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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170420
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20221102BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221102BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20221102BHJP
   F01P 7/02 20060101ALI20221102BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B60K11/04 J
F02D45/00 345
F02D45/00 360Z
F01P11/10 B
F01P7/02 Z
B60H1/22 651C
B60H1/22 671
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076526
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正臣
(72)【発明者】
【氏名】塚原 貴宗
(72)【発明者】
【氏名】永木 恵太
【テーマコード(参考)】
3D038
3G384
3L211
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC11
3D038AC17
3D038AC23
3G384AA28
3G384BA47
3G384CA25
3G384CB09
3G384DA44
3L211AA10
3L211BA01
3L211BA41
3L211FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料タンクでの蒸発燃料の漏れ検知を妨げることなく、電源スイッチのオフ後に通気口の閉じ制御を実行することができる車両を提供する。
【解決手段】車両は、シャッタ機構23,24と、燃料漏れ検知装置55と、制御装置25と、を備える。シャッタ機構23,24は、車両前部の通気口を開閉する。燃料漏れ検知装置55は、燃料タンク50での蒸発燃料の漏れを検知する。制御装置25は、電源スイッチ38をオフにしてから一定時間の経過後に通気口21,22を閉じるようにシャッタ機構23,24を制御するとともに、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行する。制御装置25は、電源スイッチ38をオフにした後にシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作を行う直前に、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の通気口を開閉するシャッタ機構と、
燃料タンクでの蒸発燃料の漏れを検知する燃料漏れ検知装置と、
車両の電源スイッチをオフにしてから一定時間の経過後に前記通気口を閉じるように前記シャッタ機構を制御するとともに、前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後に前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作を行う直前に、前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにしてから所定時間の経過後に前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行し、当該燃料漏れ検知装置による漏れ検知の完了の後に前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後に前記シャッタ機構の故障点検を行い、前記シャッタ機構に故障があるときには、シャッタ機構による前記通気口の閉操作をキャンセルすることをことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後に前記シャッタ機構の故障点検を行う前に、前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行することを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記電源スイッチをオンにする前に、空調作動を行うプレ空調機能を備えた空調装置をさらに備え、
前記空調装置によるプレ空調を行う場合には、前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後の前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作をキャンセルすることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項6】
充電可能な駆動バッテリと、
前記通気口を通して外気に放熱される前記駆動バッテリの冷却回路と、をさらに備え、
