(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170632
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】リニアモーター式全自動電力循環型クリーンエネルギー発電機
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20221102BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H02N11/00 X
H02K7/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021099046
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】316006163
【氏名又は名称】平井 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】230109210
【弁護士】
【氏名又は名称】下山田 聰明
(72)【発明者】
【氏名】平井 正昭
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB02
5H607FF21
(57)【要約】
【課題】 本発明は、従来のほとんどの発電機において必要な燃料を不要とし、また自然エネルギーを活用した発電方法のように、自然エネルギーが得られない時間は発電できないという外部要因的課題を解決する。
【解決手段】 密閉空間内において、インホイール発電モーターで発電した電力をリニアモーター式回転体の原動力に還元することで電気が循環し続ける「フルオートリチャージング(全自動電力循環型)」の発電機であるため、外的環境の影響をほとんど受けること無く、長期間に渡る継続稼働が可能となる。なおかつ発電時に排気物が発生しないクリーンエネルギー発電である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製タイヤ(あるいは金属製歯車)の車輪の回転軸にモーターを装着したインホイール駆動モーターを、外部よりタイヤに回転力を付与することで発電機として利用する特徴を持つ。
【請求項2】
リニアモーターカーが走る原理と同様の電磁力で走行する回転体に、請求項1で示したインホイールモーターで発電する車輪のタイヤ(または金属製歯車)と接触させて回転を与え発電する仕組みを特徴とする。
【請求項3】
請求項2で示した仕組みにより発電した電力を、電磁力で走行する回転体に還元供給することで電力が循環し、電磁力回転体が駆動し続け長期間に渡って継続発電する特徴を持つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモーターカーが走る原理(電磁力)と、車軸に発電モーターを取り付けた車輪が回転することによって発電するという二つの原理を組み合わせることによる発電技術であり、燃料を必要とせず、天候等の外的環境の影響もほとんど受ける事なく、全自動で電力循環させながら長期間の継続発電が出来、なおかつ発電時に排気物が発生しないクリーンエネルギー発電を可能にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存の発電技術として、火力発電、原子力発電、ダム建設が前提となる大規模水力発電、地熱発電(フラッシュ方式)、空気熱、地球熱発電等がまず挙げられる。
【0003】
また、「非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができるもの」と法律で定義されている「再生可能エネルギー」の範疇として、太陽光発電、風力発電、中小規模のマイクロ水力発電などが含まれる。
【0004】
さらに、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」という法律で「非化石エネルギーのうち、経済性の面における制約から普及が十分でないものであって、なおかつその促進を図ることが非化石エネルギーの導入を図るため特に必要なもの」と定義されているものとして、▲1▼バイオマス(動植物に由来する有機物)を原材料とする燃料製造、▲2▼バイオマス(動植物に由来する有機物)熱利用、▲3▼太陽熱利用、▲4▼河川水などを熱源とする温度差熱利用、▲5▼雪氷熱利用、▲6▼バイオマス発電、▲7▼地熱発電(バイナリー発電)、▲8▼風力発電、▲9▼水力発電(出力1000Kw以下)、▲10▼太陽熱発電の10種類がある。
【0005】
他にも、廃棄物(バイオマス以外の燃料製造・発電・熱利用)、黒液・廃材等、廃棄エネルギーといった、廃熱利用熱供給・産業蒸気回収・産業電力回収(炉頂圧発電)などの方法も活用されている。
