(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170411
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】鏡面体支持構造および虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221102BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221102BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20221102BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G02B7/182
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076515
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
【テーマコード(参考)】
2H043
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H043CA02
2H043CA09
2H043CA10
2H043CB01
2H043CB02
2H043CD01
2H043CE00
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA43
2H199DA44
2H199DA46
3D344AA01
3D344AA19
3D344AA30
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】接着剤の硬化収縮に起因して鏡面に歪みの変曲点が発生しないように鏡面体を支持する鏡面体支持構造、および該鏡面体支持構造を有する虚像表示装置を提供する。
【解決手段】四箇所の接着剤51は、四箇所の位置決め部50を直線で結んでできる囲み領域52の境界線53上を含む箇所に全て位置する。囲み領域52の境界線53上の箇所に接着剤51が位置するので、硬化収縮によって、ミラー部121には曲げる方向のみが作用し、広げる方向の力が作用しない。したがって曲げる方向の力と広げる方向の力が混在しないので、鏡面に歪みの変曲点が発生することを抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体(121)と、
前記鏡面体の前記鏡面とは反対側の裏面に接着剤(51)によって固定されており、前記鏡面体を支持するホルダ(122)と、
前記鏡面体と前記ホルダとの間隔を規定するために前記鏡面体および前記ホルダの間に設けられ、前記鏡面体および前記ホルダのうち一方の部材から対向する他方の部材に突出し、先端部が他方の部材に接触する凸状の位置決め部(50)と、を含み、
前記位置決め部は、3つ以上設けられ、
前記接着剤は、3つ以上の前記位置決め部を直線で結んでできる囲み領域(52)の内側のみ、または前記囲み領域の外側のみに位置する鏡面体支持構造。
【請求項2】
板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体(121)と、
前記鏡面体の前記鏡面とは反対側の裏面に接着剤(51)によって固定されており、前記鏡面体を支持するホルダ(122)と、
前記鏡面体と前記ホルダとの間隔を規定するために前記鏡面体および前記ホルダの間に設けられ、前記鏡面体および前記ホルダのうち一方の部材から対向する他方の部材に突出し、先端部が他方の部材に接触する凸状の位置決め部(50)と、を含み、
前記位置決め部は、3つ以上設けられ、
前記接着剤は、複数の箇所に設けられ、
複数の前記接着剤は、3つ以上の前記位置決め部を直線で結んでできる囲み領域(52)の境界線(53)上を含む前記囲み領域の内側のみに全て位置する鏡面体支持構造。
【請求項3】
複数の前記接着剤は、前記境界線(53)上を含む箇所に全て位置する請求項2に記載の鏡面体支持構造。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記囲み領域が長方形状となるように、4つ設けられ、
前記接着剤は、前記囲み領域の前記境界線のうち、対向する一対の辺の前記境界線上のみを含む箇所に位置する請求項3に記載の鏡面体支持構造。
【請求項5】
前記囲み領域の前記境界線上を含む箇所に位置する前記接着剤は、平面形状が前記境界線に対して線対称である請求項3または4に記載の鏡面体支持構造。
【請求項6】
前記鏡面体は、凹面鏡である請求項1~5のいずれか1つに記載の鏡面体支持構造。
【請求項7】
画像の表示光を出射する表示装置(110)と、
前記表示光を反射させて、視認者の前方に位置する投影部材(10)に投影する反射装置(120)と、
前記反射装置を駆動して、前記表示光に対する反射角度を調整する駆動部(124)と、を備え、
前記画像を、前記投影部材の前方に虚像(20)として、前記視認者に対して重畳表示する虚像表示装置であって、
前記反射装置は、請求項1~6のいずれか1つに記載の鏡面体支持構造を有し、
