(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170544
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】酸性飲料、及び、酸性飲料の青色退色抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20221102BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20221102BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20221102BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/54 101
A23L2/00 Z
A23L2/00 A
A23L2/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076739
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 美樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 みどり
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC01
4B117LC14
4B117LE10
4B117LG02
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK11
4B117LK12
4B117LK16
4B117LL01
4B117LL03
4B117LL07
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】LED照射による青色退色を抑制できる酸性飲料、及び、酸性飲料の青色退色抑制方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る酸性飲料は、青色色素を含有する酸性飲料であって、ケルセチン配糖体の含有量が0.03g/L以上であり、アスコルビン酸の含有量が0.16g/L以下である。本発明に係る酸性飲料の青色退色抑制方法は、青色色素を含有する酸性飲料のLED照射による青色退色を抑制する方法であって、前記酸性飲料のケルセチン配糖体の含有量を0.03g/L以上とし、アスコルビン酸の含有量を0.16g/L以下とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色色素を含有する酸性飲料であって、
ケルセチン配糖体の含有量が0.03g/L以上であり、
アスコルビン酸の含有量が0.16g/L以下である酸性飲料。
【請求項2】
前記ケルセチン配糖体は、エンジュ抽出物由来である請求項1に記載の酸性飲料。
【請求項3】
前記ケルセチン配糖体の含有量が0.04~0.12g/Lであり、
前記アスコルビン酸の含有量が0~0.10g/Lである請求項1又は請求項2に記載の酸性飲料。
【請求項4】
pHが4.2以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の酸性飲料。
【請求項5】
青色色素を含有する酸性飲料のLED照射による青色退色を抑制する方法であって、
前記酸性飲料のケルセチン配糖体の含有量を0.03g/L以上とし、アスコルビン酸の含有量を0.16g/L以下とする酸性飲料の青色退色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性飲料、及び、酸性飲料の青色退色抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、寿命の長さや消費電力の少なさから、LED照明が多く用いられている。そして、通常、LED照明は、太陽光や蛍光灯と異なり、紫外線や赤外線をほとんど照射しないことから、LED照明下における飲食品などの商品の退色や熱によるダメージを軽減できることが知られている。
【0003】
なお、太陽光や蛍光灯などの光照射による飲食品への影響を考慮した技術としては、以下のようなものが存在する。
例えば、特許文献1には、茶類を含む飲食品を透明容器内に充填してなる透明容器入り飲食品であって、前記透明容器が、550nm~720nmの波長領域の光を実質的に遮光するものであることを特徴とする透明容器入り飲食品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る発明のように、太陽光や蛍光灯による飲食品への影響を考慮した技術は多く存在していたが、前記のとおり、LED照明による飲食品への影響はあまりないと考えられていたため、この点について十分な検討が行われていなかった。
【0006】
しかしながら、本発明者が飲料とLED照明との関係性について検討を行った結果、青色色素を含有する酸性飲料が長期間のLED照射(過度なLED照射)を受けると、青色が退色してしまうことを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、LED照射による青色退色を抑制できる酸性飲料、及び、酸性飲料の青色退色抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)青色色素を含有する酸性飲料であって、ケルセチン配糖体の含有量が0.03g/L以上であり、アスコルビン酸の含有量が0.16g/L以下である酸性飲料。
