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特開2022-170423コーヒー保存用袋体およびコーヒー保存方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170423
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】コーヒー保存用袋体およびコーヒー保存方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B65D81/26 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076533
(22)【出願日】2021-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】516340342
【氏名又は名称】株式会社W
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB23
3E067AB24
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA06
3E067CA24
3E067EA06
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GA19
3E067GB02
3E067GB05
3E067GD01
3E067GD02
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】外部からの酸素の侵入を防止しながら、内部で発生した二酸化炭素を排出できるコーヒー保存用袋体等を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、500g以下のコーヒーをコーヒー保存用袋体10であって、フィルム1の2つの端部が接合さている袋体の縁にほぼ平行に延びる幅5mm以上15mm以下の帯状シール部12を備え、帯状シール部がフィルムの2つの端部同士が接合されていない1本の非接合部20を含み、非接合部が袋体の内部と外部を連通させる1本の通気路20を形成し、通気路は、長さ100mm以上400mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下であるコーヒー保存用袋体が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500g以下のコーヒーを保存するためのコーヒー保存用袋体であって、
フィルムの2つの端部が接合されている前記袋体の縁にほぼ平行に延びる幅5mm以上15mm以下の帯状シール部を備え、
前記帯状シール部が前記フィルムの2つの端部同士が接合されていない1本の非接合部を含み、
前記非接合部が前記袋体の内部と外部を連通させる1本の通気路を形成し、
前記通気路は、長さ100mm以上400mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下であり、
ことを特徴とするコーヒー保存用袋体。
【請求項2】
前記フィルムがバリアフィルムである、
請求項1に記載のコーヒー保存用袋体。
【請求項3】
前記通気路の面積と前記帯状シール部の面積の比が0.05以上0.50以下である、
請求項1または2に記載のコーヒー保存用袋体。
【請求項4】
前記帯状シール部が、超音波接合によりフィルムを接合することによって形成された超音波接合部である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコーヒー保存用袋体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の袋体内で60g以上500g以下のコーヒーを保存するステップを備えている、
ことを特徴とするコーヒー保存方法。
【請求項6】
前記保存ステップが、前記袋体内に窒素ガスを充填した状態で行なわれる、
請求項5に記載のコーヒー保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーヒー保存用袋体およびコーヒー保存方法に関し、詳細には、袋体内で発生する二酸化炭素を袋体外に排出し袋体内のコーヒーの劣化を防止しながら保存するコーヒー保存用袋体およびコーヒー保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、保存中に酸素が触れると品質が劣化するため、保存袋内に外部から酸素が侵入することを防止する必要がある。一方、保存中にコーヒーが発生させた二酸化炭素輸送用容器によって袋体が膨張し、場合によっては破裂するおそれがあるので、保存中に袋内でコーヒーが発生させた二酸化炭素を袋外に排出する必要がある。
【0003】
上記2つの相反する要求を満たすため、コーヒーを保存する袋に逆止弁を取付ける方法も実施されているが、逆止弁はコストが高く、逆止弁を取付けた袋体は製造工程が煩雑となるという問題がある。
