(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170412
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】鏡面体支持構造および虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221102BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221102BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20221102BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G02B7/182
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076516
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
【テーマコード(参考)】
2H043
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H043CA02
2H043CA10
2H043CB01
2H043CD01
2H043CE00
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA43
2H199DA44
2H199DA46
3D344AA01
3D344AA12
3D344AA19
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】接着剤が硬化する時間を短くすることができる鏡面体支持構造および該鏡面体支持構造を有する虚像表示装置を提供する。
【解決手段】鏡面体支持構造では、板状であって、表面に鏡面を有するミラー部121と、鏡面体の鏡面とは反対側の裏面に接着剤51によって固定されており、ミラー部121を支持するホルダ122と、を含み、接着剤51は、紫外線によって硬化する紫外線硬化性を有する。紫外線硬化性を有する接着剤51は、紫外線54を照射することで短時間、たとえば数秒で硬化する。これによって接着剤51が硬化する時間を短くすることでき、製造時間を短縮することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体(121)と、
前記鏡面体の前記鏡面とは反対側の裏面に接着剤(51)によって固定されており、前記鏡面体を支持するホルダ(122)と、を含み、
前記接着剤は、紫外線によって硬化する紫外線硬化性を有する鏡面体支持構造。
【請求項2】
前記接着剤は、前記鏡面体の裏面の周縁部(50)に設けられる請求項1に記載の鏡面体支持構造。
【請求項3】
前記接着剤は、前記周縁部の一部のみに設けられる請求項2に記載の鏡面体支持構造。
【請求項4】
前記鏡面体は、表面に前記鏡面が形成される基材(125)を有し、
前記基材は、紫外線を透過する紫外線透過性を有する請求項1~3のいずれか1つに記載の鏡面体支持構造。
【請求項5】
前記鏡面体の裏面と前記ホルダとの間には、硬化した前記接着剤を囲む壁部(52)を有し、
前記壁部には切欠き(53)が形成されている請求項1~4のいずれか1つに記載の鏡面体支持構造。
【請求項6】
画像の表示光を出射する表示装置(110)と、
前記表示光を反射させて、視認者の前方に位置する投影部材(10)に投影する反射装置(120)と、
前記反射装置を駆動して、前記表示光に対する反射角度を調整する駆動部(124)と、を備え、
前記画像を、前記投影部材の前方に虚像(20)として、前記視認者に対して重畳表示する虚像表示装置であって、
前記反射装置は、請求項1~5のいずれか1つに記載の鏡面体支持構造を有し、
前記鏡面体の前記鏡面は、前記表示光を反射する虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、鏡面体を支持する鏡面体支持構造、および鏡面体支持構造を有する虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置では、反射ミラーがホルダに接着保持されている。接着剤として、湿気硬化性の接着剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の湿気硬化性の接着剤では、接着剤が硬化するまでに時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、接着剤が硬化する時間を短くすることができる鏡面体支持構造、および該鏡面体支持構造を有する虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された鏡面体支持構造は、板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体(121)と、鏡面体の鏡面とは反対側の裏面に接着剤(51)によって固定されており、鏡面体を支持するホルダ(122)と、を含み、接着剤は、紫外線によって硬化する紫外線硬化性を有する鏡面体支持構造である。
【0008】
このような鏡面体支持構造に従えば、接着剤は紫外線によって硬化する紫外線硬化性を有する。紫外線硬化性を有する接着剤は、紫外線を照射することで短時間、たとえば数秒で硬化する。これによって接着剤が硬化する時間を短くすることでき、製造時間を短縮することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のHUD装置100の構成を示す図。
【
図6】鏡面体支持構造の他の実施例1を示す正面図。
【
図7】鏡面体支持構造の他の実施例2を示す正面図。
【
図8】鏡面体支持構造の他の実施例3を示す正面図。
【
図9】鏡面体支持構造の他の実施例4を示す正面図。
【
図10】第2実施形態の接着剤の硬化方法を示す側面図。
【
図11】第3実施形態のミラー部の一部を拡大して示す正面図。
【
図12】
図11の切断面線XII-XIIから見て示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、
図1~
図9を用いて説明する。