前記鏡面体の前記鏡面は、前記表示光を反射する虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、鏡面体を支持する鏡面体支持構造、および鏡面体支持構造を有する虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置では、凹面鏡がホルダに接着保持されている。また凹面鏡は、裏面に凸状の位置決め部を3箇所に備える。またホルダは、凹面鏡を保持する側に位置決め部に係合する位置決め凹部を備える。位置決め部と位置決め凹部が係合することで、凹面鏡とホルダとを位置決めしている。また凹面鏡とホルダとは、5箇所の接着位置において、接着剤によって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置では、平面視して、位置決め部と位置決め凹部との係合部分を直線で結んでできる囲み領域の内側および外側の両方に接着位置が設けられている。接着剤は、硬化するときに硬化収縮が起きるので、接着位置にて凹面鏡とホルダとを引き合うような力が生じる。
【0005】
図11に示すように、接着部分の囲み領域の内側、すなわち係合部分が接着部分の外側にある場合には、曲がりがきつくなる曲げ方向の力が硬化収縮によって作用する。また、
図12に示すように、接着部分の囲み領域の外側、すなわち係合部分が接着部分の内側にある場には、曲がりがなだらかになる広げ方向の力が硬化収縮によって作用する。したがって係合部分と接着部分との位置関係によって、
図11のような曲げ方向の力と
図12のような広げ方向の力とが凹面鏡に混在すると、凹面鏡の歪みに変曲点が生じる。このような変曲点がある歪みが発生すると、歪み補正が複雑となるという問題がある。
【0006】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、接着剤の硬化収縮に起因して鏡面に歪みの変曲点が発生しないように鏡面体を支持する鏡面体支持構造、および該鏡面体支持構造を有する虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
ここに開示された鏡面体支持構造は、板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体(121)と、鏡面体の鏡面とは反対側の裏面に接着剤(51)によって固定されており、鏡面体を支持するホルダ(122)と、鏡面体とホルダとの間隔を規定するために鏡面体およびホルダの間に設けられ、鏡面体およびホルダのうち一方の部材から対向する他方の部材に突出し、先端部が他方の部材に接触する凸状の位置決め部(50)と、を含み、位置決め部は、3つ以上設けられ、接着剤は、3つ以上の位置決め部を直線で結んでできる囲み領域(52)の内側のみ、または囲み領域の外側のみに位置する鏡面体支持構造である。
【0009】
このような鏡面体支持構造に従えば、接着剤は、3つ以上の位置決め部を直線で結んでできる囲み領域の内側のみ、または囲み領域の外側のみに位置する。接着剤が囲み領域の内側のみに設けられる場合には、硬化収縮に起因して、鏡面体には曲げる方向の力のみが作用する。逆に、接着剤が囲み領域の外側のみに設けられる場合には、硬化収縮に起因して、鏡面体には広げる方向の力のみが作用する。したがって曲げる方向の力と広げる方向の力が混在しないので、鏡面に歪みの変曲点が発生することを抑制することができる。
【0010】
また開示された別の鏡面体支持構造のさらなる特徴は、板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体(121)と、鏡面体の鏡面とは反対側の裏面に接着剤(51)によって固定されており、鏡面体を支持するホルダ(122)と、鏡面体とホルダとの間隔を規定するために鏡面体およびホルダの間に設けられ、鏡面体およびホルダのうち一方の部材から対向する他方の部材に突出し、先端部が他方の部材に接触する凸状の位置決め部(50)と、を含み、位置決め部は、3つ以上設けられ、接着剤は、複数の箇所に設けられ、複数の接着剤は、3つ以上の位置決め部を直線で結んでできる囲み領域(52)の境界線(53)上を含む囲み領域の内側のみに全て位置する鏡面体支持構造である。
【0011】
このような鏡面体支持構造に従えば、複数の接着剤は、3つ以上の位置決め部を直線で結んでできる囲み領域の境界線上を含む囲み領域の内側に全て位置する。囲み領域の境界線上の箇所に接着剤が位置する場合、硬化収縮によって、鏡面体には曲げる方向の力のみが作用し、広げる方向の力が作用しない。また囲み領域の内側に位置する接着剤は、硬化収縮に起因して、鏡面体には曲げる方向の力のみが作用する。したがって曲げる方向の力と広げる方向の力が混在しないので、鏡面に歪みの変曲点が発生することを抑制することができる。
【0012】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態のHUD装置100の構成を示す図。
【
図4】鏡面体支持構造の他の実施例1を示す正面図。
【
図5】鏡面体支持構造の他の実施例2を示す正面図。
【
図6】鏡面体支持構造の他の実施例3を示す正面図。
【
図7】第2実施形態の鏡面体支持構造を示す正面図。
【
図8】鏡面体支持構造の他の実施例4を示す正面図。
【
図9】鏡面体支持構造の他の実施例5を示す正面図。
