(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170491
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20221102BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20221102BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/14 607
B41J2/14 605
B41J2/14 603
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076645
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三十日 陸斗
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056HA05
2C056KB15
2C056KB16
2C056KB35
2C057AG29
2C057AG33
(57)【要約】
【課題】帰還マニホールドからの液体の逆流を抑制できる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド10は、液体に吐出圧力が付与される第1圧力室32aと、第1圧力室から延伸方向に延びた第1ディセンダ33aと、第1ディセンダから、延伸方向に交差した方向に延びた第1帰還絞り34aと、第1ディセンダに接続された第1ノズル21aと、液体に吐出圧力が付与される第2圧力室32bと、第2圧力室から延伸方向に延びた第2ディセンダ33bと、第2ディセンダから、延伸方向に交差した方向に延びた第2帰還絞り34bと、第2ディセンダに接続された第2ノズルと、第1帰還絞り及び第2帰還絞りに接続された結合路35と、第1帰還絞りと第2帰還絞りとの間における結合路、及び、帰還マニホールドに接続された連結路36と、を備え、連結路を液体が流れるときの流路抵抗は、結合路を液体が流れるときの流路抵抗よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に吐出圧力が付与される第1圧力室と、
前記第1圧力室から延伸方向に延びた第1ディセンダと、
前記第1ディセンダから、前記延伸方向に交差した方向に延びた第1帰還絞りと、
前記第1ディセンダに接続された第1ノズルと、
前記液体に吐出圧力が付与される第2圧力室と、
前記第2圧力室から前記延伸方向に延びた第2ディセンダと、
前記第2ディセンダから、前記延伸方向に交差した方向に延びた第2帰還絞りと、
前記第2ディセンダに接続された第2ノズルと、
前記第1帰還絞り及び前記第2帰還絞りに接続された結合路と、
前記第1帰還絞りと前記第2帰還絞りとの間における前記結合路、及び、帰還マニホールドに接続された連結路と、を備え、
前記連結路を前記液体が流れるときの流路抵抗は、前記結合路を前記液体が流れるときの流路抵抗よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記連結路が延びる方向に対して直交する断面積が、前記結合路が延びる方向に対して直交する断面積よりも小さい、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記結合路及び前記連結路が設けられ、複数のプレートが積層方向に積層された積層体を備え、
前記連結路が延びる方向に対して直交する面において前記積層方向に直交する方向の前記連結路の幅が、前記結合路が延びる方向に対して直交する面において前記積層方向に直交する方向の前記結合路の幅よりも小さい、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記連結路の幅が前記結合路の幅の2分の1以下である、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1ディセンダ及び前記帰還マニホールドが設けられ、複数のプレートが積層方向に積層された積層体と、
前記第1圧力室に接続された第1供給絞りと、
前記第2圧力室に接続された第2供給絞りと、
前記第1供給絞り及び前記第2供給絞りに接続され、前記積層方向において前記帰還マニホールド上に配置された供給マニホールドと、
前記供給マニホールド及び前記帰還マニホールドに接続されたバイパスと、を備え、
