(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170579
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】調理容器及び電子レンジ
(51)【国際特許分類】
A47J 27/08 20060101AFI20221102BHJP
A47J 27/088 20060101ALI20221102BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20221102BHJP
F24C 7/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A47J27/08 G
A47J27/088
A47J27/00 107
F24C7/02 320Z
F24C7/02 360A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076819
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】今井 いつか
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彩香
【テーマコード(参考)】
3L086
4B055
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086AA13
3L086BF04
3L086CC08
3L086CC25
3L086DA22
4B055AA01
4B055AA10
4B055BA07
4B055CA21
4B055CA69
4B055CB08
4B055CC28
4B055DB15
4B055GA04
4B055GD02
4B055GD03
(57)【要約】
【課題】通常料理では容器内の圧力が上昇し難く、圧力料理では高圧状態を維持しやすい調理容器を提供する。
【解決手段】調理容器Xは、容器本体1と蓋本体5とを備え、容器内と容器外とを連通させる連通口61が容器本体1と蓋本体5との一方に設けられ、連通口61を塞ぐ閉塞部が容器本体1と前記蓋本体5との他方に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と蓋本体とを備える調理容器において、
容器内と容器外とを連通させる連通口が前記容器本体と前記蓋本体との一方に設けられ、
前記連通口を塞ぐ閉塞部が前記容器本体と前記蓋本体との他方に設けられている
調理容器。
【請求項2】
前記連通口は前記蓋本体に設けられ、
前記閉塞部は前記容器本体に設けられ、
前記閉塞部は、前記蓋本体が前記容器本体に対して閉位置で装着された状態で、前記連通口を塞ぐ
請求項1に記載の調理容器。
【請求項3】
前記容器本体は、底壁部と、当該底壁部の周縁から上方に延伸する周壁部とを有し、
前記閉塞部は、前記周壁部の上端部から当該周壁部の中央側に張り出す
請求項2に記載の調理容器。
【請求項4】
前記閉塞部の上面は、上方へ膨らむ形状をしている
請求項2又は3に記載の調理容器。
【請求項5】
前記連通口は、前記蓋本体の天壁部に装着された開閉部材の上下方向の貫通孔により構成され、
前記開閉部材の下面は、下方に膨らむ形状をしている
請求項2~4の何れか1項に記載の調理容器。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の調理容器を使って自動調理する調理モードを有する電子レンジにおいて、
前記調理モードには圧力調理モードを含み、
前記圧力調理モードは、
第1出力以上で運転する第1ステップと、
前記第1出力以下の第2出力と、当該第2出力よりも小さい第3出力とで間欠運転する第2ステップとをこの順で行う
電子レンジ。
【請求項7】
前記圧力調理モードは、
前記第2ステップの後に、前記第3出力よりも低い第4出力で運転する第3ステップを行う
請求項6に記載の電子レンジ。
【請求項8】
扉体の開閉のロック及び解除を行うロック機構と、前記ロック機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記圧力調理モードの終了に合わせて前記ロックを解除する
