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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170475
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/64 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076627
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】三成 千明
(72)【発明者】
【氏名】ムジラネザ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 奈留
(57)【要約】
【課題】ユーザの覚醒度合いに応じて動作させることができるヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】装着時にユーザの眼が外光から遮蔽された空間内に配置されるヘッドマウントディスプレイであって、映像光を出射する表示部と、上記映像光がユーザの眼で反射された反射光を検出する光センサと、を有する表示パネルを備え、上記反射光の輝度情報に基づきユーザの覚醒度を算出する判定部を備えるヘッドマウントディスプレイ。
【選択図】 図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時にユーザの眼が外光から遮蔽された空間内に配置されるヘッドマウントディスプレイであって、
映像光を出射する表示部と、
前記映像光がユーザの眼で反射された反射光を検出する光センサと、を有する表示パネルを備え、
前記反射光の輝度情報に基づきユーザの覚醒度を算出する判定部を備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記光センサは、ユーザの瞳の中心線に対する前記映像光の入射角が50度以内となる領域の外側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記光センサは、前記表示部の内接円に対して80%の直径を有する同心円を想定したときに、前記同心円の外側の領域に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記表示パネルは、薄膜トランジスタ基板、液晶層及び対向基板を有する液晶パネルであり、
前記光センサは、薄膜トランジスタ基板に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの眼球で反射される場合の第一の反射光量、及び、ユーザの瞼で反射される場合の第二の反射光量を記憶する記憶部を備え、
前記判定部は、前記第一の反射光量、及び、前記第二の反射光量と、前記光センサで検出した前記反射光の輝度情報と、を比較して、ユーザの前記覚醒度が、前記第一の反射光量から算出される第一の基準覚醒度及び前記第二の反射光量から算出される第二の基準覚醒度のいずれの値に近いかを判定することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記表示部を制御する映像制御部を有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記映像制御部は、前記映像光の輝度を低下させる睡眠導入処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記表示部を制御する映像制御部を有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記映像制御部は、前記表示部が表示する映像を睡眠導入用の映像に変更する睡眠導入処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、前記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記音響制御部は、前記音響の音量を低下させる睡眠導入処理を行うことを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、前記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記音響制御部は、前記音響出力部が出力する音響を睡眠導入用の音響に変更する睡眠導入処理を行うことを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記表示部を制御する映像制御部を有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記映像制御部は、前記映像光の輝度を上昇させる覚醒処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記表示部を制御する映像制御部を有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記映像制御部は、前記表示部が表示する映像を覚醒用の映像に変更する覚醒処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
前記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、前記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記音響制御部は、前記音響の音量を上昇させる覚醒処理を行うことを特徴とする請求項5、10又は11のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項13】
前記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、前記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、
ユーザの前記覚醒度が前記第一の基準覚醒度よりも前記第二の基準覚醒度により近いという前記判定部の判定結果に基づき、前記音響制御部は、前記音響出力部が覚醒用の音響を出力するよう覚醒処理を行うことを特徴とする請求項5、10又は11のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに関する。より詳しくは、没入型のヘッドマウントディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)は、ユーザの頭部に装着された状態でユーザが画像を見ることができるように画像を出力する表示装置である。HMDとしては、例えば、片眼の眼前に画像出力部が設けられる片眼型のHMDと、両眼を完全に覆い、ユーザの視野にはHMDの表示のみが見えるようにした没入型のHMDとがある。
【0003】
片眼型のHMDでは、画像出力部からの画像と、外部の景色とが同時に視野に入る。一方、没入型のHMDでは、両眼が完全に覆われ、外光が遮蔽されて深い没入感が得られ、VR(Virtual Reality)デバイスとも呼ばれる。
【0004】
ヘッドマウントディスプレイに関する技術として、例えば、特許文献1には、少なくとも一方の眼の眼前において画像を表示するヘッドマウントディスプレイにおいて、画像を表示する画像出力部と、上記画像出力部のおかれている環境の明るさを検出する光センサと、上記画像出力部および上記光センサを支持すると共に、ユーザの頭部に装着するための支持部とを有し、上記画像出力部は、上記光センサの検出結果に応じて、表示される画像の明るさが可変であるヘッドマウントディスプレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-233908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
覚醒(目が覚めている)状態でVRデバイスを利用し、その後、覚醒度が低下してVRデバイスを装着したまま睡眠状態となってしまう場合、VRデバイスが備えるディスプレイから照射される光がユーザの瞼を通して眼球を刺激し、ユーザが深い眠りを得られ難いという課題がある。具体的には、VRデバイスを用いて映像を鑑賞している最中、ゲームをプレイしている最中等に、ユーザがいつの間にか眠ってしまう、いわゆる「寝落ち」状態に陥った場合においても、VRデバイスからの光は継続して照射され続ける。そのため、ユーザは睡眠中であるにもかかわらず、瞼を通じてVRデバイスからの光刺激を感じ続けることとなり、質の良い睡眠の効果が得られ難い、という課題があった。また、寝落ち状態に陥ることを防止することが求められる場合もあった。
【0007】
上記特許文献1では、ヘッドマウントディスプレイを使用中のユーザが睡眠状態にあるか否かは検討されていない。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ユーザの覚醒度合いに応じて動作させることができるヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一実施形態は、装着時にユーザの眼が外光から遮蔽された空間内に配置されるヘッドマウントディスプレイであって、映像光を出射する表示部と、上記映像光がユーザの眼で反射された反射光を検出する光センサと、を有する表示パネルを備え、上記反射光の輝度情報に基づきユーザの覚醒度を算出する判定部を備えるヘッドマウントディスプレイ。