前記第1ディセンダは、前記積層方向において前記第1圧力室側から離れるほど、前記帰還マニホールドが延びる方向に直交する方向において前記帰還マニホールド側から離れるように傾斜している、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記帰還マニホールドが延びる方向に対して直交する断面積は、前記供給マニホールドが延びる方向に対して直交する断面積よりも大きい、請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記積層方向において前記帰還マニホールドよりも前記供給マニホールド側又は前記供給マニホールド側とは反対側に配置されたダンパを備えている、請求項5又は6に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出ヘッドとして、特許文献1の液体吐出ヘッドがある。この液体吐出ヘッドは、吐出孔、吐出孔にディセンダにより接続された加圧室、第1個別流路により加圧室に接続された第1共通流路、第2個別流路によりディセンダに接続された第2共通流路を有している。この第2個別流路は、ディセンダに接続された第1部位、及び、第1部位及び第2共通流路に接続された第2部位を有している。第1部位は、ディセンダに接続された個別部分、及び、個別部分及び第2部位に接続された統合部分を有している。この統合部分には複数の個別部分が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の液体吐出ヘッドでは、液体は、第1共通流路から第1個別流路を介して加圧室に流入してからディセンダを流れ、その一部の液体が吐出孔から吐出される。吐出されなかった液体は、第2個別流路の個別部分、統合部分及び第2部位を通ってから第2共通流路に流れて、ヘッドの外部に排出されている。
【0005】
ここで、高い吐出率で吐出孔から液体が吐出されると、吐出孔と第1共通流路との間が長いため、第1共通流路から吐出孔への液体の供給量が吐出孔からの液体の吐出量に足りず、第2共通流路から吐出孔へ液体が逆流するおそれがある。この場合、仮に逆流した液体に不純物が含まれていると、不純物により吐出孔が塞がれて、吐出不良を招くおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、帰還マニホールドからの液体の逆流を抑制することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出ヘッドは、液体に吐出圧力が付与される第1圧力室と、前記第1圧力室から延伸方向に延びた第1ディセンダと、前記第1ディセンダから、前記延伸方向に交差した方向に延びた第1帰還絞りと、前記第1ディセンダに接続された第1ノズルと、前記液体に吐出圧力が付与される第2圧力室と、前記第2圧力室から前記延伸方向に延びた第2ディセンダと、前記第2ディセンダから、前記延伸方向に交差した方向に延びた第2帰還絞りと、前記第2ディセンダに接続された第2ノズルと、前記第1帰還絞り及び前記第2帰還絞りに接続された結合路と、前記第1帰還絞りと前記第2帰還絞りとの間における前記結合路、及び、帰還マニホールドに接続された連結路と、を備え、前記連結路を前記液体が流れるときの流路抵抗は、前記結合路を前記液体が流れるときの流路抵抗よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置を概略的に示す図である。
【
図2】液体吐出ヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2の液体吐出ヘッドを上側から視た図である。
【
図4】
図2の液体吐出ヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図5】変形例に係る液体吐出ヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図6】
図5の液体吐出ヘッドを上側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0010】
(実施の形態)
<液体吐出装置>
本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッド(以下、「ヘッド10」と称する。)を備える液体吐出装置11は、
図1に示すように、インク等の液体を吐出する装置である。以下では、液体吐出装置11を、液体をヘッド10から被記録媒体Aに吐出して画像を形成するインクジェットプリンタに適用した例について説明するが、液体吐出装置11はこれに限定されない。また、被記録媒体Aには、紙及び布等のシート材を用いることができる。
【0011】
液体吐出装置11は、ラインヘッド方式が採用され、プラテン12、搬送部13、ヘッドユニット14、貯留タンク15及び制御部16を備えている。なお、ヘッドユニット14のヘッド10側よりもプラテン側を下と称し、その反対側を上と称する。この上下方向に交差(例えば、直交)し且つ互いに交差(例えば、直交)する方向を左右方向及び前後方向と称する。但し、液体吐出装置11の配置はこれに限定されない。
【0012】
プラテン12は、例えば、矩形状の平板形状であり、被記録媒体Aが載置される平坦な上面を有しており、その被記録媒体Aとヘッドユニット14との間の距離を決める。
