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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170580
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】採尿パッドおよび使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20221102BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20221102BHJP
   A61F 13/495 20060101ALI20221102BHJP
   A61F 13/505 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61F13/15 147
A61F13/42 B
A61F13/495
A61F13/505 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076820
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】金澤 悠喜
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA09
3B200CA11
3B200DF02
(57)【要約】
【課題】採尿される対象者および採尿する作業者の双方が感じ得る負担を軽減すること。
【解決手段】採尿パッド(おむつ10)は、尿を一時的に蓄える貯水層(13)と、貯水層(13)の外側主面を覆う液不透過性の被覆層(バックシート12)であって、尿を貯水層(13)から排出する排出口(12a)が設けられた被覆層(バックシート12)と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を一時的に蓄える貯水層であって、腹側部、股部、および背側部のうち少なくとも股部に設けられた貯水層と、
上記貯水層の外側主面を覆う液不透過性の被覆層であって、上記尿を上記貯水層から排出する排出口が設けられた被覆層と、を備えている、
ことを特徴とする採尿パッド。
【請求項2】
上記排出口を封止しており、且つ、当該排出口を開封可能な蓋を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の採尿パッド。
【請求項3】
上記背側部に設けられた便保持層であって、便を拡散しにくくする便保持層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の採尿パッド。
【請求項4】
上記便保持層の内側主面を含む表層は、起毛により構成されている、
ことを特徴とする請求項3の記載の採尿パッド。
【請求項5】
上記表層は、当該採尿パッドの左右方向に沿った横断面において、お尻の谷間形状に対応した山形形状である、
ことを特徴とする請求項4に記載の採尿パッド。
【請求項6】
上記便保持層の外側主面は、液不透過性の仕切り層により覆われている、
ことを特徴とする請求項3~5の何れか1項に記載の採尿パッド。
【請求項7】
上記貯水層は、上記腹側部、上記股部、および上記背側部のうち少なくとも上記股部および上記背側部に設けられており、
上記便保持層は、上記背側部において、上記貯水層の内側に積層されており、
上記貯水層と上記便保持層とは、分離することができる、
ことを特徴とする請求項3~6の何れか1項に記載の採尿パッド。
【請求項8】
上記股部と上記背側部との境界または当該境界の近傍には、当該採尿パッドの左右方向に沿って延在する隔壁が設けられている、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の採尿パッド。
【請求項9】
上記股部と上記背側部との境界または当該境界の近傍には、マーカが付されている、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の採尿パッド。
【請求項10】
おむつのトップシートに載置して用いるインナーパッド型の採尿パッドである、
ことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の採尿パッド。
【請求項11】
請求項1~9の何れか1項に記載の採尿パッドと、
上記腹側部と上記背側部とを固定するテープと、を備えている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項12】
上記被覆層に設けられたインジケータであって、上記貯水層に上記尿が蓄えられているか否かを示すインジケータを更に備えている、
ことを特徴とする請求項11に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿を採取する採尿パッド、および、そのような採尿パッドを備えた使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
尿に含まれる成分を指標として対象者の健康状態を把握することができるため、液体状態の尿を採取すること、すなわち採尿が広く用いられている。
【0003】
対象者が健康な成人の場合、本人が自発的に採尿することは容易である。
【0004】
一方、対象者が小児である場合、本人が自発的に採尿することは難しく、看護師や親などといった作業者が採尿を実施することが多い。このような作業者の助けを借りた採尿は、採尿される対象者にとっても、採尿する作業者にとっても負担となる。
【0005】
