆側から支持することを特徴とするステータ。
【請求項7】
請求項6に記載のステータであって、
前記ステータ本体から突出する前記軸方向他方側の巻線は、周方向に隣接する前記巻線に向かって傾斜して伸びる傾斜部を備えており、前記軸方向他方側の前記エンドプレートから突出する前記凸部の先端部には、前記傾斜部と同方向に傾斜する傾斜面が形成されることを特徴とするステータ。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れかに記載のステータを備えた回転電機であって、
前記巻線を冷却する冷却液が流れると共に、前記冷却液を前記巻線に液滴する液滴部が形成された冷却路を備え、
前記ステータの軸線を重力方向と直交する向きに配置したときに、前記液滴部は前記ステータを囲むケーシングの上部に配置されて、該液滴部から液滴された冷却液が前記ケーシングの下方に配置された冷却液溜まり部に溜まるようにし、
前記温度測定器は、重力方向で前記液滴部と前記冷却液溜まり部との間の位置に配置されることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8の回転電機であって、
前記ハウジングは、前記ステータと、該ステータの内側に配置されるロータとを収容しており、
前記巻線を構成する複数のU字状のセグメントの両脚部が、前記ステータの前記軸方向他方側でそれぞれ別のセグメントの脚部と接合されており、
前記温度測定器が前記ステータの前記軸方向一方側に配置されていて、前記ハウジングの前記軸方向一方側には、前記温度測定器のケーブルを外部に延出するための貫通孔が形成されていることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状のステータ本体と、前記ステータ本体のスロットに挿入されて分布巻きされる複数の巻線と、前記巻線の温度を測定する温度測定器とを備えたステータおよびそのステータを備えた回転電機に関し、特に、車載用回転電機として好適に用いられる回転電機のステータにおける温度測定器の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用回転電機は、ステータの巻線に電流が流れると巻線が発熱してステータの温度が上昇し、ステータが所定温度以上に上昇するとステータを構成する部品の一部が熱により損傷する恐れがあるので、温度検出素子をステータに設置してステータの温度を検出することが、特許文献1に開示されているように公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたものでは、ステータの一つのスロットの最外周の巻線と該スロットの径方向外端の壁面との間の空間に、ウェッジまたは絶縁樹脂を介して温度検出素子を配置しているので、高出力の回転電機において特に高温となる最内周の巻線の温度を測定できないばかりでなく、温度検出素子が巻線に直接接触しないので温度の測定が正確でない。しかも温度検出素子がステータのスロット内部に配置されるので、信号線にノイズが入り込むことが避けられない。
【0005】
そこで本発明は、ステータのスロットに挿入されて分布巻きされる複数の巻線を備えた高出力の回転電機において、特に高温となる、巻線のうちの最内周の巻線の温度を正しく測定できると共に、巻線に直接接触させることで温度の測定が正確となり、更に温度検出素子を巻線のステータ本体から突出する部分に配置することで、信号線にノイズが入り込むことがない温度測定器の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、回転電機が備えるステータであって、円環状のステータ本体と、前記ステータ本体のスロットに挿入されて分布巻きされる複数の巻線と、前記巻線に接することにより前記巻線の温度を測定する温度測定器とを備え、前記温度測定器は、前記ステータ本体の軸方向一方側において、該ステータ本体から突出する前記巻線のうちの最内周の一つの巻線に当接していることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記温度測定器を前記一つの巻線に保持する拘束部材を備えており、前記温度測定器は、前記拘束部材により前記一つの巻線に当接することを第2の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記ステータ本体の前記軸方向一方側から外方に向けて突出する凸部を備え、前記凸部は、前記一つの巻線を挟んで前記温度測定器と対向する位置に配置されて、前記一つの巻線を前記温度測定器の逆側から支持することを第3の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第3の特徴に加えて、前記巻線の各