【0013】
搬送部13は、例えば、一対の搬送ローラ13a、及び、搬送モータを有する。一対の搬送ローラ13aは、前後方向においてプラテン12を互いの間に挟み、互いに平行に配置されている。搬送ローラ13aは、その中心軸が、左右方向に延びている。一対の搬送ローラ13aのうちのいずれかの一方の搬送ローラ13aは搬送モータに連結されている。この搬送モータが駆動されると、搬送ローラ13aが回転し、プラテン12上の被記録媒体Aが前後方向に搬送される。
【0014】
ヘッドユニット14は、左右方向に長く延び、左右方向においてその長さが被記録媒体Aの長さ以上である。ヘッドユニット14には、複数のヘッド10が設けられている。ヘッド10には、プラテン12の上面に対向する吐出面40a(
図2)、及び、吐出面40aに開口する複数のノズル21が設けられている。なお、ヘッド10の詳細に関しては後述する。
【0015】
貯留タンク15は、液体の種類ごとに設けられている。例えば、4つの貯留タンク15には、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの液体がそれぞれ貯留されている。貯留タンク15は、対応するヘッド10のノズル21に液体を供給する。後述の駆動素子60により液体に圧力が付与されると、ノズル21から液体が吐出される。
【0016】
制御部16は、CPU等の演算部、RAM及びROM等の記憶部、及び、ASIC等のドライバICを備えている。制御部16では、演算部が、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて各種の実行指令を各部のドライバICに出力する。これにより、制御部16は、搬送部13の搬送モータ及びヘッド10の駆動素子60の動作を制御する。例えば、制御部16は、ヘッド10から液体を吐出させる吐出動作と共に、搬送部13により被記録媒体Aを搬送させる搬送動作を実行する。これにより、液体によって被記録媒体Aに画像を形成する印刷処理が進む。
【0017】
<ヘッド>
ヘッド10は、
図2~
図4に示すように、液体流路20が設けられ複数のプレートの積層体により形成された流路形成体40、及び、液体流路20の液体に圧力を付与する駆動素子60を備えている。なお、
図2では液体流路20の各部どうしの繋がり関係、及び、液体流路20の各部と流路形成体40のプレートとの位置関係をわかりやすいように表している。このため、
図2の紙面の左右方向と液体流路20の各部の位置とは対応しないことがある。
【0018】
流路形成体40は、例えば、ノズルプレート41、複数(例えば、10枚)の流路プレート及び振動板52を有している。これらのプレートは、矩形平板形状であって、この順で積層されており、互いに接着剤等で接着されている。なお、流路形成体40においてプレートが積層されている積層方向を上下方向と称する。また、この上下方向に交差(例えば、直交)し且つ互いに交差(例えば、直交)する方向を左右方向及び前後方向と称する。但し、ヘッド10の配置は、この方向に限定されない。
【0019】
複数の流路プレートは、第1流路プレート42~第10流路プレート51を有し、第1流路プレート42の下面はノズルプレート41の上面に接着され、第10流路プレート51の上面は振動板52の下面に接着されている。なお、振動板52は、第10流路プレート51と一体的に形成されていてもよい。この場合、後述の圧力室32は第10流路プレート51の下面から上方に窪んだ凹部により形成される。この第10流路プレート51において圧力室32よりも上側部分が振動板52として機能する。
【0020】
各プレートには、プレートを貫通する貫通孔、及び、プレートの下面又は上面から窪む凹部が形成されている。各プレートが積層された流路形成体40の内部では貫通孔及び凹部が組み合わされて、例えば、複数のノズル21、複数の個別流路30、供給マニホールド22及び帰還マニホールド23が液体流路20として形成されている。例えば、プレートは、樹脂又は金属から成り、貫通孔及び凹部はエッチングにより形成される。
【0021】
供給マニホールド22及び帰還マニホールド23のそれぞれは、左右方向に長く延び、複数の個別流路30に接続されている。また、供給マニホールド22の上流端及び帰還マニホールド23の下流端は、ヘッド10に設けられたサブタンク17に接続されている。このサブタンク17は、対応する貯留タンク15(
図1)に接続されており、液体が貯留タンク15から供給されている。
【0022】
このため、サブタンク17、供給マニホールド22、個別流路30、帰還マニホールド23及びサブタンク17は、この順で接続され、液体がこの順で循環する第1循環経路を構成している。なお、サブタンク17又は供給マニホールド22の上流端にはフィルタが設けられていてもよい。これにより、供給マニホールド22に流入する液体に含まれる不純物が除去されてもよい。
