(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170443
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】工作機械主軸の冷却構造
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/12 20060101AFI20221102BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20221102BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B23Q11/12 C
B23B19/02 A
B01D45/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076570
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】受井 嘉治
【テーマコード(参考)】
3C011
3C045
4D031
【Fターム(参考)】
3C011FF01
3C045FD12
3C045FD19
3C045FD28
4D031AB02
4D031AB29
4D031BA07
4D031DA04
4D031EA01
4D031EA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エアシールで使用する消費エア量を減らすことができるとともに、冷却液の戻り経路で発生するミストの量を減らすことができ、機械の使用環境を改善することができる工作機械主軸の冷却構造を提供する。
【解決手段】冷却液を主軸2から冷却液供給源30に戻す戻り経路30b上にタンク31が設けられている。冷却液と冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストとをタンク31内に流入させることで、高圧ミストの動圧を下げるとともに、高圧ミストからこれに含まれている冷却液を分離し、高圧ミストから分離したものを含む冷却液を冷却液供給源30に戻す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、主軸を軸受を介して回転可能に支持するハウジングとを備えた工作機械に設けられる主軸の冷却構造であって、
ハウジングに設けられた固定側冷却液流路と、主軸に設けられた回転側冷却液流路と、固定側冷却液流路に冷却液を供給する冷却液供給源と、冷却液を主軸から冷却液供給源に戻す戻り経路と、固定側冷却液流路端と回転側冷却液流路端との間の冷却液受け渡し部と、冷却液受け渡し部からの冷却液の漏出を防止するエアシールと、エアシールにエアを供給するエア供給源とを備えているものにおいて、
戻り経路上にタンクが設けられており、冷却液と冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストとをタンク内に流入させることで、高圧ミストの動圧を下げるとともに、高圧ミストからこれに含まれている冷却液を分離し、高圧ミストから分離したものを含む冷却液を冷却液供給源に戻すことを特徴とする工作機械主軸の冷却構造。
【請求項2】
タンク内に、高圧ミストが衝突することで、高圧ミストからの冷却液の分離を促進するとともに、高圧ミストの動圧の低下を促進する少なくとも1枚の衝立が設けられている請求項1の工作機械主軸の冷却構造。
【請求項3】
衝立は、下端面とタンク底壁との間に冷却液通路となる間隙を有するようにタンクの頂壁に固定されているか、または、上端面とタンク頂壁との間に高圧ミスト通路となる間隙を有するようにタンクの底壁に固定されている請求項1または2の工作機械主軸の冷却構造。
【請求項4】
タンクの底壁に固定されている衝立の下端部に、冷却液通路となる貫通孔が設けられている請求項3の工作機械主軸の冷却構造。
【請求項5】
タンクまたは冷却液供給源に、低圧となったミストを冷却液と大気に放出可能な気体とに分離する気液分離装置が設けられている請求項1から4までのいずれかに記載の工作機械主軸の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離間した複数の軸受によって回転可能に支持された主軸を有する工作機械における主軸の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタなどの工作機械では、近年の主軸のさらなる高速回転化への対応として、主軸を冷却する技術が発展してきている。主軸冷却技術は、軸受や電動機ロータの熱が逃げにくい主軸を効果的に冷却できるため、主軸の熱膨張低減効果が大きく、ワークの加工精度が向上する。この主軸冷却では回転部材側の冷却液流路と固定部材側の冷却液流路との間で冷却液漏出を防止する必要があり、これには、一般的にエアシールが用いられている。エアシールは、固定部材と回転部材との間にエアを供給することで外部からの切削液・塵などの侵入を防止する用途で広く利用されている。