(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170546
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】踏切障害物検知システム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20221102BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20221102BHJP
B61L 29/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/931
B61L29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076741
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦彦
【テーマコード(参考)】
5H161
5J084
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM14
5H161NN12
5H161PP11
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB01
5J084AB07
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA11
5J084BA49
5J084BB25
5J084BB27
5J084BB28
5J084CA31
5J084DA04
5J084EA20
(57)【要約】
【課題】踏切障害物検知システムの信頼性を向上させること。
【解決手段】踏切10には、レーザ光を出力する発光部46及び物体により反射されたレーザ光である反射光を受光する受光部47を有するレーザレーダユニット25が設置されている。レーザレーダユニット25は、踏切10における障害物の検知エリアDEよりも上側に位置するようにしてレーザユニット用支柱21により支持され、レーザ光が検知エリアDEに上方から照射されるように構成されている。レーザレーダユニット25とともに踏切障害物検知システム18を構築する制御装置60においては、レーザ光を反射した対象までの距離及び照射角度を示す測定結果に基づいて検知エリアDEに位置する障害物を検知する。レーザレーダユニット25による測定結果に基づいて、当該レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方の変化が監視される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度ごとに設定されている照射角度へレーザ光を照射する照射部及び反射された前記レーザ光を受光する受光部を有するレーザレーダ装置を備え、
前記レーザレーダ装置が踏切における障害物の検知エリアよりも上側に位置するようにして支持対象により支持され、前記レーザ光が前記検知エリアに上方から照射されるように構成されており、
前記レーザ光を反射した対象までの距離及び照射角度を示す測定結果に基づいて前記検知エリアに位置する前記障害物を検知する検知部と、
前記レーザレーダ装置による前記測定結果に基づいて、当該レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視する監視部と
を備えている踏切障害物検知システム。
【請求項2】
前記レーザ光の照射範囲に設けられた基準物体を備え、
前記監視部は、前記基準物体までの距離及び照射角度を示す情報又は当該情報に基づき規定されたエリア情報を基準情報として記憶する記憶部を有し、前記記憶部に記憶されている前記基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する請求項1に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項3】
前記基準物体は、前記レーザレーダ装置の周辺であって且つ当該レーザレーダ装置よりも低い位置に配置されている請求項2に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項4】
走査サイクルにおいて走査方向における前記検知エリアの一端部に照射されるレーザ光及び前記走査方向における前記検知エリアの他端部に照射されるレーザ光の一方の光路上の位置又は当該光路に隣接する位置に前記基準物体が配置されている請求項3に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項5】
前記基準物体は、前記レーザレーダ装置を支持する前記支持対象とは別の対象に設けられている請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の踏切障害物検知システム。
【請求項6】
前記レーザレーダ装置による前記検知エリアは、前記踏切において線路と交差する道路に沿うようにして延びており、
前記支持対象及び前記別の対象は何れも上下に延びるポールであり、それらポールが前記道路に沿うようにして並設されている請求項5に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項7】
前記基準物体は、前記レーザレーダ装置を支持する前記支持対象に当該レーザレーダ装置用の取付部材とは別の取付部材を用いて取り付けられている請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の踏切障害物検知システム。
【請求項8】
前記支持対象は、上下に延びるポールであり、
前記ポールの長手方向に見て、前記基準物体の位置と前記レーザレーダの位置とが前記ポールの周方向においてずれている請求項7に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項9】
前記レーザレーダ装置は、前記踏切に設けられた遮断機が閉状態となっている場合の当該遮断機の遮断桿よりも高い位置に配置されており、
前記検知エリアは、前記遮断機が前記閉状態となっている場合に前記遮断桿が当該検知エリアに位置するように設定されており、
前記遮断機が前記閉状態となっている場合の前記遮断桿までの距離及び照射角度を示す情報又は当該情報に関連する情報が遮断桿情報として記憶されており、
前記遮断桿情報と前記測定結果とに基づいて前記遮断桿の動きを監視する請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の踏切障害物検知システム。
【請求項10】
前記検知エリア内の第1位置と、前記検知エリア外の第2位置とに変位可能な基準物体を備え、
前記基準物体は、前記踏切の遮断機が開状態となっている場合には前記第2位置に位置し、前記遮断機が閉状態となっている場合には前記第1位置に位置し、
前記監視部は、少なくとも前記第1位置における前記基準物体までの距離及び照射角度を示す情報又は当該情報に関連する情報を基準情報として記憶する記憶部を有し、前記記憶部に記憶されている前記基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する請求項1に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項11】
前記レーザレーダ装置は、前記遮断機が前記閉状態となっている場合の当該遮断機の遮断桿よりも高い位置に配置されており、
前記検知エリアは、前記遮断機が前記閉状態となっている場合に前記遮断桿が当該検知エリアに位置するように設定されており、
前記基準物体は、前記遮断桿である請求項10に記載の踏切障害物検知システム。
【請求項12】
前記受光部は、地面により反射されたレーザ光を受光可能となっており、
前記監視部は、前記地面までの距離及び照射角度を示す情報又は当該情報に関連する情報を第2基準情報として記憶部に記憶し、前記第2基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する請求項2乃至請求項11のいずれか1つに記載の踏切障害物検知システム。
【請求項13】
前記受光部は、地面により反射されたレーザ光を受光可能となっており、
前記監視部は、前記地面までの距離及び照射角度を示す情報又は当該情報に関連する情報を基準情報として記憶する記憶部を有し、前記記憶部に記憶されている前記基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する請求項1に記載の踏切障害物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切障害物検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