また、対象者が新生児である場合、本人が自発的に採尿することはできない。そこで、市販されている採尿バッグを用いた採尿が広く行われている。しかしながら、尿が採尿バッグから漏れることがある。また、採尿バッグは、粘着性を有する両面テープを用いて対象者の肌に貼り付けられる。そのため、対象者の肌は、両面テープに起因するストレスに晒される。また、対象者は、違和感を覚えるため、採尿バッグを貼り付けられることを嫌がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-187336号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"How do I collect my baby's urine?", [online], [2021年4月8日検索], インターネット<URL: https://www.metascreen.com.mm/urine-collection>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、尿に含まれる成分を調べるための小児、新生児における採尿では、採尿される対象者および採尿する作業者の双方が負担を感じるという課題がある。
【0009】
一方、採尿とは異なる方法により尿の成分を調べる技術として、尿中に含まれる特定の成分であるケトン体を検知する尿検査インジケータを備えたおむつが特許文献1に記載されている。尿検査インジケータは、ケトン体と接触することによりその色を変化させる。この紙おむつにおいては、尿検査インジケータの色をおむつの外部から目視することができるので、尿にケトン体が含まれているか否かを、紙おむつを外したり交換したりすることなく確認することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術では、採尿とは異なり、予め紙おむつに設けられたケトン体を検知する尿検査インジケータを用いるため、尿中のケトン体しか検知することができない。したがって、特許文献1の技術は、採尿と比較して汎用性が低い。
【0011】
採尿とは異なる方法により尿の成分を調べる別の技術として、吸水性を有する紙製のフィルタ(filter paper)をおむつの内部に貼り付けておき、対象者が排尿したあとに、尿を吸収した紙製のフィルタを取得する技術が非特許文献1に記載されている。この技術では、尿を吸収した紙製のフィルタを乾燥させることによって水分を除去することによって、尿の成分が残存した紙製のフィルタを取得する。
【0012】
しかしながら、非特許文献1の技術では、尿の水分が除去されているため、その後に実施可能な検査手法が限定される。したがって、非特許文献1の技術は、採尿と比較して汎用性が低い。
【0013】
以上のように、採尿とは異なる方法により尿の成分を調べる技術が知られている。しかしながら、これらの技術は、汎用性が採尿よりも低いため、現在でも採尿がひろく実施されている。
【0014】
本発明の一態様は、このような課題に鑑みてなされたものであり、採尿される対象者および採尿する作業者の双方が感じ得る負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る採尿パッドは、尿を一時的に蓄える貯水層であって、腹側部、股部、および背側部のうち少なくとも股部に設けられた貯水層と、上記貯水層の外側主面を覆う液不透過性の被覆層であって、上記尿を上記貯水層から排出する排出口が設けられた被覆層と、を備えている。
【0016】
上記のように構成された採尿パッドを対象者の股間にセットしておくことによって、対象者の尿は、貯水層に一時的に蓄えられる。本採尿パッドにおいては、貯水層の外側主面を覆う被覆層に排出口が設けられている。そのため、作業者は、排尿後の採尿パッドの貯水層に直接触れることなく、排出口から尿を絞り出すことによって採尿を実施することができる。したがって、本採尿パッドは、作業者の負担を軽減することができる。
【0017】
本採尿パッドにおいては、股間にセットした位置が多少動いた場合であっても、股部に設けられた貯水層が尿を貯めることができる。本採尿パッドは、採尿時に股間に貼り付けなくてよいため、対象者の負担を軽減することができる。
【0018】
以上のように、本採尿パッドは、採尿において対象者および作業者の双方が感じ得る負担を軽減することができる。
【0019】
また、本発明の第2の態様に係る採尿パッドにおいては、第1の態様に係る採尿パッドの構成に加えて、記排出口を封止しており、且つ、当該排出口を開封可能な蓋を更に備えている、構成が採用されている。
【0020】
上記の構成によれば、排出口を封止している蓋を開封しない限り貯水層の外側主面を覆う被覆層の液不透過性は保たれるので、貯水層に貯められるべき尿が採尿パッドの外部に漏れることを抑制することができる。一方、採尿するときは、作業者が排出口を開封することによって、容易に貯水層から採尿することができる。
【0021】
また、本発明の第3の態様に係る採尿パッドにおいては、第1の態様または第2の態様に係る採尿パッドの構成に加えて、上記背側部に設けられた便保持層であって、便を拡散しにくくする便保持層を更に備えている、構成が採用されている。
【0022】
上記の構成によれば、対象者が尿だけでなく便を排泄した場合であっても、便が背側部から腹側部に拡散することを抑制することができる。したがって、貯水層の蓄えられる尿への便の混入を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第4の態様に係る採尿パッドにおいては、第3の態様に係る採尿パッドの構成にくわえて、上記便保持層の内側主面を含む表層は、起毛により構成されている、構成が採用されている。
【0024】
上記の構成によれば、起毛により構成された便保持層の表層が便をキャッチしやすいため、表層に起毛が設けられていない場合と比較して、便の拡散を抑制することができる。したがって、貯水層の蓄えられる尿への便の混入を更に抑制することができる。
【0025】
また、本発明の第5の態様に係る採尿パッドにおいては、第4の態様に係る採尿パッドの構成に加えて、上記表層は、当該採尿パッドの左右方向に沿った横断面において、お尻の谷間形状に対応した山形形状である、構成が採用されている。