さらに広義の新エネルギー開発で言えば、クリーンエネルギー自動車、蓄電技術、定置用燃料電池、天然ガスコジェネレーション等も本発明に関連する技術分野に含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に発電機とは、「『燃料』を使ってエンジンを稼働させ、装置内のコイルや磁石を回転させることで電気を得る装置」のことを指す。本発明では、その『燃料』に当たる部分が不要となることが最大の特長である。他にも燃料が不要な発電システムとして太陽光発電や風力発電、水力発電などの自然エネルギーを活用した発電方法が挙げられるが、それぞれ燃料の代わりに太陽光、風、水の流れが得られない時間は発電しないという外部要因課題がある。本発明では、その外部要因課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の最大の利点は、燃料を必要としない全自動電力循環型発電機であり、密閉空間内において、インホイール発電モーターで発電した電力をリニアモーター式回転体の原動力に還元することで電気が循環し続ける「フルオートリチャージング(全自動電力循環型)」の発電機であるため、外的環境の影響をほとんど受けること無く、長期間に渡る継続稼働が可能となる点である。
しかしながら、いくつか解決しなければならない内部要因による課題が存在する。以下はそれらの課題とそれぞれの解決手段である。
【0010】
(1)第一の課題は、発電時に発熱し、その熱が原因で発電効率が低下してしまう可能性があることである。この課題は、ループ状発電システムを格納する容器内を冷却する仕組みを組み合わせることで解決する。発電した電力を冷却装置にも送電し、サーモスタット機能により格納容器内の温度を常に一定の範囲内に保つことで継続発電を可能にする。
【0011】
(2)第二の課題は、インホイール発電モーターの回転速度が発電効率に影響を与えてしまうことである。つまり、初動の段階では発電せず、逆に回転が一定の限界速度を超えると発電効率が極端に落ち始め、やがて稼働停止する現象が発生する。この課題を解決するために、ある一定の上限速度を超えた回転速度では発電しない自動制御回路を装着することにより解決する。
【0012】
(3)第三の課題は、インホイール発電モーターを内蔵したタイヤの摩耗、または経年劣化である。これについては一定期間ごとにタイヤ交換する必要がある。あるいは、ゴム製タイヤの代わりに歯車構造を活用する場合でも歯車が摩耗するため、同様に一定期間ごとの交換が必要である。
【0013】
(4)第四の課題は、ループ状回転体をリニアモーターカーと同じ原理で回転走行中、電磁波を放出することであるが、発電システムを格納する容器の内壁面に電磁波を吸収する素材を塗布することで、外部に漏れる電磁波を人体に全く影響のないレベルまで低減させることで解決する。
【0014】
(5)第五の課題は、発電機稼働時に発生する振動と騒音である。まず振動については、発電機器の床材にラバーシートを敷設することで大幅に振動を低減させる。そして騒音については、発電機格納容器の壁材に防音措置を施すことで解決する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は以下の通りである。
(1)《発電時間》一旦稼働すれば、電源スイッチを切るまで、あるいは、インホイール発電モーターやタイヤその他の部品が寿命を迎えるなど、何らかの異常が発生しない限り、燃料不要で発電し続ける。
【0016】
(2)《発電電力量》インホイールモーター1個の発電量は、どのモーターを使用するかによって異なる。標準のもので毎時1Kw。仮に毎時1Kwのものを使用したとすると、[
図1]の通り、1ループ内に各列10個のインホイールモーター内蔵タイヤを2列(合計20個)敷設した場合、1ループにおける発電量は毎時1Kw×10個=20Kw。このループを[
図2]の通り、縦に5段重ねたものを円筒容器に格納すると、1容器あたりの発電電力量は20Kw×5段=100Kw/h。これを5容器、40フィートコンテナに格納した場合、1コンテナあたりの発電量は100Kw×5容器=500Kw/h。2コンテナ分で1Mw/hとなる。
天候に左右される太陽光発電と比較した場合、メガソーラーを1年間運用したときの総発電量は、一般的に平均して1000Mwと見込まれている。1000Mwという発電量は、一般家庭約300世帯が1年間に消費する電力量に相当する。本発明品を1年間継続運用した場合の発電電力量は、単純計算で24時間×365日×1MW=8760MWとなり、メンテナンスや修理期間を考慮に入れたとしても発電効率はメガソーラーの約8~9倍となる。
【0017】
