(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170517
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】濾過フィルター
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076699
(22)【出願日】2021-04-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博之
(57)【要約】
【課題】本発明は、展開不良を防止し、検査時においても良好な操作性を備え、容易かつ低コストで作製できる濾過フィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る濾過フィルターは、検体を調製した液体試料を濾過フィルターによって濾過した後に、被検出物を捕捉する物質を結合させたクロマト媒体を有する液体試料検査具上で、前記液体試料中の前記被検出物を検出又は定量する液体試料検査方法に用いられる濾過フィルターであって、有機ポリマーの発泡性樹脂材料よりなり、連通気孔を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を調製した液体試料を濾過フィルターによって濾過した後に、被検出物を捕捉する物質を結合させたクロマト媒体を有する液体試料検査具上で、前記液体試料中の前記被検出物を検出又は定量する液体試料検査方法に用いられる濾過フィルターであって、
有機ポリマーの発泡性樹脂材料よりなり、連通気孔を有する樹脂製フィルターを備える、濾過フィルター。
【請求項2】
前記樹脂製フィルターの気孔率が、70%以上である、請求項1に記載の濾過フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細菌やウィルス等の病原体の感染、妊娠の有無、血糖値の測定など、様々な検査を数分から十数分の短時間で行うことができる簡易検査試薬又はキットが提供されている。これらの検査キットによる検査方法としては、より簡便で、より短時間での検出が可能であることから、イムノアッセイ法が広く用いられている。
しかし、イムノアッセイ法により検査した場合、患者から実際に採取された検体の分析において、被検出物が検体中に存在しないにも関わらず陽性と判定してしまったり(いわゆる偽陽性)、被検出物が検体中に存在するのに陰性と判断してしまったり(いわゆる偽陰性)、と誤判定が生じることがあった。かかる誤判定は、原因の特定を遅らせ、早期治療、早期処置に支障をきたしかねないため、誤判定を抑制する濾過フィルターや、該濾過フィルターを有したアッセイキットが開発されている。
【0003】
誤判定は、アッセイ装置のクロマト媒体上に添加された検体中に含まれる混入物が該クロマト媒体中の細孔を塞ぎ、溶液中の成分の移動が阻害される結果、非特異的な反応が起こることによって発生すると考えられる。そこで、検体を適当な緩衝液で希釈することにより調製された液体試料を予め濾過することにより、誤判定を抑制し得ることが期待できる。また、クロマト媒体に滴下された検体が充分に展開されない場合には、クロマト媒体上がブロードに染色されてしまい、陽性か陰性かの判断自体が困難な場合がある。そこで、検体を適当な緩衝液で希釈し、得られた液体試料を濾過することにより、予め検体中に含まれる混入物を除去して、このような展開不良も軽減し得る。
【0004】
液体試料の濾過において、目詰まりを防止するとともに、緩衝液の増加による被検出物の検出感度の低下を防止するために、特許文献1では、特に目詰まりの発生がフィルターの孔ないし気孔の変形に基づくものであることに着目して、濾過チューブに強剛性フィルターを用いることとしている。
当該特許文献1では、濾過チューブ中に検体抽出液に検体を抽出させた液体試料を入れて、先端に取り付けた濾過フィルターを通して濾過し、濾液をイムノアッセイ装置中のクロマト媒体に滴下する際に、濾過フィルターとして、フィルターの厚さ方向に潰れにくく、または、湾曲等の変形をしにくい剛性を備えている強剛性フィルターを採用している。より具体的には、液体試料を濾過する時の液体や空気によるフィルターにかかる圧力が0.2MPaを超えても、濾過前対濾過時の厚さの変化量が5%以上とならず、好ましくは2%以上とならず、また、湾曲等の変形をしにくい剛性を備えているとは、上記同様の圧力がかかっても濾過時のフィルターの曲率半径が2cm以下とならないフィルターを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、偽陽性の軽減についての記載はあるが、クロマト展開の不良によりクロマト媒体がブロードに染色される結果、陽性か陰性かの判断自体が困難な場合の改善については一切記載がない。
【0007】
そこで、本発明は、展開不良を防止し、検査時においても良好な操作性を備え、容易かつ低コストで作製できる濾過フィルターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の一態様に係る濾過フィルターは、検体を調製した液体試料を濾過フィルターによって濾過した後に、被検出物を捕捉する物質を結合させたクロマト媒体を有する液体試料検査具上で、前記液体試料中の前記被検出物を検出又は定量する液体試料検査方法に用いられる濾過フィルターであって、有機ポリマーの発泡性樹脂材料よりなり、連通気孔を有する樹脂製フィルターを備える。
[2] 上記[1]に記載の濾過フィルターでは、樹脂製フィルターの気孔率が、70%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検体中の被検出物を、イムノアッセイ法により、展開不良を起こすことなく、精度よく検出することができるという効果を奏する。また、検査時においても、良好な操作性を有し、容易かつ低コストで検査具が製造できるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る濾過フィルターが適用され得る液体試料検査キットの液体試料検査具を示した断面図であって、同図(a)~(c)は、液体試料が検査される各工程を示したものである。
【
図2】同実施形態に係る濾過フィルターが適用され得る液体試料検査キットの容器本体及びその蓋の一部を断面視して示した側面図である。
【
図3A】液体試料検査キットにおいて同実施形態に係る濾過フィルターが適用された検体抽出ノズルの側面図である。
【
図3B】液体試料検査キットにおいて同実施形態に係る濾過フィルターが適用された検体抽出ノズルの底面図である。
【
図4】同実施形態に係る濾過フィルターを模式的に示した斜視図である。
【
図5】同実施形態に係る濾過フィルターの変形例を模式的に示した斜視図である。
【
図6】RGB比を用いて展開が不良であるか否かを判定する場合の、メンブレンの分割方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る濾過フィルターが用いられる液体試料検査方法及び液体試料検査キットについて、詳細に説明する。図中の各構成要素の寸法、比率は、実際の各構成要素の寸法、比率を表すものではない。
