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特開2022-170409移動量推定装置、移動量推定方法、および移動量推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170409
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】移動量推定装置、移動量推定方法、および移動量推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/51 20100101AFI20221102BHJP
【FI】
G01S19/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076513
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】野口 聖人
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA12
5J062BB01
5J062CC07
5J062CC17
5J062DD25
5J062EE02
5J062EE04
5J062HH00
(57)【要約】
【課題】計算量の抑制が可能な移動量推定装置等を提供する。
【解決手段】移動量推定装置としてのロケータECU100は、測位衛星からの衛星データを受信するGNSS受信機10を搭載した車両Aの過去地点から現在地点までの移動量を推定する。ロケータECU100は、複数の過去地点にて受信機により取得された過去の衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在の衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低を決定する優先度決定部130を備える。ロケータECU100は複数の組み合わせのうち、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量を算出する移動量算出部140を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの衛星データを受信する受信機(10)を搭載した移動体(A)の過去地点から現在地点までの移動量を推定する移動量推定装置であって、
複数の前記過去地点にて前記受信機により取得された過去の前記衛星データのそれぞれと、前記現在地点にて取得された現在の前記衛星データとの組み合わせについて、前記移動量の推定に使用する優先度の高低を決定する優先度決定部(130)と、
複数の前記組み合わせのうち、低優先度範囲よりも前記優先度の高い高優先度範囲の前記組み合わせに基づいて、前記過去地点から前記現在地点までの相対的な前記移動量を算出する移動量算出部(140)と、
を備える移動量推定装置。
【請求項2】
前記優先度決定部は、基準地点から前記過去地点までの前記移動体の移動距離と、前記基準地点から前記現在地点までの前記移動距離との差分が大きい前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項1に記載の移動量推定装置。
【請求項3】
前記優先度決定部は、過去の前記衛星データの取得時点から現在の前記衛星データの前記取得時点までの経過時間が小さい前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項1または請求項2に記載の移動量推定装置。
【請求項4】
前記優先度決定部は、過去の前記衛星データの品質が高い前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動量推定装置。
【請求項5】
前記優先度決定部は、前記過去地点における推定位置の信頼度が高い前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動量推定装置。
【請求項6】
前記優先度決定部は、複数の指標に基づいて前記優先度を決定し、条件に応じて各前記指標に重みを設定する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の移動量推定装置。
【請求項7】
前記優先度決定部は、基準地点から前記過去地点までの前記移動体の移動距離と、前記基準地点から前記現在地点までの前記移動距離との差分を距離差分指標として前記指標に含み、前記移動体の移動速度が小さいほど、前記距離差分指標の前記重みを小さく設定する請求項6に記載の移動量推定装置。
【請求項8】
測位衛星からの衛星データを受信する受信機(10)を搭載した移動体(A)の過去地点から現在地点までの移動量を推定するために、プロセッサ(102)によって実行される移動量推定方法であって、
複数の前記過去地点にて前記受信機により取得された過去の前記衛星データのそれぞれと、前記現在地点にて取得された現在の前記衛星データとの組み合わせについて、前記移動量の推定に使用する優先度の高低を決定する優先度決定工程(S130、S140、S150、S160、S170、S180、S190、S200)と、
複数の前記組み合わせのうち、低優先度範囲よりも前記優先度の高い高優先度範囲の前記組み合わせに基づいて、前記過去地点から前記現在地点までの相対的な前記移動量を算出する移動量算出工程(S210)と、
を含む移動量推定方法。
【請求項9】
前記優先度決定工程では、基準地点から前記過去地点までの前記移動体の移動距離と、前記基準地点から前記現在地点までの前記移動距離との差分が大きい前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項8に記載の移動量推定方法。
【請求項10】
前記優先度決定工程では、過去の前記衛星データの取得時点から現在の前記衛星データの前記取得時点までの経過時間が小さい前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項8または請求項9に記載の移動量推定方法。