踏切内に停滞した車等の障害物を検知する踏切障害物検知システムには、レーザ光を地面と平行となるようにして照射する走査型のレーザレーダ装置を有しているものがある。この種の踏切障害物検知システムにおいては、レーザレーダ装置を地面に近い低所、例えば遮断機の遮断桿よりも低い箇所に配置することにより、人や車等の障害物の見逃しが抑制されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如く地面に近い低所にレーザレーダ装置を配置した場合には、天候等の影響によってレーザ光の光路が寸断され、検知エリアへレーザ光を照射する機能が上手く発揮されなくなることが懸念される。例えば、積雪によって検知エリアへのレーザ光の照射が妨げられたり、車が通過する際の泥はね等によってレーザレーダ装置が汚れることで検知エリアへのレーザ光の照射が妨げられたりする可能性がある。このような事象が発生することは、踏切障害物検知システムの信頼性を向上させる上で好ましくない。
【0005】
ここで、本願の発明者は、ポール等の支持対象を用いてレーザレーダ装置を高所に配置し、検知エリアに対して上方からレーザ光を照射する構成を考案した。このような構成とすれば、検知エリアへのレーザ光の照射が妨げられることを好適に抑制できる。しかしながら、ポール等の支持対象を用いてレーザレーダ装置を高所に配置した場合には、レーザレーダ装置を低所に配置した場合と比べて、強風や地震等の外的要因によって支持対象に歪みが生じた場合にレーザレーダ装置の位置や向きが大きく変化する可能性が高くなる。また、踏切付近は風を遮る遮蔽物が少ないため、レーザレーダ装置に強風が吹きつけることでレーザレーダ装置の取付金具(取付部材)が変形等してレーザレーダ装置の位置や向きが変化する可能性も否定できない。そして、レーザレーダ装置の位置や向きが変化することはレーザ光の照射範囲がずれる(適正な位置から外れる)要因になる。このような照射範囲のずれが生じることは、障害物の見逃しを招き、踏切障害物検知システムの信頼性を向上させる上で妨げになると懸念される。このように、踏切障害物検知システムの信頼性の向上を図る上では、その構成に未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、踏切障害物検知システムの信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0008】
第1の手段.所定角度ごとに設定されている照射角度へレーザ光を照射する照射部(第1固定ミラー42、回転ミラー44、発光部46、モータ48等)及び反射された前記レーザ光を受光する受光部(受光部47)を有するレーザレーダ装置(レーザレーダユニット25)を備え、
前記レーザレーダ装置が踏切における障害物の検知エリア(検知エリアDE)よりも上側に位置するようにして支持対象(例えば支柱21)により支持され、前記レーザ光が前記検知エリアに上方から照射されるように構成されており、
前記レーザ光を反射した対象(例えば障害物M、地面G、基準ターゲット35)までの距離及び照射角度を示す測定結果に基づいて前記検知エリアに位置する前記障害物を検知する検知部(制御装置60の制御部61にて障害物の検知用の処理を実行する機能)と、
前記レーザレーダ装置による前記測定結果に基づいて、当該レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視する監視部(制御装置60の制御部61にて確認処理を実行する機能)と
を備えている。
【0009】
支持対象(例えばポール)を用いてレーザレーダ装置を高所に配置し、検知エリアに対して上方からレーザ光を照射する構成とすれば、地面に近い低所にレーザレーダ装置を配置して水平にレーザ光を照射する構成と比較して、天候等の影響によってレーザ光の光路が寸断されること、すなわち検知エリアへレーザ光を照射する機能が上手く発揮されなくなることを抑制する上で有利となる。
【0010】
ここで、支持対象によってレーザレーダ装置を高所に配置した場合には、強風や地震等の影響によってレーザレーダ装置の位置や向きが変化する可能性が高くなり、レーザ光の照射範囲がずれやすくなること(適正な位置から外れやすくなること)が懸念される。この点、本手段においては、レーザレーダ装置による測定結果に基づいて当該レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視することにより、レーザ光が適正な位置に照射できない状況となった場合にその旨を簡易な構成によって把握可能となる。つまり、検知エリアに上方からレーザ光を照射する構成とした上で、レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視する構成とすることにより、踏切障害物検知システムの信頼性を好適に向上させることができる。例えば、レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化が許容レベルを超えた場合には、検知部による検知を規制したり、管理者等に障害物検知システムの確認を要求したりするとよい。
【0011】
第2の手段.前記レーザ光の照射範囲に設けられた基準物体(例えば基準ターゲット35や光吸収部材81Y等)を備え、
前記監視部は、前記基準物体までの距離及び照射角度を示す情報(例えば基準ターゲットや光吸収部材81Yの位置を示す情報)又は当該情報に基づき規定されたエリア情報(基準ターゲットの位置に許容誤差等を加味した情報や検知エリアを示す情報)を基準情報として記憶する記憶部(制御装置60の記憶部62)を有し、前記記憶部に記憶されている前記基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する。
【0012】
レーザ光の照射範囲に配設された基準物体を用いてレーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視する構成とすれば、踏切障害物検知システムの自己監視機能を簡易な構成によって実現できる。
【0013】
第3の手段.前記基準物体は、前記レーザレーダ装置の周辺であって且つ当該レーザレーダ装置よりも低い位置に配置されている。
【0014】
検知エリアに対して上方からレーザ光を照射する構成においては、基準物体をレーザレーダ装置よりも低い位置に配置することで照射範囲の無駄な広がりを抑制できる。基準物体がレーザレーダ装置の周辺(近傍)、すなわち高所に配置されることにより、基準物体を低所に配置する構成と比較して、積雪等の影響によって基準物体へのレーザ光の照射が妨げられるといった不都合を生じにくくすることができる。また、基準物体とレーザレーダ装置とを近づけて配置することは、基準物体とレーザレーダ装置との間でレーザ光の照射→反射→受光の流れが妨げられることを抑制する上で好ましい。
【0015】
第4の手段.走査サイクルにおいて走査方向における前記検知エリアの一端部に照射されるレーザ光及び前記走査方向における前記検知エリアの他端部に照射されるレーザ光の一方の光路上の位置又は当該光路に隣接する位置に前記基準物体が配置されている。
【0016】
本手段に示すように、走査サイクルにおいて検知エリアの一端部及び他端部の何れかに照射されるレーザ光の光路上の位置又は当該光路に隣接する位置に基準物体を配置することにより、レーザレーダ装置の周辺に基準物体を配置する場合であっても、当該基準物体が障害物検知の妨げになったり、検知エリアの広域化の妨げになったりすることを抑制できる。
【0017】
第5の手段.前記基準物体は、前記レーザレーダ装置を支持する前記支持対象(レーザレーダユニット用支柱21)とは別の対象(基準ターゲット用支柱31)に設けられている。
【0018】
レーザレーダ装置と基準物体とを別々の対象に設けることにより、レーザレーダ装置用の支持対象の変形に起因したレーザレーダ装置の位置等の変化に追従して基準物体の位置が変化することを抑制できる。つまり、変形前後でレーザレーダ装置と基準物体との位置関係が同様となることを抑制できる。
【0019】
第6の手段.前記レーザレーダ装置による前記検知エリアは、前記踏切において線路と交差する道路に沿うようにして延びており、
前記支持対象及び前記別の対象は何れも上下に延びるポールであり、それらポールが前記道路に沿うようにして並設されている。
【0020】
道路に沿って延びるようにして検知エリアが設定されることで、障害物の見逃しを好適に抑制できる。このような構成とする場合には、各ポールを道路に沿って並べることにより、レーザレーダ装置の周辺に基準物体を配置して上記第3の手段に示した効果を発揮させつつ、当該基準物体が障害物検知の妨げになったり、検知エリアの広域化の妨げになったりすることを抑制できる。
【0021】
第7の手段.前記基準物体は、前記レーザレーダ装置を支持する前記支持対象に当該レーザレーダ装置用の取付部材(ブラケット22X)とは別の取付部材(ブラケット32X)を用いて取り付けられている。
【0022】
1の支持対象にレーザレーダ装置及び基準物体を各々取り付ける構成とすることは、検知システムの簡素化を図る上で好ましい。このような構成とする場合には、本手段に示すように、レーザレーダ装置用の取付部材と基準物体用の取付部材とを分けることにより、レーザレーダ装置用の取付部材の変形に起因したレーザレーダ装置の位置等の変化に追従して基準物体の位置が変化することを抑制できる。つまり、変形前後でレーザレーダ装置と基準物体との位置関係が同様となることを抑制できる。