主軸冷却とエアシールを用いた技術は、特許文献1に記載されているように、主軸に冷却液流路を設けて、固定部材(ハウジングなど)に設けられた固定側冷却液流路と回転部材(主軸など)に設けられた回転側冷却液流路との接続部に設けられた冷却液受け渡し部を挟むようにして間隙にエアを供給することで冷却液の漏出を防止するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1においては、エアシールによって冷却液の漏出が防止され、冷却液は、冷却液供給源に戻される。ここで、冷却液の戻り経路には、エアシール用のエアの一部が流入し、冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストが発生する。この高圧ミストにより、冷却液の戻り経路の圧力が上昇し、シールに必要なエアがより多く必要となる。運転中は常時エアを消費することから、これによってランニングコストが大きくなるという問題が生じる。
【0005】
この発明の目的は、エアシールで使用する消費エア量を減らすことができるとともに、冷却液戻り経路で発生するミストの量を減らすことができるため、機械の使用環境も改善することができる工作機械主軸の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の工作機械主軸の冷却構造は、主軸と、主軸を軸受を介して回転可能に支持するハウジングとを備えた工作機械に設けられる主軸の冷却構造であって、ハウジングに設けられた固定側冷却液流路と、主軸に設けられた回転側冷却液流路と、固定側冷却液流路に冷却液を供給する冷却液供給源と、冷却液を主軸から冷却液供給源に戻す戻り経路と、固定側冷却液流路端と回転側冷却液流路端との間の冷却液受け渡し部と、冷却液受け渡し部からの冷却液の漏出を防止するエアシールと、エアシールにエアを供給するエア供給源とを備えているものにおいて、戻り経路上にタンクが設けられており、冷却液と冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストとをタンク内に流入させることで、高圧ミストの動圧を下げるとともに、高圧ミストからこれに含まれている冷却液を分離し、高圧ミストから分離したものを含む冷却液を冷却液供給源に戻すことを特徴とするものである。
【0007】
冷却液は、戻り経路を介して主軸から冷却液供給源に戻される。この戻り経路には、冷却液だけでなく、エアシール用のエアの一部も流入する。これにより、冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストが発生する。従来、冷却液(ミストになっていない冷却液)と高圧ミストとは区別されておらず、両方がタンクを介さずに冷却液供給源に流入していた。
【0008】
この発明の工作機械主軸の冷却構造によると、冷却液(ミストになっていない冷却液)と冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストとは、冷却液供給源に送られる前に、タンク内に流入する。ミストになっていない冷却液は、自重によってタンクの底壁上に集められる。高圧ミストは、タンク内で広がってタンクの内面に衝突することで動圧を下げて低圧ミストとなり、この際に、冷却液が高圧ミストから分離する。高圧ミストから分離した冷却液は、自重によりミストになっていない冷却液とともにタンクの底壁上に集められる。高圧ミストから分離したものを含む冷却液は、戻り経路を介して冷却液供給源に送られる。低圧ミストは、タンクに設けられたミスト流出口から流出し、好ましくは、気液分離装置によって残留冷却液が除去された気体となって、大気中に排気される。こうして、冷却液の戻り経路の圧力上昇が抑えられることで、エアシールで使用する消費エア量を減らすことができるとともに、戻り経路で発生するミストの量を減らすことができることで、機械の使用環境も改善することができる。
【0009】
タンク内に、高圧ミストが衝突することで、高圧ミストからの冷却液の分離を促進するとともに、高圧ミストの動圧の低下を促進する少なくとも1枚の衝立が設けられていることが好ましい。
【0010】
このようにすると、タンクに設けられた流入口から流入した高圧ミストは、衝立に衝突し、これにより、より効果的に高圧ミストの動圧が下げられ、エアと冷却液との分離が促進される。
【0011】
衝立の数は、1枚でもいいし、複数枚でもよい。衝立の形状は、衝立または衝立とタンクとの間に冷却液の通路と高圧ミストの通路とがあるという条件を満たす範囲で種々の形状とすることができる。
【0012】
衝立は、下端面とタンク底壁との間に冷却液通路となる間隙を有するようにタンクの頂壁に固定されているか、または、上端面とタンク頂壁との間に高圧ミスト通路となる間隙を有するようにタンクの底壁に固定されていることがある。
【0013】
このようにすると、衝立には、通路となる貫通孔を設ける加工を行う必要がなく、衝立の形状を簡素化することができる。
【0014】
タンクの底壁に固定されている衝立の下端部に、冷却液通路となる貫通孔が設けられていることがある。
