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特開2022-170525実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170525
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20221102BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076718
(22)【出願日】2021-04-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、「未来社会創造事業」「ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 遼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恒一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健史
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 貴明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】ラボラトリーオートメーションが適用されている実験室において、実験に要する時間を最短にするような実験の計画を策定すること。
【解決手段】実験計画プログラムは、実験の内容を示す実験内容データと、実験の各工程で使用される機器の種別を示す機器種別データと、使用可能な機器を示す使用可能機器データと、機器種別データに関する効用関数を示すデータ及び使用可能機器データに関する効用関数を示すデータの少なくとも一方とを取得し、一つの機器種別データにより示される機器が実験の各工程で使用される想定の下、実験に要する時間を最短にする使用可能機器データを決定する混合整数計画問題を分枝限定法を適用して解く処理と、一つの使用可能機器データにより示される機器が実験室で使用可能である想定の下、実験に要する時間を最短にする機器種別データを決定する混合整数計画問題を分枝限定法を適用して解く処理との少なくとも一方を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示す実験内容データと、前記実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示す少なくとも一つの機器種別データと、前記実験室で前記実験に使用可能な機器を示す少なくとも一つの使用可能機器データと、前記機器種別データに関する第一効用関数を示す第一効用関数データ及び前記使用可能機器データに関する第二効用関数を示す第二効用関数データの少なくとも一方とを取得するデータ取得機能と、
一つの前記機器種別データにより示されている機器が前記実験を構成している各工程で使用される想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、前記第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第一混合整数計画問題を解く第一実験計画処理と、一つの前記使用可能機器データにより示されている機器が前記実験室で使用可能である想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、前記第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第二混合整数計画問題を解く第二実験計画処理との少なくとも一方を実行する実験計画策定機能と、
前記第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び前記第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を出力する実験計画出力機能と、
をコンピュータに実現させる実験計画プログラム。
【請求項2】
前記データ取得機能は、同時に実行され、開始時刻の差及び完了時刻の差の少なくとも一方に所定の条件が課されている少なくとも二つの工程を含んでいる前記実験の内容を示す前記実験内容データを取得し、
前記実験計画出力機能は、前記所定の条件の下で前記第二実験計画処理を実行する、
請求項1に記載の実験計画プログラム。
【請求項3】
前記データ取得機能は、前記実験を構成している各工程の前後関係を規定している前記実験内容データを取得する、
請求項1又は請求項2に記載の実験計画プログラム。
【請求項4】
同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示す実験内容データと、前記実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示す少なくとも一つの機器種別データと、前記実験室で前記実験に使用可能な機器を示す少なくとも一つの使用可能機器データと、前記機器種別データに関する第一効用関数を示す第一効用関数データ及び前記使用可能機器データに関する第二効用関数を示す第二効用関数データの少なくとも一方とを取得するデータ取得部と、
一つの前記機器種別データにより示されている機器が前記実験を構成している各工程で使用される想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、前記第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第一混合整数計画問題を解く第一実験計画処理と、一つの前記使用可能機器データにより示されている機器が前記実験室で使用可能である想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、前記第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第二混合整数計画問題を解く第二実験計画処理との少なくとも一方を実行する実験計画策定部と、
前記第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び前記第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を出力する実験計画出力部と、
を備える実験計画装置。
【請求項5】
同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示す実験内容データと、前記実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示す少なくとも一つの機器種別データと、前記実験室で前記実験に使用可能な機器を示す少なくとも一つの使用可能機器データと、前記機器種別データに関する第一効用関数を示す第一効用関数データ及び前記使用可能機器データに関する第二効用関数を示す第二効用関数データの少なくとも一方とをデータ取得部又はデータ取得機能により取得し、
一つの前記機器種別データにより示されている機器が前記実験を構成している各工程で使用される想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、前記第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第一混合整数計画問題を解く第一実験計画処理と、一つの前記使用可能機器データにより示されている機器が前記実験室で使用可能である想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、前記第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第二混合整数計画問題を解く第二実験計画処理との少なくとも一方を実験計画策定部又は実験計画策定機能により実行し、
前記第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び前記第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を実験計画出力部又は実験計画出力機能により出力する、
実験計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から生命科学等の分野の研究では、サンプルの搬送、分注、移液等の作業が煩雑であるため、効率良く研究を進めることができないことがあるという事情があった。このような事情を踏まえ、近年、これらの作業を自動的に実行するロボット等を実験室に導入して活用するラボラトリーオートメーション(Laboratory Automation)の研究開発が進められている。
【0003】
また、ラボラトリーオートメーションが適用されている実験室では、効率良く実験を進めるために、ロボット等の各機器を出来る限り実験に要する時間が短くなるように実験を構成している各工程に割り当てることが重要である。このような割り当てを支援する技術としては、例えば、特許文献1に開示されている自動実験室機器のために動作のスケジュールを組むためのコンピュータ実装方法が挙げられる。
【0004】
このコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの命令を受けるステップと、自動実験室機器の1つ以上のリソース記述、自動実験室機器の1つ以上のプロトコル記述、目的関数、および少なくとも1つの命令を使用して、1つ以上の最適化問題インスタンスを生成するステップとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-81081号公報