請求項6又は7に記載の電子レンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで圧力調理可能な調理容器と、当該調理容器用の制御プログラムを有する電子レンジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ用の圧力調理容器として、例えば、特許文献1には、過大な圧力を外部に排出するための第1及び第2弁手段16,18と、内部圧力が上昇したときにその状態を外部から視認可能な圧力表示手段20とを蓋体2に備えた圧力鍋が開示されている。
当該圧力鍋を電子レンジにより加熱させると、鍋内の圧力は上昇していく。鍋内が低圧状態では、第2弁手段18の弁球19が蒸気孔を塞いで蒸気が外に逃がされない。その後、鍋内が高圧状態になると蒸気により第2弁手段18の弁球19が押し上げられ、第2弁手段18と弁球19の隙間から蒸気が抜け、それに伴って鍋内の圧力も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧力鍋では、通常の料理の際にも、弁球19により鍋内の圧力が上昇する。一方で、圧力調理の際には、弁球19が押し上げられ、鍋内の圧力が低下してしまい、高圧状態を維持できない。
本発明は、通常料理では容器内の圧力が上昇し難く、圧力料理では高圧状態を維持しやすい調理容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る調理容器は、容器本体と蓋本体とを備える調理容器において、容器内と容器外とを連通させる連通口が前記容器本体と前記蓋本体との一方に設けられ、前記連通口を塞ぐ閉塞部が前記容器本体と前記蓋本体との他方に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、連通口が閉塞部で塞がれないようにすると通常調理が可能となり、連通口が閉塞部で塞がれるようにすると高圧状態が維持されて圧力調理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る調理容器の斜視図であり、(a)は上方から見た図であり、(b)は下方から見た図である。
【
図2】調理容器の分解状態を、蓋本体を下方から、容器本体を上方から見た斜視図である。
【
図4】圧力表示部のピンの斜視図であり、(a)は上方から見た図であり、(b)は下方から見た図である。
【
図5】開閉部材の斜視図であり、(a)は上方から見た図であり、(b)は下方から見た図である。
【
図6】第2実施形態に係る電子レンジの斜視図である。
【
図8】電子レンジの圧力調理を行う制御部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
実施形態の一態様に係る第1の調理容器は、容器本体と蓋本体とを備える調理容器において、容器内と容器外とを連通させる連通口が前記容器本体と前記蓋本体との一方に設けられ、前記連通口を塞ぐ閉塞部が前記容器本体と前記蓋本体との他方に設けられている。
実施形態の一態様に係る第2の調理容器は、第1の調理容器において、前記連通口は前記蓋本体に設けられ、前記閉塞部は前記容器本体に設けられ、前記閉塞部は、前記蓋本体が前記容器本体に対して閉位置で装着された状態で、前記連通口を塞ぐ。これにより、蓋本体の容器本体への装着により連通口の開閉を容易に行える。
実施形態の一態様に係る第3調理容器は、第2の調理容器において、前記容器本体は、底壁部と、当該底壁部の周縁から上方に延伸する周壁部とを有し、前記閉塞部は、前記周壁部の上端部から当該周壁部の中央側に張り出す。これにより、容易に閉塞部を設けることができる。
実施形態の一態様に係る第4の調理容器は、第2又は3の調理容器において、前記閉塞部の上面は、上方へ膨らむ形状をしている。これにより、高い密閉性で連通口を塞ぐことができる。
実施形態の一態様に係る第5の調理容器は、第2~4の何れかの調理容器において、前記連通口は、前記蓋本体の天壁部に装着された開閉部材の上下方向の貫通孔により構成され、前記開閉部材の下面は、下方に膨らむ形状をしている。これにより、容易に連通口を設けることができると共に高い密閉性で連通口を塞ぐことができる。
【0009】
実施形態の一態様に係る第1の電子レンジは、第1~5の何れかの調理容器を使って自動調理する調理モードを有する電子レンジにおいて、前記調理モードには圧力調理モードを含み、前記圧力調理モードは、第1出力以上で運転する第1ステップと、前記第1出力以下の第2出力と、当該第2出力よりも小さい第3出力とで間欠運転する第2ステップとをこの順で行う。これにより、安全に圧力調理をできる。
