IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河村電器産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-接続不良検出回路 図1
  • 特開-接続不良検出回路 図2
  • 特開-接続不良検出回路 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170510
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】接続不良検出回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/66 20200101AFI20221102BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20221102BHJP
   G01R 19/165 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01R31/66
G01R31/58
G01R19/165 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076685
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
【テーマコード(参考)】
2G014
2G035
【Fターム(参考)】
2G014AA13
2G014AA14
2G014AB33
2G014AB43
2G014AC08
2G014AC18
2G035AB08
2G035AC15
2G035AD02
2G035AD04
2G035AD10
(57)【要約】
【課題】 発生する電圧がダイオード素子の順方向電圧に達しない小さな電圧であっても、電路接続部の接続不良を検知できる接続不良検出回路を提供する。
【解決手段】 交流の電源10が接続された電路Lの途中に設けられた電路接続部2は、電源側電路が接続される電源側端子2aと、負荷側電路が接続される負荷側端子2bとが連結されて成り、両者の間に電位差が発生したら、それを検出する電位差検出回路4と、電位差検出回路4が電位差を検出したら、接続不良発生信号を出力する出力回路5とを有し、電位差検出回路4は、第1トランジスタT1、及び第2トランジスタT2を使用したカレントミラー回路で構成され、第2トランジスタT2のエミッタが負荷側端子2bに接続され、第1トランジスタT1のエミッタが電源側端子2aに接続されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に設けられた電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出回路であって、
前記電路接続部は、電源側電路が接続される電源側端子と、負荷側電路が接続される負荷側端子とが連結されて成り、
前記電源側端子と前記負荷側端子との間に電位差が発生したら、それを検出する電位差検出回路と、
前記電位差検出回路が電位差を検出したら、接続不良発生信号を出力する出力回路とを有することを特徴とする接続不良検出回路。
【請求項2】
前記電路に接続された電源が単相交流電源であって、前記電路は2本或いは3本の電線で構成され、
任意の1本の前記電線の前記電路接続部の接続不良を検出する前記電位差検出回路及び前記出力回路の電源が、他の全ての前記電線から入手した交流電源であることを特徴とする請求項1記載の接続不良検出回路。
【請求項3】
前記電路に接続された電源が三相交流電源であって、前記電路は3本或いは4本の電線で構成され、
任意の1本の前記電線の前記電路接続部の接続不良を検出する前記電位差検出回路及び前記出力回路の電源が、他の全ての前記電線から入手した交流電源であることを特徴とする請求項1記載の接続不良検出回路。
【請求項4】
前記電位差検出回路は、NPNトランジスタから成る第1及び第2の2つのトランジスタを使用したカレントミラー回路で構成され、前記第2トランジスタのエミッタが前記負荷側端子に接続されると共に、前記第1トランジスタのエミッタが前記電源側端子に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の接続不良検出回路。
【請求項5】
前記カレントンミラー回路は、第2トランジスタに代えてダイオードが使用され、前記ダイオードのカソードが前記負荷側端子に接続されていることを特徴とする請求項4記載の接続不良検出回路。
【請求項6】