【0023】
第8の手段.前記支持対象は、上下に延びるポールであり、
前記ポールの長手方向に見て、前記基準物体の位置と前記レーザレーダの位置とが前記ポールの周方向においてずれている。
【0024】
本手段に示す構成によれば、仮にレーザレーダ装置及び基準物体の一方が下側に傾くように取付部材が変形した場合であっても、当該一方に押される等してレーザレーダ装置及び基準物体の他方が当該一方に追従するように下側に傾くことを抑制できる。故に、レーザレーダ装置及び基準物体の位置関係が変形前後で同一になることを抑制し、レーザレーダ装置の位置や向きの変化の見逃しを好適に減らすことができる。また、ポールの周方向にて位置をずらす構成とすれば、相互の干渉を抑制すべくポールの長手方向にてレーザレーダ装置及び基準物体の距離を稼ぐ構成と比較して、レーザレーダ装置及び基準物体を互いに近づけやすくなる。これは、基準物体をレーザレーダ装置の周辺(近傍)に配置する構成を実現する上で好ましい。
【0025】
第9の手段.前記レーザレーダ装置は、前記踏切に設けられた遮断機(遮断機15)が閉状態となっている場合の当該遮断機の遮断桿(遮断桿16)よりも高い位置に配置されており、
前記検知エリアは、前記遮断機が前記閉状態となっている場合に前記遮断桿が当該検知エリアに位置するように設定されており、
前記遮断機が前記閉状態となっている場合の前記遮断桿までの距離及び照射角度を示す情報(遮断桿の位置を示す情報)又は当該情報に関連する情報(検知エリアを示す情報)が遮断桿情報として記憶されており、
前記遮断桿情報と前記測定結果とに基づいて前記遮断桿の動きを監視する。
【0026】
本手段に示す構成によれば、レーザレーダ装置によって遮断機が正常に動作しているかを確認することができる。これにより、遮断機の故障等を速やかに把握することが可能となり、踏切の安全性の更なる向上に寄与できる。
【0027】
第10の手段.前記検知エリア内の第1位置(例えば閉位置)と、前記検知エリア外の第2位置(例えば開位置)とに変位可能な基準物体(例えば遮断桿16)を備え、
前記基準物体は、前記踏切の遮断機(遮断機15)が開状態となっている場合には前記第2位置に位置し、前記遮断機が閉状態となっている場合には前記第1位置に位置し、
前記監視部は、少なくとも前記第1位置における前記基準物体までの距離及び照射角度を示す情報(ターゲットの位置を示す情報)又は当該情報に関連する情報(検知エリアを示す情報)を基準情報として記憶する記憶部(制御装置60の記憶部62)を有し、前記記憶部に記憶されている前記基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する。
【0028】
基準物体を検知エリア内の第1位置及び検知エリア外の第2位置に変位可能とし、遮断機が開状態である場合には基準物体が第2位置に位置し、遮断機が閉状態である場合には基準物体が第1位置に位置する構成とすることにより、第1の手段等に示した効果を発揮させつつ、当該基準物体が通行の邪魔になることを好適に回避できる。
【0029】
第11の手段.前記レーザレーダ装置は、前記遮断機が前記閉状態となっている場合の当該遮断機の遮断桿(遮断桿16)よりも高い位置に配置されており、
前記検知エリアは、前記遮断機が前記閉状態となっている場合に前記遮断桿が当該検知エリアに位置するように設定されており、
前記基準物体は、前記遮断桿である。
【0030】
遮断機が設置された踏切については、本手段に示すように遮断桿を基準物体として利用することにより、構成の複雑化を抑えつつ手段10に示した効果を発揮させることができる。
【0031】
なお、踏切に複数の遮断機が設けられている場合には、各遮断器の遮断桿を基準物体とすることにより、レーザレーダ装置の位置や向きのずれを一層好適に特定可能となる。
【0032】
第12の手段.前記受光部は、地面により反射されたレーザ光を受光可能となっており、
前記監視部は、前記地面までの距離及び照射角度を示す情報(ターゲットの位置を示す情報)又は当該情報に関連する情報(検知エリアを示す情報)を第2基準情報として記憶部(制御装置60の記憶部62)に記憶し、前記第2基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する。
【0033】
本手段に示す構成によれば、レーザレーダ装置の位置や向きが変化した場合の前後で基準物体とレーザレーダ装置との位置関係が同一となってしまった場合であっても、当該変化の見逃しを好適に抑制できる。
【0034】
第13の手段.前記受光部は、地面により反射されたレーザ光を受光可能となっており、
前記監視部は、前記地面までの距離及び照射角度を示す情報(ターゲットの位置を示す情報)又は当該情報に関連する情報(検知エリアを示す情報)を基準情報として記憶する記憶部(制御装置60の記憶部62)を有し、前記記憶部に記憶されている前記基準情報と前記測定結果とに基づいて前記レーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する。
【0035】
本手段に示すように、地面との距離に基づいてレーザレーダ装置の位置及び向きの少なくとも一方の変化を特定する構成とすれば、支持対象の変形等によってレーザレーダ装置の高さ位置や向き等が変化した場合に、当該変化を好適に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図5】制御部にて実行される障害物等検知処理を示すフローチャート。
【
図8】レーザユニットと基準ターゲットとを比較した概略図。
【
図9】制御部にて実行されるターゲット設定処理を示すフローチャート。
【
図10】基準ターゲット用の基準位置を示す概略図。
【
図11】制御部にて実行される確認処理を示すフローチャート。
【
図12】レーザレーダユニットの位置及び向きの確認の様子を示す概略図。
【
図13】第2の実施形態における踏切障害物検知システムを示す概略図。
【
図14】第3の実施形態における踏切障害物検知システムを示す概略図。
【
図17】レーザレーダユニットの位置及び向きの確認の様子を示す概略図。
【
図18】レーザレーダユニットの位置及び向きの確認の様子を示す概略図。
【
図19】第4の実施形態における踏切障害物検知システムを示す概略図。
【
図20】第5の実施形態における踏切障害物検知システムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、踏切内の障害物を検知する踏切障害物検知システムとして具体化されている。
【0038】
図1に示すように、踏切10においては、複数の線路11とそれら線路11と交差(直交)する方向に延びる複数の道路12とが交わっている。線路11の脇には遮断機15が設置されている。遮断機15は、開閉バーとしての遮断桿16と、当該遮断桿16を回動可能に保持する踏切警報器柱17とを有してなり、線路11を挟んで手前側及び奥側に各々配設されている。
【0039】
列車が踏切10を通過する場合には、遮断桿16の姿勢が垂直姿勢(開位置)から水平姿勢(閉位置)に切り替わることで道路12が遮断される。列車の通過後は、遮断桿16の姿勢が水平姿勢から垂直姿勢に切り替わることで道路12の遮断が解除される。以下の説明では、遮断桿16が垂直姿勢となっている遮断機15の状態を「開状態」、遮断桿16が水平姿勢となっている遮断機15の状態を「閉状態」と称する。
【0040】
踏切10には、遮断機15が閉状態となっている場合に列車の運行を妨げる障害物(例えば車や人等)を検知する踏切障害物検知システム18が適用されている。この踏切障害物検知システム18によって障害物が検知された場合には、踏切10に向けて走行中の列車や線路の管理センタにその旨が報知される。
【0041】
踏切障害物検知システム18は、踏切10において障害物を検知するエリア(検知エリア)へレーザ光を照射するレーザレーダユニット25と、当該レーザレーダユニット25を制御する制御装置とを有している。レーザレーダユニット25は、レーザレーダユニット用の支柱21(レーザレーダユニット用支柱21)に取り付けられている。レーザレーダユニット用支柱21は、遮断機15の近傍、具体的には遮断機15に対して踏切10の中央側となる位置に配設されており、当該遮断機15とともに道路12に沿って並んでいる。なお、本実施形態に示すレーザレーダユニット25は、水平姿勢となっている遮断桿16よりも上方、詳しくは地面Gから約3mの高所に配置されている。レーザレーダユニット25を高所に配置することで、当該レーザレーダユニット25を低所に配置する場合と比較して積雪や泥はね等の影響を受けにくい構成が実現されている。また、レーザレーダユニット25を高所に配置することは、当該レーザレーダユニット25への悪戯を抑制する上でも好ましい。
【0042】
レーザレーダユニット用支柱21は、その全長が遮断桿16の踏切警報器柱17よりも長くなっており、その先端部(上端部)が踏切警報器柱17よりも上方に突出している。レーザレーダユニット25は、この先端部にブラケット22を介して固定されている。
