(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170490
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221102BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 607
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076644
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】三十日 陸斗
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056KB15
2C056KB16
2C057AF80
2C057AG29
2C057AG44
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体の吐出不良を抑制できる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、第1圧力室から延伸方向に延びる第1延伸部分と第1延伸部分から延伸方向に交差する第1方向に延びる第1突出部分とを有する第1ディセンダ、第1ディセンダに接続された第1帰還絞り、第2圧力室から延伸方向に延びる第2延伸部分と第2延伸部分から延伸方向に交差する第2方向に延びる第2突出部分とを有する第2ディセンダ、第2ディセンダに接続された第2帰還絞り、第1帰還絞り及び第2帰還絞りに接続された結合路、及び、結合路と帰還マニホールドとの間を結ぶ連結路を備え、第1突出部分は第1ノズルに接続され延伸方向において第1ノズルに対向する対向面が第1帰還絞りよりも第1ノズルから離れて位置し、第2突出部分は第2ノズルに接続され延伸方向において第2ノズルに対向する対向面が第2帰還絞りよりも第2ノズルから離れて位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に吐出圧力が付与される第1圧力室と、
前記第1圧力室から延伸方向に延びる第1延伸部分、及び、前記第1延伸部分から前記延伸方向に交差する第1方向に延びる第1突出部分を有する第1ディセンダと、
前記第1突出部分に接続された第1帰還絞りと、
前記第1方向において前記第1延伸部分と前記第1帰還絞りとの間の前記第1突出部分に接続された第1ノズルと、
液体に吐出圧力が付与される第2圧力室と、
前記第2圧力室から前記延伸方向に延びる第2延伸部分、及び、前記第2延伸部分から前記延伸方向に交差する第2方向に延びる第2突出部分を有する第2ディセンダと、
前記第2突出部分に接続された第2帰還絞りと、
前記第2方向において前記第2延伸部分と前記第2帰還絞りとの間の前記第2突出部分に接続された第2ノズルと、
前記第1帰還絞り及び前記第2帰還絞りに接続された結合路と、
前記結合路と帰還マニホールドとの間を結ぶ連結路と、を備え、
前記第1突出部分は、前記延伸方向において前記第1ノズルに対向する対向面が前記第1帰還絞りよりも前記第1ノズルから離れて位置し、
前記第2突出部分は、前記延伸方向において前記第2ノズルに対向する対向面が前記第2帰還絞りよりも前記第2ノズルから離れて位置している、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1ディセンダのうち、前記第1延伸部分及び前記第1突出部分を有する部分は、前記第1方向における幅が前記延伸方向及び前記第1方向に直交する方向における長さよりも長く、
前記第2ディセンダのうち、前記第2延伸部分及び前記第2突出部分は、前記第2方向における幅が前記延伸方向及び前記第2方向に直交する方向における長さよりも長い、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記結合路は、前記第1帰還絞りと前記第2帰還絞りとの間において前記延伸方向に交差する方向に延び、
前記結合路が延びる方向と前記第1方向との成す角のうち小さい方の角は、45度以下であり、
前記結合路が延びる方向と前記第2方向との成す角のうち小さい方の角は、45度以下である、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1延伸部分から前記第1突出部分が延びる前記第1方向と、前記第2延伸部分から前記第2突出部分が延びる前記第2方向とは、互いに同じ方向である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1突出部分は、前記第1延伸部分から前記帰還マニホールド側とは反対側に延び、
前記第2突出部分は、前記第2延伸部分から前記帰還マニホールド側とは反対側に延びている、請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1延伸部分から前記第1突出部分が延びる前記第1方向と、前記第2延伸部分から前記第2突出部分が延びる前記第2方向とは、互いに反対方向である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記帰還マニホールドが延びる方向に直交する方向と前記第1方向との成す角のうち小さい方の角は、45度以下であり、
前記帰還マニホールドが延びる方向に直交する方向と前記第2方向との成す角のうち小さい方の角は、45度以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記結合路は、前記第1帰還絞りと前記第2帰還絞りとの間において前記延伸方向に交差する方向に延び、