前記電源スイッチをオフにした状態で前記駆動バッテリを充電する場合には、前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後の前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作をキャンセルすることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の通気口を開閉するシャッタ機構を備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内の機器の冷却技術として、エンジンルーム内の機器の発熱状況に応じて、車両の前部の通気口を開閉するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両は、車両前部の通気口に、当該通気口を開閉するためのシャッタ機構が設けられている。シャッタ機構は、制御装置による制御により、車両走行時に通気口を開き、車両停車後の電源オフ時に通気口を閉じる。ただし、車両の走行状況によっては、車両の電源スイッチがオフになってもエンジンルーム内が高温状態になることがある。このため、特許文献1に記載の車両では、エンジンルーム内の機器に熱害が発生すると予測されるときには、電源スイッチのオフ後に所定時間の経過を待ってから通気口が閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-81412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両の燃料タンクでの蒸発燃料の漏れ検知(漏れ点検)を定期的に行うことが望まれている。この漏れ検知は、ワンドライビングサイクル(前回エンジン始動を行った後に次回エンジン始動を行うまで)で最低一回行うことが望ましい。蒸発燃料の漏れ検知は、エンジンの作動中は正確な検知結果を得ることが難しいため、通常、電源スイッチをオフにしてから所定時間の経過後に行われる。
【0006】
特許文献1に記載のようなシャッタ機構を備えた車両においても、燃料タンクでの蒸発燃料の漏れ検知をワンドライビングサイクルの間に最低一回行う必要がある。しかし、特許文献1に記載の車両では、電源スイッチのオフ後に所定時間の経過を待ってから通気口が閉じられることがあるため、通気口の閉じ制御と蒸発燃料の漏れ検知がタイミング的に重なり、蒸発燃料の漏れ検知の実行が妨げられることが懸念される。
【0007】
そこで本発明は、燃料タンクでの蒸発燃料の漏れ検知を妨げることなく、電源スイッチのオフ後に通気口の閉じ制御を実行することができる車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る車両は、車両前部の通気口(例えば、実施形態の上段通気口21、下段通気口22)を開閉するシャッタ機構(例えば、実施形態の上段シャッタ機構23、下段シャッタ機構24)と、燃料タンク(例えば、実施形態の燃料タンク50)での蒸発燃料の漏れを検知する燃料漏れ検知装置(例えば、実施形態の燃料漏れ検知装置55)と、車両の電源スイッチ(例えば、実施形態の電源スイッチ38)をオフにしてから一定時間の経過後に前記通気口を閉じるように前記シャッタ機構を制御するとともに、前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行する制御装置(例えば、実施形態の制御装置25)と、を備え、前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後に前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作を行う直前に、前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行することを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、電源スイッチをオフにした後には、シャッタ機構による通気口の閉操作を行う直前に、燃料タンクの漏れ検知が燃料漏れ検知装置によって実行される。これにより、通気口の閉操作制御とタイミング的に重なることなく、蒸発燃料の漏れ検知が確実に実行される。
【0010】
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにしてから所定時間の経過後に前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行し、当該燃料漏れ検知装置による漏れ検知の完了の後に前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作を実行するようにしても良い。
【0011】
この場合、電源スイッチをオフにしてから所定時間の経過後に燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行し、その漏れ検知の完了の後にシャッタ機構による通気口の閉操作が実行されるため、燃料漏れ検知装置による漏れ検知と通気口の閉操作の実行がタイミング的に重なるのを確実に防ぐことができる。
【0012】
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後に前記シャッタ機構の故障点検を行い、前記シャッタ機構に故障があるときには、シャッタ機構による前記通気口の閉操作をキャンセルするようにしても良い。
【0013】