【0006】
しかしながら、上述したコンピュータ実装方法は、実験に要する時間を最短にするように、ロボット等の各機器を実験を構成している各工程に割り当てることができないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ラボラトリーオートメーションが適用されている実験室において、実験に要する時間を最短にするような実験の計画を策定することができる実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示す実験内容データと、前記実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示す少なくとも一つの機器種別データと、前記実験室で前記実験に使用可能な機器を示す少なくとも一つの使用可能機器データと、前記機器種別データに関する第一効用関数を示す第一効用関数データ及び前記使用可能機器データに関する第二効用関数を示す第二効用関数データの少なくとも一方とを取得するデータ取得機能と、一つの前記機器種別データにより示されている機器が前記実験を構成している各工程で使用される想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、前記第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第一混合整数計画問題を解く第一実験計画処理と、一つの前記使用可能機器データにより示されている機器が前記実験室で使用可能である想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、前記第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第二混合整数計画問題を解く第二実験計画処理との少なくとも一方を実行する実験計画策定機能と、前記第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び前記第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を出力する実験計画出力機能と、
をコンピュータに実現させる実験計画プログラムである。
【0009】
また、上述した実験計画プログラムにおいて、前記データ取得機能が、同時に実行され、開始時刻の差及び完了時刻の差の少なくとも一方に所定の条件が課されている少なくとも二つの工程を含んでいる前記実験の内容を示す前記実験内容データを取得し、前記実験計画出力機能が、前記所定の条件の下で前記第二実験計画処理を実行してもよい。
【0010】
また、上述した実験計画プログラムにおいて、前記データ取得機能は、前記実験を構成している各工程の前後関係を規定している前記実験内容データを取得してもよい。
【0011】
本発明の一態様は、同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示す実験内容データと、前記実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示す少なくとも一つの機器種別データと、前記実験室で前記実験に使用可能な機器を示す少なくとも一つの使用可能機器データと、前記機器種別データに関する第一効用関数を示す第一効用関数データ及び前記使用可能機器データに関する第二効用関数を示す第二効用関数データの少なくとも一方とを取得するデータ取得部と、一つの前記機器種別データにより示されている機器が前記実験を構成している各工程で使用される想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、前記第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第一混合整数計画問題を解く第一実験計画処理と、一つの前記使用可能機器データにより示されている機器が前記実験室で使用可能である想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、前記第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第二混合整数計画問題を解く第二実験計画処理との少なくとも一方を実行する実験計画策定部と、前記第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び前記第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を出力する実験計画出力部と、を備える実験計画装置である。
【0012】
本発明の一態様は、同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示す実験内容データと、前記実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示す少なくとも一つの機器種別データと、前記実験室で前記実験に使用可能な機器を示す少なくとも一つの使用可能機器データと、前記機器種別データに関する第一効用関数を示す第一効用関数データ及び前記使用可能機器データに関する第二効用関数を示す第二効用関数データの少なくとも一方とをデータ取得部又はデータ取得機能により取得し、一つの前記機器種別データにより示されている機器が前記実験を構成している各工程で使用される想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、前記第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第一混合整数計画問題を解く第一実験計画処理と、一つの前記使用可能機器データにより示されている機器が前記実験室で使用可能である想定の下、前記実験に要する時間を最短にする前記機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、前記第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して前記第二混合整数計画問題を解く第二実験計画処理との少なくとも一方を実験計画策定部又は実験計画策定機能により実行し、前記第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び前記第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を実験計画出力部又は実験計画出力機能により出力する、実験計画方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラボラトリーオートメーションが適用されている実験室において、実験に要する時間を最短にするような実験の計画を策定することができる実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る実験計画装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る実験計画装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る実験計画装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態の第一適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態の第一適用例に係る実験に要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態の第二適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態の第二適用例に係る実験に要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図12】本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。
図13】本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図14】本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図15】本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図16】本発明の実施形態の第三適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。
図17】本発明の実施形態の第三適用例に係る実験に要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図18】本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。
図19】本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図20】本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図21】本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図22】本発明の実施形態の第四適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。