【0012】
<液体試料検査方法>
本実施形態に係る濾過フィルターは、例えば、被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したクロマト媒体を有する液体試料検査具(いわゆるテストストリップ)を用いて液体試料中の被検出物を検出する、いわゆるイムノアッセイ法で、検体を調製した液体試料を濾過フィルターによって濾過した後、前記液体試料検査具上で該液体試料中の被検出物を検出又は定量する液体試料検査方法に用いられる。
【0013】
イムノアッセイ法とは、いわゆるサンドイッチ法として総称される測定原理を利用するものが一般的であり、被検出物、被検出物に特異的に結合する捕捉物質、被検出物に特異的に結合する標識物質の3種の複合体をクロマト媒体上に形成させて、標識物質を検出し、前記複合体すなわち被検出物を検出又は定量する方法である。被検出物と捕捉物質と標識物質との間の反応としては、抗原抗体反応、リガンドとレセプターとの結合反応等が挙げられる。
【0014】
<液体資料検査キット>
上記方法を用いた液体試料検査キットは、
図1に示す、被検出物を捕捉する物質Qを結合させたクロマト媒体5を有する液体試料検査具1と、
図2、
図3A、Bに示す検体抽出ノズル9を具備した検体抽出容器2とを備えたものである。検体抽出ノズル9は、液体試料を濾過して
図1に示す液体試料検査具1上に滴下する。検体抽出ノズル9の濾過フィルター3は、有機ポリマーの発泡性樹脂材料よりなり、連通気孔を有する樹脂製フィルター(以下、「発泡性樹脂フィルター」ということがある。)3aを備えて構成されている。後述する濾過フィルター3が、本発明に係るものである。
【0015】
(液体試料検査具1)
図1は、液体試料検査具1を長手方向に直交する方向から視た断面図であり、同図(a)~(c)は、液体試料検査具1により被検出物Pを検査する各工程を模式的に示している。液体試料検査具1は、
図1(a)に示すように、短冊上に形成された基板上の一端側から順に、調製された検体である液体試料Sを滴下するためのサンプルパッド4、被検出物Pに特異的に結合する抗体等の捕捉物質Qが結合したクロマト媒体5、及び吸収パッド6が配列され、更にサンプルパッド4とクロマト媒体5との間に介在させるコンジュゲートパッド7とを備えて構成されている。ここで、液体試料検査具1は、裏側片と検査結果を視認できる判定表示窓を有する表側片とを備え、これらを嵌合等させて互いに組み付けた棒状の容器にサンプルパッド4、クロマト媒体5、吸収パッド6及びコンジュゲートパッド7を収容して使用することができる。また、裏側片と表側片とは一体成形されていてもよい。容器としてはプラスチック、エラストマー等の樹脂材料など、公知の素材が使用でき、透明性、不透明性、成形性、強度等、目的に応じ適宜選択可能である。
【0016】
イムノアッセイ法には、フロースルー方式とイムノクロマト方式(ラテラルフロー方式)が知られている。フロースルー方式は被検出物Pを含む溶液と、被検出物に特異的に結合する標識物質とを、被検出物Pと特異的に結合する捕捉試薬が塗布されたクロマト媒体5に対して垂直方向に通過させ、被検出物Pに特異的に結合する捕捉物質Q、被検出物P、標識物質の複合体を膜上に形成させて、標識を検出あるいは定量することで、被検出物の検出又は定量を行う。イムノクロマト方式は、同様なクロマト媒体5を用い、被検出物Pを検出する原理はフロースルー方式と同様であるが、該クロマト媒体5に対して被検出物Pを含む液体試料Sを水平方向に展開させる点でフロースルー方式と異なる。2種類の方法のうち、簡便さ、迅速さの面からイムノクロマト方式がより好ましい。
なお、イムノクロマト方式においては、クロマト媒体5上に、被検出物Pに特異的に結合する検出試薬である標識物質を滴下等により添加し、捕捉試薬、被検出物及び標識物質の複合体を形成させる方法と、被検出物Pに特異的に結合する抗体等の捕捉物質Qに結合した標識化合物を含むコンジュゲートパッド7をあらかじめ液体試料検査具1に組み込んでおく方法とがある。
このような液体試料検査具1としては、一般にイムノクロマト方式として知られる方法を利用するものであることが、展開不良を解消するという効果からも好ましい。
【0017】
本明細書に係る液体試料検査において、用いた液体試料のメンブレン(クロマト媒体)の検出領域における展開が不良であるか否かの判定は、以下の目視による方法によって確認することができる。
【0018】
(目視による判定方法)
被検出物を含む液体試料がクロマト媒体のメンブレン中を展開後、メンブレン上の目的のバンドが検出される領域(検出領域)まで展開されているかを目視で確認する。
【0019】
目視により、展開が不良であるか否かを確認する場合には、目的のバンドが検出され、かつ、メンブレン上のその他の領域がほとんど染色されないと、展開が良好であると判定する。一方、メンブレン上の目的のバンドが検出される領域の手前までが濃く染色されており、かつ、目的のバンド検出領域まで展開されていない場合や、メンブレン全体が染色されており、かつ、目的のバンドが検出される領域付近が濃くブロードに染色される場合には、展開が不良であると判定する。
【0020】
上記目視によって判定した展開が不良であるか否かは、例えば、以下のRGB比を用いて数値化して確認することもできる。
【0021】
(RGB比を用いた判定方法)
メンブレン上の領域のうち、バンドの視認性に影響する1又は2以上の領域につき、各領域の色を抽出し、RGB値の解析を行い、RGB比を算出する。
RGB比を算出することによって展開が不良であるか否かを確認する場合につき、
図6を用いて具体的に説明する。
まず初めに、メンブレン26を、
図6のように、バンドを含む1又は2以上の領域(
図6では、7~9の3領域)とそれ以外の領域とに分割する。
なお、メンブレンの分割方法は、バンドを含む少なくとも1箇所を設定し、フィルターメンブレンの検出領域のサイズによって、適宜、分割数を設定できる。
次に、バンドの視認性に影響する領域(
図6では、7~9の3領域)について、各領域の色を抽出し、RGB値の解析を行う。
各領域のRGB値の測定は、市販のRGB測定装置或いはソフトを用いて行えばよく、例えば、カラーアナライザーRGB-1002((株)佐藤商事製)等の装置や、汎用のペイントソフト(Microsoft Paint(マイクロソフト社製)、Photoshop(Adobe社製)、Corel Painter(Corel社製)等)を用いることができる。なお、RGB測定装置を用いない場合は、判定部分の画像をPCに取り込み、画像解析ソフトを用いてRGB値を算出することができる。
上記で測定した各領域のRGB値から、RGB比を求める。
RGB比は、R値-(G値とB値の平均値)により求めることができる。
RGB比が低いほど、色味は白色に近づくため、展開が良好であると考えられる。また、RGB比が高いほど、色味は赤色に近づくため、展開が不良であると考えられる。本発明に係る液体試料検査方法においては、RGB比が15以下であると、展開が良好であると判断し、15より大きい場合には、展開が不良であると判断することができる。