【0023】
供給マニホールド22の下流端と帰還マニホールド23の上流端とは互いにバイパス24により接続されている。バイパス24は、ヘッド10において駆動素子60が配置されている駆動範囲外に配置されている。これにより、サブタンク17、供給マニホールド22、バイパス24、帰還マニホールド23及びサブタンク17は、この順で接続され、液体がこの順で循環する第2循環経路を構成する。
【0024】
供給マニホールド22は、第6流路プレート47及び第7流路プレート48を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上端開口が第8流路プレート49により覆われ、その下側開口が第5流路プレート46により覆われている。
【0025】
帰還マニホールド23は、第2流路プレート43及び第3流路プレート44を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上端開口が第4流路プレート45により覆われ、その下側開口が第1流路プレート42により覆われている。
【0026】
供給マニホールド22は、上側から視て帰還マニホールド23に重なるように、帰還マニホールド23よりも上側に配置されている。供給マニホールド22の左右方向に対して直交する断面積、及び、帰還マニホールド23の左右方向に対して直交する断面積は、互いに等しい。供給マニホールド22と帰還マニホールド23とは互いに等しい形状及びサイズを有していてもよい。
【0027】
上下方向において供給マニホールド22の下方に第1ダンパ18が設けられ、帰還マニホールド23の下方に第2ダンパ19が設けられている。第1ダンパ18は、前後方向において、その後端が供給マニホールド22の後端と同じ位置又はそれよりも後方に配置され、その前端が供給マニホールド22の前端と同じ位置又はそれよりも前方に配置されている。第2ダンパ19は、前後方向において、その後端が帰還マニホールド23の後端と同じ位置又はそれよりも後方に配置され、その前端が帰還マニホールド23の前端と同じ位置又はそれよりも前方に配置されている。また、第1ダンパ18及び第2ダンパ19は、左右方向において、その左端が駆動範囲の左端と同じ位置又はそれよりも左側に配置し、その右端が駆動範囲の右端と同じ位置又はそれよりも右側に配置されている。
【0028】
第1ダンパ18は、第5流路プレート46の下面から上方に窪む凹部により形成されており、凹部の下端開口が第4流路プレート45により覆われた空間である。供給マニホールド22から加わる圧力によって、供給マニホールド22と第1ダンパ18との間の第5流路プレート46の上部分が変形する。これにより、第1ダンパ18の体積が変化し、供給マニホールド22における液体の圧力変動を減衰する。
【0029】
第2ダンパ19は、第1流路プレート42の下面から上方に窪む凹部により形成されており、凹部の下端開口がノズルプレート41により覆われた空間である。帰還マニホールド23から加わる圧力によって、帰還マニホールド23と第2ダンパ19との間の第1流路プレート42の上部分が変形する。これにより、第2ダンパ19の体積が変化し、帰還マニホールド23における液体の圧力変動を減衰する。なお、第1ダンパ18は、帰還マニホールド23よりも下側ではなく、帰還マニホールド23よりも上側に配置されていてもよい。
【0030】
複数のノズル21は、ノズルプレート41を上下方向に貫通し形成されている。ノズル21は、その中心軸に対して直交する断面積が下方に向かって連続的に小さくなるテーパ形状であって、例えば、切頭円錐形等の錐形状を有している。但し、ノズル21は円柱形状等の柱形状であってもよい。ノズルプレート41の下面である吐出面40aには、複数のノズル21が左右方向に配列されてノズル列を形成し、複数のノズル列が前後方向に並べられている。
【0031】
図3の例では、ノズル21は、第1ノズル21a及び第2ノズル21bを有している。複数の第1ノズル21aは第1ノズル列を構成し、複数の第2ノズル21bは第2ノズル列を構成している。第1ノズル列は、前後方向において、第2ノズル列よりも後方であって、第2ノズル列と帰還マニホールド23との間に配置されている。
【0032】
個別流路30は、その上流端が供給マニホールド22に接続され、下流端が帰還マニホールド23に接続されており、この間においてノズル21が接続されている。個別流路30は、供給絞り31、圧力室32、ディセンダ33、帰還絞り34、結合路35及び連結路36を有し、これらはこの順で接続されている。なお、帰還絞り34、結合路35及び連結路36の詳細については後述する。
【0033】