(2)前記ケルセチン配糖体は、エンジュ抽出物由来である前記1に記載の酸性飲料。
(3)前記ケルセチン配糖体の含有量が0.04~0.12g/Lであり、前記アスコルビン酸の含有量が0~0.10g/Lである前記1又は前記2に記載の酸性飲料。
(4)pHが4.2以下である前記1から前記3のいずれか1つに記載の酸性飲料。
(5)青色色素を含有する酸性飲料のLED照射による青色退色を抑制する方法であって、前記酸性飲料のケルセチン配糖体の含有量を0.03g/L以上とし、アスコルビン酸の含有量を0.16g/L以下とする酸性飲料の青色退色抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る酸性飲料は、青色退色を抑制することができる。
本発明に係る酸性飲料の青色退色抑制方法は、酸性飲料の青色退色を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る酸性飲料、及び、酸性飲料の青色退色抑制方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[酸性飲料]
本実施形態に係る酸性飲料は、青色色素を含有する酸性飲料であって、ケルセチン配糖体の含有量が所定値以上であり、アスコルビン酸の含有量が所定値以下となる飲料である。
【0012】
(青色色素)
青色色素とは、飲料を青色に着色する物質である。
そして、青色色素としては、食用のものとして使用される色素であれば、特に限定されず、例えば、クチナシ青色素、スピルリナ色素などの天然色素、食用青色1号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用青色5号などの合成色素などが挙げられる。また、青色色素は、1種でも2種以上でもよい。
ただ、青色色素は、消費者ニーズの観点から天然色素が好ましく、その中でも、クチナシ青色素がより好ましい。
なお、クチナシ青色素は、市販のものを使用すればよいが、例えば、クチナシ果実から抽出したゲニポシドをβ-グルコシダーゼで加水分解して得ることができる。
【0013】
本実施形態に係る酸性飲料は、青色色素を含むことによって僅かでも青色を呈すれば課題(LED照射による青色退色)が発生するため、青色色素の含有量は特に限定されないものの、例えば、0.01g/L以上、0.5g/L以上、0.1g/L以上であり、また、5g/L以下、1g/L以下、0.5g/L以下である。
【0014】
本実施形態に係る酸性飲料は、青色色素を含んでいれば(酸性飲料が青色を呈すれば)、他の色の色素を併用してもよい。
他の色の色素については、飲料で使用される色素であれば特に限定されず、例えば、ベニバナ黄色素、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用レーキ色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素などが挙げられる。
【0015】
(ケルセチン配糖体)
ケルセチン配糖体とは、フラボノイドの一種であるケルセチン(quercetin)の配糖体であり、糖の種類によって、ルチン、クェルシトリン、イソクェルシトリン、クェルシメリトリンなどが挙げられる。
本発明者は、青色色素を含む酸性飲料にケルセチン配糖体を含有させつつ、後記するアスコルビン酸の含有量を抑制することによって、LED照射による青色退色を抑制できることを見出した。
【0016】
酸性飲料におけるケルセチン配糖体の含有量は、0.03g/L以上が好ましく、0.04g/L以上、0.05g/L以上、0.06g/L以上がより好ましい。ケルセチン配糖体の含有量が所定値以上であることによって、LED照射による青色退色を抑制することができる。
酸性飲料におけるケルセチン配糖体の含有量の上限は特に限定されないものの、1.00g/L以下が好ましく、0.80g/L以下、0.50g/L以下、0.12g/L以下がより好ましい。
【0017】
(ルチン)
ケルセチン配糖体はルチンを含むものが好ましい。なお、ルチン(rutin)とは、ケルセチン配糖体の一種であって、ケルセチンにβ-ルチノースがグリコシド結合したものである。
酸性飲料におけるケルセチン配糖体の含有量が前記のとおりの範囲となっていればよいが、例えば、酸性飲料におけるルチンの含有量は、0.01g/L以上が好ましく、0.02g/L以上、0.03g/L以上がより好ましい。また、ルチンの含有量は、0.50g/L以下が好ましく、0.40g/L以下、0.30g/L以下、0.07g/L以下がより好ましい。
酸性飲料におけるケルセチン配糖体の含有量やルチンの含有量は、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定することができる。例えば、特開2010-035474の公報に記載された方法を採用してもよい。
【0018】
(エンジュ抽出物)
ケルセチン配糖体はエンジュ抽出物に由来するもの(エンジュ抽出物由来物)であるのが好ましい。なお、エンジュ(Sophora japonica)は、マメ科エンジュ属に属する植物で、黄藤(キフジ)とも呼ばれる。