々は、該巻線を構成する複数のU字状のセグメントの両脚部を、前記ステータ本体の2つのスロットに前記軸方向一方側から各々挿入し、前記軸方向他方側から突出する前記各セグメントの両脚部の先端を、それぞれ別のセグメントの脚部の先端に接合することで構成されており、前記軸方向一方側から突出して両脚部の基部同士を接続する前記各セグメントの中間部には、前記ステータ本体から突出する両脚部の各々の基部を他方の基部に向けて屈曲させた屈曲部が形成され、該屈曲部は、外方に向けて突出する前記凸部の先端部に当接していることを第4の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記軸方向で前記ステータ本体の両側には、該ステータ本体を保護するエンドプレートが設けられており、前記エンドプレートは、前記ステータ本体のスロットに対応する位置に設けられて前記巻線が挿入されるスロットと、該スロットの一部に形成されて前記温度測定器が挿入される温度測定器挿入部とを有することを第5の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第5の特徴に加えて、前記エンドプレートは、前記軸方向に突出して前記巻線を支持する凸部を更に有し、前記一つの巻線を挟んで前記温度測定器と対向する位置に配置された前記凸部は、前記一つの巻線を前記温度測定器の逆側から支持することを第6の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第6の特徴に加えて、前記ステータ本体から突出する前記軸方向他方側の巻線は、周方向に隣接する前記巻線に向かって傾斜して伸びる傾斜部を備えており、前記軸方向他方側の前記エンドプレートから突出する前記凸部の先端部には、前記傾斜部と同方向に傾斜する傾斜面が形成されることを第7の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1~第7の何れかの特徴のステータを備えた回転電機であって、 前記巻線を冷却する冷却液が流れると共に、前記冷却液を前記巻線に液滴する液滴部が形成された冷却路を備え、前記ステータの軸線を重力方向と直交する向きに配置したときに、前記液滴部は前記ステータを囲むケーシングの上部に配置されて、該液滴部から液滴された冷却液が前記ケーシングの下方に配置された冷却液溜まり部に溜まるようにし、前記温度測定器は、重力方向で前記液滴部と前記冷却液溜まり部との間の位置に配置されることを第8の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第8の特徴に加えて、前記ハウジングは、前記ステータと、該ステータの内側に配置されるロータとを収容しており、前記巻線を構成する複数のU字状のセグメントの両脚部が、前記ステータの前記軸方向他方側でそれぞれ別のセグメントの脚部と接合されており、前記温度測定器が前記ステータの前記軸方向一方側に配置されていて、前記ハウジングの前記軸方向一方側には、前記温度測定器のケーブルを外部に延出するための貫通孔が形成されていることを第9の特徴とする。
【0015】
なお、実施形態のサーミスタSは本発明の温度測定器に対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、温度測定器が、ステータ本体の軸方向一方側において、該ステータ本体から突出する巻線のうちの最内周の一つの巻線に当接しているので、高出力の回転電機において特に高温となる、巻線のうちの最内周の巻線の温度を、巻線に当接させた温度測定器で正確に測定できる。しかも、温度検出素子が巻線のステータ本体から突出する部分に配置されていることで、信号線にノイズが入り込むことを防止できるから、その観点からも温度測定の精度が向上する。
【0017】
また本発明の第2の特徴によれば、温度測定器を前記一つの巻線に保持する拘束部材を備えており、前記温度測定器は、前記拘束部材により前記一つの巻線に当接するので、温度測定器と前記一つの巻線との接触面積を安定的に確保できて、温度測定の精度を確保することができる。
【0018】
また本発明の第3の特徴によれば、ステータ本体の軸方向一方側から外方に向けて突出する凸部を備え、該凸部は、前記一つの巻線を挟んで前記温度測定器と対向する位置に配置されて、前記一つの巻線を前記温度測定器の逆側から支持するので、温度測定器が当接する前記一つの巻線を安定的に支持することで、温度測定の精度の確保を確実にすることができる。
【0019】
