(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170524
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076717
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 槙一
(72)【発明者】
【氏名】太田 新
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA13B
4F100CA23E
4F100DC21E
4F100DD07E
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EJ86
4F100GB07
4F100HB00C
4F100JA06E
4F100JA13A
4F100JB13D
4F100JB13E
4F100JL10B
4F100JN26C
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】自然素材の表面に近似した強い触感を有する化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧板を提供することを目的とする。
【解決手段】化粧シートは、基材層2の一方の面側に、下地着色層3、絵柄模様層4、表面保護層5が順に形成され、表面保護層5は、絵柄模様層4上に形成された艶消し層である第1表面保護層51と、第1表面保護層51上に部分的に形成された第2表面保護層52とを有し、第2表面保護層52は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する樹脂材料で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の一方の面側に、下地着色層、絵柄模様層、表面保護層が順に形成され、
前記表面保護層は、前記絵柄模様層上に形成された艶消し層である第一の表面保護層と、前記第一の表面保護層上に部分的に形成された第二の表面保護層とを有し、
前記第二の表面保護層は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する樹脂材料で形成されている
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第二の表面保護層を形成する樹脂材料は、前記ザーンカップ5番での流動時間が7.5秒以上8秒以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第一の表面保護層及び前記第二の表面保護層は、熱硬化型樹脂を含んで形成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第二の表面保護層は、前記第一の表面保護層の10%以上90%未満の面積を被覆している
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記第二の表面保護層は合成樹脂ビーズを含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記合成樹脂ビーズは、平均粒径が30μm以上である
ことを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記第二の表面保護層の表面は、最大高さRmax値が20μm以上である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記第二の表面保護層の表面は、最大高さRmax値が60μm以上である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記基材層は、薄葉紙で形成され、
前記薄葉紙は、坪量が20g/m2以上100g/m2以下である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧シートと、
前記化粧シートが少なくとも一方の表面に貼り合わされた基板と、
を備える
ことを特徴する化粧板。
【請求項11】
基材層上に、下地着色層、絵柄模様層を順に形成する工程と、
前記絵柄模様層上に第一の樹脂材料を塗布及び硬化し、前記第一の樹脂材料を用いて形成された第一の表面保護層上に部分的に第二の樹脂材料を塗布及び硬化して第二の表面保護層を形成し、複層構造の表面保護層5を形成する工程と、を備え、
前記第二の表面保護層を形成する前記第二の樹脂材料は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する
ことを特徴する化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、室内ドアや玄関収納等の建具や、見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠等の造作材の表面等に貼り付けて用いられる化粧シートには、視覚的な意匠性(例えば立体感)だけでなく、手触り感を再現することが求められている。
【0003】