図2に示すように、ブラケット22は、レーザレーダユニット用支柱21にボルト等の固定具を用いて固定されるベース部23と、ベース部23から上向きに起立した一対のアーム部24とを有してなり、それらアーム部24によってレーザレーダユニット25が斜め下方に傾いた状態(道路12の地面Gに向いた状態)で保持されている。レーザレーダユニット25は、踏切10における検知エリアよりも上方に位置し、当該検知エリアに斜め上方からレーザ光を照射する。
【0043】
レーザレーダユニット25は、所定角度(例えば0.25°)毎に設定されている照射角度にてレーザ光を出力し物体Mにて反射されたレーザ光(以下、反射光と称する)を受光する光学機構41と、レーザレーダユニット25の外郭を構成するハウジング51とを備えている。ハウジング51にはレーザ光の照射口53が形成されており、この照射口53が道路12側を向くように設置されている。照射口53には透明な窓部材54が嵌っており、光学機構41からのレーザ光は窓部材54を透過して検知エリアへ照射される。
【0044】
光学機構41は、第1固定ミラー42、第2固定ミラー43、回転ミラー44、発光部46及び受光部47を有している。第2固定ミラー43の中心部には貫通穴45が形成されている。回転ミラー44は、第1固定ミラー42から反射されたレーザ光に対する傾斜角度を一定に維持した状態で回転可能に構成されている。具体的には、回転ミラー44は上記ハウジング51に固定されたモータ48(例えばステッピングモータ)によって回転可能に軸支されており、モータ48は回転ミラー44を所定の走査方向へ向かって所定角度単位で回転(回動)させる。この回転軸については地面Gに対して斜めに傾いている。
【0045】
発光部46から出力されたレーザ光は、まず、第1固定ミラー42で反射され、貫通穴45を通り、回転ミラー44で反射された後に、窓部材54を通って検知エリアへ照射される。このように、第1固定ミラー42及び回転ミラー44は、発光部46から出力されたレーザ光を検知エリアへ導くための光路P1を形成している。
【0046】
検知エリアへ照射されたレーザ光の光路P1上に何らかの物体Mが存在する場合、当該レーザ光は物体Mによって反射される。物体Mで反射された反射光は、窓部材54を通ってレーザレーダユニット25内へ入り、回転ミラー44及び第2固定ミラー43で反射される。そして、第2固定ミラー43で反射された反射光は、受光部47によって受光される。このように、回転ミラー44及び第2固定ミラー43は、物体Mで反射された反射光を受光部47へ導くための光路P2を形成している。
【0047】
なお、受光部47は、反射光の強度を検出可能となっており、後述する基準ターゲット(リフレクタ)からの反射光を他の反射光と識別する一助としている。
【0048】
レーザレーダユニット25には光学機構41(モータ48、発光部46、受光部47)用の駆動回路が設けられている。この駆動回路は制御装置60に接続されており、制御装置60からの指令等に基づいて光学機構41を制御し、距離の測定結果及び照射角度を示す情報を制御装置60に送信する。
【0049】
制御装置60には、制御部61及び記憶部62が設けられている。記憶部62はレーザレーダ用の制御プログラムやレーザレーダユニット25から取得した各種測定結果を記憶する。また、制御部61では、記憶部62に記憶されている測定結果等に基づいて、物体Mの有無の判断や物体Mまでの距離の算出等を行う。制御装置60には、制御部61及び記憶部62の他に、検知エリア内に物体を検知した場合や装置にエラーが発生した場合等に報知を行う報知部や後述する初期設定等を行う際にユーザによって操作される操作部が設けられている。
【0050】
ここで、
図3及び
図4を参照して、レーザ光の照射エリアLEと検知エリアDEとの関係について説明する。レーザレーダユニット25については、上り下りの各道路12のうち当該レーザレーダユニット25に最寄りとなる道路12の地面G、詳しくは車道に向けてレーザ光を出力する。つまり、車道に障害物等が存在していない場合には、レーザ光は検知エリアDEを素通りして道路12(車道)の地面Gに照射され、地面Gにて反射されたレーザ光の一部が受光部47に届く構成となっている。つまり、地面Gによって検知エリアDEの外縁の一部が規定されており、レーザレーダユニット25においては地面Gを検出可能となっている。
【0051】
上述したようにレーザレーダユニット25については走査型となっており、上記所定角度(0.25°)毎に設定された各照射角度(ANG1~ANG600)にてレーザ光が出力される。この照射エリアLEについては、踏切10を横断しており、踏切10内だけでなく各遮断機15を跨いで踏切10の外側にまで延びている。各走査サイクルにおいては、レーザ光が一方(最寄り)の遮断機15側から他方(遠方)の遮断機15側へとシフトする。この照射エリアLEの一部(例えばANG100~ANG580)が検知エリアDEに対応しており、検知エリアDEについても踏切10を横断している。レーザ光を反射した対象までの距離と照射角度とに基づいて、当該対象が検知エリアDE内に存在する障害物であるか否かが判定されることとなる。言い換えれば、制御装置60においては、踏切10において適正となる実際の検知エリアに合せてプログラム上の検知エリアDEが設定されている。
【0052】
本実施形態では、レーザレーダユニット25の近辺は検知エリアDEから除外されている。検知エリアDEは、踏切10を道路12の方向に見た場合には地面Gからレーザレーダユニット25の手前側となる位置へ延びる斜めの線分となり、踏切10の平面視においては略四角形となるように規定されている。なお、上記除外されたエリアに後述する基準ターゲットが配置されている。
【0053】
次に、制御装置60の制御部61にて実行される処理について説明する。この処理には、上記所定角度毎に設定された各照射角度(ANG1~ANG600)にて発光部46からレーザ光を出力し、それら照射角度毎に受光部47の受光状況を確認し当該受光状況に係る情報を各々記憶するメイン処理と、メイン処理にて記憶された情報に基づいて検知エリアDE内に障害物等が存在しているか否かの判定等を行う障害物等検知処理とを含む。メイン処理は走査中に実行される処理であり、障害物等検知処理は走査サイクル毎に繰り返し実行される処理である。ここで、
図5のフローチャートを参照して障害物等検知処理について説明する。なお、障害物等検知処理については、遮断桿16が閉状態となってから所定の待機時間(例えば5sec)を経過してから再び開状態への復帰条件が成立するまでの間に実行される処理である。
【0054】
障害物等検知処理においては先ず、ステップS11にて障害物検知が規制されているか否かを判定する。障害物検知が規制されている場合には、そのまま本障害物等検知処理を終了する。規制されていない場合には、ステップS12に進み、障害物検知用の報知を行っている否かを判定する。報知を行っていない場合には、ステップS13に進み、判定期間中すなわちレーザ光の照射が終了して次の照射が開始されるまでの期間中であるか否かを判定する。この判定期間中でない場合にはそのまま本障害物等検知処理を終了する。判定期間中である場合には、ステップS14にて障害物の検知が終了したか否かを判定する。障害物の検知が終了していない場合には、ステップS15に進み、検知エリアDE内(後述する特定範囲BEを除く)に物体(障害物)が存在しているか否かを判定する。物体が存在している場合には、ステップS16にて障害物検知用の報知を開始した後、本障害物等検知処理を終了する。障害物検知用の報知により、障害物を検知した旨の情報が列車等に送信される。
【0055】
ステップS12の説明に戻り、障害物検知用の報知中である場合には、ステップS17に進み、当該報知の解除条件が成立したか否かを判定する。ステップS17にて否定判定をした場合には、そのまま本障害物等検知処理を終了する。踏切10の確認後に運転手等によって解除操作が行われた場合には、解除条件成立となりステップS18にて障害物検知用の報知を解除した後、本障害物等検知処理を終了する。
【0056】
ステップS14の説明に戻り、当該ステップS14にて肯定判定をした場合、すなわち障害物の検知を終了している場合にはステップS19に進む。ステップS19では、検知エリアDEの特定範囲BEに遮断桿16と推定される物体が存在しているか否かを判定する。ここで、
図6の概略図を参照して、検知エリアDEと特定範囲BEとの関係について説明する。既に説明したように、本実施形態における検知エリアDEについては閉位置に配置された遮断桿16と交差するように設定されており、遮断桿16により反射されたレーザ光は受光部47へ到達する構成となっている。つまり、制御装置60においてはレーザレーダユニット25による測定結果に基づいて遮断桿16を捕捉可能となっている。検知エリアDEの一角には、レーザレーダユニット25の位置や向きにずれがなく、且つ遮断桿16に変形等が生じていない場合に、当該遮断桿16を検知する位置として上記特定範囲BE(「遮断桿情報」に相当)が規定されている。この特定範囲BEについては障害物の検知対象から外れている。
【0057】