個別流路30は、第1ノズル21aに接続された第1個別流路30a、及び、第2ノズル21bに接続された第2個別流路30bを有している。第1個別流路30a及び第2個別流路30bは、互いに同じ供給マニホールド22に接続され、互いに同じ帰還マニホールド23に接続されている。このため、第1ノズル21a及び第2ノズル21bは、互いに同じ供給マニホールド22から供給された液体を吐出可能である。
【0034】
第1個別流路30aは、供給絞り31である第1供給絞り31a、第1供給絞り31aに接続された圧力室32である第1圧力室32a、第1圧力室32aに接続されたディセンダ33である第1ディセンダ33a、及び、第1ディセンダ33aに接続された帰還絞り34である第1帰還絞り34a、第1帰還絞り34aに接続された結合路35、及び、結合路35に接続された連結路36を有している。
【0035】
第2個別流路30bは、供給絞り31である第2供給絞り31b、第2供給絞り31bに接続された圧力室32である第2圧力室32b、第2圧力室32bに接続されたディセンダ33である第2ディセンダ33b、及び、第2ディセンダ33bに接続された帰還絞り34である第2帰還絞り34b、第2帰還絞り34bに接続された結合路35、及び、結合路35に接続された連結路36を有している。
【0036】
供給絞り31は、第9流路プレート50の下面から上方に窪む凹部により形成され、その下端開口が第8流路プレート49により覆われている。供給絞り31の上流端は、第8流路プレート49を上下方向に貫通して、供給マニホールド22の上端に接続されている。供給絞り31の下流端は、第9流路プレート50の上部を上下方向に貫通して、圧力室32の下端に接続されている。供給絞り31は、供給マニホールド22から前方右側に延びて、その延伸方向に対して直交する断面積が供給マニホールド22の断面積よりも小さい。
【0037】
圧力室32は、第10流路プレート51を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上側開口が振動板52により覆われ、その下側開口が第9流路プレート50により覆われている。圧力室32は、ノズル列に対して直交するように、供給絞り31から前方に延びている。圧力室32は、その延伸方向に対して直交する断面積が供給絞り31の断面積よりも大きい。
【0038】
ディセンダ33は、第1流路プレート42~第9流路プレート50を上下方向に貫通する貫通孔により形成され、その上端が圧力室32の下流端に接続され、圧力室32から下方へ延びて、その下端開口がノズルプレート41に覆われている。ディセンダ33は、その上端の中心及び下端の中心を通る中心軸が上下方向に延び、円柱形等の柱形状を有している。ディセンダ33の下端の中心にノズル21が接続され、ノズル21はディセンダ33から下方に延びている。第1ディセンダ33aは、左右方向において第2ディセンダ33bよりも右側に配置されており、前後方向において第2ディセンダ33bよりも後方に配置されている。
【0039】
駆動素子60は、圧力室32の液体に吐出圧力を付与する素子であって、例えば、圧電素子である。駆動素子60は共通電極61、圧電層62及び個別電極63を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極61は絶縁膜64を介して振動板52の全面を覆い、圧電層62は共通電極61の全面を覆っている。個別電極63は、圧力室32毎に設けられ、上側から視て圧力室32に重なるように圧電層62上に配置されている。
【0040】
個別電極63は、ドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御部16(
図1)から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極63に印加する。これに対し、共通電極61は、常にグランド電位に保持されている。このため、圧電層62は、共通電極61と個別電極63との間において駆動信号に応じ伸縮する。これにより、振動板52が協働して変形し、圧力室32の容積を増減する方向に変化する。よって、圧力室32に、液体をノズル21から吐出させる吐出圧力が付与される。
【0041】
<帰還絞り、結合路及び連結路>
帰還絞り34は、第1流路プレート42の下面から窪む凹部により形成され、その下側開口がノズルプレート41により覆われている。帰還絞り34は、その下端がディセンダ33の下端に接続されるように、その上流端がディセンダ33の下部の前端に接続され、ディセンダ33から前方右側又は前方左側へ湾曲しながら延びている。帰還絞り34はその延伸方向に対して直交する断面積は、ディセンダ33の上下方向に対して直交する断面積よりも小さい。
【0042】
第1帰還絞り34aは、第1ディセンダ33aから第1圧力室32a側とは反対側である前方へ延びた後、左側に延び、さらに後方左側に延びるように湾曲している。また、第2帰還絞り34bは、第2ディセンダ33bから第2圧力室32b側とは反対側である前方へ延びた後、右側に延び、さらに後方右側に延びるように湾曲している。第1帰還絞り34a及び第2帰還絞り34bは、互いに同じ形状及びサイズを有しており、左右方向において互いに対称に配置されている。