前記結合路が延びる方向に対して直交する断面積は、前記第1方向に対して直交する前記第1突出部分の断面積、及び、前記第1方向に対して直交する前記第2突出部分の断面積のいずれよりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記結合路が延びる方向に対して直交する断面積は、前記第1方向に対して直交する前記第1突出部分の断面積の2倍、及び、前記第2方向に対して直交する前記第2突出部分の断面積の2倍いずれよりも大きい、請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出ヘッドとして、特許文献1の液体吐出ヘッドは、吐出孔、部分流路を介して吐出孔に接続された加圧室、第1流路により部分流路を介して加圧室に接続された第1共通流路、及び、第2流路により加圧室に接続された第2共通流路を有している。また、近傍に位置する2つの吐出孔に対応する2つの第1流路は、それぞれ部分流路から延びた後に合流し、1本になった状態で第1共通流路に接続されている。従って、この第1流路は、複数の部分流路に連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の液体吐出ヘッドでは、液体は、第2共通流路から第2流路を介して加圧室に流入し、その一部の液体が部分流路を介して吐出孔から吐出される。吐出されなかった液体は、第1流路から第1共通流路に流れて、ヘッドの外部に排出されている。
【0005】
ここで、上述したように複数の部分流路(例えば、第1部分流路及び第2部分流路)が第1流路に接続されている。このため、例えば、第2部分流路に対応する吐出孔が詰まったり、第2部分流路に対応する吐出孔からの吐出率が第1部分流路に対応する吐出孔からの吐出率よりも少なかったりする場合、第2部分流路内の液体が第1流路を通って第1部分流路へ逆流することがある。この場合、仮に逆流した液体に気泡が混入していると、気泡が第1部分流路に流入して、第1部分流路に対応する吐出孔を塞ぐおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、気泡による液体の吐出不良を抑制することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出ヘッドは、液体に吐出圧力が付与される第1圧力室と、前記第1圧力室から延伸方向に延びる第1延伸部分、及び、前記第1延伸部分から前記延伸方向に交差する第1方向に延びる第1突出部分を有する第1ディセンダと、前記第1突出部分に接続された第1帰還絞りと、前記第1方向において前記第1延伸部分と前記第1帰還絞りとの間の前記第1突出部分に接続された第1ノズルと、液体に吐出圧力が付与される第2圧力室と、前記第2圧力室から前記延伸方向に延びる第2延伸部分、及び、前記第2延伸部分から前記延伸方向に交差する第2方向に延びる第2突出部分を有する第2ディセンダと、前記第2突出部分に接続された第2帰還絞りと、前記第2方向において前記第2延伸部分と前記第2帰還絞りとの間の前記第2突出部分に接続された第2ノズルと、前記第1帰還絞り及び前記第2帰還絞りに接続された結合路と、前記結合路と帰還マニホールドとの間を結ぶ連結路と、を備え、前記第1突出部分は、前記延伸方向において前記第1ノズルに対向する対向面が前記第1帰還絞りよりも前記第1ノズルから離れて位置し、前記第2突出部分は、前記延伸方向において前記第2ノズルに対向する対向面が前記第2帰還絞りよりも前記第2ノズルから離れて位置している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置を概略的に示す図である。
【
図2】液体吐出ヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2の液体吐出ヘッドを上側から視た図である。
【
図4】
図2の液体吐出ヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図7】変形例に係る液体吐出ヘッドを上側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0010】
(実施の形態)
<液体吐出装置>
本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッド(以下、「ヘッド10」と称する。)を備える液体吐出装置11は、
図1に示すように、インク等の液体を吐出する装置である。以下では、液体吐出装置11を、液体をヘッド10から被記録媒体Aに吐出して画像を形成するインクジェットプリンタに適用した例について説明するが、液体吐出装置11はこれに限定されない。また、被記録媒体Aには、紙及び布等のシート材を用いることができる。
【0011】
液体吐出装置11は、ラインヘッド方式が採用され、プラテン12、搬送部13、ヘッドユニット14、貯留タンク15及び制御部16を備えている。なお、ヘッドユニット14のヘッド10側よりもプラテン側を下と称し、その反対側を上と称する。この上下方向に交差(例えば、直交)し且つ互いに交差(例えば、直交)する方向を左右方向及び前後方向と称する。但し、液体吐出装置11の配置はこれに限定されない。
【0012】
プラテン12は、例えば、矩形状の平板形状であり、被記録媒体Aが載置される平坦な上面を有しており、その被記録媒体Aとヘッドユニット14との間の距離を決める。
【0013】
搬送部13は、例えば、一対の搬送ローラ13a、及び、搬送モータを有する。一対の搬送ローラ13aは、前後方向においてプラテン12を互いの間に挟み、互いに平行に配置されている。搬送ローラ13aは、その中心軸が、左右方向に延びている。一対の搬送ローラ13aのうちのいずれかの一方の搬送ローラ13aは搬送モータに連結されている。この搬送モータが駆動されると、搬送ローラ13aが回転し、プラテン12上の被記録媒体Aが前後方向に搬送される。
