(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170540
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】リッドアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20221102BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20221102BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B60K15/05 B
H01H36/00 M
B60K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076734
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒 直久
(72)【発明者】
【氏名】武田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】成田 諭
【テーマコード(参考)】
3D038
5G046
【Fターム(参考)】
3D038CA32
3D038CA33
3D038CB01
3D038CC16
3D038CD03
5G046AA04
5G046AC52
5G046AD03
5G046AE05
(57)【要約】
【課題】最適な速度でリッドの開閉制御ができるリッドアクチュエータを提供する。
【解決手段】リッドアクチュエータ100は、リッドを回転させる回転部材と、回転部材を駆動するモータの回転軸とともに回転する磁石から発生する磁束の変化を検出するセンサと、磁束の変化に対応してセンサから出力されるパルス信号に基づき、予め設定された開閉時間でリッドが開閉動作をするようにモータをパルス幅変調制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドを回転させる回転部材と、
前記回転部材を駆動するモータの回転軸とともに回転する磁石から発生する磁束の変化を検出するセンサと、
前記磁束の変化に対応して前記センサから出力されるパルス信号に基づき、予め設定された開閉時間で前記リッドが開閉動作をするように前記モータをパルス幅変調制御する制御部と、
を備えたリッドアクチュエータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記パルス信号に基づき、前記リッドの開閉位置を検出する、請求項1に記載のリッドアクチュエータ。
【請求項3】
前記制御部は、閉状態の前記リッドの動きを規制する規制部材が前記リッドの動きを規制する位置から、閉状態の前記リッドの規制を解除する位置に移動する間に検出された前記パルス信号に基づき、前記モータの回転速度を測定し、測定した前記回転速度に基づき、前記モータをパルス幅変調制御する、請求項1又は2に記載のリッドアクチュエータ。
【請求項4】
前記制御部は、予め設定された開閉時間で前記リッドが開閉動作するように、前記パルス幅変調制御のデューティを変更する、請求項1から3の何れか一項に記載のリッドアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッドアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の給油ポートまたは充電ポートのためのフリップカバーアセンブリが開示されている。特許文献1に開示されている装置では、車両の給油ポートまたは充電ポートのフリップカバーであるリッドがモータの駆動により開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0122570号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、気温の変化などによって、モータに印加される電圧レベルが変化した場合、リッドの開閉速度が変化する。従って、モータに印加される電圧レベルが変化する場合に、最適な速度でリッドの開閉制御をいかにして実現するかについては課題が残されていた。
【0005】
本発明の目的は、最適な速度でリッドの開閉制御ができるリッドアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリッドアクチュエータは、リッドを回転させる回転部材と、前記回転部材を駆動するモータの回転軸とともに回転する磁石から発生する磁束の変化を検出するセンサと、前記磁束の変化に対応して前記センサから出力されるパルス信号に基づき、予め設定された開閉時間で前記リッドが開閉動作をするように前記モータをパルス幅変調制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、最適な速度でリッドの開閉制御ができるリッドアクチュエータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るリッドアクチュエータ100を備えている開閉装置300の構成例を示す図