酸性飲料におけるケルセチン配糖体の含有量が前記のとおりの範囲となっていればよいが、例えば、酸性飲料におけるエンジュ抽出物の含有量は、0.075g/L以上が好ましく、0.10g/L以上、0.125g/L以上、0.15g/L以上がより好ましい。また、エンジュ抽出物の含有量は、2.50g/L以下が好ましく、2.00g/L以下、1.25g/L以下、0.30g/L以下がより好ましい。
【0019】
(エンジュ抽出物:抽出条件)
ルチンを含むケルセチン配糖体を含有するエンジュ抽出物は、適当な溶媒を用いた常法の抽出方法によって調製することができる。
抽出に用いる溶媒としては、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;及びピリジン類等が挙げられ、これら2種以上の混合溶媒であってもよい。
しかしながら、飲料に添加することを考慮すると、本発明におけるルチンを含むケルセチン配糖体を含有するエンジュ抽出物は、水、エタノールのいずれか一方又は混合溶媒により抽出して得ることが好ましい。
これらの中でも、アルコール濃度が90重量%以上の水性アルコールがより好ましく、95重量%以上の水性アルコールがさらに好ましく、95重量%以上のエタノールが特に好ましい。
また、抽出条件も通常の条件を適用でき、例えば抽出物が抽出される材料を3~100℃で数時間~数週間浸漬又は加熱還流するのが好ましく、室温付近の温度で1日~4週間浸漬するのが特に好ましい。
また、エンジュ抽出物は、市販の抽出物であってもよい。
【0020】
本発明中のルチンを含むケルセチン配糖体を含有するエンジュ抽出物は、上記のように抽出された抽出物及びその乾燥物であってもよい。またエンジュ抽出物をさらに適当な分離手段、例えばゲル濾過カラムクロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーや精密蒸留等により分画し、必要に応じて乾燥したものでもよい。
【0021】
なお、本実施形態に係る酸性飲料がエンジュ抽出物を含有する場合、このエンジュ抽出物固形分中におけるケルセチン配糖体の含有量は好ましくは30~50質量%(より好ましくは35~45質量%)であり、エンジュ抽出物固形分中におけるルチンの含有量は好ましくは15~30質量%(より好ましくは20~25質量%)である。
また、本実施形態に係る酸性飲料はケルセチン配糖体を含有するが、このケルセチン配糖体におけるルチンの含有量は好ましくは45~65重量%(より好ましくは50~60重量%)である。
【0022】
(アスコルビン酸)
アスコルビン酸とは、化学式C6H8O6で表される化合物であり、ラクトン構造を有する有機化合物の一種である。
本発明者は、青色色素を含む酸性飲料に前記したケルセチン配糖体を含有させたとしても、アスコルビン酸の含有量が多くなると、LED照射による青色退色がほとんど抑制されなくなることから、アスコルビン酸の含有量を所定値以下に制御する必要があることを見出した。
なお、本発明におけるアスコルビン酸の含有量とは、添加したアスコルビン酸量に限らず、果汁、その他原料由来のアスコルビン酸も含めた総含有量を指す。
【0023】
アスコルビン酸の含有量は、0.16g/L以下が好ましく、0.13g/L以下、0.11g/L以下、0.10g/L以下、0.099g/L以下がより好ましい。アスコルビン酸の含有量が所定値以下であることによって、LED照射による青色退色を抑制することができる。
アスコルビン酸の含有量の下限は特に限定されないものの、0g/L以上が好ましい。
【0024】
アスコルビン酸の含有量は、例えば、ヨウ素滴定法によって測定することができる。
【0025】
(pH)
本実施形態に係る酸性飲料とは、pHが4.2以下の飲料であり、3.5以下、3.0以下がより好ましい。
本発明者は、酸性飲料において課題(LED照射による青色退色)の発生を確認していることから、前記のとおり、pHは所定値以下であるのが好ましい。
酸性飲料のpHは、例えば、市販のpH測定器によって測定することができる。
【0026】
(飲料種)
本実施形態に係る酸性飲料は、前記のとおり酸性の飲料であれば特に飲料種が限定されず、20℃におけるガス圧が1vol/vol%以上(好ましくは2vol/vol%以上)の炭酸飲料であっても、果汁を含有する果汁含有飲料であっても、乳成分(牛乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、生クリーム、ヨーグルト、乳清、バターミルク粉、練乳等から1種以上)を含有する乳製品類であっても、アルコールを含まない清涼飲料であっても、アルコールを含有するアルコール飲料であってもよい。
【0027】
(その他)
本実施形態に係る酸性飲料は、例えば、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料(フレーバー)、酸味料、塩類、食物繊維、タンパク質、食用油脂、増粘剤、ゲル化剤、pH調整剤など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよいし、当然、含有していなくてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、フィチン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質、小麦タンパク質、トウモロコシタンパク質、エンドウタンパク質、カゼイン、卵白アルブミン、ゼラチンなどを用いることができる。食用油脂としては、食用の油脂であれば、特に限定されない。増粘剤としては、例えば、ローカストビーンガム、グアーガムなどを用いることができる。ゲル化剤については、ペクチン、カラギーナンなどを用いることができる。pH調整剤としては、例えば、リン酸塩などを用いることができる。