【請求項11】
前記優先度決定工程では、過去の前記衛星データの品質が高い前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の移動量推定方法。
【請求項12】
前記優先度決定工程では、前記過去地点における推定位置の信頼度が高い前記組み合わせほど、前記優先度を高くする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の移動量推定方法。
【請求項13】
前記優先度決定工程では、複数の指標に基づいて前記優先度を決定し、条件に応じて各前記指標に重みを設定する請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の移動量推定方法。
【請求項14】
前記優先度決定工程では、基準地点から前記過去地点までの前記移動体の移動距離と、前記基準地点から前記現在地点までの前記移動距離との差分を距離差分指標として前記指標に含み、前記移動体の移動速度が小さいほど、前記距離差分指標の前記重みを小さく設定する請求項13に記載の移動量推定方法。
【請求項15】
測位衛星からの衛星データを受信する受信機(10)を搭載した移動体(A)の過去地点から現在地点までの移動量を推定するために、プロセッサ(102)に実行させる複数の命令を含む移動量推定プログラムであって、
前記命令は、
複数の前記過去地点にて前記受信機により取得された過去の前記衛星データのそれぞれと、前記現在地点にて取得された現在の前記衛星データとの組み合わせについて、前記移動量の推定に使用する優先度の高低を決定させる優先度決定工程(S130、S140、S150、S160、S170、S180、S190、S200)と、
複数の前記組み合わせのうち、低優先度範囲よりも前記優先度の高い高優先度範囲の前記組み合わせに基づいて、前記過去地点から前記現在地点までの相対的な前記移動量を算出させる移動量算出工程(S210)と、
を含む移動量推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、移動体の時刻間における移動量を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、受信機の過去データと現在データとに基づいて時間差RTK(Real Time Kinematic)測位を行うことで、当該受信機を搭載した移動体の移動量を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T.Suzuki(2020), “Time-Relative RTK-GNSS GNSS Loop Closure in Pose Graph Optimization”, IEEE ROBOTICS AND AUTOMATION LETTERS, VOL. 5, NO. 3, JULY 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
時間差RTK測位において、現在データと組み合わせる過去データは、複数存在し得る。しかし、選択可能な組み合わせ全てについて時間差RTKを実行する場合、計算量が増大する虞がある。
【0005】
開示される目的は、計算量の抑制が可能な移動量推定装置、移動量推定方法、および移動量推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された移動量推定装置のひとつは、測位衛星からの衛星データを受信する受信機(10)を搭載した移動体(A)の過去地点から現在地点までの移動量を推定する移動量推定装置であって、
複数の過去地点にて受信機により取得された過去の衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在の衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低を決定する優先度決定部(130)と、
複数の組み合わせのうち、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量を算出する移動量算出部(140)と、
を備える。
【0008】
開示された移動量推定方法のひとつは、測位衛星からの衛星データを受信する受信機(10)を搭載した移動体(A)の過去地点から現在地点までの移動量を推定するために、プロセッサ(102)によって実行される移動量推定方法であって、
複数の過去地点にて受信機により取得された過去の衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在の衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低を決定する優先度決定工程(S130、S140、S150、S160、S170、S180、S190、S200)と、
複数の組み合わせのうち、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量を算出する移動量算出工程(S210)と、
を含む。
【0009】
開示された移動量推定プログラムのひとつは、測位衛星からの衛星データを受信する受信機(10)を搭載した移動体(A)の過去地点から現在地点までの移動量を推定するために、プロセッサ(102)に実行させる複数の命令を含む移動量推定プログラムであって、
命令は、
複数の過去地点にて受信機により取得された過去の衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在の衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低を決定させる優先度決定工程(S130、S140、S150、S160、S170、S180、S190、S200)と、