特定範囲BEについては、レーザ光の照射角度ANGα±1且つレーザレーダユニット25からの距離DB±1となる範囲である。この特定範囲BEにて物体が検知され且つ当該特定範囲BEの周辺にて物体が検知されなかった場合に、遮断桿16が特定範囲BEに位置していると推定する。なお、遮断桿16については、閉位置への配置後も上下の揺れが収まるまでにある程度の時間を要する。本実施形態にて障害物等検知処理を実行する際に設定される上記待機時間については、当該揺れが収まる時間を考慮した時間となっている。
【0058】
ステップS19にて肯定判定をした場合には、そのまま本障害物等検知処理を終了し、ステップS19にて否定判定をした場合には、ステップS20にて管理センタ等に遮断機15の動作確認を要求した後、本障害物等検知処理を終了する。つまり、遮断桿16が閉位置に配置されるべき状況下にて当該遮断桿16が閉位置に配置されていない場合には、制御装置60にてその旨を把握し、管理センタ等に通達される。
【0059】
ここで、レーザレーダユニット25についてはレーザレーダユニット用支柱21を用いて高所に配置されている。このため、仮に強風や地震等の影響によってレーザレーダユニット用支柱21等が変形した場合には、レーザレーダユニット25の位置や向きが大きく変化し得る。このような変化が大きくなれば、検知エリアDEが適正なエリアから外れることで障害物検知の機能が上手く発揮されなくなる可能性がある。つまり、レーザレーダユニット25を高所に配置することは積雪等の影響を抑制する上では有利であるものの、信頼性の向上に係る新たな課題が生じる。そこで、本実施形態においては、レーザレーダユニット25による測定結果に基づいて当該レーザレーダユニット25の位置や向きの変化を適宜確認(監視)し、当該変化が許容範囲を超えている場合には、上述した障害物の検知が規制される構成(ステップS11参照)となっている。つまり、踏切障害物検知システム18にはセルフチェック機能が付与されている。以下、レーザレーダユニット25の位置及び向きの変化を確認するための構成について説明する。
【0060】
図1に示すように、レーザレーダユニット25に対して踏切10の中央側となる位置には、レーザレーダユニット用支柱21と横並びとなるようにして基準ターゲット用支柱31が配設されている。つまり、道路12に沿うようにして、遮断機15、レーザレーダユニット用支柱21、基準ターゲット用支柱31が一列に並んでいる。
【0061】
図7に示すように、基準ターゲット用支柱31の全長についてはレーザレーダユニット用支柱21の全長よりも若干短くなっており、その先端部(上端部)には、ブラケット32を介して基準ターゲット35が取り付けられている。ブラケット32は、基準ターゲット用支柱31にボルト等の固定具を用いて固定される環状のベース部33と、当該ベース部33から基準ターゲット用支柱31の放射方向、具体的には、道路12側に突出する突出部34とを有している。突出部34は棒状をなしており、その先端部分がレーザレーダユニット25から照射されるレーザ光の照射エリアLEに位置するように形成されている。
【0062】
突出部34の先端部分には、レーザ光を反射する高反射部材(リフレクタ)である上記基準ターゲット35が設けられている。つまり、基準ターゲット35については、レーザレーダユニット25の周辺に配置され照射エリアLEに位置してはいるものの検知エリアDEからは外れている(
図3及び
図4参照)。
【0063】
検知エリアDEに対して上方からレーザ光を照射する構成においては、基準ターゲット35をレーザレーダユニット25よりも低い位置に配置することで照射エリアLEの無駄な広がりを抑制できる。基準ターゲット35がレーザレーダユニット25の周辺(近傍)、すなわち高所に配置されることにより、基準ターゲット35を低所に配置する構成と比較して、積雪等の外的要因によって基準ターゲット35へのレーザ光の照射が妨げられるといった不都合を生じにくくすることができる。また、基準ターゲット35とレーザレーダユニット25とを近づけて配置することは、基準ターゲット35とレーザレーダユニット25との間でレーザ光の照射→反射→受光の流れが妨げられることを抑制する上で好ましい。
【0064】
レーザレーダユニット用支柱21及び基準ターゲット用支柱31については、互いに近い位置に配置されている。このため、一方の支柱が強風等の影響下となる場合には他方の支柱についても強風等の影響下となる。このような影響によって、レーザレーダユニット用支柱21と基準ターゲット用支柱31とに同様の変形が生じた場合には、レーザレーダユニット25の位置や向きが変化したにも関わらず、レーザレーダユニット25と基準ターゲット35との位置関係が変形前後で同一となることで、当該変化が見逃される可能性が生じる。これは、レーザレーダユニット25の位置や向きを確認する機能への信頼性を低下させる要因になるため好ましくない。この点、本実施形態においては、各支柱21,31については全長に違いはあるものの太さや強度が同一となっており、レーザレーダユニット25と基準ターゲット35とを比較した場合には、位置、重さ、大きさが異なっている(
図8参照)。詳しくは、レーザレーダユニット25は、位置、重さ、大きさが何れも上記影響が大きくなっている。故に、同様の風が吹きつけたとしても、上記影響の程度が同一となりにくい構成となっている。
【0065】
本実施形態に示す踏切障害物検知システム18においては、当該踏切障害物検知システム18の設置が完了して、制御装置60の電源をONにした際に基準ターゲット35の位置を制御装置60の記憶部62に記憶させる初期設定を行う初期設定モードへ移行する構成となっている。以下、
図9のフローチャートを参照し、制御装置60の制御部61にて実行される当該初期設定モードに係る処理(ターゲット設定処理)について説明する。
【0066】
ターゲット設定処理においては先ず、ステップS21にて作業者によりターゲット設定操作が行われたか否かを判定する。すなわち、電源ON操作に併せて設定ボタン(操作部)が操作されたか否かを判定する。設定ボタン当該操作が行われていない場合には、本ターゲット設定処理を終了する。設定ボタンが操作されている場合には、ステップS22に進みレーザ光の走査を開始する。続くステップS23では走査が完了したか否かを判定し、走査が完了した場合にはステップS24に進む。
【0067】
ステップS24では、走査により取得した距離の測定結果及び照射角度の情報に基づいて、予め設定された初期の設定範囲内に基準ターゲット35が位置しているか否かを判定する。基準ターゲット35を特定できていない場合、すなわち基準ターゲット35の位置が初期の設定範囲から外れている場合には、ステップS26にてエラー報知を行うとともに設置のやり直しを示唆する。基準ターゲット35を特定できた場合には、ステップS25に進み、確認用の基準位置SE(「基準情報」に相当)を記憶部62に記憶する。以降は、この記憶された基準位置SEと基準ターゲット35の推定位置とが一致している場合にレーザレーダユニット25の位置及び向きが変化していない又は変化の度合いが許容範囲であると判定され、この記憶された基準位置SEと基準ターゲット35の推定位置とが不一致となった場合にレーザレーダユニット25の位置又は向きの変化が許容範囲を超えていると判定される。
【0068】
ここで、
図10を参照して、レーザ光の照射エリアLE、検知エリアDE、基準位置SE(初期の設定範囲)の関係について説明する。
【0069】
基準位置SE(初期の設定範囲)については、照射エリアLEに含まれる一方、検知エリアDEからは外れるように、各支柱21,31の長さや両支柱21,31の設置位置が定められている。そして、基準位置SE(初期の設定範囲)は、検知エリアDEにおける走査方向の端部に照射されるレーザ光の光路の近傍となる位置に設定されている。このような位置とすれば、レーザレーダユニット25の周辺に基準ターゲット35を配置する場合であっても、当該基準ターゲット35が障害物検知の妨げになったり、検知エリアDEの広域化の妨げになったりすることを抑制できる。
【0070】
但し、レーザレーダユニット25及び基準ターゲット35が何れも支柱21,31を用いて設置されるため、両者の位置関係については設置作業の作業ばらつき等の影響を受けてある程度の誤差が生じる可能性がある。この点、本実施形態においては初期の設定範囲にある程度の幅が設けられており、初期設定によって当該初期の設定範囲から基準位置SEの絞り込みがなされる。
図10に示す例では、基準ターゲット35の位置が初期の設定範囲に含まれており、絞り込みによって、基準位置SEが若干の許容誤差を含むようにして照射角度ANGβ±1、距離DT±1となるように規定されている。なお、基準位置SEに許容誤差を含む構成とするか否かについては任意である。
【0071】
次に、
図11のフローチャートを参照して、制御装置60の制御部61にて実行されるレーザレーダユニット25の位置及び向きの変化を確認するための処理(確認処理)について説明する。この確認処理は、遮断機15を閉状態から開状態に復帰させる場合、すなわち障害物の検知が終了した後に次の障害物の検知に備えるべく実行される処理である。なお、本確認処理を実行する具体的なタイミングについては任意である。例えば、遮断機15を開状態から閉状態へ切り替える場合に、障害物の検知の前に実行する構成としてもよい。
【0072】