【0026】
上記の構成によれば、起毛により構成された便保持層の表層がお尻の谷間形状にフィットするため、表層が平坦な形状である場合と比較して、便の拡散を抑制することができる。したがって、貯水層の蓄えられる尿への便の混入を更に抑制することができる。
【0027】
また、本発明の第6の態様に係る採尿パッドにおいては、第3の態様~第5の態様に何れか一態様に係る採尿パッドの構成に加えて、上記便保持層の外側主面は、液不透過性の仕切り層により覆われている、構成が採用されている。
【0028】
上記の構成によれば、便保持層によりキャッチされた便に含まれている水分が便保持層の外部に漏れることを抑制することができる。したがって、貯水層の蓄えられる尿に、便中の水分が混入することを抑制することができる。
【0029】
また、本発明の第7の態様に係る採尿パッドにおいては、第3の態様~第6の態様に何れか一態様に係る採尿パッドの構成に加えて、上記貯水層は、上記腹側部、上記股部、および上記背側部のうち少なくとも上記股部および上記背側部に設けられており、上記便保持層は、上記背側部において、上記貯水層の内側に積層されており、上記貯水層と上記便保持層とは、分離することができる、構成が採用されている。
【0030】
上記の構成によれば、対象者が尿だけでなく便を排泄した場合であっても、採尿パッドを取り外したあとに貯水層と便保持層とを分離することができる。例えば、貯水層から分離した便保持層は、そのまま捨てることができる。したがって、本採尿パッドによれば、作業者が便とは独立して採尿できるので、作業者が感じ得る負担を更に軽減することができる。
【0031】
また、本発明の第8の態様に係る採尿パッドにおいては、第1の態様~第7の態様に何れか一態様に係る採尿パッドの構成に加えて、上記股部と上記背側部との境界または当該境界の近傍には、当該採尿パッドの左右方向に沿って延在する隔壁が設けられている、構成が採用されている。
【0032】
上記の構成によれば、股部と背側部との境界に隔壁が設けられているので、貯水層を含む股部から便保持層を含む背側部への尿の侵入を抑制することができる。したがって、本採尿パッドは、背側部へ侵入することによって採尿できなくなる尿の量を抑制することができる。すなわち、本採尿パッドは、採尿効率を高めることができる。
【0033】
また、本発明の第9の態様に係る採尿パッドにおいては、第1の態様~第7の態様に何れか一態様に係る採尿パッドの構成に加えて、上記股部と上記背側部との境界または当該境界の近傍には、マーカが付されている、構成が採用されている。
【0034】
上記の構成によれば、作業者が採尿パッドを対象者の股間にセットするときに、マーカを目印にすることができる。そのため、作業者は、採尿パッドを股間の好適な位置に採尿パッドを容易にセットすることができる。
【0035】
また、本発明の第10の態様に係る採尿パッドにおいては、第1の態様~第9の態様に何れか一態様に係る採尿パッドであって、おむつのトップシートに載置して用いるインナーパッド型の採尿パッドである。
【0036】
上記の構成によれば、おむつの内側(すなわちおむつのトップシート)に本採尿パッドを載置することにより採尿可能である。そのため、採尿するからといって、普段から使用しているおむつを変更することなくそのまま用いることができる。したがって、本採尿パッドは、対象者が抱き得る違和感を抑制することができる。
【0037】
なお、本採尿パッドにおいては、被覆層の外側におむつが位置することになるため、被覆層に設けられた排出口は、蓋により封止されていなくてもよい。排出口が封止されていない状態であっても、貯水層は一定の量の尿を蓄えることができる。したがって、排出口を封止する蓋を省略した場合であっても、作業者は、貯水層に蓄えられている一定の量の尿を採取することができる。
【0038】
上記の課題を解決するために、本発明の第11の態様に係る使い捨ておむつは、第1の態様~第9の態様の何れか一態様に係る採尿パッドと、上記腹側部と上記背側部とを固定するテープと、を備えている。
【0039】
上記の構成によれば、採尿パッドを使い捨ておむつに一体化することができるため、おむつの内側(すなわちおむつのトップシート)における採尿パッドの位置ずれを防ぐことができる。したがって、採尿パッドの位置ずれに起因する採尿の失敗を防ぐことができる。
【0040】
また、本発明の第12の態様に係る使い捨ておむつは、第11の態様に係る使い捨ておむつの構成に加えて、上記被覆層に設けられたインジケータであって、上記貯水層に上記尿が蓄えられているか否かを示すインジケータを更に備えている、構成が採用されている。
【0041】
上記の構成によれば、使い捨ておむつを外すことなく貯水層に尿が蓄えられているか否かを確認することができるので、適切なタイミングで採尿および使い捨ておむつの交換を実施することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の一態様によれば、採尿される対象者および採尿する作業者の双方が感じ得る負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態に係るおむつの平面図であって、トップシート側およびバックシート側の各々からみた場合の平面図である。
図2図1に示したおむつの縦断面を示す断面図である。
図3図1に示したおむつの第1の変形例の斜視図である。
図4図3に示した第1の変形例の縦断面を示す断面図である。
図5図3に示した第1の変形例の横断面を示す断面図である。
図6図1に示したおむつの第2の変形例の縦断面を示す断面図である。
図7図1に示したおむつの第3の変形例である採尿パッドと、おむつとの分解斜視図である。
図8図7に示した採尿パッドの平面図であって、トップシート側およびバックシート側の各々からみた場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔採尿パッドを備えたおむつ〕