複数の組み合わせのうち、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量を算出させる移動量算出工程(S210)と、
を含む。
【0010】
これらの開示によれば、複数の過去地点にて受信機により取得された過去の衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在の衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低が決定される。そして、組み合わせのうち、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量が算出される。故に、複数の過去の衛星データのうち、現在の衛星データと組み合わせられるデータが、優先度に基づき適切に決定され得る。このため、より大量の過去の衛星データの使用が抑制され得る。したがって、計算量の抑制が可能な移動量推定装置、移動量推定方法、および移動量推定プログラムが提供となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロケータECUを含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2】ロケータECUが実行する移動量推定方法の一例を示すフローチャートである。
図3図2の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
図4図2の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
図5図2の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態におけるロケータECUを含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
図7】第2実施形態においてロケータECUが実行する移動量推定方法の一例を示すフローチャートである。
図8図7の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
図9】第3実施形態における図7の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
図10】第4実施形態においてロケータECUを含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
図11】第4実施形態においてロケータECUが実行する移動量推定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の一実施形態による移動量推定装置は、ロケータECU100により提供される。ロケータECU100は、移動体である車両Aに搭載される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。
【0013】
ロケータECU100は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネスおよび内部バス等のうち少なくとも一種類を含む車載ネットワークを介して、各種情報を取得可能である。車載ネットワークから取得される情報には、例えば、GNSS受信機10からの測位信号が含まれる。
【0014】
GNSS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号を受信する。GNSS受信機10は、航法信号および当該信号の搬送波に基づき、観測データを生成する。一例として、観測データは、擬似距離、搬送波位相、ドップラー周波数、搬送波対雑音比およびサイクルスリップの発生有無を含む。GNSS受信機10は、観測データをロケータECU100へと逐次提供する。
【0015】
ロケータECU100は、メモリ101およびプロセッサ102を、少なくとも1つずつ含んで構成されるコンピュータである。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納または記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体および光学媒体等のうち少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。メモリ101は、後述の移動量推定プログラム等、プロセッサ102によって実行される種々のプログラムを格納している。
【0016】
プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)およびRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち少なくとも一種類を、コアとして含む。プロセッサ102は、メモリ101に記憶された移動量推定プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これによりロケータECU100は、車両Aの現在位置を推定するための複数の機能部を、構築する。このようにロケータECU100では、メモリ101に格納された移動量推定プログラムが複数の命令をプロセッサ102に実行させることで、複数の機能部が構築される。具体的に、ロケータECU100には、図2に示すように、データ取得部110、簡易測位部120、優先度決定部130、移動量算出部140および位置推定部150等の機能部が構築される。
【0017】
データ取得部110は、GNSS受信機10にて受信された新たな観測データを取得する。データ取得部110は、新たな観測データをバッファに格納する。また、データ取得部110は、簡易測位部120および優先度決定部130に逐次提供する。
【0018】