図23図21に示した有効非巡回グラフにより示される実験を三つ完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図24】本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。
図25】本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図26】本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図27】本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図28】本発明の実施形態の第五適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。
図29図27に示した有向非巡回グラフにより示される実験を三つ出来る限り同時に実施する場合に、これら三つの実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図30図27に示した有向非巡回グラフにより示される実験を三つ出来る限り個別に実施する場合に、これら三つの実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図31】本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。
図32】本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図33】本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図34】本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。
図35】本発明の実施形態の第六適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。
図36図35に示した第三機器を一台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図37図35に示した第三機器を二台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図38図35に示した第三機器を三台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
図39図35に示した第三機器を四台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図39を参照しながら実施形態に係る実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法について説明する。
【0016】
まず、図1を参照しながら本発明の実施形態に係る実験計画装置10のハードウェア構成の一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る実験計画装置のハードウェア構成の一例を示す図である。実験計画装置10は、図1に示すように、プロセッサ11と、主記憶装置12と、通信インターフェース13と、補助記憶装置14と、入出力装置15と、バス16とを備える。
【0017】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、実験計画プログラム100を読み出して実行し、実験計画装置10が有する各機能を実現させる。また、プロセッサ11は、実験計画プログラム100以外のプログラムを読み出して実行し、実験計画装置10が有する各機能を実現させる上で必要な機能を実現させてもよい。
【0018】
主記憶装置12は、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、プロセッサ11により読み出されて実行される実験計画プログラム100その他実験計画プログラムを予め記憶している。
【0019】
通信インターフェース13は、ネットワークを介して他の機器と通信を実行するためのインターフェース回路である。また、ネットワークは、例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、インターネット、イントラネットである。
【0020】
補助記憶装置14は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、ROM(Read Only Memory)である。
【0021】
入出力装置15は、例えば、入出力ポート(Input/Output Port)である。入出力装置15は、例えば、入力装置、出力装置が接続されている。入力装置は、例えば、タッチパネルディスプレイ、マウス、キーボードであり、実験計画装置10の操作、実験計画装置10へのデータの入力に使用される。出力装置は、例えば、タッチパネルディスプレイ、スピーカであり、実験計画装置10がユーザに情報を提示するために使用される。
【0022】
次に、図2を参照しながら実験計画装置のソフトウェア構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る実験計画装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、実験計画プログラム100は、データ取得機能101と、実験計画策定機能102と、実験計画出力機能103とを備える。データ取得機能101、実験計画策定機能102及び実験計画出力機能103は、いずれもプロセッサ11が主記憶装置12に格納されている実験計画プログラム100を読み出して実行することにより実現される。
【0023】
データ取得機能101は、実験内容データと、少なくとも一つの機器種別データと、少なくとも一つの使用可能機器データと、第一効用関数データ及び第二効用関数データの少なくとも一方とを取得する。
【0024】
実験内容データは、同時に実行される少なくとも二つの工程を含んでおり、実験室で実施される実験の内容を示すデータである。例えば、実験内容データは、実験を構成している各工程の内容を示すデータである。実験を構成している各工程の内容としては、例えば、各工程で使用される機器、各工程に要する時間、各行程の前後関係、各工程に割り当てられており、各工程を特定する工程番号が挙げられる。
【0025】
なお、データ取得機能101は、同時に実行され、開始時刻の差及び完了時刻の差の少なくとも一方に所定の条件が課されている少なくとも二つの工程を含んでいる実験の内容を示す実験内容データを取得してもよい。また、データ取得機能101は、実験を構成している各工程の前後関係を規定している実験内容データを取得してもよい。このような実験内容データとしては、例えば、実験を構成している各工程の前後関係を規定している有向非巡回グラフを示すデータが挙げられる。
【0026】
機器種別データは、実験を構成している各工程で使用される機器の種別を示すデータである。使用可能機器データは、実験室で実験に使用可能な機器を示すデータである。第一効用関数データは、機器種別データ及び後述する第一混合整数計画問題に関する効用関数を示すデータである。第二効用関数は、使用可能機器データ及び後述する第二混合整数計画問題に関する効用関数を示すデータである。
【0027】
また、実験計画装置10が一つの機器種別データにより示されている機器が実験を構成している各工程で使用される想定の下、当該実験に要する時間を最短にする使用可能機器データを選択する場合、データ取得機能101は、第二効用関数データを取得する必要がある。一方、実験計画装置10が一つの使用可能機器データにより示されている機器が実験室で使用可能である想定の下、当該実験に要する時間を最短にする機器種別データを選択する場合、データ取得機能101は、第一効用関数データを取得する必要がある。
【0028】
実験計画策定機能102は、第一実験計画処理及び第二実験計画処理の少なくとも一方を実行する。第一実験計画処理は、一つの機器種別データにより示されている機器が実験を構成している各工程で使用される想定の下、実験に要する時間を最短にする使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して第一混合整数計画問題を解く処理である。第二実験計画処理は、一つの使用可能機器データにより示されている機器が実験室で使用可能である想定の下、実験に要する時間を最短にする機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して第二混合整数計画問題を解く処理である。
【0029】
例えば、実験計画策定機能102は、初めに、実験に要する時間を最短にする機器種別データを決定する問題をジョブショップスケジューリング問題(JSP:Job-shop Scheduling Problem)の一つであるS‐LAB(Scheduling for Laboratory Automation in Biology)問題として定式化する。一般的に、ジョブショップスケジュール問題では、種別が互いに異なる複数の機器と、特定の順番で実施される複数の工程から構成されている実験とが定義される。また、これらの工程は、いずれも当該工程に要する時間及び当該工程で使用される機器の種別が予め決められている。ジョブショップスケジューリング問題の目的は、実験に要する時間が最短となるように、いずれかの機器を各工程に割り当てることである。具体的には、実験計画策定機能102は、実験に要する時間を最短にする機器種別データを決定する問題を次の式(1)から式(13)を使用してS‐LAB問題として定式化する。なお、以下の式に含まれている太字のZは、正の整数の集合を表している。