【0022】
クロマト媒体5には、紙やガラス繊維ろ紙、ニトロセルロースなどの多孔質物質が挙げられ、特に好ましい原料としてはニトロセルロースが挙げられる。上記クロマト媒体5の平均孔径は0.5~50μmであることが多く、10~30μmが好ましい。
【0023】
(検体抽出容器2)
検体抽出容器2は、
図2に示す、検体抽出液Wに検体を抽出させた液体試料Sを収容する容器本体10と、容器本体10に連結させて用いる
図3A、Bに示す検体抽出ノズル9とを備えたものである。
【0024】
図2に示すように、容器本体10は、一端側が開口し他端が閉塞した有底筒状に形成されており、開口端部10aに蓋11が被冠できるようになっている。
容器本体10は、合成樹脂により形成されており、開口端部10aの外周面には雄螺子部12が形成されるとともに、雄螺子部12の終端側(容器本体10底部側)近傍に外方に張り出したフランジ部13を有している。また、検査時において、検体抽出容器2から液体試料検査具1に検体抽出液Wを滴下させる操作を伴うことを考慮すると、容器本体10は弾性変形可能な素材を含み構成されていることが好ましい。弾性変形可能な素材としては、弾力性と可撓性とを有する素材であって、耐薬性、成形性を有するものであればよく、臭気を伴わないものがより好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー等が例示される。これらの樹脂を組み合わせてもよい。熱可塑性樹脂の場合、例えば、オレフィン系樹脂の場合、熱可塑性樹脂エラストマー、水素添加スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーと組み合わせることで成形性が向上することが知られている。熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、EVA等が挙げられる。これらは、2種類以上を組み合わせたポリマーブレンド、ポリマーアロイでもよい。
【0025】
蓋11は、円形の天板部11aと天板部11aの外縁から立ち上がる側壁部11bを有しており、側壁部11bの内壁には容器本体10の雄螺子部12に螺合自在な雌螺子部14が形成され、容器本体10に対して蓋11が着脱自在とされている。
【0026】
図3Aに示すように、検体抽出ノズル9は、その基端部9a側を容器本体10の開口端部10aに嵌着させて、ノズル先端9b側から検体を含ませた液体試料Sを滴下させるものである。この検体抽出ノズル9は、容器本体10の開口端部10aに液密に内嵌される嵌合部15と、開口端部10aの端縁に係合させるフランジ16と、液体試料Sの量を絞りつつ流動させ液体試料Sを好適に滴下できるようにしたノズル部17とを備えて形成されているとともに、嵌合部15内に濾過フィルター3を備えている。
【0027】
ノズル部17の内径17aは、該嵌合部15の内径15aよりも僅かに小径に形成されて嵌合部15との間に幅狭の段部19を有し、該濾過フィルター3を嵌合部15内に配置した際に濾過フィルター3の周縁部18を段部19に係止できるようになっている。
図3A、Bに示すように、ノズル部17の内孔は、断面略円形に形成されており、段部19から先端に向かって漸次縮径した第1テーパ部20と、第1テーパ部20の先端側でノズル部17先端に向かって内壁が漸次拡開するように形成された第2テーパ部21とを備えており、更に第1テーパ部20と第2テーパ部21の壁面には、段部19からノズル部17先端に向かってそれぞれ形成された突条22A、22Bが等間隔に環状配置されている。
【0028】
濾過フィルター3は、
図4に示すように、多孔体の発泡性樹脂フィルター3aが円板形状に形成されているとともに、
図3Aに示す検体抽出ノズル9の嵌合部15内径よりも僅かに大寸法となっている。
また、容器本体10内の検体抽出液Wに取り込まれた鼻ぬぐい液等の検体は、鼻腔等の検体採取部位から剥離した細胞や分泌物等の夾雑物を含んでいる。より正確に検査を行うには、夾雑物を含む検体から夾雑物を除去する必要がある。濾過フィルター3は、その内部には所定の孔径を有する気孔25が多数形成されており、
図1に示す液体試料検査具1のクロマト媒体5において夾雑物による誤判定をすることを防止し得るように、所期の被検出物Pを好適に濾過できるようになっている。
【0029】
濾過フィルター3の最小孔径又は保留粒子径は、クロマト媒体5の孔径以下であることが好ましい。すなわち、例えば用いるクロマト媒体5の孔径が10μm以上の場合、濾過フィルター3の少なくとも1つは、気孔25の孔径が10μm以下であることが好ましい。
【0030】
濾過フィルター3は精密濾過用としても、粗濾過用としても用いることができるが、少なくとも1種類の濾過フィルター3の気孔25の孔径又は保留粒子径はクロマト媒体5の孔径以下であり、10μm以下が好ましい。
【0031】
本発明及び本願明細書において、「孔径」とは、フィルターの気孔25のうち最大の孔のことをいい、例えばバブルポイント法により測定することができる。また、「保留粒子径」とは、濾過フィルターを通過する粒子の直径の最大値のことをいい、これは、例えばJIS 3801、JIS Z 8901で規定される硫酸バリウムなどを自然濾過したときに漏洩粒子径の最大値により求める、あるいは、超純水(Milli-Q Water)にて希釈した一定粒子径のラテックス粒子を自然濾過し、濾過前後の溶液の吸光度から、粒子保留率を算出することにより求めることができる。保留粒子径は、実質的には濾過フィルターの孔径に相当する。
また、気孔率とは、空隙率ということもでき、全自動細孔径分布測定装置(水銀ポロシメーター)により測定される。
【0032】
発泡性樹脂フィルター3aの厚みは、0.05mm~35mmであればよく、0.1mm~10mmが好ましく、1mm~5mmであるのがより好ましい。
【0033】
発泡性樹脂フィルター3aは、比較的高い柔軟性を有していることが好ましい。このため、発泡性樹脂フィルター3aの気孔率は、70%以上が好ましく、70~98%がより好ましく、80%~98%がさらに好ましく、85%~98%がよりさらに好ましく、85%~95%であることが特に好ましい。また、本発明で用いる発泡性樹脂フィルター3aの孔径又は保留粒子径は、50~800μmが好ましく、50~300μmがより好ましく、50~100μmがさらに好ましい。
【0034】
発泡性樹脂フィルター3aの材料には、生体試料等に由来するタンパク質が吸着しづらい材料が用いられることが好ましい。このような材料の選定は、例えば、以下の方法で行う。アルブミンを生理食塩水に溶解させた疑似タンパク液を各材料で製造された発泡性樹脂フィルター3aに通し、発泡性樹脂フィルター3a通過前後の疑似タンパク液の波長が270~280nm付近の吸光度を測定する。測定された吸光度の差が所定の範囲内である材料をタンパク質が吸着しづらい材料として発泡性樹脂フィルター3aに用いればよい。
【0035】