簡易測位部120は、後述する時間差RTKを利用しない手法により、車両Aの自己位置を推定する。例えば、簡易測位部120は、単独測位またはDGPS等の衛星測位に基づき、自己位置を推定すればよい。以下において、簡易測位部120にて推定された自己位置を、暫定自己位置と表記する場合がある。加えて、簡易測位部120は、推定した位置に基づいて、GNSS受信機10の電源がオン状態となってからの移動距離を算出する。なお、簡易測位部120は、ロケータECU100自身の電源がオン状態となってからの移動距離を算出してもよい。または、簡易測位部120は、車両Aが起動してからの移動距離を算出してもよい。簡易測位部120は、車速センサにて検出された車速情報等に基づくデッドレコニングにより、移動距離を算出してよい。なお、簡易測位部120は、ドップラー周波数に基づき算出されるGNSS受信機10のドップラー速度を、車両Aの推定移動速度として算出してもよい。
【0019】
バッファ更新部125は、観測データと簡易測位部120での測位結果データに基づいて、バッファを更新する。詳記すると、バッファ更新部125は、閾時間以前または閾時間よりも前に取得されたバッファデータが存在する場合、当該データを削除する。そして、バッファ更新部125は、取得された最新の観測データおよび測位結果データを、新たなバッファデータとしてメモリ101に格納する。測位結果データには、暫定自己位置およびGNSS受信機10の電源がオン状態となってからの移動距離が含まれている。なお、暫定自己位置の代わりに、後述の位置推定部150にて推定された現在位置が格納されてもよい。
【0020】
優先度決定部130は、複数の過去地点にて取得された過去衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低を決定する。
【0021】
優先度決定部130は、複数の指標に基づいて優先度を数値化することで、優先度の高低を比較可能とする。指標は、例えば、距離差分指標、時間差分指標、衛星品質指標の3つのパラメータである。
【0022】
距離差分指標は、基準地点から過去衛星データの取得地点(過去地点)までの移動距離と、基準地点から現在衛星データの取得地点(現在地点)までの移動距離との距離差分の大きさを示す指標である。例えば、基準地点は、GNSS受信機10が電源オンとなった地点とされる。距離差分指標は、例えば、GNSS受信機10の電源オンからの移動距離同士の距離差分を正規化したものとされる。具体的には、優先度決定部130は、以下の式1に基づいて距離差分指標を算出する。以下において、id1は距離差分指標である。Dは、現在衛星データの取得地点におけるGNSS受信機10の電源オンからの移動距離と、過去衛星データの取得時点におけるGNSS受信機10の電源オンからの移動距離との距離差分である。Nminは正規化最小値、Nmaxは正規化最大値である。正規化最小値および正規化最大値は、予め規定された値である。
【0023】
(数1)
id1=(D-Nmin)/(Nmax-Nmin) ・・・(1)
なお、優先度決定部130は、距離差分が正規化最小値未満の場合は、D=Nminとする。また、優先度決定部130は、距離差分が正規化最大値よりも大きい場合は、D=Nmaxとする。
【0024】
時間差分指標は、過去衛星データの取得時点から現在衛星データの取得時点までの経過時間の大きさを示す指標である。時間差分指標は、下記の式2に基づいて、距離差分指標同様に正規化される。以下において、id2は時間差分指標である。また、Tは、現在衛星データの取得時点におけるGNSS受信機10の電源オンからの経過時間と、過去衛星データの取得時点におけるGNSS受信機10の電源オンからの経過時間との差分である。
【0025】
(数2)
id2=(Nmin-T)/(Nmax-Nmin) ・・・(2)
なお、優先度決定部130は、距離差分の場合と同様に、時間差分が正規化最小値未満の場合は、T=Nminとし、時間差分が正規化最大値よりも大きい場合は、T=Nmaxとする。
【0026】
衛星品質指標は、取得された衛星データの品質の良さを示す指標である。衛星品質指標は、例えば、過去衛星データの取得時刻から、現在衛星データの取得時刻まで、サイクルスリップしなかった信号の数を正規化したものとされる。衛星品質指標は、下記の数式(3)に基づいて、距離差分指標同様に正規化される。以下において、id3は衛星品質指標、Nは信号数である。
【0027】
(数3)
id3=(N-Nmin)/(Nmax-Nmin) ・・・(3)
なお、優先度決定部130は、距離差分および時間差分の場合と同様に、信号数が正規化最小値未満の場合は、N=Nminとし、時間差分が正規化最大値よりも大きい場合は、N=Nmaxとする。また、以上の3つの式ごとに、NmaxおよびNminの値は異なる。
【0028】
優先度決定部130は、以上の指標の和を、優先度として算出する。優先度決定部130は、バッファされた各過去衛星データについて優先度を算出し、結果を移動量算出部140へと逐次提供する。
【0029】
優先度決定部130は、パラメータに重みを設定してよい。例えば、優先度決定部130は、移動距離差分に、車速に基づく重みを設定する。具体的には、優先度決定部130は、車速が所定範囲内に収まる場合、所定範囲外となる場合よりも移動距離差分の重みが小さくなる(例えばゼロになる)ように、重みを調整する。ここで所定範囲とは、車速が閾値以下または未満となるような数値範囲である。なお、優先度決定部130は、他の優先度パラメータに対して、所定の条件に応じた重みを設定してもよい。
【0030】
移動量算出部140は、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量を算出する。例えば、移動量算出部140は、優先度の最も高い組み合わせから規定数(例えば10個)を、移動量算出に使用する組み合わせとして選択する。この場合、選択された各組み合わせにおける各優先度を含む優先度範囲が、結果的に高優先度範囲となり、選択されなかった組み合わせにおける各優先度を含む優先度範囲が、低優先度範囲に含まれることとなる。なお、移動量算出部140は、高優先度範囲および低優先度範囲の境界となる閾値を設定し、当該閾値以上または当該閾値を上回る組み合わせを選択してもよい。
