(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170597
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20221102BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B65F3/00 L
B65F3/00 A
B60P3/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076850
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509017848
【氏名又は名称】三東運輸株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516283603
【氏名又は名称】東京エコサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】尾原 歩希
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕康
(72)【発明者】
【氏名】桑野 雅史
【テーマコード(参考)】
3E024
【Fターム(参考)】
3E024AA01
3E024BA01
3E024CA01
3E024EA04
3E024HD06
(57)【要約】
【課題】排出板操作機能を有するタイプの塵芥収集車において、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出する。
【解決手段】排出板操作機能の使用の有無(S22)、及び収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否か(S21)に応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにした(S23~25)。これにより、排出板操作機能の使用の有無を考慮して、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出することができる。また、収集する塵芥の比重が、平均的な塵芥の比重に近いときと、大きく異なるとき(使用済みオムツ等のゴミであるとき)とで、近似値算出に用いる近似式を切り換えることができるので、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥を収容する塵芥収容箱と、
外部から塵芥が投入される投入口を有する塵芥投入箱と、
前記塵芥投入箱内に投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込む積込装置と、
排出板を有し、この排出板を車両後方に移動させることにより、前記塵芥収容箱に積み込まれた塵芥を外部に排出する排出装置とを備え、
前記排出板を車両後部に位置させた状態で、前記積込装置による塵芥の積み込みを開始し、前記塵芥収容箱への塵芥の積込量が増加するに連れて、徐々に前記排出板を車両前方に移動させることにより、前記塵芥収容箱における塵芥の収容スペースを広げる機能である排出板操作機能を有する塵芥収集車において、
前記塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出する重量算出手段をさらに備え、
前記重量算出手段は、前記排出板操作機能の使用の有無、又は収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換える塵芥収集車。
【請求項2】
前記重量算出手段は、前記排出板操作機能の使用の有無に応じて、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記排出板操作機能を使用している場合には、前記重量算出手段は、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、前記積込装置による塵芥の積込回数を変数とした累乗近似の近似式に切り換えることを特徴とする請求項2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記重量算出手段は、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記積込装置による塵芥の押圧圧力を検出する圧力検出手段をさらに備え、
前記収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、前記重量算出手段は、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、前記圧力検出手段により検出した押圧圧力に基づいて算出した、これまでの押込工程時における平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えることを特徴とする請求項4に記載の塵芥収集車。
【請求項6】
前記収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なることを指示入力するための特殊比重収集物指示入力手段をさらに備え、
前記特殊比重収集物指示入力手段による指示入力が、ユーザによって行われたときに、前記重量算出手段は、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、前記平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えることを特徴とする請求項5に記載の塵芥収集車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥を塵芥収容箱に積み込む積込装置と、塵芥収容箱に積み込まれた塵芥を外部に排出する排出装置とを備えた塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塵芥を収容する塵芥収容箱と、外部から塵芥が投入される投入口を有する塵芥投入箱と、塵芥投入箱内に投入された塵芥を塵芥収容箱に積み込む積込装置と、塵芥収容箱に積み込まれた塵芥を外部に排出する排出装置とを備えた塵芥収集車がある。この塵芥収集車において、積込装置の押込板による塵芥収容箱への塵芥の押し込み時における、塵芥の押圧圧力(最高圧力値)に基づいて、塵芥収容箱への塵芥の積載量(重量)の近似値を算出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この塵芥収集車において、排出板を車両後方に移動させることにより、塵芥収容箱に積み込まれた塵芥を外部に排出するタイプの排出装置を備えたもの(排出板式の塵芥収集車)がある。この種の塵芥収集車には、排出板を車両後部に位置させた状態で、積込装置による塵芥の積み込みを開始し、塵芥収容箱への塵芥の積込量が増加するに連れて、徐々に排出板を車両前方に移動させることにより、塵芥収容箱における塵芥の収容スペースを広げる機能である排出板操作機能を有するものが多い。この排出板操作機能を用いることにより、積込装置の押込板と排出板との間で塵芥を圧縮しながら、塵芥を塵芥収容箱に積み込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の排出板操作機能を有するタイプの塵芥収集車では、収集する塵芥の比重が一般的なゴミ(塵芥)の比重の範疇に入る(平均的な塵芥の比重と大きく異ならない)場合には、排出板操作機能を使用している時と、使用していない時とでは、積込装置(の押込板)による押し込み時の塵芥の押圧圧力と、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量(積載量)との対応関係が異なる。このため、上記特許文献1に記載の従来の塵芥収集車のように、排出板操作機能の使用の有無を考慮せずに、積込装置による押し込み時の塵芥の押圧圧力(最高圧力値)に基づいて、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出する方法では、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と大きく異ならない場合には、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、排出板操作機能を有するタイプの塵芥収集車において、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することが可能な塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の塵芥収集車は、塵芥を収容する塵芥収容箱と、外部から塵芥が投入される投入口を有する塵芥投入箱と、前記塵芥投入箱内に投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込む積込装置と、排出板を有し、この排出板を車両後方に移動させることにより、前記塵芥収容箱に積み込まれた塵芥を外部に排出する排出装置とを備え、前記排出板を車両後部に位置させた状態で、前記積込装置による塵芥の積み込みを開始し、前記塵芥収容箱への塵芥の積込量が増加するに連れて、徐々に前記排出板を車両前方に移動させることにより、前記塵芥収容箱における塵芥の収容スペースを広げる機能である排出板操作機能を有する塵芥収集車において、前記塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出する重量算出手段をさらに備え、前記重量算出手段は、前記排出板操作機能の使用の有無、又は収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換える。
