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特開2022-170482動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置
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  • 特開-動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置 図1
  • 特開-動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置 図2
  • 特開-動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置 図3
  • 特開-動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170482
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/06 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
F16H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076635
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】内原 正登
【テーマコード(参考)】
3J009
【Fターム(参考)】
3J009DA04
3J009DA12
3J009EA03
3J009EA21
3J009EC07
(57)【要約】
【課題】ギヤ同士の噛み合い状態を必要時に最適状態に容易に調整することができる動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置は、第1ギヤと、ベース部材15と、第2ギヤと、支持ブロック25と、位置調整部30と、固定部と、を備えている。ベース部材15は、第1ギヤを回転可能に支持する。第2ギヤは、第1ギヤと動力伝達可能に噛み合う。支持ブロック25は、第2ギヤを回転可能に支持する。位置調整部30は、第2ギヤと第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向に、支持ブロック25とベース部材15の相対位置を調整可能とされている。固定部は、支持ブロック25とベース部材15の相対位置を固定可能とされている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ギヤと、
前記第1ギヤを回転可能に支持するベース部材と、
前記第1ギヤと動力伝達可能に噛み合う第2ギヤと、
前記第2ギヤを回転可能に支持する支持ブロックと、
前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向に、前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を調整可能な位置調整部と、
前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を固定可能な固定部と、
を備えている動力伝達装置。
【請求項2】
前記位置調整部は、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向にねじ軸が延び、前記ねじ軸の軸方向の一端側が前記支持ブロックと前記ベース部材のいずれか一方に回転可能に保持されるとともに、前記ねじ軸の軸方向の他端側が前記支持ブロックと前記ベース部材のいずれか他方にねじ込まれるねじ機構によって構成されている請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記支持ブロックは、
減速された動力を前記第2ギヤに伝達する減速機の収容ケースと、
前記収容ケースの外周面に嵌め込まれるアダプタブロックと、を備え、
前記ねじ機構は、前記ねじ軸の軸方向の一端側が前記ベース部材に回転可能に保持されるとともに、前記ねじ軸の軸方向の他端側が前記アダプタブロックにねじ込まれる請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記固定部は、
前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向と交差する交差方向に締め込み可能で、前記支持ブロックを前記ベース部材に固定する締結部材と、
前記交差方向に沿って前記支持ブロックに設けられ、前記締結部材の軸が貫通する軸孔と、を備え、
前記軸孔は、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向の、前記支持ブロックの変位を許容する内面形状、若しくは、サイズに形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記締結部材の軸部は、前記軸孔との間に前記変位を許容する隙間が形成される外径に形成されている請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