発泡性樹脂フィルター3aには、例えば、以下の方法で製造される多孔体が用いられる。多孔体の製造方法は、粒状気孔形成材と水溶性高分子とを、上記水溶性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状気孔形成材が溶融しない温度で混練することによって、粒状混練物を形成させる第1混練工程と、上記粒状混練物と、非水溶性熱可塑性高分子とを、上記非水溶性熱可塑性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状混練物が溶融しない温度で混練する第2混練工程と、上記第2混練工程によって得られた混練物を、上記非水溶性熱可塑性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状混練物が溶融しない温度で、所定の形状に成形する成形工程と、上記成形工程によって得られた充実成形体を水に接触させることによって、上記充実成形体から上記粒状混練物を水中に溶出させる溶出工程と、を備えるものである。
【0036】
まず、多孔体の製造方法に用いる各材料について説明する。
粒状気孔形成材は、多孔体の気孔を形成するために配合されるものであり、上記の多孔体の製造方法によって、気孔を形成できるものであれば、特に限定されない。具体的には、後述する、水溶性高分子や非水溶性熱可塑性高分子より融点が高く、水溶性の粉状物であれば、特に限定されない。より具体的には、水溶性高分子や非水溶性熱可塑性高分子として用いる高分子によって異なるが、例えば、多価アルコールや尿素等の有機化合物、及び水溶性無機化合物等を含む粒状物等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ペンタエリスリトール、L-エリスリトール、D-エリスリトール、meso-エリスリトール、ピナコール等が挙げられる。また、上記水溶性無機化合物としては、具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。上記粒状気孔形成材は、この中でも、単独の組成からなる粉状物であってもよいし、2種以上含む粉状物であってもよい。また、単一の粉状物を用いてもよいし、2種以上の粉状物を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、上記粒状気孔形成材としては、ペンタエリスリトールを含む粒状物や水溶性無機化合物を含む粒状物であることが好ましい。そうすることによって、気孔率の高い多孔体を、より高い製造効率で製造することができる。このことは、まず、ペンタエリスリトールや水溶性無機化合物の融点が比較的高いことから、多孔体の製造工程における各温度条件を達成することが容易であることによると考えられる。さらに、ペンタエリスリトールを含む粒状物の場合、ペンタエリスリトールを含む粒状物を含有させた成形材料は、成形後の固化が速くなるので、充実成形体の冷却時間が短くなることにもよると考えられる。
【0038】
また、上記のペンタエリスリトールを含む粒状物としては、例えば、不純物を含むペンタエリスリトールからなる粒状物等が挙げられる。工業用に製造されているペンタエリスリトールは、不純物として、トリペンタエリスリトールやジペンタエリスリトール等を含み、ペンタエリスリトールの融点である260℃より低い温度で溶融し始める。また、不純物を含むペンタエリスリトールからなる粒状物が溶融し始める温度は、不純物の種類や含有量によって異なる。そして、上記ペンタエリスリトールを含む粒状物としては、例えば、220~240℃で溶融開始する粉状物が好ましく用いられる。
【0039】
また、上記の粒状気孔形成材の体積平均粒径が、3~600μmであることが好ましい。そうすることによって、好適な気孔径の気孔が形成された多孔体を製造することができる。このことは、水溶性高分子と粒状気孔形成材とを予め混練した粒状混練物が充実成形体から溶出された部分が気孔となるので、上記粒状気孔形成材の粒径が、多孔体に形成される気孔の気孔径に影響を与えることによると考えられる。なお、粒状気孔形成材の体積平均粒径は、一般的な粒度計で測定することができる。
【0040】
上記水溶性高分子は、上記粒状気孔形成材と予め混合して用いるものであり、具体的には、上記粒状気孔形成材より融点が低く、後述する非水溶性熱可塑性高分子より融点が高い水溶性高分子であれば、特に限定されない。具体的には、粒状気孔形成材の種類や、非水溶性熱可塑性高分子として用いる高分子によって異なるが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、エチレンオキシド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。上記水溶性高分子としては、上記各水溶性高分子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、上記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールであることが好ましい。そうすることによって、気孔率の高い多孔体をより安定に製造することができる。このことは、上記水溶性高分子として、ポリビニルアルコールを用いることによって、前述した水溶性高分子による作用を好適に発揮させることができるためであると考えられる。より具体的には、水溶性高分子を被覆した粒状気孔形成材である上記粒状混練物を、表面に被覆された水溶性高分子を介して連結した状態で、充実成形体内部だけでなく、表面付近にも均一に分散させることができるという作用を、好適に発揮させることができるためであると考えられる。
【0042】
また、上記水溶性高分子として用いられるポリビニルアルコールは、ケン化度が65~90モル%であることが好ましく、70~80モル%であることがより好ましい。また、上記ポリビニルアルコールは、重合度が300~1000であることが好ましく、500~700であることがより好ましい。また、上記水溶性高分子として用いられるポリビニルアルコールとしては、具体的には、例えば、熱溶融成形用ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0043】
上記非水溶性熱可塑性高分子は、製造する多孔体の基材となる樹脂であり、具体的には、上記粒状気孔形成材や上記水溶性高分子より融点が低い非水溶性の高分子であれば、特に限定されない。この非水溶性熱可塑性高分子には、非水溶性の、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーが含まれる。具体的には、上記粒状気孔形成材や上記水溶性高分子によっても異なるが、例えば、以下のようなもの等が挙げられる。なお、熱可塑性エラストマーとは、ゴム状弾性を示すソフトセグメント及び三次元網目の結び目となるハードセグメントから構成されるもので、常温ではゴム弾性を示し、高温で可塑化するものである。
【0044】
