(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017059
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】多関節ロボットの走行移動装置
(51)【国際特許分類】
B25J 5/02 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B25J5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120129
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】514162575
【氏名又は名称】株式会社ファインテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 義弘
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS12
3C707CS04
3C707HS27
3C707HT22
(57)【要約】
【課題】装置の設置スペースを大幅に縮小して、作業者による段取り作業などの作業性を改善することができる多関節ロボットの走行移動装置を提供する。
【解決手段】この多関節ロボットの走行移動装置は、ベース板4上に水平に、且つ幅方向を鉛直に敷設された縦板レール2を有する走行軸1と、走行軸1上に、スライド装置9を介して走行可能に装着され、走行駆動部12を設けた移動体10と、移動体10上にアーム部33が鉛直の旋回軸32により回転可能に取り付けられ、旋回軸32から離れた位置のアーム部33上に、多関節ロボット20の基台21が固定される旋回アーム30と、移動体10が停止した状態で、移動体10からベース板4上に押付部42を押し出して押し付ける停止安定装置40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板上に1本の縦板レールが、その幅方向を鉛直に敷設された走行軸と、
該走行軸上に、スライド装置を介して走行可能に装着された移動体と、
該移動体に設けられ、該移動体を移動走行させる走行駆動部と、
該移動体上にアーム部が鉛直の旋回軸により回転可能に取り付けられ、該旋回軸から離れた位置の該アーム部上に、多関節ロボットの基台が固定される旋回アームと、
該移動体が停止したとき、該移動体から該ベース板上に押付部を押し出して押し付ける停止安定装置と、
を備えたことを特徴とする多関節ロボットの走行移動装置。
【請求項2】
前記スライド装置は、前記走行軸の縦板レールに、長手方向に沿って取り付けられたリニアスライドレールと、前記移動体に取り付けられ、該リニアスライドレールと係合するスライドブロックと、を備え、前記走行駆動部は、該縦板レールに、長手方向に沿って取り付けられたラックと、駆動モータにより回転駆動され、該ラックと噛合するピニオンと、を備えたことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボットの走行移動装置。
【請求項3】
前記リニアスライドレールは、前記縦板レールの一側面に2本の該リニアスライドレールが上部と下部に分かれ、長手方向と平行に敷設され、前記ラックは、該縦板レールの一側面に該リニアスライドレールと平行に設けられたことを特徴とする請求項2記載の多関節ロボットの走行移動装置。
【請求項4】
前記停止安定装置は、前記移動体内に流体圧シリンダが取り付けられ、該流体圧シリンダのピストンロッドの先端に、前記押付部が取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボットの走行移動装置。
【請求項5】
前記停止安定装置の流体圧シリンダは、前記移動体上に配設された前記旋回アームの旋回軸の近傍下位置に、下向きに取り付けられ、前記押付部はフローティングジョイントを介して前記ピストンロッドの先端に取り付けられたことを特徴とする請求項4記載の多関節ロボットの走行移動装置。
【請求項6】