【0008】
この塵芥収集車において、前記重量算出手段は、前記排出板操作機能の使用の有無に応じて、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えることが望ましい。
【0009】
この塵芥収集車において、前記排出板操作機能を使用している場合には、前記重量算出手段は、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、前記積込装置による塵芥の積込回数を変数とした累乗近似の近似式に切り換えることが望ましい。
【0010】
この塵芥収集車において、前記重量算出手段は、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えることが望ましい。
【0011】
この塵芥収集車において、前記積込装置による塵芥の押圧圧力を検出する圧力検出手段をさらに備え、前記収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、前記重量算出手段は、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、前記圧力検出手段により検出した押圧圧力に基づいて算出した、これまでの押込工程時における平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えることが望ましい。
【0012】
この塵芥収集車において、前記収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なることを指示入力するための特殊比重収集物指示入力手段をさらに備え、前記特殊比重収集物指示入力手段による指示入力が、ユーザによって行われたときに、前記重量算出手段が、前記塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、前記平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塵芥収集車によれば、排出板操作機能の使用の有無、又は収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにした。排出板操作機能の使用の有無に応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにした場合には、上記特許文献1に記載の従来の塵芥収集車と異なり、排出板操作機能の使用の有無を考慮して、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出することができるので、積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。また、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにした場合には、上記特許文献1に記載の従来の塵芥収集車と異なり、収集する塵芥の比重が、平均的な塵芥の比重に近いときと、平均的な塵芥の比重と大きく異なるとき(収集するゴミ(塵芥)が、使用済みオムツ、発泡スチロール、段ボール等のゴミであるとき)とで、近似値算出に用いる近似式を切り換えることができるので、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の塵芥収集車を左舷側から見た側断面図。
【
図5】同塵芥収集車のロック解除状態の後部側側面図。
【
図8】同塵芥収集車のPLC周辺の電気的ブロック構成図。
【
図9】同塵芥収集車の重量算出処理のフローチャート。
【
図10】
図9中の近似式セット処理のフローチャート。
【
図11】36号車の全データと補正データについての、積込回数と重量の相関、及び平均圧力と重量の相関の分析結果を示す図。
【
図12】36号車の全データについての積込回数と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフ。
【
図13】36号車の補正データについての積込回数と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフ。
【
図14】36号車の全データについての平均圧力と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフ。
【
図15】36号車の補正データについての平均圧力と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフ。
【
図16】36号車の補正データについての、排出板操作機能使用時と、排出板操作機能不使用時における、積込回数と重量の相関、及び平均圧力と重量の相関の分析結果を示す図。
【
図17】(a)は、36号車の補正データについての積込回数と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図18】(a)は、36号車の補正データについての積込回数と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図19】(a)は、36号車の補正データについての平均圧力と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図20】(a)は、36号車の補正データについての平均圧力と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図21】46号車の補正データについての、排出板操作機能使用時と、排出板操作機能不使用時における、積込回数と重量の相関、及び平均圧力と重量の相関の分析結果を示す図。
【
図22】(a)は、46号車の補正データについての積込回数と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図23】(a)は、46号車の補正データについての積込回数と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図24】(a)は、46号車の補正データについての平均圧力と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【
図25】(a)は、46号車の補正データについての平均圧力と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフであり、(b)は、(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態による塵芥収集車について、図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態による塵芥収集車の概略構成について、説明する。
図1は、本実施形態による塵芥収集車を左舷側から見た側断面図である。
図1に示すように、塵芥収集車1は、運転室(キャブ)Cと、運転室Cの下部から後方へ延びて形成されている左右一対の車体フレームFと、塵芥を収容する塵芥収容箱2と、塵芥収容箱2の後方に配置された塵芥投入箱3とを備えている。塵芥投入箱3は、外部から塵芥が投入される投入口3aを有している。塵芥投入箱3内には、塵芥投入箱3内に投入された塵芥を塵芥収容箱2に積み込む積込装置4が設けられており、塵芥収容箱2には、積み込まれた塵芥を排出するための排出装置5が設けられている。排出装置5は、排出板9を有し、この排出板9を車両後方に移動させることにより、塵芥収容箱2に積み込まれた塵芥を外部に排出する。
【0016】
図2は、塵芥収集車1の平面図である。
図2に示すように、車体フレームFは、車両前後方向に延びる左右一対の縦フレームF1と、車幅方向に延びる複数の横フレームF2とを有している。縦フレームF1は、車幅方向の内側に開口するチャンネル部材により形成されている。横フレームF2は、左右の縦フレームF1を補強するものである。横フレームF2の両端部は、左右の縦フレームF1間に配置された状態で、例えば、リベット(図示せず)により各縦フレームF1に固定されている。
