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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170518
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】フロート
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20200101AFI20221102BHJP
   B63B 35/34 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076703
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏史
(57)【要約】
【課題】環境温度変化による内部の気体の膨張又は収縮に伴うフロート本体の変形を抑制するための通気孔の設置場所の自由度がより高いフロートを提供する。
【解決手段】本発明によれば、フロートであって、内部に中空部を有するフロート本体を備え、前記フロート本体は、表面に貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記フロートの外部に露出しているか、又は前記貫通孔に通気部材の少なくとも一部が挿入されており、前記貫通孔が前記フロートの外部に露出している場合において、前記中空部は前記貫通孔を介して前記フロートの外部の大気と連通し、前記貫通孔に前記通気部材の前記少なくとも一部が挿入されている場合において、前記中空部は前記通気部材を介して前記大気と連通する、フロートが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートであって、
内部に中空部を有するフロート本体を備え、
前記フロート本体は、表面に貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は、前記フロートの外部に露出しているか、又は前記貫通孔に通気部材の少なくとも一部が挿入されており、
前記貫通孔が前記フロートの外部に露出している場合において、前記中空部は前記貫通孔を介して前記フロートの外部の大気と連通し、
前記貫通孔に前記通気部材の前記少なくとも一部が挿入されている場合において、前記中空部は前記通気部材を介して前記大気と連通する、フロート。
【請求項2】
請求項1のフロートであって、
前記貫通孔が前記フロートの外部に露出している場合において、
前記大気の側に開口する前記貫通孔の開口部の開口面は、水平面に対して傾斜している、フロート。
【請求項3】
請求項1に記載のフロートであって、
前記通気部材は、前記通気部材の前記一部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔に対して前記大気の側に配置される第1部分と、前記貫通孔に対して前記中空部の側に配置される第2部分とを有し、
第1部分には、前記大気の側に開口する第1開口部が形成され、
第2部分には、前記中空部の側に開口する第2開口部が形成され、
前記通気部材の内部には、第1開口部と第2開口部とを接続する連通路が形成される、フロート。
【請求項4】
請求項3に記載のフロートであって、
第2部分は、雄ネジ部である、フロート。
【請求項5】
請求項3に記載のフロートであって、
第2部分は、第1部分から突出するように形成された突出部であり、
前記突出部は、先端側にテーパ部を備え、
前記テーパ部は、前記先端に向かって先細る形状である、フロート。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れか1つに記載のフロートであって、
前記連通路は、その中途において屈曲している、フロート。
【請求項7】
請求項3から請求項6の何れか1つに記載のフロートであって、
第1開口部の開口面は、水平面に対して垂直であるか、又は下方を向いている、フロート。
【請求項8】
請求項3から請求項7の何れか1つに記載のフロートであって、
前記通気部材の第1部分は、前記通気部材が前記貫通孔に挿入された状態において前記フロート本体の表面に沿って張り出すように形成された平板部であり、
第1開口部は、前記平板部の側面に形成される、フロート。
【請求項9】
請求項3から請求項8の何れか1つに記載のフロートであって、
前記通気部材の第1部分は、端面が傾斜面で切断された円筒形状を有する切断円筒部を備え、
第1開口部は、前記傾斜面上に形成される、フロート。
【請求項10】
請求項9に記載のフロートであって、
前記通気部材の第1部分は、前記切断円筒部の外面から張り出すように形成されたフランジ部をさらに備える、フロート。
【請求項11】
請求項3から請求項10の何れか1つに記載のフロートであって、
前記通気部材は、ゴム製である、フロート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートに関する。
【背景技術】
【0002】
水上に浮揚させて使用するフロートは、池、湖、及び海等への太陽光発電用のソーラパネルの設置、足場の設置等の種々の用途に用いられている。このようなフロートとして、設置に伴う施工及び維持管理の容易性、軽量性、耐久性、及びコストの面から内部に中空部を有する合成樹脂製のものが好適に用いられる。一方、中空部を有するフロートは、水上での使用時に外部環境の温度変化に伴い内部の気体が膨張又は収縮し、変形が生じる場合がある。変形が生じると、フロート上に設置されたソーラパネルの落下や足場の損傷等の問題が起こり得る。
【0003】