本発明の一実施形態に係る採尿パッドを備えたおむつ10について、図1および図2を参照して説明する。おむつ10は、本発明の一態様である使い捨ておむつの一例であり、本発明の一態様である採尿パッドの一例でもある。
【0045】
図1には、平面状に展開した状態のおむつ10を示している。図1は、おむつ10の平面図であって、トップシート側およびバックシート側の各々からみた場合の平面図である。図2は、おむつ10の縦断面であって、図1のトップシート側の平面図に図示したA-A’線に沿った縦断面を示す断面図である。また、本明細書では、おむつ10における前後方向に沿った断面を縦断面と称し、おむつ10における左右方向に沿った断面を横断面と称する。前後方向および左右方向については、後述する。
【0046】
<おむつにおける方向>
本実施形態においては、おむつ10の3つの部分の各々を、便宜的に、腹側部10a、股部10b、および背側部10cと呼ぶ。腹側部10a、股部10b、および背側部10cの名称は、採尿される対象者がおむつ10を装着した場合に、おむつ10が対応する対象者の体の部位に対応して定められている。対象者がおむつ10を装着した場合に、腹側部10aは、対象者の下腹部に対応する部分であり、股部10bは、対象者の股間に対応する部分であり、背側部10cは、対象者のお尻から背中の下部に対応する部分である。
【0047】
おむつ10を装着した対象者からみた場合、腹側部10aは、自分の前側に位置する部分であり、背側部10cは、自分の後側に位置する部分である。したがって、展開した状態のおむつ10における長手方向のことを前後方向とも呼ぶ。
【0048】
図1に示した直交座標系のうちy軸は、展開した状態のおむつ10の前後方向と平行になるように定められている。また、図1に示した直交座標系のうちz軸は、展開した状態のおむつ10のトップシート11の主面に対して直交するように定められている。また、図1に示した直交座標系のうちx軸は、y軸およびz軸とともに右手系の直交座標系を構成するように定められている。
【0049】
図1に示した直交座標系において、x軸の正方向および負方向は、それぞれ、おむつ10を装着した対象者からみた場合の右手方向および左手に対応し、y軸の正方向および負方向は、それぞれ、上記対象者からみた場合の前方向および後ろ方向に対応し、z軸正方向および負方向は、それぞれ、上記対象者からみた場合の内側および外側の方向に対応する。おむつ10の内側は、上記対象者に接する側であり、おむつ10の外側は、上記対象者に接しない側である。展開した状態のおむつ10において、x軸と平行な方向を左右方向とも呼ぶ。
【0050】
<おむつの構成>
おむつ10は、図1に示すように、トップシート11と、バックシート12と、貯水層13と、蓋14と、ファスニングテープ16と、を備えている。おむつ10において、トップシート11、貯水層13、およびバックシート12は、おむつ10の内側(図2に示した状態では上側)から、この順番で積層されている(図2参照)。貯水層13は、トップシート11とバックシート12とによりラミネートされている。
【0051】
(トップシート)
トップシート11は、おむつ10の最も内側に位置する層である。トップシート11は、対象者の体に直接接する層である。図1のトップシート側の平面図に示すように、トップシート11の内側主面11d(z軸正方向側の主面)には、前後方向に添って一対のギャザー11cが設けられている。一対のギャザー11c同士の間隔は、適宜定めることができる。一対のギャザー11cは、対象者の尿および便がおむつ10から漏れることを抑制する。
【0052】
また、一対のギャザー11cの高さ(z軸方向に沿った長さ)は、適宜定めることができる。ただし、一対のギャザー11cは、市販されているおむつであって液体を不可逆的に吸収する吸水層を備えたおむつのギャザーと比較して、その高さが低く構成されていることが好ましい。一対のギャザー11cの高さを低くすることによって、トップシート11と対象者の肌との間に生じ得る空間の高さを低くすることができる。換言すれば、おむつ10を対象者によりぴったりとフィットさせることができる。したがって、対象者が便を排泄した場合に、おむつ10の内部において便が背側部10cから股部10bおよび腹側部10aへ移動することを抑制することができる。したがって、後述する貯水層13に一時的に蓄えられる尿に便が混入することを抑制することができる。
【0053】
トップシート11は、図1のトップシート側の平面図に示すように、y軸方向に沿って延伸された帯状のシートである。トップシート11は、おむつ10の前後方向に沿ってみた場合に、両端部の幅が広く、中間部の幅が狭くなるように構成されている。幅が狭い中間部は、おむつ10の股部10bを含んでいる。
【0054】
本実施形態においては、トップシート11のうち、一対のギャザー11cにより挟まれた長方形状の領域を中央領域11aと呼び、中央領域11aを外側から挟み込む一対の領域を外側領域11bと呼ぶ。
【0055】
トップシート11のうち、少なくとも中央領域11aは、液透過性を有するシートにより構成されている。液透過性を有するシートは、市場において入手可能なシートから適宜選択することができる。液透過性を有するシートは、市販されているおむつのトップシートと同様のシートを採用することが好ましい。トップシート11が液透過性を有することにより、おむつ10を装着した対象者の排泄物の1つである尿は、トップシート11を透過し、後述する貯水層13に至る。
【0056】
また、トップシート11を構成するシートは、対象者の排泄物の1つである便を透過させないように構成されていることが好ましい。この構成によれば、後述する貯水層13に一時的に蓄えられる尿に便が混入することを抑制することができる。
【0057】