この場合、シャッタ機構に故障があるときには、シャッタ機構による通気口の閉操作がキャンセルされるため、シャッタ機構が無理に閉じられることで、通気口が再度開かなくなるのを回避することができる。したがって、本構成を採用した場合、シャッタ機構の故障によって車両の通気性能が低下するのを防ぐことができる。
【0014】
前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後に前記シャッタ機構の故障点検を行う前に、前記燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行するようにしても良い。
【0015】
この場合、シャッタ機構の故障点検を行う前に、燃料漏れ検知装置による漏れ検知が実行されるため、シャッタ機構の故障の有無に拘らず燃料タンクでの蒸発燃料の漏れを確実に検知することができる。
【0016】
車両は、前記電源スイッチをオンにする前に、空調作動を行うプレ空調機能を備えた空調装置(例えば、実施形態の空調装置12)をさらに備え、前記空調装置によるプレ空調を行う場合には、前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後の前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作をキャンセルするようにしても良い。
【0017】
この場合、空調装置によるプレ空調を行うときには、電源スイッチをオフにした後のシャッタ機構による通気口の閉操作がキャンセルされるため、空調装置のコンデンサに通気口を通して外気を導入することができる。したがって、本構成を採用した場合には、プレ空調の実施時に冷房性能が低下するのを抑制することができる。
【0018】
車両は、充電可能な駆動バッテリ(例えば、実施形態の駆動バッテリ60)と、前記通気口を通して外気に放熱される前記駆動バッテリの冷却回路と、をさらに備え、前記電源スイッチをオフにした状態で前記駆動バッテリを充電する場合には、前記制御装置は、前記電源スイッチをオフにした後の前記シャッタ機構による前記通気口の閉操作をキャンセルするようにしても良い。
【0019】
この場合、電源スイッチをオフにした状態で駆動バッテリを充電するときには、電源スイッチをオフにした後のシャッタ機構による通気口の閉操作がキャンセルされるため、通気口を通して駆動バッテリの冷却回路に外気を導入することができる。したがって、本構成を採用した場合には、駆動バッテリを充電する際に駆動バッテリが高温になるのを抑制することができる。
また、駆動バッテリの冷却回路の温度に応じた速度で冷却ファンが作動するシステムでは、冷却ファンが高回転で作動することによる騒音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両は、制御装置が、電源スイッチをオフにした後にシャッタ機構による通気口の閉操作を行う直前に、燃料漏れ検知装置による漏れ検知を実行する。このため、燃料タンクでの蒸発燃料の漏れ検知を妨げることなく、電源スイッチのオフ後に通気口の閉じ制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の車両を車両前後方向に沿って縦断面にした要部の概略構成図。
図2】実施形態の車両の前側の下部側構成部材の平面図。
図3】実施形態の車両の冷却回路の一部を示す回路図。
図4】実施形態の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、前進走行する車両における向きと同一とする。また、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の左側方を指す矢印LHと、車両の上方を指す矢印UPが記されている。
【0023】
図1は、本実施形態の車両1の前部を車両前後方向に沿って縦断面にした要部の概略構成図である。
図1において、符号2は、運転席の前方に設けられたエンジンルームである。エンジンルーム2内には、車両前後方向に略沿って延びる図示しない一対のフロントサイドフレームが配置されている。一対のフロントサイドフレームには、サブフレーム3を介して駆動源である内燃機関10(以下、「エンジン10」と称する。)と電動モータ11が支時されている。エンジン10と電動モータ11は、トランスミッション20(図3参照)とともに一体ブロックとしてエンジンルーム2内の略中央部に配置されている。
本実施形態の車両1は、駆動源としてエンジン10と電動モータ11を搭載したハイブリッド車両である。エンジン10と電動モータ11は、制御装置25により、車両1の走行状況に応じて駆動が適宜制御される。また、電動モータ11は、車両1の制動時に制御装置25による制御によって回生発電を行う。
【0024】
エンジン10と電動モータ11の前方側には、エンジン10、電動モータ11、空調装置12の各冷却部を外気によって冷却するための冷却ブロック13が配置されている。
冷却ブロック13は、エンジン10の冷却液の熱を外気に放熱するための第1ラジエータ14と、電動モータ11の駆動ユニット15(PDU)を冷却する冷却液の熱を外気に放熱するための第2ラジエータ16と、空調装置12の冷媒回路(冷凍サイクル)の凝縮熱を外気に放熱するためのコンデンサ17と、第1ラジエータ14の後方に配置された冷却ファン18と、を備えている。第2ラジエータ16は、第1ラジエータ14の前面側の下方領域に配置され、コンデンサ17は、第1ラジエータ14の前面側の上方領域に配置されている。第1ラジエータ14は発熱量の多いエンジン10の冷却液の熱を放熱するため、前面側の第2ラジエータ16やコンデンサ17に比較して大型に形成されている。
