(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170487
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221102BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/14 603
B41J2/14 607
B41J2/175 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076641
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056KB15
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB40
2C057AG29
2C057AG30
2C057AG44
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】供給統合流路に溜まったエアを回収し易くなる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、長寸を成すと共にその長手方向に交差する幅方向に併設され、液体をノズルに供給する複数の供給マニホールドと、長手方向に延在すると共に幅方向に併設され、ノズルにより吐出されなかった液体が流入する複数の帰還マニホールドと、上流端が供給マニホールドに接続され、下流端が帰還マニホールドに接続され、且つ、供給マニホールドの長手方向に列をなして配置された複数のノズルに対して個別に連通した複数の個別流路と、供給マニホールドの長手方向一端に設けられ、複数の供給マニホールドに液体を供給する供給統合流路と、供給マニホールドの長手方向一端に設けられ、複数の帰還マニホールドからの液体を回収する回収統合流路と、供給統合流路と回収統合流路とを連結するバイパス流路とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長寸を成すと共にその長手方向に交差する幅方向に併設され、液体をノズルに供給する複数の供給マニホールドと、
前記長手方向に延在すると共に前記幅方向に併設され、前記ノズルにより吐出されなかった液体が流入する複数の帰還マニホールドと、
上流端が前記供給マニホールドに接続され、下流端が前記帰還マニホールドに接続され、且つ、前記供給マニホールドの長手方向に列をなして配置された複数のノズルに対して個別に連通した複数の個別流路と、
前記供給マニホールドの前記長手方向一端に設けられ、前記複数の供給マニホールドに液体を供給する供給統合流路と、
前記供給マニホールドの前記長手方向一端に設けられ、前記複数の帰還マニホールドからの液体を回収する回収統合流路と、
前記供給統合流路と前記回収統合流路とを連結するバイパス流路と、を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記供給統合流路は前記複数の供給マニホールドにわたるように前記幅方向に延在し、
前記バイパス流路は、前記供給統合流路の前記幅方向の一端側に設けられた一端側バイパス流路および前記供給統合流路の前記幅方向の他端側に設けられた他端側バイパス流路を含む、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記供給統合流路は前記複数の供給マニホールドにわたるように前記幅方向に延在し、
前記バイパス流路は、前記供給統合流路の前記幅方向の一端側に設けられた一端側バイパス流路を含み、
前記供給統合流路の前記幅方向の他端側に一端が接続された液体供給路をさらに備える、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記供給統合流路は積層された複数のプレートにより形成され、
前記バイパス流路は前記複数のプレートのうち少なくとも最上のプレートに形成されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記バイパス流路の流路抵抗は前記供給マニホールドから前記ノズルを経て前記帰還マニホールドに至る流路の合成抵抗よりも高い、請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記供給統合流路は、前記複数の供給マニホールドの各々と個別にそれぞれ連結される複数の個別統合流路を含み、