トップシート11の外側領域11bは、中央領域11aと同じ液透過性を有するシートにより構成されていてもよいし、液不透過性のシートにより構成されていてもよい。後述する貯水層13は、市販されているおむつが備えている吸水層とは異なり、尿などの液体を一時的に蓄えるものの、当該液体を不可逆的に吸収するものではない。おむつ10において、外側領域11bを液不透過性のシートにより構成することによって、尿が外側領域11bからおむつ10の外部に漏れることを抑制することができる。
【0058】
(バックシート)
バックシート12は、おむつ10の最も外側に位置する層であり、被覆層の一例である。バックシート12は、対象者の体に接しない層である。図1のトップシート側の平面図とバックシート側の平面図とを比べると明らかなように、バックシート12は、トップシート11と同じ形状を有する。
【0059】
バックシート12は、液不透過性を有するシートにより構成されている。液不透過性を有するシートは、市場において入手可能なシートから適宜選択することもできる。液不透過性を有するシートとしては、市販されているおむつのバックシートと同様のシートを採用することもできるし、市販されているおむつのバックシートとは異なり、透光性を有する樹脂製のシートから適宜選択することもできる。
【0060】
バックシート12は、後述する貯水層13の外側主面を覆っている。バックシート12が液不透過性を有することにより、後述する貯水層13に至った尿を外部に漏らさずに蓄えることができる。
【0061】
トップシート11とバックシート12とは、各々の外縁領域同士が、液体を漏らさないように接合されている。したがって、トップシート11とバックシート12との間には、袋状の空間が形成されている。
【0062】
バックシート12のうち、トップシート11と接合されている外縁領域以外の領域(袋状の空間を形成する領域)の一部には排出口12aが形成されている。本実施形態において、排出口12aの外径(本実施形態においては直径)は、10mmである。ただし、排出口12aの外径は、液体を容易に排出することができるマクロなサイズであればよく、1mm以上であることが好ましい。本実施形態において、排出口12aは、円形の開口である。ただし、排出口12aの形状は、円形に限定されず、適宜定めることができる。また、排出口12aは、単一の穴で形成されていてもよいし、複数の小さい穴から構成されて液体を排出可能な領域により構成されていてもよい。
【0063】
本実施形態においては、バックシート12のうち背側部10cの一部であって、背側の端部(図2に図示した座標系においてy軸負方向側の端部)の近傍に排出口12aを設けている。使用済みのおむつ10を丸めるときに、おむつ10の腹側の端部(y軸正方向側の端部)を起点として、y軸負方向に向かって丸めていくためである。丸め終わったおむつ10は、ファスニングテープ16を用いてコンパクトにまとめることができる。排出口12aをバックシート12のうち背側の端部の近傍に設けることによって、おむつ10を丸めたあとに排出口12aを開封しても尿を採取することができる。ただし、おむつ10を丸める前に採尿する場合には、排出口12aをバックシート12の何れの位置に設けてもよい。
【0064】
排出口12aは、蓋14により封止されている。本実施形態では、蓋14として、排出口12aの直径を上回る直径を有する円形状のシールを採用している。排出口12aは、このシールをはがすことによって開封することができる。
【0065】
バックシート12には、貯水層13に尿が蓄えられているか否かを示すインジケータが設けられていることが好ましい。本実施形態では、バックシート12として、樹脂製の透光性を有するシートを採用している。バックシート12を構成する透光性を有する樹脂は、限定されず、適宜選択することができる。この樹脂の一例としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレンやポリプロピレンなど)が挙げられる。すなわち、バックシート12の一例としては、透光性を有する(より好ましくは透明な)ビニルシートが挙げられる。また、バックシート12は、高い伸縮性と、高い引き裂き耐性とを有することが望ましい。バックシート12が高い伸縮性および高い引き裂き耐性を有することにより、排出口12aから尿を絞り出す場合に、バックシート12が破れることを抑制することができる。また、バックシート12に対して爪のような突起物があたった場合でも、バックシート12が破れることを抑制することができる。バックシート12が透光性を有することによって、貯水層13に尿が蓄えられているか否かを、おむつ10を外すことなく目視により確認することができるしたがって、採尿を実施する作業者は、適切なタイミングで採尿およびおむつ10の交換を実施することができる。透光性を有するバックシート12は、貯水層13に尿が蓄えられているか否かを示すインジケータの一例である。また、バックシート12として、市販されているおむつのバックシートと同様のシートを採用する場合には、市販されているおむつと同様の手法でバックシート12にインジケータを設けることができる。
【0066】
(貯水層)
上述したように、バックシート12には排出口12aが形成されているものの、蓋14により封止されている。そのため、トップシート11とバックシート12とにより形成された袋状の空間は、一時的に尿を蓄える貯水層13として機能する。
【0067】
本実施形態においては、図2に示すように、トップシート11とバックシート12との間にスポンジの板状部材が介在し、貯水層13に当該板状部材が挿入された状態になっている。スポンジは、尿に代表される液体を一時的に蓄えることができ、且つ、外部から応力(例えば圧縮応力)を作用させることによって一時的に蓄えていた液体を絞り出すことができる材料により構成されていることが好ましい。貯水層13として用いるスポンジを構成する材料は、高い吸水能力を有することが好ましい。吸水能力を表す指標としては、例えば、単位体積あたりの吸収可能な水の量を用いることができる。高い吸水能力を有するスポンジの一例としては、PVA(ポリビニルアルコール)スポンジおよびメラミンスポンジが挙げられる。PVAスポンジは、超吸収スポンジとも呼ばれる。PVAスポンジは、市場に広く出回っているため、貯水層13を構成するスポンジとして容易に用いることができる。