上記の非水溶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、エチレン系アイオノマー、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルイミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、ポリ3フッ化塩化エチレン、ポリアリレート、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリエステルアミド、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂としては、上記各熱可塑性樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記のポリアセタールは、オキシメチレン構造を単位構造に有するポリマーの一種であり、ポリオキシメチレン(POM)又はポリホルムアルデヒドとも呼ばれる。ポリアセタールは、例えば、ホルムアルデヒドが重合したホモポリマー(パラホルムアルデヒド)、及び、オキシメチレン構造とオキシエチレン単位とを単位構造に有する共重合体を含む。
【0046】
上記の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ニトリル系エラストマー、イソプレン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系エラストマー等が挙げられる。この中でも、ポリオレフィン系エラストマーが好ましい。
【0047】
上記ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン・ジエン(EPDM)とポリプロピレンとの共重合体等が挙げられる。また、上記ポリスチレン系エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエンとポリスチレンとの共重合体やポリイソプレンとポリスチレンとの共重合体等が挙げられる。また、上記ポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ナイロン6とポリエーテルとの共重合体等が挙げられる。また、上記ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートと高分子量ポリエチレンエーテルグリコールとの共重合体やポリブチレンテレフタレートと高分子量ポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体等が挙げられる。また、上記ウレタン系エラストマーとしては、例えば、短鎖グリコールが結合したジイソシアナートと長鎖ポリオールが結合したジイソシアナートとの共重合体等の親水性のもの等が挙げられる。
【0048】
また、上記熱可塑性エラストマーとしては、上記各熱可塑性エラストマーを単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、上記非水溶性熱可塑性高分子としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系エラストマーであることが好ましい。そうすることによって、気孔率の高い多孔体をより安定に製造することができる。このことは、まず、水溶性高分子と粒状気孔形成材とを予め混練した粒状混練物を好適に分散させることができることによると考えられる。また、ポリオレフィン系樹脂やポリオレフィン系エラストマーが、適度な疎水性を有し、水に対して溶解しないだけではなく、膨潤も好適に抑制できることにもよると考えられる。
【0050】
なお、上記非水溶性熱可塑性高分子としては、上記熱可塑性樹脂及び上記熱可塑性エラストマーを単独で用いてもよいが、上記熱可塑性樹脂と上記熱可塑性エラストマーとを組み合わせて用いてもよい。
【0051】
次に、多孔体の各製造工程について説明する。
【0052】
まず、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを、上記水溶性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状気孔形成材が溶融しない温度で混練する。そうすることによって、粒状混練物が形成される。得られた粒状混練物は、上記粒状気孔形成材に上記水溶性高分子が被覆された状態であると考えられる。なお、この工程が、第1混練工程に相当する。
【0053】
上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子との配合比は、上記粒状気孔形成材及び上記水溶性高分子の種類等によっても異なるが、例えば、質量比で、19:1~1:1であることが好ましく、6:1~8:5であることがより好ましい。上記水溶性高分子が、上記粒状気孔形成材に対して、少なすぎると、上記水溶性高分子を予め混合させる効果が少なくなり、気孔率の高い多孔体を好適に形成できなくなる傾向がある。このことは、上記水溶性高分子が上記粒状気孔形成材を充分に被覆することができないことによると考えられる。また、上記水溶性高分子が、上記粒状気孔形成材に対して、多すぎても、気孔率の高い多孔体を好適に形成できなくなる傾向がある。このことは、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを予め混練した粒状混練物が、上記充実成形体の中で均一に分散しにくくなることによると考えられる。
【0054】
また、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを予め混練した粒状混練物の配合量、すなわち、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子との合計量は、製造しようとする多孔体の気孔率(空隙率)に応じて、適宜選定することができる。すなわち、配合する粒状混練物の含有量により気孔率を制御することができる。具体的には、後述する、充実成形体中の、上記粒状混練物の含有割合を、所望の気孔率とほぼ同じ体積率とすることによって、所望の気孔率の多孔体を製造することができる。より具体的には、気孔率50体積%の多孔体を製造する場合、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを予め混練した粒状混練物を、充実成形体の体積に対して、50体積%以上となるように含有させる必要がある。
【0055】
よって、気孔率が50体積%以上の多孔体が好ましいので、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを予め混練した粒状混練物を、充実成形体の体積に対して、50体積%以上であることが好ましく、60~85体積%であることがより好ましい。また、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを予め混練した粒状混練物が多すぎると、後述する、上記粒状混練物と上記非水溶性熱可塑性高分子との混練物を溶融しても、成形に好適な流動性を確保できなくなる傾向がある。よって、気孔率の高い多孔体を製造できない傾向がある。
【0056】