【
図2】本発明の実施の形態に係るリッドアクチュエータ100の構成例を示す図
【
図3】本発明の実施の形態に係るリッドアクチュエータ100の構成例を示す図
【
図4】本発明の実施の形態に係るリッドアクチュエータ100の構成例を示す図
【
図6】リッド200が開くときに検出されるパルス信号の波形を表す図
【
図7】リッド200が閉じるときに検出されるパルス信号の波形を表す図
【
図9】開方向へリッド200を回転させる場合のリッドアクチュエータ100の動作を説明するための図
【
図10】開方向へリッド200を回転させる場合のリッドアクチュエータ100の動作を説明するための図
【
図11】閉方向へリッド200を回転させる場合のリッドアクチュエータ100の動作を説明するための図
【
図12】閉方向へリッド200を回転させる場合のリッドアクチュエータ100の動作を説明するための図
【
図13】駆動回路12の動作を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るリッドアクチュエータ100を備えている開閉装置300の構成例を示す図である。
【0010】
開閉装置300は、リッド200を開閉する装置である。開閉装置300は、リッドアクチュエータ100と、車体400の給油用開口部401を塞ぐための蓋であるリッド200と、車体400の給油用開口部401に取り付けられている本体部201とを備えている。
【0011】
なお、リッド200は、給油用開口部401を塞ぐための蓋に限定されず、電気自動車、プラグインハイブリッド車などに設けられている給電用開口部を塞ぐための蓋でもよい。
【0012】
次に
図2、
図3及び
図4を参照してリッドアクチュエータ100の構成例を説明する。
図2、
図3及び
図4は本発明の実施の形態に係るリッドアクチュエータ100の構成例を示す図である。
【0013】
リッドアクチュエータ100は、筐体1、規制部材2、回転部材3、モータ4、スライダ7、磁石8、センサ9、減速機構10、及び基板11を備えている。
【0014】
(モータ4)
モータ4は、リッド200を開閉するための駆動源である。モータ4には、回転軸41が設けられている。回転軸41には、ギア部5と噛み合うピニオンギア42と磁石8とが設けられている。
【0015】
(磁石8)
磁石8は、フェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系などの磁性材料を円盤状に形成した永久磁石である。
【0016】
(基板11)
基板11は、筐体1の内側の面に設けられている。基板11にはセンサ9及び駆動回路12が設けられている。基板11は、センサ9と駆動回路12を電気的に接続するとともに、駆動回路12とモータ4を電気的に接続する。
【0017】
(センサ9)
センサ9は、
図2に示すモータ4の回転状態を検出する。モータ4の回転状態は、モータ4の回転量、モータ4の回転数、モータ4の回転方向、モータ4の回転速度などである。センサ9は、磁石8の外周面と対向して、磁石8の外周面から一定距離離れた位置に設けられている。
【0018】
(減速機構10)
減速機構10は、モータ4の回転速度を減速して回転部材3に回転力を伝達する。減速機構10は、ギア部5及び送りねじ部6を備えている。
【0019】
(ギア部5)
ギア部5は、ピニオンギア42と噛み合う回転ギア52と、回転ギア62と噛み合う回転ギア53と、シャフト51とを備えている。
【0020】
シャフト51の両端部は、筐体1に固定されている。回転ギア52及び回転ギア53は、シャフト51により、回転可能に同軸に設けられている。
【0021】
(送りねじ部6)
送りねじ部6は、モータ4の回転運動をスライダ7の直線運動に変換する部材である。送りねじ部6は、回転ギア53と噛み合う回転ギア62と、スライダ7を直線移動させる送りねじ63と、シャフト61とを備えている。
【0022】
シャフト61の両端部は、筐体1に固定されている。回転ギア62及び送りねじ63は、シャフト61により回転可能に同軸に設けられている。
【0023】
(スライダ7)
スライダ7は、送りねじ63の回転に伴い、回転部材3を回転させるとともに、規制部材2を進退移動させる部材である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、スライダ7は、送りナット71、ガイド部72及びカム機構部73を備えている。
【0025】
(送りナット71)
送りナット71は、送りねじ63の回転に伴い、送りねじ63上を移動する部材である。
【0026】
(ガイド部72)
ガイド部72は、回転部材3のレバー32が係合してレバー32を案内する部材である。
図3に示すように、ガイド部72は、一体成形で送りナット71に設けられている。ガイド部72は、回転部材3のレバー32が係合する凹部を有する。
【0027】
当該凹部に係合するレバー32は、送りナット71が移動することにより、回転部材3の軸部31を中心に回動する。これにより、回転部材3の軸部31に接続されているリッド200が開方向又は閉方向に回転する。
【0028】