【0030】
式(1)は、実験室に設置されている機器の種別の総数Kを表している。式(2)は、実験室に設置されている機器の総数Mを表している。式(3)は、ある機器の種別Tを表している。式(4)は、同時に実施される実験の数Jを表している。式(5)は、実験インデックスjが割り当てされている実験を構成している工程の総数Nを表している。式(6)は、同時に実施される実験の組に含まれている工程の総数Nを表している。式(7)は、a番目の工程を表している。また、正の整数aは、1以上N以下である。式(8)は、二つの工程の前後関係を表している。式(8)は、工程Oの後に工程Oが実行される場合、「1」となり、それ以外の場合、「0」となる。また、正の整数bは、1以上N以下である。式(9)は、工程Oを実行可能な機器の種別を表している。式(10)は、工程Oを実行するために要する時間を表している。式(11)は、同時に実行される二つの工程の開始時刻の差又は完了時刻の差に課されている所定の条件の総数を表している。式(12)は、同時に実行される二つの工程の開始時刻の差又は完了時刻の差の最大値を表している。また、正の整数jは、同時に実行される二つの工程の開始時刻の差又は完了時刻の差に課されている所定の条件のインデックスを表している。式(13)は、同時に実行される二つの工程の間で決められている緩衝時間を表している。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
【数3】
【0034】
【数4】
【0035】
【数5】
【0036】
【数6】
【0037】
【数7】
【0038】
【数8】
【0039】
【数9】
【0040】
【数10】
【0041】
【数11】
【0042】
【数12】
【0043】
【数13】
【0044】
S‐LAB問題の目的は、全ての実験を完了させるために要する時間が最短となるように、いずれかの機器を各工程に割り当てることである。また、実験計画策定機能102は、次の式(14)で表される項目及び式(15)で表される項目を導く。式(14)は、工程Oの開始時刻を表している。式(15)は、工程Oを実行する機器の機器番号を表している。
【0045】
【数14】
【0046】
【数15】
【0047】
そして、実験計画策定機能102は、実験を構成している全ての工程を実行するために要する時間が最短となるようにいずれかの機器を各工程に割り当てる。この処理は、次の式(16)で表される。
【0048】
【数16】
【0049】
また、実験計画策定機能102は、S‐LAB問題を混合整数計画問題(MIP:Mixed-Integer Programming Problem)として定式化し、混合整数計画問題に分枝限定法を適用して解くために、以下に説明する線形制約を必要とする。
【0050】
式(8)で表される目的関数は、最後に実行される工程の完了時刻が最も早い時刻になることを要求している。しかし、混合整数計画問題を解いても、最後に実行される工程を直接的に決定することはできない。このため、実験計画策定機能102は、次の式(17)で表される変数Ωが導入されている。また、変数Ωは、各工程の完了時刻よりも遅い時刻を示している必要があるという制約が課されている。この制約は、次の式(18)で表される。そして、実験計画策定機能102は、当該変数を最小にすることにより、最後に実行される工程の完了時刻が最も早くなるように、いずれかの機器を各工程に割り当てる。
【0051】
【数17】
【0052】
【数18】
【0053】
また、混合整数計画問題として定式化されているS‐LAB問題は、一つの機器が同時に二つ以上の工程に使用され得ないという制約及び有向グラフにより規定される工程の順序が必ず守られる必要があるという制約が課されている必要がある。このため、実験計画策定機能102は、次の式(19)で定義される量及び次の式(20)で定義される量を使用する。
【0054】
式(19)で定義される量は、ブール代数学的に式(15)で表される量と等価な量であり、式(15)で表される量が「m」に等しい場合、「1」となり、それ以外の場合、「0」となる。式(20)で定義される量は、同じ機器が使用される二つの工程の間における優先度の優劣を示しており、式(21)に示すように、E=E=m、かつ、工程Oの優先度の方が工程Oの優先度よりも高い場合、「1」となり、それ以外の場合、「0」となる。
【0055】
【数19】
【0056】
【数20】
【0057】
【数21】
【0058】
ただし、式(19)から式(21)で表される制約は、線形制約を使用して直接的に記述することが困難である。そこで、実験計画策定機能102は、次の式(22)から式(25)を使用して式(20)により定義されるに関する制約を記述し、次の式(26)を使用して同じ機器が使用される二つの工程の間における優先度の優劣に関する制約を記述している。また、実験計画策定機能102は、次の式(27)で表される制約も記述している。式(22)は、一つの機器が同時に二つ以上の工程に使用され得ないという制約を表している。式(23)は、同じ機器が使用される二つの工程の間における優先度の優劣を表している。式(24)は、式(23)により表される制約が最大でも一つの機器について存在し得ることを表している。式(25)は、式(23)により表される制約が各工程の前後関係に反していてはならないという制約を表している。式(26)は、一つの機器が同時に二つ以上の工程に使用され得ないという制約を表している。式(27)は、異なる工程同士の前後関係が維持されなければならないという制約を表している。
【0059】
【数22】
【0060】
【数23】
【0061】
【数24】
【0062】
【数25】
【0063】
【数26】
【0064】
【数27】
【0065】
また、S-LAB問題において、同時に実行される二つの工程の開始時刻の差及び完了時刻の差の少なくとも一方に課されている所定の条件は、いずれも工程Oと、工程Oの開始時刻又は完了時刻に関する制約と、工程Oと、工程Oの開始時刻又は完了時刻に関する制約と、工程Oの開始時刻又は完了時刻と工程Oの開始時刻又は完了時刻との差の最大値に関する制約とにより構成されている。また、当該所定の条件は、任意に選択された二つの工程の間で設定され得る条件である。具体的には、当該所定の条件は、次の式(28)から式(31)のいずれかにより表される。式(28)は、工程Oの開始時刻と工程Oの開始時刻との差がα以下であるという制約を表している。式(29)は、工程Oの開始時刻と工程Oの完了時刻との差がα以下であるという制約を表している。式(30)は、工程Oの完了時刻と工程Oの開始時刻との差がα以下であるという制約を表している。式(31)は、工程Oの完了時刻と工程Oの完了時刻との差がα以下であるという制約を表している。
【0066】
【数28】
【0067】
【数29】
【0068】
【数30】
【0069】
【数31】
【0070】
また、実験計画策定機能102は、以前に取り扱った実験と同種の実験について、実験に要する時間が最短となるように各機器を各工程に割り当てる処理を再び実行する場合、当該実験に要する時間が最短にしなければならないという制約及び以前に当該処理が実行された実験の内容を変更してはならないという制約の下で当該処理を実行する必要がある。ここで、実験計画策定機能102は、以前に取り扱った実験に含まれる工程の総数N´及び以前に取り扱った実験に関する正の整数b´を含んでいる次の式(32)及び式(33)により以前に取り扱った実験と当該実験と同種の実験との関係を規定する。式(32)は、以前に取り扱われた実験の工程Ob´の前に当該実験と同種の実験の工程Oが実行される場合における二つの工程の関係を表している。式(33)は、以前に取り扱われた実験の工程Ob´の後に当該実験と同種の実験の工程Oが実行される場合における二つの工程の関係を表している。また、式(32)は、式(34)に示すように、E=Eb´が成立する場合、「1」となり、それ以外の場合、「0」となる。また、式(33)は、式(35)に示すように、E=Eb´が成立する場合、「1」となり、それ以外の場合、「0」となる。
【0071】
【数32】
【0072】
【数33】
【0073】
【数34】
【0074】
【数35】
【0075】
また、式(32)は、次の式(36)及び式(37)で表される制約が課されている。一方、式(33)は、次の式(36)及び式(38)で表される制約が課されている。式(36)は、式(34)で表される関係及び式(35)で表される関係が以前に取り扱われた実験に含まれている任意の工程と当該実験と同種の実験に含まれている任意の工程との間で成立しなければならないという制約を表している。式(37)及び式(38)は、一つの機器が同時に一つの工程しか実行し得ないという制約を表している。
【0076】
【数36】
【0077】
【数37】
【0078】
【数38】
【0079】
そして、実験計画策定機能102は、S‐LAB問題を混合整数計画問題の一例として定式化する。混合整数計画問題では、N次元の解空間及び当該解空間における効用関数が定義される。効用関数は、一般的には、次の式(39)で表され、より具体的には、次の式(40)で表される。また、式(40)は、式(41)で表されるN次元の実ベクトルの要素x及び式(42)で表される実定数の集合に含まれる要素cを含んでいる。
【0080】
【数39】
【0081】
【数40】
【0082】
【数41】
【0083】
【数42】
【0084】