第1ギヤを回転可能に支持するベース部材と、
前記第1ギヤと動力伝達可能に噛み合う第2ギヤを回転可能に支持する支持ブロックと、
前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向に、前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を調整可能な位置調整部と、
前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を固定可能な固定部と、
を備えているギヤ機構の噛み合い調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動力を動作対象に伝達する動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターンテーブルや産業用ロボット等の多くの機械装置では、ギヤ機構を含む動力伝達装置を介して駆動源の動力が動作対象に伝達される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
高い動作精度を要求される機械装置では、動力伝達装置で用いられるギヤ機構の噛み合い精度が重要となる。このため、このような機械装置で用いられる動力伝達装置は、製造段階において、ギヤ機構の各ギヤが位置決めピン等を用いてギヤ支持部に高い精度で組付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-158143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動力伝達装置は、出荷後の使用環境や長時間の使用に伴う各部の摩耗等によってギヤ同士の噛み合い状態が変化する可能性がある。
【0006】
従来の動力伝達装置は、製造段階で各ギヤがギヤ支持部に高い精度で組付けられるものの、出荷後のギヤ同士の噛み合い状態の変化については、特に対策が施されていない。このため、出荷後にギヤ同士の噛み合い状態が大きく変化した場合には、動力伝達装置を分解して部品の交換や組付け直しを行わざるを得ない。
【0007】
本発明は、ギヤ同士の噛み合い状態を必要時に最適状態に容易に調整することができる動力伝達装置、及び、ギヤ機構の噛み合い調整装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る動力伝達装置は、第1ギヤと、前記第1ギヤを回転可能に支持するベース部材と、前記第1ギヤと動力伝達可能に噛み合う第2ギヤと、前記第2ギヤを回転可能に支持する支持ブロックと、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向に、前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を調整可能な位置調整部と、前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を固定可能な固定部と、を備えている。
【0009】
前記位置調整部は、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向にねじ軸が延び、前記ねじ軸の軸方向の一端側が前記支持ブロックと前記ベース部材のいずれか一方に回転可能に保持されるとともに、前記ねじ軸の軸方向の他端側が前記支持ブロックと前記ベース部材のいずれか他方にねじ込まれるねじ機構によって構成されるようにしても良い。
【0010】
前記支持ブロックは、減速された動力を前記第2ギヤに伝達する減速機の収容ケースと、前記収容ケースの外周面に嵌め込まれるアダプタブロックと、を備え、前記ねじ機構は、前記ねじ軸の軸方向の一端側が前記ベース部材に回転可能に保持されるとともに、前記ねじ軸の軸方向の他端側が前記アダプタブロックにねじ込まれるようにしても良い。
【0011】
前記固定部は、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向と交差する交差方向に締め込み可能で、前記支持ブロックを前記ベース部材に固定する締結部材と、前記交差方向に沿って前記支持ブロックに設けられ、前記締結部材の軸が貫通する軸孔と、を備え、前記軸孔は、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向の、前記支持ブロックの変位を許容する内面形状、若しくは、サイズに形成されるようにしても良い。
【0012】
前記締結部材の軸部は、前記軸孔との間に前記変位を許容する隙間が形成される外径に形成されるようにしても良い。
【0013】
本発明の一態様に係るギヤ機構の噛み合い調整装置は、第1ギヤを回転可能に支持するベース部材と、前記第1ギヤと動力伝達可能に噛み合う第2ギヤを回転可能に支持する支持ブロックと、前記第2ギヤと前記第1ギヤの噛み合い深さが変化する方向に、前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を調整可能な位置調整部と、前記支持ブロックと前記ベース部材の相対位置を固定可能な固定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