【0068】
なお、本実施形態において、貯水層13は、おむつ10をz軸正方向側から平面視した場合に、おむつ10の外縁領域を除いたほぼ全域に設けられている(図1参照)。すなわち、本実施形態において、貯水層13は、腹側部10a、股部10b、および背側部10cの何れにも設けられている。ただし、貯水層13は、腹側部10a、股部10b、および背側部10cのうち少なくとも股部10bに設けられていればよく、貯水層13を設ける領域は適宜定めることができる。
【0069】
貯水層13の容積は、貯水層13の面積と高さ(スポンジの厚み)との積で求められる。したがって、貯水層13を設ける領域を股部10bに加え、腹側部10aおよび背側部10cの少なくとも何れかまで広げることによって、貯水層13に蓄えることができる尿の量を増やすことができる。
【0070】
<おむつの効果>
このように構成されたおむつ10を対象者の装着しておくことによって、対象者の尿は、貯水層13に一時的に蓄えられる。おむつ10においては、貯水層13の外側主面13aを覆う被覆層(バックシート12)に排出口12aが設けられている。そのため、作業者は、排尿後の貯水層13およびスポンジに直接触れることなく、排出口12aから尿を絞り出すことによって採尿を実施することができる。したがって、おむつ10は、作業者の負担を軽減することができる。
【0071】
おむつ10においては、股間にセットした位置が多少動いた場合であっても、少なくとも股部10bに設けられた貯水層13が尿を貯めることができる。おむつ10は、採尿時に股間に貼り付けなくてよいため、対象者の負担を軽減することができる。
【0072】
以上のように、おむつ10は、採尿において対象者および作業者の双方が感じ得る負担を軽減することができる。
【0073】
また、おむつ10においては、排出口12aを封止している蓋14を開封しない限り貯水層13の外側主面を覆う被覆層(バックシート12)の液不透過性は保たれる。したがって、おむつ10は、貯水層13に貯められるべき尿がおむつ10の外部に漏れることを抑制することができる。一方、採尿するときは、作業者が排出口12aを開封することによって、容易に貯水層13から採尿することができる。
【0074】
また、おむつ10は、バックシート12および貯水層13を備えた本発明の一態様である採尿パッドと、ファスニングテープ16とを備えている。ファスニングテープ16は、おむつ10の腹側部10aと背側部10cとを固定することができる。この構成によれば、採尿パッドを使い捨ておむつ10に一体化することができるため、おむつ10の内側(すなわちトップシート11上)における採尿パッドの位置ずれを防ぐことができる。したがって、おむつ10は、採尿パッドの位置ずれに起因する採尿の失敗を防ぐことができる。
【0075】
また、おむつ10は、貯水層13に尿が蓄えられているか否かを示すインジケータを備えている。この構成によれば、おむつ10を外すことなく貯水層13に尿が蓄えられているか否かを確認することができる。したがって、作業者は、適切なタイミングで採尿およびおむつ10の交換を実施することができる。
【0076】
<第1の変形例>
図1および図2に示したおむつ10の第1の変形例であるおむつ10Aについて、図3図5を参照して説明する。図3は、おむつ10Aをトップシート11の側からみた場合に得られる斜視図である。図3に挿入された拡大図Aは、後述する便保持層15Aの表層15Aaの拡大図であり、図3に挿入された拡大図Bは、表層15Aaの更なる拡大図である。図4は、おむつ10Aの縦断面を示す断面図である。図5は、おむつ10Aの横断面であって、図4に図示したB-B’線に沿った横断面を示す断面図である。
【0077】
図3図5に示したおむつ10Aは、図1および図2に示したおむつ10をベースにして、便保持層15Aを追加することによって得られる。したがって、以下では、おむつ10Aに関して、便保持層15Aについてのみ説明し、おむつ10と共通する構成については、説明を省略する。
【0078】
便保持層15Aは、おむつ10Aの背側部10cに設けられている。便保持層15Aは、対象者が便を排泄した場合に、その便を拡散しにくくするように構成されている。おむつ10Aが便保持層15Aを備えていることにより、対象者が尿だけでなく便を排泄した場合であっても、便が背側部から腹側部に拡散することを抑制することができる。したがって、貯水層の蓄えられる尿への便の混入を抑制することができる。
【0079】
本実施形態において、便保持層15Aは、綿を所定の形状に整形することにより得られる。便保持層15Aの内側主面(図4に図示した座標系におけるz軸正方向側の主面)を含む表層15Aaには、拡大図Aに示すように凹凸構造が形成されている。この凹凸構造は、便をキャッチしやすいため、便の拡散を抑制する。
【0080】
また、本実施形態において、表層15Aaは、拡大図Bに示すように、綿の起毛により構成されている。この構成によれば、起毛により構成された便保持層の表層15Aaが便をキャッチしやすいため、表層15Aaに起毛が設けられていない場合と比較して、便の拡散を抑制することができる。
【0081】