また、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子との混練は、上記水溶性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状気孔形成材が溶融しない温度で混練することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、オープンロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機等の装置を使用した混練等が挙げられる。また、上記混練の前に、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを、ヘンシェルミキサー、V字型混合機、ボールミル、リボンブレンダー、タンブルミキサー等の混合機を用いて予め混合してもよい。
【0057】
次に、上記粒状混練物と、上記非水溶性熱可塑性高分子とを、上記非水溶性熱可塑性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状混練物が溶融しない温度で混練する。なお、この工程が、第2混練工程に相当する。そして、この混練によって得られた混練物を、成形材料として、上記非水溶性熱可塑性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状混練物が溶融しない温度で、所定の形状に成形する。そうすることによって、充実成形体が得られる。なお、この工程が、成形工程に相当する。上記のような工程によって得られた充実成形体は、隣り合う上記粒状混練物が、表面に被覆されている水溶性高分子を介して連結された状態で、均一に分散されたものであると考えられる。さらに、上記粒状混練物は、水溶性高分子で被覆されていることから、得られた充実成形体の内部だけではなく、表面付近にも均一に分散されていると考えられる。
【0058】
上記非水溶性熱可塑性高分子の配合量は、所望の気孔率によって異なるが、例えば、50体積%以下であることが好ましく、15~40体積%であることが好ましい。
【0059】
また、ここでの混練(第2混練工程での混練)は、上記非水溶性熱可塑性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状混練物が溶融しない温度で混練することができれば、特に限定されない。具体的には、第1混練工程と同様、例えば、オープンロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機等の装置を使用した混練等が挙げられる。また、上記混練の前に、上記粒状混練物と上記非水溶性熱可塑性高分子とを、ヘンシェルミキサー、V字型混合機、ボールミル、リボンブレンダー、タンブルミキサー等の混合機を用いて予め混合してもよい。
【0060】
なお、上記成形材料には、上記粒状気孔形成材と上記水溶性高分子とを予め混練した粒状混練物と、上記非水溶性熱可塑性高分子とを含有していればよいが、必要に応じて、高分子改質剤等の改質剤、滑剤、老化防止剤、可塑剤、熱安定剤、増粘剤、難燃剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、強化材等の添加剤を添加していてもよい。
【0061】
また、上記成形材料(第2混練工程によって得られた混練物)を用いた成形は、上記非水溶性熱可塑性高分子の少なくとも一部が溶融し、上記粒状混練物が溶融しない温度で成形できれば、特に限定されない。具体的には、例えば、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法などの成形方法等が挙げられる。なお、温度条件以外の成形条件は、使用する各成分や配合比率等に応じて、適宜、調整すればよい。
【0062】
また、上記成形が、射出成形法によって、上記充実成形体を成形するものであることが好ましい。そうすることによって、所望の形状の多孔体を製造することができる。また、射出成形法は、様々な形状に成形することができるが、粒状気孔形成材を含有した成形材料を用いた場合、上述したような不具合が発生しやすかった。しかしながら、本実施形態に係る多孔体の製造方法によれば、粒状気孔形成材を含有した成形材料を用いても、気孔率の高い多孔体を好適に製造することができる。
【0063】
最後に、上記成形によって得られた充実成形体を水に接触させることによって、上記充実成形体から上記粒状混練物を水中に溶出させる。そうすることによって、上記粒状混練物が、表面に被覆されている水溶性高分子を介して連結された状態で均一に分散されていると考えられるので、連通気孔が均一に形成できると考えられる。さらに、上記粒状混練物は、上述したように、充実成形体の内部だけではなく、表面付近にも均一に分散されていると考えられるので、上記連通気孔が、表面にも露出するように好適に形成されると考えられる。なお、この工程は、溶出工程に相当する。
【0064】
また、上記のような水の接触は、上記充実成形体から上記粒状混練物を水中に溶出させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、上記充実成形体を水に浸漬させて、所定時間放置する方法、上記充実成形体に水を噴射させる方法、及び上記充実成形体を水を用いて洗浄する方法等が挙げられる。この中でも、上記充実成形体を水に浸漬させて、所定時間放置する方法が好ましい。また、上記充実成形体に接触させる水の温度は、上記非水溶性熱可塑性樹脂の融点以下であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、30~60℃であることが好ましい。
【0065】
上記のような製造方法によって、発泡性樹脂フィルター3aとして用いることが可能な多孔体を形成することができる。そして、得られた多孔体は、気孔率が高いだけではなく、上述したように、連通気孔が均一に形成されていると考えられる。よって、得られた多孔体は、いわゆる、連続気泡タイプの多孔体である。
【0066】
上記特許文献1に記載のイムノアッセイキットのように、濾過フィルター3として強剛性フィルターを用いた場合には、濾過フィルター3は検体抽出ノズル9に形成された嵌合部15内に嵌入させる際に嵌合部15内の形状に合わせて弾性変形しない。したがって、液体試料を確実にフィルタリングするためには、強剛性フィルターの寸法と嵌合部15内の寸法とを高精度に合わせて強剛性フィルターを嵌合部15内に密に嵌着させなければならないが、上記強剛性フィルターでは、嵌合部15内と強剛性フィルターとの間に物理的な寸法誤差が生じやすいため該強剛性フィルターの厚みを持たせる必要が生じ、全体として液体試料のフィルタリングに時間が掛かってしまうという問題があった。
また、嵌合部15内と強剛性フィルターとの間の物理的な寸法誤差を略無くして強剛性フィルターを作製したとしても、強剛性フィルターはその硬さゆえに、嵌合部15内に強剛性フィルターを挿入配置させ難く、検体抽出ノズル9を適切に製造し難いという問題があった。
一方で、検査操作時においても、検体溶液の前処理の際、圧力がかかりすぎて操作性が低下したり、フィルターが抜けるおそれがあるなど、検査従事者の操作性を考慮する上で改良すべき課題もあった。