【0004】
このように問題に対処すべく、不織布で覆われた小孔を有するコーヒー豆等用袋が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3074985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のコーヒー豆等用袋では、袋の内部から二酸化酸素を排出することは可能であるが、外部からの酸素の侵入を充分に防止することはできない。このため、コーヒーを劣化させずに長期間にわたり保存することはできなかった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであり、外部からの酸素の侵入を防止しながら、内部で発生した二酸化炭素を排出できるコーヒー保存用袋体を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、外部から侵入した酸素による品質の低下および内部で発生した二酸化炭素に袋体の破損を回避できるコーヒー保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
500g以下のコーヒーを保存するためのコーヒー保存用袋体であって、
フィルムの2つの端部が接合されている前記袋体の縁にほぼ平行に延びる幅5mm以上15mm以下の帯状シール部を備え、
前記帯状シール部が前記フィルムの2つの端部同士が接合されていない1本の非接合部を備え、
前記非接合部が前記袋体の内部と外部を連通させる1本の通気路を形成し、
前記通気路は、長さ100mm以上400mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下である、
ことを特徴とするコーヒー保存用袋体が提供される。
【0010】
尚、本明細書において「コーヒー」とは、焙煎された豆の状態のコーヒー(コーヒー豆)の他、焙煎された豆が粉砕された粉状あるいは粒状のコーヒーを含む。
【0011】
このような構成によれば、袋体の外部からの酸素の侵入を防止しながら、袋体の内部でコーヒーが発生させた二酸化炭素を外部に排出できるのでコーヒーを劣化させずに長期間保存することが可能となる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記フィルムがバリアフィルムである。
【0013】
このような構成によれば、
袋体の表面を通しての酸素の進入も防止することができる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記通気路の面積と前記帯状シール部の面積の比が0.05以上0.50以下である。
この面積比とは、平面視における面積の比率である。
【0015】
このような構成によれば、
帯状シール部における接合強度の確保と二酸化炭素の排出とを両立させることができる。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記帯状シール部が、超音波接合によりフィルムを接合することによって形成された超音波接合部である。
【0017】
このような構成によれば、
通気路の寸法形状が正確なものとなる。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、
上記いずれかの袋体内で60g以上500g以下のコーヒーを保存するステップを備えているコーヒーの保存方法が提供される。
【0019】
上記コーヒー保存用袋体の通気路によれば、60g以上500g以下のコーヒーが発生させる二酸化炭素を外部に適切に排気できるので、コーヒーを劣化させずに長期間に亘り保存することが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、
前記保存ステップが、前記袋体内に窒素ガスを充填した状態で行なわれる。
【0021】
このような構成によれば、
内部に充填された窒素ガスによって、コーヒーの劣化をより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコーヒー保存用袋体によれば、外部からの酸素の侵入を防止しながら、内部で発生した二酸化炭素を排出することができる。
【0023】
さらに、本発明のコーヒー保存方法によれば、60g以上500g以下のコーヒーを劣化させずに長期間に亘り保存することができる。
【0024】
上述のように、本発明のコーヒー保存用袋体を用いることにより、内容物から発生する二酸化炭素の脱気と外部からの酸素侵入の低減を両立することができる。この結果、コーヒーの品質劣化を抑えて長期間保存することが可能である。このメカニズムは以下のようなものと推定される。
【0025】
袋体内にコーヒーを保存すると、保存初期には、コーヒーから多量の二酸化炭素が発生する。その結果、袋体の内部圧力は、増大し、外気より高くなる。そして、この圧力差により袋体内の気体は、通気路を通じて外部に排出される。この気体は、いわゆる「流体」としてふるまい、圧力差に応じて速やかに排出される。この結果、袋体が大きく膨らむことはない。