実施形態の一態様に係る第2の電子レンジは、第1の電子レンジにおいて、前記圧力調理モードは、前記第2ステップの後に、前記第3出力よりも低い第4出力で運転する第3ステップを行う。これにより、圧力調理が終了する際には容器内が減圧されており、安全性を向上できる。
実施形態の一態様に係る第3の電子レンジは、第1又は2の電子レンジにおいて、扉体の開閉のロック及び解除を行うロック機構と、前記ロック機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記圧力調理モードの終了に合わせて前記ロックを解除する。これにより、圧力調理中に調理容器が取り出されることがなくなり、安全性を高めることができる。
【0010】
<第1実施形態>
1.全体構成
調理容器(以下、単に「容器」とする)Xは電子レンジ用の容器である。容器Xは、
図1に示すように、容器本体1と蓋本体5とを備える。容器Xを使って、容器内を高圧で維持する加圧料理や、容器内を高圧で維持しない通常料理を行うことができる。
ここでは、
図2に示すように、容器内と容器外とを連通させる連通口61が蓋本体5に設けられ、連通口61を塞ぐ閉塞部19が容器本体1に設けられている容器Xについて説明する。
蓋本体5は、容器本体1に対して、加圧料理の際には第1の位置に配され、通常調理の際には第2の位置に配される。なお、第2の位置は、正確には、一点でなく、ある程度の範囲を含んでいる。なお、第1の位置は、本発明における「閉位置」の一例に相当する。
閉塞部19は、蓋本体5が容器本体1に対して第1の位置に配された状態で、連通口61を塞ぎ、蓋本体5が容器本体1に対して第2の位置に配された状態で、連通口61を開ける。これにより、蓋本体5を容器本体1に対して第1の位置に配することで圧力調理が可能となり、蓋本体5を容器本体1に対して第2の位置に配することで通常調理が可能となり、使用者の蓋本体5の位置の選択により、圧力調理と通常調理とを選択でき、使い勝手が向上する。
【0011】
2.容器本体
主に、
図2及び
図3を用いて説明する。
容器本体1は、底壁部11、周壁部13、容器側装着機構15、容器側ロック機構17、閉塞部19を少なくとも有している。容器本体1は、底壁部11等以外に、例えば、取手21やハンドル等の持ち手を備えてもよく、ここでは取手21を備えている。容器本体1は耐熱性樹脂材料により構成され、底壁部11、周壁部13、容器側装着機構15、容器側ロック機構17、閉塞部19、取手21を一体で有している。つまり、容器本体1は一体成型品である。
【0012】
(1)底壁部
底壁部11は、上方から見ると、円形状をしているが、この形状に限定するものでなく、矩形状、長円形状等であってもよい。
【0013】
(2)周壁部
周壁部13は、底壁部11の周縁からの上方に延伸する。ここでの周壁部13は、円筒状をしているが、この形状に限定するものでなはく、矩形筒状、長円筒状等であってもよい。ここで、周壁部13の筒軸は、容器本体1や容器Xの中心軸でもあり、以下、単に、中心軸ともいう。
周壁部13の上端は、被調理物を投入したり、取り出したりするための開口23を構成する。周壁部13の外周面の上部には取手21が設けられている。
【0014】
(3)容器側装着機構
容器側装着機構15は、蓋側装着機構55とで装着機構を構成し、容器本体1に蓋本体5を着脱可能に装着する。
装着機構は、容器本体1に対して蓋本体5を中心軸周りに回転させると、蓋側装着機構55が容器側装着機構15に係合する。容器側装着機構15は、周壁部13の上端から径方向の外方へ張り出す外張出部25により構成される。ここでの外張出部25は
図2に示すように、周方向に等間隔をおいて複数個(例えば、6個)ある。
【0015】
(4)容器側ロック機構
容器側ロック機構17は、蓋側ロック機構57とでロック機構を構成し、蓋本体5の装着状態をロック(外れ難く)したり、ロックを解除したりする。ここでは、蓋本体5の中心軸周りへの回転を規制する(回転をさせ難くする)ことで、装着状態をロックする。
ロック機構は、容器本体1に蓋本体5を装着した装着状態で蓋本体5を中心軸周りに回転させると、蓋側ロック機構57が容器側ロック機構17に嵌合する。容器側ロック機構17は、外張出部25の下面に設けられた凹部27により構成される。凹部27には、蓋側ロック機構57の凸部73が嵌合する。なお、ロック機構は、装着機構の複数の外張出部25及び内張出部71の内、中心軸を挟んで対向する2つの外張出部25と内張出部71とに設けられている。
【0016】
(5)閉塞部