【0014】
ヘッドユニット14は、左右方向に長く延び、左右方向においてその長さが被記録媒体Aの長さ以上である。ヘッドユニット14には、複数のヘッド10が設けられている。ヘッド10には、プラテン12の上面に対向する吐出面40a(
図2)、及び、吐出面40aに開口する複数のノズル21が設けられている。なお、ヘッド10の詳細に関しては後述する。
【0015】
貯留タンク15は、液体の種類ごとに設けられている。例えば、4つの貯留タンク15には、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの液体がそれぞれ貯留されている。貯留タンク15は、対応するヘッド10のノズル21に液体を供給する。後述の駆動素子60により液体に圧力が付与されると、ノズル21から液体が吐出される。
【0016】
制御部16は、CPU等の演算部、RAM及びROM等の記憶部、及び、ASIC等のドライバICを備えている。制御部16では、演算部が、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて各種の実行指令を各部のドライバICに出力する。これにより、制御部16は、搬送部13の搬送モータ及びヘッド10の駆動素子60の動作を制御する。例えば、制御部16は、ヘッド10から液体を吐出させる吐出動作と共に、搬送部13により被記録媒体Aを搬送させる搬送動作を実行する。これにより、液体によって被記録媒体Aに画像を形成する印刷処理が進む。
【0017】
<ヘッド>
ヘッド10は、
図2~
図4に示すように、液体流路20が設けられ複数のプレートの積層体により形成された流路形成体40、及び、液体流路20の液体に圧力を付与する駆動素子60を備えている。なお、
図2では液体流路20の各部どうしの繋がり関係、及び、液体流路20の各部と流路形成体40のプレートとの位置関係をわかりやすいように表している。このため、
図2の紙面の左右方向と液体流路20の各部の位置とは対応しないことがある。
【0018】
流路形成体40は、例えば、ノズルプレート41、複数(例えば、10枚)の流路プレート及び振動板52を有している。これらのプレートは、矩形平板形状であって、この順で積層されており、互いに接着剤等で接着されている。なお、流路形成体40においてプレートが積層されている積層方向を上下方向と称する。また、この上下方向に交差(例えば、直交)し且つ互いに交差(例えば、直交)する方向を左右方向及び前後方向と称する。但し、ヘッド10の配置は、この方向に限定されない。
【0019】
流路形成体40において、第1流路プレート42の下面はノズルプレート41の上面に接着され、第10流路プレート51の上面は振動板52の下面に接着されている。なお、振動板52は、第10流路プレート51と一体的に形成されていてもよい。この場合、後述の圧力室32は第10流路プレート51の下面から上方に窪んだ凹部により形成される。この第10流路プレート51において圧力室32よりも上側部分が振動板52として機能する。
【0020】
各プレートには、プレートを貫通する貫通孔、及び、プレートの下面又は上面から窪む凹部が形成されている。各プレートが積層された流路形成体40の内部では貫通孔及び凹部が組み合わされて、例えば、複数のノズル21、複数の個別流路30、供給マニホールド22及び帰還マニホールド23が液体流路20として形成されている。例えば、プレートは、樹脂又は金属から成り、貫通孔及び凹部はエッチングにより形成される。
【0021】
供給マニホールド22及び帰還マニホールド23のそれぞれは、左右方向に長く延び、複数の個別流路30に接続されている。また、供給マニホールド22の上流端及び帰還マニホールド23の下流端は、ヘッド10に設けられたサブタンク17に接続されている。このサブタンク17は、対応する貯留タンク15(
図1)に接続されており、液体が貯留タンク15から供給されている。
【0022】
このため、サブタンク17、供給マニホールド22、個別流路30、帰還マニホールド23及びサブタンク17は、この順で接続され、液体がこの順で循環する第1循環経路を構成している。なお、サブタンク17又は供給マニホールド22の上流端にはフィルタが設けられていてもよい。これにより、供給マニホールド22に流入する液体に含まれる不純物が除去されてもよい。
【0023】
供給マニホールド22の下流端と帰還マニホールド23の上流端とは互いにバイパス24により接続されている。バイパス24は、ヘッド10において駆動素子60が配置されている駆動範囲外に配置されている。これにより、サブタンク17、供給マニホールド22、バイパス24、帰還マニホールド23及びサブタンク17は、この順で接続され、液体がこの順で循環する第2循環経路を構成する。
【0024】
供給マニホールド22は、第6流路プレート47及び第7流路プレート48を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上端開口が第8流路プレート49により覆われ、その下側開口が第5流路プレート46により覆われている。
【0025】
帰還マニホールド23は、第2流路プレート43及び第3流路プレート44を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上端開口が第4流路プレート45により覆われ、その下側開口が第1流路プレート42により覆われている。
【0026】
供給マニホールド22は、上側から視て帰還マニホールド23に重なるように、帰還マニホールド23よりも上側に配置されている。供給マニホールド22の左右方向に対して直交する断面積、及び、帰還マニホールド23の左右方向に対して直交する断面積は、互いに等しい。供給マニホールド22と帰還マニホールド23とは互いに等しい形状及びサイズを有していてもよい。