【0015】
タンクまたは冷却液供給源に、低圧となったミストを冷却液と大気に放出可能な気体とに分離する気液分離装置が設けられていることが好ましい。
【0016】
このようにすると、低圧ミスト中に含まれている冷却液がエアから分離されて、エア(気体)だけとなり、大気中に排気することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の工作機械主軸の冷却構造によると、エアシールで使用する消費エア量を減らすことができるとともに、冷却液の戻り経路で発生するミストの量を減らすことができるため、機械の使用環境も改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、この発明の工作機械主軸の冷却構造を示す縦断面図および回路図である。
【
図2】
図2は、タンクの内部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態例について、図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、
図1の左側を前側、
図1の右側を後側というものとする。
【0020】
図1に、この発明の主軸の冷却構造を備えた工作機械の主軸装置の断面図および回路図を示す。
【0021】
主軸装置(1)は、回転部材である主軸(2)と、固定部材であるハウジング(3)と、主軸(2)を冷却する主軸の冷却構造(4)とを備えている。
【0022】
主軸(2)は、横形に配置されており、主軸(2)は、前端に工具を装着するためのテーパ孔(2a)を有し、その前側部分が前側の1対の軸受(5)(6)および後側の1対の軸受(7)(8)によってハウジング(3)に回転可能に支持されている。
【0023】
ハウジング(3)は、ハウジング本体(9)と、ハウジング本体(9)とは別部材とされてハウジング本体(9)の前端に固定された前側流路形成部材(10)と、ハウジング本体(9)とは別部材とされて軸受(5)(6)(7)(8)を介して前側流路形成部材(10)に後側から対向するようにハウジング本体(9)に固定された後側流路形成部材(11)とからなる。
【0024】
軸受(5)(6)(7)(8)の外輪(5a)(6a)(7a)(8a)間には、外輪間座(12)が配されており、軸受(5)(6)(7)(8)の内輪(5b)(6b)(7b)(8b)間には、内輪間座(13)が配されている。
【0025】
後端にある軸受(8)の外輪(8a)は、ハウジング本体(9)に設けられた径方向内向きの突出部(9a)の前面で受けられており、前端にある軸受(5)の外輪(5a)は、ハウジング本体(9)前端部にボルト(図示略)で固定された前側流路形成部材(10)によって保持されている。
【0026】
前端にある軸受(5)の内輪(5b)は、主軸(2)に設けられた径方向外向きの突出部(2b)の後面で受けられており、後端にある軸受(8)の内輪(8b)は、主軸(2)にねじ合わされたナット(14)によって保持されている。
【0027】
冷却構造(4)は、固定部材であるハウジング(3)と回転部材である主軸(2)との間で冷却液を受け渡して主軸(2)を冷却するもので、後端の軸受(8)の後側から冷却液を供給して、前端の軸受(5)の前側から排出して回収するようになされている。
【0028】
冷却構造(4)は、冷却液流路(21)として、ハウジング本体(9)に設けられた第1流入路(21a)と、第1流入路(21a)に連なるように後側流路形成部材(11)に設けられた第2流入路(21b)と、前側流路形成部材(10)に設けられた流出路(21c)と、軸方向に平行に前後にのびるように主軸(2)に設けられた主軸内軸方向流路(21d)と、主軸内軸方向流路(21d)に連なり、かつ流出路(21c)の開口に臨まされた主軸内径方向流路(21e)とを有している。主軸内軸方向流路(21d)および主軸内径方向流路(21e)は、周方向に等間隔で4つ設けられている。
【0029】
冷却構造(4)は、冷却液流路(21)として、さらに、全ての主軸内軸方向流路(21d)の後端部に連通するように主軸(2)に設けられ、かつ各第2流入路(21b)の開口部が連通可能に臨まされた主軸内環状流路(21f)と、全ての流出路(21c)の径方向内側の開口部に連通するように前側流路形成部材(10)に設けられ、かつ各主軸内径方向流路(11e)の径方向外向きの開口が連通可能に臨まされた前側流路形成部材内環状流路(21g)とを有している。
【0030】
第1流入路(21a)、第2流入路(21b)、流出路(21c)および前側流路形成部材内環状流路(21g)が固定側冷却液流路を構成し、主軸内軸方向流路(21d)、主軸内径方向流路(21e)および主軸内環状流路(21f)が回転側冷却液流路を構成している。
【0031】