前記スライド装置は、前記走行軸の縦板レールに、長手方向に沿って取り付けられたリニアスライドレールと、前記移動体に取り付けられ、該リニアスライドレールと係合するスライドブロックと、を備え、前記走行駆動部は、該縦板レールに、長手方向に沿って取り付けられた多数のローラと、駆動モータにより回転駆動され、該ローラと係合するスクリュー型カムと、を備えたことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボットの走行移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットの走行移動装置に関し、特に、隣接して設置された複数の工作機械などに対し、被加工物などを着脱するために使用される産業用の多関節ロボットを、走行軸上で走行移動させる多関節ロボットの走行移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接して設置された複数の工作機械に対し、被加工物を着脱するために、産業用の多関節ロボットが使用される場合がある。この場合、多関節ロボットは、工作機械の前に敷設された走行軸上を走行する走行移動装置に、取り付けられ、走行移動する。
【0003】
従来のこの種の走行移動装置は、工作機械に対し、被加工物を高い精度で着脱させるために、大型の走行軸を複数の工作機械の正面に敷設し、走行軸上に大型のスライドブロックを移動可能に取り付け、スライドブロック上に、多関節ロボットが取り付けられる(下記特許文献1などを参照)。
【0004】
しかし、金属加工工場などでは、省力化、省スペース化のために、
図17、
図18に示す如く、複数の工作機械51が隣接し且つ向かい合わせて設置され、これらの工作機械51に対し、1台の多関節ロボット52を使用して、被加工物を着脱させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この場合、
図17,
図18に示すように、例えば、4台の工作機械51を使用するとき、各工作機械は、向かい合わせて設置され、中央前スペースに1本の走行軸53を敷設し、走行軸53上にスライドブロック54を、跨ぐように装着し、走行移動するスライドブロック54上に、多関節ロボット52が取り付けられる。
【0007】
多関節ロボット52は、スライドブロック54の動作により移動しながら、各工作機械51の正面に正対し、被加工物を把持して、工作機械51への着脱を行う。しかし、工作機械51に対し、被加工物を高い精度で着脱させるために、多関節ロボット52を移動させる走行軸53とスライドブロック54は、非常に大型化され、
図17、
図18の如く、複数の工作機械の正面前スペースのほとんどを、占領する。
【0008】
このため、工作機械51の作業の段取りを変更し、故障を修理し、或いは保守点検を行う場合、作業者が工作機械51の前に立って作業を行おうとしても、大型の走行軸53が邪魔になり、段取りなどの作業が思うようにできない課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、装置の設置スペースを大幅に縮小して、作業者による段取り作業などの作業性を改善することができる多関節ロボットの走行移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る多関節ロボットの走行移動装置は、
ベース板上に1本の縦板レールが、その幅方向を鉛直に敷設された走行軸と、
該走行軸上に、スライド装置を介して走行可能に装着された移動体と、
該移動体に設けられ、該移動体を移動走行させる走行駆動部と、
該移動体上にアーム部が鉛直の旋回軸により回転可能に取り付けられ、該旋回軸から離れた位置の該アーム部上に、多関節ロボットの基台が固定される旋回アームと、
該移動体が停止したとき、該移動体から該ベース板上に押付部を押し出して押し付ける停止安定装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
この多関節ロボットの走行移動装置によれば、例えば、複数の工作機械が隣接して設置された工場などで、各工作機械に対し、被加工物を多関節ロボットで着脱する作業を行う場合、複数の工作機械の前に1本の走行軸を敷設し、走行軸上に移動体を走行可能に設置し、移動体上に多関節ロボットを取り付け、移動体を移動させながら、多関節ロボットを動作させて被加工物の着脱を行う。
【0012】
走行軸は、ベース板上に一本の縦板レールを、幅方向を鉛直状態で敷設して構成されるので、走行軸の設置スペースを従来に比して大幅に少なくすることができる。工作機械の前底部に空間がある場合には、その空間に走行軸を配置することができ、工作機械前の床上空間を広く確保することができる。これにより、作業者は段取り変更などの際、容易に工作機械の前に立って作業を効率良く行うことができる。