開方向は、リッド200を開状態とする方向である。閉方向は、リッド200を閉状態とする方向である。
【0029】
ガイド部72とレバー32との間には隙間GPが設けられている。隙間GPは、閉状態のリッド200を開状態にする場合に、リッド200を回転させずに、進退部材21の先端を規制位置P1から非規制位置P2に移動させるために設けられている。
【0030】
規制位置P1は、進退部材21がリッド200の動きを規制する位置である。非規制位置P2は、進退部材21がリッド200の動きを規制しない位置である。
【0031】
(カム機構部73)
カム機構部73は、規制部材2に係合する部材である。
図4に示すように、カム機構部73は、一体成形で送りナット71に設けられている。カム機構部73は、送りねじ63の延伸方向に伸びる支持部73aと、傾斜部73bとを備えている。
【0032】
(支持部73a)
支持部73aは、進退部材21が非規制位置P2に存在する状態で、進退部材21の前進方向への移動を規制する部材である。前進とは、進退部材21が
図2に示す筐体1の内側から筐体1の外側に向かって移動することである。
【0033】
(傾斜部73b)
傾斜部73bは、進退部材21を規制位置P1から非規制位置P2に移動させる部材である。傾斜部73bは、支持部73aの端部に接続され、支持部73aの延伸方向に対して所定角度で傾斜している。所定角度は、例えば10°~45°までの任意の角度である。
【0034】
傾斜部73bは、スライダ7が移動したとき、係合部材23に設けられている傾斜部23cに接することで、進退部材21を後退させる。後退とは、進退部材21が
図2に示す筐体1の外側から筐体1の内側に向かって移動することである。
【0035】
(規制部材2)
規制部材2は、リッド200の動きを規制する部材である。
図4に示すように、規制部材2は、進退部材21、付勢部材22、及び係合部材23を備えている。
【0036】
(進退部材21)
進退部材21は、スライダ7の移動に伴い、規制位置P1と非規制位置P2との間で進退移動する部材である。
【0037】
(係合部材23)
係合部材23は、スライダ7に係合し、進退部材21を進退移動させる部材である。
【0038】
係合部材23は、取付部23aと、取付部23aに設けられ進退部材21が貫通する底部23dと、送りねじ63の延伸方向に伸びる支持部23bと、傾斜部23cとを備えている。
【0039】
(取付部23a)
取付部23aは、進退部材21の周囲を覆い、進退部材21に取り付けられている。取付部23aの内側には付勢部材22の一端が挿入され、この付勢部材22の一端は、底部23dに接している。付勢部材22の他端は、
図2に示す筐体1の開口部を覆う不図示の蓋に接している。
【0040】
(傾斜部23c)
傾斜部23cは、進退部材21を規制位置P1から非規制位置P2に移動させる部材である。傾斜部23cは、支持部23bの端部に接続され、支持部23bの延伸方向に対して所定角度で傾斜している。所定角度は、例えば10°~45°までの任意の角度である。
【0041】
傾斜部23cは、スライダ7がギア部5に向かって移動したとき、カム機構部73の傾斜部73bに接することで、規制部材2の進退部材21を後退させる。
【0042】
(支持部23b)
支持部23bは、進退部材21が非規制位置P2に存在する状態で、進退部材21の前進方向への移動を規制する部材である。支持部23b及び傾斜部23cは、一体成形で取付部23aの外側に設けられている。
【0043】
(回転部材3)
回転部材3は、リッド200を回転させる部材である。
図3に示すように、回転部材3は、軸部31と、軸部31の端部からガイド部72に向かって垂直方向に延伸するレバー32とを備えている。
【0044】
(軸部31)
軸部31は、進退部材21から一定距離隔てて進退部材21と平行に配置されている。軸部31は、
図2に示す筐体1に回転可能に支持され、筐体1の内部から外部に向かって延伸している。回転部材3にはリッド200の回転軸部が固定されている。
【0045】
次に
図5、
図6及び
図7を参照して磁石8とセンサ9の構成例に関して説明する。
図5は磁石8とセンサ9の構成例を示す図である。
【0046】
(磁石8)
磁石8は、軸線41aの周りの回転方向に交互に配列されている第1磁極81及び第2磁極82を備えている。軸線41aは、
図1に示すモータ4の回転軸41の中心を通る線である。
【0047】
第1磁極81と第2の磁極82とは異なる磁極である。第1磁極81は例えばN極であり、第2磁極82はS極である。
【0048】
例えば、磁石8が1個の第1磁極81と1個の第2磁極82とを有する場合、第1磁極81と第2磁極82は、軸線41aの回転方向に180°(=360°/2)のピッチで、等角度間隔に配列されている。
【0049】
(センサ9)
センサ9は、第1検出部91及び第2検出部92を備えている。第1検出部91及び第2検出部92は、互いに一定距離離れて、基板11と一体に設けられている。
【0050】
第1検出部91及び第2検出部92のそれぞれは、
図1に示すモータ4の回転軸41が回転した際、磁石8から発生する磁束の変化を検出し、磁束の変化に対応したパルス信号を出力するホールIC(Integrated Circuit)である。パルス信号は、