【0017】
次に、
図1を参照して、塵芥収容箱2の構成について説明する。
図1に示すように、塵芥収集車1の車体フレームF上には塵芥収容箱2が搭載されており、その塵芥収容箱2の底壁2aは、後下がりの緩やかな傾斜面となっている。塵芥収容箱2の後面は、その上部から下部に向かって後方に傾斜しており、その全面にわたり後端開口部(図示せず)が開口されており、その後端開口部の周囲は、補強部材2b(
図5参照)により縁取り補強されており、この補強部材2bは、塵芥収容箱2の底壁よりも下方に延長されている。
【0018】
次に、上記の排出装置5の構成について説明する。
図1に示すように、塵芥収容箱2内には、積込位置にある塵芥投入箱3に対して進退可能な排出板(ディスチャージプレート)9が配設されており、この排出板9の後方(塵芥収容箱2内で排出板9と後端開口部との間)に、塵芥を収容する収容スペース2cが形成されている。排出板9は、塵芥収容箱2の内部空間の横幅ほぼ一杯にわたる排出板本体9aと、排出板本体9a背面に一体的に連結される支持枠9bとで構成される。そして、排出板9と塵芥収容箱2との間には、該排出板9を起立姿勢で前後摺動可能に案内支持するガイド機構6が設けられている。排出板9の背面と塵芥収容箱2との間には、該排出板9を車両前後方向に進退駆動する一段の又は多段式(テレスコピック型)の油圧式のディスチャージシリンダ7が連結される。そのディスチャージシリンダ7は、塵芥収容箱2の底壁2aにほぼ沿って前後方向に延びるように配置されている。
【0019】
上記の排出装置5の構成により、塵芥収集車1は、ディスチャージシリンダ7を伸長させて排出板9を塵芥収容箱2より突出した後方位置まで移動させることにより、塵芥収容箱2に収容された塵芥を外部へ排出できるようになっている。また、塵芥収集車1は、塵芥収容箱2における前壁に、排出板9が最前方位置にあることを検知するための近接センサである排出板前端検知センサ17を備えている。
【0020】
また、塵芥収集車1は、上記の排出装置5の構成を用いて、排出板操作機能を実現している。この排出板操作機能は、排出板9を車両後部に位置させた状態で、積込装置4による塵芥の積み込みを開始し、塵芥収容箱2への塵芥の積込量が増加するに連れて、徐々に排出板9を車両前方に移動させることにより、塵芥収容箱2における塵芥の収容スペースを広げる機能である。より詳細に説明すると、上記の排出板操作機能の使用時には、収容スペース2cが空のとき、排出板9が、
図1中に実線で示す初期位置(排出位置より少し前方の初期位置)に位置するようにして、積込装置4により塵芥収容箱2内に積み込まれた塵芥を、積込装置4と排出板9との間で圧縮するようになっている。そして、上記塵芥の積み込み量が増加すると、PLCが、後述する圧力センサ32(
図6及び
図8参照)の出力値に基づいて、これを検知し、圧力制御弁23c(
図6参照)を動作させることにより、ディスチャージシリンダ7を徐々に収縮させて排出板9を前方へ移動させることで収容スペース2cを広げるようになっている。なお、この排出板操作機能の使用の有無は、塵芥収集車1の運転手等のユーザが選択可能である。
【0021】
次に、塵芥投入箱3について説明する。
図1に示すように、塵芥収容箱2の後端開口部には、塵芥を投入可能な投入口3aを後端に有する塵芥投入箱3が連設される。塵芥投入箱3は、上部に設けられた支点3cを中心に回動可能であり、これによって塵芥収容箱2に対しての開閉動作が可能である。塵芥投入箱3は、塵芥収容箱2の後端開口部を閉鎖する閉鎖位置と、上方回動により後端開口部を開放して塵芥を排出することができる開放位置との間で回動するようになっている。また、塵芥投入箱3の前方下部には、塵芥を塵芥収容箱2に収容するための開口部3bが設けられている。
【0022】
次に、
図1を参照して、上記の塵芥投入箱3内に設けられている積込装置4について説明する。まず塵芥投入箱3の左右の側壁3dには斜め上下に延びるガイドレール11が設けられており、スライダ10に取り付けられた左右一対二組のローラ12は、このガイドレール11内を斜め上下に移動することができる。スライダ10は、
図1に示すような側面形状の左右の部材間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず)により接続して一体化したものである。また、スライダ10の下端部には、ピン10aを介して押込板13が回動自在に取り付けられている。押込板13も、
図1に示すような側面形状の左右の部材間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず)により接続して一体化したものである。
【0023】
一方、プッシュシリンダ14のシリンダ側端部はピン14aにより左右両側壁3dに取り付けられており、プッシュシリンダ14のピストン側端部はピン14bにより、スライダ10の上端部に接続されている。他方、プレスシリンダ15のシリンダ側端部は、ピン15aにより押込板13に接続されており、プレスシリンダ15のピストン側端部はピン14bにより、スライダ10の上端部に接続されている。スライダ10は、押込板13とともに、プッシュシリンダ14の伸長作動により斜めに上昇し、プッシュシリンダ14の収縮作動により斜めに下降する。また、押込板13は、プレスシリンダ15の伸長作動によりピン10aを中心として時計回り方向に回動し、プレスシリンダ15の収縮作動により反時計回り方向に回動する。
【0024】
上記の積込装置4の構成により、塵芥投入箱3内に投入された塵芥は、押込板13の反転工程により、後方位置へ移動後、一次圧縮、二次圧縮工程により圧縮され、押込工程により塵芥収容箱2内へと押し込まれる。この動作を1サイクルとして、塵芥投入箱3に投入された塵芥を塵芥収容箱2へ積み込む。そして、上記各工程を順次動作させるために、塵芥投入箱3内の適所には、スライダ10(又はプッシュシリンダ14)の上端位置及び下降位置への移動、並びに押込板13の後方位置及び前方位置への移動を各々検出する4つのセンサ(
図8の押込完了検出センサ、一次圧縮完了検出センサ、反転完了検出センサ、及び二次圧縮完了検出センサ)が設けられる。
【0025】
次に、上記の積込装置4による積込動作の詳細について説明する。積込装置4による積込動作は、プッシュシリンダ14とプレスシリンダ15とを伸縮作動させることで、スライダ10を上昇位置に保持した状態で押込板13の前方位置から後方位置への後方回動により行われる反転工程と、押込板13を後方位置に保持した状態でスライダ10を上昇位置から下降位置まで下降させることにより行われる一次圧縮工程と、スライダ10を下降位置に保持した状態で押込板の後方位置から前方位置への前方回動により行われる二次圧縮工程と、押込板13を前方位置に保持した状態でスライダ10を下降位置から上昇位置まで上昇させることにより行われる押込工程との一連の工程により行われる。上記の積込動作を行うことで、塵芥投入箱3内に投入されている塵芥が、塵芥収容箱2内に強制的に押し込まれる。より詳細に説明すると、上記の押込工程は、プレスシリンダ15を伸長した状態を維持することにより押込板13を前方位置に保持した状態で、プッシュシリンダ14を伸長させて、スライダ10を下降位置から上昇位置まで上昇させることにより行われる。
【0026】
次に、
図3を参照して、塵芥投入箱3の開閉の仕組みについて説明する。塵芥投入箱3の左右両端に配置された一対のスイングシリンダ(油圧アクチュエータ)18は、その上端が塵芥収容箱2に取り付けられ、下端が塵芥投入箱3に取り付けられている。このスイングシリンダ18を伸長動作させると、塵芥投入箱3が、
図1に二点鎖線で示すように、上方回動(開放)され、収縮作動させると、塵芥投入箱3が、
図1に実線で示すように、下方回動(閉鎖)される。
【0027】
次に、
図4を参照して、塵芥投入箱3を車体フレームFに固縛するためのロック装置19について、説明する。
図4は、ロック装置19によるロック状態の塵芥収集車1の後部側側面を示す。ロック装置19は、車体フレームFの後部に設けられている。ロック装置19は、車体フレームF側に回動可能に取り付けられたフック40と、塵芥投入箱3側に固定されたロックピン41と、フック40を回動させるためのロックシリンダ(油圧アクチュエータ)42と、フック40とロックシリンダ42とを連結する連結機構43とを備えている。
【0028】