【0010】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記光センサは、ユーザの瞳の中心線に対する上記映像光の入射角が50度以内となる領域の外側に配置されている、ヘッドマウントディスプレイ。
【0011】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記光センサは、上記表示部の内接円に対して80%の直径を有する同心円を想定したときに、上記同心円の外側の領域に配置されている、ヘッドマウントディスプレイ。
【0012】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、上記表示パネルは、薄膜トランジスタ基板、液晶層及び対向基板を有する液晶パネルであり、上記光センサは、薄膜トランジスタ基板に配置されている、ヘッドマウントディスプレイ。
【0013】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの眼球で反射される場合の第一の反射光量、及び、ユーザの瞼で反射される場合の第二の反射光量を記憶する記憶部を備え、上記判定部は、上記第一の反射光量、及び、上記第二の反射光量と、上記光センサで検出した上記反射光の輝度情報と、を比較して、ユーザの上記覚醒度が、上記第一の反射光量から算出される第一の基準覚醒度及び上記第二の反射光量から算出される第二の基準覚醒度のいずれの値に近いかを判定する、ヘッドマウントディスプレイ。
【0014】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、上記表示部を制御する映像制御部を有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記映像制御部は、上記映像光の輝度を低下させる睡眠導入処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0015】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、上記表示部を制御する映像制御部を有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記映像制御部は、上記表示部が表示する映像を睡眠導入用の映像に変更する睡眠導入処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0016】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(5)、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、上記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記音響制御部は、上記音響の音量を低下させる睡眠導入処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0017】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(5)、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、上記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記音響制御部は、上記音響出力部が出力する音響を睡眠導入用の音響に変更する睡眠導入処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0018】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、上記表示部を制御する映像制御部を有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記映像制御部は、上記映像光の輝度を上昇させる覚醒処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0019】
(11)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、上記表示部を制御する映像制御部を有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記映像制御部は、上記表示部が表示する映像を覚醒用の映像に変更する覚醒処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0020】
(12)また、本発明のある実施形態は、上記(5)、上記(10)又は上記(11)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、上記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記音響制御部は、上記音響の音量を上昇させる覚醒処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【0021】
(13)また、本発明のある実施形態は、上記(5)、上記(10)又は上記(11)の構成に加え、上記ヘッドマウントディスプレイは、音響を出力する音響出力部と、上記音響出力部を制御する音響制御部とを有し、ユーザの上記覚醒度が上記第一の基準覚醒度よりも上記第二の基準覚醒度により近いという上記判定部の判定結果に基づき、上記音響制御部は、上記音響出力部が覚醒用の音響を出力するよう覚醒処理を行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザの覚醒度合いに応じて動作させることができるヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態のヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
図2A】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルについて説明する模式図である。
図2B】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルのFOVが接眼レンズで規定される場合を説明する模式図である。
図2C】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルのFOVが筐体で規定される場合を説明する模式図である。
図3】実施形態のヘッドマウントディスプレイの構成を説明するブロック図である。
図4】実施形態のヘッドマウントディスプレイの一例を説明する図であり、1ディスプレイ方式のヘッドマウントディスプレイの模式図である。
図5】実施形態のヘッドマウントディスプレイの一例を説明する図であり、2ディスプレイ方式のヘッドマウントディスプレイの模式図である。
図6】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの一例について説明する平面模式図である。
図7】実施形態のヘッドマウントディスプレイの光学系の一例を説明する模式図である。
図8】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。
図9】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの構成を示すブロック図である。
図10】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える光センサが検出する第一の反射光量及び第二の反射光量について説明する模式図である。
図11】眼球及び瞼での反射光量の違いの一例について説明する模式図である。
図12】眼球及び瞼での反射光量の違いの一例について説明する模式図である。
図13図12における照度計の配置について説明する模式図である。
図14】眼球及び瞼での反射光量の違いの一例について説明する模式図である。
図15】実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える判定部、映像制御部及び音響制御部での処理について説明するフローチャートである。
図16】実施形態の変形例1のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。
図17】実施形態の変形例2のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。
図18】実施形態の変形例3のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。
図19】実施例1のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。
図20】実施例1のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの平面模式図である。
図21】実施例1のヘッドマウントディスプレイが行う処理のフローチャートである。
図22】実施例2のヘッドマウントディスプレイが行う処理のフローチャートである。
図23】実施例3のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネル内の光センサの配置を示す平面模式図である。
図24】実施例3のヘッドマウントディスプレイのFOV及び光センサの配置について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0025】