上述の動力伝達装置と、ギヤ機構の噛み合い調整機構は、いずれも第2ギヤを支持する支持ブロックと第1ギヤを支持するベース部材の相対位置を調整可能な位置調整部と、支持ブロックとベース部材の相対位置を固定可能な固定部と、を備えている。このため、ギヤ同士の噛み合い状態が最適になるように位置調整部によって支持ブロックとベース部材の相対位置を調整し、その状態で支持ブロックとベース部材の相対位置を固定部によって固定することができる。したがって、上述の構成を採用した場合には、第2ギヤと第1ギヤの噛み合い状態を必要時に最適状態に容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の動力伝達装置を用いた回転治具の側面図。
図2】実施形態の回転治具の縦断面図。
図3】実施形態の回転治具の部分断面斜視図。
図4図2のIV部を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の動力伝達装置10を用いた回転治具1の側面図であり、図2は、回転治具1の縦断面図である。
回転治具1は、例えば、器具の溶接を行う際等に用いられる。回転治具1は、回転出力部であるリングギヤ11(第1ギヤ)と、駆動源であるモータ12と、モータ12の回転を減速してリングギヤ11に伝達する減速機13と、を備えている。減速機13の出力部13aにはピニオンギヤ20が取り付けられている。ピニオンギヤ20の歯20a(図3参照)は、リングギヤ11の外歯11a(図3参照)と噛み合い、ピニオンギヤ20の回転をリングギヤ11に伝達する。
なお、本実施形態では、回転治具1のうちの、減速機13からリングギヤ11に至る動力伝達経路部分が動力伝達装置10を形成している。
【0018】
リングギヤ11の軸方向の一端面にはアダプタリング14が固定されている。アダプタリング14には、回転対象物(例えば、被溶接物)を支持する図示しない器具固定板等が取り付けられる。
【0019】
リングギヤ11は、ベース部材15に軸受16を介して回転可能に支持されている。ベース部材15は、軸方向の一端面に軸受16のインナレース16iが固定される大径の第1円環部15Aと、減速機13が固定される小径の第2円環部15Bと、を備えている。本実施形態の場合、小径の第2円環部15Bは、大径の第1円環部15Aの外周部に一体に形成されている。第1円環部15Aと第2円環部15Bは、いずれも短軸の円筒状に形成されている。ただし、第1円環部15Aと第2円環部15Bは別体部品によって構成し、ボルト締結等の固定手段によって相互に固定するようにしても良い。
【0020】
図1図2中の符号ax1は、第1円環部15Aの中心軸線であり、符号ax2は、第2円環部15Bの中心軸線である。軸受16のインナレース16iと、そのインナレース16iの外周側に転動体16r(例えば、球)を介して支持されるリングギヤ11とは、中心軸線ax1を中心とした同心円を成すように配置されている。リングギヤ11は、中心軸線ax1周りに回転可能とされている。
なお、ベース部材15の第1円環部15Aは、回転治具1を支持する図示しない支持装置に取り付けられる。また、リングギヤ11とピニオンギヤ20の外側は、金属板から成る伝達部カバー50によって覆われている。伝達部カバー50は、ベース部材15に固定されている。
【0021】
図3は、図2と同部分で切断した回転治具1の部分断面斜視図である。ただし、図3では、リングギヤ11とピニオンギヤ20の外側を覆う伝達部カバー50が取り除かれている。また、図4は、図2のIV部を拡大した断面図である。
減速機13は、略円筒状の収容ケース25Aの内部に減速機構が収容されている。減速機13の軸方向の一端側には出力部13aが設けられ、その出力部13aにピニオンギヤ20が取り付けられている。減速機13の軸方向の他端側には、駆動源であるモータ12が取り付けられている。収容ケース25Aの軸方向の他端側の外周には、径方向外側に円環状に張り出す固定フランジ25Afが一体に形成されている。固定フランジ25Afには、軸方向に貫通する複数の軸孔42aが形成されている。軸孔42aは、固定フランジ25Afに周方向に等間隔に形成されている。各軸孔42aには、減速機13をベース部材15の第2円環部15Bに固定するための締結ボルト40(締結部材)が挿通される。
【0022】
また、減速機13の収容ケース25Aのうちの、固定フランジ25Afに隣接する部分の外周面には、円筒状のアダプタブロック25Bが嵌め込まれている。アダプタブロック25Bは、収容ケース25Aの固定フランジ25Afとほぼ同外径に形成されている。つまり、アダプタブロック25Bの径方向の肉厚は、固定フランジ25Afの径方向の張り出し幅とほぼ同幅になっている。アダプタブロック25Bには、軸方向に貫通する複数の軸孔42bが形成されている。軸孔42bは、固定フランジ25Afの各軸孔42aと一対一で対応するように、アダプタブロック25Bに周方向に等間隔に形成されている。各軸孔42bには、減速機13をベース部材15の第2円環部15Bに固定するための締結ボルト40(締結部材)が挿通される。