ここで、袋体内では二酸化炭素が発生したので、袋体内の気体中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度は上昇している。このため、袋体内のコーヒーは、酸素濃度が低い気体中で保存されることになり、その劣化(酸化)が抑制される。
【0026】
一方、時間が経過するにつれ、コーヒーからの二酸化炭素発生量は次第に減少していく。すると袋体の内部と外部との圧力差は減少していき、最終的に圧力差は無くなる。この状態で、通気路を通じて酸素が袋体内に浸入すると、コーヒーの劣化が進行するが、本発明の袋体では、酸素の侵入速度は、以下の理由で、非常に小さい。
【0027】
圧力差が無くなった状態では、通気路も二酸化炭素の割合が大きい気体で満たされているが、本発明の通気路は幅が狭い為、通気路内で気体の対流は、ほとんど起こらない。従って、対流による酸素の侵入は、ほとんど生じない。
【0028】
このため、外部から袋体内へ侵入する酸素は、「通気路内部の酸素分子の拡散」によるもののみとなるが、拡散による酸素の侵入速度は極めて遅いため、酸素は袋体の内部に侵入しにくくなる。
【0029】
この結果、袋体の内部への酸素の侵入は極めて少なくなり、袋体の内部の酸素濃度は低く保たれ、コーヒーの劣化を抑えた保存が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の好ましい実施形態の袋体の模式的な平面図である。
図2】本実施形態の袋体の製造に使用される溶着装置(超音波接合機)の構成を模式的に示す図面である。
図3図2の超音波接合機で使用されるアンビルの構成を示す模式的な斜視図である。
図4】本発明の他の実施形態の袋体の模式的な平面図である。
図5】本発明の他の実施形態の袋体の模式的な平面図である。
図6】本発明の他の実施形態の袋体の模式的な平面図である。
図7】本発明の実施例の袋体を使ってコーヒーを保存した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態の袋体10の構成を図面に沿って詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態の袋体10の模式的な平面図である。本願では、図面中、明確化のため、各要素の寸法の比率は正確に表わされていない。
【0032】
本実施形態の袋体10は、500g以下、例えば、60g以上500g以下のコーヒーを収容して保存するコーヒー保存用の袋体である。本実施形態の袋体10の寸法には特に制限はないが、例えば縦が10cmないし60cm、横が10cmないし40cm程度のものが好ましい。
【0033】
本実施形態の袋体10は、1枚の矩形状のフィルムの両側端部および上下端部が重なるように2つに折り曲げられた形状を有している。重ねられた両側端部は、超音波溶接によって互いに接合されて帯状のサイドシール部(帯状シール部)12とされている。一方、重ねられた上下の端部も、例えばヒートシールで、それぞれ接合されて、トップシール部14およびボトムシール部16とされている。
【0034】
したがって、袋体10は、折り曲げ部18と、サイドシール部12、トップシール部14およびボトムシール部16によって4辺が囲まれ、内部にコーヒーを収容する空間が形成される。
【0035】
袋体10では、サイドシール部12とボトムシール部16とが形成された状態でコーヒーが内部に投入され、その後、トップシール部14が形成されることにより、袋体10が閉鎖される。
【0036】
本実施形態の袋体10を形成するフィルムの種類に特に制限はなく、超音波溶接によって接合可能なフィルムであればどのようなフィルムでも使用可能であり、公知のものを使用できる。具体的な例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニルやこれらの共重合体などを挙げることができる。また、異なる素材が積層された積層フィルムでもよい。
【0037】
また、本実施形態の袋体10を構成するフィルムとしては酸素バリアフィルムが好ましい。具体的にはビニルアルコールまたは塩化ビニリデンを構成成分として含むポリマーからなるフィルム、シリカ、アルミナ、アルミニウムのいずれかを蒸着したポリマーフィルム、金属箔層などの公知のものを用いることができる。
【0038】
さらに、基材フィルムと酸素バリアフィルムを積層した積層フィルム、基材フィルムに酸素バリアコートを設けたフィルムを用いることもできる。基材フィルムとしては、紙にバリアコート層、シーラント層を設けたフィルム、例えば、「シルビオ バリア:SILBIO BARRIER」(登録商標)を使用してもよい。
【0039】