【0027】
上下方向において供給マニホールド22と帰還マニホールド23との間に、ダンパ18が設けられている。ダンパ18は、第5流路プレート46の下面から上方に窪む凹部により形成されており、凹部の下端開口が第4流路プレート45により覆われた空間である。ダンパ18は、供給マニホールド22から加わる圧力によって第5流路プレート46の上側部分が変形し、その体積が変化することにより、供給マニホールド22における液体の圧力変動を減衰する。なお、ダンパは、帰還マニホールド23よりも下側に配置されていてもよい。この場合、ダンパは、帰還マニホールド23における液体の圧力変動を減衰する。
【0028】
複数のノズル21は、ノズルプレート41を上下方向に貫通し形成されている。ノズル21は、その中心軸に対して直交する断面積が下方に向かって連続的に小さくなるテーパ形状であって、例えば、切頭円錐形等の錐形状を有している。但し、ノズル21は円柱形状等の柱形状であってもよい。ノズルプレート41の下面である吐出面40aには、複数のノズル21が左右方向に配列されてノズル列を形成し、複数のノズル列が前後方向に並べられている。
【0029】
図3の例では、ノズル21は、第1ノズル21f及び第2ノズル21sを有している。複数の第1ノズル21fは第1ノズル列を構成し、複数の第2ノズル21sは第2ノズル列を構成している。第1ノズル列は、前後方向において、第2ノズル列よりも後方であって、第2ノズル列と帰還マニホールド23との間に配置されている。
【0030】
個別流路30は、その上流端が供給マニホールド22に接続され、下流端が帰還マニホールド23に接続されており、この間においてノズル21が接続されている。個別流路30は、供給絞り31、圧力室32、ディセンダ33、帰還絞り34、結合路35及び連結路36を有し、これらはこの順で接続されている。なお、ディセンダ33、帰還絞り34、結合路35及び連結路36の詳細については後述する。
【0031】
個別流路30は、第1ノズル21fに接続された第1個別流路30f、及び、第2ノズル21sに接続された第2個別流路30sを有している。第1個別流路30f及び第2個別流路30sは、互いに同じ供給マニホールド22に接続され、互いに同じ帰還マニホールド23に接続されている。このため、第1ノズル21f及び第2ノズル21sは、互いに同じ供給マニホールド22から供給された液体を吐出可能である。
【0032】
第1個別流路30fは、供給絞り31である第1供給絞り31f、第1供給絞り31fに接続された圧力室32である第1圧力室32f、第1圧力室32fに接続されたディセンダ33である第1ディセンダ33f、及び、第1ディセンダ33fに接続された帰還絞り34である第1帰還絞り34f、第1帰還絞り34fに接続された結合路35、及び、結合路35に接続された連結路36を有している。
【0033】
第2個別流路30sは、供給絞り31である第2供給絞り31s、第2供給絞り31sに接続された圧力室32である第2圧力室32s、第2圧力室32sに接続されたディセンダ33である第2ディセンダ33s、及び、第2ディセンダ33sに接続された帰還絞り34である第2帰還絞り34s、第2帰還絞り34sに接続された結合路35、及び、結合路35に接続された連結路36を有している。
【0034】
供給絞り31は、第9流路プレート50の下面から上方に窪む凹部により形成され、その下端開口が第8流路プレート49により覆われている。供給絞り31の上流端は、第8流路プレート49を上下方向に貫通して、供給マニホールド22の上端に接続されている。供給絞り31の下流端は、第9流路プレート50の上部を上下方向に貫通して、圧力室32の下端に接続されている。供給絞り31は、供給マニホールド22から前方右側に延びて、その延伸方向に対して直交する断面積が供給マニホールド22の断面積よりも小さい。
【0035】
圧力室32は、第10流路プレート51を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上側開口が振動板52により覆われ、その下側開口が第9流路プレート50により覆われている。圧力室32は、ノズル列に対して直交するように、供給絞り31から前方に延びている。圧力室32は、その延伸方向に対して直交する断面積が供給絞り31の断面積よりも大きい。
【0036】
駆動素子60は、圧力室32の液体に吐出圧力を付与する素子であって、例えば、圧電素子である。駆動素子60は共通電極61、圧電層62及び個別電極63を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極61は絶縁膜64を介して振動板52の全面を覆い、圧電層62は共通電極61の全面を覆っている。個別電極63は、圧力室32毎に設けられ、上側から視て圧力室32に重なるように圧電層62上に配置されている。
【0037】
個別電極63は、ドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御部16(
図1)から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極63に印加する。これに対し、共通電極61は、常にグランド電位に保持されている。このため、圧電層62は、共通電極61と個別電極63との間において駆動信号に応じ伸縮する。これにより、振動板52が協働して変形し、圧力室32の容積を増減する方向に変化する。よって、圧力室32に、液体をノズル21から吐出させる吐出圧力が付与される。
【0038】
<ディセンダ、帰還絞り、結合路及び連結路>