<用語の定義>
本明細書中、「観察面側」とは、ディスプレイの画面(表示面)に対してより近い側を意味し、「背面側」とは、ディスプレイの画面(表示面)に対してより遠い側を意味する。
【0026】
<実施形態>
図1は、実施形態のヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。図2Aは、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルについて説明する模式図であり、左側に、ユーザと表示パネルを側方から見たときの配置関係が図示され、右側に、表示パネルの正面図が示されている。図2Bは、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルのFOVが接眼レンズで規定される場合を説明する模式図である。図2Cは、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルのFOVが筐体で規定される場合を説明する模式図である。図3は、実施形態のヘッドマウントディスプレイの構成を説明するブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)1は、装着時にユーザUの眼が外光から遮蔽された空間内に配置されるヘッドマウントディスプレイである。このような態様とすることにより、ユーザは没入感を得ることができる。
【0028】
一方、上記特許文献1のヘッドマウントディスプレイは、外光を遮蔽しないタイプであり、没入感が得られ難い。
【0029】
また、図1及び図2Aに示すように、ヘッドマウントディスプレイ1は、映像光を出射する表示部210Aと、映像光がユーザUの眼で反射された反射光を検出する光センサ220と、を有する表示パネル200を備える。このような態様とすることにより、表示パネルとは別に光センサを設ける場合に比べてコストを抑えることができ、かつ、光センサの感度を高めることができる。
【0030】
一方、上記特許文献1のヘッドマウントディスプレイにおける光センサはディスプレイデバイスとは別に設けられた外付けの光センサであり、設置場所を考慮してデバイスサイズが大きくなったり、コストが掛かったりするという課題がある。
【0031】
また、図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1は、反射光の輝度情報に基づきユーザUの覚醒度を算出する判定部511を備える。このような態様とすることにより、判定部511での結果に基づいて、ユーザUの覚醒度合いに応じてヘッドマウントディスプレイ1を動作させることが可能となる。
【0032】
一方、上記特許文献1では、外光が入り込むタイプのヘッドマウントディスプレイにおいて、光センサを配置して、外光強度に応じて、ディスプレイの輝度を調節する機能を搭載する技術が開示されている。特許文献1のヘッドマウントディスプレイでは、外光の影響によりユーザの覚醒状態を把握することができない。
【0033】
以上のように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、反射光の輝度情報に基づき覚醒度を算出し、例えば、覚醒時と睡眠時を判別してヘッドマウントディスプレイ1の輝度を調節することができる。また、ヘッドマウントディスプレイ1のサイズをより小さくすることができ、かつ、コストを抑えることができる。以下、本実施形態の詳細を説明する。
【0034】
図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1は、ユーザUの頭部に装着可能な表示装置であり、両眼型、かつ、頭部に装着した状態でユーザの眼を完全に覆う没入型のヘッドマウントディスプレイである。
【0035】
ヘッドマウントディスプレイ1は、ユーザUに対して映像を表示するための機能を有する映像出力部10と、音声、音楽、効果音等の音響を発生させる機能を有する音響出力部20と、映像出力部10及び音響出力部20を一体的に連結すると共に、これらをユーザUの頭部に着脱自在に装着するための装着部30と、映像出力部10とユーザUの顔との間に配置されたフェイスクッション40と、を有する。
【0036】
また、ヘッドマウントディスプレイ1は、映像表示信号及び音響出力信号を出力する駆動ユニット50を備え、駆動ユニット50は、映像出力部10及び音響出力部20と有線又は無線で接続されている。無線通信の方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)が挙げられる。
【0037】
音響出力部20は、音響出力信号を音響に変換するものである。通常、ヘッドホンとして製品化されているものを用いることができる。また、音響出力部20は、装着部30と共に、当該ヘッドマウントディスプレイ1をユーザUの頭部に装着させる際の、耳への当接部としても機能する。
【0038】
装着部30は、ユーザUが被ることにより頭部を一周し、ヘッドマウントディスプレイ1をユーザUの頭部へ固定する装着バンド31を含む。
【0039】
フェイスクッション40は、映像出力部10とユーザUの顔との間に配置された緩衝材であり、当該フェイスクッション40を配置することにより、ヘッドマウントディスプレイ1の使用中にユーザUの視野に外光が入り込むことを抑えることができる。
【0040】
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、光センサ220により検出される光に基づいてユーザUの覚醒度を算出するため、映像出力部10に外光が入り込んだ場合にノイズとなって検出されてしまう。そこで、本実施形態では、フェイスクッション40を映像出力部10とユーザUの顔との間に配置することにより、映像出力部10内に入り込む外光を抑えることができ、より正確にユーザUの覚醒度を算出することができる。フェイスクッション40は、映像出力部10内に入る外光を95%以上遮蔽することが好ましく、99%以上遮蔽することがより好ましく、100%遮蔽することが更に好ましい。
【0041】
図4は、実施形態のヘッドマウントディスプレイの一例を説明する図であり、1ディスプレイ方式のヘッドマウントディスプレイの模式図である。図5は、実施形態のヘッドマウントディスプレイの一例を説明する図であり、2ディスプレイ方式のヘッドマウントディスプレイの模式図である。
【0042】
映像出力部10は、映像出力信号を映像に変換するものである。映像出力部10は、図2A図4及び図5に示すように、ユーザUがヘッドマウントディスプレイ1を装着した状態において左右の眼を覆う形状の筐体100と、筐体100の内部設けられ、装着時にユーザUの眼に正対するように表示パネル200と、表示パネル200とユーザUとの間に位置し、映像を拡大して見せる接眼レンズ300と、を備える。
【0043】
ヘッドマウントディスプレイ1の方式は、1ディスプレイ方式と2ディスプレイ方式とに大別される。1ディスプレイ方式は、図4に示すように、左右の眼に対して一つの表示パネル200(ディスプレイ)を配置した構成である。スマートフォンをヘッドマウントディスプレイ1の表示パネル200に流用するものは1ディスプレイ方式に分類され、比較的安価にヘッドマウントディスプレイ1を利用するために採用される。一方で図5に示す2ディスプレイ方式は、左右の眼にそれぞれ表示パネル200が配置された構成となっていることから、表示パネル200としての高精細化やヘッドマウントディスプレイ1としての薄化・軽量化が可能である。本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、1ディスプレイ方式及び2ディスプレイ方式の両方式に対して適用可能である。
【0044】
表示パネル200は、図2Aに示すように、画像(映像)を表示可能な表示部(アクティブエリア)210Aと、表示部210Aを取り囲むと共に画像を表示不能な非表示部(ノンアクティブエリア)210Bとを備える。
【0045】
表示部210Aには、マトリクス状に複数の画素が配列されており、少なくとも1つの光センサ220を備える。光センサ220は、ユーザUの瞳の中心線に対する映像光の入射角(FOV:Field Of View)が50度以内となる領域の外側に配置されていることが好ましい。このような態様とすることにより、光センサ220によって表示部210Aの表示の視認性が損なわれるのを抑えることができる。
【0046】
図2Aに示すように、光センサ220は、ユーザUの瞳が正面を向いたときを基準として、ユーザUの瞳の中心線に対する映像光の入射角が80度以内となる領域の外側に配置されていることがより好ましく、90度以内となる領域の外側に配置されていることが更に好ましく、100度以内となる領域の外側に配置されていることが特に好ましい。このような態様とすることにより、光センサ220によって表示部210Aの表示の視認性が損なわれるのをより抑えることができる。
【0047】
ここで、FOVについて説明する。FOVとは、人(人の眼球)が正面を向いた時に、瞳の中心よりも発光点に近い側(図2Aで言えば、表示パネル200の上側から出た光を考える際は、瞳の中心よりも上側)に到達する、表示パネル200から出た映像光が最大となる角度をFOVの半値角と言う。一般的にはそれを上下ともに考えた全角をFOVと呼ぶ。FOVは表示パネル200のサイズに規定されるとは限らず、接眼レンズ300のサイズ(図2B参照)や筐体100(図2C参照)に影響される場合もある。
【0048】