閉塞部19は周壁部13の上端部に設けられている。閉塞部19は、周壁部13から中央側(中心軸)に向かって張り出す。ここでの閉塞部19は、上方から見たとき、三角形状、台形状に張り出す。閉塞部19は、ここでは、中心軸を挟んで対向する2部位に設けられている。閉塞部19は、周壁部13に対して取手21における周方向の中央と反対側に位置する。
閉塞部19は、その上面は上方へ膨らむ形状をしている。閉塞部19は、その上面が直線状に膨らんでもよいし、上側の凸の曲線状に膨らんでもよいし、直線と曲線とを組みわせた形状で膨らんでもよい。蓋本体5を容器本体1にロック状態で装着したときに、閉塞部19の膨らんだ部分の中心位置と、連通口61の中心位置とが一致するように構成されている。これにより、閉塞部19による密閉性を向上できる。閉塞部19の上面における最も高い位置(最も膨らんだ位置)は、連通口61よりも大きい平坦状をしている。これにより、連通口61に対して当該連通口61を塞ぐことができる面積を大きくでき、蓋本体5を容器本体1にロック状態で装着するだけで、容易に容器内を密閉できる。
【0017】
(6)取手
取手21は、中心軸を挟んで対向する部位に設けられ、合計で2個ある。取手21は、径方向の外方へ張り出す。取手21は、蓋本体5の装着状態が容器本体1に対して第1の位置であること、第1の位置で蓋本体5を装着させるための目印となる容器側目印29を有する。
【0018】
3.蓋本体
主に、
図2及び
図3を用いて説明する。
蓋本体5は、容器本体1の開口23を覆うように、容器本体1に着脱可能に装着される。蓋本体5は、天壁部51、周壁部53、蓋側装着機構55、蓋側ロック機構57、調圧ユニット59を少なくとも有し、天壁部51に1個又は複数個(ここでは1個である)の連通口61が設けられている。蓋本体5は、天壁部51等以外に、例えば、取手21やハンドル等の持ち手や、圧力表示部65等を備えてもよく、ここでは取手63と圧力表示部65を備えている。
蓋本体5は耐熱性樹脂材料により構成され、天壁部51、周壁部53、蓋側装着機構55、蓋側ロック機構57、取手63を一体で有している。つまり、蓋本体5は一体成型品を利用している。
【0019】
(1)天壁部
天壁部51は、容器本体1の開口23に対応した形状をし、ここでは、円形状をしている。天壁部51には、調圧ユニット59、圧力表示部65、連通口61を構成するための開閉部材67が設けられている。
【0020】
(2)周壁部
周壁部53は、天壁部51の周縁から下方に延伸する。周壁部53の上端部と天壁部51の周縁部との間には、環状のパッキン69が設けられている。
周壁部53の外周面には取手63が設けられている。周壁部53の内周面には、蓋側装着機構55や蓋側ロック機構57が設けられている。
【0021】
(3)蓋側装着機構
蓋側装着機構55は容器側装着機構15と係合可能に構成されている。蓋側装着機構55は、周壁部53の下端から径方向の内方へ張り出す内張出部71により構成される。ここでの内張出部71は
図2に示すように、周方向に等間隔をおいて複数個(例えば、6個)ある。内張出部71の周方向の長さは、周方向に隣接する2つの外張出部25の間隔よりも小さい。
なお、複数の内張出部71の内、少なくとも1個(ここでは、2個である)の内張出部71には、蓋本体5を容器本体1に装着する際に、容器本体1に対する蓋本体5の回転を止める回転止め部71aが設けられている。なお、回転止め部71aは、装着する際に回転させる方向と反対側の端部に設けられている。
【0022】
(4)蓋側ロック機構
蓋側ロック機構57は容器側ロック機構17と嵌合可能に構成されている。蓋側ロック機構57は、内張出部71の上面に設けられた凸部73により構成される。なお、凸部73は凹部27に嵌合する。なお、凹部27及び凸部73の凹凸関係は、容器本体1と蓋本体5とで反対であってもよい。
【0023】
(5)調圧ユニット
調圧ユニット59は、圧力調理の際に、容器内の圧力を一定に保つためのものである。ここでの調圧ユニット59は、重錘式であり、
図3に示すように、容器内と連通するパイプ81と、パイプ81の上端口を塞ぐ錘付きのレバー体83と、天壁部51の下面に設けられたキャップ85とを備える。
レバー体83は、パイプ81の中心軸の周りに回転自在に支持されている。レバー体83は、天壁部51に対して第3の位置に設定されると、上下方向に移動可能となり、パイプ81の上端を塞ぐ。この状態で容器内の圧力が一定以上になると、錘(レバー体83)を押し上げて蒸気を排出する。