視覚的な立体感及び手触り感を有する化粧シートとしては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1に記載の技術では、シート基材上に形成された絵柄模様層と、絵柄模様層上に形成された艶消し層と、艶消し層上に形成された表面保護層とを備え、表面保護層は、表面保護層から突出した合成樹脂ビーズを含んでいる。これにより、化粧シートの表面に凹凸を設け、視覚的な立体感及び手触り感を感じさせるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の化粧シートでは、近年求められているような自然素材(例えば、木の板)に近似した強い手触り感(触感)を再現することはできなかった。
【0006】
本開示は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、自然素材の表面に近似した強い触感を有する化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧シートは、基材層の一方の面側に、下地着色層、絵柄模様層、表面保護層が順に形成され、前記表面保護層は、前記絵柄模様層上に形成された艶調整層である第一の表面保護層と、前記第一の表面保護層上に部分的に形成された第二の表面保護層を有し、前記第二の表面保護層は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本開示の他の態様に係る化粧板は、上述の化粧シートと、上述の化粧シートが少なくとも一方の表面に貼り合わされた基板と、を有する。
【0009】
また、本開示のさらに他の態様に係る化粧シートの製造方法は、基材層上に、下地着色層、絵柄模様層を順に形成する工程と、前記絵柄模様層上に第一の樹脂材料を塗布及び硬化し、前記第一の表面保護層上に部分的に第二の樹脂材料を塗布及び硬化して、第一の表面保護層および第二の表面保護層を形成する工程と、を備え、前記第二の表面保護層を形成する前記第二の樹脂材料は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有することを特徴する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様によれば、強い触感を有する化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。
【
図2】本開示の第四実施形態に係る化粧材の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0013】
本開示の第一実施形態に係る積層体について説明する。本開示に係る化粧シートは、例えば、壁面、建具、家具等に施工される化粧シートであり、特に、ドア枠、窓枠、巾木、見切り、廻り縁の予め建物に組み込まれる造作材に用いることが好ましい化粧シートである。なお、以下の説明では、化粧シートの貼り付け面に接触する側を「下」、化粧シートの貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0014】
1.第一実施形態
(1.1)化粧シートの基本構成
本開示の第1実施形態に係る化粧シートの基本構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る化粧シート1の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る化粧シート1は、基材層2の一方の面側に、下地着色層3、絵柄模様層4、表面保護層5がこの順に積層されている。
詳しくは後述するが、表面保護層5は、絵柄模様層4上に形成された艶消し層である第1表面保護層51と、第1表面保護層51上に部分的に形成された第2表面保護層52とを有している。
【0015】
(基材層)
基材層2は、化粧シート1の基材となるものである。本実施形態では、基材層2として、原紙層が用いられる場合について説明する。原紙層としては、例えば薄葉紙が用いられる。薄葉紙は、例えば坪量が20g/m2以上100g/m2以下で形成されていることが好ましい。基材層2には、薄葉紙のみならず、チタン紙、上質紙、クラフト紙等を適用することができ、用途に応じて適宜選定される。
【0016】
なお、本実施形態では、基材層2として、紙基材のみを用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、基材層2として、樹脂フィルムを用いることができる。また、基材層2は、紙基材と樹脂材料との積層構造であっても良い。
【0017】
また、基材層2が樹脂材料である場合、樹脂材料としてはポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステル等に代表されるような熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。熱可塑性樹脂には、例えば酸化チタンや炭酸カルシウム等の無機材料を添加剤として含んでいても良い。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を使用することで、無機材料の分散性が向上する。また、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを使用することで、無機材料の分散性がさらに向上する。
【0018】
さらに、基材層2が樹脂フィルムである場合、樹脂フィルムとしてはポリエチレンテレフタレートを主とするフィルム素材であることが好ましい。樹脂フィルムには、上述した無機材料を添加剤として含んでいても良い。また、基材層2が樹脂フィルムである場合、基材層2は1軸もしくは2軸に延伸された樹脂フィルムであっても良い。1軸もしくは2軸に延伸された樹脂フィルムからなる基材層2は、内部に空隙を含んでいても良い。
【0019】