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1では、FOVが略100度に設定されているが、ヘッドマウントディスプレイ1のFOVはこれに限定されず、例えば、略200度、略210度等であってもよい。
【0049】
図6は、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの一例について説明する平面模式図である。光センサ220は、図6に示すように、表示パネル200の表示部210Aに対する内接円200Aと中心が同じ円又は楕円であり、かつ、内接円200Aの直径又は長径と比べて、80%の長さの直径又は長径を有する円200Bの外側の領域に配置されることも好ましい。このような態様によっても、光センサ220によって表示部210Aの表示の視認性が損なわれるのを抑えることができる。ここで、内接円200A及び円200Bは、表示部210Aの形状に応じて設定されるものであり、厳密に円形でなくてもよい。例えば、表示部210Aが正方形であれば、円形とされるが、表示部210Aが長方形であれば、楕円形とされる。
【0050】
表示パネル200は、複数の光センサ220を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、いずれかの光センサ220に不具合が生じても、他の光センサ220で補うことができる。また、検出できるデータ数が多くなり、応用範囲が広がる。
【0051】
本実施形態の光センサ220は、視認性の低下を抑えるために表示パネル200の弁別視野範囲外に配置することが好ましく、この場合、光センサ220の個数は、表示パネル200の画素数以下となる。
【0052】
図7は、実施形態のヘッドマウントディスプレイの光学系の一例を説明する模式図であり、左側に、ユーザと表示パネルを側方から見たときの配置関係が図示され、右側に、表示パネルの正面図が示されている。光センサ220としては、図2Aに示す光学系以外に、図7に示す折り返し光学系を採用することもできる。図7に示す折り返し光学系では、ヘッドマウントディスプレイ1は、ユーザU側から順に、第一のレンズ221、反射偏光板222(例えば、日東電工株式会社製の商品名「APCF」)、λ/4板である第一の位相差板223、第二のレンズ224、ハーフミラーコート225及びλ/4板である第二の位相差板226を備える。
【0053】
折り返し光学系とすることにより、ヘッドマウントディスプレイ1を薄型化することができる。この場合も、光センサ220は、ユーザUの瞳が正面を向いたときを基準として、ユーザUの瞳の中心線に対する映像光の入射角が50度以内となる領域の外側に配置されていることが好ましい。このような態様とすることにより、光センサ220によって表示部210Aの表示の視認性が損なわれるのを抑えることができる。また、光センサ220は、ユーザUの瞳の中心線に対する映像光の入射角が80度以内となる領域の外側に配置されていることがより好ましく、90度以内となる領域の外側に配置されていることが更に好ましく、100度以内となる領域の外側に配置されていることが特に好ましい。このような態様とすることにより、光センサ220によって表示部210Aの表示の視認性が損なわれるのをより抑えることができる。
【0054】
図8は、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。表示パネル200は、図8に示すように、背面側から観察面側に向かって順に、バックライト211と、第一の偏光板212と、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)基板213と、液晶層214と、カラーフィルタ(CF:Color Filter)基板215と、第二の偏光板216と、を備える。
【0055】
光センサ220は、TFT基板213(領域1A)に配置される。このような態様とすることにより、TFT基板213が備えるゲート線、ソース線等の各種配線を利用して光センサ220を表示パネル200内に設けることができる。光センサ220が配置される場所はTFT基板213(領域1A)に限定されず、液晶層214(領域2A)、CF基板215(領域3A)又は第二の偏光板216(領域4A)に配置されてもよい。
【0056】
本実施形態の表示パネル200は液晶表示パネルであるが、表示パネル200は、光センサ220を内蔵した表示パネルであればよい。表示パネル200としては、液晶表示パネルの他に、例えば、有機EL(Electro-Luminescence)パネル、uLEDパネルが挙げられる。
【0057】
バックライト211は、光を照射するものであれば特に限定されず、直下型やエッジ型やその他のどの方式でもよい。
【0058】
第一の偏光板212及び第二の偏光板216としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素錯体(又は染料)等の異方性材料を、染色及び吸着させてから延伸配向させた偏光子(吸収型偏光板)等を用いることができる。なお、通常は、機械強度や耐湿熱性を確保するために、PVAフィルムの両側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルムをラミネートして実用に供される。
【0059】
第一の偏光板212の吸収軸と第二の偏光板216の吸収軸とは、直交することが好ましい。このような構成によれば、第一の偏光板212と第二の偏光板216とがクロスニコルに配置されるため、電圧無印加時に、良好な黒表示状態を実現することができる。
【0060】
TFT基板213は、表示パネル200の画素のオン・オフをスイッチングするために用いられるスイッチング素子であるTFTが設けられた基板である。TFT基板213は、背面側から観察面側に向かって順に、支持基板と、ゲート線と、ゲート絶縁膜と、ソース線と、第一の層間絶縁膜と、面状の共通電極と、第二の層間絶縁膜と、スリットが設けられた画素電極と、を備える。このような構成によれば、一対の電極を構成する共通電極及び画素電極の間に電圧を印加することによって液晶層214に横電界(フリンジ電界)を発生させることができる。よって、共通電極と画素電極との間に印加する電圧を調整することにより、液晶層214中の液晶の配向を制御することができる。なお、本実施形態では共通電極と画素電極とを異なる層に設けるが、画素電極及び共通電極はそれぞれ櫛歯電極であり、櫛歯電極である画素電極及び櫛歯電極である共通電極が、互いに櫛歯が嵌合し合うように、同一の電極層に設けられてもよい。また、本実施形態では、TFT基板213に共通電極を設けるが、CF基板215に共通電極を設けてもよい。この場合、画素電極と共通電極との間で縦電界が発生し、液晶層214中の液晶分子の配向が制御される。
【0061】
支持基板は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0062】
TFT基板213は、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線と、を備える。複数のゲート線及び複数のソース線は、各画素を区画するように全体として格子状に形成されている。各ゲート線と各ソース線との交点にはスイッチング素子としてのTFTが配置されている。
【0063】
TFT基板213と液晶層214との間、及びCF基板215と液晶層214との間には、それぞれ第一の配向膜及び第二の配向膜が設けられている。第一の配向膜及び第二の配向膜は、液晶層214に含まれる液晶分子の配向を制御する機能を有し、液晶層214への印加電圧が閾値電圧未満(電圧無印加を含む)のときには、主に第一の配向膜及び第二の配向膜の働きによって、液晶層214中の液晶分子の長軸が第一の配向膜及び第二の配向膜に対して水平方向を向くように制御される。
【0064】
ここで、液晶層214中の液晶分子の長軸が第一の配向膜及び第二の配向膜に対して水平方向を向くとは、液晶分子のチルト角(プレチルト角を含む)が、第一の配向膜及び第二の配向膜に対して0~5°であることを意味し、好ましくは0~3°、より好ましくは0~1°であることを意味する。液晶分子のチルト角は、液晶分子の長軸(光軸)がTFT基板213及びCF基板215の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0065】
配向膜は、液晶分子の配向を制御するための配向処理がなされた層であり、ポリイミド等の液晶表示装置の分野で一般的な配向膜を用いることができる。配向膜の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリシロキサン等の主鎖を有するポリマーが挙げられ、主鎖又は側鎖に光反応部位(官能基)を有する光配向膜材料が好適に用いられる。
【0066】
液晶層214は、電圧無印加時にTFT基板213及びCF基板215に対して水平配向する液晶分子を含有し、一対の電極を構成する共通電極及び画素電極の間に印加された電圧により液晶層214内に発生する電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、光の透過量を制御するものである。液晶層214中の液晶分子は、TFT基板213に設けられた一対の電極間に電圧が印加されていない状態(電圧無印加時)では第一の配向膜及び第二の配向膜の規制力によって水平配向し、一対の電極間に電圧が印加された状態(電圧無印加時)では液晶層214内に発生した横電界に応じて面内方向に回転する。
【0067】