特許文献1には、中空に形成された合成樹脂製のフロート本体に天面に通気孔を有する突出部を設け、通気孔の外側に微多孔膜体を張り付けることで、環境温度変化により内部の気体が膨張又は収縮してもフロート本体の変形を抑制可能なフロートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-65354号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、通気孔を突出部の天面に設けているため、通気孔の設置場所は、突出部を形成可能な場所、例えば、フロート本体の上面や比較的面積の大きい側面等に限定される。従って、フロートを水上に浮揚させた際に水が掛かりにくい、若しくは溜まりにくい場所、又は作業者がフロート上を移動する際に踏みにくい場所を選定して通気孔を設置することが困難な場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、環境温度変化による内部の気体の膨張又は収縮に伴うフロート本体の変形を抑制するための通気孔の設置場所の自由度がより高いフロートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、フロートであって、内部に中空部を有するフロート本体を備え、前記フロート本体は、表面に貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記フロートの外部に露出しているか、又は前記貫通孔に通気部材の少なくとも一部が挿入されており、前記貫通孔が前記フロートの外部に露出している場合において、前記中空部は前記貫通孔を介して前記フロートの外部の大気と連通し、前記貫通孔に前記通気部材の前記少なくとも一部が挿入されている場合において、前記中空部は前記通気部材を介して前記大気と連通する、フロートが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るフロートは、フロート本体の表面に貫通孔が設けられ、フロートの外部に露出する貫通孔か、又は貫通孔に少なくとも一部が挿入された通気部材を介してフロート本体の中空部がフロート外部の大気と連通するように構成されている。このような構成では、通気孔を形成するうえで突出部を設ける必要がないため、突出部の形成が難しいフロート本体の傾斜面や面積の小さい側面等にも通気孔を設置可能であり、通気孔の設置場所の自由度を向上させることができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記貫通孔が前記フロートの外部に露出している場合において、前記大気の側に開口する前記貫通孔の開口部の開口面は、水平面に対して傾斜している。
好ましくは、前記通気部材は、前記通気部材の前記一部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔に対して前記大気の側に配置される第1部分と、前記貫通孔に対して前記中空部の側に配置される第2部分とを有し、第1部分には、前記大気の側に開口する第1開口部が形成され、第2部分には、前記中空部の側に開口する第2開口部が形成され、前記通気部材の内部には、第1開口部と第2開口部とを接続する連通路が形成される。
好ましくは、第2部分は、雄ネジ部である。
好ましくは、第2部分は、第1部分から突出するように形成された突出部であり、前記突出部は、先端側にテーパ部を備え、前記テーパ部は、前記先端に向かって先細る形状である。
好ましくは、前記連通路は、その中途において屈曲している。
好ましくは、第1開口部の開口面は、水平面に対して垂直であるか、又は下方を向いている。
好ましくは、前記通気部材の第1部分は、前記通気部材が前記貫通孔に挿入された状態において前記フロート本体の表面に沿って張り出すように形成された平板部であり、第1開口部は、前記平板部の側面に形成される。
好ましくは、前記通気部材の第1部分は、端面が傾斜面で切断された円筒形状を有する切断円筒部を備え、第1開口部は、前記傾斜面上に形成される。
好ましくは、前記通気部材の第1部分は、前記切断円筒部の外面から張り出すように形成されたフランジ部をさらに備える。
好ましくは、前記通気部材は、ゴム製である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るフロート10の上方から見た斜視図である。
図2】フロート10にソーラパネル50を設置した状態の前方から見た斜視図である。
図3】フロート10にソーラパネル50を設置した状態の後方から見た斜視図である。
図4】フロート10の上方から見た平面図である。
図5】フロート10の下方から見た斜視図である。
図6】支持部11が起立した状態の、フロート10の上方から見た斜視図である。
図7】フロート10の、図4のB-B線に沿った断面図である。
図8図1のA部の拡大図である。
図9図9Aは、第1通気部材70の上方から見た斜視図であり、図9Bは、第1通気部材70の下方から見た斜視図である。
図10】第1通気部材70の、図9AのC-C線に沿った断面図である。
図11】フロート10の、図8の平面Zに平行で第1通気部材70の中心軸を通る平面における部分断面図である。
図12図12Aは、第2通気部材80の上方から見た斜視図であり、図12Bは、第2通気部材80の下方から見た斜視図である。
図13】第2通気部材80の、図12AのD-D線に沿った断面図である。
図14】フロート10の、図8の平面Zに平行で第2通気部材80の中心軸を通る平面における部分断面図である。
図15図15Aは、第3通気部材90の上方から見た斜視図であり、図15Bは、第3通気部材90の下方から見た斜視図である。
図16図16Aは、第3通気部材90の上方から見た平面図であり、図16Bは、第3通気部材90の、図16AのE-E線に沿った断面図である。
図17】フロート10の、図8の平面Zに平行で第3通気部材90の中心軸を通る平面における部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.フロートの全体構成
図1に示す本実施形態のフロート10は、池、湖、川、海等の水上に浮揚させ、図2及び図3に示すように、その上面に矩形形状のソーラパネル50を設置し、又はフロート10自体をソーラパネルの設置やメンテナンス時の足場として利用するために用いられる。なお、本発明に係るフロート10は、上述の用途に限定されず、艀、浮橋、養殖用のいかだ等にも活用可能である。
【0013】