(下地着色層)
下地着色層3は、基材層2上に形成され、化粧シート1に所望の色彩による意匠性を付与するとともに、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するための層である。下地着色層3は、例えば、インクのベタ塗り等により形成される。
下地着色層3は、基材層2の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地着色層3は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。
【0020】
下地着色層3の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液型ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
【0021】
下地着色層3の厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。下地着色層3の厚さは、例えば2μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。下地着色層3の厚さを上述の範囲内とすることにより、例えば白色や淡色に着色する場合であっても基材層2の色や汚れに対して十分な隠蔽性を発現でき、また、下地着色層3を構成するインキ層間の密着強度の低下を防止して、十分な耐久性を得ることができる。
【0022】
(絵柄模様層)
絵柄模様層4は、下地着色層3上に形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。絵柄としては、例えば、木目、木目導管、コルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄等、化粧シート1を用いる箇所に適した絵柄を選ぶことができる。
【0023】
絵柄模様層4の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば下地着色層3と同様の材料を用いることができる。
絵柄模様層4の厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。絵柄模様層4の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが好ましい。ここで、「絵柄模様層4の厚さ」とは、インキが印刷された部分の厚さをいう。絵柄模様層4は、下地着色層3の全面に設けられていなくても良く、絵柄模様層4から下地着色層3が露出していても良い。絵柄模様層4の厚さを上述の範囲内とすることにより、絵柄を鮮明に表現したり、絵柄に階調をつける事で意匠性を高めたりすることができ、また、複数色を重ねて印刷した際に上層の色と下層の色とが重なることで限られた色で表現可能な色彩幅を増やすことができる。
【0024】
(表面保護層)
表面保護層5は、トップコートともいい、
図1に示すように、絵柄模様層4の表面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、耐磨耗性や耐水性、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能(表面物性)を付与する目的で設けられるものである。
表面保護層5は、単層であってもよいし、複数の層を重ねて表面保護層5としてもよい。本実施形態に係る化粧シート1において、表面保護層5は、
図1に示すように、絵柄模様層4の表面に塗布して形成された艶消し層である第1表面保護層51と、第1表面保護層51の表面に塗布して形成された第2表面保護層52とを有している。
【0025】
[第1表面保護層]
艶消し層である第1表面保護層51は、絵柄模様層4上に形成され、絵柄模様層4の全体を被覆するシート状の層である。また、第1表面保護層51は、第1表面保護層51を通して下地着色層3及び絵柄模様層4の絵柄を透視できる程度に透明又は半透明な材料(例えば樹脂材料)で形成されている。すなわち、第1表面保護層51は、光透過性(透光性)を有していてもよい。
【0026】
第1表面保護層51の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、第2表面保護層52との接着性、化粧シート1の変形追従性、耐擦傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー)を用いるのが好ましい。ここで、熱硬化型樹脂には、シリカ粒子等の艶消剤の添加を行わない。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
【0027】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートを用いることができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体等(trimer)がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
【0028】