上記液晶分子は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。なお、正の誘電率異方性を有する液晶分子はポジ型液晶ともいい、負の誘電率異方性を有する液晶分子はネガ型液晶ともいう。なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率)
【0068】
CF基板215は、観察面側から背面側に向かって順に、支持基板、ブラックマトリクス層、CF層、及び、オーバーコート層を備える。
【0069】
ブラックマトリクス層は、支持基板上に、ゲート線及びソース線に対応するように格子状に設けられており、画素領域外に配置されている。
【0070】
CF層は、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタが面内に並べられ、ブラックマトリクス層で区画された構成を有する。赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタは、例えば、顔料を含有する透明樹脂で構成されている。通常、すべての画素に赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタの組み合わせが配置され、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタを透過する色光の量を制御しつつ混色させることで各画素において所望の色が得られ、映像光として観察面側(ユーザU側)に出射される。
【0071】
オーバーコート層は、CF基板215の液晶層214側の面を平坦化するものであり、例えば、有機膜(誘電率ε=3~4)を用いることができる。オーバーコート層は、例えば、光硬化性の樹脂を塗布し、紫外線照射及び焼成を行うことにより形成される。
【0072】
図9は、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの構成を示すブロック図である。図9に示すように、表示パネル200は、m本のゲート線G1~Gm、3n本のソース線SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBn、及び、(m×3n)個の画素回路1Pを備えている。これに加えて表示パネル200は、t個の光センサ220、t本のセンサ読み出し線RW1~RWt、及び、t本のセンサリセット線RS1~RStを備えている。表示パネル200は、CG(Continuous Grain)シリコンを用いて形成される。光センサ220は、例えば、pin型半導体層を有する。
【0073】
ゲート線G1~Gmは、互いに平行に配置される。ソース線SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBnは、ゲート線G1~Gmと直交するように互いに平行に配置される。センサ読み出し線RW1~RWtとセンサリセット線RS1~RStは、ゲート線G1~Gmと平行に配置される。
【0074】
画素回路1Pは、ゲート線G1~Gmとソース線SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBnの交点近傍に1個ずつ設けられる。画素回路1Pは、列方向(図9では縦方向)にm個ずつ、行方向(図9では横方向)に3n個ずつ、全体として2次元状に配置される。画素回路1Pは、制御対象のカラーフィルタの色によって、R画素回路1Pr、G画素回路1Pg及びB画素回路1Pbに分類される。3種類の画素回路1Pr、1Pg、1Pbは、行方向に並べて配置され、3個で1個の画素を形成する。
【0075】
画素回路1Pは、TFT3と液晶容量4を含んでいる。TFT3のゲート端子はゲート線Gi(iは1以上m以下の整数)に接続され、ソース端子はソース線SRj、SGj、SBj(jは1以上n以下の整数)のいずれかに接続され、ドレイン端子は液晶容量4の一方の電極に接続される。液晶容量4の他方の電極には、共通電極電圧が印加される。以下、G画素回路1Pgに接続されたソース線SG1~SGnをGソース線、B画素回路1Pbに接続されたソース線SB1~SBnをBソース線という。なお、画素回路1Pは補助容量を含んでいてもよい。
【0076】
画素回路1Pの光透過率(サブ画素の輝度)は、画素回路1Pに書き込まれた電圧によって定まる。ゲート線Giとソース線SXj(XはR、G、Bのいずれか)に接続された画素回路1Pにある電圧を書き込むためには、ゲート線Giにハイレベル電圧(TFT3をオン状態にする電圧)を印加し、ソース線SXjに書き込むべき電圧を印加すればよい。表示データ(映像表示信号)に応じた電圧を画素回路1Pに書き込むことにより、サブ画素の輝度を所望のレベルに設定することができる。
【0077】
光センサ220は、コンデンサ5、フォトダイオード6及びセンサプリアンプ7を含み、所定の画素に設けられる。コンデンサ5の一方の電極は、フォトダイオード6のカソード端子に接続される(以下、この接続点を節点Aという)。コンデンサ5の他方の電極はセンサ読み出し線RWiに接続され、フォトダイオード6のアノード端子はセンサリセット線RSiに接続される。センサプリアンプ7は、ゲート端子が節点Aに接続され、ドレイン端子がBソース線SBjに接続され、ソース端子がGソース線SGjに接続されたTFTで構成される。
【0078】
センサ読み出し線RWiやBソース線SBjなどに接続された光センサ220で光量を検知するためには、センサ読み出し線RWiとセンサリセット線RSiに所定の電圧を印加し、Bソース線SBjに電源電圧VDDを印加すればよい。センサ読み出し線RWiとセンサリセット線RSiに所定の電圧を印加した後、フォトダイオード6に光が入射すると、入射光量に応じた電流がフォトダイオード6に流れ、節点Aの電圧は流れた電流の分だけ低下する。Bソース線SBjに電源電圧VDDを印加すると、節点Aの電圧はセンサプリアンプ7で増幅され、Gソース線SGjには増幅後の電圧が出力される。したがって、Gソース線SGjの電圧に基づき、光センサ220で検知された光量を求めることができる。
【0079】
表示パネル200の周辺には、ゲート線駆動回路41、ソース線駆動回路42、センサ行駆動回路43、p個(pは1以上n以下の整数)のセンサ出力アンプ44、及び、複数のスイッチ45~48が設けられる。
【0080】
ソース線駆動回路42は、3n本のソース線に対応して3n個の出力端子を有する。Gソース線SG1~SGnとこれに対応したn個の出力端子との間にはスイッチ45が1個ずつ設けられ、Bソース線SB1~SBnとこれに対応したn個の出力端子との間にはスイッチ46が1個ずつ設けられる。Gソース線SG1~SGnはp本ずつのグループに分けられ、グループ内でk番目(kは1以上p以下の整数)のGソース線とk番目のセンサ出力アンプ44の入力端子との間にはスイッチ47が1個ずつ設けられる。Bソース線SB1~SBnは、いずれもスイッチ48の一端に接続され、スイッチ48の他端には電源電圧VDDが印加される。図9に含まれるスイッチ45~47の個数はn個であり、スイッチ48の個数は1個である。
【0081】
図9に示す回路は、表示期間とセンシング期間で異なる動作を行う。表示期間では、スイッチ45、46はオン状態、スイッチ47、48はオフ状態となる。これに対してセンシング期間では、スイッチ45、46はオフ状態、スイッチ48はオン状態となり、スイッチ47はGソース線SG1~SGnがグループごとに順にセンサ出力アンプ44の入力端子に接続されるように時分割でオン状態となる。
【0082】
表示期間では、ゲート線駆動回路41とソース線駆動回路42が動作する。ゲート線駆動回路41は、タイミング制御信号C1に従い、ゲート線G1~Gmの中から1ライン時間ごとに1本のゲート線を選択し、選択したゲート線にはハイレベル電圧を印加し、残りのゲート線にはローレベル電圧を印加する。ソース線駆動回路42は、表示データDR、DG、DBに基づき、ソース線SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBnを線順次方式で駆動する。より詳細には、ソース線駆動回路42は、表示データDR、DG、DBを少なくとも1行分ずつ記憶し、1ライン時間ごとに1行分の表示データに応じた電圧をソース線SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBnに印加する。なお、ソース線駆動回路42は、ソース線SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBnを点順次方式で駆動してもよい。
【0083】
センシング期間では、センサ行駆動回路43とセンサ出力アンプ44が動作する。センサ行駆動回路43は、タイミング制御信号C2に従い、センサ読み出し線RW1~RWtとセンサリセット線RS1~RStの中から1ライン時間ごとに信号線を1本ずつ選択し、選択したセンサ読み出し線とセンサリセット線には所定の読み出し用電圧とリセット用電圧を印加し、それ以外の信号線には選択時と異なる電圧を印加する。なお、典型的には、表示期間とセンシング期間では、1ライン時間の長さは異なる。センサ出力アンプ44は、スイッチ47によって選択された電圧を増幅し、センサ出力信号SS1~SSpとして出力する。
【0084】