そして、固定側冷却液流路である第2流入路(21b)と回転側冷却液流路である主軸内環状流路(21f)との接続部が後側の冷却液受け渡し部(22)とされるとともに、回転側冷却液流路である主軸内径方向流路(21e)と固定側冷却液流路である前側流路形成部材内環状流路(21g)との間が前側の冷却液受け渡し部(23)とされて、第1流入路(21a)から流入した冷却液は、まず、第2流入路(21b)に流入し、後側の冷却液受け渡し部(22)から主軸内環状流路(21f)に流入し、主軸内軸方向流路(21d)および主軸内径方向流路(21e)を経て、前側の冷却液受け渡し部(23)から前側流路形成部材内環状流路(21g)に至り、流出路(21c)から流出する。
【0032】
冷却構造(4)は、冷却液回収・供給装置(24)として、冷却液供給源(30)と、冷却液供給源(30)から第1流入路(21a)に冷却液を送る送り経路(30a)と、流出路(21c)に連通して冷却液を回収する戻り経路(30b)とを有している。
【0033】
冷却液回収・供給装置(24)は、さらに、冷却液供給源(30)の上流側に位置するように戻り経路(30b)に設けられたタンク(31)および気液分離装置(32)を有している。
【0034】
冷却構造(4)は、さらに、主軸(2)の外周面と後側流路形成部材(11)の内周面との間にある間隙を介してエアを後側冷却液受け渡し部(22)の両側から吹き付けることで後側冷却液受け渡し部(22)からの冷却液の漏出を防止する後側エアシール(25)と、主軸(2)の外周面と前側流路形成部材(10)の内周面との間にある間隙を介してエアを前側冷却液受け渡し部(23)の両側から吹き付けることで前側冷却液受け渡し部(23)からの冷却液の漏出を防止する前側エアシール(26)と、後側エアシール(25)および前側エアシール(26)にエアを供給するエア供給装置(27)とを備えている。
【0035】
後側エアシール(25)は、ハウジング本体(9)に設けられた後側エア流入路(25a)と、後側エア流入路(25a)に一端部がそれぞれ連なるように後側流路形成部材(11)に設けられた後側第1分岐流路(25b)および後側第2分岐流路(25c)とを有している。後側第1分岐流路(25b)および後側第2分岐流路(25c)の各他端部は、後側冷却液受け渡し部(22)を前後両側から挟むように設けられるとともに、主軸(2)の外周面に径方向外側から対向するように開口しており、各開口部には、環状の前側エア吐出部(25d)および後側エア吐出部(25e)が設けられている。
【0036】
前側エアシール(26)は、前側流路形成部材(10)に設けられた前側エア流入路(26a)と、前側エア流入路(26a)に一端部がそれぞれ連なるように前側流路形成部材(10)に設けられた前側第1分岐流路(26b)および前側第2分岐流路(26c)とを有している。前側第1分岐流路(26b)および前側第2分岐流路(26c)の各他端部は、前側冷却液受け渡し部(23)を前後両側から挟むように設けられるとともに、主軸(2)の外周面に径方向外側から対向するように開口しており、各開口部には、環状の前側エア吐出部(26d)および後側エア吐出部(26e)が設けられている。
【0037】
エア供給装置(27)は、後側エア流入路(25a)に連通する後側配管(27a)と、前側エア流入路(26a)に連通する前側配管(27b)と、各配管(27a)(27b)にエアを流入させるエア供給源(27c)とを有している。
【0038】
冷却液回収・供給装置(24)の戻り経路(30b)には、冷却液だけでなく、エアシール用のエアの一部も流入する。これにより、冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストが発生する。これらの冷却液および高圧ミストは、冷却液供給源(30)に至る前にタンク(31)内に流入する。高圧ミストは、タンク(31)内で広がるとともに、タンク(31)の内面に衝突することによって、その圧力(動圧)を下げ、含まれている冷却液が分離されて、分離し切れなかった冷却液を含んだ低圧ミストとなる。冷却液は、冷却液供給源(30)に送られ、低圧ミストは、気液分離装置(32)を経た後、気体となって大気中に排気される。
【0039】
図2に示すように、タンク(31)は、底壁(31a)、頂壁(31b)および4つの側壁(31c)(31d)を有する直方体状をなしており、タンク(31)内には、複数枚(図示した例では第1から第3までの3枚)の衝立(33)(34)(35)が設けられている。
【0040】
側壁(31c)(31d)のいずれか1つ(
図2では右の側壁)(31c)に、冷却液およびミストを流入させる流入口(36)が設けられており、これに対向する側壁(
図2では左の側壁)(31d)に、低圧ミストを流出させるミスト流出口(37)が設けられている。また、底壁(31a)のミスト流出口(37)に近い側には、冷却液(ドレイン)を流出させる冷却液流出口(38)が設けられている。
【0041】
第1から第3までの衝立(33)(34)(35)は、流入口(36)が設けられた側壁(31c)とミスト流出口(37)が設けられた側壁(31d)との間に、これらの側壁(31c)(31d)に平行となるようにほぼ等間隔で設けられている。
【0042】