また、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー)に、艶消剤を添加した混合物を用いるのが好ましい。艶消剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ(α-アルミナ等)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリナイト、アルミノシリケート等の無機物の粒子、或いはポリカーボネート、ナイロン、ウレタン樹脂等の有機物の粒子を用いることができる。艶消剤を添加することにより、第1表面保護層51の光沢(艶)を第2表面保護層52の光沢よりも低くし、艶消し層とする。つまり、第2表面保護層52の光沢を第1表面保護層51の光沢よりも高くなる。
このように、第1表面保護層51は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂、つまり、上層(第2表面保護層52)の光沢の影響を受けない樹脂で形成したため、第1表面保護層51と第2表面保護層52とで、視覚的な立体感を適切に表現できる。また、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂は、硬度が高いため、化粧シート1の耐傷性を向上できる。
【0029】
シリカ粒子は、熱硬化性樹脂の全質量に対し、5質量%以上含むのが好ましい。これにより、第1表面保護層51光沢を十分に低下でき、第2表面保護層52と第1表面保護層51との光沢差を増大できる。それゆえ、第1表面保護層51の全面積に対し、第2表面保護層52の面積が小さくても、視覚的な立体感を適切に感じさせることができる。なお、シリカ粒子の上限は、熱硬化性樹脂の全質量に対し、35質量%以下とする。
【0030】
本実施形態において、第1表面保護層51の光沢度は、入射角60度で1.5以上4.0以下であることが好ましい。ここで、「光沢度」とは、JIS Z-8741に準じた鏡面光沢度測定法により測定される光沢度をいう。また、本実施形態では、第1表面保護層51と第2表面保護層52との光沢差により、実際の木目に近い優れた意匠性を実現させることができる。第1表面保護層51の光沢度が4.0以下であると第2表面保護層52との光沢差で優れた意匠性が実現できる。また、経験則から、第1表面保護層51の光沢度が1.5未満になることは起こり難い。
【0031】
(第2表面保護層52)
第2表面保護層52は、第1表面保護層51上に部分的に形成され、第1表面保護層51の一部(例えば絵柄模様層4とは反対側の面)を被覆する層である。これにより、自然素材(例えば木目の導管)のような意匠感を視覚と触感との両方で表現できる。第2表面保護層52は、例えば、第1表面保護層51上の0.1%以上の面積に形成すればよい。本実施形態では、第1表面保護層51を耐傷性が高いものとしたため、第1表面保護層51の面積が小さくても、化粧シート1を耐傷性に優れたものとすることができる。また、第2表面保護層52は、第1表面保護層51の10%以上90%以下の面積を被覆することがより好ましい。第2表面保護層52の面積が第1表面保護層51の面積の10%以上であれば、化粧シート1をより耐傷性や耐汚染性に優れたものとすることができる。
また、第2表面保護層52は、第2表面保護層52、第1表面保護層51を通して、絵柄模様層4の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。このため、第2表面保護層52の面積が第1表面保護層51の面積の90%以下であっても、化粧シート1の意匠性を損なわない。
【0032】
第2表面保護層52は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が、温度25℃において7秒以上8秒以下の範囲内の粘度を有する樹脂材料で形成されていることが好ましい。なお、当該粘度は、例えば第2表面保護層52の形成時における樹脂材料の塗工時の粘度を示す。これにより、化粧シート1の表面に木の板の表面のような自然素材に近い手触り感、つまり強い触感を付与することができる。以下、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間を「ザーンカップ#5粘度」と記載する場合がある。
また、ザーンカップ#5粘度における流動時間が上述の範囲内である樹脂材料を用いて第2表面保護層52を形成することにより、樹脂材料に発泡剤を添加することなく、化粧シート1に強い触感を付与することができる。
また、第2表面保護層52は、上述のザーンカップ#5粘度が温度25℃において7.5秒以上8秒以下の範囲内である樹脂材料で形成されていることがさらに好ましい。これにより、化粧シート1により確実に強い触感を付与することができる。
【0033】
第2表面保護層52の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、第1表面保護層51との接着性等を考慮すれば、第1表面保護層51と同様の2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー)に、合成樹脂ビーズを添加した混合物を用いることが好ましい。
合成樹脂ビーズとしては、例えば、透明度の高いアクリル樹脂ビーズ(アクリル系フィラー)を用いることができる。これにより、第2表面保護層52の透明度を向上でき、意匠を付与するための絵柄模様層4の絵柄をより明瞭に透視することができる。また合成樹脂ビーズとしてはウレタン樹脂ビーズ(ウレタン系フィラー)を用いてもよい。また、熱硬化型樹脂に添加する合成樹脂ビーズの平均粒径は30μm以上とする。ここで、「平均粒子径」とは、メジアン径(D50粒径)である。また、合成樹脂ビーズの平均粒径は100μm以下であることが好ましい。
また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