ディセンダ33は、第1ディセンダ33f及び第2ディセンダ33sを有している。第1ディセンダ33fは、第1圧力室32fから延伸方向に延びる第1延伸部分33afと、第1延伸部分33afから延伸方向に交差する第1方向に延びる第1突出部分33bfとを有している。第2ディセンダ33sは、第2圧力室32sから上下方向に延びる第2延伸部分33asと、第2延伸部分33asから上下方向に交差する第2方向に延びる第2突出部分33bsとを有している。
【0039】
以下の説明では、延伸方向を上下方向とし、第1方向を前後方向の前方とし、第2方向を前後方向の前方として説明するが、第1ディセンダ33fの配置及び第2ディセンダ33sの配置はこれに限定されない。また、以下の説明において、第1延伸部分33af及び第2延伸部分33asについて延伸部分33aと称し、第1突出部分33bf及び第2突出部分33bsについて突出部分33bと称することがある。
【0040】
ディセンダ33は、その突出部分33bが延伸部分33aの下部から前方に延びることにより、L字形状を有している。このため、ディセンダ33において、突出部分33bよりも上方では、延伸部分33aは、その中心軸が上下方向に延びる円柱形等の柱形状を有している。一方、上下方向において突出部分33bが設けられている部分では、延伸部分33a及び突出部分33bが一体的になって、上側から視て左右方向の幅よりも前後方向の長さが長い長円形状又は角が丸い矩形状を有している。左右方向において延伸部分33aの長さは突出部分33bの長さに等しい。
【0041】
延伸部分33aは、第1流路プレート42~第9流路プレート50を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上端が圧力室32の下流端に接続され、圧力室32から下方へ延びて、その下端開口がノズルプレート41に覆われている。突出部分33bは、第1流路プレート42を上下方向に貫通した貫通孔により形成され、その上端が第2流路プレート43により覆われ、その下端がノズルプレート41により覆われている。
【0042】
突出部分33bは、その下端が延伸部分33aの下端に接続されるように、その後端が延伸部分33aの下部の前端に接続され、延伸部分33aから前方へ延びている。前後方向に対して直交する突出部分33bの断面積は、延伸部分33aの上下方向に対して直交する断面積以下である。
【0043】
突出部分33bの下端にノズル21が接続され、ノズル21は突出部分33bから下方に延びている。ノズル21は、前後方向において延伸部分33aと帰還絞り34との間の突出部分33bに接続されており、例えば、ノズル21は突出部分33bの左右方向及び前後方向の中心に配置されている。
【0044】
突出部分33bは、その後端が延伸部分33aに接続され、その前端が帰還絞り34に接続されている。突出部分33bでは、延伸部分33aとの接続口と帰還絞り34との接続口とは、前後方向において互いに対向している。この突出部分33bと延伸部分33aとの接続口は、突出部分33bと帰還絞り34との接続口よりも大きい。
【0045】
突出部分33bは、上下方向において、その下端に接続されたノズル21に対向する対向面33cである上面は、帰還絞り34のノズル21に対向する上面34cよりも上方に配置されている。この突出部分33bの上面は第2流路プレート43の下面により形成され、帰還絞り34の上面34cは第1流路プレート42の上部の下面により形成されている。突出部分33bの下端が帰還絞り34の下端に接続されており、上下方向において突出部分33bの高さH1は帰還絞り34の高さH2よりも高い。
【0046】
第1ディセンダ33fは、左右方向において第2ディセンダ33sよりも右側に配置されており、前後方向において第2ディセンダ33sよりも後方であって帰還マニホールド23の近くに配置されている。第1ディセンダ33fにおいて第1延伸部分33afから第1突出部分33bfが延びる第1方向、及び、第2ディセンダ33sにおいて第2延伸部分33asから第2突出部分33bsが延びる第2方向は、互いに同じ方向であって、
図3の例では、前後方向の前方である。第1方向及び第2方向は、互いに平行であって、第1ノズル列及び第2ノズル列に対して直交する。
【0047】
帰還絞り34は、第1流路プレート42の下面から上方に窪む凹部により形成され、その下側開口がノズルプレート41により覆われている。帰還絞り34は、その上流端が左右方向における突出部分33bの中心の前端に接続され、突出部分33bから前方右側又は前方左側へ湾曲しながら延びている。帰還絞り34はその延伸方向に対して直交する断面積は、突出部分33bの前後方向に対して直交する断面積よりも小さい。また、帰還絞り34の下流端は、第1流路プレート42を上下方向に貫通して結合路35の下端に接続されている。
【0048】
第1帰還絞り34fは、第1突出部分33bfから第1延伸部分33af側とは反対側である前方へ延びた後、左側に延び、さらに後方左側に延びるように湾曲している。また、第2帰還絞り34sは、第2突出部分33bsから第2延伸部分33as側とは反対側である前方へ延びた後、右側に延び、さらに後方右側に延びるように湾曲している。第1帰還絞り34f及び第2帰還絞り34sは、互いに同じ形状及びサイズを有しており、左右方向において互いに対称に配置されている。
【0049】
結合路35は、第2流路プレート43を上下方向に貫通した貫通孔により形成され、その上端開口が第3流路プレート44に覆われ、その下端開口が第1流路プレート42により覆われている。結合路35は、その後端が第1帰還絞り34fの下流端に接続され、その前端が第2帰還絞り34sの下流端に接続されている。
【0050】
結合路35は、左側から視てその後端が第1ディセンダ33fに重なってその前端が第2ディセンダ33sに重なるように、前後方向に直線状に延びている。また、結合路35は、左右方向において第1ディセンダ33fと第2ディセンダ33sとの間に配置されており、前端が後端よりも右側になるように前後方向及び左右方向に対して傾斜している。この結合路35が延びる方向と、第1突出部分33bfが延びる第1方向との成す角のうち、小さい方の角θ1は、45°以下である。また、結合路35が延びる方向と、第2突出部分33bsが延びる第2方向との成す角のうち、小さい方の角θ2は、45°以下である。