【0013】
また、走行する移動体は、停止時、停止安定装置を動作させてベース板上に押付部を押し付け、移動体を安定した堅牢な停止状態とする。これにより、移動体上の多関節ロボットは、動作中、各アームを動かして、その重心が大きく移動した場合でも、移動体及び多関節ロボットの基台は、安定した停止状態を保持することができ、多関節ロボットは、高い精度で正確に被加工物の着脱動作を行うことができる。
【0014】
また、移動体の構造を不要に大型化し堅強にする必要がなくなるため、移動体を小型化することができ、省スペース化を図るとともに、作業員の作業性も改善することができる。
【0015】
さらに、移動体には、アーム部を有した旋回アームが、鉛直の旋回軸により回転可能に移動体上に取り付けられ、多関節ロボットの基台は、旋回軸から離れた位置のアーム部上に固定されるので、小型の多関節ロボットであっても、走行軸から少し離れた対向側の工作機械に対して、旋回アームを回動させて、その工作機械に多関節ロボットを接近させ、被加工物の着脱動作などを行うことができる。
【0016】
さらに、小型多関節ロボットの使用が可能となるので、工作機械の前部の空間スペースが広くなり、小型多関節ロボットであっても、停止安定装置の動作により、安定した停止状態が保持され、高精度に被加工物の着脱作業を行うことができる。
【0017】
ここで、上記スライド装置は、上記走行軸の縦板レールに、長手方向に沿って取り付けられたリニアスライドレールと、上記移動体に取り付けられ、該リニアスライドレールと係合するリニアスライドブロックと、を備え、走行駆動部は、該縦板レールに、長手方向に沿って取り付けられたラックと、駆動モータにより回転駆動され、該ラックと噛合するピニオンと、を備えて構成することができる。これによれば、走行軸上で、移動体を円滑に移動させ、正確な位置で停止させることができる。
【0018】
またここで、上記リニアスライドレールは、上記縦板レールの一側面に2本の該リニアスライドレールが上部と下部に分かれ、長手方向と平行に敷設され、上記ラックは、該縦板レールの一側面に該リニアスライドレールと平行に設けることができる。これによれば、走行軸上で、移動体をさらに円滑に安定して移動させ、正確な位置で停止させることができる。
【0019】
またここで、上記停止安定装置は、移動体内に流体圧シリンダが取り付けられ、該流体圧シリンダのピストンロッドの先端に、押付部が取り付けられた構成とすることができる。これによれば、比較的簡単な構成で、移動体の停止時の安定を確保することができる。
【0020】
またここで、上記停止安定装置の流体圧シリンダは、移動体上に配設された上記旋回アームの旋回軸の近傍下位置に、下向きに取り付けられ、上記押付部はフローティングジョイントを介して上記ピストンロッドの先端に取り付けることができる。これにより、例えば、多関節ロボットが工作機械に対し被加工物の着脱動作を行う際、アームが回動するとき、多関節ロボットを保持する移動体のふらつきや微動を抑え、多関節ロボットは、高い精度で着脱作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の走行移動装置によれば、装置の設置スペースを大幅に縮小して、工作機械の前に立って作業を行う、作業者の作業性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の一実施形態を示す多関節ロボットの走行移動装置の正面図である。
【
図2】同走行移動装置の左側面図とその部分拡大図である。
【
図4】同走行移動装置の角度を変えた斜視図である。
【
図5】(a)は移動体と走行駆動部の正面図、(b)はその平面図である。
【
図11】
図5(a)のXI-XI拡大断面図である。
【
図12】
図5(a)のXII-XII拡大断面図である。
【
図13】(a)は停止安定装置の作動時の拡大断面図、(b)は停止安定装置の非作動時の拡大断面図である。
【
図14】走行移動装置の使用状態を示す右側面図である。
【
図15】走行移動装置の使用状態を示す平面図である。
【
図16】他の実施形態の走行移動装置の正面図である。
【
図17】従来の多関節ロボットの走行移動装置の右側面図である。
【
図18】従来の多関節ロボットの走行移動装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この多関節ロボットの走行移動装置は、