本実施形態の袋体10に使用されるフィルムの厚みは15μm以上150μm以下、より好ましくは20μm以上100μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みが15μm未満の場合、袋体の強度が不充分になる場合があり、150μmを超えるとコスト上、不利になる場合がある。
【0040】
本実施形態の袋体10に使用されるフィルムは透明であっても不透明であってもよい。しかしながら、内容物が日光による劣化を防止するため、不透明な包装フィルムを用いることが好ましい。また、意匠性を高めるために表面に印刷をしたフィルムを使用してもよい。
【0041】
本実施形態の袋体10では、トップシール部14およびボトムシール部16の幅は、例えば5mm以上20mm以下に設定されるのが好ましいが、7mm以上15mm以下がより好ましい。トップシール部14の幅を5mm以上とすることで、シール強度を保つことが可能になり、20mm以下とすることで均一な接合が可能になる。
【0042】
トップシール部14とボトムシール部16は、重ねあわされたフィルム1の全面が、例えばヒートシールによって接合され、気密構造となっている。
【0043】
一方、サイドシール部(帯状シール部)12には、重ね合わされたフィルム1を非接合状態とした非接合部によって構成された1本の通気路20が設けられている。帯状シール部の幅は5mm以上15mm以下が好ましいが、7mm以上12mm以下がより好ましい。帯状シール部の幅を5mm以上とすることで、必要な通気路の長さを確保し易くなる。また、帯状シール部の幅を15mm以下とすることで、意匠上好ましい袋体を得ることができる。通気路の形状には特に制限がなく、図1のような直線形状を折曲部で接続した形状、図4に示すような曲線形状、または他の形状でもよい。
【0044】
通気路20は、一端20aが袋体10の内部空間に、他端20bが袋体10の外部空間に開口し、袋体10の内部空間と外部空間とを連通するように構成されている。したがって、袋体10は、閉鎖状態において、通気路20のみによって内部空間が外部空間と連通状態にされている。
【0045】
本実施形態の袋体10では、通気路20の長さは100mm以上400mm以下に設定されている。この長さは、120mm以上350mm以下がより好ましく、135mm以上300mm以下が更に好ましい。通気路20の長さを100mm以上とすることで酸素の侵入を充分に抑制することが可能になり、400mm以下とすることで、サイドシール部12の接合強度を確保することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態の袋体10では、通気路20の幅は、0.5mm以上3mm以下に設定されている。この幅は、0.8mm以上2.5mm以下がより好ましく、1mm以上2.0mm以下が更に好ましい。通気路20の幅が0.5mm未満の場合、均一な幅の通気路を形成することが困難になる場合がある。また通気路20の幅を3mm以下とすることで、酸素の侵入を防止し、且つ二酸化炭素を十分に排出できるので、コーヒー豆の品質劣化を抑制することができる。
さらに、上記寸法の通気路を1本とすることでコーヒーの劣化を充分に抑制できる。
【0047】
本実施形態の袋体10では、平面視における通気路20の面積sと平面視における帯状シール部12の面積Sの比率は、0.05以上0.50以下に設定されている。この比率は、0.07以上0.45以下がより好ましく、0.10以上0.40以下が更に好ましい。
【0048】
この比率を0.05以上とすることで、充分な長さの通気路を形成することが可能になり、コーヒーの品質劣化を充分に抑制できる。また、0.50以下とすることで、接合の強度を保ちながら、超音波溶接によって帯状シール部12を高速で形成することが可能になり、効率よく袋体を製造することができる。
【0049】
尚、帯状シール部12の面積Sとは、図1に示すように、帯状シール部12の縦方向の長さXと帯状シール部12の横方向の長さYの積である。後述の例のように、通気路を構成しない非接合部の面積は、帯状シール部12の面積Sから除外する。長さXは、図1に示されているように、トップシール部14とボトムシール部16との重複部分を含めた長さである。
【0050】
次に、袋体10の製造方法について説明する。
まず、この製造方法の超音波溶着法に用いる溶着装置の構成について説明する。図2は、本実施形態の袋体の製造に使用される溶着装置(超音波接合機)30の構成を模式的に示す図面である。
【0051】
図2に示されているように、超音波接合機30は、50Hzまたは60Hzの商用電気を15~70KHz程度の高周波信号に変換する超音波発振機32と、この信号を機械的振動に変換するコンバータ34と、この機械的振動を増幅するブースター36と、増幅された振動を溶着対象に伝える円板型ホーン38、ホーン38との間でフィルム1の2つの端部1a、1aを挟持する円板型アンビル40を備えている。
【0052】
超音波接合機30では、ホーン38とアンビル40は、いずれも円板状であり、フィルム1の2つの端部1a、1aを挟持しながら回転し、袋体10の帯状シール部12を連続的に形成する。袋体10の帯状シール部12中の通気路20に対応する溝部40aが設けられている。