また本発明の第4の特徴によれば、巻線の各々は、該巻線を構成する複数のU字状のセグメントの両脚部を、ステータ本体の2つのスロットに前記軸方向一方側から各々挿入し、前記軸方向他方側から突出する各セグメントの両脚部の先端を、それぞれ別のセグメントの脚部の先端に接合することで構成されるので、セグメント両脚部のスロットへの挿入時に、ステータ本体の軸方向一方側から突出する各セグメントの中間部の高さ位置を一つに定め難いが、前記挿入時に、各セグメントの中間部に形成された屈曲部がステータ本体から突出する凸部の先端部に当接して、両脚部のスロットへの更なる挿入を規制するから、該挿入時におけるセグメントの中間部の高さ位置を一つに定めることができる。しかも、巻線がそれ以上スロット内に侵入しないことで、前記温度測定器の逆側から前記凸部で支持する巻線の長さも確保できるので、温度測定の精度を高めることができる。
【0020】
また本発明の第5の特徴によれば、ステータ本体の両側には、巻線が挿入されるスロットを、ステータ本体のスロットと対応する位置に有するエンドプレートが設けられるので、該エンドプレートでステータ本体を軸方向両側から保護できる。しかも該エンドプレートのスロットの一部には、温度測定器が挿入される温度測定器挿入部が形成されるので、該温度測定器挿入部に温度測定器を挿入することで、温度測定器の取付位置をコイルエンドの内端よりも外側の位置に確保できる。そのため温度測定器を最内周の巻線に当接させても該温度測定器がステータの内側にはみ出すことがなくて、温度測定器がロータをステータの内側に挿入する際の障害となることがないばかりでなく、それが温度測定器挿入部に挿入されることで、温度測定器と巻線との位置関係が一義的に定まって巻線の温度をより安定的に測定でき、しかも温度測定器の故障も生じ難くなる。
【0021】
また本発明の第6の特徴によれば、エンドプレートは、軸方向に突出して前記巻線を支持する凸部を更に有し、前記一つの巻線を挟んで温度測定器と対向する位置に配置された凸部は、前記一つの巻線を温度測定器の逆側から支持するので、温度測定器が当接する前記一つの巻線を安定的に支持することができて、温度測定の精度の確保を確実にすることができる。しかもこの凸部はエンドプレートに形成されるので、そのような凸部を簡単に形成することができる。
【0022】
また本発明の第7の特徴によれば、ステータ本体から突出する軸方向他方側の巻線が、周方向に隣接する巻線に向かって傾斜して伸びる傾斜部を備えていても、軸方向他方側のエンドプレートから突出する凸部の先端部に、前記傾斜部と同方向に傾斜する傾斜面が形成されるので、傾斜する前記巻線と凸部とが互いに干渉し合うことがない。そのため、ステータ本体の両側に設けられるエンドプレートの凸部を共通化できるので、該両側のエンドプレートを共通のエンドプレートとして形成することができると共に、ステータ本体の他方向側から突出する巻線も安定的に支持できる。
【0023】
また本発明の第8の特徴によれば、第1~第7の何れかの特徴のステータを備えた回転電機が、前記巻線を冷却する冷却液が流れると共に、前記冷却液を前記巻線に液滴する液滴部が形成された冷却路を備え、ステータの軸線を重力方向と直交する向きに配置したときに、前記液滴部はステータを囲むケーシングの上部に配置されて、該液滴部から液滴された冷却液がケーシングの下方に配置された冷却液溜まり部に溜まるようにし、温度測定器は、重力方向で前記液滴部と前記冷却液溜まり部との間の位置に配置されるので、温度測定器の位置を液滴部および冷却液溜まり部の双方から離すことができる。そのため、温度測定器に対する冷却液の影響を極力排除できるから、巻線の温度をより高精度に測定することができる。
【0024】
また本発明の第9の特徴によれば、回転電機のハウジングは、ステータと該ステータの内側に配置されるロータとを収容しており、巻線を構成する複数のU字状のセグメントの両脚部が、ステータの軸方向他方側でそれぞれ別のセグメントの脚部と接合されて、温度測定器がステータの軸方向一方側に配置されており、ハウジングの軸方向一方側には、温度測定器のケーブルを外部に延出するための貫通孔が形成されているので、温度測定器からハウジングの端面までの距離を短くできてケーブルの長さも短くできるから、ケーブルの断線等の危険性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転電機の軸方向に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、巻線部分を概略的に記載した
図1の2-2断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るステータのステータ本体およびエンドプレートの斜視図である。
【
図4】
図4は、1つのスロット内に積層・整列される複数のセグメントの脚部の配置を示す平面図である。
【
図5】
図5は、一部のスロットと、そのスロットに挿入されるセグメントの斜視図である。
【
図6】
図6は、U1相を構成する相巻線の巻回の具体的な形態を示す図で、