【0051】
結合路35の延伸方向に対して直交する断面積は、第1帰還絞り34fの延伸方向に対して直交する断面積及び第2帰還絞り34sの延伸方向に対して直交する断面積よりも大きい。また、結合路35の延伸方向に対して直交する断面積は、第1突出部分33bfの第1方向に対して直交する断面積及び第2突出部分33bsの第2方向に対して直交する断面積よりも大きい。好ましくは、結合路35の延伸方向に対して直交する断面積は、第1突出部分33bfの第1方向に対して直交する断面積の2倍及び第2突出部分33bsの第2方向に対して直交する断面積の2倍よりも大きい。
【0052】
連結路36は、第3流路プレート44を上下方向に貫通した貫通孔により形成され、その上端開口が第4流路プレート45に覆われ、その下端開口が第2流路プレート43により覆われている。連結路36は、結合路35よりも右側に配置されており、その上流端が、結合路35の延伸方向における中心に接続され、その下流端が帰還マニホールド23に接続されている。
【0053】
連結路36は、結合路35から後方右側へ直線状に延びる上流部分、上流部分から後方へ湾曲する湾曲部分、及び、湾曲部分から後方へ直線状に延びる下流部分を有している。この上流部分は結合路35に対して垂直に延び、下流部分は帰還マニホールド23に対して垂直に延びている。
【0054】
この上流部分、湾曲部分及び下流部分の各部分における延伸方向に対して直交する断面積は、互いに同じである。このため、連結路36の延伸方向に対して直交する断面積は、連結路36の上流端と下流端との間において一定であって、結合路35の延伸方向に対して直交する断面積と同じであってもよく、結合路35の断面積よりも大きくてもよい。
【0055】
<液体の流れ>
液体は、貯留タンク15からサブタンク17を介して供給マニホールド22に供給され、供給マニホールド22を左側へ流れながら、供給マニホールド22に接続された各個別流路30に流入する。この供給マニホールド22から個別流路30に流入しなかった液体は、バイパス24を介して帰還マニホールド23に流入し、サブタンク17へ戻るため、第2循環経路を循環する。
【0056】
個別流路30に流入した液体は、供給絞り31、圧力室32及びディセンダ33をこの順で流れて、液体の一部はノズル21に供給される。ここで、駆動素子60によって圧力室32に吐出圧力が付与されると、圧力が圧力室32からディセンダ33を介してノズル21に伝播されて、液体がノズル21から吐出される。
【0057】
ノズル21から吐出されなかった液体は、帰還絞り34、結合路35及び連結路36をこの順で流れて、帰還マニホールド23に流入する。帰還マニホールド23に流入した液体はサブタンク17へ戻るため、ノズル21から吐出されなかった液体は第1循環経路を循環する。
【0058】
ここで、第1帰還絞り34fからの液体は結合路35の後端に流入して前方へ流れ、第2帰還絞り34sからの液体は結合路35の前端に流入して後方へ流れる。そして、これらの液体は、結合路35において合流し、互いに同じ連結路36に流入して帰還マニホールド23へ流れる。
【0059】
<作用、効果>
液体吐出ヘッド10は、液体に吐出圧力が付与される第1圧力室32fと、第1圧力室32fから延伸方向に延びる第1延伸部分33af、及び、第1延伸部分33afから延伸方向に交差する第1方向に延びる第1突出部分33bfを有する第1ディセンダ33fと、第1突出部分33bfに接続された第1帰還絞り34fと、第1方向において第1延伸部分33afと第1帰還絞り34fとの間の第1突出部分33bfに接続された第1ノズル21fと、液体に吐出圧力が付与される第2圧力室32sと、第2圧力室32sから延伸方向に延びる第2延伸部分33as、及び、第2延伸部分33asから延伸方向に交差する第2方向に延びる第2突出部分33bsを有する第2ディセンダ33sと、第2突出部分33bsに接続された第2帰還絞り34sと、第2方向において第2延伸部分33asと第2帰還絞り34sとの間の第2突出部分33bsに接続された第2ノズル21sと、第1帰還絞り34f及び第2帰還絞り34sに接続された結合路35と、結合路35と帰還マニホールド23との間を結ぶ連結路36と、を備えている。第1突出部分33bfは、延伸方向において第1ノズル21fに対向する対向面33cが第1帰還絞り34fよりも第1ノズル21fから離れて位置している。第2突出部分33bsは、延伸方向において第2ノズル21sに対向する対向面33cが第2帰還絞り34sよりも第2ノズル21sから離れて位置している。
【0060】
例えば、第2ノズル21sの吐出率よりも高い吐出率で第1ノズル21fから液体が吐出されることがある。この場合、
図5に示すように、第1ノズル21fからの液体の吐出に対して供給マニホールド22から第1ノズル21fへの液体の供給が間に合わず、第2ディセンダ33sから第2帰還絞り34s、結合路35及び第1帰還絞り34fを介して、第1ノズル21fが接続された第1突出部分33bfに液体が逆流することがある。この場合、
図6に示すように、逆流液体に気泡Bが混入していても、延伸方向(例えば、上下方向)において第1突出部分33bfの対向面33cが第1帰還絞り34fの上面よりも第1ノズル21fから離れているため、気泡Bは対向面33c側へ流れる。よって、第1ノズル21fが気泡で塞がれることが低減され、気泡に起因する第1ノズル21f孔からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0061】
また、
