(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170460
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】作業機械、及び作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
E02F3/85 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076600
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】加美川 忍
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA03
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業機械において、ブレードのピッチ角を容易、且つ、適切に調整可能とする。
【解決手段】リフトフレームは、車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持される。ブレードは、リフトフレームに対してピッチ軸回りに回動可能に支持される。リフトアクチュエータは、リフトフレームと車体とに接続され、リフトフレームをリフト軸回りに上下にリフト動作させる。ピッチアクチュエータは、ブレードとリフトフレームとに接続され、ブレードをピッチ軸回りにピッチ動作させる。センサは、車体に基づいて定められる基準高さからのブレードの高さを検出する。コントローラは、ブレードの高さに応じて、ブレードのピッチ角を変更するようにピッチアクチュエータを制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持されるリフトフレームと、
前記リフトフレームに対してピッチ軸回りに回動可能に支持されるブレードと、
前記リフトフレームと前記車体とに接続され、前記リフトフレームを前記リフト軸回りに上下にリフト動作させるリフトアクチュエータと、
前記ブレードと前記リフトフレームとに接続され、前記ブレードを前記ピッチ軸回りにピッチ動作させるピッチアクチュエータと、
前記車体に基づいて定められる基準高さからの前記ブレードの高さを検出するセンサと、
前記ブレードの高さに応じて、前記ブレードのピッチ角を変更するように前記ピッチアクチュエータを制御するコントローラと、
を備える作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ブレードが前記基準高さよりも上方に位置するときには、前記ブレードの前記ピッチ動作が固定されているときよりも、前記ブレードを前傾させるように、前記ピッチアクチュエータを制御する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ブレードが前記基準高さよりも上方に位置するときには、前記ブレードの高さの増大に応じて、前記ブレードを前傾させる方向に前記ブレードのピッチ角を変更するように、前記ピッチアクチュエータを制御する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ブレードが前記基準高さよりも下方に位置するときには、前記ブレードの前記ピッチ動作が固定されているときよりも、前記ブレードを後傾させるように、前記ピッチアクチュエータを制御する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ブレードが前記基準高さよりも下方に位置するときには、前記ブレードの高さの減少に応じて、前記ブレードを後傾させる方向に前記ブレードのピッチ角を変更するように、前記ピッチアクチュエータを制御する、
請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記車体は、履帯を含み、
前記基準高さは、前記履帯の接地面の高さである、
請求項1から5のいずれかに記載の作業機械。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記ブレードの高さと前記ブレードの目標ピッチ角との関係を規定するピッチ角データを記憶しており、
前記ピッチ角データを参照して、前記ブレードの高さから前記目標ピッチ角を決定し、
前記ブレードのピッチ角が前記目標ピッチ角となるように、前記ピッチアクチュエータを制御する、
請求項1から6のいずれかに記載の作業機械。
【請求項8】
前記ブレードのピッチ角を手動で操作するための操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、
前記操作装置の操作を示す操作信号を取得し、
前記操作装置の操作に応じて前記ブレードのピッチ角を変更するように、前記ピッチアクチュエータを制御し、
前記操作装置の操作が無いときには、前記ブレードのピッチ角を維持するように、前記ピッチアクチュエータを制御する、
請求項1から7のいずれかに記載の作業機械。
【請求項9】