【0043】
結合路35は、第2流路プレート43を上下方向に貫通した貫通孔により形成され、その上端開口が第3流路プレート44に覆われ、その下端開口が第1流路プレート42により覆われている。結合路35は、その後端が第1帰還絞り34aの下流端に接続され、その前端が第2帰還絞り34bの下流端に接続されている。
【0044】
結合路35は、左側から視てその後端が第1ディセンダ33aに重なってその前端が第2ディセンダ33bに重なるように、前後方向に直線状に延びている。また、結合路35は、左右方向において第1ディセンダ33aと第2ディセンダ33bとの間に配置されており、前端が後端よりも右側になるように前後方向及び左右方向に対して傾斜している。この結合路35の延伸方向に対して直交する断面積は、第1帰還絞り34aの延伸方向に対して直交する断面積及び第2帰還絞り34bの延伸方向に対して直交する断面積よりも大きい。
【0045】
連結路36は、第3流路プレート44を上下方向に貫通した貫通孔により形成され、その上端開口が第4流路プレート45に覆われ、その下端開口が第2流路プレート43により覆われている。この第3流路プレート44、及び、結合路35が設けられた第2流路プレート43は、その上下方向の厚みが互いに等しいため、結合路35及び連結路36の上下方向の高さは互いに等しい。なお、帰還絞り34、結合路35及び連結路36は、1又は複数のプレートを貫通した貫通孔、又は、プレートの上面又は下面から窪む凹部、又は、貫通孔と凹部との組み合わせにより形成されていてもよい。
【0046】
連結路36は、結合路35よりも右側に配置されており、その上流端が、結合路35の延伸方向における中心に接続され、その下流端が帰還マニホールド23に接続されている。連結路36は、結合路35から後方右側へ直線状に延びる上流部分、上流部分から後方へ湾曲する湾曲部分、及び、湾曲部分から後方へ直線状に延びる下流部分を有している。この上流部分は結合路35に対して垂直に延び、下流部分は帰還マニホールド23に対して垂直に延びている。
【0047】
この上流部分、湾曲部分及び下流部分の各部分における延伸方向に対して直交する断面積は、互いに同じである。このため、連結路36の延伸方向に対して直交する断面積は、連結路36の上流端と下流端との間において一定であって、結合路35の延伸方向に対して直交する断面積よりも小さい。例えば、連結路36の延伸方向に対して直交する断面における上下方向に直交する幅W2は、結合路35の延伸方向に対して直交する断面における上下方向に直交する幅W1よりも小さく、好ましくは、結合路35の幅W1の2分の1以下である。
【0048】
<液体の流れ>
液体は、貯留タンク15からサブタンク17を介して供給マニホールド22に供給され、供給マニホールド22を左側へ流れながら、供給マニホールド22に接続された各個別流路30に流入する。この供給マニホールド22から個別流路30に流入しなかった液体は、バイパス24を介して帰還マニホールド23に流入し、サブタンク17へ戻るため、第2循環経路を循環する。
【0049】
個別流路30に流入した液体は、供給絞り31、圧力室32及びディセンダ33をこの順で流れて、液体の一部はノズル21に供給される。ここで、駆動素子60によって圧力室32に吐出圧力が付与されると、圧力が圧力室32からディセンダ33を介してノズル21に伝播されて、液体がノズル21から吐出される。
【0050】
ノズル21から吐出されなかった液体は、帰還絞り34、結合路35及び連結路36をこの順で流れて、帰還マニホールド23に流入する。帰還マニホールド23に流入した液体はサブタンク17へ戻るため、ノズル21から吐出されなかった液体は第1循環経路を循環する。
【0051】
ここで、第1帰還絞り34aからの液体は結合路35の後端に流入して前方へ流れ、第2帰還絞り34bからの液体は結合路35の前端に流入して後方へ流れる。そして、これらの液体は、結合路35において合流し、互いに同じ連結路36に流入して帰還マニホールド23へ流れる。この連結路36の断面積は結合路35の断面積よりも小さいため、連結路36を流れるときの連結路36の流路抵抗は結合路35を液体が流れるときの流路抵抗よりも大きい。
【0052】
<作用、効果>
液体吐出ヘッド10は、液体に吐出圧力が付与される第1圧力室32aと、第1圧力室32aから延伸方向に延びた第1ディセンダ33aと、第1ディセンダ33aから、延伸方向に交差した方向に延びた第1帰還絞り34aと、第1ディセンダ33aに接続された第1ノズル21aと、液体に吐出圧力が付与される第2圧力室32bと、第2圧力室32bから延伸方向に延びた第2ディセンダ33bと、第2ディセンダ33bから、延伸方向に交差した方向に延びた第2帰還絞り34bと、第2ディセンダ33bに接続された第2ノズル21bと、第1帰還絞り34a及び第2帰還絞り34bに接続された結合路35と、第1帰還絞り34aと第2帰還絞り34bとの間における結合路35、及び、帰還マニホールド23に接続された連結路36と、を備え、連結路36を液体が流れるときの流路抵抗は、結合路35を液体が流れるときの流路抵抗よりも大きい。