図5に示すように、第1突出部分33bfには、第1延伸部分33afから第1方向(例えば、前方)に流れる液体に加えて、第1帰還絞り34fから第1方向とは反対側(例えば、後方)に流れる液体が流入する。これにより、第1突出部分33bfでは、第1延伸部分33afとの接続口と第1帰還絞り34fとの接続口との間において、前後方向に直交する左右方向への液体の流れが生じる。このため、逆流する液体に気泡が混入していても、気泡が左右方向に流されるため、第1突出部分33bfの下端に接続された第1ノズル21fに流入し難く、気泡に起因する第1ノズル21f孔からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0062】
液体吐出ヘッド10は、第1ディセンダ33fのうち、第1延伸部分33af及び第1突出部分33bfを有する部分は、第1方向における幅W1が延伸方向及び第1方向に直交する方向における長さL1よりも長い。第2ディセンダ33sのうち、第2延伸部分33as及び第2突出部分33bsは、第2方向における幅W2が延伸方向及び第2方向に直交する方向における長さL2よりも長い。
【0063】
仮に第1突出部分33bfの長さL1が幅W1よりも長いと、延伸方向及び第1方向に直交する方向(例えば、左右方向)において第1突出部分33bfが第1帰還絞り34fよりも長く突出する。このため、第1帰還絞り34fから第1突出部分33bfに侵入した気泡が左右方向に流れると、第1帰還絞り34fよりも突出した部分に滞留し易い。この場合、第1突出部分33bfから第1ノズル21fに気泡が侵入し易くなり、気泡に起因する第1ノズル21fにおける液体の吐出不良が生じ易くなる。これに対し、第1突出部分33bfの長さL1を幅W1よりも短くすることにより、このような気泡に起因した液体の吐出不良を低減することができる。
【0064】
液体吐出ヘッド10は、結合路35は、第1帰還絞り34fと第2帰還絞り34sとの間において延伸方向に交差する方向に延びている。結合路35が延びる方向と第1方向との成す角のうち小さい方の角θ1は、45度以下であり、結合路35が延びる方向と第2方向との成す角のうち小さい方の角θ2は、45度以下である。
【0065】
これによれば、ノズル21から液体が吐出される方向は、ノズル21に接続されるディセンダ33等を流れる液体の流れ方向に依存する。このため、結合路35が延びる方向に対する第1方向の成す角θ1及び第2方向の成す角θ2を45度以下にすることにより、第1ノズル21fから液体が吐出される方向と、第2ノズル21sから液体が吐出される方向とが揃えられる。このため、第1ノズル21fからの液体の着弾位置(ドット位置)と第2ノズル21sからの液体の着弾位置(ドット位置)との間隔が、第1ノズル21fと第2ノズル21sとの間隔よりも広がったり狭まったりすることを低減し、不均一なドット間隔による画質の低下を抑制することができる。
【0066】
液体吐出ヘッド10では、第1延伸部分33afから第1突出部分33bfが延びる第1方向と、第2延伸部分33asから第2突出部分33bsが延びる第2方向とは、互いに同じ方向である。
【0067】
これによれば、
図3の例では、第1突出部分33bfは第1延伸部分33afから前方へ延び、第2突出部分33bsは第2延伸部分33asから前方へ延びている。このように、第1突出部分33bfの延びる第1方向及び第2突出部分33bsの延びる第2方向を互いに揃えられる。これにより、第1突出部分33bfに接続された第1ノズル21fから液体が吐出される方向、及び、第2突出部分33bsに接続された第2ノズル21sから液体が吐出される方向を互いに揃えられる。よって、吐出された液体の着弾位置の均一化が図られ、不均一な間隔に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0068】
液体吐出ヘッド10では、第1突出部分33bfは、第1延伸部分33afから帰還マニホールド23側とは反対側に延び、第2突出部分33bsは、第2延伸部分33asから帰還マニホールド23側とは反対側に延びている。
【0069】
これによれば、第1突出部分33bf及び第2突出部分33bsに接続された結合路35は、帰還マニホールド23側から離れて配置される。このため、結合路35と帰還マニホールド23とを連結した連結路36が長くなり、帰還マニホールド23から結合路35を介して第1突出部分33bf及び第2突出部分33bsに液体が逆流し難くなる。よって、仮に帰還マニホールド23からの逆流液体に気泡が混じっているような場合であっても、この気泡に起因する液体の吐出不良を低減することができる。
【0070】
液体吐出ヘッド10では、帰還マニホールド23が延びる方向に直交する方向と第1方向との成す角のうち小さい方の角は、45度以下であり、帰還マニホールド23が延びる方向に直交する方向と第2方向との成す角のうち小さい方の角は、45度以下である。これによれば、帰還マニホールド23に沿って延びるノズル列に対してノズル21からの液体の吐出方向を揃え、液体の着弾位置の不均一な間隔に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0071】
液体吐出ヘッド10では、結合路35は、第1帰還絞り34fと第2帰還絞り34sとの間において延伸方向に交差する方向に延びている。結合路35が延びる方向に対して直交する断面積は、第1方向に対して直交する第1突出部分33bfの断面積、及び、第1方向に対して直交する第2突出部分33bsの断面積のいずれよりも大きい。
【0072】