図1に示すように、虚像表示装置100は、例えば、自動車等の車両に搭載される。虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイ(Head‐Up Display)装置と呼ばれ、以下「HUD装置」と表記する。HUD装置100は、表示装置110から出射される画像の表示光を、視認者の前方に位置する投影部材の投射位置10aに入射させる。車載用のHUD装置100では、視認者は運転者であり、投影部材は車両のフロント側のウインドシールド10である。HUD装置100は、運転者と投射位置10aとを結ぶ線の車両前方延長線上の前景に、画像を虚像20として重畳表示する。これによって運転者は、アイボックス30を通して、虚像20を視認することができる。アイボックス30は、運転者が虚像20を視認可能とする領域であり、運転者の目の前に仮想されるのぞき窓のようなものである。アイボックス30は、例えば、矩形を成している。
【0013】
HUD装置100は、
図1に示すように、表示装置110、反射装置120、および制御装置140等を備えている。HUD装置100の主たる構成要素となる表示装置110、反射装置120、制御装置140は、ウインドシールド10の下端面から車室内後方、更には下方に延出されるインストルメントパネル40の内側に配設されている。
【0014】
インストルメントパネル40の上面には、反射装置120からの表示光を通過させる開口部40aが設けられている。また開口部40aには透光性を有する防塵カバーが設けられている。以下、HUD装置100の各構成の詳細について説明する。
【0015】
表示装置110は、画像を表す表示光を出射する。表示装置110は、光源部、レンズ、および表示器等を有している。光源部は、表示器に対して光を出射する。光源部は、制御装置140によって発光状態が制御される。
【0016】
レンズは、光源部からの光を表示器に向けて集光させる部材であり、光源部による光の出射側に配置されている。表示器は、光源部からの光によって透過照明されて、画像を表す表示光を出射する。表示器は、制御装置140によって駆動制御される。
【0017】
表示器は、光源部から出射される光によって、画像を表す表示光を反射装置120に向けて出射する。表示器によって形成される画像は、例えば、車両用ナビゲーションシステムにおける案内画像、および車両走行時における車両情報を示すメータ画像などである。
【0018】
反射装置120は、表示光を反射させる装置であり、
図1に示すように、ミラー部121、ホルダ122、軸部123、およびモータ部124等を有している。
【0019】
ミラー部121は、表示器からの表示光を、インストルメントパネル40の開口部40aを通して、ウインドシールド10の投射位置10aに反射させる反射部となっている。ミラー部121は、板状であって、表面に鏡面を有する鏡面体である。ミラー部121は、例えば、板材の表面にアルミニウムや銀等の金属が蒸着されて形成されており、表示器を向く側の面が鏡面、すなわち反射面となっている。ミラー部121は、鏡面とは反対側、すなわち反射面とは反対側に凹む凹面鏡となっている。これによってミラー部121は、画像を投射位置10aに向けて拡大する。
【0020】
ホルダ122は、ミラー部121を保持する部材であり、例えば、樹脂材によって形成されている。ホルダ122は、ミラー部121の鏡面とは反対側の裏面を覆うように配置されている。ミラー部121は、ホルダ122に接着剤によって接合されている。
【0021】
軸部123は、ホルダ122の水平方向、すなわち車両の左右方向の両端側に、ホルダ122に一体的に形成されている。軸部123は、図示しない支持体に回転可能に支持されている。
【0022】
モータ部124は、ホルダ122を駆動して、表示光に対する反射角度を調整する駆動部である。モータ部124は、例えば、入力されるパルス電力に同期して動作する同期電動機であり、一方側の軸部123に接続されている。モータ部124は、制御装置140によって、回転制御される。モータ部124が正方向、あるいは逆方向に回転されることで、ホルダ122は、軸部123を中心として、支持体に対して回動されるようになっている。
【0023】
制御装置140は、表示器の画像の形成制御およびモータ部124の作動制御などを行う。制御装置140は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、表示器に表示すべき画像を形成させる。すると、
図1に示すように、表示器は、光源部から出射される光によって画像の表示光をミラー部121に出射させる。ミラー部121は、表示器から出射された表示光を、開口部40aを通して、ウインドシールド10の投射位置10aに反射させる。投射位置10aに反射された表示光は、運転者と投射位置10aとを結ぶ線の車両前方延長線上に虚像20として重畳表示されて、アイボックス30を通して、運転者に視認されることになる。
【0024】
次に、ミラー部121とホルダ122とを接着固定する鏡面体支持構造に関して説明する。ミラー部121の裏面とホルダ122とは、接着剤51によって固定される。接着剤51は、紫外線54によって硬化する紫外線硬化性を有する。紫外線硬化性を有する接着剤51は、紫外線54を照射することで、短時間、たとえば数秒で硬化する。
【0025】
接着剤51は、
図2に仮想線で示すように、ミラー部121の裏面の周縁部50に設けられる。周縁部50は、
図2に示すように、長方形状のミラー部121の辺付近の領域である。周縁部50は、裏面の辺に接する領域であって、その面積が裏面の全領域のたとえば3分の1の占める領域、好ましくは4分の1を占める領域である。換言すると、周縁部50は、ミラー部121の裏面の中央部を除く領域である。中央部は、ミラー部121の中心を含み、側面からの光が届きにくい領域である。
【0026】
また接着剤51は、
図3に示すように、ミラー部121とホルダ122とが対向する隙間に設けられる。接着剤51を硬化するためには、
図4および
図5に示すように、紫外線54を硬化前の接着剤51に照射する必要がある。接着剤51がミラー部121の裏面の中央部に設けられると、紫外線54が側面からは届きにくい。そこで紫外線54が接着剤51に照射しやすいように、接着剤51は周縁部50に設けられる。換言すると、紫外線54が側部から届く領域に接着剤51が設けられる。