【0034】
また、第2表面保護層52の表面は、合成樹脂ビーズを含んでいない場合、接触式粗さ計で測定した最大高さRmax値を20μm以上とすることが好ましい。これにより、触感による立体感をより適切に感じさせることができる。
また、第2表面保護層52の表面は、合成樹脂ビーズが添加されている場合、接触式粗さ計で測定した最大高さRmax値を60μm以上とすることが好ましい。これにより、触感による立体感をより強く感じさせることができる。
【0035】
このように、第2表面保護層52は、艶消剤の添加がないため、光の反射量を大きくし、光沢(艶)を高くすることができる。それゆえ、艶消し層である第1表面保護層51と第2表面保護層52を積層することにより、化粧シート1の表面に光沢差を設け、人間の目の錯覚を利用して、視覚的に立体感を感じさせることができる。
また、第2表面保護層52は、光沢(艶)が第1表面保護層51よりも大きくなっているため、第2表面保護層52の表面の平滑度を高めることができ、指紋(手垢)汚れが付き難くなり、化粧シート1の耐汚染性を向上。耐汚染性の向上効果は、第2表面保護層52の塗布量が低塗布量であっても得られできる。また、アメリカ等で人気な塗装調の絵柄表現(木目表現等)を行うことができる。また、第2表面保護層52の白濁が低減されるため、より繊細で透明感のある絵柄の意匠表現が可能になる。
【0036】
また、第1表面保護層51を部分的に被覆する表面保護層7の形状は、特に限定されず、丸、四角形、六角形等の規則的に並んだ定形の形状としても良く、不定型な絵柄形状としても良い。また、絵柄模様層4の絵柄と同調させた形状としても良く、これにより絵柄をよりリアルに視認させ、意匠性を向上することができる。
【0037】
このように、本実施形態において第1表面保護層51及び第2表面保護層は熱硬化型樹脂を含んで形成されている。
なお、本実施形態では、バインダーとして、熱硬化型樹脂を用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、第1表面保護層51及び第2表面保護層52を形成するバインダーとして電離放射線硬化型樹脂を用いる構成としてもよい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。これにより、第2表面保護層52、つまり、化粧シート1の最表面層の硬度を向上でき、化粧シート1の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる。また、例えば、バインダーとして、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物を用いる構成としてもよい。
また、本実施形態では、第2表面保護層52を形成する熱硬化型樹脂に、合成樹脂ビーズを添加する例を示したが、他の構成を採用してもよく、例えば、無機化合物のフィラーを添加する構成としてもよい。
【0038】
(変形例)
本実施形態では、第1表面保護層51と第2表面保護層52との光沢差、第1表面保護層51と第2表面保護層52との高低差及び第2表面保護層52を形成する樹脂の粘度設計により、視覚的な立体感と触感による立体感とを感じさせる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、化粧シート1にエンボス加工によるエンボスが施され、エンボスにより、触感による立体感をより感じさせる構成としてもよい。この場合、エンボス加工では、深度15μmの以上の凹部をエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、化粧シート1に凹凸形状を施すようにしてもよい。硬度の計測方法としては、例えば、JIS K 6301 A型を用いることができる。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0039】
(製造方法)
化粧シート1は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の構成を有するものである。
(1)第1の工程
第1の工程は、基材層2(例えば、薄葉紙)の一方の面側に、下地着色層3、絵柄模様層4を順次印刷して形成する工程である。
(2)第2の工程
第1の工程で作製した絵柄模様層4上に艶消し剤を添加した樹脂材料(例えば熱硬化型樹脂)を塗工して硬化し、艶消し層である第1表面保護層51を形成する。さらに第1表面保護層51上に樹脂材料(例えば熱硬化型樹脂)を塗工して硬化し、第2表面保護層52を形成する。第2表面保護層52を形成する熱硬化型樹脂には、合成樹脂ビーズを添加してもよい。
第1表面保護層51および第2表面保護層52は、例えばグラビア法により塗布する。また、第2表面保護層52の樹脂材料である熱硬化型樹脂の塗工時の粘度を、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度とする。
なお、本実施形態では、表面保護層5が2層構造である例を説明したが、本開示はこれに限られず、表面保護層5は3層以上であってもよい。この場合、例えば、艶消し層である第1表面保護層51を2層以上としてもよいし、第1表面保護層51の全面を覆う艶高層を形成し、当該艶高層上を部分的に覆う第2表面保護層52を形成してもよい。
【0040】