【0031】
移動量算出部140は、選択した複数の過去衛星データに基づいて、時間差RTKを実施する。これにより、移動量算出部140は、各過去衛星データの取得時刻から現在衛星データの取得時刻までの、車両Aの移動量を推定する。移動量算出部140は、過去位置から現在位置への移動ベクトルを、移動量として算出すればよい移動量算出部140は、算出した移動ベクトルを位置推定部150へと提供する。
【0032】
移動量算出部140の実施する時間差RTKについて説明する。なお、本実施形態において、「時間差RTKを実施する」とは、移動体(本実施形態では車両A)の相対的な移動量(移動ベクトル)の算出までを少なくとも包含し、当該移動量に基づく移動体の絶対位置の推定を必ずしも包含するものではないとする。また、以下の説明において、既知の基準局から移動体までの基線ベクトルを算出するRTK測位について、時間差RTKとの区別のため、通常RTKと表記する場合がある。
【0033】
時間差RTKは、通常RTKにおける基準局を過去時刻の移動体に置き換えることで、当該移動体の過去時刻から現在時刻までの相対的な移動ベクトルを算出する測位手法である。
【0034】
詳記すると、時間差RTKにおいて、搬送波位相の一重差は、現在時刻においてGNSS受信機10にて受信された測位信号の搬送波位相と、過去時刻において同一のGNSS受信機10にて受信された測位信号の搬送波位相との差分となる。したがって、特定の基準衛星における上述の一重差と他の衛星の一重差との差分が、時間差RTKにおける二重差となる。
【0035】
移動量算出部140は、バッファされた過去衛星データと現在衛星データとに基づき、この二重差を算出する。移動量算出部140は、基準衛星と他の複数の衛星(例えば4つ以上)との二重差を算出する。移動量算出部140は、算出した複数の二重差に基づき、最小二乗法またはカルマンフィルタ等のパラメータ推定を実行する。これにより、移動量算出部140は、移動体の過去時刻から現在時刻までの相対的な移動ベクトルを算出する。
【0036】
位置推定部150は、移動ベクトルに基づいて、車両Aの現在位置を推定位置として算出する。例えば、位置推定部150は、過去位置と移動ベクトルとに基づいて推定される位置と、簡易測位部120にて時間差RTKを利用することなく推定された位置とを組み合わせて、現在位置を推定する。位置推定部150は、上述の2つの位置情報の平均値を現在位置としてもよいし、2つの位置情報を観測量とするカルマンフィルタにより現在位置を推定してもよい。位置推定部150は、推定した現在位置を車両Aの自己位置として車載装置90へと出力する。ここで車載装置90は、ロケータECU100にて推定された現在位置を使用したアプリケーションを実行する装置である。なお、位置推定部150は、車載装置90の代わりに、サーバ装置および他車両等、車両Aの外部構成に対して現在位置を送信してもよい。
【0037】
次に、機能ブロックの共同により、ロケータECU100が実行する移動量推定方法のフローを、図2に従って以下に説明する。なお、後述するフローにおいて「S」とは、プログラムに含まれた複数命令によって実行される、フローの複数ステップを意味する。
【0038】
まず、S100では、データ取得部110が、GNSS受信機10にて受信された最新の衛星データを取得する。次に、S110では、データ取得部110が、取得した衛星データにてバッファを更新する。具体的には、データ取得部110は、取得から閾時間以上となるか、閾時間を超えた衛星データを、バッファから削除する。そして、データ取得部110は、最新の衛星データを、バッファに追加する。
【0039】
S110の処理の後、S120にて、優先度決定部130が、過去の衛星データが存在するか否かを判定する。存在すると判定すると、本フローがS130へと移行する。
【0040】
S130では、優先度決定部130が、優先度を決定するためのパラメータの1つとして移動距離差分を算出する。
【0041】
S130の処理の詳細について、図3のフローチャートを参照して説明する。まず、S131では、現在の移動距離が取得される。次に、S132では、組み合わせの対象となる過去の衛星データ取得時の移動距離が取得される。そして、S133では、2つの移動距離の差分が算出される。続いて、S134では、差分が正規化される。この正規化された差分が、移動距離差分とされる。
【0042】
図2に戻り、S140では、優先度決定部130が、優先度を決定するためのパラメータの1つとして時間差分を算出する。S140の処理の詳細について、図4のフローチャートを参照して説明する。まず、S141では、現在の時刻が取得される。次に、S142では、組み合わせの対象となる過去の衛星データ取得時の時刻が取得される。なお、ここでの時刻は、GNSS受信機10の電源オンを基準時刻とした経過時間であってよい。そして、S143では、2つの時刻の差分が算出される。続いて、S144では、差分が正規化される。この正規化された差分が、時間差分とされる。
【0043】
図2に戻り、S150では、優先度決定部130が、優先度を決定するためのパラメータの1つとして衛星品質を算出する。S150の処理の詳細について、図5のフローチャートを参照して説明する。まず、S151では、現在の時刻から対象時刻までで、サイクルスリップしなかった信号が抽出される。そして、S152では、サイクルスリップしなかった信号数が算出され、正規化される。この正規化された信号数が、衛星品質指標とされる。
【0044】