【0025】
車両前部の車幅方向中央領域には、車両前面側とエンジンルーム2内を連通させる上段通気口21と下段通気口22が配置されている。上段通気口21は、冷却ブロック13のコンデンサ17の前面に対峙する位置に配置され、下段通気口22は、冷却ブロック13の第2ラジエータ16の前面に対峙する位置に配置されている。なお、コンデンサ17と第2ラジエータ16の後方に位置される第1ラジエータ14は、上部領域がコンデンサ17を挟んで上段通気口21に対峙し、下部領域が第2ラジエータ16を挟んで下段通気口22に対峙している。
【0026】
上段通気口21には、上段通気口21を開閉するための上段シャッタ機構23が設けられている。上段シャッタ機構23には、ルーバー等の開閉動作部を操作するためのアクチュエータ23aが設けられている。同様に、下段通気口22には、下段通気口22を開閉するための下段シャッタ機構24が設けられている。下段シャッタ機構24にも、ルーバー等の開閉動作部を操作するためのアクチュエータ24aが設けられている。上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24の各アクチュエータ23a,24aは、制御装置25によって制御される。制御装置25による上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24の制御については後に詳述する。
【0027】
図2は、エンジンルーム2内の下部側構成部材の平面図である。なお、図2中の符号Wfは、トランスミッション20を介して動力源(エンジン10、電動モータ11)によって駆動される前輪である。
図1図2に示すように、エンジンルーム2内の底部にはアンダーカバー26が配置されている。アンダーカバー26は、車両前部のフロントバンパフェイス27の下辺から、サブフレーム3の下面に沿って車室のフロアパネル(図示せず)まで延びている。すなわち、アンダーカバー26は、冷却ブロック13やエンジン10、電動モータ11、トランスミッション20、駆動源のマウント部品5、ステアリング部品6等の下方を覆うように形成されている。
【0028】
アンダーカバー26の前部側の上面には、下段通気口22の下部領域を通過した外気を、第2ラジエータ16と第1ラジエータ14をバイパスして、エンジンルーム2内の第1ラジエータ14の後方領域に流すための冷却ダクト28が配置されている。冷却ダクト28は、下段通気口22の下部領域に後方側から対峙する幅広のベースダクト部28Aと、ベースダクト部28Aの後部に対向して配置される分岐ダクト部28Bを備えている。ベースダクト部28Aの前端部には、下段通気口22の後面に対向する吸気口28aが形成されている。分岐ダクト部28Bには、エンジン10と電動モータ11の前面側に向かって開口する中央排出口28bと、エンジン10と電動モータ11を車幅方向外側に迂回した位置において、車両後方側に向かって開口する一対の側部排出口28cが形成されている。下段通気口22の下部領域を通過した外気は、中央排出口28bを通してエンジン10や電動モータ11に冷却風として流れ込むとともに、側部排出口28cを通してその他の周辺部品(例えば、マウント部品5、ステアリング部品6、トランスミッション20)に冷却風として流れ込む。
【0029】
冷却ブロック13の第1ラジエータ14は、エンジン10の図示しないウォータジャケット内に冷却液を流す第1冷却回路(図示せず)に配置されている。第1ラジエータ14は、第1回路内においてエンジン10を冷却した冷却液の熱を外気に放熱する。第1冷却回路には、当該回路内を流れる冷却液の温度を検出する第1温度センサS1(図1参照)が設けられている。第1温度センサS1の検出信号は、制御装置25に入力される。制御装置25は、第1温度センサS1の検出信号を受け、検出信号に応じて上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24とを制御する。
【0030】
具体的には、制御装置25では、第1冷却回路内の液温に関し、第1閾値Tn1と第2閾値Tn2(Tn1<Tn2)が決められている。制御装置25は、第1冷却回路の内部の冷却液の液温が第1閾値Tn1以上でかつ第2閾値Tn2未満であるときには、上段通気口21を開き、かつ、下段通気口22を閉じるように上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24の各アクチュエータ23a,24aを制御する。また、制御装置25は、第1冷却回路の内部の冷却液の液温が第2閾値Tn2以上であるときには、上段通気口21と下段通気口22を開くように上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24の各アクチュエータ23a,24aを制御する。
なお、第1冷却回路の内部の冷却液の液温が第1閾値Tn1未満のときには、後述する第2冷却回路29の内部の冷却液の液温や空調装置12の作動状況が上段通気口21を開く条件を満たしていなければ、制御装置25は、上段通気口21を閉じるように上段シャッタ機構23を制御する。
【0031】
図3は、電動モータ11の駆動ユニット15(PDU)を冷却するための第2冷却回路29と、トランスミッション20や電動モータ11の機械動作部に潤滑油を循環供給する潤滑冷却回路30を示す回路図である。