確認処理においては先ず、ステップS31にて基準位置SEが設定されているか否かを判定する。すなわち、レーザレーダユニット25の位置や向きの変化を確認(監視)する機能が有効となっているか否かを判定する。ステップS31にて否定判定をした場合には、そのまま本確認処理を終了する。ステップS31にて肯定判定をした場合には、ステップS32に進む。ステップS32では、確認タイミングとなったか否かを判定する。遮断機15を閉状態から開状態に復帰させるタイミングである場合には、ステップS32にて肯定判定をしてステップS33に進む。ステップS33では、レーザレーダユニット25による走査を開始する。走査が完了した場合にはステップS34にて肯定判定をしてステップS35に進む。ステップS35では、記憶部62に記憶されている基準位置SEに基準ターゲット35と推定される物体が位置しているか否かを判定する。ステップS35にて肯定判定をした場合、すなわちレーザレーダユニット25の位置及び向きの変化が生じていない場合又は変化が許容範囲である場合には、ステップS36に進む。ステップS36では、今回の確認結果を消去して、本確認処理を終了する。
【0073】
基準位置SEに基準ターゲット35と推定される物体が位置していない場合には、ステップS37にて上記障害物等検知処理を規制し、ステップS38にて管理センタに踏切障害物検知システム18の確認を要求した後、本確認処理を終了する。
【0074】
なお、本実施形態では、
図10に例示しているように、基準位置SEに物体が検知される一方、基準位置SEの周辺では物体が検出されなかった場合に、当該基準位置SEに基準ターゲット35が位置していると推定する。
【0075】
次に、
図12を参照して、レーザレーダユニット25の位置及び向きの変化による基準ターゲット35と照射エリアLE及び検知エリアDEとの関係の変化について説明する。
【0076】
図12(a)→
図12(b)に示す例では、レーザレーダユニット25の位置がレーザレーダユニット25の正面側(道路12側)にずれることで、基準ターゲット35が基準位置SEから外れている。これにより、制御装置60の制御部61では、レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方が許容できないレベルで変化した可能性がある旨が特定される。
【0077】
図12(a)→
図12(c)に示す例では、レーザレーダユニット25の位置がレーザレーダユニット25の背面側にずれることで、基準ターゲット35が基準位置SEから外れている。基準ターゲット35については、検知エリアDEに照射されるレーザ光の光路を遮っており、検知エリアDEの形状が大きく変化している。これにより、制御装置60の制御部61では、レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方が許容できないレベルで変化した可能性がある旨が特定される。
【0078】
図12(a)→
図12(d)に示す例では、レーザレーダユニット25の向きが水平方向(詳しくは基準ターゲット35側)にずれることで、基準ターゲット35が基準位置SEから外れている。基準ターゲット35については、検知エリアDEい照射されるレーザ光の光路を遮っており、検知エリアDEの形状が大きく変化している。これにより、制御装置60の制御部61では、レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方が許容できないレベルで変化した可能性がある旨が特定される。
【0079】
図12(a)→
図12(e)に示す例では、レーザレーダユニット25の向きが水平方向(詳しくは遮断機15側)にずれることで、基準ターゲット35が基準位置SEから外れている。これにより、制御装置60の制御部61では、レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方が許容できないレベルで変化した可能性がある旨が特定される。
【0080】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0081】
支柱21(「支持対象」に相当)を用いてレーザレーダユニット25(「レーザレーダ装置」に相当)を高所に配置し、検知エリアDEに対して上方からレーザ光を照射する構成とすれば、地面Gに近い低所にレーザレーダユニット25を配置して水平にレーザ光を照射する構成と比較して、天候等の影響によってレーザ光の光路が寸断されること、すなわち検知エリアDEへレーザ光を照射する機能が上手く発揮されなくなることを抑制する上で有利となる。
【0082】
ここで、支柱21によってレーザレーダユニット25を高所に配置した場合には、強風や地震等の影響によってレーザレーダユニット25の位置や向きが変化する可能性が高くなり、レーザ光の照射エリアLEがずれやすくなること(適正な位置から外れやすくなること)が懸念される。この点、本実施形態に示した踏切障害物検知システム18においては、レーザレーダユニット25による測定結果に基づいて当該レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視することにより、レーザ光が適正な位置に照射できない状況となった場合にその旨を簡易な構成によって把握可能となる。つまり、検知エリアDEに上方からレーザ光を照射する構成とした上で、レーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視する構成とすることにより、踏切障害物検知システム18の信頼性を好適に向上させることができる。
【0083】
レーザ光の照射エリアLEに配設された基準ターゲット35(「基準物体」に相当)を用いてレーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも一方の変化を監視する構成とすることにより、踏切障害物検知システム18の自己監視機能を簡易な構成によって実現できる。
【0084】
本実施形態に示したように、走査サイクルにおいて検知エリアDEの一端部に照射されるレーザ光の光路に隣接する位置に基準ターゲット35を配置することにより、レーザレーダユニット25の周辺に基準ターゲット35を配置する場合であっても、当該基準ターゲット35が障害物検知の妨げになったり、検知エリアDEの広域化の妨げになったりすることを抑制できる。
【0085】
レーザレーダユニット25と基準ターゲット35とを別々の支柱21,31に設けることにより、レーザレーダユニット用支柱21の変形に起因したレーザレーダユニット25の位置等の変化に追従して基準ターゲット35の位置が変化することを抑制できる。つまり、変形前後でレーザレーダユニット25と基準ターゲット35との位置関係が偶発的に同様となる機会を減らすことができる。
【0086】
<第2の実施形態>
本実施形態では、踏切障害物検知システムの適用条件を緩和するための工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、
図13を参照して、本実施形態における踏切障害物検知システム18Xについて、第1の実施形態に示した踏切障害物検知システム18との相違点を中心に説明する。
【0087】
図13に示すように、レーザレーダユニット25及び基準ターゲット35は、1の支柱71Xに各々取り付けられている。具体的には、レーザレーダユニット25は支柱71Xの先端(上端)寄りとなる位置に固定されたブラケット22Xを介して当該支柱71Xに取り付けられている。ブラケット22Xは、ボルト等の固定具を用いて支柱71Xに固定される環状のベース部23Xと当該ベース部23Xから支柱71Xの放射方向に突出する突出部24Xとを有している。突出部24Xについては、地面に対して斜めに傾斜する平板状をなしており、レーザレーダユニット25はこの突出部24Xの上面に載置された状態で当該突出部24Xにボルト等の固定具を用いて固定されている。
【0088】
支柱71Xにおいてブラケット22Xの下側となる位置にはブラケット22Xと離間した状態でブラケット32Xが固定されており、このブラケット32Xを介して当該支柱71Xに基準ターゲット35が取り付けられている。ブラケット32Xについても、ボルト等の固定具を用いて支柱71Xに固定される環状のベース部33Xと当該ベース部33Xから支柱71Xの放射方向に突出する突出部34Xとを有している。突出部34Xについては棒状をなしており、その先端部にリフレクタ(高反射部材)である基準ターゲット35が配設されている。
【0089】
ブラケット22Xの突出部24Xの突出方向と、ブラケット32Xの突出部34Xの突出方向とは相違している。具体的には、突出部24Xの突出方向については道路12(
図1等参照)と同じ方向となっており、突出部34Xの突出方向については線路11(
図1等参照)と同じ方向となっている。これにより、レーザレーダユニット25の斜め下方に基準ターゲット35が位置する構成となっている。なお、レーザレーダユニット25はブラケット32X及び基準ターゲット35と離間しており、基準ターゲット35についてもブラケット22Xと離間している。
【0090】