以下の説明において、フロート10の上下、前後、及び左右方向を、図1に示すように規定する。すなわち、フロート10を水上に浮揚させた際の鉛直方向をフロート10の上下方向とする。また、図2及び図3に示すようにフロート10にソーラパネル50を傾斜させて設置した状態において、ソーラパネル50の一対の長手側のうちの一方であってより上方に位置する前縁部51の側をフロート10の前方とし、当該一対の長手側のうちの他方であってより下方に位置する後縁部52の側をフロート10の後方とする。そして、フロート10を後方から見た際の左側をフロート10の左方向とし、右側をフロート10の右方向とする。
【0014】
図2及び図3に示すように、本実施形態のフロート10は、ソーラパネル50を、前方の前縁部51側が高くなるように水平面に対して傾斜させた状態で支持する。図1図4、及び図5に示すように、フロート10は、全体として略矩形形状を有し、例えば、溶融状態の筒状のパリソンを複数の分割金型で挟んで膨らますブロー成形によって製造される。成形材料として、各種の合成樹脂を用いることができるが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。なお、フロート10の製造方法は上述のブロー成形に限定されるものではなく、筒状のパリソンの代わりに2枚の溶融状態のシートを一対の分割金型の間に配置してシートと分割金型との間の密閉空間を吸引することにより、シート間に中空部を有するフロート10を製造することもできる。このような成形方法の場合、フロート10の剛性を高めるために、シート間に発泡材料等の芯材を挿入することが可能である。
【0015】
フロート10は、内部に気体(空気等)を収容する中空部27を有するフロート本体20を備える。フロート本体20の外面は、パーティングラインPLを含む側壁部15、フロート10の上側に位置する表面壁16、及びフロート10の下側に位置する裏面壁17により構成される。
【0016】
図1から図3に示すように、フロート本体20には、ソーラパネル50の一対の長手側の一方であって、前方に位置する前縁部51側を支持する支持部11と、一対の長手側のうちの他方であって、後方に位置する後縁部52側を受ける受け部12とが設けられる。前縁部51にはアルミ製の台座(不図示)が設けられており、当該台座が支持部11上に支持された状態で、ソーラパネル50の前縁部51側がフロート10に対して固定金具13により固定される。また、後縁部52にはアルミ製の台座(不図示)が設けられており、ソーラパネル50の後縁部52側は当該台座において、受け部12に受けられた状態で固定金具14によりフロート10に対して固定される。
【0017】
2.支持部11
図1図4、及び図5に示すように、支持部11は、表面壁16の一部と裏面壁17の一部とが一体になって構成される。支持部11の外縁を構成する4つの縁21,22,23,24のうち前側の縁24以外の縁21,22,23は切断されており、図6に示すように、支持部11は、切断されていない縁24側の辺を軸として、開口部26を形成するように当該軸周りに上方に起立させることが可能となっている。支持部11が起立した状態において、支持部11は開口部26の前側の壁面25aに当接する。
【0018】
3.環状フロート部30
図6に示すように、フロート本体20は、開口部26を囲むように形成された環状フロート部30(図6の斜線部)を備える。環状フロート部30の内部に中空部27が形成され、内部に気体を収容する中空部27の存在により浮力が発生してフロート10が浮揚可能となる。
【0019】
図5及び図7に示すように、環状フロート部30の裏面壁17側には、支持部11よりも後方に凹部40が設けられている。凹部40は、裏面壁17を表面壁16側に向かってへこませるように成形することで形成される。
【0020】
凹部40は、凹み41,42,43,44,45を備える。凹み41,42,43は、表面壁16側に先細りする円錐台形状を有するように形成され、凹み41及び凹み42は凹部40の左右方向の両端に各々位置し、凹み43は凹み41と凹み42の中央に位置する。凹み44及び凹み45は、表面壁16側に向かって幅が広くなるように形成され、凹み44は凹み41と凹み43との間に、凹み45は凹み42と凹み43との間に位置する。凹み41,42,43の表面壁16側の底面においては、表面壁16と裏面壁17とが溶着により一体化されている。一方、凹み44,45の表面壁16側の底面においては、表面壁16と裏面壁17とが一体化されていない。
【0021】
このような凹部40を設けることにより、凹部40の周壁が剛性を強化するリブとしての役割を果たし、フロート10の剛性が向上し、撓みが発生し難くなる。また、凹部40の形成により環状フロート部30の中空部の容積が減少し、中空部27に収容される気体量も減少するため、フロート10の変形の原因となる気体の膨張・収縮力を低減させることができる。中空部27に収容される気体量が減少することによりフロート10の浮力も減少するが、裏面壁17側に開口する凹部40には、フロート10を水面に配置した状態で空気が収容されて浮力が発生し、浮力の減少を抑制することができる。また、凹み44,45の表面壁16側の底面において表面壁16と裏面壁17とを一体化させず、表面壁16と裏面壁17との間に気体が流通できる流路を確保することで、ブロー成形時の成形性が良好となる。
【0022】
図1及び図4に示すように、環状フロート部30の表面壁16側には、開口部26よりも後方に傾斜部18が設けられる。傾斜部18は、ソーラパネル50を所定の傾きで設置することが容易となるように、後方に向かって裏面壁17に近づくように傾斜して形成される。
【0023】
また、表面壁16上には、第1溝部35a、第2溝部35b、及び第3溝部35cが傾斜部18から開口部26に向かって延びるように、左右方向にこの順に並んで形成される。第1溝部35a、第2溝部35b、及び第3溝部35cを設けて表面壁16に凹凸構造を形成することで、当該凹凸構造が表面壁16の剛性を強化する補強リブとしての役割を果たし、フロート10の変形を抑制することができる。第1溝部35a、第2溝部35b、及び第3溝部35cは、裏面壁17側に設けられた凹部40の上方にも位置するため、凹部40の底面部分の裏面壁17が、剛性が強化された表面壁16と一体化されることにより、剛性がさらに高まり、フロート10の変形が抑制される。
【0024】
なお、第1溝部35a、第2溝部35b、及び第3溝部35cの後方の先端は、傾斜部18の表面と段差が生じないように連続して形成されている。このような構成により、第1溝部35a、第2溝部35b、及び第3溝部35cに水が溜まるのを抑制可能である。