図3に示すように、第2冷却回路29は、電動式の送給ポンプP1と、駆動ユニット15(PDU)と、第2ラジエータ16と、が主回路29m内に配置されている。送給ポンプP1から送給された冷却液は、駆動ユニット15を冷却し、駆動ユニット15で吸熱した熱を第2ラジエータ16において外気に放熱する。なお、駆動ユニット15は、図示しない高圧バッテリの直流電流を三相交流に変換するインバータや直流電流の電圧変換を行うDC-DCコンバータ等を含み、作動に伴って高熱を発する。
また、第2冷却回路29は、駆動ユニット15の上流側と下流側を迂回して連通するバイパス通路31を備え、そのバイパス通路31に、開閉バルブ32と、後に詳述する回路熱交換部33が介装されている。
【0032】
第2冷却回路29の主回路29mには、主回路29m内を流れる冷却液の温度を検出する第2温度センサS2が設けられている。第2温度センサS2の検出信号は、制御装置25(図1参照)に入力される。制御装置25は、第2温度センサS2の検出信号を受け、検出信号に応じて下段シャッタ機構24を制御する。
【0033】
具体的は、制御装置25では、第2冷却回路29内の液温に関し、所定の液温閾値Tm1が決められている。制御装置25は、第2冷却回路29の内部の冷却液の液温が液温閾値Tm1以上のときには、下段通気口22を開くように下段シャッタ機構24を制御する。つまり、制御装置25は、駆動ユニット15を冷却する要求があったときに、下段通気口22を開くように下段シャッタ機構24を制御する。
また、第2冷却回路29の内部の冷却液の液温が液温閾値Tm1未満のときには、制御装置25は、後述する潤滑冷却回路30内の油温に拘らず、下段通気口22を閉じるように下段シャッタ機構24を制御する。
【0034】
潤滑冷却回路30には、電動式の送給ポンプP2と、トランスミッション20(潤滑通路)と、電動モータ11(潤滑通路)と、回路熱交換部33と、が配置されている。回路熱交換部33は、潤滑冷却回路30を流れる潤滑油と、第2冷却回路29のバイパス通路31を流れる冷却液との間で熱交換を行う機器である。第2冷却回路29内を流れる冷却液は、第2ラジエータ16において外気に放熱を行うことができる。潤滑冷却回路30を流れる潤滑油は、回路熱交換部33において、第2冷却回路29内を流れる冷却液と熱交換することにより冷却される。
潤滑冷却回路30には、油温センサS3が設けられている。油温センサS3の検出信号は、バルブ制御装置25Aに入力される。バルブ制御装置25Aは、油温センサS3の検出信号を受け、検出信号に応じて第2冷却回路29内の開閉バルブ32を開閉制御する。
【0035】
具体的には、バルブ制御装置25Aでは、潤滑冷却回路30の油温に関し、所定の油温閾値Tk1が決められている。バルブ制御装置25Aは、潤滑冷却回路30の内部の潤滑油の油温が所定の油温閾値Tk1以上のときに、開閉バルブ32を開くように制御する。即ち、第2冷却回路29内の開閉バルブ32は、潤滑冷却回路30内の油温が油温閾値Tk1未満のときには、回路熱交換部33への冷却液の流入を遮断し、潤滑冷却回路30内の油温が油温閾値Tk1以上になったときに、回路熱交換部33への冷却液の流入を許容する。このため、潤滑冷却回路30内の油温が油温閾値Tk1以上になったときには、回路熱交換部33を通して冷却液によって潤滑冷却回路30内の潤滑油が冷却される。
なお、本実施形態では、上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24を制御する制御装置25と、開閉バルブ32を制御するバルブ制御装置25Aが別構成されているが、両者は同じ制御装置によって構成されるようにしても良い。
【0036】
また、制御装置25には、空調装置12が稼働しているか否かを検出する検出信号が入力される。具体的には、例えば、空調装置12の冷媒回路内の図示しないコンプレッサの下流側の圧力が検出信号として用いられ、その検出信号が制御装置25に入力される。
制御装置25は、空調装置12が稼働しているときには、上段通気口21を開くように上段シャッタ機構を23を制御する。これにより、上段通気口21を通してコンデンサ17に外気が導入され、空調装置12による効率の良い冷房運転が可能になる。
【0037】
本実施形態の車両1は、図1に示すように、燃料タンク50での蒸発熱量の漏れを検知する燃料漏れ検知装置55を備えている。燃料漏れ検知装置55はユニット化され、燃料タンク50の内部に設置されている。燃料漏れ検知装置55は、制御装置25からの指令を受け、所定のタイミングで燃料タンク50での蒸発燃料の漏れ検知を実行する。
【0038】
制御装置25は、図1に示す電源スイッチ38(イグニッションスイッチ)をオフにしてから一定時間が経過したときに、サブCPU45が電源40を一時的にオンにし、制御装置25の一部を起動させるウェイクアップ機能を備えている。以下、制御装置25のこの起動を「ウェイクアップ起動」と称する。
燃料漏れ検知装置55による蒸発燃料の漏れ検知は、制御装置25のウェイクアップ起動時に実行される。
【0039】
また、本実施形態の車両1では、電源スイッチ38をオフにしたときに、上段通気口21と下段通気口22が所定時間開き状態に維持され、それによってエンジンルーム2内の熱が車外に放熱される。制御装置25は、電源スイッチ38がオフされてから所定時間の経過後に上段通気口21と下段通気口22を閉じるように上段シャッタ機構23と下段シャッタ機構24を制御する。このシャッタ機構23,24の閉じ制御は、制御装置25のウェイクアップ起動時に実行される。