フック40は、車体フレームFの下面に固定されたブラケット44にピン40aを介して回動自在に取り付けられている。ロックピン41は、塵芥投入箱3の下部前面に固定されている。ロック状態では、フック40の先端部が、ロックピン41に下方から係脱可能に係合されている。ロックシリンダ42のシリンダ側端部は塵芥収容箱2の下部にピン42aを介して取り付けられている。ロックシリンダ42のピストン側端部は、ピン43fを介して後述する第1連結ブラケット43cに取り付けられている。ロックシリンダ42のピストン径は、スイングシリンダ18のピストン径よりも小径に形成されている。
【0029】
上記の連結機構43は、塵芥収容箱2の底部に回転可能に取り付けられたトルクシャフト43aと、このトルクシャフト43aの外周面に固定された第1連結ブラケット43c及び第2連結ブラケット43dと、第2連結ブラケット43dとフック40とを連結している連結片43eとによって構成されている。連結片43eの一端はピン43gを介して第2連結ブラケット43dに取り付けられ、連結片43eの他端はピン43hを介してフック40の基端部に取り付けられている。
【0030】
上記のロック装置19の構成により、ロックシリンダ42を
図4のロック状態から伸長させると、第1連結ブラケット43cを介してトルクシャフト43aが
図4における反時計回り方向に回転する。この回転により、連結片43eは、
図5に示すように、第2連結ブラケット43dを介して
図5で右方向へ押され、フック40がピン40aを中心に
図5で時計回り方向に回動する。これにより、フック40とロックピン41との係合が解除され、塵芥投入箱3はロック解除された状態となる。また、ロックシリンダ42を
図5の状態から収縮作動させると、連結機構43が上記と逆の動きをすることによって、フック40がロックピン41に係合し、塵芥投入箱3は開口部3bを閉鎖した状態でロックされる。
【0031】
また、
図1に示すように、塵芥投入箱3の後部には、塵芥が投入される投入口3aが形成されており、この投入口3aを上下にスライドして開閉するスライドカバー16が設けられている。
【0032】
次に、
図6を参照して、プッシュシリンダ14、プレスシリンダ15 、ディスチャージシリンダ7、及びスイングシリンダ18に関する油圧回路図について、説明する。この油圧回路は、
図6に示すように、オイルタンク21、油圧ポンプ22、圧力制御弁23a~23f、プッシュシリンダ用電磁切換弁24、プレスシリンダ用電磁切換弁25、ディスチャージシリンダ用電磁切換弁26、スイングシリンダ用電磁切換弁(ロックシリンダ用電磁切換弁を兼用)27、切換弁28a~28b、逆止弁29a~29g、フィルタ30a~30b、ロックシリンダ42、及び圧力センサ32を接続して構成されている。
【0033】
押込板13が前方位置(原位置)で停止しているとき、プッシュシリンダ14及びプレスシリンダ15は、共に伸長状態にあり、対応する各電磁切換弁24、25は、中立位置にある。そして、プレスシリンダ用電磁切換弁25のソレノイド25s が励磁されると「反転」、ソレノイド25eが励磁されると「二次圧縮」、プッシュシリンダ用電磁切換弁24のソレノイド24sが励磁されると「一次圧縮」、ソレノイド24eが励磁されると「押込」、の各工程動作が行われる。
【0034】
排出板9が、
図1に実線で示す最後方位置で停止しているとき、ディスチャージシリンダ7は最も伸長した状態にあり、ディスチャージシリンダ用電磁切換弁26は中立位置にある。ディスチャージシリンダ用電磁切換弁26のソレノイド26eが励磁されると、ディスチャージシリンダ7は伸長駆動する。また、ソレノイド26sが励磁されると、ディスチャージシリンダ7は収縮駆動する。この状態からソレノイド26sが消磁されると、ディスチャージシリンダ用電磁切換弁26は中立位置に戻り、ディスチャージシリンダ7の収縮駆動は停止する。但し、圧力制御弁23cが動作すれば、ディスチャージシリンダ用電磁切換弁26が中立位置であっても、ディスチャージシリンダ7が収縮可能となり、排出板9は前方移動可能となる。
【0035】
塵芥投入箱3が、
図1に実線で示す下方回動位置にあるとき、スイングシリンダ18は最も収縮した状態にあり、スイングシリンダ用電磁切換弁27は中立位置にある。なお、切換弁28bは、
図6に示される位置にある。この状態からスイングシリンダ用電磁切換弁27のソレノイド27e が励磁されると、ロックシリンダ42がロック解除方向に動作し、スイングシリンダ18が伸長駆動して、塵芥投入箱3が上方に回動する。そして、スイングシリンダ18が最伸長位置まで駆動したときに、塵芥投入箱3は上方回動位置に到達する。
【0036】
スイングシリンダ用電磁切換弁27のソレノイド27eが消磁され、かつ、切換弁2 8b が励磁されると、塵芥投入箱3の自重によりスイングシリンダ18内の作動油が、切換弁28b及びスイングシリンダ用電磁弁27を介してタンク21に戻される。これにより、スイングシリンダ18が収縮駆動して、塵芥投入箱3が下方回動する。また、塵芥投入箱3が下方回動位置に達した後、スイングシリンダ用電磁弁27のソレノイド27sが励磁されると、ロックシリンダ42がロック動作し、塵芥投入箱3がロックされる。その後、ソレノイド27sは消磁されるが、逆止弁29gによりロックシリンダ42のロック状態は維持される。
【0037】
また、上記の圧力センサ32(請求項における「圧力検出手段」)は、油圧ポンプ22とプレスシリンダ15とを結ぶ導管33に配設され、積込装置4(の押込板13)による塵芥の押圧圧力を検出する。
【0038】
次に、
図7を参照して、運転室C内に設けられている操作装置について説明する。運転室C内に設けられているスイッチボックス60には、メインスイッチ60a、投入箱スイッチ60b、排出スイッチ60c、かき出しスイッチ60d、メインランプ60e、ロックランプ60fが設けられている。メインスイッチ60aは、「積込」、「OFF」、「排出」のいずれかの位置に保持することができるスイッチであり、運転手等のユーザが、「OFF」から「積込」位置に操作することで、ディスチャージシリンダ7及びスイングシリンダ18の駆動が規制されると共に、プッシュシリンダ14及びプレスシリンダ15の駆動が許容されて、積込動作が可能になる。また、運転手等のユーザが、メインスイッチ60aを、「OFF」から「排出」位置に操作することで、プッシュシリンダ14及びプレスシリンダ15の駆動が規制されると共に、ディスチャージシリンダ7及びスイングシリンダ18の駆動が許容される。
【0039】
投入箱スイッチ60bは、塵芥投入箱3の上昇又は下降を指示するためのスイッチであり、投入箱スイッチ60bを「上」に操作すると、塵芥投入箱3が上昇し、「下」に操作すると、塵芥投入箱3が下降する。この投入箱スイッチ60bは、手を離すと「OFF」の中立位置に戻るタイプのスイッチである。排出スイッチ60cは、排出板9を移動させるためのスイッチであり、排出スイッチ60cを「排出」に操作すると、ディスチャージシリンダ7が伸長して排出板9が最後方位置まで後退し、「戻り」に操作すると、排出板9が前方に戻る(移動する)。排出スイッチ60cも、手を離すと「OFF」の中立位置に戻るタイプのスイッチである。
【0040】
かき出しスイッチ60dは、「自動」か「手動」かを選択するためのスイッチであり、ユーザが、かき出しスイッチ60dを「自動」位置にして、投入箱スイッチ60bを「上」に操作し、塵芥投入箱3を上方端まで回動させた後、投入箱スイッチ60bから手を離すと、自動的に積込と同様の動作が行われ、塵芥投入箱Tの底に残っている塵芥を排出することができる。また、ユーザが、投入箱スイッチ60bを「上」に操作し、塵芥投入箱3を上昇させた時に、かき出しスイッチ60dを「手動」位置にすると、積込と同様の動作が行われ、塵芥投入箱3の底に残っている塵芥を排出することができる。かき出しスイッチ60dも、手を離すと「OFF」の中立位置に戻るタイプのスイッチである。
【0041】
メインランプ60eは、スイッチボックス60の各スイッチの操作が可能な状態のときに、点灯している。ロックランプ60fは、ロック装置19が、
図4に示すようにロック状態のときに、点灯している。
【0042】
次に、
図3を参照して、塵芥投入箱3に設けられている操作装置について説明する。塵芥投入箱3の左右両側壁3dの後部には、それぞれスイッチボックス61、62が設けられている。スイッチボックス61の側面には、積込装置4の動作を、「連続サイクル」または「1サイクル」のどちらかの動作モードに選択するための動作選択スイッチ61a(破線で示す)が設けられており、スイッチボックス61の正面には、上記の各動作モードで積込動作を開始させるための積込スイッチ61bと、連続サイクル動作を停止させるための停止スイッチ61cと、収集する(今収集しようとしている)塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なることを指示入力するための特殊比重ゴミ切換スイッチ61d(請求項における「特殊比重収集物指示入力手段」に相当)が設けられている。ここで、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるとは、例えば、収集する塵芥の比重が平均的なゴミ(塵芥)の比重の1.5倍以上であることや、3分の2以下であることを意味し、具体的には、収集する塵芥(ゴミ)が、使用済みオムツ、発泡スチロール、段ボール等の、一般ゴミとは、比重が大きく異なる塵芥である場合が相当する。その他のスイッチについては、緊急時にのみ用いるスイッチ等であり、詳細な説明は省略する。なお、停止スイッチ61cは右側のスイッチボックス62にも設けられている。