【0053】
図3は、超音波接合機30で使用されるアンビル40の構成を示す模式的な斜視図である。アンビル40は、円板状であり、外周面42には、袋体10の帯状シール部12中の通気路20の平面形状に対応する溝部44が形成されている。一方、同様に円板状のホーン38の外周面は、平坦な形状である。
尚、溝部をホーンの外周面に設けてもよい。この場合、アンビルの外周面が平坦な形状となる。
【0054】
溝部44の深さは0.2mm以上1.0mm以下に設定されている。この深さは、0.25mm以上0.8mm以下がより好ましく、0.3mm以上0.5mm以下が更に好ましい。溝部の深さが0.2mm未満であると帯状シール部の接合強度が不充分になる場合があり、1.0mmを超えると溝部の縁部でフィルムが切れて、うまく接合できない場合がある。
【0055】
溝部44の断面形状は、縁部でフィルムが切れてしまうことを防止できるので、三角形状が特に好ましい。しかしながら、矩形状、半円状などの他の任意の断面形状でもよい。
【0056】
超音波接合機30では、ホーン38とアンビル40の直径は、50mmないし150mm程度である、また、ホーン38とアンビル40の外周面の幅は、帯状シール部の幅に対応して5mmないし20mm程度である。ホーン38、アンビル40の素材については公知のものが使用できるが、特にステンレスやチタン合金が好ましい。
【0057】
アンビル40の外周面の縁部を面取りしてもよい。面取りをすることでこの部分でフィルムが切れてしまうことを防止することができる。また、アンビル40の側面には軽量化のための孔(肉抜き)が形成されていてもよい。
【0058】
ホーン38とアンビル40は、図示しない駆動装置により回転駆動される。駆動速度すなわちフィルムの送り速度には特に制約はないが、5mm/秒以上50mm/秒程度が好ましい。この回転駆動の速度が、帯状シール部12の形成速度となる。
【0059】
この接合速度(駆動速度)は、5m/分以上50m/分以下に設定され、15m/分以上45m/分以下がより好ましく、20m/分以上40m/分以下が更に好ましい。接合速度を5m/分以上とすることで、効率よい製造が可能になる。また接合速度を5m/分未満の場合、接合部分に過剰な熱がかかり、均一な幅の通気路を形成できないことがある。一方、接合速度を50m/分以下とすることで充分な接合強度を得ることが可能になる。
【0060】
また、フィルム1の端部1a、1aを挟持する際、ホーン38とアンビル40の間には図示しない加圧装置により20Nから500N程度の圧力がかけられる。
【0061】
袋体10の製造において、帯状シール部12を形成する工程では、重ね合わされたフィルム1の側端部1a、1aをホーン38とアンビル40の間に挟持し、ホーン38とアンビル40を回転駆動させながらホーン38からの超音波で、帯状シール部12が形成される。
【0062】
上記のように側縁に帯状シール部12が形成され、更に下端にボトムシール部16が形成された袋体10の内部に60g以上500g以下のコーヒーを収容し、トップシール部14を形成することにより袋体10を閉鎖し、コーヒーを保存する。
収容するコーヒーの量は80g以上450g以下が好ましく、100g以上400g以下が更に好ましい。コーヒーの量が60g以上とすることで、コーヒー豆の量に対する気体の量の割合が大きくなり過ぎることを防止できて、コーヒーの品質低下を抑制することが可能になる。また、500g以下とすることで、保存中に袋体が膨らんでしまうことを防止できる。
【0063】
本発明では、トップシール部14を形成する前に、袋体10の内部に窒素ガスを充填することが好ましい。窒素ガスを充填した後に、袋体内に多少の空気が残存していてもよい。袋体10に窒素ガスを充填することで、コーヒーの品質低下をより抑制することが可能になる。
【0064】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0065】
通気路の平面形状に特に制限はなく、例えば図4に示されているような波形の形状の通気路42でもよい。
【0066】
また、図5に示されているように、帯状シール部50には、通気路52を構成しない非接合部54を設けた構成でもよい。なお、この通気路52を構成しない非接合部54の面積は、通気路の面積の100%以下とすることが好ましい。
【0067】
このような通気路52を構成しない非接合部54は、例えば、アンビルの外周面に通気路の対応する溝部に加えて、このような非接合部54に対応した形状の凹部を設けることによって形成される。
【0068】
さらに、図6に示されているように、帯状シール部60に、波形の通気路62と、通気路を構成しない複数の非接合部64を設けた構成でもよい。
【0069】
また、図1の実施形態では袋体10のサイドシール部を、通気路を有する帯状シール部としているが、トップシール部、ボトムシール部、背シールなどの他のシール部に通気路を有する帯状シール部12の構成を適用してもよい。例えば、円筒状のフィルムを用いて、トップシール部に通気路を有する帯状シール部を適用してもよい。