【0023】
減速機13は、収容ケース25Aにアダプタブロック25Bを嵌め合わせた状態で、アダプタブロック25Bとともに複数の締結ボルト40によって第2円環部15Bに固定される。第2円環部15Bには、複数の締結ボルト40の軸40aの先端部がねじ込まれるねじ穴35が形成される。ねじ穴35は、第2円環部15Bに周方向に等間隔に形成されている。
【0024】
各締結ボルト40は、軸40aの外径が、収容ケース25A(固定フランジ25Af)やアダプタブロック25Bの軸孔42a,42bの内径よりも小さいものが用いられる。具体的には、締結ボルト40の軸40aの外径は、軸孔42a,42bとの間に、収容ケース25Aとアダプタブロック25Bの径方向の変位を許容する隙間dが形成されるように設定されている。したがって、収容ケース25Aとアダプタブロック25Bは、締結ボルト40によって第2円環部15Bに仮締めされた状態(完全に締め込み固定していない状態)においては、前記径方向の位置調整が可能となる。
実際には、このときの収容ケース25Aとアダプタブロック25Bの位置調整可能な変位は、後述する位置調整部30による規制により、ピニオンギヤ20の中心軸線ax2とリングギヤ11の中心軸線ax1を結ぶ直線方向(以下、「ギヤ間方向Di」と称する。)のみとされている。
【0025】
また、収容ケース25Aとアダプタブロック25Bを、締結ボルト40によって第2円環部15Bに固定するに際しては、固定フランジ25Afの端面(アダプタブロック25Bと逆側の端面)に円環状の座金45が重ねられる。座金45には、締結ボルト40の軸40aが挿通される複数の挿通孔45aが形成されており、締結ボルト40の頭部は、挿通孔45aの周縁部に当接する。挿通孔45aの内径は、収容ケース25Aとアダプタブロック25Bの各軸孔42a,42bの内径よりも小さく設定されている。このため、収容ケース25Aやアダプタブロック25Bの軸孔42a,42bに対して小径の規格の締結ボルト40を使用しても、締結ボルト40の頭部に作用する締め付け荷重を座金45によって確実に受け止め、その締め付け荷重を収容ケース25Aやアダプタブロック25Bに伝達することができる。
なお、本実施形態では、収容ケース25Aとアダプタブロック25Bが、ピニオンギヤ20(第2キヤ)を回転可能に支持する支持ブロック25を構成している。
【0026】
ここで、ベース部材15のうちの第2円環部15Bの外周面には、矩形板状の保持ブロック32が取り付けられている。保持ブロック32は、その一部が第2円環部15Bから当該第2円環部15Bの軸方向の他端側に突出している。保持ブロック32は、第2円環部15Bの外周面の面取り部に、例えば、ボルト締結等によって固定されている。
【0027】
保持ブロック32の第2円環部15Bから突出した部分(以下、「突出部」と称する。)は、第2円環部15Bの径方向外側となる側が段差状に切り欠かれている。以下、この切り欠かれた部分を「切欠き部32b」と称する。突出部(切欠き部32bに臨む部分)には、調整ねじ31のねじ軸31aが挿通される挿通孔32aが形成されている。
【0028】
挿通孔32aは、ギヤ間方向Diに沿って延びている。調整ねじ31は、ねじ軸31の軸方向の一端側が挿通孔32aにおいて保持ブロック32に回転可能に保持されている。したがって、挿通孔32aに回転可能に保持された調整ねじ31のねじ軸31はギヤ間方向Diに沿って延びている。
【0029】
また、保持ブロック32の外側面(第2円環部15Bの外周面と当接する側と逆側の面)には、保持ブロック32よりも小型の矩形板状の変位規制ブロック33が取り付けられている。変位規制ブロック33は、保持ブロック32の外側面に、例えば、ボルト締結等によって固定されている。
【0030】
変位規制ブロック33は、保持ブロック32の切欠き部32bに臨む位置まで延び、切欠き部32bを挟んで保持ブロック32の突出部の外側面に対向している。保持ブロック32と変位規制ブロック33の間の切欠き部32bによる隙間には、挿通孔32aに保持された調整ねじ31の頭部31bが位置されている。頭部31bは、その隙間において、保持ブロック32と変位規制ブロック33とに当接することにより、調整ねじ31の軸方向の変位を規制されている。
【0031】
変位規制ブロック33のうちの、保持ブロック32の挿通孔32aと対向する位置には、挿通孔32aと同軸に工具挿通孔33aが形成されている。工具挿通孔33aには、六角レンチ等の工具が挿通可能とされている。調整ねじ31を回転操作するときには、工具挿通孔33aに六角レンチ等の工具を挿入し、工具の先端部を調整ねじ31の頭部31bの六角孔に嵌め込む。この状態で工具を回転されることにより、調整ねじ31を回転操作することができる。
【0032】