レバー体83が、第3の位置から第4の位置へと回転させると、錘(レバー体83)が、パイプ81の上方に移動して、パイプ81の上端から離れる。これにより、容器内が常時開状態となる。
【0024】
(6)圧力表示部
圧力表示部65は、下端が容器内に位置するピン87を天壁部51に上下動可能に有し、容器内が高圧になると、ピン87が上がり、容器内が常圧になると、ピン87が下がる。これにより、容器内の圧力状態を表示できる。
ピン87は、弾性変形可能な樹脂材料、例えば、シリコン樹脂材料により構成されている。ピン87は、
図4に示すように、有蓋筒状をし、筒状部871と、筒状部871の上端を塞ぎ且つ筒状部871よりも大径な上大径部873と、筒状部871の下端に設けられ且つ筒状部871よりも大径な下大径部875とを有している。ピン87は、天壁部51の貫通孔51a(
図3参照)に筒状部871が挿入される。筒状部871の上下方向の寸法は、天壁部51の厚みよりも大きく、ピン87が上下動可能に支持される。
ピン87の下大径部875は、容器内の圧力が一定以上になると、弾性変形して、貫通孔51aを通過する。すなわち、圧力が一定以上になると、圧力表示部65が天壁部51から上方へ抜け、内部の圧力が開放される。つまり、圧力表示部65は、安全弁として機能する。なお、ピン87の下大径部875の厚み、直径等は、ピン87が抜けるタイミング(容器内の圧力)に合わせて設定されている。
【0025】
(7)取手
取手63は、周壁部53の筒軸を挟んで対向する部位に設けられ、合計で2個ある。取手63は径方向の外方へ張り出す。取手63は、蓋本体5の装着状態が容器本体1に対して第1の位置であること、第1の位置で蓋本体5を装着させるための目印となる蓋側目印75を有する。なお、圧力表示部65及び連通口61は、1個の取手63を結ぶ仮想線上に位置する。
取手63は、
図1に示すように、蓋本体5が第1の位置で容器本体1に装着(ロック)された状態を上方から見ると、容器本体1の取手21と一致する。換言すると、取手21,63が重なる位置が、「第1の位置」であり、ロック状態である。
【0026】
(8)連通口
連通口61は、蓋本体5の天壁部51に装着された開閉部材67の上下方向の貫通孔671により構成されている。開閉部材67は、
図5に示すように、筒状をし、筒軸方向の中間部分に周方向に延伸する溝部673が外周面に形成されている。溝部673が天壁部51の貫通孔51b(
図3参照)に嵌合する。
開閉部材67の底部分675の外周面(下面)は、下方に膨らむ形状をしている。開閉部材67は、その下面が直線状に膨らんでもよいし、下側の凸の曲線状に膨らんでもよいし、直線と曲線とを組みわせた形状で膨らんでもよい。具体的には、ドーム状に膨らんでいる。貫通孔671(連通口61)は、下方に最も膨らんだ部分に形成されている。これにより、閉塞部19との密閉性を高めることができる。開閉部材67の下面の最も膨らんだ位置は、開閉部材67の中心であり、貫通孔671の中心である。これにより、閉塞部19により閉塞された際に、開閉部材67の底部が均等に変形し、密閉性を向上できる。
【0027】
4.使用
(1)蓋本体の装着
蓋本体5の内張出部71が容器本体1の外張出部25の間に嵌るように、蓋本体5を容器本体1に載置する。なお、これにより、容器本体1の周壁部13の上端とパッキン69とが当接する。
蓋本体5を載置した状態で、蓋本体5を容器本体1に対して中心軸周りに相対的に回転させることで、蓋側装着機構55が容器側装着機構15に係合する。これにより、蓋本体5が容器本体1に装着される。
【0028】
(2)圧力調理
圧力調理する際には、上記の「(1)蓋本体の装着」での係合状態から、蓋側目印75と容器側目印29とが一致するように、さらに蓋本体5を容器本体1に対して回転させる。これにより、ロック機構が作用し、蓋本体5が容器本体1にロック状態で装着されると共に連通口61が閉塞部19により塞がれる。これにより、内部が密閉され、圧力調理が可能となる。また、連通口61が塞がれることで、内部の圧力は、調圧ユニット59により調整されることとなり、内部の高圧状態が維持され易くなる。
閉塞部19は周壁部13から張り出す構造であるため、容易に設けることができる。また、閉塞部19の上面が上方に膨らんでいるため、蓋本体5をスムーズに回転させることができる。一方、開閉部材67の下面も下方に膨らんでいるため、蓋本体5をスムーズに回転させることができる。
回転に際し、閉塞部19と開閉部材67とが相手側に向かって膨らんでいるため、開閉部材67と閉塞部19とが正規の位置(設計した位置)から外れていたとしても、密閉性を高めることができる。つまり、高い密閉性を維持できる範囲(回転範囲)を広げることができる。