混合整数計画問題の目的は、次の式(43)から式(45)で表される制約の下で効用関数を最大にすることである。また、式(43)は、式(46)で表される実定数の集合に含まれる要素am,n及び式(47)で表される実定数の集合に含まれる要素bを含んでいる。式(46)及び式(47)は、実験室に設置されている機器の総数Mを含んでいる。また、実験室に設置されている機器の総数Mは、一般的に言うと線形制約の数となる。式(43)等に含まれている正の整数mは、実験室に設置されている機器の種別の総数を表している。式(44)に含まれている正の整数Nは、実験を構成している工程の総数Nである。また、実験を構成している工程の総数Nは、一般的に言うと式(48)で表されるインデックスの空でない部分集合に含まれている要素の総数である。また、式(41)で表されるベクトルは、実現可能な解であるという制約を満たす。
【0085】
【数43】
【0086】
【数44】
【0087】
【数45】
【0088】
【数46】
【0089】
【数47】
【0090】
そして、混合整数計画問題の目的は、式(41)で表されるベクトルの集合の中から最適なベクトルを探し出すことである。これは、次の式(48)で表される。
【0091】
【数48】
【0092】
実験計画策定機能102は、混合整数計画問題を解いて最適な解を得るために分枝限定法(BB:branch and bound)を使用する。分枝限定法は、分枝操作と限定操作とを繰り返し交互に実行することにより、元々の混合整数計画問題Pの下位の問題を再帰的に生成し、解空間から余分な空間を取り除いていく方法である。
【0093】
まず、実験計画策定機能102は、下位の問題Pの線形緩和問題P´を解く。線形緩和問題P´は、下位の問題Pから式(45)で表される制約を除いた問題である。したがって、式(41)で表される実ベクトルは、正の整数だけではなく、任意の正の実数をとり得る。実験計画策定機能102は、線形緩和問題P´を解くことにより、下位の問題Pの最適な効用関数の上界を算出する。
【0094】
次に、実験計画策定機能102は、下位の問題Pの最適な効用関数の上界に基づく分枝操作を実行することにより、下位の問題Pの下位の問題を二つ生成する。もし線形緩和問題P´の最適な解x´は、下位の問題Pにおいて実現不可能である場合、少なくとも一つの正の整数ではない実ベクトルの要素xを含むこととなる。したがって、実験計画策定機能102は、分枝操作を実行することにより、下位の問題Pの下位の問題を二つ生成し得る。また、これら二つの下位の問題のうちの一方は、次の式(49)で表される制約が課されている。また、これらの二つの下位の問題のうちの他方は、次の式(50)で表される制約が課されている。式(49)の右辺は、式(49)の左辺以下の最大の整数を表している。一方、式(50)の右辺は、式(50)の左辺以上の最小の整数を表している。
【0095】
【数49】
【0096】
【数50】
【0097】
そして、実験計画策定機能102は、限定操作を実行することにより、混合整数計画問題Pの最適な解を含まないことが証明されている下位の問題を取り除く。また、分枝操作及び限定操作を所定の回数だけ繰り返した時点における混合整数計画問題Pの最適な解x´´が次の三つのケースのいずれかに合致する場合、混合整数計画問題Pの最終的な解は、下位の問題Pについて更なる分枝操作を実行しても変化しない。
【0098】
一つ目のケースは、下位の問題Pの線形緩和問題P´に最適な解x´が存在し、かつ、最適な解x´が下位の問題Pにおいて実現可能な解であるため、解x´が下位の問題Pの最適な解となるケースである。二つ目のケースは、下位の問題Pの線形緩和問題P´に最適な解x´が存在するものの、解x´が次の式(51)を満たしているケースである。また、二つ目のケースは、下位の問題Pが解x´´よりも好適であり、実現可能な解を有しないケースともいえる。三つ目のケースは、線形緩和問題P´に解が存在しないため、下位の問題Pに解が存在しないケースである。実験計画策定機能102は、これら三つのケースのいずれかに合致した場合、それ以上分枝操作を実行せずに、限定操作を実行して下位の問題Pの下位の問題を生成する。
【0099】
【数51】
【0100】
実験計画策定機能102は、分枝限定法を使用して最適な解を探索する処理を実行し、下位の問題の効用関数の最大値の上界を単調に減少させ、下位の問題の効用関数の最大値の下界を単調に増加させる。これにより、実験計画策定機能102は、限定操作により余分な下位の問題を取り除く操作を更に効果的に実行し得る。つまり、実験計画策定機能102は、解空間のうち最適な解を探索する対象とする部分を限定していくことにより、最適な解を効率的に発見することができる。
【0101】
実験計画出力機能103は、第一混合整数計画問題の解を示す第一解データ及び第二混合整数計画問題の解を示す第二解データの少なくとも一方を出力する。例えば、実験計画出力機能103は、上述した方法で探索して発見された解により示される各工程への各機器の割り当てを示す画像をディスプレイに表示するためのデータを出力する。
【0102】
次に、図3を参照しながら実験計画装置10が実行する処理の一例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る実験計画装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0103】
ステップS10において、データ取得機能101は、実験内容データと、機器種別データと、使用可能機器データと、第一効用関数データ及び第二効用関数データとの少なくとも一方とを取得する。
【0104】
ステップS20において、実験計画策定機能102は、第一実験計画処理と、第二実験計画処理との少なくとも一方を実行する。
【0105】
ステップS30において、実験計画出力機能103は、第一解データ及び第二解データの少なくとも一方を取得する。
【0106】
次に、図4から図9を参照しながら実験計画プログラム100の第一適用例について説明する。図4は、本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。第一適用例に係る実験は、図4に示すように、機器の種別1の機器により実行される工程と、当該工程の後に機器の種別2の機器により実行される工程と、機器の種別3の機器により実行される工程とを含んでいる。また、機器の種別2の機器により実行される工程と、機器の種別3の機器により実行される工程とは、同時に実行される。さらに、機器の種別2の機器により実行される工程の開始時刻と、機器の種別3の機器により実行される工程の開始時刻との差は、1分以内である必要がある。
【0107】
図5は、本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図5は、図4に示した工程の工程番号と、これらの工程で使用される機器の種別と、これらの工程に要する時間とを示している。図5の上から二行目に示すように、工程番号「1」が割り当てられている工程には機器の種別1の機器が使用される必要があり、実行に60分を要する。図5の上から三行目に示すように、工程番号「2」が割り当てられている工程には機器の種別2の機器が使用される必要があり、実行に60分を要する。図5の上から四行目に示すように、工程番号「3」が割り当てられている工程には機器の種別2の機器が使用される必要があり、実行に120分を要する。
【0108】
図6は、本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図6は、図4に示した工程の前後関係を示している。図6の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の後に工程番号「2」が割り当てられた工程が続くことを示している。図6の上から三行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の後に工程番号「3」が割り当てられた工程が続くことを示している。
【0109】
図7は、本発明の実施形態の第一適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図7は、工程番号「2」が割り当てられた工程の開始時刻と工程番号「3」が割り当てられた工程の開始時刻との差が1分以内でなければならないという制約を示している。
【0110】
図8は、本発明の実施形態の第一適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。図8は、各工程と、実験室で使用可能な機器の名称と、実験室で使用可能な機器の種別との対応関係を示している。図8の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程が機器の種別1の機器で実行される必要があり、このような機器として機器A12が実験室に設置されていることを示している。図8の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程が機器の種別2の機器で実行される必要があり、このような機器として機器B12が実験室に設置されていることを示している。図8の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程が機器の種別3の機器で実行される必要があり、このような機器として機器C12が実験室に設置されていることを示している。
【0111】