【0025】
4.フロート10同士の連結
フロート10は、別部品である通路ジョイント(不図示)により前後方向及び左右方向に多数連結して、フロート集合体を構成可能となっている。
【0026】
図1及び図4に示されるように、フロート10の前方端部10aには一対の係合突起31が設けられ、フロート10の前方端部10a及び後方端部10bには一対のボルト孔32が各々設けられる。通路ジョイントには、係合突起31に係合可能な係合凹部(不図示)、及びボルト孔32に対応したボルト孔(不図示)が形成されている。
【0027】
フロート10同士を前後方向に連結する際は、一方のフロート10の係合突起31に、当該フロート10の左右に配置された2つの通路ジョイントの係合凸部を各々係合させる。そして、一方のフロート10の前方端部10aのボルト孔32、他方のフロート10の後方端部10bのボルト孔32、及び通路ジョイントのボルト孔を連結ボルト(不図示)により連結する。また、フロート10同士を左右方向に連結する際は、上述の2つの通路ジョイントを、フロート10の左側及び右側に配置された他のフロート10の係合突起31と係合させる。
【0028】
5.ソーラパネル50の設置
図2及び図3に示すように、ソーラパネル50は、前縁部51側が固定金具13によって支持部11に対して固定され、後縁部52側が受け部12に受けられた状態で固定金具14によって固定される。
【0029】
固定金具13は、起立した支持部11の上端に取り付けられるL字アングル形状の部材であり、挟持部13a及び固定部13bを備える。固定部13bは、支持部11が起立した状態において前方を向く面11a上に固定される。挟持部13aは、固定部13bの上端から固定部13bにほぼ直行する方向に延びるように設けられ、挟持部13aと支持部11との間でソーラパネル50が挟持される。固定金具13は、左右方向に並んだ4つのネジ13cで支持部11の面11a上に固定される。
【0030】
左右方向の中央寄りの2つのネジ13cに対応する固定金具13に設けられたネジ孔(不図示)は、上下方向に延びる長穴形状に形成される。これにより、中央寄りの2つのネジ13cで固定金具13を支持部11に対して仮止めした状態においては、固定金具13を支持部11に対してスライドさせて挟持部13aと支持部11の間の距離を変更できる。
【0031】
前縁部51側を固定する際には、まず、固定金具13を中央寄りの2つのネジ13cにより支持部11に仮止めした状態で、挟持部13aと支持部11との間の隙間にソーラパネル50を挿入する。そして、ソーラパネル50の前縁部51側が支持部11と挟持部13aとの間で挟持された状態で当該2つのネジ13cを本締めする。その後、外側の2つのネジ13cで固定金具13を支持部11に固定する。
【0032】
固定金具14は、後縁部52をソーラパネル50の上側及び下側から挟持するように、フロート10の左右方向の両端近傍に設けられた取付部19においてネジにより固定される。フロート本体20に設けられた受け部12は、傾斜部18の端部から上方に立ち上がるような立壁部として形成されている。後縁部52側を固定する際には、後縁部52側を受け部12に沿って配置し、フロート10の左右方向の両端近傍に設けられた取付部19において後縁部52側を固定金具14により上下から挟むようにして固定する。
【0033】
6.通気貫通孔60
図1及び図8に示すように、フロート本体20の表面には内部の中空部27とフロート10の外部の大気とを連通させる通気貫通孔60が設けられる。通気貫通孔60はフロート10の外部に露出しており、換言すれば、外部の大気の側に開口する通気貫通孔60の開口部は他の部材により覆われていない。通気貫通孔60は、外部環境の温度変化に伴い中空部27に収容された気体が膨張又は収縮する際に、中空部27から外部の大気への気体の流出及び外部の大気から中空部27への気体の流入を可能とし、換言すれば、フロート10に、内部の気体の膨張又は収縮に応じて呼吸をさせることを可能とする。
【0034】
このような通気貫通孔60の内径は、例えば、0.3~5mmであり、好ましくは0.5~3mmであり、具体的には例えば、0.5,1,1.5,2,2.5,3mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。内径がこの範囲であれば、内部の気体の膨張又は収縮に応じて中空部27からの気体の流出及び中空部27への気体の流入がスムーズに行われ、フロート10の変形を抑制することが可能であり、また、通気貫通孔60から多量の水が中空部27内に流入することもない。
【0035】
通気貫通孔60の形成位置は、中空部27とフロート10の外部の大気とを連通可能に形成可能であれば特に限定されず、フロート本体20の表面上の任意の位置に通気貫通孔60を形成することができる。本実施形態において、通気貫通孔60は、開口部26の左側の壁面25b上に形成される。開口部26の左側の壁面は水平面に対して傾斜しているため、当該壁面上に形成された通気貫通孔60の外部の大気の側に開口する開口部の開口面も、水平面に対して傾斜している。このように、外部の大気の側の開口部の開口面が水平面に対して傾斜するように通気貫通孔60を形成することにより、通気貫通孔60からの水(例えば、雨水、海水、湖水)の侵入を抑制することができる。また、開口部26の壁面の存在により、フロート10が設置される池、湖、及び海等からの水しぶきもかかりにくい。また、開口部26の左側の壁面25b上は作業者がフロート10上を移動する際に足を踏み入れる可能性が低いため、作業者に踏みつけられ通気貫通孔60が損傷を受けるおそれもない。
【0036】
一般に、フロートの通気孔からの水の侵入を抑制するために、液体の水を透過しにくい一方で気体を透過させることが可能な微多孔膜で通気孔を覆う場合がある。微多孔膜は一般に高価であるため、特にフロートを多数使用する場合には費用がかさむ。本実施形態の通気貫通孔60は、形成位置の自由度が高く水の侵入しにくい場所を選定して形成することが可能であるため、通気貫通孔60を微多孔膜で覆うことなく水の侵入を抑制することが可能である。
【0037】