【0029】
(3)通常調理
圧力調理する際には、上記の「(1)蓋本体の装着」での係合状態では、連通口61が閉塞部19により塞がれていない。これにより、容器内部と外部とが連通口61により連通し、通常調理が可能となる。
このように、蓋本体5の容器本体1への装着位置により、圧力調理と通常調理とを簡単に選択できる。
【0030】
<第2実施形態>
第1実施形態で説明した容器Xを使って自動調理する調理モードを有する電子レンジについて説明する。なお、圧力調理する圧力調理モードは、調理モードに含まれる。
1.電子レンジ
電子レンジYは、
図6及び
図7に示すように、開口を有する筐体103、筐体103に取り付けられ且つ開口を開閉可能とする扉体105、使用者が調理内容を選択するための操作部107、使用者の調理内容の選択のサポートや調理内容の運転状況を表示する表示部109、被調理材を加熱する加熱部111、加熱に合わせて点灯する庫内灯113、加熱に合わせて換気を行うファン部115、使用者の選択内容にしたがって加熱部111や表示部109や庫内灯113やファン部115を制御する制御部117等を備える。
また、電子レンジYは、圧力調理モードのプログラムが開始すると扉体105の開閉をロックするロック部119を備え、当該ロック部119は制御部117によりロック及び解除が制御される。なお、ロック部119として、例えば、ソレノイド等の電磁弁を利用できる。
【0031】
操作部107は複数の操作ボタンを有している。使用者は、これらの操作ボタンを操作することで、加熱に関する出力や時間を設定したり、複数ある自動調理メニューの中から所望のメニューを指定したりできる。なお、自動調理メニューとして、容器Xを利用した圧力調理モード等が含まれる。
制御部117は、マイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、メモリ121とタイマ123とを備える。メモリ121は、自動調理メニューに応じた複数の制御プログラムを記憶している。なお、当該複数プログラムには、圧力調理モードを実行するためのプログラムが含まれている。
【0032】
制御部117は、圧力調理モードが選択されると、第1出力で運転する第1ステップと、第1出力以下の第2出力と当該第2出力よりも低い第3出力とで間欠運転する第2ステップとをこの順で行う。ここでは、制御部117は、さらに、第2ステップの後に、第3出力よりも低い第4出力で運転する第3ステップを行う。
【0033】
2.制御部
圧力調理モードが選択された場合の制御部117の処理について、
図7及び
図8を用いて説明する。
制御部117は、操作部107が使用者により操作れ、圧力調理モードが選択されることにより処理を開始する。
処理を開始すると、0クリア等を行った後にタイマ123をスタートさせ(S1)、庫内灯113、ファン部115、ロック部119を駆動させ(S2)、
図8に示すように、第1時間(T1)が経過するまで第1出力(高出力運転:P1)で加熱部111を駆動させる(S3,S4)。
ここでの第1出力(P1)は、各調理コースに対応してあらかじめメモリ121に記憶されている。また、第1時間(T1)は、容器X内の圧力が圧力調理に必要な圧力になるまでの時間であり、各調理コースに対応してあらかじめメモリ121に記憶されている。
【0034】
第1時間(T1)が経過すると(S4で「Yes」である)、第2時間(T2)が経過するまで、第1出力(P1)と第3出力(P3)との間欠運転で加熱部111を駆動する(S5,S6)。ここでの間欠運転は、
図8に示すように、第1出力(P1)を間欠で運転し、第1出力(P1)で運転しないときに、第1出力(P1)よりも低い第3出力(P3)で運転する。これにより、容器X内の加圧状態を維持できる。なお、間欠運転の第1出力(P1)と第3出力(P3)とのデューティ比等はあらかじめメモリ121に記憶されている。
なお、ここでの第1出力(P1)は、第1出力(P1)以下の第2出力(P2)の一例に相当する。また、第3出力(P3)は、第2出力(P2)でもある第1出力(P1)よりも低ければよく、「0」の出力も含む。また、第3出力(P3)及び第2時間(T2)は、各調理コースに対応してあらかじめメモリ121に記憶されている。第3出力(P3)は、間欠運転のデューティ比や調理内容によって適宜設定されている。
【0035】