【0053】
これによれば、連結路36の流路抵抗が大きい。このため、仮に高い吐出率で第1ノズル21aから液体が吐出される場合であっても、帰還マニホールド23から連結路36、結合路35及び第1帰還絞り34aを介して第1ディセンダ33aに液体が逆流することが低減される。これにより、逆流液体に含まれた不純物によって第1ディセンダ33aに接続された第1ノズル21aが塞がれることが低減され、不純物に起因した第1ノズル21aからの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0054】
また、結合路35の流路抵抗が小さい。このため、仮に高い吐出率で第1ノズル21aから液体が吐出される場合であっても、第2ディセンダ33bから第2帰還絞り34b、結合路35及び第1帰還絞り34aを介して第1ディセンダ33aの第1ノズル21aに液体が供給される。よって、帰還マニホールド23から第1ディセンダ33aへの逆流を低減し、第1ノズル21aからの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0055】
液体吐出ヘッド10は、連結路36が延びる方向に対して直交する断面積が、結合路35が延びる方向に対して直交する断面積よりも小さい。これにより、連結路36の流路抵抗が、結合路35の流路抵抗よりも大きくなる。よって、帰還マニホールド23から第1ディセンダ33aへの逆流を低減し、ノズル21からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0056】
液体吐出ヘッド10は、結合路35及び連結路36が設けられ、複数のプレートが積層方向に積層された積層体を備えている。連結路36が延びる方向に対して直交する面において積層方向に直交する方向の連結路36の幅がW2、結合路35が延びる方向に対して直交する面において積層方向に直交する方向の結合路35の幅W1よりも小さい。
【0057】
例えば、連結路36及び結合路35は、プレートを積層方向に貫通した貫通孔により形成されている場合、積層方向における連結路36の高さ及び結合路35の高さは積層方向におけるプレートの厚みに応じて決まる。この場合、連結路36の高さ及び結合路35の高さを流路抵抗に応じて変更する場合には、プレートの厚みを変更しなければならず、コスト上昇を招いてしまう。このような場合であっても、連結路36の幅W2及び結合路35の幅W1を調整することにより、コスト上昇を低減しながら、連結路36の流路抵抗を結合路35の流路抵抗よりも大きくし、ノズル21からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0058】
また、結合路35の長さを短くすることにより流路抵抗を低減すると、例えば、結合路35が形成されている第2流路プレート43と、第2流路プレート43に接着されている第1流路プレート42及び第3流路プレート44との接着面積が広がる。これに伴い接着剤の量が増えることにより、コストが上昇したり、余剰の接着剤により液体流路20が塞がれ易くなったりする。これに対して、連結路36の幅W2及び結合路35の幅W1を調整することにより、コスト上昇の低減及び液体流路20の閉塞を抑制しながら、連結路36の流路抵抗を結合路35の流路抵抗よりも大きくし、ノズル21からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0059】
液体吐出ヘッド10は、連結路36の幅W2が結合路35の幅W1の2分の1以下である。これによれば、さらに確実に帰還マニホールド23から第1ディセンダ33aへの逆流を低減し、ノズル21からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0060】
<変形例>
変形例に係る液体吐出ヘッド10は、上記実施の形態において、第1ディセンダ133a及び帰還マニホールド23が設けられ、複数のプレートが積層方向に積層された積層体と、第1圧力室32aに接続された第1供給絞り31aと、第2圧力室32bに接続された第2供給絞り31bと、第1供給絞り31a及び第2供給絞り31bに接続され、積層方向において帰還マニホールド23上に配置された供給マニホールド22と、供給マニホールド22及び帰還マニホールド23に接続されたバイパス24と、を備えている。第1ディセンダ133aは、積層方向において第1圧力室32a側から離れるほど、帰還マニホールド23が延びる方向に直交する方向において帰還マニホールド23から離れるように傾斜している。