前記個別統合流路の前記幅方向における寸法は前記供給マニホールドの前記幅方向における寸法と同じである、請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記供給統合流路において前記バイパス流路と前記供給マニホールドとの間の位置に配置されたフィルタをさらに備える、請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記回収統合流路にはフィルタが配置されていない、請求項1乃至7の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記供給統合流路は、積層された複数のプレートが有する開口が組み合わされて形成されると共に、前記複数のプレートのうち上方の前記プレートほど前記開口が小さくされてテーパ状を成している、請求項1乃至8の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用ヘッドとして、例えばインク等の液体を印刷媒体上に吐出することによって印刷を行う液体吐出ヘッドが知られている。例えば特許文献1には、供給マニホールドから供給された液体のうちノズルにより吐出されない液体を帰還マニホールドにて回収した後、供給マニホールドに戻す構成の循環ヘッドが開示されている。この循環ヘッドにおいては、供給マニホールドの長手方向一方側に供給統合流路が設けられ、当該長手方向他方側に回収統合流路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成では、供給統合流路内のエアが排出されずに当該供給統合流路内に留まってしまう恐れがあった。そのため、供給統合流路内のエアがノズルに入り、これに起因してノズルが液滴を吐出できない事態となる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、供給統合流路に溜まったエアを回収し易くなる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、長寸を成すと共にその長手方向に交差する幅方向に併設され、液体をノズルに供給する複数の供給マニホールドと、前記長手方向に延在すると共に前記幅方向に併設され、前記ノズルにより吐出されなかった液体が流入する複数の帰還マニホールドと、上流端が前記供給マニホールドに接続され、下流端が前記帰還マニホールドに接続され、且つ、前記供給マニホールドの長手方向に列をなして配置された複数のノズルに対して個別に連通した複数の個別流路と、前記供給マニホールドの前記長手方向一端に設けられ、前記複数の供給マニホールドに液体を供給する供給統合流路と、前記供給マニホールドの前記長手方向一端に設けられ、前記複数の帰還マニホールドからの液体を回収する回収統合流路と、前記供給統合流路と前記回収統合流路とを連結するバイパス流路と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、供給統合流路と回収統合流路とを連結するバイパス流路を設けることで、供給統合流路に溜まったエアを当該バイパス流路を介して回収統合流路に排出することができる。また、供給統合流路および回収統合流路が供給マニホールドの長手方向一端に集約されているため、バイパス流路を短くでき、それ故エアを排出し易くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、供給統合流路に溜まったエアを回収し易くなる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図2の液体吐出ヘッドから第2流路部材を除いた構成を示す平面図である。
【
図4】
図1の液体吐出ヘッドの第1流路部材の断面図である。
【
図6】第2流路部材を構成するプレートの平面図である。
【
図7】(a)は第2流路部材を構成するプレートの平面図であり、(b)は(a)のプレートの側面図であり、(c)は(a)のプレートの下面図である。
【
図8】(a)および(b)は第2流路部材を構成するプレートの平面図である。
【
図9】(a)および(b)は第2流路部材を構成するプレートの平面図である。
【
図10】第2流路部材の一つのプレートの変形例を示す平面図である。
【
図11】供給統合流路と供給マニホールドとを連結する連結流路および供給側の位置に配置されたフィルタを示す図である。
【
図12】回収側の位置にフィルタが配置されていないことを示す図である。
【
図13】(a)は供給統合流路の形状の変形例を示す図であり、(b)は個別統合流路を示す図である。
【
図14】第2流路部材のプレートに設けられたバイパス流路および液体供給路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図面を参照して説明する。以下に説明する液体吐出ヘッドは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
本実施形態に係る液体吐出ヘッド3は例えば液体吐出装置110に設けられる。この液体吐出装置110は、例えばインク等の液体を吐出するものである。以下では、液体吐出装置110をインクジェットプリンタに適用した例について説明するが、液体吐出装置110の適用対象はこれに限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、液体吐出装置110は、例えばラインヘッド方式が採用され、プラテン111、搬送部、ヘッドユニット116およびタンク112を備えている。但し、液体吐出装置110はラインヘッド方式に限定されず、例えばシリアルヘッド方式等の他の方式も採用し得る。