図9は、本発明の実施形態の第一適用例に係る実験に要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図9は、実験計画プログラム100が図4から図8に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。図9に示すように、実験計画プログラム100は、初めの1時間で工程番号「1」が割り当てられている工程を機器A12を使用して実行し、その後に、工程番号「2」が割り当てられている工程を機器B12を使用して実行し、工程番号「3」が割り当てられている工程を機器C12を使用して実行するようにしている。また、図9に示した結果は、工程番号「2」が割り当てられた工程の開始時刻と工程番号「3」が割り当てられた工程の開始時刻との差が1分以内でなければならないという制約を満たしている。また、図9は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、三つの工程から構成されている実験が180分で完了することを示している。
【0112】
次に、図10及び図11を参照しながら実験計画プログラム100の第二適用例について説明する。図10は、本発明の実施形態の第二適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。第二適用例に係る実験は、図10に示すように、機器の種別1の機器により実行される工程と、当該工程の後に機器の種別2の機器により実行される工程と、機器の種別3の機器により実行される工程とを含んでいる。また、機器の種別2の機器により実行される工程と、機器の種別3の機器により実行される工程とは、同時に実行される。さらに、機器の種別2の機器により実行される工程の完了時刻と、機器の種別3の機器により実行される工程の完了時刻との差は、1分以内である必要がある。なお、第二適用例において、実験内容データにより示される内容は、図4から図7により示される内容と同様である。また、第二適用例において、使用可能機器データにより示される内容は、図8により示される内容と同様である。
【0113】
図11は、本発明の実施形態の第二適用例に係る実験に要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図11は、実験計画プログラム100が各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。図11に示すように、実験計画プログラム100は、初めの1時間で工程番号「1」が割り当てられている工程を機器A12を使用して実行し、その後に、工程番号「2」が割り当てられている工程を機器B12を使用して実行し、工程番号「3」が割り当てられている工程を機器C12を使用して実行するようにしている。また、図11に示した結果は、工程番号「2」が割り当てられた工程の開始時刻と工程番号「3」が割り当てられた工程の開始時刻との差が1分以内でなければならないという制約を満たしている。また、図11は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、三つの工程から構成されている実験が180分で完了することを示している。
【0114】
次に、図12から図17を参照しながら実験計画プログラム100の第三適用例について説明する。図12は、本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。第三適用例に係る実験は、図12に示すように、機器の種別1の機器により実行される一つの工程と、機器の種別2の機器により実行される三つの工程と、機器の種別3の機器により実行される一つの工程と、機器の種別4の機器により実行される二つの工程とを含んでいる。また、図12に示した斜線ハッチングを施された長方形は、サンプルを機器又は研究員により移動させる工程を示している。
【0115】
図13は、本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図13は、図12に示した工程の工程番号と、これらの工程で使用される機器の種別と、これらの工程に要する時間とを示している。図13の上から二行目に示すように、工程番号「1」が割り当てられている工程には機器の種別5の機器が使用される必要があり、実行に2分を要する。図13の上から三行目に示すように、工程番号「2」が割り当てられている工程には機器の種別2の機器が使用される必要があり、実行に12分を要する。図13の上から四行目に示すように、工程番号「3」が割り当てられている工程には機器の種別5の機器が使用される必要があり、実行に3分を要する。また、図13の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0116】
図14は、本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図14は、図12に示した工程の前後関係を示している。図14の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の後に工程番号「2」が割り当てられた工程が続くことを示している。図14の上から三行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程の後に工程番号「4」が割り当てられた工程が続くことを示している。図14の上から四行目は、工程番号「5」が割り当てられた工程の後に工程番号「6」が割り当てられた工程が続くことを示している。また、図14の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0117】
図15は、本発明の実施形態の第三適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図15の上から二行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「9」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。図15の上から三行目は、工程番号「4」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「9」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。図15の上から四行目は、工程番号「4」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「12」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。また、図15の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0118】
図16は、本発明の実施形態の第三適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。図16は、各工程と、実験室で使用可能な機器の名称と、実験室で使用可能な機器の種別との対応関係を示している。図16の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程が機器の種別1の機器で実行される必要があり、このような機器として機器A3が実験室に設置されていることを示している。図16の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程が機器の種別2の機器で実行される必要があり、このような機器として機器B3が実験室に設置されていることを示している。図16の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程が機器の種別3の機器で実行される必要があり、このような機器として機器C3が実験室に設置されていることを示している。また、図16の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0119】
図17は、本発明の実施形態の第三適用例に係る実験に要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図17は、実験計画プログラム100が図12から図16に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図17は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、三つの工程から構成されている実験が87分で完了することを示している。
【0120】
次に、図18から図23を参照しながら実験計画プログラム100の第四適用例について説明する。図18は、本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。第四適用例に係る実験は、図18に示すように、機器の種別1の機器により実行される工程を含んでいる。
【0121】
図19は、本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図19は、図18に示した工程の工程番号と、これらの工程で使用される機器の種別と、これらの工程に要する時間とを示している。図19の上から二行目に示すように、工程番号「1」が割り当てられている工程には機器の種別1の機器が使用される必要があり、実行に425分を要する。
【0122】
図20は、本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図20は、図18に示した工程の前後関係を示している。図18の上から二行目は、図18に一つの工程のみが示されおり、工程の前後関係を考慮する必要が無いため、「無し」と表示している。
【0123】