このように、本実施形態にかかる化粧シート1の製造方法は、基材層1上に、下地着色層3、絵柄模様層4を順に形成する工程と、絵柄模様層4上に樹脂材料(第一の樹脂材料)を塗布及び硬化し、当該熱硬化型樹脂を用いて形成された第1表面保護層51上に部分的に樹脂材料(第二の樹脂材料)を塗布及び硬化して第2表面保護層52を形成して、複層構造(本例では2層構造)の表面保護層5を形成する工程と、を備え 第2表面保護層52を形成する樹脂材料(例えば、熱硬化型樹脂)は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する。
これにより、自然素材(例えば、木の板)を再現した強い触感を有する化粧シート1を得ることができる。
【0041】
<第1実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧シート1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係る化粧シート1は、基材層2の一方の面側に、下地着色層3、絵柄模様層4、表面保護層5が順に形成され、表面保護層5は、絵柄模様層4上に形成された艶消し層である第1表面保護層51と、第1表面保護層51上に部分的に形成された第2の表面保護層を52とを有し、第2表面保護層52は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する樹脂材料で形成されている。
この構成によれば、自然素材(例えば、木の板)の表面に近い強い手触り感(触感)を再現し、強い触感を有する化粧シート1を得ることができる。
(2)また、本実施形態に係る化粧シート1において、第2表面保護層52を形成する樹脂材料は、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7.5秒以上8秒以下の範囲内である。
この構成によれば、より確実に強い触感を有する化粧シート1を得ることができる。
(3)また、本実施形態に係る化粧シート1において、第1表面保護層51及び第2表面保護層52は、熱硬化型樹脂を含んで形成されている。
この構成によれば、化粧シート1の耐傷性を向上することができる。
【0042】
(4)また、本実施形態に係る化粧シート1において、第2表面保護層52は、前記艶消し層の10%以上90%未満の面積を被覆している。
これにより、化粧シート1をより耐傷性や耐汚染性に優れたものとすることができる。
(5)また、本実施形態に係る化粧シート1において第2表面保護層52は、合成樹脂ビーズを含む。
これにより、化粧シート1の表面が木の板のような自然素材の表面に近い手触り感となり得る。
(6)また、本実施形態に係る化粧シート1において第2表面保護層52が含有する合成樹脂ビーズは、平均粒径が30μm以上である。
これにより、化粧シート1の表面の手触り感を、より木の板の表面に近づけることができる。
(7)また、本実施形態に係る化粧シート1において第2表面保護層52の表面は、最大高さRmax値が20μm以上である。
これにより、触感による立体感をより適切に感じさせることができる。
(8)また、本実施形態に係る化粧シート1において、合成樹脂ビーズを含有する第2表面保護層52の表面は、最大高さRmax値が60μm以上である。
これにより、触感による立体感をより強く感じさせることができる。
【0043】
(9)また、本実施形態に係る化粧シート1において、基材層2は、薄葉紙で形成され、薄葉紙は、坪量が20g/m2以上100g/m2以下である。
これにより、化粧シート1に良好な手触りを付与し、且つ加工適正(例えば、曲げ加工性)を向上することができる。
【0044】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る化粧板について、
図2を用いて説明する。
図2は、本開示の第2実施形態に係る化粧板10の一構成例を説明するための断面図である。
(化粧板)
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る化粧板10は、上述した化粧シート1の基材層2の他方の面を、基板9に貼り合わせてなる。すなわち、本実施形態に係る化粧板10は、基材層2の一方の面側に、下地着色層3、絵柄模様層4、表面保護層5(第1表面保護層51、第2表面保護層52)がこの順に積層されており、基材層2の他方の面上に、基板9が設けられている。つまり、化粧板10は上述した化粧シート1と、上述した化粧シート1が少なくとも一方の面に貼り合わされた基板9と、を備えている。なお、本実施形態においては、化粧シート1が基板9に貼り合わされているが、この上記変形例によるエンボス加工を施した化粧シート1を用いて化粧板10を形成してもよい。
【0045】
(基板)
基板9としては、例えば建具・造作材用基材が想定され、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材15の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。なお基板9は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。基材15を形成することにより、建具等を人が開閉したり、物が乗せられたり、床の近くに配設されることによる傷の発生を抑制可能な化粧板10を提供することができる。
【0046】
<第二実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧板10は、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(10)本実施形態の化粧板10は、化粧シート(化粧シート1)と、当該化粧シートが少なくとも一方の面に貼り合わされた基材15と、を備えている。