【0028】
本実施形態に係る酸性飲料は、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキス(果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物)を含有させてもよい。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
【0029】
本実施形態に係る酸性飲料の果汁の含有量(果汁率換算)は、前記のとおり特に限定されないものの、例えば、0%以上、3%以上、5%以上であり、20%以下、15%以下、10%以下である。
なお、果汁の含有量は、「含有量(果汁率換算)%(詳細には、w/w%)」=「飲料100g中への果汁配合量(g)」×「濃縮倍率」/100g×100により算出することができる。ここで、「濃縮倍率」(ストレート果汁を100%としたときの果汁の相対的濃縮倍率)を算出するにあたり、JAS規格に準ずるものとし、例えば、酸度が9%のレモン果汁を用いた場合、果実飲料の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)の別表4によるとレモンの基準酸度は4.5%であるから、このレモン果汁は、2倍濃縮のレモン果汁となる。また、例えば、酸度が18%のライム果汁を用いた場合、当該規格の別表4によるとライムの基準酸度は6%であるから、このライム果汁は、3倍濃縮のライム果汁となる。
【0030】
(容器詰め酸性飲料)
本実施形態に係る酸性飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に酸性飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
そして、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することができるが、これらの中でも、ガラス容器、ペットボトル容器といったLED照射を透過する透明容器が、課題(LED照射による青色退色)の明確化の観点から特に好ましい。
なお、容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る酸性飲料は、青色退色を抑制することができる。
【0032】
[酸性飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係る酸性飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る酸性飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0033】
混合工程では、混合タンクに、水、青色色素、ケルセチン配糖体(エンジュ抽出物)、アスコルビン酸、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、ケルセチン配糖体の含有量やアスコルビン酸の含有量などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0034】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0035】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、レディ・トゥ・ドリンク(Ready To Drink、RTD)などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る酸性飲料の製造方法によると、青色退色が抑制された酸性飲料を製造することができる。
【0037】
[酸性飲料の青色退色抑制方法]
本実施形態に係る酸性飲料の青色退色抑制方法は、青色色素を含有する酸性飲料について、LED照射による青色退色を抑制する方法であって、酸性飲料のケルセチン配糖体の含有量を所定値以上とし、アスコルビン酸の含有量を所定値以下とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「酸性飲料」において説明した値と同じである。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る酸性飲料の青色退色抑制方法によると、酸性飲料の青色退色を抑制することができる。
【実施例0039】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0040】
[サンプルの準備]
表1と表5のサンプルについては表に掲げる各成分と水とを混合して93℃で加熱殺菌した後、500mLの透明PETボトルに前記の加熱殺菌後の混合液(250mL)と炭酸水(250mL)とを充填し、容器ごと60℃10分の加熱殺菌を施して、サンプルを準備した。
表2~4のサンプルについては表に掲げる各成分と水とを混合して93℃で加熱殺菌した後、表2のサンプルは500mL、表3と表4のサンプルは280mLの透明PETボトルに前記の加熱殺菌後の混合液を充填し、サンプルを準備した。
なお、表1~5の各成分の値はすべて、最終製品(サンプル:果汁含有炭酸飲料)における各成分の含有量を示している。
【0041】