【0013】
プラテン111は、平板部材であり、被吐出媒体用紙PPがその上面に配置され、当該用紙PPとヘッドユニット116との距離を決定する役割を担う。
【0014】
搬送部は2つの搬送ローラ115および図略の搬送モータを有する。2つの搬送ローラ115は、上記搬送モータに連結されてプラテン111を互いに挟んだ状態で用紙PPの搬送方向に直交する方向(直交方向)に沿って互いに平行に配置されている。搬送モータが駆動されると、搬送ローラ115が回転し、それによりプラテン111上の用紙PPが搬送方向に搬送される。
【0015】
ヘッドユニット116は上記直交方向における用紙PPの長さ以上の長さを有している。ヘッドユニット116には複数の液体吐出ヘッド3が設けられている。
【0016】
液体吐出ヘッド3においては、吐出面(ノズル面)SF2に
図4の複数のノズル孔(ノズル)9が開口する。ノズル孔9においてはメニスカスが振動し、それにより液体が吐出される。なお、液体吐出ヘッド3の詳細については後述する。
【0017】
液体が例えばインクの場合、タンク112は当該インクの種類ごとに設けられている。タンク112は例えば4つ設けられ、各タンク112内には、それぞれブラック、イエロー、シアン、およびマゼンタのインクが貯留されている。タンク112のインクは、対応するノズル孔9に供給される。
【0018】
続いて、
図2は
図1の液体吐出ヘッド3の平面図であり、
図3は
図2の液体吐出ヘッド3から第2流路部材7を除いた構成を示す平面図である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド3は、第1流路部材5と、当該第1流路部材5に液体を供給する第2流路部材7と、加圧部である変位素子51を含む圧電アクチュエータ基板41とを備えている。第1流路部材5および第2流路部材7はそれぞれ長手方向に延在する。本実施形態において長手方向とは後述する供給マニホールド21の延在方向である。なお、
図2および
図3における幅方向は上記長手方向と直交する方向である。
【0020】
第2流路部材7の上面において、長手方向一端側に開口25bが設けられ、長手方向他端側に開口27bが設けられている。外部からの液体は開口25bを介して第2流路部材7に供給され、後述する第1流路部材5において吐出されなかった液体は開口27bを介して第2流路部材7から回収されるようになっている。なお、第2流路部材7には貫通孔19aが設けられており、各変位素子51に信号を送るための図略の信号伝達部(FPC:Flexible Printed Circuit)が貫通孔19aを介して図略の制御部と電気的に接続されている。
【0021】
図3に示すように、第1流路部材5において長尺状の複数の供給マニホールド21および長尺状の複数の帰還マニホールド23がそれぞれ長手方向に延在するように設けられている。各帰還マニホールド23は、対応する供給マニホールド21の下方にそれぞれ配置されている。
【0022】
供給マニホールド21は長手方向の両端にそれぞれ開口21bを有している。また、帰還マニホールド23は、長手方向の両端で且つ供給マニホールド21の各開口21bよりも長手方向の外側にそれぞれ開口23bを有している。
【0023】
このような構成において、第1流路部材5においては、第2流路部材7から各開口21bを介して各供給マニホールド21に供給された液体は当該供給マニホールド21の中央に向かって流れていく。そして、液体は各供給マニホールド21に対応する後述の複数の加圧室11に流れ込み、その後液体の一部はノズル孔9から吐出される。一方、ノズル孔9から吐出されなかった液体は帰還マニホールド23に流れ込み、各開口23bを介して第1流路部材5から外部に排出される。
【0024】
次いで、液体吐出ヘッド3における第1流路部材5の断面構成について説明する。
図4は液体吐出ヘッド3の第1流路部材5の断面図である。
【0025】
図4に示すように、第1流路部材5は複数のプレートが積層されてなる積層構造を有している。圧電アクチュエータ基板41は、圧電体である2枚の圧電セラミック層41a,41bを含む積層構造を有している。この圧電セラミック層41bの下面が加圧室面SF1となっている。加圧室面SF1には複数の加圧室11が長手方向(つまりノズル列の方向)にそれぞれ並んで配置されている。また、吐出面SF2には液体を吐出する複数のノズル孔9が長手方向にそれぞれ並んで配置されている。
【0026】
第1流路部材5は、例えばプレート5a~5lを有している。プレート5aは圧電セラミック層41bの下面である加圧室面SF1に接続されている。プレート5aの下にはプレート5b~5lがこの順で積層されている。各プレートには、大小様々な孔および溝が形成されている。各プレートが積層されてなる流路形成体の内部において孔および溝が組み合わされて、複数のノズル孔9、後述する複数の個別流路60、供給マニホールド21および帰還マニホールド23が液体流路として形成されている。なお、上述した開口21bおよび開口23bは加圧室面SF1に設けられている。また、吐出面SF2にはノズル孔9が開口されている。