以上詳述したように、1の支柱71Xにレーザレーダユニット25及び基準ターゲット35を集約することにより、踏切障害物検知システム18Xの設置スペースに係る制約を緩和し、様々な踏切への適用を可能としている。
【0091】
レーザレーダユニット25及び基準ターゲット35を個別のブラケット22X,32Xを用いて支柱71Xに固定することにより、仮にブラケット22Xが変形してレーザレーダユニット25の位置や向きが変化した場合であっても、それに追従してブラケット32Xが変形することを抑制できる。特に、ブラケット22X及びレーザレーダユニット25と、ブラケット32X及び基準ターゲット35とは、互いに離間しているため、一方のブラケットの変形に追従して他方のブラケットが変形することが好適に回避される。
【0092】
また、仮にレーザレーダユニット25が下側に傾くようにブラケット22Xが変形した場合であっても、当該レーザレーダユニット25に押される等して基準ターゲット35がレーザレーダユニット25に追従するように下側に傾くことを抑制できる。故に、レーザレーダユニット25及び基準ターゲット35の位置関係が変形前後で同一になることを抑制し、レーザレーダユニット25の位置や向きの変化の見逃しを好適に減らすことができる。また、支柱71Xの周方向にて位置をずらす構成とすれば、相互の干渉を抑制すべく支柱71Xの長手方向にてレーザレーダユニット25及び基準ターゲット35の距離を稼ぐ構成と比較して、レーザレーダユニット25及び基準ターゲット35を互いに近づけやすくなる。これは、基準ターゲット35をレーザレーダユニット25の周辺(近傍)に配置する構成を実現する上で好ましい。
【0093】
なお、ブラケット22Xの強度については支柱71Xの強度よりも低くなっており、強風等の影響によって支柱71Xが変形する前にブラケット22Xが変形すると想定される。故に、レーザレーダユニット25と基準ターゲット35との位置関係を維持しながらレーザレーダユニット25の位置や向きが変化するといった事象は生じにくい。
【0094】
<第3の実施形態>
上記第1の実施形態及び第2の実施形態では、レーザ光の照射エリアLEに配設された基準物体である基準ターゲット35の測定結果に基づいてレーザレーダユニット25の位置及び向きの変化を確認(監視)する構成とした。これに対して、本実施形態では、遮断機15の遮断桿16を基準物体として利用し、上記基準ターゲット35が省略されている点で第1の実施形態等と構成が相違している。以下、
図14~
図16を参照して、第1の実施形態等との相違点を中心に本実施形態における特徴的な構成について説明する。
【0095】
図14(a)に示すように、遮断機15が開状態となっている場合には、垂直姿勢に維持されている遮断桿16はレーザ光の照射エリアLE及び検知エリアDEの何れからも外れている。つまり、レーザ光が遮断桿16に照射されることはない。これに対して、
図14(b)に示すように、遮断機15が閉状態となって障害物を検知すべき状況では、水平姿勢となった遮断桿16がレーザ光の照射エリアLE(詳しくは検知エリアDE)に位置している。つまり、レーザ光が遮断桿16に照射され、遮断桿16によって反射されたレーザ光が受光部47に到達することとなる。
【0096】
図15に示すように、検知エリアDEにて各遮断桿16と交差する部分には、基準位置SEが設定されている。つまり、検知エリアDEの一部が基準位置SEとなっている。この基準位置SEについては、上述した特定範囲BEと同様に、遮断桿16に変形が無く且つレーザレーダユニット25の位置や向きにずれが生じていない場合に検知エリアDEと各遮断桿16とが交差する部分を含む位置となるように規定されている。なお、
図16に示すように、遮断桿16が上下に揺れることに配慮して、基準位置SEの縦幅X1(道路12の幅方向における寸法)は横幅X2(道路12の長手方向における寸法)よりも余裕代が大きくなるように設定されている。
【0097】
制御装置60では、この基準位置SEにて物体を検知し且つ当該基準位置SEの周辺位置にて物体が検知しなかった場合に、当該基準位置SEに遮断桿16が位置していると推定する。
【0098】
図17(a)→
図17(b)に示すように、レーザレーダユニット25の位置及び向きがずれていない場合には、閉位置に配置された遮断桿16にレーザ光が照射されることで、当該遮断桿16が基準位置SEにて検知される。これにより、制御装置60では、レーザレーダユニット25の位置及び向きがずれていないと判定する。これに対して、レーザレーダユニット25の位置や向きがずれた場合には、検知される遮断桿16は基準位置SEから外れることとなる。これにより、レーザレーダユニット25の位置及び向きの何れかがずれていることが特定される。例えば、
図18(a)→
図18(b)に示す例では、レーザレーダユニット25の向きが水平方向にてずれている。一方の遮断桿16については検知エリアDE内で検知されるものの基準位置SEから外れ、他方の遮断桿16については検知エリアDEからも外れている。これらの測定結果から、制御装置60ではレーザレーダユニット25の位置及び向きの少なくとも何れかがずれている旨が特定されることとなる。
【0099】
検知エリアDE内の閉位置(「第1位置」に相当)及び検知エリアDE外の開位置(「第2位置」の相当)に変位可能な遮断桿16を基準物体とすることにより、構成の複雑化を抑制しつつ遮断機15が閉状態となった場合の自己監視機能を発揮させるだけでなく、当該基準物体が道路12における通行の邪魔になることを好適に回避できる。
【0100】
<第4の実施形態>
上記第3の実施形態では遮断桿16を基準物体として利用する構成とした。本実施形態では、遮断桿16に係る構成が第3の実施形態から変更されている。以下、
図19を参照して、第3の実施形態との相違点を中心に本実施形態における特徴的な構成について説明する。
【0101】
遮断桿16Yには、レーザ光の反射率が相対的に高い反射部(高反射部)と、レーザ光の反射率が相対的に低い非反射部(低反射部)とが設けられている。具体的には、反射部によって反射されたレーザ光については光量がレーザレーダユニット25にて検出可能となる検出閾値よりも大きくなり、非反射部によって反射されたレーザ光については光量が当該検出閾値よりも光量が小さくなるように構成されている。つまり、遮断桿16Yについては、レーザ光が照射される位置によって検出可/検出不可となる。本実施形態では、レーザ光の反射率を引き下げて上記非反射部を形成すべく、光を吸収する光吸収部材81Y(例えば光吸収用のテープ)を配設している。なお、遮断桿16Yにおける反射部の占める割合いについては遮断桿16Yにおける非反射部の占める割合いよりも大きくなっている。
【0102】
光吸収部材81Yについては、遮断桿16Yの中間位置に配設されており、その両側が反射部となっている。より詳しくは、レーザレーダユニット25に位置ずれが生じておらず且つ遮断桿16Yに変形等が生じていない状況下にて遮断桿16Yにレーザ光が照射される位置に光吸収部材81Yが配設されている。このため、レーザレーダユニット25及び遮断桿16Yの何れもが予め設定された位置からずれていない場合には、レーザ光が光吸収部材81Yによって吸収され、遮断桿16Yの検出が回避される。これに対して、レーザレーダユニット25の位置等にずれが生じた場合には、レーザ光が反射部に照射され、制御装置60では測定結果(形、大きさ、位置)から遮断桿16Yであると推定される推定結果となった場合にレーザレーダユニット25の位置や向きの変化を特定する。
【0103】
<第5の実施形態>
上記第1~第4の実施形態では、基準物体(基準ターゲット35や遮断桿16)を用いてレーザレーダユニット25の位置や向きの変化を確認(監視)する構成とした。本実施形態ではレーザレーダユニット25の位置や向きの変化の見逃しを抑制するべく更なる工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、
図20を参照して、本実施形態における特徴的な構成を第1の実施形態等との相違点を中心に説明する。なお、第1の実施形態等と共通の構成については説明を省略する。因みに、
図20においては便宜上、基準物体に相当する構成の図示を省略している。
【0104】
基準物体を用いてレーザレーダユニット25の位置や向きの変化を監視する構成においては、レーザレーダユニット25の位置や向きが変化したとしても、変化の前後でレーザレーダユニット25と基準物体との位置関係が同一となった場合には当該変化を特定することは困難となり得る。ここで、本実施形態に示す踏切障害物検知システム18Zについては、レーザレーダユニット25による測定結果から地面Gまでの距離、詳しくはレーザレーダユニット25からレーザ光が反射された部分までの直線距離を推定している。そして、その推定結果と記憶部62に事前に記憶されている基準距離(「第2基準情報」に相当)とに基づいて、レーザレーダユニット25の位置や向きの変化を特定している。レーザレーダユニット25の位置や向きの変化の監視においては、基準物体を利用した監視にてレーザレーダユニット25の位置や向きが変化していないと判定された場合であっても、地面Gを利用した監視にてレーザレーダユニット25の位置や向きが変化していると判定された場合には、管理者等にシステムの確認が要求されることとなる。