前記出力回路は、PNPトランジスタを有し、そのベースが前記カレントミラー回路の前記第1トランジスタのコレクタに接続され、前記PNPトランジスタのコレクタが接続不良発生信号の出力部であることを特徴とする請求項4又は5記載の接続不良検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部等の電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電源を供給する電線や導体バー等を接続する電路接続部では、ネジの緩み、プラグの緩み等により接続不良が発生することがある。配電機器や電力機器等の比較的大電流を通電する電路においてこのような接続不良が発生すると、接触抵抗の増大により発熱して接続部が劣化するし、更にはアーク放電が発生して最悪火災に至る場合がある。
そのため、これを回避するために接続不良の発生を検出する回路がある。例えば、特許文献1に開示された技術は、端子間の電位差でオン動作するようフォトカプラを配置して、このフォトカプラのオン動作により接続不良を検知させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-145083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、端子間に発生する電位差がフォトカプラ等のダイオード素子の順方向電圧に依存する構成であるため、この順方向電圧に達しなければ検知できなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、発生する電圧がダイオード素子の順方向電圧に達しない小さな電圧であっても、電路接続部の接続不良を検知できる接続不良検出回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電路に設けられた電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出回路であって、電路接続部は、電源側電路が接続される電源側端子と、負荷側電路が接続される負荷側端子とが連結されて成り、電源側端子と負荷側端子との間に電位差が発生したら、それを検出する電位差検出回路と、電位差検出回路が電位差を検出したら、接続不良発生信号を出力する出力回路とを有することを特徴とする。
この構成によれば、出力回路が接続不良発生と判断する閾値は、ダイオード等の一定の駆動電圧が必要な素子を使用して設定されないため、電路接続部に発生した電位差がダイオードの順方向電圧より小さくても、それを検出して接続不良発生信号を出力させることが可能である。よって、接続不良の検出を高感度に実施できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、電路に接続された電源が単相交流電源であって、電路は2本或いは3本の電線で構成され、任意の1本の電線の電路接続部の接続不良を検出する電位差検出回路及び出力回路の電源が、他の全ての電線から入手した交流電源であることを特徴とする。
この構成によれば、電位差検出回路及び出力回路を駆動する電源は、直流電源を必要としないため、電源回路を別途設ける必要がない。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、電路に接続された電源が三相交流電源であって、電路は3本或いは4本の電線で構成され、任意の1本の電線の電路接続部の接続不良を検出する電位差検出回路及び出力回路の電源が、他の全ての電線から入手した交流電源であることを特徴
とする。
この構成によれば、電位差検出回路及び出力回路を駆動する電源は、直流電源を必要としないため、電源回路を別途設ける必要がない。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、電位差検出回路は、NPNトランジスタから成る第1及び第2の2つのトランジスタを使用したカレントミラー回路で構成され、第2トランジスタのエミッタが負荷側端子に接続されると共に、第1トランジスタのエミッタが電源側端子に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、カレントミラー回路を構成する2つのトランジスタのエミッタ電圧差で接続不良を検出するため、簡易な回路で且つ高感度で検出できる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の構成において、カレントンミラー回路は、第2トランジスタに代えてダイオードが使用され、ダイオードのカソードが負荷側端子に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、電位差検出回路を簡易な回路で構成できる。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載の構成において、出力回路は、PNPトランジスタを有し、そのベースがカレントミラー回路の第1トランジスタのコレクタに接続され、PNPトランジスタのコレクタが接続不良発生信号の出力部であることを特徴とする。