図2に戻り、S170では、優先度決定部130が、バッファされた衛星データから優先度の最も高い衛星データを選択する。ここで、優先度決定部130は、上述の3つのパラメータの和を優先度とする。次に、S180では、優先度決定部130が、選択された衛星データの数が上限(例えば10個程度)に達したか否かを判定する。上限に達していないと判定されると、本フローがS190へと移行する。一方で、上限に達したと判定されると、本フローがS210へと移行する。
【0045】
S190では、優先度決定部130が、バッファに格納された衛星データのうち、選択された衛星データとの移動距離差分が閾値以下の衛星データを、選択対象から除外する。続くS200では、優先度決定部130が、選択可能な衛星データが残っているか否かを判定する。衛星データが残っていると判定されると、本フローがS170へと戻る。一方で、衛星データが残っていないと判定されると、本フローがS210へと移行する。S170~S200の一連の処理により、優先度が比較的高く、且つ取得時の車両Aの位置同士が比較的離れた衛星データが複数選択されることになる。
【0046】
S210では、移動量算出部140が、選択された複数の過去衛星データと、現在衛星データとの組み合わせに基づいて時間差RTKを実行し、各過去位置から現在位置までの移動量を算出する。次に、S220では、位置推定部150が、移動量に基づいて車両Aの現在位置を推定する。具体的には、位置推定部150が、そして、S230では、位置推定部150が、推定した現在位置を車載装置90へと送信する。なお、位置推定部150は、車両Aの外部へと現在位置を送信してもよい。以上において、S130、S140、S150、S170、S180、S190、S200が、「優先度決定工程」の一例であり、S210が、「移動量算出工程」の一例である。
【0047】
以上の第1実施形態によれば、複数の過去地点にてGNSS受信機10により取得された過去の衛星データのそれぞれと、現在地点にて取得された現在の衛星データとの組み合わせについて、移動量の推定に使用する優先度の高低が決定される。そして、組み合わせのうち、低優先度範囲よりも優先度の高い高優先度範囲の組み合わせに基づいて、過去地点から現在地点までの相対的な移動量が算出される。故に、複数の過去の衛星データのうち、現在の衛星データと組み合わせられるデータが、優先度に基づき適切に決定され得る。このため、より大量の過去の衛星データの使用が抑制され得る。したがって、移動量の推定において、計算量の抑制が可能となり得る。
【0048】
また、第1実施形態によれば、基準地点から過去地点までの車両Aの移動距離と、基準地点から現在地点までの移動距離との差分が大きい組み合わせほど、優先度が高く設定される。これによれば、移動距離が大きくなっても精度が低下しにくい時間差RTKによる移動量の算出が、より適切に活用され得る。
【0049】
さらに、第1実施形態によれば、過去の衛星データの取得時点から現在の衛星データの取得時点までの経過時間、すなわち時間差分が小さい組み合わせほど、優先度が高く設定される。RTK測位においては、時間差分が大きくなるほど、衛星クロック誤差、電離層遅延および対流圏遅延の変化量等の影響が大きくなり、精度が低下し得る。故に、時間差分が小さいほど優先度を高くすることで、時間差分が大きく精度の低下が大きくなりやすい組み合わせが、移動量の算出に利用されにくくなる。したがって、移動量算出の精度が、より向上され得る。
【0050】
加えて、第1実施形態によれば、過去の衛星データの品質が高い組み合わせほど、優先度が高く設定される。故に、より移動量算出の精度を高め易い組み合わせが、移動量の算出に利用され易くなる。したがって、移動量算出の精度が、より向上され得る。
【0051】
また、第1実施形態によれば、複数の指標に基づいて優先度が決定され、条件に応じて各指標に重みが設定される。故に、車両Aの走行状態に応じた優先度が決定され易くなり、より状況に適した組み合わせが移動量算出に利用され得る。
【0052】
さらに、第1実施形態によれば、車両Aの走行速度が小さいほど、距離差分指標の重みが小さく設定される。走行速度が小さい場合、車速センサが走行速度をスリップにより正確に検出できない可能性が高まる。これは、例えば車輪速を検出する車速センサの場合に発生し得る。このような場合に距離差分指標の重みを小さくすることで、不正確な走行速度に基づく移動距離算出への影響を小さくすることが可能となり得る。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。図6~8において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0054】
第2実施形態において、ロケータECU100は、GNSS受信機10に加え、地図DB20、外界センサ30および内界センサ40から、車載ネットワークを介して情報を取得する。
【0055】
図DB20は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状、構造物等の地図データを格納している。地図データは、道路形状および構造物の特徴点の点群からなる三次元地図であってもよい。なお、三次元地図は、REM(登録商標)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。また、地図データには、交通規制情報、道路工事情報、気象情報、および信号情報等が含まれていてもよい。地図DB20に格納された地図データは、車両Aの外部に設置されたサーバから配信される最新の情報に基づいて、定期的または随時に更新されてよい。
【0056】
外界センサ30は、車両Aの外界を監視する自律センサである。外界センサ30は、例えば、地物の特徴点の点群を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)であってもよいし、車両Aの前方を含んだ所定範囲を撮像する周辺監視カメラであってもよい。
【0057】