図6(A)はステータ本体4のスロットをハウジングの蓋体とは逆側(軸方向一方側)から見た図であり、
図6(B)はステータ本体4のスロットをハウジングの蓋体側(軸方向他方側)から見た図である。
【
図7】
図7は、U2相を構成する相巻線の巻回の具体的な形態を示す図で、
図7(A),(B)は、
図6(A),(B)と同様の図である。
【
図8】
図8は、巻線部分を概略的に記載したステータをステータ本体の一方向側の内側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、
図8のステータをステータ本体の他方向側の内側から見たときの巻線の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【第1の実施形態】
【0027】
本実施形態のステータおよび回転電機は、特に車載用回転電機に好適に用いられるものであって、その回転電機1は、
図1に示すように、有底筒状のハウジング本体21および該ハウジング本体21の開口部を覆う蓋体22を有するハウジング2と、該ハウジング2の内部に固定された円筒状のステータ3と、このステータ3と対向して該ステータ3の内周側に配置され、回転軸41を介して前記ハウジング2に回転可能に支承されたロータ4とを備えている。
【0028】
図2も併せて参照して、この回転電機1のハウジング本体21には、ステータ3のステータ本体31と該ステータ本体31に巻回された巻線5とに冷却用の冷却液を供給する冷却路6が設けられている。この冷却路6は、ハウジング2の蓋体22側に形成された図示せぬ導入口からハウジング2内に導入された冷却液を、ステータ3の軸線を重力方向と直行する向きに配置した状態で、ステータ3の上部にステータ3の軸線と平行に配置した左右一対のパイプ部材61,62から、各巻線5のコイルエンド51と、ステータ本体31の外周面32とに矢印Aのように滴下するものであり、これらのパイプ部材61,62の液滴部63から滴下された冷却液は、巻回された巻線5の一部を浸漬するようにしてハウジング本体21の下方に配置される冷却液溜まり部7に溜まり、一定量を超えた冷却液は、ハウジング2の蓋体22側に形成されたドレン口71からハウジング2外に排出される。なお、
図2において符号S′で示す位置は、この位置と対向するステータ本体31の逆側の部位に、後述するサーミスタSが配置される位置を示している。
【0029】
ハウジング2に回転可能に支承されたロータ4は、ステータ3の内周面に対向する円筒状の外周面に沿って配置された図示せぬ複数個の永久磁石を有している。また、そのロータ4を囲むようにして円筒状に形成されたステータ3は、薄板の電磁鋼板33が複数積層されて複数の長尺ボルト34で固定されて成るステータ本体31と、該ステータ本体31の後述するスロットに巻回された巻線5とで構成され、前記ステータ本体31が図示せぬ固定手段によってハウジング本体21内に固定されている。
【0030】
円筒状のステータ本体31には、
図3で示すように、巻線5の挿入される複数個のスロット81が、周方向に等間隔で並んで形成されており、ステータ本体31の軸方向両側(
図3の上下両側)には、ステータ本体31のスロット81と同じ位置にスロット82を形成された合成樹脂製のエンドプレート9が、ステータ本体31を軸方向両側から保護するようにして該ステータ本体31に密着配置される。
【0031】
本実施形態では、このようなスロット81,82の組が48組形成され、各々のスロット81,82の組には、巻線5を構成する後述する複数のセグメントの脚部10a,10bが、
図4に示すように、インシュレータ11を介してステータ本体31の径方向最内周側の第1層L1から最外周側の第8層L8までの8つの層に分かれて積層・整列して収容されるが、スロットの数や各スロットに収容される巻線5の層数はこれに限定されるものではない。なお、これらのスロット81,82は協働して一つのスロット8を構成するので、以下の説明では、スロット81,82を区別して説明する必要がある場合を除き、これらを併せて単に「スロット8」と呼び、またステータ本体31の周方向に並ぶそれらのスロット8を一つ一つ区別して呼ぶときは、任意のスロット8から右回りに順番に、第1スロット~第48スロットと呼ぶ。また、エンドプレート9は、必ずしも必要なものではないので、以下の説明でスロット8と呼ぶものの中には、スロット82を有せずにスロット81のみで構成されるスロットも含まれるものとする。
【0032】
巻線5を構成する各セグメント10は、
図5に示すように、相互に離間したステータ本体31の2つのスロット8に、ステータ本体31の軸方向一方側(本実施形態では、