【0067】
これに対して、本実施形態においては、濾過フィルター3が柔軟性を有することによって、
図3Aに示すように、嵌合部15内に挿入配置する際に嵌合部15の内径に合わせて弾性変形(収縮)し、
図4に示す濾過フィルター3の平板面3tが段部19を完全に覆うように配置された状態で弾性復帰して、濾過フィルター3の周面23が嵌合部15の内壁面24に付勢しながらフィットするようになっている。
すなわち、検体抽出容器2の濾過フィルター3は、柔軟性を有しているため、検体抽出容器2内にフィットさせて配置することができる。したがって、濾過フィルター3の寸法と嵌合部15内の寸法とを高精度に整合させる工程を省いて濾過フィルター3を嵌合部15内に容易に配置することができ、検体抽出容器2ないし液体試料検査キットの製造コストを抑えることができるという効果を奏する。
また、嵌合部15内と濾過フィルター3との間に物理的な寸法誤差が生じにくいため、液体試料Sを確実に濾過フィルター3に通すことができる。したがって、濾過フィルター3を可及的に薄くしつつ確実に濾過配置することができ、液体試料Sの濾過を短時間で確実に行うことができるという効果を奏する。
【0068】
被検出物Pとしては、例えばインフルエンザウィルス、SARSコロナウィルス(SARS-COV、SARS-COV-2)、MERS-COV、RSウィルス、アデノウィルス、下痢症の原因微生物、肺炎マイコプラズマ、ロタウィルス、ノロウィルス等の病原微生物、若しくは該病原微生物由来のタンパク質等の物質又はそれらに対する抗体、生理活性物質の類、細菌等が産生する毒素、及び各種腫瘍マーカーを挙げることができる。上記の病原微生物若しくは該病原微生物由来のタンパク質等の物質又はそれらに対する抗体等を被検出物として用いる場合、特にインフルエンザウィルス、SARSコロナウィルス(SARS-COV、SARS-COV-2)、MERS-COV、アデノウィルス、肺炎マイコプラズマ及びノロウィルス等のように、急性症状を呈する可能性があり、短時間で特定する必要がある病原体の診断に、極めて有用である。
【0069】
検体は、生体試料としては鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻汁、咽頭拭い液、唾液、痰などの粘膜分泌物、便懸濁液、尿、血液成分、臓器抽出液、各種組織抽出液、又はこれらを適当な緩衝液によって希釈した希釈液等が挙げられる。
また、非生体試料を検体として用いることも可能である。生体試料を検体とした場合では、本発明は、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、咽頭拭い液、又は便懸濁液を検体とした場合に極めて有用である。
【0070】
被検出物Pを捕捉するための捕捉物質Qは、被検出物Pと特異的反応により結合して複合体を形成する物質である。従って、一般には被検出物Pが細菌、ホルモン、ウィルス等およびこれらに由来する物質、その他バイオマーカー等の場合には、これらに対し特異的に結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。このような捕捉物質Qを上述したクロマト媒体表面に結合させる方法としては、タンパク質をニトロセルロースメンブレン等に固定するための公知の方法で行うことができる。捕捉物質Qが結合したクロマト媒体5の調製は、例えば、捕捉物質Qを緩衝液等に希釈した溶液をクロマト媒体に吸着してその後乾燥することにより行われる。捕捉物質Qは、例えばスポット状やライン状に固定すればよい。
【0071】
標識物質とは、被検出物に特異的に結合し、複合体を形成した後に何らかの手段で検出可能なように標識されたものである。一般的には、捕捉試薬について述べたものと同じものが酵素や貴金属コロイド等で標識化されたものが挙げられる。例えば、被検出物Pがウィルス等の抗原物質である場合には、該ウィルスに対する抗体であって、貴金属コロイド等で標識化された抗体が挙げられる。標識物質としては、具体的には、酵素、蛍光発光性標識、放射性同位元素、貴金属コロイド、着色ラテックス等が挙げられる。標識物質は、液体試料を液体試料検査具1に添加した後に、液体試料検査具1に添加してもよく、またあらかじめ液体試料検査具1に組み込んでおいてもよい。あらかじめ液体試料検査具1に組み込まれる場合、標識物質はコンジュゲートパッド7と呼ばれる形で、パッドに含まれた状態で組み込まれる。標識物質を含むパッドには、例えば、セルロース、ガラス繊維などでできた不織布等が用いられる。
【0072】
検体抽出液Wとは、患者や環境等から採取した被検出物を含む可能性がある検体から、被検出物を抽出し懸濁するための溶液である。検体を検体抽出液Wにより抽出又は懸濁した抽出液が、液体試料として液体試料検査具1に滴下等により添加されて、液体試料検査具1に供される。
【0073】
患者や環境から採取した検体の中には、検体抽出液Wの塩組成やpHに対して影響を与える物質が含まれる可能性がある。性状が変化した検体抽出液Wを用いた場合、被検出物の検出に悪影響を与える可能性があるため、検体抽出液Wには、通常、塩及びpHを一定に維持するための緩衝剤が含まれる。緩衝液としては、免疫学的試験に通常使用される緩衝液等を使用することができ、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッド緩衝液等が例示できる。さらに検体抽出液Wには特異的な凝集反応を阻害しない範囲で非特異反応を防止することを目的として界面活性剤を含有させることが可能である。界面活性剤としては、特に限定されず、公知の界面活性剤が使用できる。具体的には、Briji35、ドデシル-β-D-マルトシド、オクチル-β-D-グルコシド、トリトンX-100、CHAPS、Zwittergent3-12、ドデシル硫酸ナトリウム、Tween20、Tween80、ノニデットP40等が例示できる。これらは二種以上混合して使用することもできる。
【0074】
検体抽出液Wにはその他、非特異反応を防止することを目的として、ウシ血清アルブミン、イムノグロブリン、カゼイン等のタンパク質、グリシン等のアミノ酸、ウサギやマウス等の血清等を含有させることも可能である。
【0075】
(変形例)
上記では、濾過フィルター3が発泡性樹脂フィルター3aで構成される場合を説明したが、濾過フィルター3は、上述した発泡性樹脂フィルター3aに加え、例えば、
図5に示したように、ガラス繊維製フィルター3bを備えていてもよい。
【0076】
ガラス繊維製フィルター3bの厚みは、0.05mm~35mmであればよく、0.1mm~10mmが好ましく、1mm~5mmであるのがより好ましい。濾過フィルター3が2種類以上の柔軟性を持つフィルターを組み合わせて作製された場合、フィルター全体の厚みは0.1~50mmが好ましく、0.5~30mmがより好ましく、1~10mmがさらに好ましい。なお、発泡性樹脂フィルター3aと、ガラス繊維製フィルター3bとの厚みは、
図5に示した比率となるものに限定されるものではない。
【0077】