【0105】
なお、降雪時にはレーザ光が雪面にて反射され、反射対象が地面G及び雪面の何れかであるかの識別が困難となり得るため、地面を利用した監視機能については無効化される。
【0106】
レーザレーダユニット25のブラケット22が変形したり、レーザレーダユニット用支柱21が変形したりすることで、レーザレーダユニット25の向きが上側又は下側に変化した場合には、レーザレーダユニット25から地面Gにてレーザ光の反射部分までの直線距離が変化する。このような変化については、特定の照射角度だけではなく、検知エリアDEのほぼ全域(所定の角度範囲)で発生する。つまり、障害物を検知した場合には一部の照射角度について反射対象までの距離が変化し、且つその変化量についても様々となる。これに対して、レーザレーダユニット25の向きが変化した場合には、検知エリアDEのほぼ全域(所定の角度範囲)にて反射対象までの距離が同じように変化する。なお、本実施形態では線路11のレールの窪みに配慮して、所定の角度範囲における90%にて距離が同じように変化している場合には、レーザレーダユニット25の位置又は向きが変化したと判定する。
【0107】
例えば、
図20(a1)→
図20(a2)に示すように、ブラケット22が変形してレーザレーダユニット25の向きが下側にずれた場合には、地面Gにてレーザ光を反射する部分までの距離が短くなる。その結果、
図20(b1)→
図20(b2)に示すように、検知エリアDEも縮小される。このような距離の変化が生じた場合には、レーザレーダユニット25の位置又は向きが変化したと判定する。
【0108】
また、
図20(a1)→
図20(a3)に示すように、レーザレーダユニット用支柱21が変形してレーザレーダユニット25の向きが下側にずれ且つ位置が道路12側にずれた場合には、地面Gにてレーザ光を反射する部分までの距離が短くなる。その結果、
図20(b1)→
図20(b3)に示すように、検知エリアDEも縮小される。このような距離の変化が生じた場合には、レーザレーダユニット25の位置又は向きが変化したと判定する。
【0109】
以上詳述した第5の実施形態によれば、偶発的な理由等によって基準物体を利用した監視が上手く機能しない場合であってもレーザレーダユニット25の位置や向きの変化の見逃しを好適に抑制できる。
【0110】
なお、地面Gを利用した監視機能については、必ずしも第1の実施形態等に示した基準物体を利用した監視機能と併用する必要は必ずしもなく、基準物体を利用した監視機能については省略することも可能である。
【0111】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。また、上記各実施形態に示した各種構成の全て又は一部を任意に組み合わせることも可能である。この場合、組み合わせの対象となる各構成の技術的意義(発揮される効果)が担保されることが好ましい。
【0112】
・上記各実施形態では、基準ターゲット35とレーザレーダユニット25との位置関係(測定結果)に基づいてレーザレーダユニット25の位置や向きの変化を特定する構成としたが、これを変更し、検知エリアDEの形状や大きさに基づいてレーザレーダユニット25の位置や向きの変化を特定する構成としてもよい。
【0113】
・上記第1の実施形態等に示した基準ターゲット35を遮断機15とレーザレーダユニット25との間に配置することも可能である。すなわち、基準ターゲット35を、検知エリアDEのうち走査方向における先側の端部(遠い側の端部)へ照射されるレーザ光の光路(光路L2)の近傍に配設したが、検知エリアDEのうち走査方向における手前側の端部(近い側の端部)へ照射されるレーザ光の光路(光路L1)の近傍に配設することも可能である。
【0114】
また、基準ターゲットの数については1つに限定されるものではなく、複数(例えば2つ)とすることも可能である。この場合、例えば光路L1の近傍及び光路L2の近傍に基準ターゲットを各々配設するとよい。
【0115】
・上記第1の実施形態等では、遮断桿16が開位置に配置された状態では、当該遮断桿16がレーザ光の照射エリアLE外(詳しくは検知エリアDE外)に位置する構成としたが、これを変更し、遮断桿16が開位置に配置された状態であっても当該遮断桿16が照射エリアLE内(例えば検知エリアDE内)に位置する構成とすることも可能である。この場合、閉位置への遮断桿16の復帰を監視し、当該閉位置への復帰がなされていない場合にも、管理者等に遮断機15の動作確認を要求するとよい。なお、踏切障害物検知システム18による動作の監視対象については、両遮断機15とする必要は必ずしもなく、動作の監視対象については一方の遮断機(例えば最寄りの遮断機)に限定してもよい。
【0116】
・踏切警報器柱17にレーザレーダユニット25及び基準ターゲット35を取り付けてもよい。但し、第1の実施形態に示したように踏切警報器柱17と遮断機15とが一体化されている場合には、遮断機15が動作した際の揺れによってレーザレーダユニット25による検知精度が低下し得る。故に、検知精度の向上を図る上では遮断機15とレーザレーダユニット25及び基準ターゲット35とは分けて設置することが好ましい。
【0117】
・上記第1の実施形態及び第2の実施形態では、基準ターゲット35をレーザ光の照射エリアLE内且つ検知エリアDE外に配置したが、基準ターゲット35をレーザ光の照射エリアLE内且つ検知エリアDE内に配置してもよい。但し、基準ターゲット35と障害物等の混同等を抑制する上では、検知エリアDE外に基準ターゲット35を配設することには技術的意義がある。
【0118】
・上記第3の実施形態及び第4の実施形態等では、遮断機15が開状態から閉状態に切り替わる場合に、基準物体である遮断桿16が開位置から閉位置に移動する構成としたが、遮断機15が閉状態となる場合に基準物体を検知エリアDE外の退避位置(「第2位置」に相当)から検知エリアDE内の確認位置(「第1位置」に相当)に移動させる技術的思想を第1の実施形態や第2の実施形態に適用してもよい。すなわち、基準ターゲット35を可動式とし、遮断機15が閉状態となる場合に基準物体を退避位置から確認位置に移動させ、遮断機15が開状態となる場合に基準物体を確認位置から退避位置へ移動させる構成としてもよい。
【0119】
・上記第3の実施形態及び第4の実施形態では、複数の遮断機15Yの各遮断桿16Yを基準物体としたが、一方の遮断桿(例えば近い側の遮断桿)のみを基準物体としてもよい。
【0120】
また、上記第1の実施形態及び第2の実施形態では、踏切障害物検知システム18によって複数の遮断機の動作を監視する構成としたが、1の遮断機(例えば近い側の遮断機)の動作を監視する構成を否定するものではない。
【0121】
・上記第4の実施形態では、レーザレーダユニット25の位置及び向きが設置時のままとなっている状況下にて当該レーザレーダユニット25から閉位置に配置された(静止している)遮断桿16Yにレーザ光が照射される部分に光吸収部材81Yを配設することで当該照射部分をレーザ光の反射が抑えられた非反射部とし、遮断桿16Yにおいてそれ以外の部分をレーザ光を反射する反射部とした。上記照射部分とそれ以外の部分とで差別化を図る上では、反射部と非反射部との関係を以下のように変更してもよい。すなわち、レーザレーダユニット25の位置及び向きが適正である場合に閉位置に配置された(静止している)遮断桿16Yにおいてレーザ光が照射される部分にリフレクタ等の光反射部材を配設することで反射部とし、それ以外の部分に光吸収部材を配設することで非反射部とすることも可能である。
【0122】
・上記各実施形態に示した踏切障害物検知システム18を、駅の構内にて飛び込み等を検知する検知システムに適用したり、建物等への侵入を検知する検知システムに適用したりすることも可能である。
【0123】
・上記各実施形態では、レーザレーダユニット25を線路脇に設置したが、線路間にレーザレーダユニット25を設置してもよい。この場合、基準ターゲット35については、他の線路間に設置したり、同じ線路間にて道路12を挟んで反対側となる位置に設置したりするとよい。
【0124】
・上記各実施形態に示したレーザレーダユニット25については主として道路12の車道部分にレーザ光を照射する構成としたが、これに限定されるものではない。レーザレーダユニット25については主として道路12の歩道部分にレーザ光を照射する構成とすることも可能である。また、レーザレーダユニット25を3次元走査タイプに変更し、車道部分及び歩道部分の両方にレーザ光を照射する構成として、監視機能を強化してもよい。
【符号の説明】
【0125】
10…踏切、11…線路、12…道路、15…遮断機、16…遮断桿、18,18X,18Y,18Z…踏切障害物検知システム、21…レーザレーダユニット用支柱、22,22X…ブラケット、25…レーザレーダユニット、31…基準ターゲット用支柱、32,32X…ブラケット、35…基準ターゲット、46…発光部、47…受光部、60…制御装置、61…制御部、62…記憶部、71X…支柱、81Y…光吸収部材、BE…特定範囲、DE…検知エリア、G…地面、L1,L2…光路、LE…照射エリア、SE…基準位置、M…物体。