図10は、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える光センサが検出する第一の反射光量及び第二の反射光量について説明する模式図である。光センサ220は、図10に示すように、表示パネル200から出射される光(映像光等)を光源として、ユーザUが眼を開いている時の眼球での反射光(第一の反射光量)、及び、眼を閉じている時の瞼での反射光(第二の反射光量)を検出する。また、光センサ220は、映像光がユーザUの眼で反射された反射光を検出する。判定部511は、ユーザUの眼で反射された反射光の光量(例えば、光センサ220が一定時間に検出する輝度情報)からユーザUの覚醒度を算出し、かつ、ユーザUの覚醒度が、第一の反射光量から算出される第一の基準覚醒度及び第二の反射光量から算出される第二の基準覚醒度のいずれの値に近いかを判定する。
【0085】
なお、フェイスクッションの形状を工夫することで眼の部分(眼球又は瞼)以外での反射光の受光を極力減らすことは可能であるが、眼の形状は万人に共通するものではなく、実質的に眼の部分での反射光のみを抽出することが困難な場合がある。したがって、本実施形態では、眼の部分以外での反射光も含めて輝度を測定し、ユーザUの覚醒度を算出する。映像光については、ディスプレイ内部の迷光として検出されるが、迷光は映像光の輝度情報に依存し、ユーザUに依存しないため、ユーザUの覚醒度の算出において問題にはならない。映像光の輝度情報は映像信号より算出可能である。
【0086】
また、反射光の輝度情報を得る方法には、映像光の輝度情報を考慮しない方法と、映像光の輝度情報を考慮する方法とがある。映像光の輝度情報を考慮しない方法として、映像光の輝度が一定の値の時に、覚醒度を算出することが挙げられる。例えば、映像シーンが切り替わる際の「ディスプレイ全面黒表示」の時間を利用して覚醒度を算出する。一方で、一定時間毎に覚醒度を算出する場合には映像光の輝度情報を考慮する。その際、「較正時の映像光輝度」に対する「覚醒度算出時の映像光輝度」の割合から輝度補正を行った上で覚醒度が算出される。その際、ディスプレイ内部の迷光として検出される映像光も同時に輝度補正される。
【0087】
図11は、眼球及び瞼での反射光量の違いの一例について説明する模式図である。図11では、反射光量を輝度(反射輝度)によって示している。図11におけるMeanは平均輝度を表し、IntDen(RawIntDen)は平均輝度に面積を乗じた値である。第一の領域と、第一の領域よりも広い第二の領域の二つの領域について、第一の反射光量及び第二の反射光量を測定すると、例えば、図11に示すような結果が得られる。第二の領域のように測定領域を大きくすることで、眼球での反射輝度と瞼での反射輝度の平均輝度差は小さくなる傾向にあるが、それでも、眼球での反射輝度と瞼での反射輝度との間に一定の差異を測定することができる。
【0088】
図12は、眼球及び瞼での反射光量の違いの一例について説明する模式図である。図13は、図12における照度計の配置について説明する模式図である。ヘッドマウントディスプレイ1から照射された映像光がユーザUの眼で反射する際、眼の開閉により反射率が異なることは次のようにしても確認することができる。図12に示すように、暗い環境下で、面光源であるバックライト211上に、照度計400を配置し、更にその上に接眼レンズ(VR用レンズ)300を置く実験系を準備し、ユーザUが覗きこみ、眼を開閉させた際の照度を測定する。この際、また2人のユーザU(ユーザ1及びユーザ2)のそれぞれについて、照度計400の配置を図13の照度計位置1~3ように変えて測定すると、例えば、下記表1示す結果が得られる。ここで、照度計位置1は図7におけるFOV80度以内に対応し、照度計位置2は図7におけるFOV100度以内に対応し、照度計位置3は図7におけるFOV100度に相当する領域の外側に対応する。
【0089】
【表1】
【0090】
上記表1より、ユーザや照度計400の位置に依らず、同一条件下においては一貫して、眼を開くよりも、眼を閉じた方が高い照度(反射光量に対応する物性)が得られることが分かる。なお、この結果は、すでに示した図11における、眼を開いた状態と目を閉じた状態の画像を用いた明度差評価の結果と一致している。
【0091】
また照度計位置に依らず、ほぼ同程度の照度が得られていることから、「FOV100度以上の領域もしくはディスプレイの内接円の直径に対して、80%の直径の円の外側の領域のいずれかを満たす領域にセンサを配置することが望ましい」と定義することの妥当性が認められる。
【0092】
図14は、眼球及び瞼での反射光量の違いの一例について説明する模式図である。図12及び図13において、照度計400は、周囲で反射した光を含め、平面上のあらゆる方向からの光を照度として計測しているため、眼の開閉による照度の差は大きな値として検出されない(2~3lx程度)。その点を改善する方法として、例えば、図14に示すように、光センサ220にコリメータレンズ500を配置し、特定方向(例えば瞳(眼球))からの光のみを抽出して光センサ220で照度計測することで、眼の開閉における照度差は得られやすくなると考えられる。
【0093】
以上のように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は次のような特徴を有する。
(1)表示パネル200が光センサ220を内蔵している。
(2)内蔵された光センサ220は、表示パネル200から出た光がユーザUの眼(瞳もしくは瞼)で反射され、表示パネル200側に戻ってくる光を受光することで、ユーザUの覚醒状況を判別する。
(3)光センサ220が内蔵(配置)される位置は、ヘッドマウントディスプレイ1の光学系が持つFOVで概ね規定することができ、FOVの半分より外側の領域に配置されることが好ましく、FOVより外側の領域に配置されることがより好ましい。
(4)ユーザUの覚醒状況の判定は、事前に較正データを測定/保持し、比較することで行う。
(5)覚醒状況をなるべく正確に測れるよう、フェイスクッション40により遮光することが好ましく、フェイスクッション40により外光の95%以上が遮光されることがより好ましい。
【0094】
図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1は、制御部510と検出部520と記憶部530とを備える。制御部510は、判定部511と映像制御部512と音響制御部513と振動制御部514とを備える。検出部520は、光センサ220を備える。制御部510及び記憶部530は、それぞれ、表示パネル200に設けられてもよく、表示パネル200以外(例えば、駆動ユニット50)に設けられてもよい。
【0095】
制御部510は、記憶部530に記憶された各種の処理を実現するためのプログラムと、当該プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、当該CPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成されている。制御部510は、記憶部530に記憶されたプログラムに従って、ヘッドマウントディスプレイ1の各部を制御する。また、制御部510は、記憶部530に記憶されたプログラムにより、判定部511、映像制御部512、音響制御部513及び振動制御部514の機能を有している。
【0096】
検出部520は、光センサ220を備える。光センサ220は、映像光がユーザUの眼で反射された反射光を検出する。ここで、ユーザUの眼で反射された反射光とは、ユーザUの眼球及び瞼を含む眼部で反射された反射光をいい、ユーザUの眼球で反射された反射光だけでなく、ユーザUの瞼で反射された反射光も含むものとする。
【0097】
記憶部530は、半導体メモリやハードディスク等の不揮発性の記憶装置から構成されており、ヘッドマウントディスプレイ1を制御するための各種プログラムと各種データとを記憶している。また、記憶部530には、ユーザUの眼球で反射される場合の第一の反射光量、及び、ユーザUの瞼で反射される場合の第二の反射光量が保存されている。
【0098】
また、記憶部530は、ユーザUの眼球で反射される場合の第一の反射光量、及び、ユーザの瞼で反射される場合の第二の反射光量を記憶する。
【0099】
判定部511は、ユーザUの覚醒度を算出する機能を有する。また、判定部511は、第一の反射光量、及び、第二の反射光量と、光センサ220で検出したユーザUの眼で反射された反射光の輝度情報と、を比較して、ユーザUの覚醒度が、第一の反射光量から算出される第一の基準覚醒度及び第二の反射光量から算出される第二の基準覚醒度のいずれの値に近いかを判定する。判定部511は、ヘッドマウントディスプレイ1から出る映像光の「瞼における反射」と「眼球における反射」とを判別することで、ユーザUが覚醒状態により近いのか、睡眠状態により近いのかを判定することができる。
【0100】
判定部511は、具体的に、次のような処理を行う。まず、光センサ220を用いて、第一の反射光量に対応する、眼を開けた状態での表示パネル200の全白表示の際の反射輝度(以下、白輝度)、及び、全黒表示の際の反射輝度(以下、黒輝度)を測定し、更に、第二の反射光量に対応する、眼を閉じた状態での表示パネル200の白輝度及び黒輝度を測定する。次に、一定時間ヘッドマウントディスプレイ1を利用した後、再度、表示パネル200の白輝度及び黒輝度を光センサ220で測定する。判定部511は、一定時間ヘッドマウントディスプレイ1を利用した後の「白輝度/黒輝度」の値を覚醒度として算出する。また、判定部511は、「眼を開けた状態での白輝度/眼を開けた状態での黒輝度」の値を第一の基準覚醒度として算出し、かつ、「眼を閉じた状態での白輝度/眼を閉じた状態での黒輝度」の値を第二の基準覚醒度として算出する。更に、覚醒度を第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度と比較して、覚醒度が第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度のいずれにより近いかを判定する。更に、ヘッドマウントディスプレイ1は上記判定結果に応じて、例えばヘッドマウントディスプレイ1の表示画像及び表示画像の輝度を調節することができる。具体的には、睡眠時にはヘッドマウントディスプレイ1の輝度をオフにすることができる。