図1における蓋体2bの逆側)から挿入される左右の脚部10a,10bと、これら左右の脚部10a,10bの基部10a1,10b1間を接続するようにして、ステータ本体31の前記軸方向一方側から突出する中間部10cとを有するU字状の平角線で形成されており、各セグメント10は、前記スロット8への挿入時に該スロット8の前記軸方向他方側から突出する両脚部10a,10bの先部10a2,10b2の先端10a3,10b3を除き、絶縁皮膜10d(
図4参照)で覆われている。
【0033】
各セグメント10の中間部10cは、間に幾つかのスロット8を挟んで離間する2つのスロット8に両脚部10a,10bを挿入するために、各セグメント10の取付位置に応じた複数の長さが設定されており、各中間部10cの前記各基部10a1,10b1との接続部には、各々の基部10a1,10b1を他方の基部10b1,10a1に向けて屈曲させた屈曲部10eが形成されている。また、各中間部10cの中間位置には、両脚部10a,10bを前記2つのスロット8の整列順序の異なる2つの層に挿入するためのクランク部10fが形成されている。
【0034】
このような複数のセグメント10は、それらの脚部10a,10bが、ステータ本体31の前記軸方向一方側から、予め定められた特定のスロット8の特定の層にそれぞれ挿入された後、最内周側または最外周側の層に挿入された一部の脚部10a,10bを除き、ステータ本体31の前記軸方向他方側から突出する両方の先部10a2,10b2が、相互に近づく向きに折り曲げられ、折り曲げられた一方の先部の先端が、同じ位置に配置されて径方向で隣り合う別のセグメント10の他方の先部の先端と、溶接等により通電可能に接合され、これらのセグメント10が連なって1つの巻線5を形成することで、分布巻されたU相、V相、W相の1つの相の相巻線が構成される。
【0035】
本実施形態では、このような複数のセグメント10により、ステータ本体31の周方向に並ぶ48個のスロット6のうちの、第1,第2スロット、第7,第8スロット、第13,第14スロット、第19,第20スロット、第25,第26スロットに、U相を構成するU1相,U2相の2組の相巻線が巻回され、また、第25,第26スロット、第31,第32スロット、第37,第38スロット、第43,第44スロット、第1,第2スロットに、同じくU相を構成するU3相,U4相の2組の相巻線が巻回される。
【0036】
図6は、U1相を構成する相巻線の巻回の具体的な態様を示す図であり、
図6(A)はステータ本体31の軸方向一方側から挿入されるセグメント10の中間部10c側の配線状態を表し、
図6(B)はステータ本体31の軸方向他方側から突出するセグメント10の脚部10a,10bの先部10a2,10b2の配線状態を表している。また、両図において、横方向の番号はスロットの番号を表し、縦方向のL1~L8の番号はそのスロットの8つの層の番号を表している。また、スロット番号の上のアルファベットは、そのスロットに挿入される巻線の相を表しており、具体的には、第1,第2スロット等にはU層の巻線が挿入され、第3,第4スロット等にはV層の巻線が挿入され、第5,第6スロット等にはW層の巻線が挿入されることを示している。なお
図6、およびU2相の相巻線の巻回の態様を示す
図7においては、ステータ本体31の周方向に並ぶ各スロット8の各々の層L1~L8に挿入されるセグメント10を一つ一つ区別して呼ぶ必要があることから、これら
図6,
図7においては、U1相を構成するセグメントを、順番に第1,第2,第3・・・セグメントと呼ぶと共に、第1セグメントの両脚部を1a,1bと呼び、以下同様に第2,第3・・・セグメントの両脚部をそれぞれ2a,2b;3a,3b・・・と呼ぶ。
【0037】
図6(A)において、1a,1b;2a,2b・・・はスロットから突出する第1セグメント、第2セグメント・・・の両脚部の基端を夫々示すと共に、1a,1b;2a,2b・・・を夫々結ぶ線は第1セグメント、第2セグメント・・・の中間部を夫々示している。また、
図6(B)において、1a′,1b′;2a′,2b′・・・はスロットから突出する第1セグメント、第2セグメント・・・の両脚部の突出端を示すと共に、1a′,1b′;2a′,2b′・・・から延びる線は前記突出端で折り曲げられた第1セグメント、第2セグメント・・・の先部を夫々表している。また、
図6(B)において、それらの線の先端の黒く塗りつぶした部分は、2つの先部先端の通電可能に接合された箇所を夫々表している。
【0038】
図6(A)に示すように、ステータ本体4の軸方向一方側(
図1における蓋体2bの逆側)から、U1相を構成する第1セグメントの脚部1a,1bが第2スロットの第8層と第7スロットの第8層とに挿入され、同じくU1相を構成する第2,第3,第4セグメントの脚部2a,2b;3a,3b;4a,4bが、第2スロットの第7,5,3層と第7スロットの第6,4,2層とに夫々挿入され、同じくU1相を構成する第5セグメントの脚部5a,5bが、第2スロットの第1層と第8スロットの第1層とに挿入された後、