濾過フィルター3が、ガラス繊維製フィルター3b及び発泡性樹脂フィルター3aから形成されている場合、濾過フィルター3を構成するガラス繊維製フィルター3bは、1枚であってもよく、同種類又は異種類のガラス繊維製フィルター3bを2枚以上組み合わせてもよい。同様に、濾過フィルター3を構成する発泡性樹脂フィルター3aも、1枚であってもよく、同種類又は異種類の発泡性樹脂フィルター3aを2枚以上組み合わせてもよい。
【0078】
ガラス繊維製フィルター3bは、孔径又は保留粒子径が2.5μm以上、好ましくは2.5~3.5μmとなるようにガラス繊維を重ねたものである。本発明で用いられるガラス繊維製フィルター3bは、孔径又は保留粒子径が比較的大きいため、柔軟性を有している。濾過フィルター3が備えるガラス繊維製フィルター3bの厚みは特に制限はないが、濾過性と柔軟性の点から、200μm~1500μmであることが好ましい。
【0079】
また、本発明において用いられるガラス繊維製フィルター3bの空隙率は、40%から90%の範囲内であることが好ましい。ガラス繊維製フィルター3bの空隙率が40%以上であることにより、液体試料中の異物などにより目詰まりが生じ難く、また、検体が生体試料の場合には、生体試料の吸着が生じた場合に目詰まりし難くなり、連続測定を行った場合にも、目詰まりによるフィルターの濾過圧力の上昇を抑制できる。また、ガラス繊維製フィルター3bの空隙率が90%以下であることにより、フィルター内における液体試料の過度の拡散を抑制でき、より正確な測定が可能になる。また、フィルターに適度な強度を備えさせられるため、フィルターの取り扱い時や測定時の液体移動相の圧力などによる破損を抑制し得る。
【0080】
発泡性樹脂フィルター3aは、ガラス繊維製フィルター3bを保護し、濾過圧力による破損から防止する機能備える。このため、発泡性樹脂フィルター3aは、ガラス繊維製フィルター3bの全面を覆う必要はなく、Oリング状等のように、ガラス繊維製フィルター3bの一部のみを覆うように積層させてもよい。なお、発泡性樹脂フィルター3aは、濾過フィルターとしても機能し得るため、ガラス繊維製フィルター3bの全面を覆うように形成させることが好ましい。
【0081】
また、濾過フィルター3は、3種類以上のフィルターを組み合わせて作製されたものであってもよい。
濾過フィルター3に孔径又は保留粒子径の異なるものをいくつか組み合わせる場合は、孔径又は保留粒子径の大きなフィルターを上流側(容器本体10側)に、小さなフィルターを下流側(ノズル部17側)に、両フィルターが重なるように配置することが、濾過時における液体試料Sの目詰まりを回避する上で好ましい。例えば、2つのフィルターを組み合わせる場合、1段目のフィルターに孔径又は保留粒子径が大きいフィルターを用い、2段目のフィルターに孔径が小さいフィルターを用いることが好ましい。
ここまで、本発明の一実施形態に係る濾過フィルターが用いられる液体試料検査方法及び液体試料検査キットについて説明した。
【0082】
<液体試料検査キットの使用方法>
次に、本実施形態に係る濾過フィルターが適用された液体試料検査キットの使用方法と作用について、インフルエンザウィルス感染の診断を行うウィルス診断キットを例として説明する。
液体試料検査キットを用いてインフルエンザウィルスの有無を検査するにあたっては、まず、検体採取器具(不図示)として例えば綿棒を用い、綿棒を鼻腔内に挿入して鼻甲介を数回擦るようにして粘膜表皮を採取する。
【0083】
粘膜表皮の採取に合わせて、
図2に示す蓋11を容器本体10から取り外し、検体を採取した綿棒を容器本体10内の検体抽出液Wに浸漬する。そして、容器本体10の外側から綿棒を数回つまんだり上下させたりして検体抽出液Wに綿棒を十分に浸透させた後、検体抽出液Wをしごく様に綿棒を容器本体10から引き抜く。
【0084】
その後、
図3Aに示すように、上記容器本体10の開口端部10aに検体抽出ノズル9の嵌合部15を内嵌させて液体試料を滴下できる検体抽出容器2とする。
そして、検体抽出容器2のノズル先端9b側を下方に向けて
図2に示す容器本体10の中間部(胴部)10bを把持すると、液体試料が容器本体10から検体抽出ノズル9に向かって流動し、嵌合部15に設置された濾過フィルター3を通る。
【0085】
このようにして液体試料Sは、濾過フィルター3によって濾過されて検体抽出ノズル9のノズル部17先端に移動するので、更に容器本体10の胴部10bを強く把持することで、液体試料Sを
図1(a)に示す液体試料検査具1のサンプルパッド4上に滴下することができる。
【0086】
図1(a)に示すように、サンプルパッド4に液体試料Sが添加されると、液体試料Sは、同図(b)に示すように、コンジュゲートパッド7に浸透しつつ該パッド7に担持された特異抗体と反応しながら同図(c)に示すようにクロマト媒体5に浸透する。そして、液体試料Sに被検出物Pである抗原が存在していると、この抗原とクロマト媒体5に固定された抗体とが抗原抗体反応を起こしてクロマト媒体5上に着色標識が現れる。そのため、この着色標識を、クロマト媒体5の判定領域において視認することにより検査結果を知ることができる。また、クロマト媒体5に浸透した余分な液体試料Sは、吸収パッド6によって吸収される。この際、吸収パッド6が着色されるため、この着色度合を液量確認領域において視認することにより液体試料の過不足を確認することができる。
【0087】
以上のように、本発明の検体抽出容器2及び液体試料検査キットによれば、濾過フィルター3が柔軟性を有しているため、該濾過フィルター3を検体抽出ノズル9の嵌合部15内にフィットさせて配置することができる。したがって、濾過フィルター3の径寸法と嵌合部15の内径寸法とを高精度に合わせる工程を省いて濾過フィルター3を嵌合部15内に容易に配置することができ、検体抽出容器2ないし液体試料検査キットの製造コストを抑えることができるという効果が得られる。
【0088】
また、濾過フィルター3を嵌合部15の内壁に付勢させた状態で配置することができ、検体抽出ノズル9の嵌合部15と濾過フィルター3との間に物理的な寸法誤差が生じ難いため、液体試料Sを確実に濾過フィルター3によって濾過することができる。したがって、濾過フィルター3を可及的に薄くしつつ、液体試料Sの濾過を短時間で確実に行うことができるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本実施形態に係る濾過フィルター3は、細菌やウィルスの診断キットに適用可能である。本実施形態に係る濾過フィルター3を用いることで、検体中の被検出物を、イムノアッセイ法により、展開不良を起こすことなく、精度よく検出することができるため、例えば、細菌やウィルス等の病原体の感染、妊娠の有無、血糖値の測定等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 液体試料検査具
2 検体抽出容器
3 濾過フィルター
3a 樹脂製フィルター(発泡性樹脂フィルター)
3b ガラス繊維製フィルター
5 クロマト媒体
9 検体抽出ノズル
P 被検出物
Q 捕捉物質
S 液体試料
W 検体抽出液