この構成によれば、化粧板10は、自然素材(例えば、木の板)の表面に近いような強い触感を有する化粧板を得ることができる。
【0047】
[実施例1]
坪量45g/m2の薄葉紙の表面に、硝化綿系グラビア印刷インキを塗布して、下地着色と隠蔽性付与を兼ねた1色の下地着色層3を形成した。次に、下地着色層3上に硝化綿系グラビア印刷インキを塗布して、導管模様を除く3色の木目柄層と、該木目柄層に同調した1色の導管柄層とを順次印刷して、絵柄模様層4を形成した。続いて、絵柄模様層4の上に、艶消し剤としてシリコーン粒子を含有する熱硬化樹脂(2液硬化型ウレタン樹脂)を層厚みが7.0μm、乾燥後塗布量が3.0g/m2になるよう塗工して、第1表面保護層51を形成した。最後に、第1表面保護層51上にアクリル樹脂ビーズを含有する熱硬化樹脂(2液硬化型ウレタン樹脂)をグラビア法により塗布して、第2表面保護層52を形成した。第2表面保護層52は、第1表面保護層51の表面の面積比率で20%を覆うように形成した。また、第2表面保護層52を形成する熱硬化型樹脂の塗工時粘度を、JIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が8秒となるように調整した。塗工時の粘度は、「離合社製 ザーンカップNo.5」を用いて測定した。
以上により、木目導管模様の輪郭部の艶状態の階調(第1表面保護層51と第2表面保護層52との光沢差)により、木の板の天然導管に近似した導管溝の凹凸感を有する、希少性に優れた実施例1の化粧シートを得た。
【0048】
[実施例2]
アクリル樹脂ビーズを含有しない熱硬化型樹脂を用いて、第2表面保護層52を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
[実施例3]
第2表面保護層52を形成する熱硬化型樹脂のザーンカップ#5粘度を、流動時間が7.5秒となるように調整した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
[実施例4]
第2表面保護層52を形成する熱硬化型樹脂のザーンカップ#5粘度を、流動時間が7秒となるように調整し、当該熱硬化型樹脂には、アクリル樹脂ビーズを添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
【0049】
[比較例1]
第2表面保護層52を形成する熱硬化型樹脂の塗工時のザーンカップ#5粘度を、流動時間が12秒となるように調整した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを得た。
[比較例2]
アクリル樹脂ビーズを含有しない熱硬化型樹脂を用いて、第2表面保護層52を形成した。それ以外は、比較例1と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
【0050】
(評価)
上記の方法により得られた実施例1~4及び比較例1、2の化粧シートについて、触感評価を行った。
【0051】
[触感評価]
被験者10名に化粧シートの表面を指で触らせ、表面のざらつき具合を評価した。
板ガラスのような平滑な表面に感じるものを×、木の板の表面に近く感じるものを◎として、×、△、○、◎の4段階で評価し、最も多かった評価を採用した。
◎:表面の全体が木の板の表面に近く感じる
○:表面の大半が木の板の表面に近く感じる
△:表面の一部分が木の板の表面に近く感じる
×:表面の全体が平滑で板ガラスのように感じる
なお、本評価では、「△」以上である場合に、木の板に近似した強い触感を有する化粧シートである(合格)とした。
【0052】
(評価結果)
以下の表1に、各実施例及び比較例の化粧シートの構成及び触感の評価結果を示す。
【0053】
【0054】
表1中に表されるように、実施例1~4の触感評価の結果は、すべて「〇」以上であった。したがって、第2表面保護層52をJIS K 5600-2-2に準拠して測定されるザーンカップ5番での流動時間が7秒以上8秒以下の粘度を有する樹脂材料で形成することで、化粧シートに自然素材(例えば、木の板)に近似した手触り感、すなわち強い触感が付与されることが分かった。また、実施例1~3から、ザーンカップ#5粘度の流動時間が7.5秒以上8秒以下の範囲である場合に、化粧シートにより強い触感が付与されることが分かった。
一方、比較例1,2に示すように、ザーンカップ#5粘度の流動時間が7秒以上8秒以下の範囲でない化粧シートは、合成樹脂ビーズが添加されていない場合は触感評価が「×」となり、強い触感が付与されていないことが分かった。
【0055】
また、実施例1と実施例2において、触感評価に差が出たのは、第2表面保護層52における合成樹脂ビーズの含有の有無が影響しているもの推測できる。すなわち、実施例1の化粧シートは、第2表面保護層52が合成樹脂ビーズ(アクリルビーズ)を含有していることから、実施例2と比較し、触感の強さ(自然素材の手触り感との近似性)において有利であるものと推測できる。
【0056】
なお、本開示の化粧シート、化粧材および化粧シートの製造方法は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…化粧シート
2…基材層
3…下地着色層
4…絵柄模様層
5…表面保護層
51…第1表面保護層
52…第2表面保護層
9…基板
10…化粧板