この構成によれば、出力回路は1つのトランジスタで構成されるため、簡易な回路で構成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出力回路が接続不良発生と判断する閾値は、ダイオード等の一定の駆動電圧が必要な素子を使用して設定されないため、電路接続部に発生した電位差がダイオードの順方向電圧より小さくても、それを検出して接続不良発生信号を出力させることが可能である。よって、接続不良の検出を高感度に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る接続不良検出回路の一例を示す回路図であり、単相電路に設けた構成を示している。
図2】接続不良検出回路の他の例を示す回路図である。
図3】三相電路に設けた接続不良検出回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る電路接続部の接続不良検出回路の一例を示す回路図であり、単相電路に設けた構成を示している。
検出対象の電路Lは、例えば交流100Vの単相の商用電力から成る電源10の電力を負荷11に供給する2本の電線(第1電線L1、第2電線L2)から成る単相2線式配線路であり、この電路L上に設けられた電路接続部2に接続不良が発生したらそれを検出するよう構成されている。
【0015】
電路接続部2は電源側電路接続された電源側端子2aと、負荷側電路が接続された負荷側端子2bとを有し、2線からなる電路Lのそれぞれの電線L1,L2に電源側端子2aと負荷側端子2bが設けられている。
この電源側端子2aと負荷側端子2bとは、正常な状態では接触抵抗が無いか殆ど無い状態で連結されているが、接続不良が発生すると、この端子間の接触抵抗が増大して電路電流に比例する電圧降下が発生する。図1に示すrはこの接触抵抗を示している。
尚、図1に示す複数の矢印Aは、接続不良検出回路1が動作する際の電流の流れを示し、交流である電源10の一方の極性となる半波の中で動作する。また、R1~R5は抵抗素子である。また、電路接続部2は、具体的にネジ締めの端子部、速結端子、プラグとコンセントの接続部等である。
【0016】
接続不良検出回路1は、電位差検出回路4と、出力回路5とで構成され、ここでは第2電線L2の電路接続部2の接続不良を検出する構成を示している。尚、第1電線L1の電路接続部2の接続不良を検出する接続不良検出回路も別途設けられているが、ここでは省略している。
電位差検出回路4は、電路接続部2の接触抵抗rに起因して発生する電位差を検出する回路であり、基準電圧として電源側端子2aの電圧が入力される第1端子部4aと、負荷側端子2bの電圧が入力される第2端子部4bと、信号(電位差検出信号)を出力する第3端子部4cと、電源10に接続される第4端子部4dとを有している。
【0017】
出力回路5は、電位差検出回路4が出力する電位差検出信号が入力される(第3端子部4cと接続される)第5端子部5aと、基準電圧を入力する第6端子部5bと、信号(接続不良発生信号)を出力する第7端子部5cと、電源10に接続される第8端子部5dとを有している。
【0018】
そして、この接続不良検出回路1を駆動するための電源は、電源線L4が接続不良を検出する第2電線L2とは対を成す反対側の第1電線L1に接続されて、反対側から供給される。電源線L4に設けられたダイオードD1は逆流防止のためのものである。
【0019】
電位差検出回路4は、具体的に第1トランジスタT1と第2トランジスタT2とで構成されたカレントミラー回路を備えている。両トランジスタT1,T2ともNPNトランジスタであり、例えばモノリシック・デュアルタイプのものが使用され、同一特性になるよう構成されている。そして、第1トランジスタT1のエミッタが第1端子部4aに接続され、コレクタが第3端子部4cに接続されている。また、第2トランジスタT2のエミッタが第2端子部4bに接続されている。両トランジスタT1,T2のコレクタは、それぞれ抵抗素子R1,R2を介して第4端子部4dに接続されている。
尚、第2トランジスタT2のコレクタは共通するベースに接続されている。
【0020】
出力回路5は、PNPトランジスタからなる第3トランジスタT3を備えて構成され、そのベースが第5端子部5aに接続され、コレクタが第6端子部5bに接続され、エミッタが第8端子部5dに接続されている。そして、コレクタに第7端子部5cが設けられている。尚、第6端子部5bと第7端子部5cとの間に配置された抵抗素子R5は負荷抵抗として作用する。