図2に示す駆動回路12に送信される。なお、駆動回路12の構成の詳細は後述する。
【0051】
なお、センサ9は、ホールICに限定されず、例えば、磁気の強弱によって電気抵抗が変化する磁気抵抗(Magneto-Resistive)素子、磁気インピーダンス(Magneto-Impedance:MI)効果を利用したMIセンサなどでもよい。
【0052】
図6及び
図7は、第1検出部91及び第2検出部92のそれぞれから出力されるパルス信号の波形を表す図である。
図6には、リッド200が開くときに出力されるパルス信号の波形が示されている。
図7には、リッド200が閉じるときに出力されるパルス信号の波形が示されている。
【0053】
図6及び
図7のそれぞれには、第1検出部91から出力されるパルス信号(A相信号)と、第2検出部92から出力されるパルス信号(B相信号)とが示されている。A相信号とB相信号は、互いの位相が90°ずれている。
【0054】
A相信号が立ち上がるタイミングからA相信号が立ち下がるタイミングまでの周期tは、
図5に示す磁石8が1/2回転する時間に等しい。なお、
図6及び
図7では図示を省略しているが、B相信号が立ち上がるタイミングからB相信号が立ち下がるタイミングまでの周期も、磁石8が1/2回転する時間に等しい。
【0055】
リッド200が開く場合、リッド200が開く回転方向である第1回転方向に、
図2に示すモータ4の回転軸41が回転する。この場合、
図2に示す駆動回路12は、
図6に示すA相信号を検出した後、位相がA相信号の位相よりも90°遅れているB相信号を検出する。
【0056】
リッド200が閉じる場合、第1回転方向とは反対の第2回転方向に、
図2に示すモータ4の回転軸41が回転する。この場合、
図2に示す駆動回路12は、
図7に示すB相信号を検出した後、位相がB相信号の位相よりも90°遅れているA相信号を検出する。
【0057】
次に
図8を参照して駆動回路12の構成例に関して説明する。
図8は駆動回路12の構成例を示す図である。
【0058】
駆動回路12には電源500とモータ4とが接続されている。電源500は、例えば、
図1に示す車体400に搭載されているバッテリーである。駆動回路12は、制御部122と、駆動部121とを備えている。
【0059】
(制御部122)
制御部122は、センサ9から送信されるパルス信号9aに基づき、予め設定された開閉時間でリッド200を開閉動作するための駆動信号122aを生成し、生成した駆動信号122aを駆動部121に送信する。駆動信号122aは、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号である。
【0060】
(駆動部121)
駆動部121は、複数のスイッチ素子を備えており、駆動信号122aに基づき、複数のスイッチ素子を相補的にスイッチングすることにより、モータ4をPWM制御する。
【0061】
次に
図9、
図10、
図11及び
図12を参照して、リッドアクチュエータ100によるリッド200の開閉動作を説明する。
【0062】
図9及び
図10は開方向へリッド200を回転させる場合のリッドアクチュエータ100の動作を説明するための図である。ここでは、閉状態のリッド200を開方向へ回転させる場合の動作について説明する。
【0063】
開方向へリッド200を回転させる場合、送りねじ部6が第1回転方向に回転することにより(
図9の矢印(1)参照)、スライダ7がギア部5に向かって移動を開始する(
図9の矢印(2)参照)。
【0064】
スライダ7が移動し始めると、スライダ7のガイド部72と回転部材3のレバー32との間の隙間GPによって、ガイド部72がレバー32に接触するまでの間に、回転部材3の回転が停止した状態で、係合部材23の傾斜部23c(
図4参照)が、スライダ7の傾斜部73bに案内される。
【0065】
これにより、進退部材21が後退し、進退部材21の先端部は、規制位置P1から非規制位置P2に移動する(
図9の矢印(3)参照)。このとき、付勢部材22が圧縮される。
【0066】
スライダ7が移動し続けると、係合部材23の支持部23b(
図4参照)が、スライダ7の支持部73aに案内される。これにより、支持部23bが支持部73aに接する状態となり、進退部材21の前進方向への移動が規制される。
【0067】
また、スライダ7が移動し続けると、ガイド部72がレバー32に接触することにより、回転部材3が回転し始める(
図9の矢印(4)参照)。
【0068】
さらにスライダ7が移動すると(
図10の矢印(5)参照)、回転部材3に接続されているリッド200が開位置まで回転する(
図10の矢印(6)参照)。リッド200が開位置に到達したとき、回転部材3の回転が停止する。
【0069】
図11及び
図12は閉方向へリッド200を回転させる場合のリッドアクチュエータ100の動作を説明するための図である。ここでは、開状態のリッド200を閉方向へ回転させる場合の動作について説明する。
【0070】