これによれば、第1突出部分33bfの断面積及び第2突出部分33bsの断面積が小さいことにより、第1突出部分33bf及び第2突出部分33bsを流れる液体の流速が増し、気泡が第1突出部分33bf及び第2突出部分33bsから排出され易くなる。これにより、第1突出部分33bfに接続された第1ノズル21f及び第2突出部分33bsに接続された第2ノズル21sにおいて気泡に起因した吐出不良を低減することができる。
【0073】
また、結合路35の断面積が大きいことにより、結合路35を流れる液体の流速が低下し、気泡が結合路35から第1帰還絞り34fを介して第1突出部分33bfに逆流したり、気泡が結合路35から第2帰還絞り34sを介して第2突出部分33bsに逆流したりすることが低減される。これにより、第1突出部分33bfに接続された第1ノズル21f及び第2突出部分33bsに接続された第2ノズル21sにおいて気泡に起因した吐出不良を低減することができる。
【0074】
液体吐出ヘッド10では、結合路35が延びる方向に対して直交する断面積は、第1方向に対して直交する第1突出部分33bfの断面積の2倍、及び、第2方向に対して直交する第2突出部分33bsの断面積の2倍のいずれよりも大きい。これによれば、第1突出部分33bfに接続された第1ノズル21f及び第2突出部分33bsに接続された第2ノズル21sにおいて気泡に起因した吐出不良を、より一層低減することができる。
【0075】
<変形例>
変形例に係る液体吐出ヘッド10は、上記実施の形態において、
図7に示すように、第1延伸部分133afから第1突出部分133bfが延びる第1方向と、第2延伸部分133asから第2突出部分133bsが延びる第2方向とは、互いに反対方向である。
【0076】
図7の例では、第1ディセンダ133fの第1突出部分133bfは、その前端が第1延伸部分133afに接続され、その後端が第1帰還絞り134fが接続されている。第1突出部分133bfでは、前後方向において、第1延伸部分133afとの接続口と第1帰還絞り134fとの接続口とは互いに対向している。
【0077】
第2ディセンダ133sの第2突出部分133bsは、その後端が第2延伸部分133asに接続され、その前端が第2帰還絞り134sが接続されている。第2突出部分133bsでは、前後方向において、第2延伸部分133asとの接続口と第2帰還絞り134sとの接続口とは互いに対向している。
【0078】
第1帰還絞り134fは、第1突出部分133bfから第1延伸部分133af側とは反対側である後方であって、前後方向において帰還マニホールド23側へ延びている。第1帰還絞り134fは、それから左側に延び、さらに前方左側に延びるように湾曲している。また、第2帰還絞り134sは、第2突出部分133bsから第2延伸部分133as側とは反対側である前方であって、前後方向において帰還マニホールド23側とは反対側へ延びている。第2帰還絞り134sは、それから右側に延び、さらに後方右側に延びるように湾曲している。第1帰還絞り134f及び第2帰還絞り134sは、互いに同じ形状及びサイズを有しており、前後方向及び左右方向において互いに対称に配置されている。
【0079】
これによれば、第1突出部分133bfに接続された第1帰還絞り134fと、第2突出部分133bsに接続された第2帰還絞り134bsとを、結合路35に対して互いに対称に形成することができる。これにより、第1帰還絞り134f及び第2帰還絞り134sにおける液体の流れを互いに等しく、第1ノズル21f及び第2ノズル21sの吐出性能を揃えることができる。
【0080】
<その他の変形例>
上記実施の形態及び変形例において、液体吐出装置11はラインヘッド方式を採用したが、この方式に限定されず、例えば、シリアルヘッド方式等の他の方式も採用し得る。このシリアルヘッド方式では、液体吐出装置11は、ヘッド10を搭載してヘッド10を左右方向に移動させるキャリッジを備える。液体吐出装置11は、キャリッジを左右方向に移動させながらヘッド10から液体を吐出する記録動作と、搬送部13により被記録媒体Aを前後方向に搬送させる搬送動作を交互に実行して、被記録媒体Aに画像を印刷する印刷処理を実行する。
【0081】
上記実施の形態及び変形例において、ヘッド10は、圧電素子を用いた方式(ピエゾ方式)を採用したが、この方式に限定されない。例えば、ヘッド10は、発熱体を用いたサーマル方式、又は、導電性振動板及び電極を用いた静電方式を採用し得る。
【0082】
上記実施の形態及び変形例において、個別流路30、供給マニホールド22及び帰還マニホールド23等の液体流路20は、プレートを貫通する貫通孔により形成された。但し、液体流路20はこれに限定されない。液体流路20は、1枚又は複数のプレートを貫通する貫通孔、及び、プレートの下面又は上面から窪む凹部の少なくともいずれか一方により形成されていてもよい。
【0083】
上記実施の形態及び各変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の液体吐出ヘッドは、気泡による液体の吐出不良を抑制することができる液体吐出ヘッド等として有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 :液体吐出ヘッド(ヘッド)
21 :ノズル
21f :第1ノズル
21s :第2ノズル
23 :帰還マニホールド
32 :圧力室
32f :第1圧力室
32s :第2圧力室
33 :ディセンダ
33a :延伸部分
33af :第1延伸部分
33as :第2延伸部分
33bf :第1突出部分
33bs :第2突出部分
33f :第1ディセンダ
33s :第2ディセンダ
34 :帰還絞り
34f :第1帰還絞り
34s :第2帰還絞り
35 :結合路
36 :連結路
133af :第1延伸部分
133as :第2延伸部分
133bf :第1突出部分
133bs :第2突出部分
133f :第1ディセンダ
133s :第2ディセンダ
134f :第1帰還絞り
134s :第2帰還絞り