【0027】
ミラー部121とホルダ122とを接着する場合、
図2および
図3に示すように、接着剤51をミラー部121またはホルダ122に塗布する。接着剤51は、
図2に示すように、
図2の左右方向に間隔をあけて、またミラー部121の長辺の付近の周縁部50に設けられる。
【0028】
そしてミラー部121とホルダ122とを対向させて、
図3に示すように配置する。その後、
図4および
図5に示すように、
図4では上下方向の両側から、
図5では左右方向の両側から紫外線54を全ての接着剤51に向けて照射する。これによって全ての接着剤51をほぼ同時に、短時間で硬化することができる。
【0029】
接着剤51を設ける位置は、
図2に示す位置に限るものではない。ミラー部121の周縁部50であれば、たとえば
図6~
図9に示すような位置に接着剤51を設けても良い。
図6では、接着剤51を左右方向に延びるように、長辺の付近の周縁部50に設けている。
図7では、スポット円状の接着剤51を左右方向に間隔をあけて、長辺の付近の周縁部50に設けている。
【0030】
図8では、接着剤51を左右方向に延びる長辺状の接着剤51を、左右方向の中央で左右に分けて、長辺の付近の周縁部50に設けている。
図9では、四角枠状に接着剤51を設けて、ミラー部121の周縁部50の全てに接着剤51を設けている。
【0031】
以上説明したように本実施形態の鏡面体支持構造では、接着剤51は紫外線54によって硬化する紫外線硬化性を有する。紫外線硬化性を有する接着剤51は、紫外線54を照射することで短時間、たとえば数秒で硬化する。これによって接着剤51が硬化する時間を短くすることでき、製造時間を短縮することができる。
【0032】
また本実施形態では、
図2に示すように、接着剤51は周縁部50の一部のみに設けられている。一部のみに設けられるので、側面から紫外線54を照射すると、
図4に示すように、接着剤51の間を紫外線54が通過して、反対側に位置する接着剤51に照射することができる。したがって紫外線54が届く範囲を広くすることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に関して、
図10を用いて説明する。本実施形態では、ミラー部121の基材125が紫外線54を透過する紫外線透過性を有する点に特徴を有する。基材125の紫外線透過性は、少なくとも接着剤51を硬化できることができる紫外線54を透過する。基材125の紫外線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0034】
ミラー部121は、紫外線透過性を有する基材125の表面にアルミニウムや銀等の金属が蒸着されて形成される。したがって
図10に示すように、基材125の側面から紫外線54を照射することで、よりミラー部121の中央側に紫外線54を照射することができる。
【0035】
このように基材125が紫外線透過性を有するので、ミラー部121とホルダ122との間だけでなく、基材125の厚み分も紫外線54が通過する経路に用いることができる。これによって、より周縁部50から中央部側に紫外線54の照射が可能となる。接着剤51をより内側に広げて設けることができるので、接着範囲に奥行きを設けられ、接着強度を上げることができる。またより広い面積に紫外線54を照射できるので、硬化時間を短縮することができる。また広い面積に紫外線54を照射することで、硬化ムラを抑制することができる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態に関して、
図11および
図12を用いて説明する。本実施形態では、前述の第2実施形態と類似しており、ミラー部121の裏面とホルダ122との間には、硬化した接着剤51を囲む壁部52がさらに設けられる点に特徴を有する。
【0037】
壁部52は、
図11に示すように、接着剤51を囲むように設けられる。接着剤51は、硬化することでホルダ122とミラー部121とを固定する。また壁部52は、接着剤51の全周を囲んでいるわけではなく、一部に切欠き53を有する。具体的には、壁部52には、壁部52からミラー部121の最も近い周縁部50側に切欠き53が形成されている。換言すると、壁部52は、接着剤51に紫外線54を照射できるように、照射側を切り欠いた構造を有する。したがって切欠き53の大きさは、紫外線54によって接着剤51が硬化する大きさおよび形状が選択される。
【0038】
このような壁部52を設けることで、接着剤51を塗布するときに、不必要に広がることを抑制することができる。また壁部52が紫外線54の照射を遮らないように、切欠き53を設けることがで、
図12に示すように、接着剤51に紫外線54を照射することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0040】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0041】
前述の第1実施形態では、鏡面体支持構造は、HUD装置100に適用されているが、HUD装置100に限るものではない。鏡面体を支持する構成であれば、他の装置であってもよい。また鏡面体は、凹面鏡に限るものではなく、平面鏡であってもよく、凸面鏡であってもよい。
【0042】
前述の第1実施形態では、接着剤51は鏡面体の周縁部50に設けられているが、このような構成に限るものではなく、中央側に接着剤51を設けてもよい。たとえばホルダ122を紫外線透過性を有する材料から構成し、ホルダ122を介して紫外線54を透過して、中央部に位置する接着剤51を硬化してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ウインドシールド(投影部材) 10a…投射位置 20…虚像
30…アイボックス 40…インストルメントパネル 40a…開口部
50…周縁部 51…接着剤 52…壁部 53…切欠き 54…紫外線
100…HUD装置 110…表示装置(表示器) 120…反射装置
121…ミラー部(鏡面体) 122…ホルダ 123…軸部
124…モータ部(駆動部) 125…基材 140…制御装置