閉方向へリッド200を回転させる場合、送りねじ部6が第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転することにより(
図11の矢印(1)参照)、スライダ7がギア部5から遠ざかるように移動を開始する(
図11の矢印(2)参照)。
【0071】
スライダ7が移動し始めると、ガイド部72がレバー32に接触することで、回転部材3が回転し始める(
図11の矢印(3)参照)。このとき、
図11に示すように、規制部材2の係合部材23は、スライダ7の支持部73aに接しているため、規制部材2の前進方向への移動が規制されている。
【0072】
さらにスライダ7が移動すると(
図12の矢印(4)参照)、回転部材3に接続されているリッド200は、閉位置まで回転する(
図12の矢印(5)参照)。リッド200が閉位置に到達したとき、回転部材3の回転が停止する。
【0073】
また、リッド200が閉位置に到達する直前に、規制部材2の係合部材23(
図4参照)が、スライダ7の支持部73aから傾斜部73bに案内される。これにより、規制部材2の前進方向への移動が可能になり、進退部材21の先端部は、付勢部材22の復元力により、非規制位置P2から規制位置P1に向かって移動する(
図12の矢印(6)参照)。この結果、リッド200の動きが規制されるため、リッド200の閉状態が維持される。
【0074】
次に
図13を参照して駆動回路12の動作を説明する。
図13は駆動回路12の動作を説明するためのフローチャートである。
【0075】
図13に示す処理は、例えば
図1に示す車体400に搭載されている不図示のリッド操作スイッチの操作が行われたことによって、リッド操作スイッチから駆動回路12に対して、リッド動作指令が送信されたときに開始される。
【0076】
リッド動作指令を受信した制御部122は、リッド動作指令がリッド200を開動作させる開動作指令であるか、リッド200を閉動作させる閉動作指令であるかを判定する(ステップS1)。
【0077】
リッド動作指令が開動作指令の場合(ステップS1,YES)、制御部122はステップS2の処理を実行する。
【0078】
ここで、リッド200が動作し始めたときに検出されるパルス信号の周期tは、電源500の出力電圧によって変動する。これは、電源500の出力電圧の公称値は12Vであるが、車体400に搭載されている他の電子機器等の使用状態、バッテリーの劣化度合いなどにより9V~14Vの範囲で変動するためである。このように電源500の電圧が変動することで、パルス信号の周期tが所定周期以下の場合、
図2に示すモータ4の回転速度が速いため、リッド200が開く速度が速くなる。
【0079】
リッド200の速度を調整するため、制御部122は、ステップS2において、パルス信号の周期tを計測し、計測した周期tが予め設定されている所定周期以下であるか否かを判定する。
【0080】
制御部122は、予め設定された開閉時間でリッド200が開閉動作するように、駆動信号122aのデューティを変更する。例えば、制御部122は、
図9に示すガイド部72とレバー32との隙間GPによって、リッド200が回転しないときに計測されるパルス信号の周期tが、所定周期以下の場合、駆動信号122aのオンデューティを低下させる。これにより、
図8に示す駆動部121を構成している不図示のスイッチ素子のオン時間が短くなり、モータ4の回転速度を低下させることができる。
【0081】
その後、制御部122は、ステップS3において、パルス信号を計数することにより、計数した信号数が所定の値に達したか否かにより、リッド200が開方向における停止位置に到達したか否かを判定する。
【0082】
リッド200が停止位置に到達していない場合(ステップS3,NO)、制御部122は、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0083】
リッド200が停止位置に到達した場合(ステップS3,YES)、制御部122は一連の処理を終了する。
【0084】
ステップS1に戻り、リッド動作指令が閉動作指令の場合(ステップS1,NO)、制御部122はステップS4の処理を実行する。
【0085】
ここで、パルス信号の周期tが所定周期以下の場合、リッド200が閉じる速度が速くなり、リッド200によって人の手が挟まれる可能性がある。
【0086】
リッド200の速度を調整するため、制御部122は、ステップS4において、パルス信号の周期tを計測し、計測した周期tが予め設定されている所定周期以下であるか否かを判定する。
【0087】
例えば制御部122は、
図11に示すように、ガイド部72とレバー32との隙間によってリッド200が回転しないときに計測されるパルス信号の周期tが、所定周期以下の場合、駆動信号122aのオンデューティを低下させる。これにより、
図8に示す駆動部121を構成している不図示のスイッチ素子のオン時間が短くなり、モータ4の回転速度を低下させることができる。
【0088】
その後、制御部122は、ステップS5において、パルス信号を計数することにより、計数した信号数が所定の値に達したか否かにより、リッド200が閉方向における停止位置に到達したか否かを判定する。