図6(B)に示すように、ステータ本体4の軸方向他方側(
図1における蓋体2b側)で、第1セグメントの一方の先部1a′が他方の先部1b′の反対側に折り曲げられて、その先端がU相の入力端子に接続されると共に、第1セグメントの他方の先部1b′と第2セグメントの一方の先部2a′、第2セグメントの他方の先部2b′と第3セグメントの一方の先部3a′、第3セグメントの他方の先部3b′と第4セグメントの一方の先部4a′、第4セグメントの他方の先部4b′と第5セグメントの一方の先部5a′とが、互いに接近する側に夫々折り曲げられて、それらの先端が通電可能に相互に接合される。また、第5セグメントの先部5b′は、先部5a′の反対側に折り曲げられて、その先端がステータ本体4の軸方向一方側から第8スロットの第3層と第14スロットの第2層とに挿入された第6セグメントの脚部6bの先部6b′の先端と通電可能に接合される。以下同様にして第16セグメントまで、数字の連続するセグメントの脚部の先部の先端同士が通電可能に接合されると共に、第16セグメントの一方の先部16a′の先端が、図示せぬU1相の中性点に接続されて、U1相の相巻線が構成される。
【0039】
U2相を構成する相巻線の巻回の態様は、
図7(A),(B)に示されるようなものであるが、その態様は、第16セグメントの一方の先部16a′の先端が図示せぬU2相の中性点に接続される点が異なるだけで、それ以外は
図6(A),(B)に示されるU1相と同様であるので特に説明はしない。また、U3相,U4相の2組の相巻線に関してもU1相,U2相と同様であるので、これらの説明も省略する。
【0040】
また、第3,第4スロットから始まって夫々5個おきに連なる第9,第10スロット、第15,第16スロット等のスロットル列には、V相を構成するV1~V4の相巻線が同様の態様で巻回され、第5,第6スロットから始まって夫々5個おきに連なる第11,第12スロット、第15,第16スロット等のスロットル列には、W相を構成するW1~W4の相巻線が同様の態様で巻回される。そして、これらのうちのU1,V1,W1の各端部と、U2,V2,W2の各端部と、U3,V3,W3の各端部と、U4,V4,W4の各端部とがそれぞれ中性点で結合されて、4列並列に分布巻きされた3層交流のU相巻き線、V相巻き線、W相巻き線が構成される。
【0041】
さて、本実施形態では、ステータ3の軸線を
図1のように重力方向と直行する向きに配置した状態において、ステータ本体31におけるハウジング2の蓋体22と逆側の、重力方向で液滴部63と冷却液溜まり部7との間の位置、即ち、ステータ本体31の軸方向一方側の、
図2の符号S′で示す位置と反対側の位置に、温度測定器としてのサーミスタSが設けられている。
【0042】
ステータ3をステータ本体31の一方向側から見た斜視図である
図8に示すように、サーミスタSは各セグメント10の挿入側であるステータ本体31の軸方向一方側の周方向最内周部に取り付けられており、そのサーミスタSから延びるケーブル12がハウジング2に形成された図示せぬ貫通孔を通してハウジング2の外部に延出されている。またサーミスタSは、
図8の9矢視拡大図である
図9に示すように、各セグメント10の挿入側であるステータ本体31の軸方向一方側において、該ステータ本体31から突出する前記巻線5のうちの最内周の一つの巻線52に当接するようにして、該最内周の巻線52のステータ本体からの突出部に拘束部材である熱収縮性チューブ13によって固定されている。その際、エンドプレート9がサーミスタSと干渉しないようにするために、サーミスタSが取り付けられる部分のエンドプレート9のスロット82には、
図3の11矢視拡大図である
図11に示すようなサーミスタSを挿入するためのサーミスタ挿入部83が、スロット82を切欠いて形成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、巻線5としてU字状の平角線で形成されたセグメント10を用いるので、最内周の巻線52に対応するセグメント10の脚部10aの先部10a2から熱収縮性チューブ13を挿入し、その熱収縮性チューブ13にサーミスタSを固定して、そのセグメント10をサーミスタ挿入部83の形成されたスロット8に挿入するだけで、最内周の一つの巻線52にサーミスタSを固定した巻線5を容易に形成することができる。しかも、本実施形態では、サーミスタSの形状が直方体であり、円柱状ではないため、平角線の前記巻線52と平面同士で接触し、安定した接触面積を確保することができる。なお、サーミスタSの形状は特に直方体に限定されるものではないが、断面が矩形であることが望ましい。
【0044】