【0101】
映像制御部512は、映像出力部10に出力される映像表示信号を制御する機能を有する。
【0102】
音響制御部513は、音響出力部20に出力される音響出力信号を制御する機能を有する。
【0103】
振動制御部514は、振動付与部を制御する機能を有する。振動付与部は、振動を発生させる機能を有するものである。振動付与部は、例えば、装着部30に設けられている。
【0104】
図15は、実施形態のヘッドマウントディスプレイが備える判定部、映像制御部及び音響制御部での処理について説明するフローチャートである。まず、較正ステップS11では、光センサ220が、眼を開けた状態での、表示パネル200の全白表示の際の反射輝度(白輝度)、及び、全黒表示の際の反射輝度(黒輝度)を測定し、測定結果が記憶部530に記憶される。すなわち、全白表示の際にユーザUの眼球で反射される場合の第一の反射光量、及び、全黒表示の際にユーザUの眼球で反射される場合の第一の反射光量が記憶部530に記憶される。また、光センサ220は、眼を閉じた状態で、表示パネル200の白輝度及び黒輝度を測定し、測定結果が記憶部530に記憶される。すなわち、全白表示の際にユーザUの瞼で反射される場合の第二の反射光量、及び、全黒表示の際にユーザUの瞼で反射される場合の第二の反射光量が記憶部530に記憶される。
【0105】
次に、測定ステップS12では、一定時間ヘッドマウントディスプレイ1を利用した後、再度、表示パネル200の白輝度及び黒輝度を光センサ220で測定する。
【0106】
次に、判定ステップS13では、判定部511が、測定ステップS12における「白輝度/黒輝度」の値を、ユーザUの覚醒度として算出する。また、判定ステップS13では、判定部511が、「眼を開けた状態での白輝度/眼を開けた状態での黒輝度」の値を第一の基準覚醒度として算出し、かつ、「眼を閉じた状態での白輝度/眼を閉じた状態での黒輝度」の値を第二の基準覚醒度として算出する。更に、覚醒度を第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度と比較して、覚醒度が第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度のいずれにより近いかを判定する。
【0107】
次にフィードバックステップS14では、判定部511が、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度のいずれにより近いかの判定結果を映像制御部512及び/又は音響制御部513へ送信する。
【0108】
次に、処理ステップS15では、映像制御部512及び/又は音響制御部513が、上記判定結果に基づいて処理を行う。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、映像制御部512は、映像光の輝度を低下させる睡眠導入処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUは質の良い睡眠を得ることができる。ユーザUの覚醒度が閾値以下ではないという判定部511の判定結果に基づき、映像制御部512は、現状の処理を続ける。
【0109】
また、映像制御部512は、次のような処理を行ってもよい。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、映像制御部512は、表示部210Aが表示する映像を睡眠導入用の映像に変更する睡眠導入処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUは質の良い睡眠を得ることができる。睡眠導入処理では、例えば、映像の輝度の強弱が緩やかになるような処理が行われる。
【0110】
また、映像制御部512は、次のような処理を行ってもよい。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、映像制御部512は、映像光の輝度を上昇させる覚醒処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUがヘッドマウントディスプレイ1を利用しながら睡眠状態に陥ってしまうことを防ぐことができる。
【0111】
また、映像制御部512は、次のような処理を行ってもよい。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、映像制御部512は、表示部210Aが表示する映像を覚醒用の映像に変更する覚醒処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUがヘッドマウントディスプレイ1を利用しながら睡眠状態に陥ってしまうことを防ぐことができる。覚醒処理では、例えば、映像の輝度の強弱が激しくなるような処理が行われる。
【0112】
また、処理ステップS15では、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、音響制御部513は、音響の音量を低下させる睡眠導入処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUは質の良い睡眠を得ることができる。ユーザUの覚醒度が閾値以下ではないという判定部511の判定結果に基づき、音響制御部513は、現状の処理を続ける。
【0113】
また、音響制御部513は、次のような処理を行ってもよい。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、音響制御部513は、音響出力部20が出力する音響を睡眠導入用の音響に変更する睡眠導入処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUは質の良い睡眠を得ることができる。睡眠導入処理では、例えば、映像に対応して流れる音響に並行して、波の音のような癒しの効果のある音を流す処理が行われる。
【0114】
また、音響制御部513は、次のような処理を行ってもよい。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、音響制御部513は、音響の音量を上昇させる覚醒処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUがヘッドマウントディスプレイ1を利用しながら睡眠状態に陥ってしまうことを防ぐことができる。
【0115】
また、音響制御部513は、次のような処理を行ってもよい。具体的には、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、音響制御部513は、前記音響出力部20が覚醒用の音響を出力するよう覚醒処理を行う。このような態様とすることにより、ユーザUがヘッドマウントディスプレイ1を利用しながら睡眠状態に陥ってしまうことを防ぐことができる。覚醒処理では、例えば、ベルの鳴動、電子音、ラジオ、録音した音声等の目覚めを促す音を流す処理が行われる。
【0116】
このように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、ユーザUの覚醒度が第二の基準覚醒度により近い場合、具体的には、ユーザUが睡眠状態となりつつある場合や睡眠状態である場合に、ユーザUを快適な睡眠に導入するために表示パネル200の低輝度化や映像表示の変更、又は、サウンドの低音量化やBGM(background music)変更を行う。また、ユーザUの覚醒を促すために、表示パネル200の高輝度化や映像表示、又は、サウンドの大音量化やBGM変更を行ってもよい。
【0117】
また、フィードバックステップS14において、判定部511が、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度のいずれにより近いかの判定結果を振動制御部514へ送信し、処理ステップS15において、振動制御部514が、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度よりも第二の基準覚醒度により近いという判定部511の判定結果に基づき、振動付与部を振動させる制御を行う覚醒処理を行ってもよい。
【0118】
なお、ユーザUの覚醒度が第一の基準覚醒度及び第二の基準覚醒度の平均値と等しい場合を、第一の基準覚醒度により近いと判定するか、あるいは、第二の基準覚醒度により近いと判定するかは、あらかじめ設定することができる。ユーザUの覚醒度が上記平均値と等しい場合を、第一の基準覚醒度により近いと判定するように設定してもよく、第二の基準覚醒度により近いと判定するように設定してもよい。
【0119】
(実施形態の変形例1)