【0027】
ノズル孔9はプレート5lを積層方向(高さ方向)に貫通して形成されている。プレート5lの吐出面SF2には、複数のノズル孔9の先端がノズル列の方向にそれぞれ並設されている。
【0028】
加圧室11は、変位素子51に面する加圧室本体11aと当該加圧室本体11aよりも断面積が小さいディセンダ11bとで構成される。加圧室本体11aはプレート5aに形成されている。また、ディセンダ11bはプレート5b~5kに亘って形成されている。
【0029】
加圧室本体11aと供給マニホールド21とは供給絞り路13により繋がれている。つまり、供給絞り路13は各加圧室本体11aを供給マニホールド21に対して個別的に連通している。供給絞り路13はプレート5bを貫通する孔とプレート5cを貫通する溝とプレート5dを貫通する孔とにより形成されている。
【0030】
ディセンダ11bと帰還マニホールド23とは帰還絞り路15により繋がれている。つまり、帰還絞り路15は各ディセンダ11bを帰還マニホールド23に対して個別的に連通している。帰還絞り路15は、ディセンダ11bのうちプレート5kに形成された孔と隣り合い且つプレート5kを貫通する溝15aaと、プレート5jを貫通する溝15abと、帰還マニホールド23のうちプレート5iに形成された孔と隣り合い且つプレート5iを貫通する溝15bとにより形成されている。
【0031】
本実施形態において、供給絞り路13、加圧室11(加圧室本体11aとディセンダ11b)、および帰還絞り路15を含む流路が個別流路60となる。個別流路60は、供給マニホールド21および帰還マニホールド23に接続されている。詳しくは、個別流路60は、その上流端が供給マニホールド21に接続され、その下流端が帰還マニホールド23に接続されており、この間においてノズル孔9の基端に接続されている。
【0032】
供給マニホールド21はプレート5e,5fを貫通した孔が重ねられて形成される。供給マニホールド21の下方にはダンパー室30Aが設けられている。ダンパー室30Aはプレート5gの厚み方向下半分をハーフエッチングすることで形成される。これにより、供給マニホールド21の下に、薄肉状のダンパー部29Aが形成されている。
【0033】
帰還マニホールド23はプレート5i,5jを貫通した孔が重ねられて形成される。帰還マニホールド23の下方にはダンパー室30Bが設けられている。ダンパー室30Bはプレート5kの厚み方向下半分をハーフエッチングすることで形成される。これにより、帰還マニホールド23の下に、薄肉状のダンパー部29Bが形成されている。
【0034】
圧電アクチュエータ基板41の変位素子51は上述した加圧室11上に位置するように設けられている。また、高さ方向において各加圧室11と対向する位置に個別電極45が設けられている。個別電極45はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、図略の制御部から制御信号を受けて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極45に印加する。
【0035】
圧電アクチュエータ基板41における圧電セラミック層41aと圧電セラミック層41bとの間には共通電極43が設けられている。共通電極43は各加圧室11を覆うように設けられている。共通電極43は常にグランド電位に保持されている。なお、圧電セラミック層41bは振動板として機能する。
【0036】
個別電極45が重なる圧電セラミック層41aの活性部は上記駆動信号に応じて個別電極45と共通電極43と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板である圧電セラミック層41bが協働して変形し、加圧室11の容積を増減する方向に変化する。これにより、液体をノズル孔9から吐出させるための吐出圧力が加圧室11の容積に応じて当該加圧室11に付与される。
【0037】
このような構成において、液体は、まず供給マニホールド21から供給絞り路13に流入し、供給絞り路13から加圧室11に流入する。その後、液体はディセンダ11bを流れ、ノズル孔9に流入する。この状態で上記の吐出圧力が加圧室11に付与されると、液体はノズル孔9から吐出される。
【0038】
一方、ノズル孔9から吐出されなかった液体の一部は、帰還絞り路15を流れた後帰還マニホールド23に流入する。そして、帰還マニホールド23に流入した液体は、帰還マニホールド23内を流れて第2流路部材7へ戻る。
【0039】
続いて、本実施形態における第2流路部材について詳しく説明する。
図5は第2流路部材7の平面図である。また、
図6は第2流路部材7を構成するプレート7aの平面図である。