図1~
図4に示すように、ベース板4上に1本の縦板レール2がその幅方向を鉛直に敷設された走行軸1と、走行軸1上に、スライド装置9を介して走行可能に装着された移動体10と、移動体10に設けられ、移動体10を移動走行させる走行駆動部12と、移動体10上にアーム部33が鉛直の旋回軸32により回転可能に取り付けられ、旋回軸32から離れた位置のアーム部33上に、多関節ロボット20の基台21が固定される旋回アーム30と、移動体10が停止したとき、移動体10からベース板4上に押付部42を押し出して押し付ける停止安定装置40と、を備えて構成される。
【0024】
走行軸1は、
図7~
図9に示すように、床上に載置される水平板状のベース板4上に、1本の縦板レール2が、その幅方向を鉛直にして、レール固定部3によって固定される。レール固定部3は、
図10に示すように、縦板レール2の他側面に垂直板38を固定し、垂直板38を水平板39の上に固定して構成され、水平板39はその下の取付板37に対し、高さ調整可能に取り付けられる。なお、所定長の縦板レール2が、3個のレール固定部3によって、ベース板4の平面に対し垂直に固定されるが、レールの長さ応じて任意の数のレール固定部3により固定することができる。
【0025】
縦板レール2の一側面(レール固定部3の反対側)に2本のリニアスライドレール6,7が上部と下部に分かれ、長手方向と平行に取り付けられる。さらに、縦板レール2の一側面には、ラック5が2本のリニアスライドレール6,7の中間位置に、リニアスライドレール6,7と平行に取り付けられる。一方、レール固定部3側の縦板レール2には、
図4に示すように、ケーブルガイド8が取り付けられている。
【0026】
多関節ロボット20が装着される移動体10は、走行軸1上に、スライド装置9を介して移動走行可能に装着される。
図2に示す如く、スライド装置9は、上記レール側に、水平に且つ長手方向に沿って設けた一対のリニアスライドレール6,7と、リニアスライドレール6とスライド可能に係合するリニアスライドブロック13と、リニアスライドレール7とスライド可能に係合するリニアスライドブロック14とからなり、リニアスライドブロック13とリニアスライドブロック14は、移動体10のハウジング11の内側における、側面の上部と下部に取り付けられている。
【0027】
図5、
図6、
図11、
図12に示すように、移動体10のハウジング11の側部に、ピニオンユニット18が取り付けられる。ピニオンユニット18は、ピニオン15が回転駆動可能に設けられ、そのピニオン15の一部がハウジング11の側面から露出する。また、ピニオン15の上方に、リニアスライドブロック13が、ピニオン15の下方に、リニアスライドブロック14が、ハウジング11の側面に固定される。
【0028】
ピニオン15は上記レール側のラック5と係合し、リニアスライドブロック13はリニアスライドレール6と係合し、リニアスライドブロック14はリニアスライドレール7と係合する。これにより、移動体10は、リニアスライドブロック13、14、リニアスライドレール6、7を介して走行軸1上を摺動し、ピニオン15の回転駆動により走行する。
【0029】
ピニオンユニット18の上部に、減速機付きの駆動モータ16が取り付けられ、駆動モータ16により、ピニオンユニット18のピニオン15が回転駆動され、移動体10が走行駆動される。ピニオンユニット18には、
図12に示すように、バックラッシュ調整機構が設けられる。駆動モータ16及び多関節ロボット20のケーブルは、ハウジング11の上部の縦板レール2側に設けたケーブル引出部17からケーブルガイド8側に引き出される(
図4)。
【0030】
さらに、
図11に示すように、移動体10のハウジング11内に、停止安定装置40が配設される。停止安定装置40は、移動体10が停止したとき、移動体10からベース板4上に押付部42を押し出して押し付け、移動体10を安定保持するための装置であり、流体圧シリンダ41が下向きに取り付けられる。
【0031】
移動体10のハウジング11上には、旋回駆動部31を介して旋回アーム30が取り付けられ、旋回アーム30は、旋回駆動部31の駆動により、旋回軸32(
図1、
図2)を軸に回転可能である。流体圧シリンダ41は、その旋回軸32の近傍下位置に下向きに配置され、そのピストンロッドの先端に、フローティングジョイント43を介して押付部42が固定される。
【0032】