【実施例0070】
次に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
幅30cm、長さ25cm、厚さ85μmのバリアフィルム(バリア層付きナイロンフィルム/低密度ポリエチレンの積層フィルム )を二つに折り、縦25cm、横15cmの袋体を形成した。ボトムシール部は、10mm幅のヒートシール部とした。
【0071】
袋体のサイドシール部に本発明の帯状シール部を形成した。具体的には、深さ0.4mmの溝部を有するアンビルを使用して、接合速度は30m/分で、図4に示される形状の通気路を有する帯状シール部を形成した。帯状シール部、通気路の詳細は以下の通りである。
【0072】
・帯状シール部の長さ:230mm
・帯状シール部の幅:10mm (フィルムの端から内方側約2mmの位置に形成)
・通気路の幅:1mm
・通気路の長さ:140mm
・通気路の数:1本
【0073】
以上のように製造した袋体にコーヒー豆(グァテマラ ピーベリー)を100g入れ、チッ素ボンベから袋体内部をチッ素ガスで充填し、直後に、ヒートシールにより幅10mmのトップシール部を形成し、袋体を閉鎖した。その状態で、コーヒーの保存を行なった。
【0074】
保存方法:充填した袋を15~18℃の温度で保管し、保管後に袋体の状態を評価した。
評価は以下の方法で行った。
【0075】
<袋体の膨らみ具合>
充填後7日目に袋体の膨らみ具合を目視で観察した。
〇 : 袋体の膨らみがない
△ : 袋体が若干膨らんでいるが袋体どうしを重ねて置くことができる
× : 袋体が膨らんでいて、袋体を重ねて置くことができない
××: 袋体が著しく膨らんでいる
実用上、△以上が許容レベルである。
【0076】
<袋体内の酸素濃度>
重点後28日目に袋体内の酸素濃度を測定した。
酸素濃度
A 酸素濃度3体積%未満
B 酸素濃度3体積%以上、6体積%未満
C 酸素濃度6体積%以上、10体積%未満
D 酸素濃度10体積%以上
【0077】
酸素濃度については実用上Cレベル以上が許容レベルである。
【0078】
(実施例2~13)
通気路の位置、通気路の形状、通気路の数、通気路の幅、通気路の長さを表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~13の保管を実施した。
【0079】
上記実施例によってコーヒーを保存し、その結果を図7の表に示す。
通気路の長さが100mm以上400mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下を有する袋体に関して、酸素濃度の値および袋体の膨らみは、すべて実用レベルであることがわかった。また、窒素充填を行うことで更に低い酸素濃度の値を示した。
【符号の説明】
【0080】
1:フィルム
10:袋体
12:サイドシール部(帯状シール部)
14:トップシール部
16:ボトムシール部
18:折り曲げ部
20:通気路
20a:(通気路の)一端
30:溶着装置(超音波接合機)
20b:(通気路の)他端
S:帯状シール部の面積
s:通気路の面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
60g以上500g以下のコーヒーを保存するためのコーヒー保存用袋体であって、
縦方向の長さが10cmないし60cm、横方向の長さが10cmないし40cmであり、
フィルムの2つの端部が接合されている前記袋体の縁にほぼ平行に延びる幅5mm以上15mm以下の帯状シール部を備え、
前記帯状シール部が前記フィルムの2つの端部同士が接合されていない1本の非接合部を含み、
前記非接合部が前記袋体の内部と外部を連通させる1本の通気路を形成し、
前記通気路は、長さ100mm以上400mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下であり、
ことを特徴とするコーヒー保存用袋体。
【請求項2】
前記フィルムがバリアフィルムである、
請求項1に記載のコーヒー保存用袋体。
【請求項3】
前記通気路の面積と前記帯状シール部の面積の比が0.05以上0.50以下である、
請求項1または2に記載のコーヒー保存用袋体。
【請求項4】
前記帯状シール部が、超音波接合によりフィルムを接合することによって形成された超音波接合部である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコーヒー保存用袋体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の袋体内で60g以上500g以下のコーヒーを保存するステップを備えている、
ことを特徴とするコーヒー保存方法。
【請求項6】
前記保存ステップが、前記袋体内に窒素ガスを充填した状態で行なわれる、
請求項5に記載のコーヒー保存方法。