7.通気部材
図8図11図14、及び図17に示すように、本実施形態のフロート本体20の表面には、通気貫通孔60に加えて第1貫通孔61、第2貫通孔62、及び第3貫通孔63が設けられ、第1貫通孔61、第2貫通孔62、及び第3貫通孔63には、第1通気部材70、第2通気部材80、及び第3通気部材90の少なくとも一部が各々挿入されている。なお、図11図14、及び図17は、フロート10の、図8に示した平面Z(平面Zは、フロート10の左右方向に平行かつ前後方向に垂直な平面である)に平行で第1通気部材70、第2通気部材80及び第3通気部材90の中心軸を通る平面における部分断面図である。第1貫通孔及び第3貫通孔は、通気貫通孔60と同様に開口部26の左側の壁面25b上に設けられる。第2貫通孔は、第1溝部35a、第2溝部35b、及び第3溝部35cのうち、左端に位置する第1溝部35aの前側の先端付近の底面に設けられる。
【0038】
中空部27は、第1から第3通気部材90を介してフロート10の外部の大気と連通する。従って、外部環境の温度変化に伴い中空部27に収容された気体が膨張又は収縮する際に、第1通気部材70、第2通気部材80、及び第3通気部材90を介して、中空部27から外部の大気への気体の流出及び外部の大気から中空部27への気体の流入が可能となる。
【0039】
なお、フロート10の呼吸を可能とするうえでは、通気貫通孔60、第1通気部材70、第2通気部材80、及び第3通気部材90のうちの少なくとも1つをフロート本体20に設ければよい。
【0040】
7.1.第1通気部材70
図8から図11に示すように、第1通気部材70は、その一部を第1貫通孔61に挿入することにより中空部27が外部の大気と連通し、フロート10の呼吸を可能とするように構成されている。第1通気部材70は、頭部71(第1部分の一例)と、雄ネジ部72(第2部分の一例)とを備える。第1通気部材70の雄ネジ部72が第1貫通孔に挿入された図11の状態において、頭部71は、表面壁16に当接した状態で第1貫通孔61に対して外部の大気の側に配置され、雄ネジ部72は、第1貫通孔61に対して中空部27の側に配置される。
【0041】
頭部71の端面71a(図9Aにおける頭部71の上面)には、雄ネジ部72が第1貫通孔61に挿入された状態においてフロート10の外部の大気の側に開口する頭部側開口部71b(第1開口部の一例)が形成される。雄ネジ部72の端面72a(図9Bにおける雄ネジ部72の下面)には、雄ネジ部72が第1貫通孔61に挿入された状態において中空部27の側に開口する雄ネジ側開口部72b(第2開口部の一例)が形成される。また、第1通気部材70の内部には、雄ネジ側開口部72bと頭部側開口部71bとを接続する第1連通路73が形成される。中空部27は、第1連通路73を介してフロート10の外部の大気と連通する。
【0042】
頭部側開口部71b、雄ネジ側開口部72b、及び第1連通路73の内径は、例えば、0.3~5mmであり、好ましくは0.5~3mmであり、具体的には例えば、0.5,1,1.5,2,2.5,3mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。内径がこの範囲であれば、内部の気体の膨張又は収縮に応じて中空部27からの気体の流出及び中空部27への気体の流入がスムーズに行われ、フロート10の変形を抑制することが可能であり、また、頭部側開口部71bから多量の水が中空部27内に流入することもない。
【0043】
頭部71は、雄ネジ部72よりも径方向外側に張り出すような六角柱の形状を有し、第1貫通孔61に挿入された際に表面壁16の外面に当接するように構成されている。これにより、第1通気部材70が第1貫通孔61の内部に完全に埋没することを防ぐことができる。なお、頭部71の形状は六角柱に限定されるものではなく、円柱や四角柱等の他の形状とすることも可能である。
【0044】
雄ネジ部72は、後述するようにフロート本体20の表面上の下穴にねじ込みながら挿入するために雄ネジ構造を有するように構成される。なお、単にフロート10の呼吸を可能とするうえでは、当該雄ネジ構造は必須ではなく、雄ネジ部72の外面を滑らかにする等、他の構成とすることも可能である。
【0045】
第1通気部材70の素材は特に限定されないが、後述するようにフロート本体20の表面上の下穴に雄ネジ部72をねじ込みながら挿入するうえでは、剛性が比較的高い素材を用いることが好ましい。この場合、第1通気部材70は金属製であることが好ましく、素材としては、例えばステンレスを好適に用いることができる。
【0046】
第1通気部材70をフロート10に設置する際には、まず、フロート本体20の表面に雄ネジ部72の外径よりも小さい内径を有する下穴を形成する。そして、下穴に対して雄ネジ部72をねじ込みながら挿入することで下穴が広げられ、雄ネジ部72の外径と略同一の内径を有する第1貫通孔61が形成される。頭部71が表面壁16の外面(外部の大気側の面)に当接するまで雄ネジ部72をねじ込み、第1通気部材70の設置が完了する。このように、下穴に対して雄ネジ部72をねじ込みながら挿入することにより、雄ネジ部72の外径と略同一の内径を有する第1貫通孔61を容易に形成することができ、雄ネジ部72の外面と第1貫通孔61の内面との間の隙間を小さくして当該隙間からの水の侵入を抑制することが可能となる。
【0047】
第1通気部材70の設置位置は、中空部27とフロート10の外部の大気とを連通可能であれば特に限定されず、フロート本体20の表面上の任意の位置に設置することができる。本実施形態において、第1通気部材70が挿入される第1貫通孔61は、開口部26の左側の壁面25b上に形成される。上述のように、開口部26の左側の壁面25bは水平面に対して傾斜しているため、第1貫通孔61が設置された状態において、頭部側開口部71bの開口面も水平面に対して傾斜している。これにより、頭部側開口部71bからの水の侵入を抑制することができる。また、傾斜する開口部26の左側の壁面25b上の比較的上部に設置すれば、支持部11を起立させる際に第1通気部材70と干渉することもない。また、開口部26の壁面の存在により、フロート10が設置される池、湖、及び海等からの水しぶきもかかりにくい。また、開口部26の左側の壁面25b上は作業者がフロート10上を移動する際に足を踏み入れる可能性が低いため、作業者に踏みつけられ第1通気部材70が損傷を受けるおそれもない。
