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  • 特開-食器及び食器の製造方法 図1
  • 特開-食器及び食器の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017055
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】食器及び食器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/00 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A47G19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120120
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】316001102
【氏名又は名称】堀正工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】長江 一彌
【テーマコード(参考)】
3B001
【Fターム(参考)】
3B001AA04
3B001CC38
(57)【要約】
【課題】キラウエアの火山灰であるブラックシンダーを有効活用すること。
【解決手段】ブラックシンダー入りの食器は、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーを含んだ釉薬が表面に焼成されたものである。前記釉薬は、前記ブラックシンダーを10~50重量%含有することが好ましい。前記釉薬は、前記ブラックシンダーを30重量%含有することが特に好ましい。前記ブラックシンダーは、当該食器本体に比べチタンの重量%を6倍以上、鉄の重量%を2倍以上含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山灰を含んだ釉薬が表面に焼成された食器。
【請求項2】
前記火山灰は、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーである請求項1に記載の食器。
【請求項3】
前記釉薬は、前記ブラックシンダーを10~50重量%含有する請求項2に記載の食器。
【請求項4】
前記釉薬は、前記ブラックシンダーを30重量%含有する請求項3に記載の食器。
【請求項5】
前記ブラックシンダーの粒度は、40目以上の篩を通過したものである請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載の食器。
【請求項6】
前記ブラックシンダーの粒度は、60目の篩を通過したものである請求項5に記載の食器。
【請求項7】
キラウエアの火山灰であるブラックシンダーを60目の篩を通過させる工程と、
前記60目の篩を通過させた粒度のブラックシンダーと釉薬とを30重量部:70重量部の割合で混合する工程と、
前記ブラックシンダーと前記釉薬とを混合したものを食器本体の表面に焼成する工程と
を具備する食器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはキラウエアの火山灰であるブラックシンダー(Black Cinder)を含有する釉薬を焼成した湯飲みなどの食器及び食器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食器素地用陶土中に火山灰等の天然の微小なガラス気球を配合することが知られている(特許文献1参照)。ガラス気球中の空気等が素地中に気泡として残存し、こうして得られる食器は、素地の嵩比重が小さくなり、従来よりも軽量化が実現されることとなるが、比較的大きな気孔によって十分な強度が得られないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-99423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーが余剰していることを知り、ブラックシンダーを有効活用し、SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))の一環となればと考えた。副次的には、ブラックシンダーを有効活用することで、ブラックシンダーの収集や配送などによりハワイに雇用を創出するとともに、製品化の工程においても、日本国内等を中心に雇用を創出することが期待される。
【0005】
本発明は、火山灰、特にキラウエアの火山灰であるブラックシンダーを有効活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーの成分を解析したところ、チタンと鉄の成分が多いことを確認した。そこで、本発明者は、ブラックシンダーを食器に添加することで、抗菌性や味覚などの向上が図れるのでは想起した。しかし、単に、ブラックシンダーを食器に添加するだけでは上記の特許文献1に記載のとおり強度不足になることを危惧した。
本発明は、以上の事情に基づきなされたものである。
【0007】
本発明に係る食器は、火山灰を含んだ釉薬が表面に焼成されたものである。
【0008】
本発明に係る食器は、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーを含んだ釉薬が表面に焼成されたものである。
【0009】
前記釉薬は、前記ブラックシンダーを10~50重量%含有することが好ましい。前記釉薬は、前記ブラックシンダーを30重量%含有することが特に好ましい。
前記ブラックシンダーの粒度は、40目以上の篩を通過したものが好ましい。前記ブラックシンダーの粒度は、60目の篩を通過したものが特に好ましい。このような粒度のブラックシンダーを用いることで釉薬との混合が容易になる。
【0010】
本発明に係る食器の製造方法は、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーを60目の篩を通過させる工程と、前記60目の篩を通過させた粒度のブラックシンダーと釉薬とを30重量部:70重量部の割合で混合する工程と、前記ブラックシンダーと前記釉薬とを混合したものを食器本体の表面に焼成する工程とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キラウエアの火山灰であるブラックシンダーを有効活用することができる。また、本発明によれば、強度不足になることを避けつつ、抗菌性や味覚、更には意匠性の優れた食器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る食器及び従来の食器を示す写真である。
図2】本発明の一実施形態に係る食器の味覚調査の結果を示すレーダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る食器及び従来の食器を示す写真であり、左側が従来の食器を示し、右側が本発明の一実施形態に係る食器を示しており、本発明の一実施形態に係る食器の表面にはキラウエアの火山灰であるブラックシンダーを30重量%含んだ釉薬が焼成され、従来の食器の表面には釉薬は焼成されていない。
【0014】
本発明の一実施形態に係る食器は、食器本体と釉薬とブラックシンダーを準備した。
次に、60目(目開き)の篩を用いてブラックシンダーを通過させた。
次に、この粒度のブラックシンダーと釉薬とを30重量部:70重量部の割合で混合した。
最後に、ブラックシンダーと釉薬とを混合した混合物を食器本体の表面に焼成した。
焼成は、従来の焼成方法と同様である。
【0015】
ブラックシンダーを含んだ釉薬を焼成することで、独特の模様と色が得られ意匠性が優れたもとなる。色は、典型的は、辛子色(R199 G184 B0又はC3 M4 Y100 K30)に近くなった。
【0016】
ブラックシンダーの成分は以下のとおりである。また、比較のため釉薬及び食器本体の成分も示す。釉薬は市販品(3号釉(日陶産業))を用いた。食器本体は市販の素地(笠間原土)を用いている。
【表1】
ブラックシンダーは、釉薬に比べチタン及び鉄の重量%をほぼ40倍含有する。また、当該食器本体に比べチタンの重量%をほぼ6倍、鉄の重量%をほぼ2倍含有する。
【0017】
味覚について、以下の味覚調査を行った。
(1)試料となる食器について(BCとはブラックシンダー)
試料1 素地の10%がBC(釉薬なし)
試料2 素地の20%がBC(釉薬なし)
試料3 釉薬の15%がBC(素地は市販)
試料4 釉薬の30%がBC(素地は市販)
試料5 素地の10%がBC(釉薬あり、市販)
試料6 素地の20%がBC(釉薬あり、市販
【0018】
(2)飲料について
市販されている緑茶を沸騰させ、各湯飲みに10分間注ぎ(その時点で55℃)、それらをすぐに密封させ、急速冷蔵させたものを飲料として使用した
【0019】
(3)味覚調査の結果

味覚調査の結果を以下の表に示す。また、その結果を図2のレーダーチャートに示す。
【表2】
試料4が味覚への好影響が顕著であった。これは、本実施形態に係る食器は、鉄分を多く含んだブラックシンダーを含有する釉薬が焼成されているからであると考えられる。
【0020】
また本実施形態に係る食器は、チタンを多く含んだブラックシンダーを含有する釉薬が焼成されており、本チタンには抗菌性があるので、本発明に係る食器は抗菌性がより強く認められると考えられる。
【0021】
本発明は、上記の実施形態には限定されず、本発明の技術思想の範囲内で変形又は応用しての実施が可能であり、その実施の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
【0022】
例えば、上記の実施形態では、食器として湯飲みを例にとり説明したが、他の食器にも本発明を適用できる。
【0023】
また、本発明はブラックシンダーを含んだ釉薬を食器の表面に焼成するものであるが、意匠性等に応じて食器の表面の一部分にブラックシンダーを含んだ釉薬を焼成するように構成してもよい。
【0024】
更に、本発明は、土器・陶器・せっ器・磁器などのやきもの(窯器)以外の食器にも適用できる。
図1
図2