第1の衝立(33)は、底壁(31a)との間にミストおよび冷却液通過用の間隙が形成されるように、頂壁(31b)に固定されている。第2の衝立(34)は、頂壁(31b)との間にミスト通過用の間隙が形成されるように、底壁(31a)に固定されている。第2の衝立(34)の下端部には、冷却液通過用の貫通孔(39)が設けられている。第3の衝立(35)は、底壁(31a)との間にミストおよび冷却液通過用の間隙が形成されるように、頂壁(31b)に固定されている。
【0043】
上記の冷却構造(4)によると、冷却液は、各送り経路(30a)から第1流入路(21a)に供給され、各主軸内軸方向流路(21d)および各主軸内径方向流路(21e)を通ることで、主軸(2)および軸受(5)(6)(7)(8)を冷却し、流出路(21c)を経て各戻り経路(30b)に流入する。冷却液の供給・排出に際し、回転側冷却液流路と固定側冷却液流路との連通部である後側の冷却液受け渡し部(22)および前側の冷却液受け渡し部(23)では、冷却液の漏出の可能性があるが、この漏出は、後側エアシール(25)および前側エアシール(26)によって防止される。
【0044】
エアシールの効果を高めるためにエア圧を高めた場合、発生するミスト量は増加する。仮に、タンク(31)が無く、冷却液供給源(30)に直接冷却液が戻る場合、冷却液供給源(30)内に高圧ミストが充満し、圧力が増加する。これにより、戻り経路(30b)の背圧が上がるため、エア圧をより高めなければ十分なシールができないという問題が発生する。この場合、エア消費量が増加するだけでなく、ミストも多く発生し作業環境が悪化するという問題がある。
【0045】
これに対し、上記の冷却液回収・供給装置(24)によると、冷却液供給源(30)の上流側に位置するように、戻り経路(30b)にタンク(31)が設けられているので、冷却液(ミストになっていない冷却液)と冷却液がエアシール用のエアに混ざった状態である高圧ミストとは、冷却液供給源(30)に送られる前に、流入口(36)からタンク(31)内に流入する。ミストになっていない冷却液は、自重によってタンク(31)の底壁(31a)上に集められる。高圧ミストは、タンク(31)内で広がってタンク(31)の内面に衝突することで動圧を下げて低圧ミストとなり、この際に、冷却液が高圧ミストから分離する。高圧ミストから分離した冷却液は、自重によりミストになっていない冷却液とともにタンク(31)の底壁(31a)上に集められる。高圧ミストから分離したものを含む冷却液は、冷却液流出口(38)から流出して戻り経路(30b)を介して冷却液供給源(30)に送られる。これにより、戻り経路(30b)には、高圧のエアが流入することはなく、戻り経路(30b)の背圧の上昇が抑えられる。低圧ミストは、ミスト流出口(37)から流出し、気液分離装置(32)に送られ、ここで残留冷却液が除去された気体となって、大気中に排気される。こうして、戻り経路(30b)の圧力上昇が抑えられることで、エアシールで使用する消費エア量を減らすことができるとともに、戻り経路(30b)で発生するミストの量を減らすことができることで、機械の使用環境も改善することができる。
【0046】
タンク(31)内に設けられた複数枚の衝立(33)(34)(35)によると、流入口(36)から流入した高圧ミストは、タンク(31)の内面および衝立(33)(34)(35)に衝突しながら進み、衝立(33)(34)(35)が追加されたことで、動圧を下げて気体と冷却液に分離する作用が促進される。
【0047】
なお、上記において、気液分離装置(32)は、冷却液供給源(30)に設けても同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、衝立(33)(34)(35)の枚数は、複数枚とすることで効果を高めることができるが、1枚であってもよく、限定されるものではない。衝立(33)(34)(35)の形状についても、特に限定されることはなく、種々の形状が可能である。
上記実施形態の衝立(33)(34)(35)によると、タンク(31)の底壁(31a)に固定されている第2の衝立(34)の下端部に貫通孔(39)が設けられているものの、第1および第3の衝立(33)(35)には、通路となる貫通孔を設ける加工を行う必要がなく、衝立(33)(34)(35)の形状を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0049】
(2):主軸
(3):ハウジング
(4):主軸の冷却構造
(5)(6)(7)(8):軸受
(21):冷却液流路
(21a):第1流入路(固定側冷却液流路)
(21b):第2流入路(固定側冷却液流路)
(21c):流出路(固定側冷却液流路)
(21d):主軸内軸方向流路(回転側冷却液流路)
(21e):主軸内径方向流路(回転側冷却液流路)
(21f):主軸内環状流路(回転側冷却液流路)
(21g):前側流路形成部材内環状流路(固定側冷却液流路)
(22)(23):冷却液受け渡し部
(24):冷却液回収・供給装置
(25)(26):エアシール
(27c):エア供給源
(30):冷却液供給源
(30b):戻り経路
(31):タンク
(32):気液分離装置
(33)(34)(35):衝立
(39):貫通孔