図3に示すように、エンドプレート9のスロット82の周方向最内周側の外側面には複数の凸部91が形成されており、これら凸部91のうちの一つが、前記最内周の一つの巻線52を挟んで前記サーミスタSと対向する位置に突出し、該巻線52を
図9に示すようにサーミスタSの逆側から支持することで、サーミスタSが当接する巻線52を安定的に支持することができる。またこの凸部91は、各セグメント10をスロット6に挿入する時に、その先端部92が各セグメント10の中間部10cに形成された屈曲部10eに当接するので、挿入時におけるセグメント10の中間部10cの高さ位置を一つに定めることができる。
【0045】
しかも、
図8のステータ3をステータ本体31の他方向側から見たときの巻線5の拡大図である
図10に示すように、エンドプレート9をステータ本体の軸方向他方側に配置する場合でも、この凸部91の先端部92には、ステータ本体31の軸方向他方側で折り曲げられる各セグメント10の先部10a2,10b2の傾斜面53と同方向に傾斜する傾斜面93が形成されるので、エンドプレート9から突出する凸部91の先端部92が、ステータ本体31から突出して一方向に傾斜する軸方向他方側の巻線5と干渉し合うことがないと共に、ステータ本体31の他方向側から突出する巻線5をこの凸部91により安定的に支持することもできる。
【0046】
なお、前述したように、エンドプレート9は必ずしも必要なものではないので省略することも可能であるが、エンドプレート9を省略した場合には、ステータ本体31を構成する電磁鋼板33の最外層のものに前記凸部91を形成することも可能である。またエンドプレート9を用いるか用いないかに拘わらず、前記凸部91を省略することも可能である。また、エンドプレート9を用いない場合に前述したサーミスタ挿入部83が必要とされないことは言うまでもない。
【0047】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施形態の作用を説明する。
【0048】
本実施形態では、サーミスタSが、各セグメント10の挿入側であるステータ本体31の軸方向一方側において、ステータ本体31から突出する巻線5のうちの最内周の一つの巻線52に当接するようにして、該最内周の巻線52のステータ本体31からの突出部に拘束部材である熱収縮性チューブ13によって固定されている。そのため、高出力の回転電機1において特に高温となる、巻線5のうちの最内周の巻線52の温度を、巻線5に当接させることで巻線5との接触面積を安定的に確保したサーミスタSで正確に計測できる。しかもこのサーミスタSは、巻線5のステータ本体31から突出する部分に配置されているから、信号線にノイズが入り込むことを防止できて温度測定の計測精度を向上させることができる。
【0049】
ステータ本体31の軸方向両側には、ステータ本体31のスロット81と同じ位置にスロット82が形成された合成樹脂製のエンドプレート9が、ステータ本体31に密着するように配置されるので、ステータ本体31を軸方向両側から保護することができる。しかもこのエンドプレート9には、サーミスタSを挿入するためのサーミスタ挿入部83がスロット82を切欠いて形成されているので、サーミスタSをそのサーミスタ挿入部83に取り付けることで、サーミスタSの取付位置をコイルエンドの内端(径方向で最も内側の巻線5の内端)よりも外側に確保できる。そのため、サーミスタSを最内周の巻線52に当接させても該サーミスタSがステータ3の内側にはみ出すことがなく、サーミスタSがロータ4をステータ3の内側に挿入する際の障害となることがない。その上、サーミスタSがサーミスタ挿入部83に挿入されることで、サーミスタSと巻線52との位置関係が一義的に定まると共に、サーミスタSの故障も生じ難くなる。
【0050】
しかも、エンドプレート9の周方向最内周側の外側面には複数の凸部91が形成され、該凸部91はステータ本体31の軸方向に突出して巻線5を支持すると共に、サーミスタSに当接する巻線52を挟んで該サーミスタSと対向する位置に配置された凸部91は、前記巻線52をサーミスタSの逆側から支持するので、サーミスタSの当接する巻線52を安定的に支持することができて、温度測定の精度の確保を確実にすることができる。しかもこの凸部91はエンドプレート9に形成されるので、それを簡単に形成することができる。
【0051】