【0048】
また、本実施形態の第1通気部材70は、設置位置の自由度が高く水の侵入しにくい場所を選定して形成することが可能であるため、外部の大気に露出する頭部側開口部71bを微多孔膜で覆うことなく水の侵入を抑制することが可能である。
【0049】
7.2.第2通気部材80
図8及び図12Aから図14に示すように、第2通気部材80は、その一部を第2貫通孔62に挿入することにより中空部27が外部の大気と連通し、フロート10の呼吸を可能とするように構成されている。第2通気部材80は、平板部81(第1部分の一例)と、平板部81の下面81dから突出するように形成された突出部82(第2部分の一例)とを備える。突出部82は、突出部82の先端側に設けられ先端に向かって先細るテーパ部85と、テーパ部85と平板部81との間に設けられる円柱形状の円柱部84とをさらに備える。第2通気部材80の突出部82が第2貫通孔62に挿入された図14の状態において、平板部81は、フロート本体20の表面に沿って張り出すように表面壁16に当接した状態で第2貫通孔62に対して外部の大気の側に配置され、突出部82は、第2貫通孔62に対して中空部27の側に配置される。
【0050】
平板部81の側面には、平板部側開口部81c(第1開口部の一例)が形成される。本実施形態においては、平板部81の対向する一対の側面81a,81b上に、平板部側開口部81cが各々形成される。側面81a,81b上における平板部側開口部81cの位置は特に限定されないが、本実施形態においては、側面81a,81bの略中央に形成される。これら2つの平板部側開口部81cは、突出部82が第1貫通孔に挿入された状態において、フロート10の外部の大気の側に開口する。また、突出部82の端面82a(図12Bにおけるテーパ部85の下面)には、突出部82が第2貫通孔62に挿入された状態において中空部27の側に開口する突出部側開口部82b(第2開口部の一例)が形成される。第2通気部材80の内部には、2つの平板部側開口部81cと突出部側開口部82bとを接続する第2連通路83が形成される。中空部27は、第2連通路83を介してフロート10の外部の大気と連通する。
【0051】
平板部81は、第2通気部材80が設置された状態でフロート本体20の表面に沿って張り出すように表面壁16の外面に当接する。これにより、第2通気部材80が第2貫通孔62の内部に完全に埋没することを防ぐことができる。また、テーパ部85は、円柱部84側の外径が円柱部84の外径よりも大きく、かつ先端に向かって先細る形状を有し、第2通気部材80が設置された状態においてその全体が中空部27内に存在する。このような構成により、第2通気部材80を第2貫通孔62に対して挿入しやすい一方、第2貫通孔62から抜脱する方向に第2通気部材80が移動した場合でも、テーパ部85が表面壁16の内面(中空部27側の面)に当接するため、第2通気部材80が抜脱されにくい。
【0052】
第2通気部材80の素材は特に限定されないが、後述するようにテーパ部85を有する突出部82を第2貫通孔62に挿入するうえでは、弾性を有する素材を用いることが好ましい。また、弾性を有する素材で第2通気部材80を構成することで、第2通気部材80の外面と第2貫通孔62の内面とが接触する部分における密閉性を高めることもできる。この場合、第2通気部材80はゴム製であることが好ましく、素材としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴムを好適に用いることができる。
【0053】
第2通気部材80をフロート10に設置する際には、まず、フロート本体20の表面に円柱部84の外径と略同一の内径を有する第2貫通孔62を形成する。そして、第2貫通孔62に対して突出部82を押し込んで挿入する。テーパ部85の円柱部84側の部分の外径は第2貫通孔62の内径よりも大きいが、弾性を有する素材で第2通気部材80を構成することで、テーパ部85を第2貫通孔62に押し込んで変形させながら挿入することができる。テーパ部85の全体が表面壁16の内面を超えて中空部27内に入り、平板部81が表面壁16の外面に当接するまで突出部82を押し込み、第2通気部材80の設置が完了する。
【0054】
第2通気部材80の設置位置は、中空部27とフロート10の外部の大気とを連通可能であれば特に限定されず、フロート本体20の表面上の任意の位置に設置することができる。本実施形態において、第2通気部材80が挿入される第2貫通孔62は、第1溝部35aの前側の先端付近の底面に形成される。第1溝部35aの下方には凹み41が存在し、凹み41の底面において表面壁16と裏面壁17とが溶着により一体化されているが、第1溝部35aの前側の先端付近においては表面壁16と裏面壁17とが溶着されていない。従って、第1溝部の前側の先端付近に第2通気部材80を設置することで、中空部27とフロート10の外部の大気とを連通可能である。
【0055】
例えば第1溝部35aの底面のような、フロート本体20の表面のうち水平な面に第2通気部材80を設置することにより、平板部81の側面81a,81bに設けられた平板部側開口部81cの開口面は水平面に対して垂直となるため、平板部側開口部81cからの水の侵入を抑制することができる。また、水平面に設置した場合、平板部81の側面に設けられた平板部側開口部81cの鉛直方向の最下点は、平板部81の厚みt1のうち平板部側開口部81cよりも下側の厚みt2(図13参照)の分だけ、当該水平面より高くなる。例えば、図14に示すように第1溝部35aに第2通気部材80を設置した場合、平板部側開口部81cの鉛直方向の最下点は、第1溝部35aの底面よりも厚みt2の分だけ高くなる。これにより、第2通気部材80が設置される水平面(本実施形態においては、第1溝部35aの底面)に少量の水が溜まっても、平板部側開口部81cから水が浸入しにくくなる。
【0056】
また、上述のように第1溝部35aは水が溜まりにくい構成となっているため、第1溝部35aに第2通気部材80を設置した場合には、平板部側開口部81cからの水の侵入がさらに抑制される。加えて、第1溝部35aは作業者がフロート10上を移動する際に足を踏み入れる可能性が低いため、作業者に踏みつけられ第2通気部材80が損傷を受けるおそれもない。