内界センサ40は、車両Aの内界に関する物理量を検出するセンサである。例えば、内界センサ40は、車両Aの走行速度を検出する車速センサおよび車両Aに作用する慣性力を検出するIMUを含む。IMUは、角速度および加速度を検出可能な構成である。IMUは、例えば3軸ジャイロセンサおよび3軸加速度センサを有する6軸のモーションセンサであってよい。
【0058】
第2実施形態において、データ取得部110は、観測データに加えて、時間差RTK以外の自己位置推定手法の実行に必要な情報を取得する。例えば、データ取得部110は、LiDARによる点群情報および地図DB20に格納された点群地図データを、スキャンマッチングに必要な情報として取得する。または、データ取得部110は、カメラの撮像画像と地図データとを取得してもよい。
【0059】
簡易測位部120は、データ取得部110にて取得されたデータに基づき、暫定自己位置を推定する。簡易測位部120は、点群情報と点群地図データのスキャンマッチング、撮像画像と地図のランドマークとのマッチング等に基づいて、暫定自己位置を推定すればよい。
【0060】
バッファ更新部125は、後述の推定位置の信頼度をさらにバッファデータとして格納する。または、バッファ更新部125は、暫定自己位置の信頼度を格納してもよい。
【0061】
優先度決定部130は、優先度を決定する指標として、信頼度指標をさらに算出する。信頼度指標は、過去地点の推定位置の信頼度に基づき算出されるパラメータである。すなわち、第2実施形態において、優先度決定部130は、4つのパラメータに基づいて優先度を算出する。
【0062】
位置推定部150は、簡易測位部120にて推定された暫定自己位置と、移動量算出部140にて算出された移動量とに基づいて車両Aの位置を算出する。このとき、位置推定部150は、推定した自己位置の信頼度(位置信頼度)をさらに算出する。位置推定部150は、正規化した推定誤差を信頼度指標として算出すればよい。
【0063】
次に、機能ブロックの共同により、第2実施形態のロケータECU100が実行する移動量推定方法のフローを、図7に従って以下に説明する。図2のフローと同様の符号を付したステップについては、第1実施形態の説明を援用する。
【0064】
S150にて衛星品質指標が算出されると、本フローがS160へと移行する。S160では、優先度決定部130が、位置信頼度を算出する。
【0065】
S160の処理の詳細について、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、S161では、過去位置における推定誤差が取得される。次に、S162では、当該推定誤差が浮動化される。具体的には、三方向の推定誤差に基づき、三次元の二乗和平方根が算出される。そして、S163では、浮動化された推定誤差が正規化される。この正規化された推定誤差が、位置信頼度とされる。S163の処理が実行されると、本フローが図7のS170へと進む。なお、以上において、第1実施形態にて示したステップに加えて、S160が「優先度決定工程」の一例に含まれる。
【0066】
以上の第2実施形態によれば、過去地点における推定位置の信頼度が高い組み合わせほど、優先度が高く設定される。故に、過去地点と移動量とに基づく現在位置の推定精度がより高くなり得る組み合わせが、優先的に選択され得る。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。図9において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0068】
第3実施形態のロケータECU100において、位置推定部150は、第2実施形態と同様に、点群情報に基づくスキャンマッチングにより推定位置を推定するとする。この場合、優先度決定部130は、第2実施形態と同様に位置信頼度を優先度パラメータの1つとして算出可能である。この場合、優先度決定部130は、推定位置算出時に使用された点群における法線布置のエントロピーに基づき、信頼度指標を算出する。
【0069】
詳記すると、優先度決定部130は、点群の各点ごとの法線ベクトルについて、仰角成分および方位角成分を算出する。そして、優先度決定部130は、各点を仰角成分および方位角成分の二次元グリッドに離散化する。優先度決定部130は、全点を離散化することで、グリッドごとの発生回数を算出し、当該発生回数を点群の点数で除することで、各グリッドの発生確率を算出する。グリッド数をLとし、グリッドごとの発生確率をpiとすると、エントロピーHは、以下の数式(4)にて算出可能である。優先度決定部130は、エントロピーを正規化した値を、信頼度指標とする。
【0070】
【数4】
次に、機能ブロックの共同により、第3実施形態のロケータECU100が実行する移動量推定方法のフローを、図9に従って以下に説明する。第3実施形態では、図7のS160の詳細処理が、図9のフローに従って実行される。まず、S165では、LiDAR装置により検出された点群が取得される。次に、S166では、点群の法線ベクトルが算出される。そして、S167では、法線ベクトルが仰角と方位角で離散化され、発生確率が算出される。次に、S168では、発生確率に基づきエントロピーが算出され、当該エントロピーが正規化される。この正規化されたエントロピーが、信頼度指標となる。S168の処理が実行されると、本フローが図7のS170へと進む。
【0071】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。図10,11において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0072】
第4実施形態において、ロケータECU100は、GNSS受信機10に加え、車載通信器50から、車載ネットワークを介して情報を取得する。車載通信器50は、車両Aに搭載される通信モジュールである。車載通信器50は、LTE(Long Term Evolution)および5G等の通信規格に沿ったV2N(Vehicle to cellular Network)通信の機能を少なくとも有している。車載通信器50は、車両Aの周囲の基準局から通常RTKにて使用される補正情報を受信可能である。車載通信器50は、取得した補正情報をロケータECU100へと逐次提供する。