【0043】
次に、
図8を参照して、塵芥収集車1の制御装置に相当するPLC(Programmable Logic Controller)70と、PLC70に対して入出力される信号について、説明する。PLC70は、CPU、メモリに加えて、タイマ71等を有している。PLC70は、請求項における重量算出手段に相当し、塵芥収容箱2に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出する。
【0044】
PLC70には、上記
図7で説明したメインスイッチ60a、投入箱スイッチ60b、排出スイッチ60c、及びかき出しスイッチ60dからの指示信号と、
図3で説明した動作選択スイッチ61a、積込スイッチ61b、停止スイッチ61c、特殊比重ゴミ切換スイッチ61dからの指示信号が入力される。また、PLC70には、反転完了検出センサ65、一次圧縮完了検出センサ66、二次圧縮完了検出センサ67、及び押込完了検出センサ68からの検出信号が入力される。反転完了検出センサ65は、押込板13が後端の位置(後方位置)に移動したことを検出するためのセンサであり、二次圧縮完了検出センサ67は、押込板13が前端の位置(前方位置)に移動したことを検出するためのセンサである。また、一次圧縮完了検出センサ66は、スライダ10(又はプッシュシリンダ14)が下降位置に移動したことを検出するためのセンサであり、押込完了検出センサ68は、スライダ10(又はプッシュシリンダ14)が上端位置に移動したことを検出するためのセンサである。
【0045】
また、PLC70には、上記
図1で説明した排出板前端検知センサ17からの出力信号と、上記
図7で説明した圧力センサ32からの出力信号も入力される。
【0046】
プッシュシリンダ用電磁切換弁24、プレスシリンダ用電磁切換弁25、ディスチャージシリンダ用電磁切換弁26、及びスイングシリンダ用電磁切換弁27の各ソレノイド24e~27e、24s~27sは、PLC70からの出力信号により励磁・消磁される。また、メインランプ60e、ロックランプ60fは、PLC70からの出力信号により点灯・消灯する。
【0047】
次に、
図9のフローチャートを参照して、この塵芥収集車1による重量算出処理について、説明する。この重量算出処理は、塵芥収容箱2に既に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出する処理である。運転手等のユーザが、運転室C内に設けられた排出スイッチ60c(
図7参照)を「排出」側に操作すると(S1でYES)、PLC70は、上記の排出装置5により、排出板9を塵芥収容箱2より突出した後方位置まで移動させることで、塵芥収容箱2に積み込まれた塵芥を外部へ排出する動作(以下、「排出動作」という)を完了した後に(S2)、排出フラグをオン(ON)にする(S3)。そして、PLC70は、上記のメインスイッチ60a(
図3参照)を、運転手等のユーザが「積込」側に操作したことを検知すると(S4でYES)、後で詳述する近似式セット処理(重量算出に用いる近似式の切り換え処理)を行う(S5)。
【0048】
上記S5の近似式セット処理の後、PLC70は、運転手等のユーザによる積込スイッチ61bのON処理に応えて、積込装置4による上記の積込動作を行って(S6)、積込動作における押込工程が完了すると(押込完了検出センサ68からONの信号が入力されると)(S7でYES)、上記S5でセットした近似式に基づいて、塵芥収容箱2に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出する(S8)。この重量算出処理の後、動作選択スイッチ61aが、「1サイクル」(単独)のモードに設定されていない(「連続サイクル」のモードに設定されている)場合には(S9でNO)、PLC70は、上記S6~S8の処理を繰り返す。これに対して、動作選択スイッチ61aが、「1サイクル」(単独)のモードに設定されている場合には(S9でYES)、PLC70は、メインスイッチ60aが、「OFF」位置に操作されるまで(S10でNO)、上記S4~S9の処理を繰り返す。
【0049】
次に、
図10を参照して、上記S5の近似式セット処理について説明する。運転手等のユーザが、今回の収集(積込)ルートにおける収集物(塵芥)の比重が、一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)と比較的近く、特殊比重ゴミ切換スイッチ61dをONにしなかったときには(S21でNO)、PLC70は、上記の排出フラグがONのとき(S2の排出動作の完了後に、初めて積込動作を行うとき)に限り(S22でYES)、排出板操作機能の使用の有無に応じた近似式のセット処理を行う。この排出板操作機能の使用の有無に応じた近似式のセット処理では、PLC70は、まず、排出板操作機能が使用されているか否かを判定する(S23)。具体的には、PLC70は、例えば、上記の積込スイッチ61bがONにされたことを検知した時に、排出板9が塵芥収容箱2の前端にあるか否かに基づいて、排出板操作機能の使用の有無を判定する。このとき、PLC70は、排出板9が塵芥収容箱2の前端になければ、排出板操作機能が使用されていると判定し、排出板9が塵芥収容箱2の前端にあれば、排出板操作機能が使用されていないと判定する。上記の排出板9が塵芥収容箱2の前端にあるか否かの判定は、上記の排出板前端検知センサ17の出力信号に基づいて行ってもよいし、ディスチャージシリンダ7のストロークが、所定の長さより収縮しているか否かを検出するためのストロークセンサを設けて、このストロークセンサの出力信号に基づいて行ってもよい。また、排出スイッチ60cが、「排出」側に操作された後、「戻り」側に操作されてからの経過時間をタイマ71(
図8参照)からの出力値に基づいて算出し、上記の経過時間が所定の秒数を超えたときに、排出板9が塵芥収容箱2の前端にあると判定してもよい。
【0050】
上記S23の判定で、排出板操作機能が使用されていると判定した場合には(S23でYES)、PLC70は、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式A)にセットする(切り換える)(S23)。具体的には、数式Aは、y=axb(ただし、xは、積込装置4による塵芥の積込回数で、a,bは、定数)で表される式である。上記の(係数等の)定数a,bには、排出板操作機能使用時用の定数がセットされる。また、上記の積込回数xは、塵芥収集車1の1車分(前回清掃センターで塵芥を排出してから、収集ルートにおける今回のごみステーションまでの合計)の積込回数である。なお、累乗近似とは、両対数グラフ上で線形的関係となるような近似を意味する。
【0051】
上記S23の判定で、排出板操作機能が使用されていないと判定した場合には(S23でNO)、PLC70は、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似の近似式、又は上記積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式B)にセットする(切り換える)(S25)。具体的には、数式Bは、y=ax+b、又はy=axb(ただし、xは、積込装置4による塵芥の積込回数で、a,bは、定数)で表される式である。上記の(係数等の)定数a,bには、排出板操作機能不使用時の定数(排出板操作機能使用時に使用される数式Aの定数とは、異なる定数)がセットされる。また、数式Bにおける積込回数xも、塵芥収集車1の1車分(前回清掃センターで塵芥を排出してから、収集ルートにおける今回のごみステーションまでの合計)の積込回数である。なお、線形近似とは、一次関数を用いた近似を意味する。ここで、上記S25において、数式Bを、線形近似の近似式と累乗近似の近似式のいずれにするかについては、各塵芥収集車1毎に、線形近似の近似式の決定係数と、累乗近似の近似式の決定係数を比較して、決定係数の大きい方の近似式(線形近似の近似式又は累乗近似の近似式)を選択する。
【0052】