【
図10】鏡面体支持構造の他の実施例6を示す正面図。
【
図11】接着剤の硬化収縮によって作用する曲げる力を説明する図。
【
図12】接着剤の硬化収縮によって作用する広げる力を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、
図1~
図6を用いて説明する。
図1に示すように、虚像表示装置100は、例えば、自動車等の車両に搭載される。虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイ(Head‐Up Display)装置と呼ばれ、以下「HUD装置」と表記する。HUD装置100は、表示装置110から出射される画像の表示光を、視認者の前方に位置する投影部材の投射位置10aに入射させる。車載用のHUD装置100では、視認者は運転者であり、投影部材は車両のフロント側のウインドシールド10である。HUD装置100は、運転者と投射位置10aとを結ぶ線の車両前方延長線上の前景に、画像を虚像20として重畳表示する。これによって運転者は、アイボックス30を通して、虚像20を視認することができる。アイボックス30は、運転者が虚像20を視認可能とする領域であり、運転者の目の前に仮想されるのぞき窓のようなものである。アイボックス30は、例えば、矩形を成している。
【0016】
HUD装置100は、
図1に示すように、表示装置110、反射装置120、および制御装置140等を備えている。HUD装置100の主たる構成要素となる表示装置110、反射装置120、制御装置140は、ウインドシールド10の下端面から車室内後方、更には下方に延出されるインストルメントパネル40の内側に配設されている。
【0017】
インストルメントパネル40の上面には、反射装置120からの表示光を通過させる開口部40aが設けられている。また開口部40aには透光性を有する防塵カバーが設けられている。以下、HUD装置100の各構成の詳細について説明する。
【0018】
表示装置110は、画像を表す表示光を出射する。表示装置110は、光源部、レンズ、および表示器等を有している。光源部は、表示器に対して光を出射する。光源部は、制御装置140によって発光状態が制御される。
【0019】
レンズは、光源部からの光を表示器に向けて集光させる部材であり、光源部による光の出射側に配置されている。表示器は、光源部からの光によって透過照明されて、画像を表す表示光を出射する。表示器は、制御装置140によって駆動制御される。
【0020】
表示器は、光源部から出射される光によって、画像を表す表示光を反射装置120に向けて出射する。表示器によって形成される画像は、例えば、車両用ナビゲーションシステムにおける案内画像、および車両走行時における車両情報を示すメータ画像などである。
【0021】
反射装置120は、表示光を反射させる装置であり、
図1に示すように、ミラー部121、ホルダ122、軸部123、およびモータ部124等を有している。
【0022】
ミラー部121は、表示器からの表示光を、インストルメントパネル40の開口部40aを通して、ウインドシールド10の投射位置10aに反射させる反射部となっている。ミラー部121は、板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体である。ミラー部121は、例えば、板材の表面にアルミニウムや銀等の金属が蒸着されて形成されており、表示器を向く側の面が鏡面、すなわち反射面となっている。ミラー部121は、鏡面とは反対側、すなわち反射面とは反対側に凹む凹面鏡となっている。これによってミラー部121は、画像を投射位置10aに向けて拡大する。
【0023】
ホルダ122は、ミラー部121を保持する部材であり、例えば、樹脂材によって形成されている。ホルダ122は、ミラー部121の鏡面とは反対側の裏面を覆うように配置されている。ミラー部121は、ホルダ122に接着剤によって接合されている。
【0024】
軸部123は、ホルダ122の水平方向、すなわち車両の左右方向の両端側に、ホルダ122に一体的に形成されている。軸部123は、図示しない支持体に回転可能に支持されている。
【0025】
モータ部124は、ホルダ122を駆動して、表示光に対する反射角度を調整する駆動部である。モータ部124は、例えば、入力されるパルス電力に同期して動作する同期電動機であり、一方側の軸部123に接続されている。モータ部124は、制御装置140によって、回転制御される。モータ部124が正方向、あるいは逆方向に回転されることで、ホルダ122は、軸部123を中心として、支持体に対して回動されるようになっている。
【0026】
制御装置140は、表示器の画像の形成制御およびモータ部124の作動制御などを行う。制御装置140は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、表示器に表示すべき画像を形成させる。すると、
図1に示すように、表示器は、光源部から出射される光によって画像の表示光をミラー部121に出射させる。ミラー部121は、表示器から出射された表示光を、開口部40aを通して、ウインドシールド10の投射位置10aに反射させる。投射位置10aに反射された表示光は、運転者と投射位置10aとを結ぶ線の車両前方延長線上に虚像20として重畳表示されて、アイボックス30を通して、運転者に視認されることになる。