便保持層15Aは、これらの構成により、貯水層13の蓄えられる尿への便の混入を更に抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態において、表層15Aaは、おむつ10A横断面において、お尻の谷間形状に対応した山形形状に整形されている(図5参照)。起毛により構成された表層15Aaが対象者のお尻の谷間形状にフィットしやすい。したがって、表層15Aaが平坦な形状である場合と比較して、便の拡散を抑制することができる。したがって、貯水層13の蓄えられる尿への便の混入を更に抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態において、股部10bと背側部10cとの境界には、おむつ10Aの左右方向に沿って延在する隔壁17Aが設けられている(図4参照)。本実施形態において、隔壁17Aは、一対のギャザー11cと同様に構成されている。なお、隔壁17Aを設ける位置は、股部10bと背側部10cとの境界に限定されず、当該境界の近傍であってもよい。このように設けられた隔壁17Aは、腹側部10aおよび股部10bから便保持層15Aを含む背側部10cへの尿の侵入を抑制することができる。したがって、おむつ10Aは、背側部10cへ侵入することによって採尿できなくなる尿の量を抑制することができる。すなわち、おむつ10Aは、採尿効率を高めることができる。また、隔壁17Aは、便保持層15Aを含む背側部10cから腹側部10aおよび股部10bへの便の侵入を抑制することができる。したがって、おむつ10Aは、したがって、貯水層13の蓄えられる尿への便の混入を更に抑制することができる。
【0084】
また、このように構成された隔壁17Aは、上記境界に付されたマーカとしても機能する。作業者がおむつ10Aを対象者の股間にセットするときに、隔壁17Aを目印にし、おむつ10Aを股間の適切な位置にセットすることができる。そのため、作業者は、おむつ10Aを股間の好適な位置に採尿パッドを容易にセットすることができる。
【0085】
なお、おむつ10Aにおいては、おむつ10Aを股間の適切な位置にセットした場合に、外生殖器と肛門管との間に位置するように隔壁17Aを設けることが好ましい。
【0086】
また、おむつ10のように隔壁17Aを備えていない場合には、股部10bと背側部10cとの境界または当該境界の近傍には、マーカを印刷しておいてもよい。印刷するマーカの形状は、適宜定めることができる。マーカの形状の例としては、実線や破線などの線状や、点状などが挙げられる。
【0087】
<第2の変形例>
図1および図2に示したおむつ10の第2の変形例であるおむつ10Bであって、図3図5に示したおむつ10Aの変形例でもあるおむつ10Bについて、図6を参照して説明する。図6は、おむつ10Bの縦断面を示す断面図である。
【0088】
図6に示したおむつ10Bは、図3図5に示したおむつ10Aをベースにして、便保持層15Aを便保持層15Bに変形することによって得られる。したがって、以下では、おむつ10Bに関して、便保持層15Bについてのみ説明し、便保持層15Aと共通する構成については、説明を省略する。
【0089】
図6に示すように、便保持層15Bは、背側部10cにおいて、貯水層13の内側(図6に示した座標系におけるz軸正方向側)に積層されている。なお、本変形例においては、背側部10cにおける貯水層13の厚みを、腹側部10aおよび股部10bにおける貯水層13の厚みより薄くなるように構成している。したがって、トップシート11の股部10bと背側部10cとの境界には段差が形成されている。本変形例では、当該段差が生じた部分に便保持層15Bを積層している。したがって、股部10bと背側部10cとの境界において、トップシート11の内側主面と、便保持層15Bの内側主面とは、ほぼ面一になるように構成されている。
【0090】
便保持層15Bは、便保持層15Aの表層15Aaと同様に構成された表層15Baと、トップシート15Bbと、吸水層15Bcと、バックシートBdとを、を備えている。便保持層15Bにおいて、表層15Ba、トップシート15Bb、吸水層15Bc、およびバックシート15Bdは、おむつ10Bの内側(図6に示した状態では上側)から、この順番で積層されている(図6参照)。吸水層15Bcは、トップシート15Bbとバックシート15Bdとによりラミネートされている。
【0091】
トップシート15Bbは、トップシート11の中央領域11aと同様に液透過性を有するシートにより構成されている。
【0092】
吸水層15Bcは、尿に代表される液体を不可逆的に吸収するように構成されている。吸水層15Bcを構成する材料としては、市販されているおむつと同様に吸水ポリマーを採用することができる。
【0093】
バックシート15Bdは、バックシート12と同様に液不透過性を有するシートにより構成されている。バックシート15Bdは、便保持層15Bの外側主面(図6に示した座標系におけるz軸負方向側の主面)を覆っており、仕切り層の一例である。バックシート15Bdを構成する液不透過性を有するシートは、市場において入手可能なシートから適宜選択することもできる。液不透過性を有するシートとしては、市販されているおむつのバックシートと同様のシートが好適である。この構成によれば、便保持層15Bによりキャッチされた便に含まれている水分が便保持層15Bの外部(たとえば貯水層13)に漏れることを抑制することができる。したがって、貯水層の蓄えられる尿に、便中の水分が混入することを抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態において、背側部10cにおいて、トップシート11の内側主面11d(図6に示した座標系におけるz軸正方向側の主面)と、便保持層15Bの外側主面15Be(図6に示した座標系におけるz軸負方向側の主面)とは、分離することができるように弱く結合されている。トップシート11の内側主面11dと便保持層15Bの外側主面15Beとを弱く結合する方法は限定されないが、例えば、ファスニングテープと同様のテープを用いることができる。
【0095】
この構成によれば、対象者が尿だけでなく便を排泄した場合であっても、おむつ10Bを対象者から取り外したあとに、貯水層13と便保持層15Bとを分離することができる。例えば、貯水層13から分離した便保持層15Bは、そのまま捨てることができる。したがって、おむつ10Bによれば、作業者が便とは独立して採尿できるので、作業者が感じ得る負担を更に軽減することができる。