また、運転手等のユーザが、今回の収集ルートにおける収集物(塵芥)の比重が、一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)と大きく異なっていると判断して、特殊比重ゴミ切換スイッチ61dをONにしたときには(S21でYES)、PLC70は、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、圧力センサ32により検出した押圧圧力に基づいて算出した、これまでの押込工程時における平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)にセットする(切り換える)(S26)。ここで、上記の平均押圧圧力とは、各積込動作における押込工程時の積込装置4(の押込板13)による塵芥の押圧圧力の平均圧力値を求めて、1車分前回清掃センターで塵芥を排出してから、収集ルートにおける今回のごみステーションまでの合計)の上記平均圧力値を平均した値である。
【0053】
PLC70は、上記S24~S26の近似式セット処理(重量算出に用いる近似式の切り換え処理)を行った後、上記の排出フラグをオフ(OFF)にする(S27)。これにより、上記の特殊比重ゴミ切換スイッチ61dをONにした場合を除き、S2の排出動作の完了後、次の排出動作を行うまでは、同じ近似式を用いて、塵芥収容箱2に既に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出することができる。
【0054】
次に、上記
図10のように、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、3種類の近似式の間で、切り換えるようにした理由について、
図11乃至
図25を参照して、説明する。
図11乃至
図25において、「積込回数」は、上記のように、塵芥収集車1の1車分の積込回数である。「平均圧力」は、上記の平均押圧圧力を省略して記載したもので、各積込動作における押込工程時の積込装置4による塵芥の押圧圧力の平均圧力値を求めて、1車分の上記平均圧力値を平均した値である。ただし、
図11乃至
図25は、清掃センターでの排出時のデータを対象にしているので、上記の「1車分」は、「収集ルートを回って清掃センターで排出と計測を行う行うまでの合計」を意味する。また、
図11乃至
図25における「重量」は、清掃センターで排出された塵芥の重量を意味する。決定係数(R
2)は、予測式(近似式)の精度を表す指標であり、1に近い程、予測式の精度が高い(全ての点が予測式の直線に重なる場合は、R
2=1となる)。一般的には、R
2が、0.7~0.8以上であれば、予測式(近似式)の精度が高い(有効性が高い)と判断される。
【0055】
まず、上記
図10の説明で、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)と大きく異なっている場合に、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用いる理由について、
図11乃至
図15を参照して、説明する。一般に、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)と比較的近い(大きく異ならない)場合には、上記の「平均圧力」と「重量」の相関よりも、上記の「積込回数」と「重量」の相関の方が強い(相関係数が大きい)。しかしながら、本発明の発明者は、ある塵芥収集車1(36号車)についての「積込回数」と「重量」の相関を分析した結果、
図12中の★印の近くのエリア80内の15個のデータについては、全体のデータから求めた予測式(近似式)(y=a
1x + b
1)から大きく離れていることを発見した。そこで、上記のエリア80内のデータについて、詳細に分析したところ、これらのデータは、主な収集物が使用済みオムツであるときのデータであり、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)よりも、かなり大きいために、全体のデータから求めた予測式と大きく外れた位置に分布していることが分かった。
【0056】
そこで、
図11に示すように、上記の収集物の比重が極端に大きいエリア80内のデータを含めた「全データ」と、全データから上記のエリア80内のデータを除外した「補正データ」について、予測式(近似式)と、この予測式を用いた決定係数を求めた。その結果、上記の収集物の比重が極端に大きいエリア80内のデータを除外した場合(「補正データ」の場合)には、積込回数を変数xとした線形近似及び累乗近似の予測式について、いずれの近似方法の予測式(近似式)による決定係数も、大きく改善した。この点は、上記の「全データ」についての積込回数と重量の相関(線形近似)を表す
図12と、上記の「補正データ」についての積込回数と重量の相関(線形近似)を表す
図13とを見ても、確認することができる。
【0057】
一方、平均押圧圧力(「平均圧力」)を変数xとした線形近似及び累乗近似の予測式については、いずれの近似方法の予測式(近似式)による決定係数も、上記の収集物の比重が極端に大きいエリア80内のデータの有無によって、決定係数に大きな違いは無かった。この点は、上記の「全データ」についての「平均圧力」と「重量」の相関(累乗近似)を表す
図14と、上記の「補正データ」についての「平均圧力」と「重量」の相関(累乗近似)を表す
図15とを見ても、確認することができる。
【0058】
上記のように、平均押圧圧力(「平均圧力」)を変数xとした線形近似及び累乗近似の予測式(近似式)については、上記の収集物の比重が極端に大きいエリア80内のデータの有無によって、決定係数に大きな違いは出なかった。しかも、
図11に示すように、「平均圧力」を変数xとした累乗近似の近似式については、収集物の比重が極端に大きいデータを含む全データを対象にした時の決定係数が、0.7973であり、近似式の精度が、かなり高い。このため、上記
図10で示したように、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)と大きく異なっている場合に、平均押圧圧力(「平均圧力」)を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用いるようにしたのである。なお、平均押圧圧力(「平均圧力」)を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用いることにより、上記のエリア80内のデータのように、収集物の比重が一般ゴミよりも、かなり(所定の閾値以上)大きい場合だけではなく、収集物の比重が一般ゴミよりも、かなり(所定の閾値以上)小さい場合(収集する塵芥が、主に、発泡スチロール、段ボール等の一般ゴミよりも軽い塵芥である場合)にも、塵芥収容箱2に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。
【0059】
次に、上記
図10の説明で、排出板操作機能が使用されている場合に、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式A)を用い、排出板操作機能が使用されていない場合に、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似又は累乗近似の近似式(数式B)を用いるようにした理由について、
図16乃至
図25を参照して、説明する。
【0060】
図16は、上記
図11に示す36号車についての分析対象のデータのうち、上記の補正データ(全データからエリア80内のデータを除外したデータ)242件について、排出板操作機能使用時(「排出板あり」)と、排出板操作機能不使用時(「排出板なし」)における、「積込回数」と「重量」の相関、及び「平均圧力」と「重量」の相関を分析した結果を示す表である。また、
図21は、上記の36号車とは別の塵芥収集車1(46号車)について収集した分析対象のデータのうち、上記と同様な補正データ(全データから、主な収集物が使用済みオムツであるときのデータを除外したデータ)260件について、排出板操作機能使用時(「排出板あり」)と、排出板操作機能不使用時(「排出板なし」)における、「積込回数」と「重量」の相関、及び「平均圧力」と「重量」の相関を分析した結果を示す表である。
【0061】
図17(a)は、
図13と同様に、36号車の「補正データ」についての積込回数と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフであり、
図17(b)は、
図17(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフである。
図18(a)は、36号車の「補正データ」についての積込回数と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフであり、
図18(b)は、
図18(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフである。