停止安定装置40は、移動体10の停止時、その流体圧シリンダ41の押し出し動作により、押付部42がベース板4に押し付けられ、停止状態の安定性を保持する。フローティングジョイント43は、押付時に加わる移動体10の反動を防止する。なお、停止安定装置40は、流体圧シリンダに代えて、電気的或いは機械的に押し出し動作する機構を設けることもできる。
【0033】
旋回アーム30は、旋回駆動部31の駆動により、旋回軸32(
図1、
図2)を軸に回転可能に、配設され、旋回アーム30のアーム部33は、移動体10のハウジング11上に取り付けられた旋回駆動部31上に、水平面上で旋回可能に取り付けられる。アーム部33は、その元部が旋回駆動部31の上に、鉛直の旋回軸32を軸に旋回するように、アーム部33の先端部上に、多関節ロボット20の基台21が固定される。旋回駆動部31は旋回駆動モータ19により駆動される。
【0034】
多関節ロボット20の基台21は、アーム部33の先端部上に固定され、アーム部33の元部が旋回駆動部31の旋回軸32を軸に、旋回可能に取り付けられるため、多関節ロボット20が例えば6軸(動作自由度が6)のアームロボットの場合、旋回軸32を加え、7軸での動作が可能となる。
【0035】
多関節ロボット20は、汎用の多関節アームロボットであり、
図1に示す如く、基台21上に旋回ベース22が鉛直のS軸を軸に回転可能に設けられ、旋回ベース22上に、下部アーム23がL軸を軸に回転可能に取り付けられる。さらに、上部アーム24が下部アーム23の先端部に、R軸を軸に回転可能に取り付けられ、上部アーム24の先端に前部アーム25が、U軸を軸に回転可能に取り付けられる。さらに、前部アーム25の先端にハンド部26がB軸を軸に回転可能に取り付けられ、ハンド部26の先端には、旋回部27がT軸を軸に回転可能に取り付けられる。ここでは、6軸の多関節ロボット20が用いられるが、5軸或いは7軸の多関節ロボットであっても、かまわない。
【0036】
次に、上記構成の走行移動装置の使用形態を説明する。例えば、4台の工作機械51が、
図14、15に示すように、2台づつ向かい合わせて配置され、各々、正面を向き合って配置された2対の工作機械51の間には、
図14に示す如く、作業用のスペースSが設けられ、2対の工作機械51は、スペースSを介して向き合う。なお、
図14、
図15において、Fは、各工作機械51からみて、その正面側を示す。
【0037】
向かい合った4台の工作機械51の正面空間のスペースSに、上記走行軸1が、敷設される。通常、工作機械51には、
図14、
図15に示す如く、その正面側の底部に、前底部スペースMSがあり、その前底部スペースMS内に、走行軸1が敷設される。つまり、ベース板4が前底部スペースMS内に配置され、縦板レール2がケーブルガイド8とともに前底部スペースMS内に配置される。
【0038】
このため、
図14に示す如く、移動体10は、スペースS内を走行移動するものの、走行軸1は前底部スペースMS内に位置し、工作機械51間のスペースSは、広く開放される。このため、工作機械の段取りの変更時や保守点検時などに、移動体10を作業の邪魔にならない位置まで、移動させておけば、作業者は工作機械51の前に立って、容易に作業を行うことができる。このように、作業者は、工作機械の段取りの変更や保守点検などの作業を、楽に効率良く行うことができる。
【0039】
次に、走行移動装置の走行動作を説明する。移動体10の走行駆動部12の駆動モータ16が起動すると、ピニオンユニット18のピニオン15が回転駆動され、ラック5、ピニオン15を介して移動体10に移動力が生じ、移動体10はスライド装置9を介して走行軸1上を走行移動する。
【0040】
制御された任意の位置まで移動体10が到達して停止すると、停止安定装置40の流体圧シリンダ41がそのピストンロッドを押し出し動作し、ピストンロッド先端の押付部42がベース板4上に押し付ける。これにより、移動体10のハウジング11は押付部42を介してベース板4上でバランスよく支持され、移動体10は、堅牢で安定した停止状態となる。
【0041】
この状態で、旋回アーム30及び多関節ロボット20が動作し、旋回アーム30を旋回させ、多関節ロボット20の各アームを回転動作させ、多関節ロボット20は、工作機械51に対し、被加工物の着脱などの作業を行う。
【0042】