(3)《省スペース》40フィートコンテナ2個分程度のスペース(約60平米)で、1Mw/hの電力供給を得られる。ちなみに、一般的な太陽光発電の場合、1Mw(=1000Kw)の出力を得るために必要な面積は2ヘクタールと言われており、約170分の1のスペースで事足りる計算となる。
【0018】
(4)《省コスト》メガソーラーの設置初期費用は1Kwあたりの単価が20~24万円と言われており、1Mw規模で2億数千万円程度の初期費用が必要となるが、本発明品の場合、初期投資費用は数千万円程度で収まり、初期コストが大幅に削減できるメリットが大きい。しかも、太陽光発電の場合、土地の条件によって整地にかかる費用が発生するが、本発明品の場合、屋内屋外に関わらず、平地であれば基本的にどこでも設置可能となる。また、維持コストもインホイールモーター内蔵タイヤの交換と人件費程度で収まる。
【0019】
(5)《排気ゼロ》発電工程において、初動時に外部電源からわずかな電力供給が必要である以外には、以降いかなる燃料も必要とせずに発電し続け、有害無害に関わらず、排気物を発生しないクリーンエネルギー発電機である。
【0020】
(6)《宇宙空間での利用》本発明は宇宙空間でも発電機として利用可能である。宇宙空間ではほぼ絶対零度の270±2℃であるために超伝導状態となり、成層圏内よりもさらに発電効率が高まることが予想される。その場合、インホイール発電モーターのゴム製タイヤは、より耐用性のあるギヤ(歯車)など別の素材で代替される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】発電機本体中心部の構造(斜め上から見た図と真上から見た図と本体断面図) 本発明の基本構造は、以下の3パターンのうちのいずれかとなる。(1)「角型ループ状チューブ」内部の底面部に「インホイール発電モーター(車軸に発電モーターが内蔵されたタイヤ)」をレール状に並べて敷き詰めておき、その上を、リニアモーターカーが走る原理(電磁力)で動く「ループ状列車型回転体」を走らせる。すると、その下に敷き詰められた「インホイール発電モーター(車軸に発電モーターが内蔵されたタイヤ)」が「ループ状列車型回転体」と接触する事で回転し発電する仕組みである。(2)また、上記とは逆に、「インホイール発電モーター(車軸に発電モーターが内蔵されたタイヤ)」を「ループ状チューブ」内部の[天井面]にレール状に並べて敷き詰めておき、その下を、リニアモーターカーが走る原理(電磁力)で動く「ループ状列車型回転体」を走らせても、上記と同じ原理で、その上に敷き詰められた「インホイール発電モーター(車軸に発電モーターが内蔵されたタイヤ)」が「ループ状列車型回転体」と接触する事で回転し発電する。(3)あるいは、「角型ループ状チューブ」内部の天井面と底面の両方に「ループ状列車型回転体」を上下からサンドイッチ状に挟む形でレール状に並べて敷き詰めておき、「ループ状チューブ」がその間を走行することにより、上下にある「インホイール発電モーター(車軸に発電モーターが内蔵されたタイヤ)」とそれぞれ接触する事で回転させ発電させれば、2倍の効率で発電が可能となる。さらに、そのインホイール発電モーターで作られた電力の一部をリニアモーター式ループ状列車型回転体に還元供給することで、継続的に駆動、発電する。上記3パターンの構造において、ゴム製タイヤの代わりに「歯車構造」を活用することも可能である。その場合、「ループ状列車型回転体」の底面(または天井面、あるいは天井面、底面の両方)のすべての面に、「歯車を回転させるための凹凸」を、線路の枕木状に施すことが必要である。
【
図2】五段重ねドラム型円筒容器を格納ルームに格納した状態
【
図3】40フィートコンテナ内に格納ルーム5台設置した状態
【発明を実施するための形態】
【0022】
発電機は[
図1]の通り単体で使用することも可能であるが、通常は[
図2]のように発電機を五段重ねたものをドラム型格納容器に入れ、さらに防音防振及び温度調節対策を施した格納ルームに格納して使用する。また大型施設等では、[
図3]のように40フィートコンテナ等に複数台並べて使用する。
【実施例0023】
本発明の産業上の利用範囲は極めて広い。主にいわゆる第二次産業と呼ばれる製造業、建設業、工業生産・加工業、電気・ガス・水道業など、電源を必要とする産業のほぼすべてで有用である。もちろん、本発明を発電所として活用することで売電事業でも威力を発揮する。燃料を必要とせず発電効率が良いことから、必要電力量の大きさに比例して経済的メリットも大きくなる。
また、継続的に発電し続けるため、蓄電池に電気を貯めておく必要がない。そのため、電池の代替品としての利用も可能である。
さらに、自動車、電車(リニアモーターカー含む)、バイクなど、車輪を伴う移動体にも、この電力循環型インホイールモーター発電機を装着することで、長時間継続走行が可能となる。