【0040】
ウェイクアップ起動時における燃料漏れ検知装置55の検知の実行と、シャッタ機構23,24の閉じ制御は、制御装置25によって以下のようにして行う。
すなわち、制御装置25は、電源スイッチ38をオフにした後にシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作を行う直前に、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行する。具体的には、制御装置25は、電源スイッチ38をオフにしてから所定時間(例えば、4時間)の経過後にウェイクアップ起動し、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行し、当該燃料漏れ検知装置55による漏れ検知の完了の後にシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作を実行する。
【0041】
また、制御装置25は、ウェイクアップ起動後に燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行した後に、シャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作を実行する前に、シャッタ機構23,24の故障点検を行う。この故障点検は、例えば、アクチュエータ23a,24aの作動時における操作部の変位状況や、発熱温度等を調べる。また、この故障点検時に、LIN通信の通信異常も点検する。
制御装置25は、シャッタ機構23,24の故障点検時にシャッタ機構23,24やLIN通信に異常があるときには、次に実行するシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作をキャンセルする。なお、制御装置25は、ウェイクアップ起動後にシャッタ機構23,24の故障点検を行う前に、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行するため、シャッタ機構23,24の故障の有無に拘らず、蒸発燃料の漏れ検知はワンドライビングサイクルの間に確実に実行される。
【0042】
つづいて、ウェイクアップ起動時における制御装置25による制御の一例を図4を参照して説明する。
図4のステップS101では、ウェイクアップ起動後の初回の処理であるか否かを判定し、初回の処理である場合には、ステップS102に進んで強制終了タイマをセットする。初回の処理でない場合には、ステップS102の処理をスキップして次のステップS103に進む。強制終了タイマは、セットされた所定時間になったときに、処理の完了に拘わらず制御装置25を強制的にスリープ状態に戻す。
【0043】
ステップS103では、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行する。
次のステップS104では、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知が完了したか否かを判定する。漏れ検知が完了している場合には、ステップS105に進み、漏れ検知が完了してない場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、強制終了時間が経過したか否かの判定を行い、強制終了時間が経過していなければステップS112に進み、一連の処理を継続する。
【0044】
ステップS105では、シャッタ機構23,24の閉じ制御の準備を開始し、つづくステップS107では、シャッタ機構23,24の故障やLIN通信の故障の有無を判定する。少なくとも一方に故障がある場合には、ステップS108に進み、いずれにも故障がない場合には、ステップS109に進む。
ステップS108では、シャッタ機構23,24による通気口21,22の閉じ制御をキャンセルして通気口21,22を開き状態に維持する。この後、ステップS111に進み、制御装置25はスリープ状態に戻される。
ステップS109では、シャッタ機構23,24による通気口21,22の閉じ制御を実行する。つづくステップS110では、シャッタ機構23,24によって通気口21,22が完全に閉じられたか否かを判定し、通気口21,22が完全に閉じられていれば、ステップS111に進んで制御装置25がスリープ状態に戻される。また、通気口21,22が完全に閉じられていなければ、ステップS106に進み、上述のステップS106の処理が実行される。
【0045】
ここで、本実施形態の車両1の空調装置12は、乗員が車両に乗り込んで電源スイッチ38をオンにする前に、空調作動を実行するプレ空調機能を備えている。プレ空調機能による空調は、乗員によるセットにより、降車時に電源スイッチ38をオフにしてから所定時間の経過後に空調装置12を自動的に作動させる。
制御装置25は、乗員によってプレ空調がセットされた場合には、ウェイクアップ起動時におけるシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作(図4のフローチャートにおけるステップS109)をキャンセルする。したがって、プレ空調が実行されるときには、通気口21,22が開いた状態に維持される。
【0046】