なお、表中のケルセチン配糖体については、「エンジュ抽出物」として添加しており、表中のケルセチン配糖体の含有量は、添加した「エンジュ抽出物」の添加量(含有量)と当該抽出物に占めるケルセチン配糖体の含有割合から算出したものである。
詳細には、使用した「エンジュ抽出物」は、ケルセチン配糖体40質量%(ルチンとして23質量%)を含有するものであった。つまり、表中のケルセチン配糖体の含有量に100/40を乗じれば、各サンプルにおけるエンジュ抽出物の含有量が算出でき、表中のケルセチン配糖体の含有量に23/40を乗じれば、各サンプルにおけるルチンの含有量が算出できる。
【0042】
また、表中のアスコルビン酸については、アスコルビン酸ナトリウムとして添加しており、表中のアスコルビン酸の含有量は、添加したアスコルビン酸ナトリウムの添加量(含有量)に176.12/198.11を乗じて算出したものである。
なお、表の各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は約2.60vol/vol%であった。
【0043】
[試験内容:測定試験]
前記の方法により製造した各サンプル(透明PETボトル容器に充填された飲料)を、LED照射下(21000lx)において5日間保管し、保管前後のpHと600nm吸光度とを測定した。
サンプルのpHは、pH測定器(東亜DKK社製pH ION METER HM-42X)によって測定し、波長600nmの吸光度は、吸光光度計(SHIMADZU社製UV SPECTROPHOTOMETER UV1800)によって測定した。
そして、表中では、LED照射前の各測定値を「未経時」の値として記載し、5日間のLED照射後の各測定値を「経時」の値として記載した。
また、表中の「600nm吸光度変化率」については、(「未経時の600nmの吸光度」-「経時の600nmの吸光度」)/「未経時の600nmの吸光度」によって算出した。
この「600nm吸光度変化率」の値が低くなっていれば、青色退色が抑制できていると判断できる。
【0044】
[試験内容:目視試験]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル4名が対象サンプルと比較して「青みが残っている」場合を◎、「青みがやや残っている」場合を○、「青みが抜けている」場合を×と判断し、パネル4名がディスカッションを行って最終的な評価を決定した。
なお、対象サンプルとは、各表のサンプル番号の後方番号が1であるサンプルである。そして、目視試験は、サンプル番号の前方番号が同じ対象サンプルと比較して評価した。具体的には、対象サンプルは、サンプル1-1、2-1、3-1、4-1、5-1であり、例えば、サンプル3-3の目視試験は、サンプル番号の前方番号が同じであって後方番号が1であるサンプル3-1(対象サンプル)の青みを基準とした比較によって評価を行った。
【0045】
表に、サンプルの各成分の含有量を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表の「レモン果汁率」や「ライム果汁率」は、各果汁の含有量(果汁率換算)を示している。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
(結果の検討)
表1のサンプル1-1~1-3の結果によると、ケルセチン配糖体を所定量以上含有するとともに、アスコルビン酸の含有量が所定量以下に規制されているサンプル1-2、1-3は、青色退色を抑制できていることが確認できた。特に、アスコルビン酸の含有量が0g/Lであるサンプル1-2は青色退色を抑制できていることが確認できた。
また、表1の600nm吸光度変化率を確認しても、サンプル1-2、1-3は青色退色を抑制できており、特にサンプル1-2が青色退色を抑制できていることが明らかとなった。
【0052】
表2のサンプル2-1~2-4の内のサンプル2-3の結果によると、青色色素だけでなく黄色色素を含有していても、ケルセチン配糖体を所定量以上含有するとともに、アスコルビン酸の含有量が所定量以下に規制されていれば、青色退色を抑制できることが確認できた。
また、表2の600nm吸光度変化率を確認しても、サンプル2-3は青色退色を抑制できていることが明らかとなった。
【0053】
表3のサンプル3-1~3-4の結果によると、アスコルビン酸の含有量が0g/Lであれば、ケルセチン配糖体の含有量が多くなるにしたがって、青色退色の抑制効果が高くなることが確認できた。
また、表3の600nm吸光度変化率を確認しても、ケルセチン配糖体の含有量が多くなるにしたがって、青色退色の抑制効果が高くなることが明らかとなった。
【0054】
表4のサンプル4-2~4-6の結果によると、ケルセチン配糖体の含有量一定の場合、アスコルビン酸の含有量が少なければ少ないほど、青色退色の抑制効果が高くなることが確認できた。
また、表4の600nm吸光度変化率を確認しても、アスコルビン酸の含有量が少なくなるにしたがって、青色退色の抑制効果が高くなることが明らかとなった。
【0055】
表5のサンプル5-2、5-3の結果によると、青色色素(天然色素)と合成着色料を含有の組み合わせにおいても、ケルセチン配糖体を所定量以上含有するとともに、アスコルビン酸の含有量が所定量以下に規制されることで、青色退色を抑制できることが確認できた。
また、表5の600nm吸光度変化率を確認しても、サンプル5-2、5-3は青色退色を抑制できていることが明らかとなった。