図7(a)は第2流路部材7を構成するプレート7bの平面図であり、(b)は(a)のプレート7bの側面図であり、(c)は(a)のプレート7bの下面図である。
図8(a)および(b)は第2流路部材7をそれぞれ構成するプレート7c,7dの平面図である。
図9(a)および(b)は第2流路部材7を構成するプレート7e,7fの平面図である。
【0040】
図5に示すように、第2流路部材7は第1流路部材5の加圧室面SF1に接合される。第2流路部材7は、上から順に積層されたエッチングプレートであるプレート7a~プレート7fで構成される。
図9(b)に示すプレート7fには、上述の圧電アクチュエータ基板41を収容する収容空間19が設けられている。第2流路部材7は、供給マニホールド21に液体を供給する供給統合流路25と、帰還マニホールド23の液体を回収する回収統合流路27とを有している。供給統合流路25は、それぞれ後述する、開口25b、部材25a1、貯留部25a2、分岐流路25a3および分岐流路25a4を含む。また、回収統合流路27は、それぞれ後述する、開口27b、部材27a1、貯留部27a2、分岐流路27a3および分岐流路27a4を含む。
【0041】
図6に示すように、第2流路部材7の長手方向の一端には、第2流路部材7のプレート7aの上面に開口する開口25bが配置されている。供給統合流路25の流路構成は、上流側の開口25bから始まって、
図7(a)に示すように部位25a1が設けられ、そして貯留部25a2が設けられている。貯留部25a2の下流側には、
図8(b)に示すように長手方向に延在する分岐流路25a3が設けられている。分岐流路25a3は上記長手方向の中央で当該長手方向の一方側および他方側に延在する2つの流路に分岐されている。この分岐流路25a3の上記一方側の流路の先および上記他方側の流路の先の各々には、
図8(b)および
図9(a),(b)に示すように幅方向に延在する分岐流路25a4が接続されている。各々の分岐流路25a4は第2流路部材7の幅方向の一方側および他方側に分岐され、第1流路部材5の供給マニホールド21における上述の開口21bに接続されている。
【0042】
一方、第2流路部材7の長手方向の他端には、
図6に示すように第2流路部材7のプレート7aの上面に開口する開口27bが配置されている。回収統合流路27の流路構成は、上流側の開口27bから始まって、
図7(a)に示すように部位27a1が設けられ、そして貯留部27a2が設けられている。貯留部27a2の下流側には、
図8(b)に示すように長手方向に延在する分岐流路27a3が設けられている。分岐流路27a3は、上記長手方向の中央で当該長手方向の一方側および他方側に延在する2つの流路に分岐されている。この分岐流路27a3の上記一方側の流路の先および上記他方側の流路の先の各々には、
図8(b)および
図9(a),(b)に示すように幅方向に延在する分岐流路27a4が接続されている。各々の分岐流路27a4は第2流路部材7の幅方向の一方側および他方側に分岐され、第1流路部材5の帰還マニホールド23における上述の開口23bに接続されている。なお、平面視において、分岐流路25a3と分岐流路27a3とは少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。上記のような構成において、印刷を行う際には、外部から供給統合流路25の開口25bに液体を供給し、ノズル孔9により吐出されなかった液体は回収統合流路27の開口27bから回収されるようになっている。
【0043】
ここで、
図5および
図8(b)に示すように、第2流路部材7には上記の供給統合流路25と上記の回収統合流路27とを連結するバイパス流路65が設けられている。詳細には、
図8(b)に示すように、バイパス流路65は、長手方向の一方側および他方側の双方において、各分岐流路25a4の幅方向の一方端と各分岐流路27a4の一方端とを連結する各一方側バイパス流路65aを含む。また、バイパス流路65は、長手方向の一方側および他方側において、分岐流路25a4の幅方向の他方端と分岐流路27a4の他方端とを連結する他方側バイパス流路65bを含む。バイパス流路65の流路抵抗は、供給マニホールド21からノズル孔9を経て帰還マニホールド23に至る流路の合成抵抗、具体的には供給マニホールド21から個別流路60を介して帰還マニホールド23までの流路の合成抵抗よりも高い。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出ヘッド3によれば、供給統合流路25と回収統合流路27とを連結するバイパス流路65を設けることで、供給統合流路25に溜まったエアをバイパス流路65を介して回収統合流路27に排出することができる。また、供給統合流路25および回収統合流路27が供給マニホールド21の長手方向一端に集約されているため、バイパス流路65を短くでき、それ故エアを排出し易くなる。