また、アダプタブロック25Bの外周壁のうちの、保持ブロック32の挿通孔32aと対向する位置には、ねじ孔25Baが形成されている。ねじ孔25Baは、ギヤ間方向Diに沿って延びており、調整ねじ31のねじ軸31aの先端側がねじ込まれる。アダプタブロック25Bは、収容ケース25A(減速機13)とともに締結ボルト40によって第2円環部15Bに仮締めされた状態で調整ねじ31が回転操作されると、調整ねじ31の回転方向と回転量に応じてギヤ間方向Diに沿って進退変位する。
【0033】
具体的には、調整ねじ31を一方向に回転操作すると、その回転操作量に応じてピニオンギヤ20がリングギヤ11に接近し、それによって両ギヤの噛み合い深さが深くなる。また、調整ねじ31を他方向に回転操作すると、その回転操作量に応じてピニオンギヤ20がリングギヤ11から離間し、それによって両ギヤの噛み合い深さが浅くなる。
【0034】
本実施形態では、調整ねじ31、保持ブロック32、変位規制ブロック33、アダプタブロック25Bのねじ孔25Ba等から成るねじ機構が、ギヤ間方向Diに沿って支持ブロック25とベース部材15の相対位置を調整する位置調整部30を構成している。
【0035】
本実施形態の回転治具1で採用する動力伝達装置10は、出荷後等に、以下のようにしてピニオンギヤ20とリングギヤ11の噛み合い深さを調整することができる。
【0036】
最初に、工具を用いて複数の締結ボルト40を緩め、支持ブロック25(収容ケース25A、及び、アダプタブロック25B)を仮締め状態にする。この状態では、支持ブロック25はギヤ間方向Diに沿って変位可能となる。
【0037】
次に、この状態において、変位規制ブロック33の工具挿通孔33aに工具を差し込み、その工具によって位置調整部30の調整ねじ31を回転操作する。これにより、ピニオンギヤ20とリングギヤ11の噛み合いが最適状態となるように減速機13をギヤ間方向Diに沿って変位させる。
【0038】
こうして、ピニオンギヤ20とリングギヤ11の噛み合いが最適状態に調整されると、その後、工具を用いて複数の締結ボルト40を締め込み、支持ブロック25(収容ケース25A、及び、アダプタブロック25B)をベース部材15の第2円環部15Bに対して本固定する。
【0039】
<実施形態の効果>
本実施形態の動力伝達装置10は、ピニオンギヤ20を支持する支持ブロック25とリングギヤ11を支持するベース部材15の相対位置を調整可能な位置調整部30と、支持ブロック25とベース部材15の相対位置を固定可能な固定部(締結ボルト40、軸孔42a,42b、ねじ穴35)と、を備えている。このため、ピニオンギヤ20とリングギヤ11の噛み合い状態が最適になるように位置調整部30によって支持ブロック25とベース部材15の相対位置を調整し、その状態で支持ブロック25とベース部材15の相対位置を固定部によって固定することができる。したがって、本実施形態の動力伝達装置10を採用した場合には、ピニオンギヤ20とリングギヤ11の噛み合い状態を必要時に最適状態に容易に調整することができる。
【0040】
また、本実施形態の動力伝達装置10は、ベース部材15に対する支持ブロック25の相対位置を調整する位置調整部30が、ギヤ間方向Diに沿って延びる調整ねじ31(ねじ軸31a)を備え、調整ねじ31の軸方向の一端側がベース部材15側に回転可能に保持され、軸方向の他端側が支持ブロック25(アダプタブロック25B)にねじ込まれている。このため、調整ねじ31の回転調整によってピニオンギヤ20とリングギヤ11の噛み合い状態を容易に微調整することができる。特に、本構成では、調整ねじ31の軸方向の他端側が支持ブロック25(アダプタブロック25B)に直接ねじ込まれていることから、ギヤ同士の噛み合い方向の深さを深くする側の位置調整と、ギヤ同士の噛み合い深さを浅くする側の位置調整を、部品点数の少ない簡単な構造によって実現することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、位置調整部30の調整ねじ31の軸方向の一端側がベース部材15側に回転可能に保持され、軸方向の他端側が支持ブロック25にねじ込まれているが、逆に、調整ねじ31の軸方向の一端側を支持ブロック25に回転可能に支持させ、軸方向の他端側をベース部材15側にねじ込むようにしても良い。ただし、本実施形態のように、調整ねじ31の軸方向の一端側がベース部材15側に回転可能に保持されるようにした場合には、回転操作する調整ねじ31の頭部31bが回転調整時に減速機13とともにギヤ間方向Diに沿って変位しないことから、調整作業性が良好になる。
【0042】
また、本実施形態の動力伝達装置10では、位置調整部30の調整ねじ31(ねじ軸31a)がギヤ間方向Diに沿って延びている。このため、動力伝達装置10(回転治具1)の実際の使用時に、リングギヤ11側からピニオンギヤ20側(減速機13側)に大きな噛み合い反力が作用したときに、調整ねじ31によっても噛み合い反力を受け止めることができる。このため、大きな衝撃荷重(噛み合い反力)の入力によるピニオンギヤ20の微小な位置ずれや、作動音の発生、噛み合い部の破損、摩耗等の発生を有効に防止することができる。
【0043】