【0089】
リッド200が停止位置に到達していない場合(ステップS5,NO)、制御部122は、ステップS4以降の処理を繰り返し実行する。
【0090】
リッド200が停止位置に到達した場合(ステップS5,YES)、制御部122は一連の処理を終了する。
【0091】
以上に説明したように本実施の形態に係るリッドアクチュエータ100は、リッドを回転させる回転部材と、回転部材を駆動するモータの回転軸とともに回転する磁石から発生する磁束の変化を検出するセンサと、磁束の変化に対応してセンサから出力されるパルス信号に基づき、予め設定された開閉時間でリッドが開閉動作をするようにモータをパルス幅変調制御する制御部と、を備えるように構成されている。
【0092】
この構成により、
図8に示す電源500の電圧の値にかかわらず、モータ4をパルス幅変調制御できるため、安定した速度でリッド200を動作せることができる。従って、リッドアクチュエータ100を構成している部品が破損することを防止できるとともに、リッド200による挟み込みを抑制できる。
【0093】
また、本実施の形態に係るリッドアクチュエータ100は、リッド200が回転しない状態でパルス信号の周期tを測定することにより、リッド200が回転し始める前にリッド200の適切な回転速度を設定した後、安定した速度でリッド200を動作させることができる。
【0094】
また、本実施の形態に係るリッドアクチュエータ100は、リッド200が動作するときに出力されるパルス信号を用いることによって、リッドアクチュエータ100の位置を検出することができる。このため、リッド200の停止位置を検出するための機械スイッチが不要になる。従って、リッドアクチュエータ100の構成が簡素化され、リッドアクチュエータ100の信頼性が向上するとともに、リッドアクチュエータ100の小型化が可能である。また、機械スイッチが不要になることにより、リッドアクチュエータ100の設計の自由度が向上するとともに、リッドアクチュエータ100の製造コストを低減し得る。
【0095】
なお、本実施の形態に係るリッドアクチュエータ100は、1つのモータ4を用いて、回転部材3と進退部材21を駆動するように構成されているが、2つのモータ4を用いて、回転部材3と進退部材21をそれぞれ独立に駆動するように構成してもよい。
【0096】
ただし、1つのモータ4を用いて回転部材3と進退部材21を駆動する構成とした場合、リッドアクチュエータ100を小型化できるとともに、リッドアクチュエータ100の構成が簡素化され、信頼性が向上する。従って、リッドアクチュエータ100は、1つのモータ4を用いて、回転部材3と進退部材21を駆動するように構成することが好ましい。
【0097】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0098】
(1)リッドアクチュエータは、リッドを回転させる回転部材と、前記回転部材を駆動するモータの回転軸とともに回転する磁石から発生する磁束の変化を検出するセンサと、前記磁束の変化に対応して前記センサから出力されるパルス信号に基づき、予め設定された開閉時間で前記リッドが開閉動作をするように前記モータをパルス幅変調制御する制御部と、を備える。
【0099】
(2)前記制御部は、前記パルス信号に基づき、前記リッドの開閉位置を検出する。
【0100】
(3)前記制御部は、閉状態の前記リッドの動きを規制する規制部材が前記リッドの動きを規制する位置から、閉状態の前記リッドの規制を解除する位置に移動する間に検出された前記パルス信号に基づき、前記モータの回転速度を測定し、測定した前記回転速度に基づき、前記モータをパルス幅変調制御する。
【0101】
(4)前記制御部は、予め設定された開閉時間で前記リッドが開閉動作するように、前記パルス幅変調制御のデューティを変更する。
【0102】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等などの意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係るリッドアクチュエータは、最適な速度でリッドの開閉制御ができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 筐体
2 規制部材
3 回転部材
4 モータ
5 ギア部
6 送りねじ部
7 スライダ
8 磁石
9 センサ
10 減速機構
11 基板
12 駆動回路
21 進退部材
22 付勢部材
23 係合部材
23a 取付部
23b 支持部
23c 傾斜部
23d 底部
31 軸部
32 レバー
41 回転軸
41a 軸線
42 ピニオンギア
51 シャフト
52 回転ギア
53 回転ギア
61 シャフト
62 回転ギア
63 送りねじ
71 送りナット
72 ガイド部
73 カム機構部
73a 支持部
73b 傾斜部
81 第1磁極
82 第2磁極
91 第1検出部
92 第2検出部
100 リッドアクチュエータ
200 リッド
201 本体部
300 開閉装置
400 車体
401 給油用開口部
500 電源
GP 隙間
P1 規制位置
P2 非規制位置