さらに、パージ時および印字dutyが高くなった時に供給統合流路25内のエアが第2流路部材7に巻き込まれるので、それ故ノズル孔9が閉塞する恐れを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、バイパス流路65は一方側バイパス流路65aおよび他方側バイパス流路65bを含む。このように、バイパス流路65を供給統合流路25(供給統合流路25の分岐流路25a4)の長手方向両端に設けることで、当該供給統合流路25内のエアの排出性を向上することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、バイパス流路65の流路抵抗は、供給マニホールド21からノズル孔9を経て帰還マニホールド23に至る流路の合成抵抗、具体的には供給マニホールド21から個別流路60を介して帰還マニホールド23までの流路の合成抵抗よりも高い。この場合、バイパス流路65内の液体の流量を最小限に抑えることで、供給マニホールド21からノズル孔9を経て帰還マニホールド23に至る流路内の液体を十分な量にすることができる。
【0047】
<変形例>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0048】
図10に示すように、上述の複数のプレート7a~7fのうち少なくとも最上のプレート7aにバイパス流路165が形成されてもよい。この場合、バイパス流路165はプレート7a,7b,7cに形成されてもよい。これによって、エアの排出性をより向上することができる。
【0049】
図11に示すように、供給統合流路25(供給統合流路25の分岐流路25a4)においてバイパス流路65と供給マニホールド21との間の位置(より詳細には第2流路部材7の直上の位置)P1にフィルタFTを貼り付けて設けてもよい。この場合、フィルタFTを設けても、バイパス流路65によってエアを排出し得るため、それゆえエア排出を阻害することはない。これに対して、
図12に示すように、回収統合流路27(回収統合流路27の分岐流路27a4)にはフィルタは配置されていない。この場合、フィルタを不必要に設けることを回避することができる。
【0050】
また、
図13(a)に示すように、供給統合流路25の分岐流路25a4の変形例として、複数のプレート(例えばプレート7d,7e,7f)に形成された流路125a4を採用してもよい。流路125a4は、積層されたプレート7d,7e,7fが有する開口が組み合わされて形成されると共に、プレート7d,7e,7fのうち上方のプレートほど開口が小さくされてテーパ状を成している。このような流路125a4を採用することで、供給統合流路25内のエアをより排出し易くなる。
【0051】
また、
図13(b)に示すように、プレート7e,7fにおいて複数の供給マニホールド21の各々と個別にそれぞれ連結される複数の個別統合流路225a4を形成してもよい。個別統合流路225a4はプレート7eに形成された個別流路72およびプレート7fに形成された個別流路73を含む。個別統合流路225a4の幅方向における寸法は供給マニホールド21の幅方向における寸法と同じである。この場合、供給統合流路25内のエアをより排出し易くなる。
【0052】
また、
図14に示すように、バイパス流路65は、長手方向の一方側および他方側の双方において、各分岐流路25a4の幅方向の一方端と各分岐流路27a4の一方端とを連結する各一方側バイパス流路65aを含む。また、バイパス流路65は、長手方向の他方側において、分岐流路25a4の幅方向の他方端と分岐流路27a4の他方端とを連結する他方側バイパス流路65bを含む。ここで、第2流路部材7のプレート7dには液体供給路66が設けられている。この場合、分岐流路25a3のうち上記長手方向における一方側半分を設けない態様において、液体供給路66は分岐流路25a3の長手方向の一方端と、長手方向一方側に配置された分岐流路25a4の上記幅方向における他端とを接続する。このような構成によって、液体を供給統合流路25内でスムーズに流すことができる。なお、
図14では長手方向一方側のみに液体供給路66を設けた態様としたが、これに限定されるものではなく、長手方向他方側において他方側バイパス流路65bを設けずに、長手方向一方側と同じようにして液体供給路66を設けてもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、帰還マニホールド23の下にダンパー部29Bを形成することとしたが、このダンパー部29Bは必須な構成要素ではなく、帰還マニホールド23の下にはダンパー部がなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
3 液体吐出ヘッド
9 ノズル孔
21 供給マニホールド
23 帰還マニホールド
25 供給統合流路
27 回収統合流路
65,165 バイパス流路
65a 一方側バイパス流路
65b 他方側バイパス流路
66 液体供給路
225a4 個別統合流路
FT フィルタ