【0057】
第2通気部材80を第1溝部35aの底面に設置する場合、図14に示すように、平板部81の厚みt1(図13参照)は、第1溝部35aの深さdよりも小さくするように構成することが好ましい。このような構成の場合、第1溝部35aの壁面の存在により、フロート10が設置される池、湖、及び海等からの水しぶきが第2通気部材80に対しかかりにくくなる。
【0058】
第2連通路83は、その中途において、具体的には円柱部84と平板部81との境界付近において、略垂直に屈曲している。従って、上述のように第2通気部材80を水平面に設置した場合、平板部側開口部81cから少量の水が侵入した場合でも、第2連通路83の平板部81側に滞留するため、中空部27まで到達しにくい。
【0059】
また、本実施形態の第2通気部材80は、設置位置の自由度が高く水の侵入しにくい場所を選定して形成することが可能であり、さらに上述のように水が浸入しにくい構造となっているため、外部の大気に露出する平板部側開口部81cを微多孔膜で覆うことなく水の侵入を抑制することが可能である。
【0060】
平板部側開口部81c、突出部側開口部82b、及び第2連通路83の内径は、例えば、0.3~10mmであり、好ましくは0.5~5mmであり、具体的には例えば、0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。内径がこの範囲であれば、内部の気体の膨張又は収縮に応じて中空部27からの気体の流出及び中空部27への気体の流入がスムーズに行われ、フロート10の変形を抑制することが可能であり、また、平板部側開口部81cから多量の水が中空部27内に流入することもない。第2通気部材80は、上述のように水が浸入しにくい構造となっているため、平板部側開口部81c、突出部側開口部82b、及び第2連通路83の内径を比較的大きく設定することが可能である。
【0061】
7.3.第3通気部材90
図8及び図15Aから図17に示すように、第3通気部材90は、その一部を第3貫通孔63に挿入することにより中空部27が外部の大気と連通し、フロート10の呼吸を可能とするように構成されている。第3通気部材90は、端面91aが傾斜面91bで切断された円筒形状を有する切断円筒部91と、切断円筒部91の外面から張り出すように形成されたフランジ部92と(切断円筒部91及びフランジ部92を組み合わせた部分が第1部分の一例)、フランジ部92から突出するように形成された突出部94(第2部分の一例)とを備える。第3通気部材90の突出部94は、第2通気部材80の突出部82と同様に構成され、突出部94の先端側に設けられ先端に向かって先細るテーパ部96と、テーパ部96とフランジ部92との間に設けられる円柱形状の円柱部95とをさらに備える。第3通気部材90の突出部94が第3貫通孔63に挿入された図17の状態において、切断円筒部91及びフランジ部92は、フランジ部92がフロート本体20の表面に沿って張り出すように表面壁16に当接した状態で第3貫通孔63に対して外部の大気の側に配置され、突出部94は、第3貫通孔63に対して中空部27の側に配置される。
【0062】
図16Bに示すように、切断円筒部91の傾斜面91bは、端面91aに対して角度θ1をなすように傾斜している。傾斜面91bには、突出部94が第3貫通孔63に挿入された状態においてフロート10の外部の大気の側に開口する切断円筒部側開口部91c(第1開口部の一例)が形成される。また、突出部94の端面94a(図15Bにおけるテーパ部96の下面)には、突出部94が第3貫通孔63に挿入された状態において中空部27の側に開口する突出部側開口部94b(第2開口部の一例)が形成される。第3通気部材90の内部には、突出部側開口部94bと切断円筒部側開口部91cとを接続する第3連通路93が形成される。中空部27は、第3連通路93を介してフロート10の外部の大気と連通する。
【0063】
フランジ部92は、第3通気部材90が設置された状態でフロート本体20の表面に沿って張り出すように表面壁16の外面に当接する。これにより、第3通気部材90が第3貫通孔63の内部に完全に埋没することを防ぐことができる。また、テーパ部96は、円柱部95側の外径が円柱部95の外径よりも大きく、かつ先端に向かって先細る形状を有し、第3通気部材90が設置された状態においてその全体が中空部27内に存在する。このような構成により、第3通気部材90を第3貫通孔63に対して挿入しやすい一方、第3貫通孔63から抜脱する方向に第3通気部材90が移動した場合でも、テーパ部96が表面壁16の内面に当接するため、第3通気部材90が抜脱されにくい。
【0064】
第3通気部材90の素材は特に限定されないが、後述するようにテーパ部96を有する突出部94を第3貫通孔63に挿入するうえでは、弾性を有する素材を用いることが好ましい。また、弾性を有する素材で第3通気部材90を構成することで、第3通気部材90の外面と第3貫通孔63の内面とが接触する部分における密閉性を高めることもできる。この場合、第3通気部材90はゴム製であることが好ましく、素材としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴムを好適に用いることができる。
【0065】
第3通気部材90をフロート10に設置する際には、まず、フロート本体20の表面に円柱部95の外径と略同一の内径を有する第3貫通孔63を形成する。そして、第3貫通孔63に対して突出部94を押し込んで挿入する。テーパ部96の円柱部95側の部分の外径は第3貫通孔63の内径よりも大きいが、弾性を有する素材で第3通気部材90を構成することで、テーパ部96を第3貫通孔63に押し込んで変形させながら挿入することができる。テーパ部96の全体が表面壁16の内面を超えて中空部27内に入り、フランジ部92が表面壁16の外面に当接するまで突出部94を押し込み、第3通気部材90の設置が完了する。
【0066】