図21は、本発明の実施形態の第四適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図21の上から二行目は、図18に一つの工程のみが示されおり、工程の前後関係を考慮する必要が無いため、「無し」と表示している。
【0124】
図22は、本発明の実施形態の第四適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。図22は、各工程と、実験室で使用可能な機器の名称と、実験室で使用可能な機器の種別との対応関係を示している。図22の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程が機器の種別1の機器で実行される必要があり、このような機器として機器A4が実験室に設置されていることを示している。図22の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程が機器の種別2の機器で実行される必要があり、このような機器として機器B4が実験室に設置されていることを示している。
【0125】
図23は、図21に示した有効非巡回グラフにより示される実験を三つ完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図23は、実験計画プログラム100が図18から図22に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図23は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、三つの工程から構成されている実験が851分で完了することを示している。
【0126】
次に、図24から図30を参照しながら実験計画プログラム100の第五適用例について説明する。図24は、本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。第五適用例に係る実験は、図24に示すように、機器の種別1の機器により実行される二つの工程と、機器の種別2の機器により実行される一つの工程と、機器の種別3の機器により実行される一つの工程と、機器の種別4の機器により実行される三つの工程を含んでいる。また、機器の種別4の機器により実行される三つの工程は、サンプルを機器又は研究員により移動させる工程を示している。
【0127】
図25は、本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図25は、図24に示した工程の工程番号と、これらの工程で使用される機器の種別と、これらの工程に要する時間とを示している。図25の上から二行目に示すように、工程番号「1」が割り当てられている工程には機器の種別1の機器が使用される必要があり、実行に135分を要する。図25の上から三行目に示すように、工程番号「2」が割り当てられている工程には機器の種別4の機器が使用される必要があり、実行に5分を要する。図25の上から四行目に示すように、工程番号「3」が割り当てられている工程には機器の種別2の機器が使用される必要があり、実行に60分を要する。また、図25の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0128】
図26は、本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図26は、図24に示した工程の前後関係を示している。図26の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の後に工程番号「2」が割り当てられた工程が続くことを示している。図26の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程の後に工程番号「3」が割り当てられた工程が続くことを示している。図26の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程の後に工程番号「4」が割り当てられた工程が続くことを示している。また、図26の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0129】
図27は、本発明の実施形態の第五適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図27の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「3」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。図27の上から三行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「5」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。
【0130】
図28は、本発明の実施形態の第五適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。図28は、各工程と、実験室で使用可能な機器の名称と、実験室で使用可能な機器の種別との対応関係を示している。図28の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程が機器の種別1の機器で実行される必要があり、このような機器として機器A3が実験室に設置されていることを示している。図28の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程が機器の種別1の機器で実行される必要があり、このような機器として機器B3が実験室に設置されていることを示している。図28の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程が機器の種別2の機器で実行される必要があり、このような機器として機器C3が実験室に設置されていることを示している。また、図28の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0131】
図29は、図27に示した有向非巡回グラフにより示される実験を三つ出来る限り同時に実施する場合に、これら三つの実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図29は、実験計画プログラム100が図24から図28に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図29は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、三つの工程から構成されている実験が576分で完了することを示している。
【0132】
図30は、図27に示した有向非巡回グラフにより示される実験を三つ出来る限り個別に実施する場合に、これら三つの実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図30は、実験計画プログラム100が図24から図28に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図30は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、三つの工程から構成されている実験が765分で完了することを示している。
【0133】
次に、図31から図39を参照しながら実験計画プログラム100の第六適用例について説明する。図31は、本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている有向非巡回グラフの一例を示す図である。第六適用例に係る実験は、図31に示すように、機器の種別1の機器により実行される工程と、機器の種別2の機器により実行される工程と、機器の種別3の機器により実行される工程と、機器の種別4の機器により実行される工程と、機器の種別5の機器により実行される工程とを含んでいる。
【0134】
図32は、本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図32は、図31に示した工程の工程番号と、これらの工程で使用される機器の種別と、これらの工程に要する時間とを示している。図32の上から二行目に示すように、工程番号「1」が割り当てられている工程には機器の種別1の機器が使用される必要があり、実行に5分を要する。図32の上から三行目に示すように、工程番号「2」が割り当てられている工程には機器の種別2の機器が使用される必要があり、実行に10分を要する。図32の上から四行目に示すように、工程番号「3」が割り当てられている工程には機器の種別3の機器が使用される必要があり、実行に60分を要する。また、図32の上から五行目以降についても、これらと同様である。
【0135】
図33は、本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図33は、図31に示した工程の前後関係を示している。図33の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の後に工程番号「2」が割り当てられた工程が続くことを示している。図33の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程の後に工程番号「3」が割り当てられた工程が続くことを示している。図33の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程の後に工程番号「4」が割り当てられた工程が続くことを示している。