また、本実施形態の車両1は、充電可能な駆動バッテリ60(図1参照)と、通気口21,22を通して外気に放熱される駆動バッテリ60の冷却回路(図示せず)と、を備えている。なお、図1中の符号65は、駆動バッテリ60に対する充電の開始を検出する充電検出部である。
制御装置25は、電源スイッチ38がオフにされた後に、充電検出部65によって充電の開始が検出された場合には、ウェイクアップ起動時におけるシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作(図4のフローチャートにおけるステップS109)をキャンセルする。このため、電源スイッチ38がオフの状態で駆動バッテリ60の充電が行われる場合には、通気口21,22が開いた状態に維持される。
【0047】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施形態の車両1は、電源スイッチ38をオフにした後にシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作を行う直前に、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行する。このため、本実施形態の車両では、燃料タンク50での蒸発燃料の漏れ検知を妨げることなく、電源スイッチ38のオフ後に通気口21,22の閉じ制御を実行することができる。
【0048】
また、本実施形態の車両1では、電源スイッチ38をオフにしてから所定時間の経過後(ウェイクアップ起動時)に燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行し、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知の完了の後にシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作を実行する。このため、本構成を採用した場合には、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知と通気口21,22の閉操作の実行がタイミング的に重なるのを確実に防止することができる。
【0049】
また、本実施形態の車両1は、ウェイクアップ起動後にシャッタ機構23,24の故障点検を行い、シャッタ機構23,24に故障があるときには、シャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作をキャンセルする。このため、シャッタ機構23,24に故障がある状態でシャッタ機構23,24が無理に閉じられることで、通気口21,22が再度開かなくなるのを回避することができる。したがって、本構成を採用した場合、シャッタ機構23,24の故障によって車両1の通気性能が低下するのを未然に防止することができる。
【0050】
さらに、本実施形態の車両1では、ウェイクアップ起動後にシャッタ機構23,24の故障点検を行う前に、燃料漏れ検知装置55による漏れ検知を実行する。このため、シャッタ機構23,24の故障の有無に拘らず燃料タンク50での蒸発燃料の漏れを確実に検知することができる。
【0051】
また、本実施形態の車両1は、空調装置12によるプレ空調を行う場合には、ウェイクアップ起動時におけるシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作をキャンセルする。このため、プレ空調の実施時に、空調装置12のコンデンサ17に通気口21,22を通して外気を導入することができる。したがって、本構成を採用した場合には、プレ空調の実施時に冷房性能が低下するのを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態の車両1は、電源スイッチ38をオフにした状態で駆動バッテリ60を充電する場合には、ウェイクアップ起動時におけるシャッタ機構23,24による通気口21,22の閉操作をキャンセルする。このため、電源スイッチ38をオフにした状態で駆動バッテリ60を充電する際に、通気口21,22を通して駆動バッテリ60の冷却回路に外気を導入することができる。したがって、本構成を採用した場合には、駆動バッテリ60を充電する際に駆動バッテリ60が高温になるのを抑制することができる。
また、駆動バッテリ60の冷却回路の温度に応じた速度で冷却ファンが作動するシステムでは、冷却ファンが高回転で作動することによる騒音の発生を抑制することができる。つまり、本構成では、通気口21,22を通して駆動バッテリ60の冷却回路を効率良く冷却することができるため、冷却ファンの作動速度を低く抑え、騒音の発生を抑制することができる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、通気口が上下二段に設けられ、各通気口に夫々シャッタ機構が設けられているが、通気口とシャッタ機構は各一つであっても良い。また、通気口とシャッタ機構の数は三つ以上であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
1…車両
12…空調装置
21…上段通気口(通気口)
22…下段通気口(通気口)
23…上段シャッタ機構(シャッタ機構)
24…下段シャッタ機構(シャッタ機構)
25…制御装置
38…電源スイッチ
50…燃料タンク
55…燃料漏れ検知装置
60…駆動バッテリ
図1
図2
図3
図4