車体と、前記車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持されるリフトフレームと、前記リフトフレームに対してピッチ軸回りに回動可能に支持されるブレードと、前記リフトフレームと前記車体とに接続され、前記リフトフレームを前記リフト軸回りに上下にリフト動作させるリフトアクチュエータと、前記ブレードと前記リフトフレームとに接続され、前記ブレードを前記ピッチ軸回りにピッチ動作させるピッチアクチュエータと、を備える作業機械を制御するための方法であって、
前記車体に基づいて定められる基準高さからの前記ブレードの高さを検出することと、 前記ブレードの高さに応じて、前記ブレードのピッチ角を変更するように前記ピッチアクチュエータを制御すること、
を備える方法。
【請求項10】
前記ブレードが前記基準高さよりも上方に位置するときには、前記ブレードの前記ピッチ動作が固定されているときよりも、前記ブレードを前傾させるように、前記ピッチアクチュエータを制御することをさらに備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブレードが前記基準高さよりも上方に位置するときには、前記ブレードの高さの増大に応じて、前記ブレードを前傾させる方向に前記ブレードのピッチ角を変更するように、前記ピッチアクチュエータを制御することをさらに備える、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブレードが前記基準高さよりも下方に位置するときには、前記ブレードの前記ピッチ動作が固定されているときよりも、前記ブレードを後傾させるように、前記ピッチアクチュエータを制御すること、
をさらに備える請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ブレードが前記基準高さよりも下方に位置するときには、前記ブレードの高さの減少に応じて、前記ブレードを後傾させる方向に前記ブレードのピッチ角を変更するように、前記ピッチアクチュエータを制御すること、
をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記車体は、履帯を含み、
前記基準高さは、前記履帯の接地面の高さである、
請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ブレードの高さと前記ブレードの目標ピッチ角との関係を規定するピッチ角データを参照して、前記ブレードの高さから前記目標ピッチ角を決定することと、
前記ブレードのピッチ角が前記目標ピッチ角となるように、前記ピッチアクチュエータを制御すること、
をさらに備える請求項9から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ブレードのピッチ角を手動で操作するための操作装置の操作を示す操作信号を取得することと、
前記操作装置の操作に応じて前記ブレードのピッチ角を変更するように、前記ピッチアクチュエータを制御することと、
前記操作装置の操作が無いときには、前記ブレードのピッチ角を維持するように、前記ピッチアクチュエータを制御すること、
をさらに備える請求項9から15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、及び作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、オペレータの操作に応じてブレードのピッチ角を調整可能なものがある。例えば、特許文献1の作業機械では、ブレードのピッチ角を調整するための操作レバーが設けられている。操作レバーにはスイッチが設けられている。スイッチがオンのときに操作レバーが右に倒されると、ブレードがピッチダンプ(前傾)するように、油圧シリンダが制御される。スイッチがオンのときに操作レバーが左に倒されると、ブレードがピッチバック(後傾)するように、油圧シリンダが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレードのピッチ角は、掘削、或いは整地などの作業性に影響を与える。しかし、ブレードのピッチ角は、作業内容に応じて、適切な角度が異なる。例えば、ピッチ角が大きい、すなわちブレードが前傾しているときには、整地性は良好である一方、掘削抵抗が大きく、掘削性が低い。ピッチ角が小さい、すなわちブレードが後傾しているときには、掘削抵抗が小さく、掘削性が良好である一方、ブレードの後方への土こぼれが多く、整地性が低い。
【0005】
そのため、熟練したオペレータであっても、手動で適切なピッチ角を正確に選定することは容易ではない。本開示の目的は、作業機械において、ブレードのピッチ角を容易、且つ、適切に調整可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る作業機械は、車体と、リフトフレームと、ブレードと、リフトアクチュエータと、ピッチアクチュエータと、センサと、コントローラとを備える。リフトフレームは、車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持される。ブレードは、リフトフレームに対してピッチ軸回りに回動可能に支持される。リフトアクチュエータは、リフトフレームと車体とに接続され、リフトフレームをリフト軸回りに上下にリフト動作させる。ピッチアクチュエータは、ブレードとリフトフレームとに接続され、ブレードをピッチ軸回りにピッチ動作させる。センサは、車体に基づいて定められる基準高さからのブレードの高さを検出する。コントローラは、ブレードの高さに応じて、ブレードのピッチ角を変更するようにピッチアクチュエータを制御する。