【0027】
次に、ミラー部121とホルダ122とを接着固定する鏡面体支持構造に関して説明する。ミラー部121は、
図2に示すように、略長方形の板状に形成され、その長手方向に沿って湾曲している。ホルダ122は、ミラー部121と同様に、略長方形の板状に形成され、その長手方向に沿って湾曲している。
【0028】
ミラー部121とホルダ122との間隔を規定するために、ミラー部121およびホルダ122の間には、凸状の位置決め部50が設けられる。位置決め部50は、ミラー部121およびホルダ122のうち一方の部材から対向する他方の部材に突出し、先端部が他方の部材に接触する。
【0029】
本実施形態では、位置決め部50は、
図2および
図3に示すように、ホルダ122に一体に4つ設けられる。位置決め部50は、ミラー部121に対向する表面に凸状に形成される。位置決め部50は、ホルダ122の表面から離間する方向に突出し、先端部がミラー部121と点接触するように、たとえば先端部が球状の円柱状に形成されている。4つの位置決め部50は、ホルダ122の角付近に設けられる。位置決め部50は、先端部がミラー部121と接触することで、ミラー部121の裏面とホルダ122の表面との間に隙間を形成する。
【0030】
ミラー部121の裏面とホルダ122とは、接着剤51によって固定される。接着剤51は、たとえば熱硬化性樹脂が用いられる。接着剤51は、ミラー部121およびホルダ122の材質によって、適切な接着力を得られるように適宜選択される。また接着剤51は、使用される環境で長期間、たとえば10年にわたって接着力が維持できるように適宜選択される。
【0031】
接着剤51は、複数箇所、本実施形態では4箇所に設けられる。4箇所の接着剤51は、
図2に示すように、4つの位置決め部50を直線で結んでできる囲み領域52の境界線上を含む箇所に全て位置する。隣接する各位置決め部50を結ぶ直線が境界線53である。境界線53によって囲まれた領域が囲み領域52である。
【0032】
各位置決め部50における境界線53の引き出し位置は、位置決め部50を
図2に示す正面方向から見た場合に、位置決め部50の中心である。囲み領域52を形成するときは、まず、各位置決め部50において最も隣接する位置決め部50と直線で結ぶ。そして結んだ複数の直線によって囲まれる面積が最も大きくなるように直線を選択する。本実施形態では、位置決め部50は、囲み領域52が長方形状となるように、4つ設けられている。
【0033】
接着剤51の塗布領域は、長方形状であり、塗布領域の長辺がミラー部121の長辺に沿った方向である。接着剤51は、囲み領域52の境界線53のうち、対向する一対の辺の境界線53上のみを含む箇所に位置する。本実施形態では、囲み領域52は、長方形状であり、対向する一対の長辺の境界線53のみに接着剤51が設けられる。
【0034】
また囲み領域52の境界線53上を含む箇所に位置する接着剤51は、平面形状が境界線53に対して線対称である。平面形状は、
図2に示す正面方向から見た場合の形状である。本実施形態では、接着剤51の塗布領域は、長方形状であり、短辺の中心を結んだ中心線と、囲み領域52の境界線53とが重なるように配置される。換言すると、各箇所の接着剤51において、囲み領域52の内側の塗布領域と囲み領域52の外側の塗布領域の面積が等しくなるように接着剤51が塗布される。
【0035】
以上説明したように本実施形態の鏡面体支持構造では、四箇所の接着剤51は、四箇所の位置決め部50を直線で結んでできる囲み領域52の境界線53上を含む箇所に全て位置する。囲み領域52の境界線53上の箇所に接着剤51が位置するので、硬化収縮によって、ミラー部121には曲げる方向のみが作用し、広げる方向の力が作用しない。したがって曲げる方向の力と広げる方向の力が混在しないので、鏡面に歪みの変曲点が発生することを抑制することができる。
【0036】
また本実施形態では、位置決め部50は、囲み領域52が長方形状となるように、4つ設けられる。また接着剤51は、囲み領域52の境界線53のうち、対向する一対の辺の境界線53上のみを含む箇所に位置する。このように接着剤51を設けるので、硬化収縮によって、対向する一対の辺が延びる方向に関して、曲げる方向の力が作用する。本実施形態では、囲み領域52の長辺に接着剤51が塗布されているので、
図2で示す左右方向において曲げる方向の力が発生する。したがって硬化収縮に起因して曲げる方向の力が作用する方向を限定することができる。これによって歪み補正を簡単にすることができる。
【0037】
さらに本実施形態では、囲み領域52の境界線53上を含む箇所に位置する接着剤51は、平面形状が境界線53に対して線対称である。各接着剤51の平面形状が線対称であるので、硬化収縮に起因する力を境界線53の内側と外側で等しくすることができる。これによって接着剤51の塗布領域における硬化収縮の合力の作用点は、境界線53上または境界線53の近くにすることができる。したがって境界線53上または境界線53の近くで硬化収縮に起因する力が作用するので、曲げる方向の力のみがミラー部121に作用し、鏡面に硬化収縮に起因して変曲点が発生することを抑制することができる。