また、本実施形態の動力伝達装置10は、減速機13の収容ケース25Aの外周面に嵌め込まれるアダプタブロック25Bに調整ねじ31(ねじ軸31a)の先端部がねじ込まれている。このため、減速機13の収容ケース25Aに調整ねじ31の先端部をねじ込むためのねじ孔を形成する必要が無くなり、その結果、収容ケース25Aの加工が容易になるとともに、収容ケース25Aの強度も高く保たれる。
【0044】
さらに、本構成を採用した場合、内径の異なるアダプタブロック25Bと交換することにより、外径の異なる減速機13にも容易に適用することができる。なお、外径に限らず軸長等の他の部分の仕様の異なる減速機13を用いる場合にも、アダプタブロック25Bを交換することによって対応することができる。
ただし、アダプタブロック25Bを用いずに、収容ケース25Aの周壁に調整ねじ31の先端部を直接ねじ込む構成も採用は可能である。
【0045】
さらに、本実施形態の動力伝達装置10は、支持ブロック25をベース部材15に固定する固定部が、ピニオンギヤ20の軸方向と平行な方向(噛み合い深さが変化する方向と交差する交差方向)に締め込み可能で、支持ブロック25をベース部材15に固定する締結ボルト40(締結部材)と、支持ブロック25にピニオンギヤ20の軸方向と平行に設けられた軸孔42a,42bと、を備えている。そして、軸孔42a,42bは、支持ブロック25の径方向の変位を許容する内径(サイズ)に形成されている。このため、締結ボルト40(締結部材)の締め込みを緩めることにより、支持ブロック25を径方向に位置調整することができる。
【0046】
特に、支持ブロック25を径方向に位置調整する際には、締結ボルト40を完全に取り外すのではなく、締結を若干緩めるようにすれば、締結ボルト40の頭部を介して支持ブロック25をベース部材15に仮保持させ、その状態で支持ブロック25の位置調整作業を容易に行うことができる。
ただし、支持ブロック25をベース部材15に固定する固定部は、上記の構成に限定されるものではなく、支持ブロック25をベース部材15に固定できるものであれば、他の構成を採用することも可能である。
【0047】
本実施形態では、締結ボルト40と軸孔42a,42bの間に、支持ブロック25の径方向の変位を許容する隙間dが確保されるように、真円状の軸孔42a,42bの内径が締結ボルト40の軸40aの外径よりも充分に大きく設定されている。しかし、締結ボルト40が挿通される軸孔42a,42bは真円状に形成するのではなく、ギヤ間方向Diの変位許容隙間が確保されるように、軸孔42a,42bを長孔状に形成するようにしても良い。
【0048】
ただし、本実施形態の動力伝達装置10では、締結ボルト40の軸40aの外径よりも充分に大きい内径の真円形状の軸孔42a,42bが支持ブロック25に形成されるようにしているため、支持ブロック25に対する軸孔42a,42bの加工が容易になる。また、位置調整部30(噛み合い調整装置)を持つ動力伝達装置10と、位置調整部30を持たない動力伝達装置で同じ仕様の減速機13を用いる場合には、位置調整部30を持たない動力伝達装置の固定に用いる締結ボルト40よりも軸径の小さい仕様の締結ボルト40を、位置調整部30を持つ動力伝達装置10で用いるようにすれば良い。
このため、本構成を用いた場合には、位置調整部30を持つ動力伝達装置10と、位置調整部を持たない動力伝達装置で同じ仕様の減速機を用いることができる。
【0049】
<他の実施形態>
上記の実施形態では、位置調整部30が、ベース部材15側に回転可能に保持され先端部が支持ブロック25側に締め込まれる調整ねじ31を主要部品として構成されているが、位置調整部30は、これに限定されるものではない。
例えば、支持ブロック25の外周面をギヤ間方向Diの一側に押し込み操作可能な調整ねじと、支持ブロック25の外周上の相反位置においてギヤ間方向Diの他側に向けて弾性的な反力を付与する皿ばね等のばね部材と、によって構成するようにしても良い。この場合、調整ねじに代えてレバー機構等の他の操作機構を用いることも可能である。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、第1ギヤがピニオンギヤに20よって構成され、第2ギヤがリングギヤ11によって形成されているが、第1ギヤと第2ギヤは、相互に噛み合うギヤであれば形状やサイズは任意である。
【0051】
また、上記の実施形態は、第2ギヤ(ピニオンギヤ20)が減速機13に回転可能に連結されているが、第2ギヤは、必ずしも減速機13に連結される構造である必要はない。第2ギヤは、例えば、減速機13を介さずにモータ12等の動力源に直結される構造であっても良い。
【0052】
また、動力伝達装置10の適用は、回転治具1に限定されるものではなく、ロボットアームの旋回部等の他の様々な機器の可動部に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…動力伝達装置、11…リングギヤ(第1ギヤ)、13…減速機、15…ベース部材、20…ピニオンギヤ(第2ギヤ)、25…支持ブロック、25A…収容ケース、25B…アダプタブロック、31a…ねじ軸、35…ねじ穴(固定部)、40…締結ボルト(締結部材、固定部)、40a…軸、42a,42b…軸孔(固定部)。
図1
図2
図3
図4