【0096】
〔第3の変形例〕
図1および図2に示したおむつ10の第3の変形例に係る採尿パッド30について、図7および図8を参照して説明する。図7は、採尿パッド30をおむつ20のトップシート21上に載置する様子を示す分解斜視図である。図8は、採尿パッド30の平面図であって、トップシート側およびバックシート側の各々からみた場合の平面図である。
【0097】
おむつ20は、市販されているおむつであって液体を不可逆的に吸収する吸水層を備えたおむつである。
【0098】
採尿パッド30は、おむつ10をベースにして、市販されている様々なおむつ20の内側に載置して利用できるように変形することにより得られる。すなわち、採尿パッド30は、おむつ10をインナーパッド型の採尿パッドに変形することにより得られる。採尿パッド30は、おむつ20のトップシート21の上に載置して用いるように設計されている。本変形例においては、採尿パッド30を構成する各構成要素と、おむつ10を構成する各構成要素との対応関係を説明するに留め、おむつ10において説明した各構成要素の詳細については説明を省略する。
【0099】
図8に示すように、採尿パッド30は、トップシート31と、バックシート32と、貯水層33と、蓋34と、滑り止めテープ38とを備えている。
【0100】
トップシート31、バックシート32、貯水層33、および蓋34の各々は、それぞれ、おむつ10のトップシート11、バックシート12、貯水層13、および蓋14に対応している。トップシート31の中央領域31a、外側領域31b、およびギャザー31cの各々は、それぞれ、トップシート11の中央領域11a、外側領域11b、およびギャザー11cに対応している。また、腹側部30a、股部30b、および背側部30cの各々は、それぞれ、おむつ10の腹側部10a、股部10b、および背側部10cに対応している。
【0101】
トップシート31およびバックシート32は、インナーパッド型に変形することに伴い、小ぶりに成形されている点がトップシート11およびバックシート12と異なる。
【0102】
また、バックシート32においては、排出口32aがバックシート12とは異なる位置に設けられている。バックシート32において、排出口32aは、バックシート32のうち背側部30cの背側の端部(図8に図示した座標系においてy軸負方向側の端部)、且つ、右側の端部(図8に図示した座標系においてx軸正方向側の端部)の近傍に設けられている。排出口32aを貯水層33の角部の近傍に設けることによって、尿を排出口32aの近傍に集めることが容易になるので、採取しきれない尿の量を抑制することができる。したがって、採尿パッド30は、採尿効率を高めることができる。
【0103】
また、採尿パッド30は、インナーパッド型であるため、おむつ20を対象者から取り外さない限りバックシート32を目視することができない。したがって、バックシート32は、バックシート12と異なりインジケータを省略することが好ましい。また、インナーパッド型でありおむつ20の内側に設けるため、バックシート32としては、柔らかくしなやかなシートを採用することが好ましい。
【0104】
また、図8のバックシート側の平面図に示すように、採尿パッド30は、独自の構成として、滑り止めテープ38を備えている。滑り止めテープ38は、バックシート32の表面(外側主面)に設けられた滑り止め機構の一例である。滑り止めテープ38としては、例えば、ファスニングテープと同様のテープを用いることができる。
【0105】
この構成によれば、おむつ20の内側(すなわちおむつのトップシート21の上)に採尿パッド30を載置することにより採尿可能である。そのため、採尿するからといって、普段から使用しているおむつ20を変更することなくそのまま用いることができる。したがって、採尿パッド30は、対象者が抱き得る違和感を抑制することができる。また、採尿パッド30においては、被覆層(バックシート32)の表面に滑り止め機構(滑り止めテープ38)が設けられている。そのため、おむつ20の内側に載置して用いる場合に、採尿パッド30の位置ずれに起因して採尿に失敗する可能性を低減することができる。
【0106】
なお、採尿パッド30においては、被覆層(バックシート32)の外側におむつが位置することになるため、被覆層(バックシート32)に設けられた排出口32aは、蓋34により封止されていなくてもよい。すなわち、蓋34を省略してもよい。排出口32aが封止されていない状態であっても、貯水層33は一定の量の尿を蓄えることができる。したがって、蓋34を省略した場合であっても、作業者は、貯水層33に蓄えられている一定の量の尿を採取することができる。
【0107】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態および第1の変形例~第3の変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態および第1の変形例~第3の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
10,10A,10B おむつ(使い捨ておむつ)
30 採尿パッド
10a,30a 腹側部
10b,30b 股部
10c,30c 背側部
11,31 トップシート
11a,31a トップシートの中央領域
11b,31b トップシートの外側領域
11c,31c ギャザー
11d トップシートの内側主面
12,32 バックシート(被覆層)
12a,32a 排出口
12b バックシートの外側主面
13,33 貯水層
13a 貯水層の外側主面
14,34 蓋
15A,15B 便保持層
15Aa,15Ba 表層
15Bb トップシート
15Bc 吸水層
15Bd バックシート(仕切り層)
15Be 便保持層の外側主面
17A 隔壁
38 滑り止めテープ(滑り止め機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8