【0038】
本実施形態では、4箇所の接着剤51は、囲み領域52の長辺に全て位置しているが、このような構成に限るものではない。たとえば
図4に示すように、4箇所の接着剤51は、囲み領域52のそれぞれに位置するように配置してもよい。
図4に示す構成によって、前述の長辺のみに接着剤51が位置する効果を除く残余の効果は奏することができる。
【0039】
また本実施形態では、4箇所の接着剤51と位置決め部50の位置は異なっているが、このような構成に限るものではない。たとえば
図5に示すように、4箇所の接着剤51は、囲み領域52の頂点、すなわち位置決め部50と同じ場所に設けてもよい。
【0040】
また本実施形態では、位置決め部50は4箇所であり、接着剤51も4箇所に設けられているが、このような構成に限るものではない。たとえば
図6に示すように、位置決め部50は3箇所であり、接着剤51も位置決め部50と同じ場所の3箇所であってもよい。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に関して、
図7~
図10を用いて説明する。本実施形態では、囲み領域52の内側のみに接着剤51が設けられる点に特徴を有する。
図7に示すように、囲み領域52の形状は、前述の第1実施形態と同様である。
【0042】
接着剤51は、複数箇所、本実施形態では4箇所に設けられる。4箇所の接着剤51は、
図7に示すように、4つの位置決め部50を直線で結んでできる囲み領域52の内側のみに全て位置する。
図7では、4箇所の接着剤51の塗布領域が長方形状である。また長方形状に限るものではなく、
図8に示すように、4箇所の接着剤51の塗布領域が円形状であってもよい。
【0043】
接着剤51は、3つ以上、本実施形態では4つの位置決め部50を直線で結んでできる囲み領域52の内側のみに位置する。接着剤51が囲み領域52の内側のみに設けられる場合には、硬化収縮に起因して、鏡面体には曲げる方向の力のみが作用する。したがって曲げる方向の力と広げる方向の力が混在しないので、鏡面に歪みの変曲点が発生することを抑制することができる。
【0044】
本実施形態では、囲み領域52の形状は、第1実施形態と同様であったが、このような構成に限るものではない。
図9に示すように、囲み領域52はより小さい長方形状であってもよい。
【0045】
また本実施形態では、接着剤51は、複数箇所に設けられているが、このような構成に限るものではなく、
図10に示すように、接着剤51を1箇所だけ設ける構成であってもよい。
図10では、
図7および
図8に示す塗布領域よりも大きな塗布領域を用いてミラー部121とホルダ122とを固定している。
【0046】
さらに本実施形態では、接着剤51は囲み領域52の内側のみに設けられるが、このような構成に限るものではない。たとえば接着剤51は、囲み領域52の外側のみに位置する構成であってもよい。接着剤51が囲み領域52の外側のみに設けられる場合には、硬化収縮に起因して、鏡面体には広げる方向の力のみが作用する。したがって曲げる方向の力と広げる方向の力が混在しないので、鏡面に歪みの変曲点が発生することを抑制することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0048】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0049】
前述の第1実施形態では、複数の接着剤51は、3つ以上の位置決め部50を直線で結んでできる囲み領域52の境界線53上を含む箇所に全て位置する構成であるが、このような構成に限るものではない。接着剤51は、囲み領域52の境界線53上を含む箇所以外のその他の箇所にも設けられ、その他の箇所は、囲み領域52の内側のみであってもい。換言すると、接着剤51は、囲み領域52の境界線53上および囲み領域52の内側のみに設けられてもよい。
【0050】
前述の第1実施形態では、鏡面体支持構造は、HUD装置100に適用されているが、HUD装置100に限るものではない。鏡面体を支持する構成であれば、他の装置であってもよい。また鏡面体は、凹面鏡に限るものではなく、平面鏡であってもよく、凸面鏡であってもよい。
【0051】
前述の第1実施形態では、位置決め部50はホルダ122に設けられているが、ホルダ122に限るものではない。位置決め部50は、ミラー部121に設け、ミラー部121の裏面からホルダ122の表面に向けて突出する凸部であってもよい。また位置決め部50は、ホルダ122のみ、またはミラー部121のみに限るものではなく、ホルダ122とミラー部121との両方に設けてもよい。また位置決め部50は、ホルダ122に一体でなく、別体に構成し、ホルダ122に嵌合などによって設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…ウインドシールド(投影部材) 10a…投射位置 20…虚像
30…アイボックス 40…インストルメントパネル 40a…開口部
50…位置決め部 51…接着剤 52…囲み領域 53…境界線
100…HUD装置 110…表示装置(表示器) 120…反射装置
121…ミラー部(鏡面体) 122…ホルダ 123…軸部
124…モータ部(駆動部) 125…基材 140…制御装置