図19(a)は、36号車の「補正データ」についての平均圧力と重量の相関(線形近似)の分析結果を表すグラフであり、
図19(b)は、
図19(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフである。
図20(a)は、
図15と同様に、36号車の「補正データ」についての平均圧力と重量の相関(累乗近似)の分析結果を表すグラフであり、
図20(b)は、
図20(a)に含まれる各データを、「排出板あり」の時のデータと、「排出板なし」の時のデータに分けて分析した結果を示すグラフである。
【0062】
【0063】
図16~
図25における分析対象のデータは、上述した補正データ(全データから、主な収集物が使用済みオムツであるときのデータを除外したデータ)である。すなわち、
図16~
図25における分析対象のデータは、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重(平均的な塵芥の比重)と比較的近い時のデータである。ここで、上述したように、一般に、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重と比較的近い(大きく異ならない)場合には、上記の「平均圧力」と「重量」の相関よりも、上記の「積込回数」と「重量」の相関の方が強い。このため、
図16~
図25からも分かるように、線形近似と累乗近似のいずれについても、「平均圧力」を変数xとした近似式を用いるよりも、「積込回数」を変数xとした近似式を用いる方が、精度の高い近似値を得ることができる。また、
図16及び
図21から分かるように、「積込回数」を変数xとした近似式を用いる場合、少なくとも、排出板操作機能使用時(「排出板あり」)のときには、線形近似の近似式を用いるよりも、累乗近似の近似式を用いる方が、決定係数が高く、近似値の精度が高い。これは、収集物が多いと分かっている時に、運転手等のユーザ(作業車)が排出板操作機能を使用しているが、塵芥収集車1の塵芥収容箱2に積み込める塵芥の量に限界がある(2トン車であれば、2トンに収束する)ため、収集物が多くて排出板操作機能を使用している時には、線形近似の近似式よりも、累乗近似の近似式の方が当てはまるからであると思われる。
【0064】
上記の分析に基づき、本発明の発明者は、上記
図10で示したように、排出板操作機能が使用されている場合に、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式A)を用い、排出板操作機能が使用されていない場合に、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似又は累乗近似の近似式を用いるようにしたのである。
【0065】
次に、上記
図10の説明で、排出板操作機能が使用されているときには、近似式(数式A)の(係数等の)定数a,bに、排出板操作機能使用時用の定数を使用し、排出板操作機能が使用されていないときには、近似式(数式B)の(係数等の)定数a,bに、排出板操作機能不使用時用の定数を使用する理由は、以下の通りである。すなわち、排出板操作機能の使用時には、積込装置4の押込板13と排出板9との間で塵芥を圧縮しながら、塵芥を塵芥収容箱2に積み込む。このため、仮に、排出板操作機能の使用時の近似式(数式A)と、不使用時の近似式(数式B)に同じタイプの近似式(例えば、積込回数を変数xとした累乗近似の近似式)を使用する場合でも、排出板操作機能の使用時の近似式(数式A)の定数a,bが、不使用時の近似式(数式B)の定数a,bと、当然に異なっているからである。
図17(b)、
図18(b)、
図19(b)、
図20(b)、
図22(b)、
図23(b)、
図24(b)、
図25(b)における分析結果からも、排出板操作機能の使用時の近似式と、不使用時の近似式に同じタイプの近似式を使用する場合でも、排出板操作機能の使用の有無で、近似式の係数等の定数(傾き、切片等)に違いが出るという事を確認することができた。
【0066】
特に、排出板操作機能の使用時の近似式(数式A)と、不使用時の近似式(数式B)の両方に、積込回数を変数xとした累乗近似の近似式を使用する場合には、排出板操作機能の使用時には、積込装置4の押込板13と排出板9との間で塵芥を圧縮しながら、塵芥を塵芥収容箱2に積み込むため、排出板操作機能の使用時の近似式(数式A)の係数(傾き)の方が、不使用時の近似式(数式B)の係数(傾き)よりも大きくなる。
【0067】
上記のように、
図17(b)、
図18(b)、
図19(b)、
図20(b)、
図22(b)、
図23(b)、
図24(b)、
図25(b)における分析結果から、排出板操作機能の使用の有無で、最適な近似式が異なっているので、排出板操作機能の使用の有無で、近似式に採用する係数等の定数a,bを使い分けた方が、塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。
【0068】
上記のように、本実施形態の塵芥収集車1によれば、排出板操作機能の使用の有無、及び収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる(一般ゴミの比重と大きく異なる)か否かに応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにした。排出板操作機能の使用の有無に応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにしたことにより、上記特許文献1に記載の従来の塵芥収集車と異なり、排出板操作機能の使用の有無を考慮して、塵芥収容箱2に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を算出することができるので、積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。また、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに応じて、積み込み済みの塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにしたことにより、上記特許文献1に記載の従来の塵芥収集車と異なり、収集する塵芥の比重が、平均的な塵芥の比重に近いときと、平均的な塵芥の比重と大きく異なるとき(収集するゴミ(塵芥)が、使用済みオムツ、発泡スチロール、段ボール等のゴミであるとき)とで、近似値算出に用いる近似式を切り換えることができるので、塵芥収容箱に積み込み済みの塵芥の重量の近似値を正確に算出することができる。
【0069】
また、本実施形態の塵芥収集車1によれば、排出板操作機能を使用している場合には、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、積込装置4による塵芥の積込回数を変数とした累乗近似の近似式に切り換えるようにした。ここで、一般に、収集物(塵芥)の比重が一般ゴミの比重と比較的近い(大きく異ならない)場合には、平均圧力と重量の相関よりも、積込回数と重量の相関の方が強い。このため、「平均圧力」を変数xとした近似式を用いるよりも、積込回数を変数xとした近似式を用いる方が、精度の高い近似値を得ることができる。また、収集物が多いと分かっている時に、運転手等のユーザ(作業車)が排出板操作機能を使用しているが、塵芥収集車1の塵芥収容箱2に積み込める塵芥の量に限界がある(2トン車であれば、2トンに収束する)ため、収集物が多くて排出板操作機能を使用している時には、線形近似の近似式よりも、累乗近似の近似式の方が当てはまりが良い。従って、上記のように、排出板操作機能を使用している場合に、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、積込装置4による塵芥の積込回数を変数とした累乗近似の近似式に切り換えることにより、より精度の高い塵芥の重量の近似値を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の塵芥収集車1によれば、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる(一般ゴミの比重と大きく異なる)場合には、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、圧力センサ32により検出した押圧圧力に基づいて算出した、これまでの押込工程時における平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えるようにした。ここで、上述したように、平均押圧圧力(「平均圧力」)を変数xとした線形近似及び累乗近似の近似式については、いずれの近似方法の近似式による決定係数も、収集物の比重が極端に大きい(収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる)エリア80内のデータ(