このとき、移動体10には、旋回アーム30が、鉛直の旋回軸32により回転可能に移動体10上に取り付けられ、多関節ロボット20は、この旋回アーム30の先端位置に固定されるので、例えば6軸で小型の多関節ロボット20であっても、走行軸1から少し離れた対向側の工作機械51に対して、旋回アーム30を回動させて、その工作機械51に多関節ロボット20を接近させ、被加工物の着脱動作などを容易に行うことができる。
【0043】
また、アームの旋回時などに、多関節ロボット20を保持する移動体10に、ふらつきや微動が生じやすいが、停止安定装置40によって、移動体10のふらつきや微動が防止され、多関節ロボットは、高い精度でハンド部の位置制御を行ない、被加工物の着脱作業などを行うことができる。
【0044】
そして、移動体10が移動する際には、停止安定装置40の流体圧シリンダ41がピストンロッドを引き戻し動作し、押付部42がベース板4から離れ、移動体10は、駆動モータ16、ピニオン15の回転駆動により、リニアスライドブロック13、14、リニアスライドレール6、7を介して走行軸1上を摺動し、制御された位置まで走行移動する。
【0045】
このように、走行軸1は、ベース板4上に一本の縦板レール2を、幅方向を鉛直状態で敷設しているので、走行軸1の設置スペースを大幅に少なくすることができる。これにより、工作機械51の正面空間スペースを広く確保し、作業者は段取り変更などの際、容易に工作機械51の前に立って作業を効率良く行うことができる。
【0046】
一方、移動体10は停止状態で、停止安定装置40が動作して、ベース板4上に押付部42を押し付け、押付部42を介して移動体10を安定支持する。このため、移動体10上の多関節ロボット20は、動作中、各アームを動かして、その重心が大きく移動した場合でも、移動体10及び多関節ロボット20の基台21は、安定した停止状態を保持し、多関節ロボット20は、高い精度で正確に被加工物の着脱動作などを行うことができる。
【0047】
図16は他の実施形態を示している。この
図16の例では、多数のローラ60が、上記ラック5に代えて、縦板レール2に取り付けられる。移動体10の走行駆動部62には、上記ピニオン15に代えて、スクリュー型カム61が使用される。多数のローラ60は、走行軸1の縦板レール2の正面に、レールの長手方向に沿って、所定の間隔をおいて並設される。
【0048】
縦板レール2の上部と下部には、上記と同様、リニアスライドレール6,7が長手方向に沿って平行に取り付けられ、移動体10のハウジング11の内側に、上記リニアスライドブロック13,14が取り付けられ、リニアスライドブロック13,14はリニアスライドレール6,7に係合し、摺動する。
【0049】
多数のローラ60は、軸部により縦板レール2の正面に、回転自在に軸支されており、移動体10のハウジング11内には、走行駆動部62としてスクリュー型カム61が、駆動モータ63により回転駆動可能に配設される。スクリュー型カム61が、これらのローラ60に係合し、駆動モータ63により回転駆動され、移動体10が走行軸1上を走行移動する。
【0050】
スクリュー型カム61とローラ60の係合による直進駆動は、バックラッシュや停止時の残留振動を最少にすることができ、駆動モータ63に減速機付きのサーボモータを使用すれば、移動体10の停止位置制御を、高精度に行なうことができる。他の部分は、上記実施形態のものと同様であり、同じ部分については、
図16に上記と同じ符号を付してその説明は省略する。このように、移動体10の直進駆動は、上記のラック・ピニオン、ローラ・スクリュー型カム、のほかに、ボールネジを使用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 走行軸
2 縦板レール
3 レール固定部
4 ベース板
5 ラック
6 リニアスライドレール
7 リニアスライドレール
8 ケーブルガイド
9 スライド装置
10 移動体
11 ハウジング
12 走行駆動部
13 リニアスライドブロック
14 リニアスライドブロック
15 ピニオン
16 駆動モータ
17 ケーブル引出部
18 ピニオンユニット
19 旋回駆動モータ
20 多関節ロボット
21 基台
22 旋回ベース
23 下部アーム
24 上部アーム
25 前部アーム
26 ハンド部
27 旋回部
30 旋回アーム
31 旋回駆動部
32 旋回軸
33 アーム部
37 取付板
38 垂直板
39 水平板
40 停止安定装置
41 流体圧シリンダ
42 押付部
43 フローティングジョイント
51 工作機械
60 ローラ
61 スクリュー型カム
62 走行駆動部