また、巻線5の各々は、該巻線5を構成する複数のU字状のセグメント10の両脚部10a,10bを、ステータ本体31の2つのスロット8に前記軸方向一方側から各々挿入し、前記軸方向他方側から突出する各セグメント10の両脚部10a,10bの先端10a3,10b3を、それぞれ別のセグメントの脚部10a,10bの先端10a3,10b3に接合することで構成されるので、高出力の回転電機1を容易に製造することができる。その際、セグメント両脚部10a,10bのスロット8への挿入時に、ステータ本体31の軸方向一方側から突出する各セグメント10の中間部10cの高さ位置を一つに定め難いのであるが、セグメント10の脚部10a,10bの挿入時に、各セグメント10の中間部10cに形成された屈曲部10eがステータ本体31から突出する凸部91の先端部92に当接して、両脚部10a,10bのスロット8への更なる挿入を規制するので、該挿入時におけるセグメント10の中間部10cの高さ位置を一つに定めることができる。しかも、巻線5がそれ以上スロット8内に侵入しないことで、サーミスタSの逆側から前記凸部91で支持する巻線52の長さも確保できるので、温度測定の精度を高めることができる。
【0052】
スロット8の軸方向他方側から突出するU字状のセグメント10の両脚部10a,10bの先部10a2,10b2は、相互に接近する向きに折り曲げられるので、ステータ本体31の軸方向他方側の巻線5は、周方向に隣接する巻線5に向かって傾斜して伸びる傾斜部53を備えるが、軸方向他方側のエンドプレート9から突出する凸部91の先端部92には、前記傾斜部53と同方向に傾斜する傾斜面93が形成されるので、傾斜する前記巻線5と凸部91とが互いに干渉し合うことがない。そのため、ステータ本体31の両側に設けられるエンドプレート9の凸部91を共通化できるので、該両側のエンドプレート9を共通のエンドプレート9として形成することができると共に、ステータ本体31の他方向側から突出する巻線5も安定的に支持できる。
【0053】
また、ステータ3とロータ4とを収容するハウジング2には、巻線5を冷却する冷却液が流れると共に冷却液を巻線5に液滴する液滴部63が形成された冷却路6が形成され、ステータ3の軸線を重力方向と直交する向きに配置したときに、前記液滴部63はステータ3を囲むケーシング2の上部に配置されて、サーミスタSが、重力方向で前記液滴部63と該液滴部63から液滴された冷却液が溜まる冷却液溜まり部7との間の位置に配置されるので、サーミスタSの位置を液滴部63および冷却液溜まり部7の双方から離すことができて、サーミスタSに対する冷却液の影響を極力排除できる。
【0054】
また更に、サーミスタSが配置されるステータ3の軸方向一方側で、ハウジング2にサーミスタSのケーブル12を外部に延出するための図示せぬ貫通孔が形成されるので、サーミスタSからハウジング2の端面までの距離を短くできてケーブル12の長さも短くでき、それにより、ケーブル12の断線等の危険性を低減することができる。
【第2の実施形態】
【0055】
次に、第1の実施形態の
図9との対応図である
図12に基づいて、本発明の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、サーミスタSが当接する巻線52のサーミスタSと逆側の位置に配置した凸部91で巻線52を支持したが、第2の実施形態は、サーミスタSが当接する巻線52を凸部91で支持していない点でのみ、第1の実施形態と相違している。このようにしても、サーミスタSは拘束部材である熱収縮性チューブ13によって巻線52に確実に固定されるので、サーミスタSを巻線52に安定的に支持することができる。
【0056】
以上本発明の第1,第2の実施形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0057】
例えば、第1,第2の実施形態では、巻線5を平角線で形成したが、丸線で形成しても良く、またサーミスタSを、各セグメントを通電可能に接合した側の巻線52に当接させてもよい。また、温度測定器は特にサーミスタSに限定されるものでなく種々の温度センサが使用可能であるし、サーミスタSを巻線52に保持する拘束部材も、特に熱収縮性チューブ13に限定されるものでなく、ゴム輪や結束バンド、クリップ等各種のものを用いることができる。また更に、エンドプレート9は前述したように省略することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・・回転電機
2・・・・ハウジング
3・・・・ステータ
31・・・ステータ本体
4・・・・ロータ
5・・・・巻線
52・・・最内周の一つの巻線
53・・・傾斜部
6・・・・冷却路
63・・・液滴部
7・・・・冷却液溜まり部
8・・・・スロット
81・・・ステータ本体のスロット
82・・・エンドプレートのスロット
83・・・温度測定器挿入部
9・・・・エンドプレート
91・・・凸部
92・・・先端部
93・・・傾斜面
10・・・セグメント
10a,10b・・・・両脚部
10a1,10b1・・基部
10a3,10b3・・先端
10c・・中間部
10e・・屈曲部
12・・・ケーブル
S・・・・温度測定器