図12参照)の有無によって、決定係数に大きな違いは無かった。しかも、
図11に示したように、「平均圧力」を変数xとした累乗近似の近似式は、収集物の比重が極端に大きい(収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる)データを含む全データを対象にした時の決定係数が、0.7973であり、近似式の精度が、かなり高い。従って、上記のように、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、これまでの押込工程時における平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えるようにしたことにより、平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる比重の塵芥の収集時に、より精度の高い塵芥の重量の近似値を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態の塵芥収集車1によれば、特殊比重ゴミ切換スイッチ61d(
図3参照)による指示入力が、ユーザによって行われたときに、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式に切り換えるようにした。これにより、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる(一般ゴミの比重と大きく異なる)場合に、ユーザが、簡単に、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えることができる。
【0072】
変形例:
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
【0073】
変形例1:
上記の実施形態では、排出板操作機能の使用の有無と、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる(一般ゴミの比重と大きく異なっている)か否かに応じて、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにした。けれども、これに限られず、排出板操作機能の使用の有無のみに応じて、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにしてもよい。例えば、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かに関わらず、排出板操作機能が使用されている場合に、積込装置による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式A)を用い、排出板操作機能が使用されていない場合に、積込装置による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似又は累乗近似の近似式(数式B)を用いるようにしてもよい。また、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なるか否かという点のみに基づいて、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにしてもよい。例えば、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、上記実施形態と同様に、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用い、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異ならない(一般ゴミの比重と比較的近い)場合には、積込装置による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式を用いるようにしてもよい。
【0074】
変形例2:
上記の実施形態では、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式A)と、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似又は累乗近似の近似式(数式B)と、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)との間で切り換える場合の例を示したが、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式は、必ずしも、線形近似又は累乗近似の近似式に限られず、他の種類の近似式(3次以上の関数、対数関数、指数関数等を用いた近似式)であってもよい。同じ種類の近似式で定数が異なるものを切り換えるようにしてもよい。
【0075】
変形例3:
上記の実施形態では、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なることを指示入力するための特殊比重ゴミ切換スイッチ61dを設けて、この特殊比重ゴミ切換スイッチ61dによる指示入力が、ユーザによって行われたときに、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式(数式C)に切り換えるようにした。けれども、この構成に限られず、例えば、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なることを検知するための検知装置を塵芥投入箱に設けて、この検知装置からの出力信号に基づいて、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を、平均押圧圧力を変数とした累乗近似の近似式(数式C)に自動的に切り換えるようにしてもよい。また、特殊比重ゴミ切換スイッチ61dによる指示入力が、ユーザによって行われたか否かという点のみに基づいて、塵芥の重量の近似値算出に用いる近似式を切り換えるようにしてもよい。例えば、特殊比重ゴミ切換スイッチ61dによる指示入力が、ユーザによって行われた場合には、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用い、特殊比重ゴミ切換スイッチ61dによる指示入力が、ユーザによって行われなかった場合には、積込装置による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式を用いるようにしてもよい。
【0076】
変形例4:
上記の実施形態では、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用いるようにしたが、本発明は、これに限られず、例えば、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、平均押圧圧力を変数xとした線形近似の近似式を用いるようにしてもよいし、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似又は累乗近似の近似式を用いるようにしてもよい。また、上記実施形態では、排出板操作機能が使用されていると判定した場合には、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした累乗近似の近似式(数式A)を用いるようにしたが、本発明は、これに限られず、例えば、排出板操作機能が使用されていると判定した場合には、積込装置4による塵芥の積込回数を変数xとした線形近似の近似式を用いるようにしてもよいし、平均押圧圧力を変数xとした線形近似又は累乗近似の近似式を用いるようにしてもよい。
【0077】
変形例5:
上記の実施形態では、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重と所定の閾値以上異なる場合には、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用いるようにしたが、本発明は、これに限られず、例えば、収集する塵芥の比重が平均的な塵芥の比重よりも所定の閾値以上大きい(一般ゴミの比重よりもかなり大きい)場合に限り、平均押圧圧力を変数xとした累乗近似の近似式(数式C)を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 塵芥収集車
2 塵芥収容箱
3 塵芥投入箱
4 積込装置
5 排出装置
9 排出板
32 圧力センサ(圧力検出手段)
61d 特殊比重ゴミ切換スイッチ(特殊比重収集物指示入力手段)
70 PLC(重量算出手段)