【0136】
図34は、本発明の実施形態の第六適用例に係る実験内容データにより示されている実験の内容の一例を示す図である。図34の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「2」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。図34の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「3」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。図34の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「4」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。図34の上から五行目は、工程番号「4」が割り当てられた工程の完了時刻と工程番号「5」が割り当てられた工程の開始時刻との差が10分以内でなければならないという制約を示している。
【0137】
図35は、本発明の実施形態の第六適用例に係る使用可能機器データにより示されている機器の一例を示す図である。図35は、各工程と、実験室で使用可能な機器の名称と、実験室で使用可能な機器の種別との対応関係を示している。図35の上から二行目は、工程番号「1」が割り当てられた工程が機器の種別1の機器で実行される必要があり、このような機器として第一機器A6が実験室に設置されていることを示している。図35の上から三行目は、工程番号「2」が割り当てられた工程が機器の種別2の機器で実行される必要があり、このような機器として第二機器B6が実験室に設置されていることを示している。
【0138】
図35の上から四行目は、工程番号「3」が割り当てられた工程が機器の種別3の機器で実行される必要があり、このような機器として第三機器C61が実験室に設置されていることを示している。図35の上から五行目は、工程番号「4」が割り当てられた工程が機器の種別3の機器で実行される必要があり、このような機器として第三機器C62が実験室に設置されていることを示している。図35の上から六行目は、工程番号「5」が割り当てられた工程が機器の種別3の機器で実行される必要があり、このような機器として第三機器C63が実験室に設置されていることを示している。図35の上から七行目は、工程番号「6」が割り当てられた工程が機器の種別3の機器で実行される必要があり、このような機器として第三機器C64が実験室に設置されていることを示している。
【0139】
図35の上から八行目は、工程番号「7」が割り当てられた工程が機器の種別4の機器で実行される必要があり、このような機器として第四機器D6が実験室に設置されていることを示している。図35の上から九行目は、工程番号「8」が割り当てられた工程が機器の種別5の機器で実行される必要があり、このような機器として第五機器E6が実験室に設置されていることを示している。
【0140】
図36は、図35に示した第三機器を一台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図36は、実験計画プログラム100が図31から図35に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図36は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、実験が122分で完了することを示している。
【0141】
図37は、図35に示した第三機器を二台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図37は、実験計画プログラム100が図31から図35に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図37は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、実験が91分で完了することを示している。
【0142】
図38は、図35に示した第三機器を三台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図38は、実験計画プログラム100が図31から図35に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図38は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、実験が82分で完了することを示している。
【0143】
図39は、図35に示した第三機器を四台使用して図31に示した有向非巡回グラフにより示される実験を実施する場合に、当該実験を完了させるために要する時間を最短にする実験計画の一例を示す図である。図39は、実験計画プログラム100が図31から図35に示した内容等に基づいて各工程に各機器を割り当てた結果の一例を示している。また、図39は、実験計画プログラム100により策定された実験計画により、実験が82分で完了することを示している。
【0144】
また、図36から図39を見ると、第三機器が一台から三台まで増加すると実験に要する時間が短くなるものの、第三機器が三台から四台に増加しても実験に要する時間が短くなっていないことが分かる。
【0145】
以上、実施形態に係る実験計画装置10について説明した。実験計画装置10は、実験内容データと、機器種別データと、使用可能機器データと、第一効用関数データ及び第二効用関数データの少なくとも一方とを取得する。そして、実験計画装置10は、第一実験計画処理及び第二実験計画処理の少なくとも一方を実行する。
【0146】
第一実験計画処理は、一つの機器種別データにより示されている機器が実験を構成している各工程で使用される想定の下、実験に要する時間を最短にする使用可能機器データを決定する問題を第一混合整数計画問題として定式化し、第二効用関数に基づく分枝限定法を適用して第一混合整数計画問題を解く処理である。第二実験計画処理は、一つの使用可能機器データにより示されている機器が実験室で使用可能である想定の下、実験に要する時間を最短にする機器種別データを決定する問題を第二混合整数計画問題として定式化し、第一効用関数に基づく分枝限定法を適用して第二混合整数計画問題を解く処理である。
【0147】
これにより、実験計画装置10は、ラボラトリーオートメーションが適用されている実験室において、実験に要する時間を最短にするような実験の計画を策定することができる。
【0148】
また、実験計画装置10は、同時に実行され、開始時刻の差及び完了時刻の差の少なくとも一方に所定の条件が課されている少なくとも二つの工程を含んでいる実験の内容を示す実験内容データを取得する。そして、実験計画装置10は、第一実験計画処理及び第二実験計画処理の少なくとも一方を実行する。これにより、実験計画装置10は、同時に実行され、開始時刻の差及び完了時刻の差の少なくとも一方に課されている所定の条件を満たしつつ、実験に要する時間が最短となる実験計画を策定することができる。
【0149】
また、実験計画装置10は、実験を構成している各工程の前後関係を規定している実験内容データを取得する。これにより、実験計画装置10は、実験を構成している各工程の前後関係が維持された実験計画を策定することができる。
【0150】
なお、上述した実施形態では、プロセッサ11が実験計画プログラム100を読み出して実行することにより、図2に示したデータ取得機能101、実験計画策定機能102及び実験計画出力機能103が実現される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0151】
図2に示したデータ取得機能101、実験計画策定機能102及び実験計画出力機能103の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよい。或いは、図2に示したデータ取得機能101、実験計画策定機能102及び実験計画出力機能103の少なくとも一部は、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。また、これらのハードウェアは、一つに統合されていてもよいし、複数に分かれていてもよい。
【0152】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。ただし、実験計画プログラム、実験計画装置及び実験計画方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換、組み合わせ及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。
【0153】
また、上述した本発明の実施形態の効果は、一例として説明した効果である。したがって、本発明の実施形態は、上述した効果以外にも上述した実施形態の記載から当業者が認識し得る他の効果も奏し得る。
【符号の説明】
【0154】
10…実験計画装置、11…プロセッサ、12…主記憶装置、13…通信インターフェース、14…補助記憶装置、15…入出力装置、16…バス、100…実験計画プログラム、101…データ取得機能、102…実験計画策定機能、103…実験計画出力機能
図1
図2
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図4
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