図16は、実施形態の変形例1のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。上記実施形態では、図8の領域1Aに光センサ220を備える態様について説明したが、表示パネル200が備える各部材の配置はこれに限定されず、例えば、図8に対して、TFT基板213とCF基板215との配置を入れ替えてもよい。すなわち、図16に示すように、表示パネル200は、背面側から観察面側に向かって順に、バックライト211と、第一の偏光板212と、CF基板215と、液晶層214と、TFT基板213と第二の偏光板216と、を備えてもよい。このような態様とすることにより、TFT基板213に光センサ220を設ける場合であっても、光センサ220は、液晶層214及びCF基板215が備えるCF層を介さずにユーザUからの反射光を受光することができるため、光センサ220の感度を高めることができる。すなわち、実施形態よりも、ユーザUからの反射光を高精度に測定し、覚醒度を算出することができる。
【0120】
(実施形態の変形例2)
図17は、実施形態の変形例2のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。上記実施形態では、図8の領域1Aに光センサ220を備える態様について説明したが、表示パネル200が備える各部材の配置はこれに限定されず、例えば、図8に対して、TFT基板213とCF基板215との配置を入れ替え、かつ、CF層をCF基板215ではなくTFT基板213と液晶層214との間に配置してもよい。すなわち、図17に示すように、表示パネル200は、背面側から観察面側に向かって順に、バックライト211と、第一の偏光板212と、対向基板2151と、液晶層214と、CF層2152と、TFT基板213と第二の偏光板216と、を備えてもよい。このような態様とすることにより、TFT基板213に光センサ220を設ける場合であっても、光センサ220は、液晶層214及びCF層2152を介さずにユーザUからの反射光を受光することができるため、光センサ220の感度を高めることができる。すなわち、実施形態よりも、ユーザUからの反射光を高精度に測定し、覚醒度を算出することができる。ここで、対向基板2151とは、CF層を備えないこと以外は、CF基板215と同様の構成を有する基板である。TFT基板213側にCF層が設けられる構成は、COA(CF On Array)という。
【0121】
(実施形態の変形例3)
図18は、実施形態の変形例3のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。上記実施形態では、図8の領域1Aに光センサ220を備える態様について説明したが、表示パネル200が備える各部材の配置はこれに限定されず、例えば、図8に対して、CF層をCF基板215ではなくTFT基板213と液晶層214との間に配置してもよい。すなわち、図18に示すように、表示パネル200は、背面側から観察面側に向かって順に、バックライト211と、第一の偏光板212と、TFT基板213と、CF層2152と、液晶層214と、対向基板2151と、第二の偏光板216と、を備えてもよい。このような態様とすることにより、表示パネル200の製造工程において、TFT基板213及び対向基板2151を貼り合わせる際のアライメントが不要となるため、ブラックマトリクス層の幅を削減することが可能となり、開口率を高めることができる。
【0122】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
図19は、実施例1のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの断面模式図である。図20は、実施例1のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネルの平面模式図である。図21は、実施例1のヘッドマウントディスプレイが行う処理のフローチャートである。実施形態と同様の構成を有し、図19及び図20に示す実施例1のヘッドマウントディスプレイ1を作製した。表示パネル200には液晶表示パネルを採用した。フェイスクッション40は、ヘッドマウントディスプレイ1の使用中にユーザUの視野に入り込む外光を95%以上遮蔽するものであった。光センサ220のFOVは略100度であった。光センサ220は、TFT基板213上に配置した。光センサ220は、表示パネル200の四隅(FOV100度に相当する領域の外側)に一個ずつ、合計4個配置した。
【0124】
更に、ヘッドマウントディスプレイ1を実際に使用する際に、図21に示す較正、測定、判定及びフィードバックの処理を行った。較正では、眼を開けた状態で、表示パネル200の全白表示の際の反射輝度(白輝度)と、全黒表示の際の反射輝度(黒輝度)を光センサ220で測定した。また、眼を閉じた状態で、表示パネル200の白輝度と、黒輝度を光センサ220で測定した。
【0125】
測定では、一定時間ヘッドマウントディスプレイ1を利用した後、再度、表示パネル200の白輝度と輝度を光センサ220で測定した。この測定における「白輝度/黒輝度」(すなわち覚醒度)が、較正時の「目を開けた状態での白輝度/黒輝度」(すなわち第一の基準覚醒度)よりも「眼を閉じた状態での白輝度/黒輝度」(すなわち第二の基準覚醒度)に近い値であったことから、表示パネル200は徐々に輝度を低下させ、最終的に表示パネル200はオフにされた。
【0126】
(実施例2)
図22は、実施例2のヘッドマウントディスプレイが行う処理のフローチャートである。図22に示す実施例2のヘッドマウントディスプレイを作製した。実施例2のヘッドマウントディスプレイは、フィードバックの処理が異なること以外は、実施例1のヘッドマウントディスプレイと同様の構成を有していた。実施例2のヘッドマウントディスプレイでは、図22に示す較正、測定、判定及びフィードバックの処理を行った。
【0127】
(実施例3)
図23は、実施例3のヘッドマウントディスプレイが備える表示パネル内の光センサの配置を示す平面模式図である。図24は、実施例3のヘッドマウントディスプレイのFOV及び光センサの配置について説明する模式図である。光センサ220が図23に示すように配置された実施例3のヘッドマウントディスプレイ1を作製した。実施例3のヘッドマウントディスプレイ1は、光センサ220の配置が異なること以外は、実施例1のヘッドマウントディスプレイ1と同様の構成を有していた。
【0128】
表示パネルはレンズを通して視聴されるため、特に低解像度の表示パネルでは、表示パネルの配線が暗線として視認され、ヘッドマウントディスプレイのユーザの没入感を著しく損なうという課題がある。
【0129】
暗線の視認性を低減するために、高解像度の表示パネルが採用されているが、光センサを配置することで、部分的とはいえ高解像度が損なわれ(表示されない領域ができ)、暗点が視認され、没入感を損なってしまう。
【0130】
そこでユーザの没入感を維持できるような、光センサの表示パネル面内配置を検討するため、実施例3では、図23に示すように、表示パネル200を行方向に5つ、列方向に5つの合計25の領域に分割し、各領域の中央に光センサ220を配置し、光センサ220の目立ちやすさを主観評価した。
【0131】
図23に示すように、第一の分割領域610にある光センサ220は最も目立ち、第二の分割領域620にある光センサ220は充分に視認され、第三の分割領域630にある光センサ220は視認され、第四の分割領域640にある光センサ220は若干視認された。
【0132】
この結果を表示パネル200の特性として規定するため、ヘッドマウントディスプレイ1のFOVに照らし合わせると、図24に示すように、FOVが略100度のレンズ光学系を用いたヘッドマウントディスプレイにおいて、光センサ220をFOV100度よりも外に配置した場合に、最も光センサ220が表示の視認性を損なわないことが分かった。
【0133】
この理由として、ヘッドマウントディスプレイ1では円形のレンズが使用されるため、表示パネル200の四隅では視認性が低下されることが考えられる。一般的に表示パネルが四角形であることに対して、レンズは円形であることから、表示パネル200上に光センサ220を配置しても、視認性が低下しにくい領域が生じる。
【符号の説明】
【0134】
1:ヘッドマウントディスプレイ
1P:画素回路
1Pb:B画素回路
1Pg:G画素回路
1Pr:R画素回路
1A、2A、3A、4A:領域
3:TFT(薄膜トランジスタ)
4:液晶容量
5:コンデンサ
6:フォトダイオード
7:センサプリアンプ
10:映像出力部
20:音響出力部
30:装着部
31:装着バンド
40:フェイスクッション
41:ゲート線駆動回路
42:ソース線駆動回路
43:センサ行駆動回路
44:センサ出力アンプ
45~48:スイッチ
50:駆動ユニット
100:筐体
200:表示パネル
200A:内接円
200B:円
210A:表示部
210B:非表示部
211:バックライト
212:第一の偏光板
213:TFT基板
214:液晶層
215:CF基板
216:第二の偏光板
220;光センサ
221:第一のレンズ
222:反射偏光板
223:第一の位相差板
224:第二のレンズ
225:ハーフミラーコート
226:第二の位相差板
300:接眼レンズ
400:照度計
500:コリメータレンズ
510:制御部
511:判定部
512:映像制御部
513:音響制御部
514:振動制御部
520:検出部
530:記憶部
610:第一の分割領域
620:第二の分割領域
630:第三の分割領域
640:第四の分割領域
2151:対向基板
2152:CF層
A:節点
G1~Gm:ゲート線
RS1~RSt:センサリセット線
RW1~RWt:センサ読み出し線
SR1~SRn、SG1~SGn、SB1~SBn:ソース線
U:ユーザ
VDD:電源電圧
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24