第3通気部材90の設置位置は、中空部27とフロート10の外部の大気とを連通可能であれば特に限定されず、フロート本体20の表面上の任意の位置に設置することができる。本実施形態において、第3通気部材90が挿入される第3貫通孔63は、開口部26の左側の壁面25b上に形成される。傾斜する開口部26の左側の壁面25b上の比較的上部に設置すれば、支持部11を起立させる際に第3通気部材90と干渉することがない。また、開口部26の壁面の存在により、フロート10が設置される池、湖、及び海等からの水しぶきもかかりにくい。また、開口部26の左側の壁面上は作業者がフロート10上を移動する際に足を踏み入れる可能性が低いため、作業者に踏みつけられ第3通気部材90が損傷を受けるおそれもない。
【0067】
第3通気部材90は、図17に示すように、切断円筒部91の傾斜面91bに形成された切断円筒部側開口部91cの開口面が下方を向くように設置される。具体的には、第3通気部材90は、図17に示すようにフロート本体20の表面上に設置された状態において、切断円筒部側開口部91cの開口面と水平面との間の角度θ3が90°未満となるように設置される。角度θ3は、好ましくは70°未満である。これにより、切断円筒部側開口部91cからの水の侵入を抑制することができる。
【0068】
このような構成とするために、第3通気部材90の設置されるフロート本体20の表面(本実施形態においては、壁面25b)の傾斜角度に応じて、傾斜面91bが端面91aとの間になす角度θ1を適宜設定することができる。傾斜面91bが端面91aとの間になす角度θ1は、例えば、5°~70°であり、好ましくは20~50°であり、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0069】
図16Bに示すように、第3連通路93は、その中途において、具体的には切断円筒部91とフランジ部92との境界付近において屈曲している。第3連通路93のうち、屈曲している当該中途の位置よりも切断円筒部側開口部91cの側の部分を大気側連通路93a、当該中途の位置よりも突出部側開口部94bの側の部分を中空部側連通路93bとすると、図17に示すように突出部94が第3貫通孔63に挿入された状態において、大気側連通路93aが下方に向かって延びるように構成されている。このような構成により、切断円筒部側開口部91cから大気側連通路93a内に少量の水が侵入した場合でも、中空部27まで到達しにくい。
【0070】
また、図16Bに示すように、本実施形態に係る切断円筒部側開口部91cの開口面は、中空部側連通路93bの延長上から外れるように構成される。これにより、切断円筒部側開口部91cから大気側連通路93a内に侵入した水が中空部27まで到達することがさらに抑制される。このような構成とするために、大気側連通路93aの中空部側連通路93bに対する屈曲角度θ2を適宜設定することができる。もしくは、切断円筒部91の長さを十分に長く設定することで上述の構成を実現してもよい。
【0071】
大気側連通路93aの、中空部側連通路93bに対する屈曲角度θ2は、例えば、3°~60°であり、好ましくは10°~40°であり、具体的には例えば、10,15,20,25,30,35,40°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、第3連通路93が屈曲する箇所は、切断円筒部91とフランジ部92との境界付近に限定されず、第3連通路93の中途の任意の箇所とすることができる。
【0072】
本実施形態の第3通気部材90は、設置位置の自由度が高く水の侵入しにくい場所を選定して形成することが可能であり、さらに上述のように水が浸入しにくい構造となっているため、外部の大気に露出する切断円筒部側開口部91cを微多孔膜で覆うことなく水の侵入を抑制することが可能である。
【0073】
切断円筒部側開口部91c、突出部側開口部94b、及び第3連通路93の内径は、例えば、0.3~10mmであり、好ましくは0.5~5mmであり、具体的には例えば、0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。内径がこの範囲であれば、内部の気体の膨張又は収縮に応じて中空部27からの気体の流出及び中空部27への気体の流入がスムーズに行われ、フロート10の変形を抑制することが可能であり、また、切断円筒部側開口部91cから多量の水が中空部27内に流入することもない。第3通気部材90は、上述のように水が浸入しにくい構造となっているため、切断円筒部側開口部91c、突出部側開口部94b、及び第3連通路93の内径を比較的大きく設定することが可能である。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0075】
10:フロート、10a:前方端部、10a:前方端部、10b:後方端部、11:支持部、11a:面、12:受け部、13:固定金具、13a:挟持部、13b:固定部、13c:ネジ、14:固定金具、15:側壁部、16:表面壁、17:裏面壁、18:傾斜部、19:取付部、20:フロート本体、21:縁、22:縁、23:縁、24:縁、25a:壁面、25b:壁面、26:開口部、27:中空部、30:環状フロート部、31:係合突起、32:ボルト孔、35a:第1溝部、35b:第2溝部、35c:第3溝部、40:凹部、41:凹み、42:凹み、43:凹み、44:凹み、45:凹み、50:ソーラパネル、51:前縁部、52:後縁部、60:通気貫通孔、61:第1貫通孔、62:第2貫通孔、63:第3貫通孔、70:第1通気部材、71:頭部、71a:端面、71b:頭部側開口部、72:雄ネジ部、72a:端面、72b:雄ネジ側開口部、73:第1連通路、80:第2通気部材、81:平板部、81a:側面、81b:側面、81c:平板部側開口部、81d:下面、82:突出部、82a:端面、82b:突出部側開口部、83:第2連通路、84:円柱部、85:テーパ部、90:第3通気部材、91:切断円筒部、91a:端面、91b:傾斜面、91c:切断円筒部側開口部、92:フランジ部、93:第3連通路、93a:大気側連通路、93b:中空部側連通路、94:突出部、94a:端面、94b:突出部側開口部、95:円柱部、96:テーパ部、PL:パーティングライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17