【0007】
本開示の第2態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、車体と、リフトフレームと、ブレードと、リフトアクチュエータと、ピッチアクチュエータとを備える。リフトフレームは、車体に対してリフト軸回りに回動可能に支持される。ブレードは、リフトフレームに対してピッチ軸回りに回動可能に支持される。リフトアクチュエータは、リフトフレームと車体とに接続され、リフトフレームをリフト軸回りに上下にリフト動作させる。ピッチアクチュエータは、ブレードとリフトフレームとに接続され、ブレードをピッチ軸回りにピッチ動作させる。当該方法は、車体に基づいて定められる基準高さからのブレードの高さを検出することと、ブレードの高さに応じて、ブレードのピッチ角を変更するようにピッチアクチュエータを制御すること、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ブレードの高さに応じて、ブレードのピッチ角を変更するようにピッチアクチュエータが自動的に制御される。それにより、作業機械において、ブレードのピッチ角を、容易、且つ、適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
【
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
【
図3】基準高さからのブレードの高さを示す図である。
【
図6】ブレードの高さが基準高さ以上であるときのブレードのピッチ動作を示す図である。
【
図7】ブレードの高さが基準高さ以下であるときのブレードのピッチ動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る作業機械について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と作業機12とを備えている。
【0011】
車体11は、運転室13と、エンジン室14と、走行装置15とを含む。運転室13には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室14は、運転室13の前方に配置されている。走行装置15は、車体11の下部に設けられている。走行装置15は、左右一対の履帯16を含む。なお、
図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0012】
作業機12は、車体11に取り付けられている。作業機12は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトアクチュエータ19と、ピッチアクチュエータ20とを有する。リフトフレーム17は、車体11に対してリフト軸X1回りに回動可能に支持される。リフト軸X1は、車体11の横方向に延びている。リフトフレーム17は、リフト軸X1回りに回動することで、上下にリフト動作する。
【0013】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17に対してピッチ軸X2回りに回動可能に支持される。ピッチ軸X2は、車体11の横方向に延びている。ブレード18は、ピッチ軸X2回りに回動することで、前後にピッチ動作する。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。
【0014】
リフトアクチュエータ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトアクチュエータ19は、油圧シリンダである。リフトアクチュエータ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、上下にリフト動作する。リフトアクチュエータ19が縮むことによって、ブレード18が上昇する。リフトアクチュエータ19が延びることによって、ブレード18が下降する。
【0015】
ピッチアクチュエータ20は、リフトフレーム17とブレード18とに連結されている。ピッチアクチュエータ20は、油圧シリンダである。ピッチアクチュエータ20が伸縮することによって、ブレード18は、前後にピッチ動作する。ブレード18の一部、例えば上端が、前後に動作することで、ブレード18がピッチ軸X2回りにピッチ動作する。ピッチアクチュエータ20が伸びることによって、ブレード18は前傾する。ピッチアクチュエータ20が縮むことによって、ブレード18は後傾する。
【0016】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。
図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトアクチュエータ19とピッチアクチュエータ20とに供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0017】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置15に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバータ、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0018】