【0021】
このように構成された接続不良検出回路1の動作は以下のようである。電路接続部2に接触抵抗rが無いか非常に小さい正常な接続状態では、第1トランジスタT1及び第2トランジスタT2のエミッタ電位はほぼ同一であるため、オン状態の両トランジスタT1,T2にはほぼ同一の電流が流れる。この状態では、第3トランジスタT3はオンしないよう抵抗素子R1,R2は設定されている。この結果、第3トランジスタT3はオンせず、異常発生信号は出力されない。
【0022】
ところが、電路接続部2に接続不良が発生して接触抵抗rが大きくなると、電源側端子2aと負荷側端子2bの間に電圧降下が生ずる。この結果、電源側端子2aを基準にすると、第1トランジスタT1のエミッタ電位に対して、第2トランジスタT2のエミッタ電位が上昇する。すると、第2トランジスタT2のベース電位が上昇するため、連結されている第1トランジスタT1のベース電位が上昇し、第1トランジスタT1のコレクタ電流が増加する。
この電流増加の結果、抵抗素子R1の電圧降下が大きくなり、第3トランジスタT3のベース電位が低下し、第3トランジスタT3がオンする。
こうして、第7端子部5cの電位が上昇して、接続不良発生信号が出力される。
【0023】
このように、出力回路5が接続不良発生と判断する閾値はダイオード等の一定の駆動電圧が必要な素子を使用して設定されないため、電路接続部2に発生した電位差がダイオードの順方向電圧より小さくてもそれを検出して接続不良発生信号を出力させることが可能である。よって、接続不良の検出を高感度に実施できる。
また、電位差検出回路4及び出力回路5を駆動する電源は、反対極の電線から入手した交流電源であるため、直流電源を必要とせず電源回路を別途設ける必要がない。
更に、カレントミラー回路を構成する2つのトランジスタT1,T2のエミッタ電圧差で接続不良を検出するため、簡易な回路で且つ高感度で検出できる。
加えて、出力回路5は1つのトランジスタT3で構成されるため、簡易な回路で構成できる。
【0024】
尚、接続不良検出回路1を駆動するための電源は、単相2線式の場合は、上述したように接続不良を検出する電線と反対側の電線から供されるが、単相3線式の場合は3本の電線を有する為、接続不良検出回路1の電源は、接続不良を検出する電線以外の他の2線の双方からダイオードを介して供給される。
【0025】
図2は、接続不良検出回路1の変形例を示している。上記図1では、電位差検出回路4を2つのトランジスタT1,T2を使用したカレントミラー回路で構成しているが、図2では第2トランジスタT2に代えてダイオードD2を使用した回路を示している。ダイオードD2のカソードが負荷側端子2bに接続されている。
このように第2トランジスタT2はダイオードD2に変更しても良く、電位差検出回路4を簡易な回路にできる。尚、抵抗素子R6は、抵抗素子R2に代わる素子である。
【0026】
尚、上記実施形態は、第1電線L1が正極の場合を説明しているが、電源10は交流であるため、正極と負極が交互に発生する。よって、第1電線L1が負極の場合は、図示しない第1電線L1側に設けた接続不良検出回路が起動することになる。
また、上記接続不良検出回路1は、圧設した端子、半田等による溶接した電路接続部に対しても接続不良検出に適用できるものである。
【0027】
また上記実施形態は、検出対象の電路が、単相2線から成る電路Lの場合を説明したが、多相の電路に対しても上記接続不良検出回路1は良子に適用でき、例えば三相電路の場合を図3に示している。
図3は三相3電源20を備えた3線式電路に設けた接続不良検出回路1の回路図を示している。この場合、電路Lが3本の電線L1~L3で構成されているため、接続不良検出回路1の駆動電源を、接続不良を検出する電線(ここでは、第2電線L2)以外の2本の電線(ここでは、第1電線L1及び第3電線L3)からダイオードD1,D3を介して入手する。このように構成することで、接続不良検出回路1を良好に動作させることができる。更に、三相4線式電路の場合は、接続不良を検出する電線以外の3本の電線からダイオードを介して接続不良検出回路1に対して交流電源が供給される。
【符号の説明】
【0028】
1・・接続不良検出回路、2・・電路接続部、2a・・電源側端子、2b・・負荷側端子、4・・電位差検出回路、5・・出力回路、10・・電源(単相交流電源)、11・・負荷、20・・三相電源(三相交流電源)、T1・・第1トランジスタ、T2・・第2トランジスタ、T3・・第3トランジスタ(PNPトランジスタ)、r・・接触抵抗、L・・電路、L1・・第1電線(電線)、L2・・第2電線(電線)、L3・・第3電線(電線)。
図1
図2
図3