【0073】
第4実施形態における位置推定部150は、通常RTKを実行可能な場合には、通常RTKにより自己位置を推定する。一方で、位置推定部150は、通常RTKを実行不可能な場合に、時間差RTKに基づいて自己位置を推定する。例えば、位置推定部150は、基準局との通信が遮断された場合、通信の遅延が大きい場合、基準局に不具合が発生している場合、基準局が近くに存在しない場合に、通常RTKが実行不可能であると判定すればよい。
【0074】
次に、機能ブロックの共同により、第3実施形態のロケータECU100が実行する移動量推定方法のフローを、図11に従って以下に説明する。図2,7のフローと同様の符号を付したステップについては、第1実施形態の説明を援用する。
【0075】
S110の処理の後に、本フローはS115へと移行する。S115では、位置推定部150が、通常RTKを実行可能か否か判定する。可能であると判定されると、本フローがS120へと移行する。一方で、通常RTKが実行不可能であると判定されると、本フローはS116へと移行する。
【0076】
S116では、位置推定部150が、通常RTKに基づき基準局から車両Aまでの距離を推定する。S116の処理が実行されると、本フローはS220へと進む。なお、S116からS220へと移行した場合、位置推定部150は、基準局から車両Aまでの距離に基づく現在位置の推定を、S220にて実行すればよい。
【0077】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0078】
上述の実施形態において、移動量推定装置を構成する専用コンピュータは、ロケータECU100であるとした。これに代えて、移動量推定装置を構成する専用コンピュータは、車両Aに搭載された運転制御ECUであってもよいし、車両Aの走行アクチュエータを個別制御するアクチュエータECUであってもよい。または、移動量推定装置を構成する専用コンピュータは、ナビゲーションECUであってもよい。または、移動量推定装置を構成する専用コンピュータは、情報表示系の情報表示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。また、移動量推定装置を構成する専用コンピュータは、車両Aの外部に設けられたサーバ装置であってもよい。また、移動量推定装置を構成する専用コンピュータは、移動ロボット等、車両A以外の移動体における移動量を推定する構成であってもよい。
【0079】
上述の実施形態において、ロケータECU100は、算出した移動量に基づき推定した車両Aの現在位置を出力するとした。これに代えて、ロケータECU100は、現在位置を推定することなく、移動量を出力する構成であってもよい。この場合、車載装置90等の出力先の装置が、移動量に基づく現在位置を推定してよい。また、ロケータECU100は、移動量に加えて衛星測位結果を出力してもよい。
【0080】
上述の実施形態において、優先度決定部130は、優先度を複数の指標の和として算出するとした。これに代えて、優先度決定部130は、複数の指標の積として優先度を算出してもよい。または、優先度決定部130は、複数の指標のうちいずれかが規定の非許容範囲以内に収まるほど低い組み合わせについては、移動量算出に使用する組み合わせから除外してもよい。
【0081】
上述の実施形態において、優先度決定部130は、サイクルスリップしなかった信号数に基づいて衛星品質指標を算出するとした。これに代えて、優先度決定部130は、衛星ごとの搬送波対雑音比の平均値が高いものほど高い衛星品質指標を設定してもよい。または、優先度決定部130は、サイクルスリップしなかった信号数および搬送波対雑音比の平均値を含む複数のパラメータに基づいて、衛星品質指標を設定してもよい。
【0082】
上述の実施形態において、優先度決定部130は、過去位置の推定誤差または点群のエントロピーに基づいて信頼度を算出するとした。これに代えて、優先度決定部130は、通常RTKを自己位置推定に用いる構成において、通常RTKにて使用した衛星数が多いほど高い信頼度を設定してもよい。または、優先度決定部130は、レシオテストにより得られるレシオが高いほど、高い信頼度を設定してもよい。または、優先度決定部130は、上述した複数のパラメータに基づいて信頼度を設定してもよい。
【0083】
上述の第1実施形態において、簡易測位部120は、デッドレコニングにより移動距離を算出するとした。これに代えて、簡易測位部120は、後述する時間差RTK等の衛星測位の結果に基づいて、移動距離を算出してもよい。
【0084】
ロケータECU100は、デジタル回路およびアナログ回路のうち少なくとも一方をプロセッサとして含んで構成される、専用のコンピュータであってもよい。ここで特にデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、およびCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0085】
ロケータECU100は、1つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供され得る。例えば、上述の実施形態におけるロケータECU100の提供する機能の一部は、他のECUまたはサーバ装置によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 GNSS受信機(受信機) 100 ロケータECU(移動量推定装置)、 102 プロセッサ、 130 優先度決定部、 140 移動量算出部、 A 車両(移動体)。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11