制御システム3は、コントローラ26と制御弁27とを備える。コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶装置28とプロセッサ29とを含む。プロセッサ29は、例えばCPUを含む。記憶装置28は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサ29によって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0019】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトアクチュエータ19及びピッチアクチュエータ20などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトアクチュエータ19に供給される作動油の流量を制御する。制御弁27は、油圧ポンプ23からピッチアクチュエータ20に供給される作動油の流量を制御する。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0020】
制御システム3は、操作装置31と入力装置32とを備えている。操作装置31は、例えばレバーを含む。或いは、操作装置31は、ペダル、或いはスイッチを含んでもよい。オペレータは、操作装置31を用いて、作業機械1の走行と、作業機12の動作とを手動で操作することができる。操作装置31は、操作装置31の操作を示す操作信号を出力する。コントローラ26は、操作装置31から操作信号を受信する。
【0021】
操作装置31は、ブレード18のリフト動作を操作可能である。詳細には、操作装置31は、ブレード18の上げ操作と下げ操作との操作が可能である。オペレータが操作装置31に対して上げ操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が上昇するように、リフトアクチュエータ19を制御する。オペレータが操作装置31に対して下げ操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が下降するように、リフトアクチュエータ19を制御する。
【0022】
操作装置31は、ブレード18のピッチ動作を操作可能である。詳細には、操作装置31は、ブレード18の前傾操作と後傾操作との操作が可能である。オペレータが操作装置31に対して前傾操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が前傾するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。オペレータが操作装置31に対して後傾操作を行うと、コントローラ26は、ブレード18が後傾するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。
【0023】
なお、操作装置31は、油圧パイロット式の装置であってもよい。例えば、操作装置31は、操作装置31の操作に応じたパイロット油圧を出力してもよい。操作装置31からのパイロット油圧によって制御弁27が制御されることで、リフトアクチュエータ19、或いはピッチアクチュエータ20が制御されてもよい。コントローラ26は、パイロット油圧を示す信号を、操作信号として受信してもよい。
【0024】
入力装置32は、例えばタッチパネルを含む。ただし、入力装置32は、スイッチなどの他の装置を含んでもよい。オペレータは、操作装置31を用いて、コントローラ26によるブレード18のピッチ角の制御モードの設定を行うことができる。ブレード18のピッチ角の制御モードについては、後に詳細に説明する。
【0025】
制御システム3は、ブレード18の高さを検出するセンサ33を備えている。センサ33は、車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とを含む。車体センサ34は、車体11に取り付けられている。車体センサ34は、車体11の姿勢を検出する。フレームセンサ35は、リフトフレーム17に取り付けられている。フレームセンサ35は、リフトフレーム17の姿勢を検出する。ブレードセンサ36は、ブレード18に取り付けられている。ブレードセンサ36は、ブレード18の姿勢を検出する。
【0026】
車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とは、それぞれIMU(慣性計測装置、Inertial Measurement Unit)である。ただし、フレームセンサ35とブレードセンサ36とは、IMUに限らず、角度センサ、或いはシリンダのストロークセンサなどの他のセンサであってもよい。
【0027】
車体センサ34は、水平に対する車体11の前後方向の角度(車体ピッチ角)を検出する。フレームセンサ35は、リフトフレーム17の回転角度を検出する。ブレードセンサ36は、ブレード18のピッチ角を検出する。車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とは、それぞれ検出した角度を示す検出信号を出力する。