【0061】
具体的には、
図5及び
図6の例では、ディセンダ133は、第1個別流路30aの第1ディセンダ133a、及び、第2個別流路30bの第2ディセンダ133bを有している。第1ディセンダ133aは、その上端が第1圧力室32aに接続され、その下端が第1ノズル21aに接続されている。第1ディセンダ133aは、下方ほど前方になるように上下方向に対して傾斜している。このため、第1ディセンダ133aは、上下方向において第1圧力室32aから離れるほど、前後方向において帰還マニホールド23から離れるように、上下方向に対して傾斜している。なお、第2ディセンダ133bも第1ディセンダ133aと同様に傾斜していてもよい。また、第2ディセンダ133bは傾斜せず、第2ディセンダ133bよりも帰還マニホールド23に近い第1ディセンダ133aが傾斜していてもよい。
【0062】
前後方向において、帰還マニホールド23の幅は供給マニホールド22の幅よりも広い。上側から視て、帰還マニホールド23の後端は供給マニホールド22の後端に重なり、帰還マニホールド23に前端は供給マニホールド22の前端よりも前方に配置されている。例えば、上下方向において、帰還マニホールド23の高さと供給マニホールド22の高さとは互いに等しい。
【0063】
このように、左右方向に延びる供給マニホールド22及び帰還マニホールド23において、左右方向に対して直交する帰還マニホールド23の断面積は、左右方向に対して直交する供給マニホールド22の断面積よりも大きい。これにより、帰還マニホールド23を液体が流れるときの流路抵抗が供給マニホールド22を液体が流れるときの流路抵抗よりも小さくなる。これにより、第1循環経路及び第2循環経路において、小さな圧力でも大きな流量の液体が流れる。よって、帰還マニホールド23から第1帰還絞り34aへの逆流を低減し、ノズル21からの液体の吐出不良を抑制することができる。
【0064】
また、帰還マニホールド23の断面積が大きい。これにより、帰還マニホールド23の周囲を取り囲むプレートにおいて、互いに接着される接着面積を小さくし、接着剤の量を低減することができる。
【0065】
さらに、前後方向において帰還マニホールド23の幅が広がることにより、帰還マニホールド23に重なられて配置されている第2ダンパ19の前後方向の幅も広がる。これにより、第2ダンパ19が形成されている第5流路プレート46と、第5流路プレート46に接着されている第4流路プレート45との接着面積が狭まる。これに伴い接着剤の量を低減し、コスト上昇を抑制することができる。
【0066】
<その他の変形例>
上記実施の形態及び変形例において、液体吐出装置11はラインヘッド方式を採用したが、この方式に限定されず、例えば、シリアルヘッド方式等の他の方式も採用し得る。このシリアルヘッド方式では、液体吐出装置11は、ヘッド10を搭載してヘッド10を左右方向に移動させるキャリッジを備える。液体吐出装置11は、キャリッジを移動させながらヘッド10から液体を吐出する記録動作と、搬送部13により被記録媒体Aを搬送させる搬送動作を交互に実行して、被記録媒体Aに画像を印刷する印刷処理を実行する。
【0067】
上記実施の形態及び変形例において、供給マニホールド22及び帰還マニホールド23等の液体流路20は、プレートを貫通する貫通孔により形成された。但し、液体流路20はこれに限定されない。液体流路20は、1枚又は複数のプレートを貫通する貫通孔、及び、プレートの下面又は上面から窪む凹部の少なくともいずれか一方により形成されていてもよい。
【0068】
上記実施の形態及び変形例において、ヘッド10は、圧電素子を用いた方式(ピエゾ方式)を採用したが、この方式に限定されない。例えば、ヘッド10は、発熱体を用いたサーマル方式、又は、導電性振動板及び電極を用いた静電方式を採用し得る。
【0069】
上記実施の形態及び各変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の液体吐出ヘッドは、帰還マニホールドからの液体の逆流を抑制することができる液体吐出ヘッド等として有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 :ヘッド
10 :液体吐出ヘッド
19 :第2ダンパ
21 :ノズル
21a :第1ノズル
21b :第2ノズル
22 :供給マニホールド
23 :帰還マニホールド
24 :バイパス
31 :供給絞り
31a :第1供給絞り
31b :第2供給絞り
32 :圧力室
32a :第1圧力室
32b :第2圧力室
33 :ディセンダ
33a :第1ディセンダ
33b :第2ディセンダ
34 :帰還絞り
34a :第1帰還絞り
34b :第2帰還絞り
35 :結合路
36 :連結路
133 :ディセンダ
133a :第1ディセンダ
133b :第2ディセンダ