第2時間(T2)が経過すると(S6で「Yes」である)、第3時間(T3)が経過するまで、第4出力(低出力運転:P4)で加熱部111を駆動する(S7,S8)。これにより、容器X内を減圧させることができ、安全性を向上できる。
なお、第4出力(P4)は、出力が「0」の状態を含み、「0」の状態に相当する低出力も含む。
第3時間(T3)が経過すると(S8で「Yes」である)、加熱部111の駆動を停止すると共にタイマ123をストップし(S9,S10)、庫内灯113とファン部115とロック部119の駆動を停止させ(S11)て、処理を終了する。
これにより、加熱調理中に使用者が扉体105を開けることを防ぐことができ、安全性を高めることができる。
なお、容器Xを利用して電子レンジYで通常調理モードが選択された場合、
図8及び
図9に示す、経過時間が第1時間(T1)から第2時間(T2)までに行う間欠運転を行うようにしてよい。
【0036】
(3)その他
第2実施形態では、第1出力(P1)と第3出力(P3)とで間欠運転を行っているが、第1出力(P1)の代わりに、第1出力(P1)よりも低く且つ第3出力(P3)よりも高い第2出力(P2)で間欠運転してもよい。
第2実施形態では、第1時間(T1)から第2時間(T2)まで間欠運転を行っているが、当該間欠運転のエネルギ(出力×時間)と同じエネルギとなる第5出力(P5)で連続運転するようにしてもよい。
図8におけるステップS3,S5,S7では、出力が一定であったが、例えば、変動させてもよい。具体的には、ステップS3では、時間の経過と共に出力を徐々に高めるようにしてもよい。ステップS5,S7では、時間の経過と共に出力を徐々に低くするようにしてもよい。
扉体105のロックのタイミングは、プログラム開始時でもよいし、容器内の圧力がある程度(圧力表示部65が動作する前)になったときでもよいし、プログラムの開始から所定時間経過後であってもよい。
扉体105のロック解除のタイミングは、プログラム終了時でもよいし、容器内の圧力がある程度(動作していた圧力表示部65が動作を終了した後)になったときでもよいし、ステップS7をスタートしてから所定時間経過後であってもよい。
【0037】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例、変形例同士を組み合わせたものであってもよい。
また、実施形態や変形例に記載していていない例や、要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0038】
<変形例>
1.容器
(1)容器Xは、耐熱性樹脂材料により構成していたが、少なくとも電子レンジで使用可能な材料、例えば、耐熱性樹脂材料、耐熱ガラス材料等により構成してもよい。
(2)容器Xは、連通口61を蓋本体5に、閉塞部19を容器本体1にそれぞれ備えていたが、連通口を容器本体に、閉塞部を蓋本体にそれぞれ備えてもよい。
(3)連通口61は1個であったが、2個以上であってもよい。
(4)閉塞部19は、取手21の内側に設けられていたが、周壁部13の上端の一部を除いた広い範囲で内側(中心軸)に向かって張り出してもよい。広い範囲で張り出す場合、張り出していない部分に、通常調理時に連通口が位置するように構成される。
(5)連通口61及び閉塞部19は、取手21,63に対し、その中心軸側に設けられていたが、他の位置、例えば、一対の取手の間に設けられてもよい。
【0039】
<その他>
(1)容器Xは、耐熱性樹脂材料により構成していたが、金属材料で構成し、ガス、電気、磁気等を利用した調理器、つまり、電子レンジ以外の調理器により調理可能としてもよい。この場合でも、連通口を設けることで、通常料理では容器内の圧力が上昇し難く、圧力料理では高圧状態を維持しやすい調理容器を提供できる。この際、圧力表示部や取手を備えてもよいし、備えなくてもよい。
(2)蓋本体5は、安全弁として機能を有する圧力表示部65を有している。これにより、蓋本体の構造を簡単にできる。つまり、従来の圧力鍋は、第2弁手段18として、一定圧力以上になると蓋体2から外れる弁球19を有しているため、構造が複雑になるという課題がある。なお、蓋本体5の構造を簡単にする観点からは、圧力表示部を少なくとも有する蓋本体であればよく、連通口61を有していなくてもよく、調圧ユニットの構造も特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 容器本体
5 蓋本体
11 底壁部
13 周壁部
19 閉塞部
61 連通口