【0028】
コントローラ26は、車体センサ34と、フレームセンサ35と、ブレードセンサ36とから検出信号を受信する。コントローラ26は、検出信号に基づいて、車体11に基づいて定められる基準高さH0からのブレード18の高さを算出する。
図3に示すように、基準高さH0は、履帯16の接地面G1の高さである。ブレード18の高さは、接地面G1からのブレード18の刃先P0の高さである。
【0029】
コントローラ26は、車体11と、リフトフレーム17と、ブレード18との寸法及び位置関係を示す機械寸法データを記憶している。コントローラ26は、車体センサ34とフレームセンサ35とブレードセンサ36とによって検出された角度と、機械寸法データとに基づいて、基準高さH0からのブレード18の高さを算出する。
【0030】
図3に示すように、ブレード18の刃先P0が履帯16の接地面G1上に置かれた状態では、ブレード18の高さは0である。ブレード18の刃先P0が履帯16の接地面G1より上方に位置しているときには、ブレード18の高さは正の値となる。ブレード18の刃先P0が履帯16の接地面G1より下方に位置しているときには、ブレード18の高さは負の値となる。なお、
図3において、P1は、ブレード18の刃先P0の最高位置を示している。P2は、ブレード18の刃先P0の最低位置を示している。作業機械1は、最高位置P1と最低位置P2との間で、ブレード18をリフト動作させることができる。
【0031】
次に、ブレード18のピッチ角の制御モードについて説明する。ブレード18のピッチ角の制御モードは、自動モードと手動モードとを含む。コントローラ26は、入力装置32の操作に応じて、自動モードと手動モードとを切り替える。オペレータは、入力装置32を操作することで、自動モードと手動モードとを選択することができる。
【0032】
自動モードでは、コントローラ26は、基準高さH0からのブレード18の高さに応じて、ブレード18のピッチ角を変更するようにピッチアクチュエータ20を制御する。
図4A~
図4Cは、ブレード18のピッチ角を示す図である。
図4A~
図4Cに示すように、ブレード18のピッチ角θ1-θ3は、ブレード18の刃先P0と履帯16の接地面G1との間のなす角である。
図4Bは、標準状態のブレード18のピッチ角θ2を示している。
図4Aは、標準状態よりも前傾したブレード18のピッチ角θ1を示している。
図4Cは、標準状態よりも後傾したブレード18のピッチ角θ3を示している。ブレード18が前傾するほどピッチ角は大きくなる。ブレード18が後傾するほどピッチ角は小さくなる。すなわち、θ1>θ2>θ3である。
【0033】
コントローラ26は、ピッチ角データを記憶している。ピッチ角データは、ブレード18の高さとブレード18の目標ピッチ角との関係を規定する。ピッチ角データは、例えばマップの形式でコントローラ26に保存されている。ただし、ピッチ角データは、マップに限らず、数式など他の形式でコントローラ26に保存されてもよい。
【0034】
コントローラ26は、ピッチ角データを参照して、ブレード18の高さから目標ピッチ角を決定する。コントローラ26は、ブレード18のピッチ角が目標ピッチ角となるように、ピッチアクチュエータ20を制御する。
図5は、ピッチ角データの一例を示す図である。
図5において実線は、本実施形態におけるピッチ角データの一例を示している。
【0035】
図5において二点鎖線は、ピッチ角の制御モードが行われない場合のピッチ角の変化を示している。すなわち、
図5において二点鎖線は、ブレード18のピッチ動作が固定されているときのピッチ角(以下、非制御時のピッチ角と呼ぶ)の変化を示している。ピッチ動作が固定されているときには、
図5の二点鎖線で示すように、最大値Hmaxと最小値Hminとの間でのブレード18の高さの変化に比例して、ピッチ角が変化する。この非制御時のピッチ角の変化は、リフト軸X1回りにリフトフレーム17が回動することによるピッチ角の変化を示している。非制御時には、ブレード18の高さの増大に対して、一定の比率で、ピッチ角が減少する。
【0036】
一方、本実施形態における自動モードでのピッチ角データは、0より大きいブレード18の高さに対して、非制御時よりも大きな目標ピッチ角を規定している。従って、
図6に示すように、コントローラ26は、ブレード18が基準高さH0よりも上方に位置するときには、非制御時よりも、ブレード18を前傾させるように、ピッチアクチュエータ20を制御する。なお、
図6において二点鎖線は、非制御時のブレード18の姿勢を示している。
【0037】
また、
図5に示すように、ブレード18の高さが第1範囲(0-H1)でのピッチ角データの傾きの絶対値は、非制御時よりも大きい。第1範囲(0-H1)は、ブレード18の高さが0からH1までの範囲である。H1は、0とHmaxとの間の値である。ブレード18の高さが第2範囲(H1-Hmax)でのピッチ角データの傾きの絶対値は、非制御時と同じである。第2範囲は、ブレード18の高さがH1からHmaxまでの範囲である。
【0038】
コントローラ26は、ブレード18の高さが第1範囲(0-H1)内であるときには、ブレード18の高さの増大に応じて、ブレード18を前傾させる方向にブレード18のピッチ角を変更する。コントローラ26は、ブレード18の高さが第2範囲(H1-Hmax)内であるときには、ピッチアクチュエータ20によるブレード18のピッチ動作を固定する。
【0039】
本実施形態における自動モードでのピッチ角データでは、0より小さいブレード18の高さに対して、非制御時よりも小さな目標ピッチ角を規定している。従って、
図7に示すように、コントローラ26は、ブレード18が基準高さH0よりも下方に位置するときには、非制御時よりも、ブレード18を後傾させるように、ピッチアクチュエータ20を制御する。なお、
図7において二点鎖線は、非制御時のブレード18の姿勢を示している。
【0040】
また、
図5に示すように、ブレード18の高さが第3範囲(0-H2)内では、ピッチ角は、ブレード18の高さの減少に応じて減少する。第3範囲(0-H2)は、ブレード18の高さが0からH2までの範囲である。H2は、0とHminとの間の値である。ブレード18の高さが第4範囲(H2-Hmin)でのピッチ角データの傾きの絶対値は、非制御時と同じである。第4範囲(H2-Hmin)は、ブレード18の高さがH2からHminまでの範囲である。
【0041】
コントローラ26は、ブレード18の高さが第3範囲(0-H2)内であるときには、ブレード18の高さの減少に応じて、ブレード18を後傾させる方向にブレード18のピッチ角を変更する。コントローラ26は、ブレード18の高さが第4範囲(H2-Hmin)内であるときには、ピッチアクチュエータ20によるブレード18のピッチ動作を固定する。
【0042】
手動モードでは、操作装置31の操作に応じてブレード18のピッチ角を変更するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。また、操作装置31の操作が無いときには、ブレード18のピッチ角を維持するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。例えば、操作装置31の操作が無いときに、制御弁27において作動油の一部が漏れていても、コントローラ26は、ブレード18のピッチ角を維持するように、ピッチアクチュエータ20を制御する。
【0043】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、自動モードにおいて、ブレード18の高さに応じて、ブレード18のピッチ角を変更するようにピッチアクチュエータ20が自動的に制御される。それにより、作業機械1において、ブレード18のピッチ角を、容易、且つ、適切に調整することができる。
【0044】
例えば、ブレード18が基準高さH0よりも上方に位置するときには、非制御時よりも、ブレード18を前傾させるように、ピッチアクチュエータ20が制御される。ブレード18が基準高さH0よりも上方に位置するときには、整地、或いは排土作業が行われることが多い。従って、ブレード18が基準高さH0よりも上方に位置するときにブレード18が前傾することで、整地或いは排土作業における作業性が向上する。
【0045】
また、ブレード18が基準高さH0よりも下方に位置するときには、非制御時よりも、ブレード18を後傾させるように、ピッチアクチュエータ20が制御される。ブレード18が基準高さH0よりも下方に位置するときには、掘削作業が行われることが多い。従って、ブレード18が基準高さH0よりも下方に位置するときにブレード18が後傾することで、掘削作業における作業性が向上する。
【0046】
以上のように、以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、自動モードによって、ブレード18のピッチ角を、作業内容に応じて、容易、且つ、適切に調整することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の車両であってもよい。コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。コントローラ26による処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。上述した自動モード或いは手動モードでの処理の一部が省略されてもよい。或いは、上述した処理の一部が変更されてもよい。
【0049】
リフトアクチュエータ19と、ピッチアクチュエータ20とは、油圧シリンダに限らない。リフトアクチュエータ19と、ピッチアクチュエータ20とは、例えば電動モータなどの他のアクチュエータであってもよい。ピッチ角データは、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、ピッチ角データは、第2範囲においても、非制御時と異なる傾きを有してもよい。ピッチ角データは、第4範囲においても、非制御時と異なる傾きを有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示によれば、作業機械において、ブレードのピッチ角を、容易、且つ、適切に調整することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 車体
16 履帯
17 リフトフレーム
18 ブレード
19 リフトアクチュエータ
20 ピッチアクチュエータ
26 コントローラ
31 操作装置
33 センサ